その日カリオストロ伯爵はパーシヴァル卿から声をかけられた。手合わせの相手を探しているとのことだった。最初は渋ったが断る理由もなく、“体術のみで戦う”という条件で承諾した。武器を持った円卓と渡り合う力が自分にはない…という建前であったが本音を言えば虎の子の宝具をあまり人目に晒したくなかったからだ。双方合意で決着したその後も雑談は続き、話の流れで食堂で軽食でもとなった。
カルデアキッチンで注文し、料理の出来上がりを待つ間も会話は弾んだ。
「それにしてもカルデアは素晴らしい。古今東西全ての食事が食べられるのですから。一介の詐欺師にとっては身に余る贅沢ですね。」
「全てというと語弊があるかもしれませんが、そう感じてしまうほどの料理が注文できますね。」
そうこうそている間に注文した料理ができた。パーシヴァルの注文は紅茶とサンドイッチ、カリオストロの注文は珈琲とアイスクリームの乗ったパンケーキだった。
注文を受け取って適当な座席に座ると、カリオストロはアイスクリームをスプーンですくって口に入れた。舌の上に乗ったアイスクリームは人肌の熱でふわりと溶けていった。
「ところでこのアイスクリーム、材料は何かはご存知ですか?」
「いえ、菓子には詳しくないので…」
「ええ、私も詳しくないのですが聞いた話では『牛乳』『砂糖』『生卵』『生クリーム』をたっぷり使うそうですよ。」
「俄には信じられないものですね。」
「ええ、私の時代でこれを口にできる人がいたとすれば王侯貴族かそれに並ぶお金持ちぐらいでしょう。」
「私の時代では王侯貴族であったとしても口にできないでしょう。」
パーシヴァルは不思議そうな表情でアイスクリームを眺めていた。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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