聖杯大会本戦統合スレNO.5

138

  • 1あやか◆8UqAuWjxP.2020/12/26(Sat) 14:20:07ID:Q0NDkxNDY(1/1)NG報告

    ・当スレッドはTYPE-MOON様原作Fateシリーズを題材とした二次創作作品をでもにっしょん掲示板利用者により共同制作したリレーSSを掲載するスレッドです。
    ・作品、設定作りの相談。参加者間の雑談は「聖杯大会予選会場」をご利用ください。
    ・次スレは>>950、又は>>970を踏んだ人がカテゴリー「その他」に建ててください。
    ・投稿前に混線を防ぐため投下の宣言並びに名前欄に作品タイトルを記載して下さい。また、確認の上他の方が投稿中である場合は少々時間を置いてからにして下さい。
    ※現在進行中の「Fate/TV SHOW~アイランド編~」、「Fate/TV the "SHOWt"」の2スレッドは順次統合予定です。掲示板利用者の方々には大変ご迷惑をおかけしております。
    ・まとめwiki :https://fatetv1830.wiki.fc2.com/

  • 2名無し2020/12/26(Sat) 16:16:16ID:czMjUxMDQ(1/1)NG報告

    サムネ

  • 3ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:43:37ID:cyNzA5MjA(1/15)NG報告

    じゃあ、召喚シーンが出来たので投下します

  • 4ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:44:08ID:cyNzA5MjA(2/15)NG報告

    「身嗜みはこれでいいわよね……。」
    姿見の前で、白のペプラムトップスと青のロングスカートを着た自分を見てぽつりと呟く。服に目立った皺などもないし、問題はないと思う。
    ……どういうわけか、へその下に令呪が現れた手前、それを隠すための服装にはなってしまうのだけど。
    「準備もこのくらいで大丈夫かしら……?」
    他に何か持っていく物はないか自室を見回す。海外へのパスポートはペレス島で行われる聖杯戦争への参戦が決まったその日のうちに申請して、一昨日受け取り今は麦わら帽子と共に机の上に置いてある。ペレス島へは船を使わないと行けないため、その近くまでの空港のチケットとペレス島へ向かうための船のチケットもショルダーバッグの中に入っている。ホテルも既に父が手配してくれているので問題はないだろう。残っている魔術道具や魔導書も、今回の聖杯戦争で使うのには嵩張るため置いていくことにした。
    あと必要なものと言えば英霊……サーヴァントを呼ぶための触媒くらいのものなのだけど─────
    トントン、とドアをノックする音が聞こえる。
    「はい?」
    ドアを開けると、うちで働いている家政婦『宮友』さんが立っていた。
    「おはようございます、お嬢様。」
    そう言ってロングスカートの端を摘み恭しく礼をしてくる。
    「も、もう……私の方が一回りも年下なんですから、そのようになさるのはやめてください、宮友さん。」
    「いえ、そういうわけにも参りません。確かに年齢で言えば私の方が上でございますが、立場は違います。私は旦那様に雇用された一労働者、そしてお嬢様は私から見れば雇用主である旦那様の愛娘でございます。そんな方に対して礼節を欠けば、私は旦那様に仕事を辞めさせられてしまうでしょう。」
    凛とした顔立ちの家政婦である宮友さんが表情を崩さぬまま、淡々とありのままの事実を語る。そして咳払いを一つし、用件を告げる。
    「こほん。それよりもお嬢様────旦那様が書斎にてお待ちでいらっしゃいます。」
    「お父様が……」
    「事の仔細に関しまして、私は何も仰せつかっておりません。恐らく、お嬢様とお二人で話したいことなのでしょう。」
    「そう、ですか……。」
    恐らくはサーヴァントを召喚するための触媒のことと……聖杯戦争へ赴くための心構えあるいは薫陶を授ける、といったところだろうか。

  • 5ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:45:05ID:cyNzA5MjA(3/15)NG報告

    「お嬢様。出立のお荷物は出来ていらっしゃいますか?」
    「え、ええ……。あとはパスポートを持てば終わりですけれど……。」
    「ではお荷物の方は先に下に下ろしておきましょう。里道さん、すみませんがお嬢様のお荷物を運んでくださいますか?」
    宮友さんが近くにいた初老の男性─────里道さんに声を掛ける。
    「ええ、分かりました宮友さん。蘇芳お嬢様、お荷物はどちらに?」
    「あ……待ってください、今、持って参りますから。」
    一度部屋の中へ引っこみ、机の上のパスポートをショルダーバッグの中に入れて、麦わら帽子と大きめのキャリーバッグと共に部屋の外まで持っていく。
    「すみません、お待たせしました。」
    「いえいえ待ってなどおりませんよ。では、お荷物は車の方に運んでおきます。」
    「はい、よろしくお願い致します。」
    「そちらのショルダーバッグは如何なさいますか?」
    「これは……お父様から何かいただくかもしれませんので、私が持っています。」
    「かしこまりました。」
    里道さんが礼をして荷物を抱え、宮友さんが立っているところとは逆方向に向かう。
    「では参りましょうか。」
    「……ええ。」
    宮友さんが先導する形で前へ行き、私はその後ろをついて行く。
    しばらくして父の書斎の前で宮友さんが足を止めて立ち止まる。私も彼女に倣い足を止めて立ち止まる。
    宮友さんが父の書斎のドアを、トントントン、とノックする。

  • 6ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:45:52ID:cyNzA5MjA(4/15)NG報告

    「旦那様、お嬢様をお連れいたしました。」
    「中に入れてやってくれ。」
    「かしこまりました。……お嬢様、中へお入りください。」
    そう言って宮友さんは書斎のドアを開け、私に中へ入るようにと誘導する。……そんなことをしなくても逃げることなんてできはしないのに。
    開けられた書斎のドアの前に立ち、父に向かって一礼する。
    「おはようございます、お父様。」
    「おはよう、蘇芳。そんなところに立っていないで早く中に入りなさい。」
    「……はい。」
    「静音は外で待っているように。くれぐれも聞き耳なぞ立ててくれるなよ?」
    「承知しております。」
    宮友さんが書斎のドアを閉める。もうこの場には私とお父様の二人しかいない。
    「さて……。お前を呼んだのは他でもない、今回の聖杯戦争についてだ。」
    場の空気に緊張感が満ちる。
    「お前にも概要は説明したと思うが……覚えている範囲で構わないから私に説明してみなさい。」
    「はい、お父様───────」
    息を、すう……はあ、と整え、記憶にある聖杯戦争開催の経緯を引き出し頭の中で簡略にまとめ、声に出す。
    「……まず、事の発端は地中海に地殻変動の影響で浮上してきた『ペレグリヌスベース』───以降は『ペレス島』と呼称させていただきますが───の中核部分にて、聖堂教会が願望機相当の魔力反応を検知し、それを『聖杯』と認定したことが始まりです。」
    目線で、父の様子を伺う。
    「……続けなさい。」
    「……はい。教会はまず第一にそれを確保、次いでペレス島そのものも手中に収めようとしましたが……ペレス島からは現代において貴重とされる鉱石資源が産出されるため、周辺諸国から多くの抗議が寄せられ、静謐を主とする教会は抗議を受け表層地帯……現在のペレス島における居住区や観光地などがあるエリアを開放しました。」

  • 7ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:46:29ID:cyNzA5MjA(5/15)NG報告

    もう一度だけ息を、すう……はあ、と整える。
    「しかし最近になって教会より『ペレス島にある願望機を優勝商品とした戦いを夏に行う。』というメッセージが魔術協会、及び魔術協会に関連する組織の上層部に密かに届きました。お父様はその情報を手に入れ、私の聖杯戦争への参加を取り付けた──────」
    「結構。それだけ覚えているのなら改めて説明する必要は無いな。さすがは才能ある『黒鳥家』の後継者だ。」
    「……っ、ありがとう、ございます……。」
    嗚咽が漏れてしまわぬよう、下唇を強く噛み締める。父にバレてはいけない。もし私が兄にされている仕打ちを知ったのなら─────兄がどうなるかなんて明白だから。
    「だが、所詮は教会が流した情報だ。必ずしも届いたメッセージに書かれていることが真実であるとは限らない。そも"願望機"とは言っているが……それが真であるかどうかなど、こちらでは判断のしようがことだ。」
    「……そうですね。」
    「故にこそ、注意は払わねばならん。お前に求めることは、ただ一つだ。」
    父がこほんと咳払いをする。
    「─────何をしてでも生き残れ。それが私がお前に求めることだ。」
    「えっ……?」
    思わず素っ頓狂な声が出る。生き残れ?聖杯戦争で優勝しろ、ではなく?
    「たとえ無様を晒しても、生き恥を晒してもかまわん。私達にとって『お前は』大切な後継者だ。後の代のためにも、お前を失うわけにはいかんのだ。かのエルメロイ家のような惨状になるのは御免だからな。」
    「…………はい、分かりました。」
    まるで『お前の兄はそうではない』────そう言い切っているも同然ではないかと思ったが、口には出さない。

  • 8ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:47:41ID:cyNzA5MjA(6/15)NG報告

    「差し当たって、お前に渡すものがある。」
    そう言って、父は書斎にある机の二番目の引き出しからトネリコの木で作られた木箱を取り出し、私の前に持ってくる。
    「……?あの、それは一体──────」
    「今回の聖杯戦争のために大金を叩いて購入したある英雄にまつわる触媒だ。お前なら見ただけでそれが何であるか分かるだろう。」
    父がトネリコの木箱の蓋を取る。
    そこにあったのは、黄金色の捻じ曲がった刀身。
    「……っ!?これは、まさか──────」
    「お前が思った通りの英雄だよ。そしてこの戦いにおいては、お前を守る剣となり盾となるだろう。」
    父が蓋を閉じ、私の手に木箱を持たせる。
    「飛行機の時間も近い、そろそろ出立しなさい。」
    父が書斎のドアを引き、外で待機していた宮友さんに声をかける。
    「静音。蘇芳を車まで連れていってやってくれ。」
    「かしこまりました。」
    「私も愛娘の出立を見送りたいから、同行させてもらうが……かまわないね?」
    「はい、旦那様の仰せのとおりに。」
    では参りましょうか─────宮友さんが先行し、その後に父、さらにその後に私が続く。
    玄関を出ると黒のリムジンと共に里道さんが待っていた。
    「お待ちしておりました。出立の準備は出来ております。いつでもご出発出来ますよ。」
    「ああ。……蘇芳、乗りなさい。」
    「……はい。」

  • 9ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:48:30ID:cyNzA5MjA(7/15)NG報告

    私が前に出ると、里道さんがリムジンの後部座席のドアを開ける。
    「よろしくお願いします、里道さん。」
    そう里道さんに言って会釈をし、リムジンに乗り込む。私が乗り込んだのを確認してから里道さんがドアを閉める。
    「では、里道さん。くれぐれも蘇芳に怪我のないよう頼むよ。」
    「心得ております。蘇芳お嬢様に万が一のことなど起こしませんとも。」
    昔からの付き合いである父と里道さんのやりとりの後、里道さんが運転席に乗り込みシートベルトを締める。私も後部座席ではあるが、近年の法改正のことを覚えているのでシートベルトを締める。
    「では、出発致します。お忘れ物などはございませんね?」
    「……ええ。出発してください、里道さん。」
    「かしこまりました。」
    里道さんがクラクションを軽く鳴らし、シフトレバーを入れ、アクセルを踏み込む。
    ゆっくりとリムジンが前進していく。
    ふと後ろを振り向くと、そこには深々と礼をする宮友さんと手を後ろ手に組み私を見送る父の姿があった。
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    「………………………」
    「………………………」
    重い沈黙が空気を支配する車内。
    沈黙の主たる原因は私だ。何度か里道さんに話しかけられても「はい」だとか「ええ」だとか、そんな風に返してしまうから会話が途切れて後に続かない。里道さんの振ってくれるお話はどれも他愛のない世間話程度のことばかりなのに、だ。
    それゆえに、空港まで続いている高速道路に入ってからはてんで会話は無くなっていた。

  • 10ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:48:59ID:cyNzA5MjA(8/15)NG報告

    「はあ……。」
    ため息を吐く。里道さんに対してではない。何を話せばいいのか分からない、会話を続けられない、そんな弱虫で情けない自分自身に嫌気が差して。
    「蘇芳お嬢様。」
    そんな空港に続く高速道路に入ってから、初めて里道さんに話しかけられる。
    「……なんでしょうか?」
    「蘇芳お嬢様は旦那様……お父上のことはお嫌いですか?」
    「えっ───?」
    そんなことを言われて私は即座に返答できなかった。
    「ご安心ください。ここでの会話は旦那様には内密に致しますので。」
    「そう言われましても……。」
    私は答えに窮してしまった。
    父のことを嫌いであるはずがない。魔術師としても、一人の父親としても、尊敬に値する人物だと私は思う。
    けれど、それでも答えに窮したのはひとえに兄のことがあるからだろう。
    私が兄よりも優れた魔術師としての才を見せたあの日から、父にとって……いや、父母にとって兄はどうでもいい存在になったのだ。そうなる前は私がそうだった。幼くしてバイオリンのコンクールで賞を取った時も人前でこそ褒めはすれど、人前でなくなればそんなことはどうでもいいと言わんばかりに無視をした。兄や里道さんや宮友さんに褒められて嬉しかったが、だけどそのことをいの一番に褒めて欲しかったのはやはり他ならぬ父母なのだ。
    だから父母の興味を惹くために、当時どういうものなのかも、何に使うものなのかも分からない魔術器具に手を出して、なんとか完成させてみたのだ。……それが結果として兄との関係に軋轢を生むことになったのだけど。
    「蘇芳お嬢様。」
    思考の渦に飲まれかけていた私を、里道さんが優しい声音が正気に戻した。
    「……何かしら?」
    「お優しい蘇芳お嬢様のことです。きっとお父上のことは好きでも、兄上である千寿様のことで素直に好きだと言えないのではありませんか?」
    「────っ。」

  • 11ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:50:05ID:cyNzA5MjA(9/15)NG報告

    当たりだった。いや、きっと私が分かりやすいだけなのだろう。
    「私はそれでも良いと思いますよ。」
    「そう、でしょうか……?」
    「人の評価というのは時が経てば変わるもの。子供の時には輝いて見えていたものが、大人になればどこにでもある普通のものに見えてしまう。逆もまた然りです。」
    「……私には、よく分かりません。」
    手を膝の上で小さく握り締める。里道さんが、ははは、と笑う。気が付くと空港はもう目と鼻の先だった。
    「蘇芳お嬢様にも、いつか分かる日が来ますよ。」
    里道さんは穏やかな笑みを浮かべて、そう言う。
    「…………はい。」
    私は、一体どんな表情(かお)でその言葉に答えのだろうか?
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    空港にて里道さんに「では、お気を付けていってらっしゃいませ。」と見送られ、空港の国際線ターミナルから出立した。一度フランスで飛行機を乗り継ぎギリシャからバスでペレス島行きの船が出ている港へ向かい船に揺られ、日本からかれこれ半日以上。
    「はあっ……疲れた……。」
    ようやくペレス島に到着した。時差ボケによる倦怠感はあるものの、動けないほど酷くはない。空を見ると既に夕焼けが差し込みつつあった。
    「先に監督役の方に挨拶しないといけないわね……。」
    夜になって訪れても迷惑だろうし、早めに済ませてしまおう。
    「とりあえずは市街地ね。ホテルもそこにあるのだし、監督役に挨拶してからチェックインしても問題はないはず。」

  • 12ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:50:59ID:cyNzA5MjA(10/15)NG報告

    もしかしたら晩ご飯を食べ損ねるかもしれない、とも思ったが普段からあまり多く食べるというわけでもない。一食程度抜いても問題ないかもしれないわね。
    そんなことを考えながら市街地行きのバスに乗りこむ。船に乗っている時も味わったが、日本とはまた違った潮風とその匂いはここが日本から遠く離れた異国の地であることを実感させる。
    「まもなく"市街地・教会前"です。お降りの方は─────」
    バスの硬貨口に空港で両替した小銭を入れ、バスを降りる。
    目の前にあったのは、およそギリシャの市街地の雰囲気にそぐわない厳かな礼拝堂。色こそ白色であるものの、外見は明らかにギリシャ正教会のものではなく彼らの本山─────聖堂教会でよく見られるものだ。
    ドアの取手を掴み、トントン、トントン、と四回ノックする。
    「はーい、少々お待ちくださいねー。」
    建物の内部から若い女性の声が聞こえてくる。声の感じからして、私とそう年は変わらない……ように思う。
    「すみません、お待たせしましたー……って、あら?あなたは──────」
    出てきたのは年若い……というより明らかに私より年下の少女だった。見た目から考えるのならば、ここに勤めているシスター、だろうか?
    ともかく、挨拶をしないのは失礼だろう。
    「お初にお目にかかります。私は黒鳥蘇芳というものです。魔術協会より今回の聖杯戦争のために遣わされました。今日は監督役の方にご挨拶に参りました。」
    深々と頭を下げる。すると嬉しそうな声が聞こえ、右手を上げさせられ小さな両手で包まれてしまう。
    「まあ!あなたがそうなのね!会えて嬉しいわ!」
    「は、はあ……。」
    確かに同年代ではあるのだし、喜ぶのは納得できる。とはいえ目の前の少女が監督役だとは、とてもではないが思えなかった。
    「あの、失礼とは存じますが、監督役の方はどちらにいらっしゃいますか?」
    「はい?監督役は私ですが?」
    「え?」「え?」
    思わずお互いに聞き直す。……そんな馬鹿な。目の前にいる少女が、この聖杯戦争の監督役、だって言うの?

  • 13ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:51:29ID:cyNzA5MjA(11/15)NG報告

    「あのー……失礼ですが、もしかして私のこと聞いていなかったりします?」
    「え、ええ……。私は父を経由して今回のお話をいただきましたので……。」
    「あー……まあ、そうですよねー。私みたいな小娘が監督役とか、普通は思いませんものねー……。」
    ずーん、と目の前の少女が暗くなる。
    「す、すみません……お気を悪くさせてしまって……。」
    「あー、いえいえ、仕方のないことですよ。私だってこんな小娘が監督役だ、なんて言われたらビックリしますもの。」
    あはは、と快活に笑ってみせる少女。
    「こほん。では私も自己紹介をば。私はメイベル・B(ブルトン)・クラークと申します。此度の聖杯戦争を監督せよ、との命を教会より受けて、このペレグリヌスベースの地に派遣されました。万が一の際には教会までお越しください、何があっても必ずその身を保護させていただきます。これでも代行者見習いですので、腕には自信がありますよ?」
    悪戯っ子な笑みを浮かべるメイベルと名乗った少女。私は改めて礼をする。
    「先程は失礼致しました。これからよろしくお願いします、ミズ・クラーク。」
    「メイベル、でかまいませんよ。私もあなたのことは、スオウ、と呼ばせていただきますので。」
    彼女と互いに握手を交わす。
    「ところでスオウ。サーヴァントの召喚はお済みですか?」
    「いえ、それはこれからです。」
    「早くした方がいいですよ。他の参加者達はもうサーヴァントを召喚していますから。」
    「……ご忠告、感謝します。それでは私はこれで失礼します。」
    私はもう一度メイベルに礼をして、父が予約したホテルへ向かった。

  • 14ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:51:59ID:cyNzA5MjA(12/15)NG報告

    ホテルのチェックインを済ませ、キャリーバッグから陣を敷くための道具を一通りショルダーバッグに入れて移動する。
    神秘の秘匿のことを考えると市街地や倉庫街などでの召喚は避けるべきだと考え、あまり人が立ち寄らない場所の方がいいだろうと考え─────
    「ここで良いかしら……。」
    青々とした木々が生い茂るペレス島西部にある森林地帯の開けた場所に、私は足を踏み入れていた。
    周りは既に闇に覆われており、これ以上深くなれば戻ってくるのは容易ではないだろう。
    「早く済ませてしまいましょうか……。」
    ショルダーバッグを手頃な切り株の上に置き、ショルダーバッグから陣を敷くための道具を取り出し、手順に沿って陣を敷いていく。陣を描き終えたところで、私はトネリコの木箱から触媒である黄金色の捻じ曲がった刀身を取り出す。
    「あとはこれを陣の中央に置いて、と……。」
    これで準備は整った。
    「すう……はあ……」
    深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。
    大切なのはここからだ。

  • 15ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:52:34ID:cyNzA5MjA(13/15)NG報告

    「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師黒鳥天彦。
     降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」
    「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
     繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する─────」
    大気に満ちる魔力(マナ)の動きが変わる。
    「───── 告げる。」
    「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
    聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
    魔力(マナ)が突風となって吹き荒び、周囲の木々を揺らしていく。あと少し─────
    「誓いを此処に。
     我は常世総ての善と成る者、
     我は常世総ての悪を敷く者。
     汝三大の言霊を纏う七天、
     抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」
    最後の詠唱を終え、陣の中央に巨大な魔力が収束し、閃光を放って爆ぜる。
    「きゃっ────!?」
    その衝撃の強さに私は思わず目を閉じ、自分の身体を支えきれずに尻もちをついて倒れる。
    「─────────あ、」

  • 16ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:53:40ID:cyNzA5MjA(14/15)NG報告

    そして私が再び目を開くと、私は言葉を失った。
    目の前にいたのは、先程まではそこに存在しなかった長身の精悍な男だった。
    すらりとした長い手足、深い青色の髪、夜であろうとはっきりと認識することが出来る真紅の双眸、蒼い装束と肩当てとプレートメイルのみの軽装鎧、その上からでも分かるほどに鍛えられ練り上げられたしなやかな筋肉。
    だが何よりも目を引くのは、その背にある黄金の光を放つ螺旋状の剣。その剣が何であるか、見間違いようもない。
    男が口を開く。
    「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ、参上した。」
    男の眼が尻もちをついたままの私に向けられる。
    「────問おう。お前が、オレのマスターか?」
    返答次第では即座に斬る。そう意思が込められている気がした。
    「え、ええ。私が、あなたのマスター、です……。」
    「そうか、そりゃあ良かった!こんな別嬪さんを殺 すなんざ寝覚めが悪りぃからな!あんたがマスターで良かったよ!」
    がはは、と豪快に笑うセイバー。
    「立てるか、マスター?」
    「え、ええ……。ありがとうセイバー。」
    セイバーが右手を差し出し、私がその手を握るとそのまま私を引っ張り上げ立ち上がらせる。
    「マスター、あんたの名前は?」
    「……蘇芳。黒鳥蘇芳よ。」
    「黒鳥蘇芳、ね。よし、覚えたぜ!オレの真名は────」
    「クー・フーリン。ケルト神話、アルスターサイクルで語られる大英雄……よね?」
    「お。なんだ、オレのこと知ってんのかい?」

  • 17ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:54:11ID:cyNzA5MjA(15/15)NG報告

    「お。なんだ、オレのこと知ってんのかい?」
    「触媒を見たときに『もしかして』と思ったもの。あなたではなく、兄弟子のフェルディアが召喚されるかもしれないとは思ったけれど……。」
    「なるほどね。まあ、改めて自己紹介させてくれや。」
    セイバーが私の顔をじっと見て改めて名乗りを上げる。
    「オレの真名はクー・フーリンだ。今回はセイバーのクラスでの現界だが……まあお互い悔いを残さないように頑張ろうや、マスター。」
    「ええ、こちらこそよろしくねセイバー。」
    改めて握手を交わす。
    今日この夜、私は一つの運命と出会った────のかもしれない。

  • 18スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:19:38ID:IyODMxMjg(1/10)NG報告

    第■回、三日目戦闘開始します。

  • 19スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:20:26ID:IyODMxMjg(2/10)NG報告

    『弁護士士郎の今日のごはん。本日はあったか寄せ鍋を……』

    『男子バスケ、昨日の来栖ストームズは……』

     暇を持て余したアサシンが見てるテレビの音声が聞こえる中、昼食の準備をする。
    といっても自炊したのはご飯位で、味噌汁はフリーズドライだし、漬物とエビフライとスコッチエッグはスーパーで買ったやつだけど。
    少し多めだけど今朝は食欲が無くてお粥と沢庵で済ませてたから、この位食べないとアサシンが満足しないし。

    「アサシン、飯にするぞ」

     という感じに、昨日の乱戦が嘘だったかのように平穏な時間を過ごす筈だった。
    他陣営に比べて消耗が大きかったのもあって少し様子見に徹しつつ身体を休める……その判断自体はおかしく無かった筈だ。
    しかし、それが起こったのは、食べ終わって後片付けしようとした時だった。
    隣室から強烈な轟音と振動、それに結界が容易く破られ、崩落する壁は竪琴……自動的に侵入者の気力を減退させる音を鳴らす魔術礼装を押し潰した。

    「チッ、反則にならねえギリギリを!逃げるぞ!」

     そして、状況を把握しきる前に俺はアサシンにマンションから連れ出された。

  • 20スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:22:31ID:IyODMxMjg(3/10)NG報告

    「アーチャー、これ、本当に大丈夫なんですか?失格になりません?」

    「安心しろ、敵サーヴァントが敵マスターを守る余裕も、敵陣営が脱出する余地も十分に与えている。最も、そうでなくとあのサーヴァントならマスターを連れて脱出してるだろうな」

     雑居ビルの屋上から敵陣営の拠点があるマンション……というか、敵の拠点の隣室へ
    まさかの砲撃。
    更に、マンションが壊れない程度に拠点となる部屋以外へと砲弾が撃ち込まれていく……。
    拠点にしようとした北西の山が運営の管理下にあって入れなかったのもありますけど、情報収集に徹している間に二陣営も敗退したのはアーチャーにとっても衝撃だったようで……結局、割り出した敵拠点の破壊へと作戦を変更する事になりました。
    ちなみに、手鏡を起点に幻影を発生させているので、相手に見られる事は無いはずです。

    「これで終わりだ」

     おっと、いよいよ敵拠点となる部屋に砲撃……限界を迎えたマンションが崩壊しました。
    この他にも二つの陣営の拠点を目星がついてますし、残る一つの陣営もその片方と同盟を組んだようです。
    ええと、次は……。

  • 21スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:23:37ID:IyODMxMjg(4/10)NG報告

    「伏せろ!」

     アーチャーが叫ぶと同時に降り注ぐ矢の雨。
    咄嗟に身を伏せると、此方に飛んでくる矢は全てアーチャーがサーベルで叩き落としましたが……何かが割れる音。
    そちらを見ると幻影を発生させていた手鏡が矢に貫かれていました。

    「砲撃の来る方向から此方のおおよその位置を割り出したか……来るぞ!」

     矢が飛んできた方向には、褐色の男が弓を構えていました。

  • 22スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:26:31ID:IyODMxMjg(5/10)NG報告

    以上です。

  • 23ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:15:53ID:AxNjg5Mzc(1/5)NG報告

    来た道を戻りながら、ライダーさんは私の置かれている状況を一つずつ丁寧に教えてくれました。

    今回の聖杯戦争はどこかにあるダンジョンの奥底にある聖杯への競争であること。
    正式に参加を認められるためには、どこかにある教会まで行って監督役の人に報告する必要があること。
    でも、その前であっても敵の「魔法使い」であるところの人たちは(正確には「魔術師」というのが正しいのだけれどね、とライダーさんは注釈をいれました)平気で襲ってくるから備えておく必要があること――

    それからややあって、実感が無いなりにも私がこれらのことを呑み込めたことを確認するとライダーさんは言いました。

    「どうするにしても――とりあえずまず、マスターは家に帰って服を着替えるべきだね。エレガントなドレスだけれども、あまり動き回るには向いていないとライダーは思うよ」

    その通りでした。
    なるべく見つからないように抜け出すために、私は着の身着のままこっそりと抜け出してきたのでした。
    あまり装飾の多くないフォーマルなドレスとはいえ、ここまで来るだけで何度も着替えてくるんだったと後悔したくらいですし、当然のことです。
    しかしながら私の口をついて出てきたのは、そんな論理的な考えとは正反対の言葉でした。

    「嫌です!」
    「どうして?服装のことを除いても、何かと準備は必要だとライダーは思うけれど」
    「それはその・・・・・・ほら!私、ワクワクしちゃって今すぐにでも行きたいなーって言いますか!」
    「そんなハイヒールじゃ、ダンジョンなんて歩けないよ」
    「うぅ・・・・・・それはその通りですけど・・・・・・」

  • 24ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:16:13ID:AxNjg5Mzc(2/5)NG報告

    >>23
    煮え切らない態度の私にライダーさんはううん?と首をひねりました。
    が、すぐに大きくうなずきました。

    「わかったよ。事情は分からないけれど、戻りたくない理由があるんだね。でも、そのままっていうのはやっぱり危ないから――誰にも見つからないようにこっそり荷物だけ取りに行こうよ」
    「そんなことできるんですか?」
    「当然!ライダーは『騎兵』のクラスで召喚されたサーヴァント。このクラスのサーヴァントは便利な乗り物を持っているんだ。それに乗って、窓からピュッと入っちゃおう」

    この提案は、私にとって渡りに船でした。
    両親に見つからないことが大前提ですが、服装はともかく大切な宝物を置いてきてしまったので、それだけでも回収したいというのが本心だったからです。
    ライダーさんにしてみても「これ以上は譲らない」といった様子であったため、私は今度こそおとなしく従うことにしました。

  • 25ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:16:45ID:AxNjg5Mzc(3/5)NG報告

    >>24
    ◆◆◆◆◆◆

    帰路の半ばくらいまで来たときでしょうか。
    突然、先を行っていたライダーさんがはたと足を止めました。

    「妙に人通りが少ないとは思っていたけれども・・・・・・見つかったか!」

    一瞬何を言っているのか理解できなかった私でしたが、すぐにハッとしました。
    ここに至るまでの20分ほどの道のり。その途中で確かにまだ誰ともすれ違っていません。
    いくら中心部から離れているとはいえ、ここは観光地。まだそこまで遅い時間でもありません。これだけ歩けば、1人2人くらいには出会って当然とも思います。
    表情をこわばらせたライダーさんの様子からいっても、敵の魔術師が人払いを済ませていたという事なのでしょう。

    『命がけで戦う』。ライダーさんはそう言っていました。
    これまでどこかテレビ番組の設定のような気持ちで聞いていたこの言葉が急に現実的に感じられ、心臓の鼓動が早鐘のように響きます。

  • 26ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:16:56ID:AxNjg5Mzc(4/5)NG報告

    >>25
    ナイフのような緊張感の中、通りの向こうから2人組の人影が現れました。
    ギラギラとした獣のような男の人と、穏やかな雰囲気を纏った男の子。
    ライダーさんがさっと私をかばって立ちふさがりましたが、男の人は拍子抜けしたような声を上げました。

    「なんだ、随分弱そうな連中じゃねぇか、オイ。殺意がまるで感じられねえ。マジで戦争の参加者なのか?」

    一瞬、人違いであるところの状況を期待したのですが、男の人はすぐに鋭い爪を構えて、口角をギッと残酷に吊り上げました。

    「まあ、サーヴァントを連れているってことは間違いないんだろ。オレのアドニスを脅かそうとするやつは例外なく全排除だ!」

  • 27ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:21:17ID:AxNjg5Mzc(5/5)NG報告

    >>26
    以上です。

    市街地での正面からの戦闘。
    ルドルフ2世の初手は、目先の脅威と判断したジェラールに向けて金糸で編み上げた無数の鎖付き楔を飛ばします。
    来野を守りつつの撤退戦を意識しているため、可能な限りアウトレンジからの攻撃を行い隙を見ます。

    山星さん、よろしくお願いします!

  • 28第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:49:53ID:I3ODU1MDg(1/14)NG報告

     鏡のようなものを見ているのかと思った。
     どこか私に似ていて、どことなく私と違うそんな女性の夢。
     彼女は私と違って可憐で、華やかで、とても可愛らしくて。
     隣にいる彼が笑うのは、当然のようなことに思えて。
    「アー……チャー……」
     目が覚めて最初に出たのは、そんな力無い言葉だった。
     全てを見ていた。パスを通して知覚していた。
     彼の生き様を。彼の王道を。ファラオという一つの在り方を。
    「アーチャー……アーチャー……アーチャー……ア、メン……」
     私を守ると、共にあると誓ってくれた弓兵(かれ)は、狂戦士(へび)と相打ちになった。
     彼女が……クローディア嬢が隣で寝ていることを忘れてしゃがみこみ、そのまま泣き崩れる。
     手放したくなかった。失いたくなかった。私の起源は譲渡。それは理解していたつもりだけど、まさかここまで無くすなんて思ってなかった。
     ……本当に、笑わせてくれるわ。
     まさか勝ちまで『譲る』ことになるだなんて、誰も思わないじゃない。
    「本当に、馬鹿な女……」
     何も、何も出来なかった。
     共に戦うことも。勝利に貢献することも。彼が聖杯を手に入れる一助にすらなれなかった。
     彼には与えられてばかりで、何かを与えることが出来なかった。

  • 29第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:52:28ID:I3ODU1MDg(2/14)NG報告

    >>28
    「何が譲渡よ。馬鹿じゃないの。肝心な時には役に立たないくせに」
     口から出るのは呪いに濡れた言葉ばかり。
     ああ、本当に。この感情が私を塗り潰して、息の根を止めてくれたらいいのに。
    「そう泣くな。せっかくの美人が台無しではないか」
     私は馬鹿で。どうしようもなく、最低な女で。
     だから、掛けられた声に即座に反応することが出来なかった。
    「アー、チャー……なんで、どうして……」
     テラスに立っていたアーチャーの姿を目視して、慌てて表へと飛び出した。
     貴方は消えた、倒されたはずじゃ。それだけの言葉がどうしても口に出来ない。
     だって、それを言ったら……私たちの、ううん。彼の負けを、認めてしまうことになるから。
    「……曲芸。見事なり。シズカ、汝はな。あの直前で余との契約を断ち切った……それに汝の起源が加わり、今の余は、この地の聖杯と契約を結んでいる。とは言っても、あまり猶予はないのだがな」
    「……そう。どうしようもないとは思ってたけど、土壇場で仕事をしたのね。私の起源は」
     ということは……あの人が、きっと彼の妻。
     彼の夢を見たということは、大なり小なりまだ繋がりがあったというわけね。

  • 30第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:52:53ID:I3ODU1MDg(3/14)NG報告

    >>29
    「うん? ……汝と起源の間にどのような悶着があったかは知らぬが……まあともかく、だ。
     ―――ごめんよ、シズカ。僕は負けた。サーヴァント失格だ」
     頭を下げる少年王。歳も変わらず、背丈もほぼ私と同じ子供。この小さな身体に、私は幾度となく助けられてきた。
     少年王ツタンカーメン、18王朝を収めたファラオ。幾度となく戦場を駆けたその背中が、小さく震えていた。
     ―――私は、彼にどれだけの重荷を背負わせていたのだろう。
     ―――私は、彼にとってどれだけの重荷となっていたのだろう。
    「そんなことはない!」
     その華奢な肩を掴み、私は思いの丈を吐き出した。
    「貴方に出会えてよかった。貴方と戦えてよかった。私は不出来で、みっともないマスターだったけど、貴方への想いは誰にも負けてないつもり。そこだけは、誰にも譲らない」
    「そうか……それは良かった。感謝するぞ、マスター。
     余は―――いいや。僕は、君という女性を誇りに思う。
     君に出会えたこと、君と戦えたことは僕にとってとても幸福だったさ……君は似ているんだよ。アンケセナーメン……僕の、かつての妻だった女性に。
     ああ、ごめんよ。もう少しだけ君の助けになりたかったけど、これでお別れだ」

  • 31第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:53:14ID:I3ODU1MDg(4/14)NG報告

    >>30
     消えていく。アーチャーが、アメンが消えていく。
     こんな状況でも私は何も出来なくて、ただ思ったことを口にすることしか出来なかった。
    「……十分、よ。十分なくらい、貴方には助けられてもらった」
    「そうかい? ……そう言われると心配だな。僕がいなくなって、朝起きられるといいんだけど」
    「大丈夫よ。元々一人だったんだから」
    「朝起きて、着ていた服を脱ぎ散らかすというのは……」
    「そ、それは貴方が脱がしただけでしょう!?」
     馬鹿。本当に馬鹿。私の初めて返しなさいよ。
     最後の最後までこんな調子。出会った時と何も変わらない―――今では、永遠に続くことを願ってしまうような時間。
     だからといって、こんなことをいつまでも続けるわけにはいけない。
     私は生者で彼は死者。こうして交われたことが本来なら有り得ないのだから。
     呪う、ということは魂から零れた感情を以てこの世界に働きかけるということ。
     魂というカタチに触れる私達は、死者と生者の境を厳守しなければならない。

  • 32第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:54:06ID:I3ODU1MDg(5/14)NG報告

    >>31
     日が昇り、朝焼けの光が私達を優しく照らす。
     聖杯大会中は太陽を見ることがあまり出来なかったから、その光はまるで施しのようだった。
     それでも。不思議と懐かしくは感じなかった。
    「ファラオというのはラーの息子、太陽を司るものなんでしょう? もう少し発言に清くありなさいよ」
     ……きっと、貴方がそばにいてくれたからね。アーチャー。
    「確かに君の言う通りだが……今の僕がファラオを名乗るのはおごがましい。僕はアーチャー……君を守る、ただ一人のサーヴァントさ」
    「羞恥心とか無いのかしら……じゃあ、私も言わせてもらうけど」
    「うん。どうぞ?」
    『今までありがとう。貴方に出会えて良かった』
     それだけを。ただそれだけを伝えればよかったのに。
     振り絞って、振り絞って、振り絞って振り絞って振り絞って。
     出たのは、あまりにも単純な言葉だった。





    「―――アーチャー。貴方を、愛しています」

  • 33第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:54:40ID:I3ODU1MDg(6/14)NG報告

    >>32
     私は何も出来なかった。
     貴方に何かを与えることが出来なかった。
     元々私に与えられるものなんてたかがしれていて―――あとはもう、この心しか渡すものがない。
     私の心を貴方に差し上げます。アーチャー。
     貴方さえ良ければ、どうかこの思いを受け取って欲しい。
     十七年間の集大成とも言えるような、一世一代の大勝負。
     そんな言葉に、彼は。

    「―――シズカ。僕も、君を愛している」

     いつもと同じ表情でそんなことを返してきた。
     その変わらなさに、私は不覚にも笑ってしまって。

     瞬き一つか二つの刹那―――彼は消えてしまっていた。

  • 34第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:55:10ID:I3ODU1MDg(7/14)NG報告

    >>33
    「本当に……貴方は、最後まで変わらない……」

     サーヴァント、アーチャー。ツタンカーメン。
     あまりにも劇的だった彼との出会いは、その最期の瞬間までもが絵画のようだった。
    「……ありがとう。アーチャー」
     ツタンカーメン。偉大なるファラオ。ラーの息子。太陽のような人。
     私はこれからも進んでいきます。貴方との出会いの全てを胸に抱いて。
     前を向いて、まっすぐに―――こんな私のことを誇りと呼んでくれた貴方の顔に泥を塗ることがないように。
     私はきっと迷いません。私の胸の中には貴方がいる。
     貴方が私の進む道を照らしてくれる限り、私はきっと大丈夫。
    「貴方は、太陽。これからも貴方は私を照らしてくれる……そうでしょう? アーチャー?」
     朝の強い日差し、アメリカ独特の気候を肌で感じながら私はそんなことを何ともなしに呟いた。
     誰も聞くものがいないはずの言葉。そんな独り言に……

    『無論。余は汝の従者である故にな。マスター』

     いつかどこかで聞いたような言葉が、耳をくすぐった。

  • 35第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:55:58ID:I3ODU1MDg(8/14)NG報告

    >>34

     その日、夫婦の元に一通の手紙が届いた。
     夫婦は中を開き、たいそう喜んだという。
     さて。その内容とは……?

    『親愛なるお父さんとお母さんへ。お久しぶりです。静香です。
     詳しく話すと長くなるので手短に済ませますが、以前話していた古書堂の件について前向きに考えてみたいと思います。
     大事なことと思うので、先んじて手紙を送らせてもらいました。また今度電話をしようと思います。言質が欲しいならこれを使って好きなだけ呪術をかけてください。
     私は逃げも隠れもしませんから、どうぞお好きなように。
     それと、年明け前には一度帰国しますので。話はその時にでも』






    第一回聖杯大会・5日目早朝

    アーチャー(2騎目)陣営/エピローグ『曙光の別離』End.

  • 36第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:56:14ID:I3ODU1MDg(9/14)NG報告

    >>35
    以上です

  • 37魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:37:37ID:A0MjE3MDM(1/5)NG報告

    vs山星不湯花&キャスターの続きです。 


     相手を打ち倒すための宝具同士の鍔迫り合いであるならば、神秘の寡多はあれど、より深く踏み込んだ方が押し込めるものである。
     百鬼夜行のもののけたちへと神代の毒が浸透していく。
     しかしながら、届かない。それはまるで上流から下流へと向かう川の流れに逆らうようにして槍と毒が浸透していくが、大きな流れは変わらない。
    「っつぅ…………!!」
     ランサーはさらに空中で槍を投擲する。杭打ちのように射出された槍は毒の魔力を推進力にして、穂先で百鬼夜行をかき分け撃ち抜いた。
     駆け抜けた槍は群を抜け空を裂き、しかしながら何にも突き刺さることなく飛んでいった。
    「割に合わない……!」
     つまるところ、キャスターとそのマスターを取り逃したのだ。

  • 38魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:38:40ID:A0MjE3MDM(2/5)NG報告

    >>37
     ところで。一方で、あった。
     空中に向けて思いっきり投げさせた上に、キャスターによって喚起状態を解除させらものだから、ただの魔術師に戻った青年がまっさかさまに墜落した。
    「あでっ」
     まずひっくり返ったせいで肩から地面に激突して、
    「ふげっ!」
    そのままバウンドして、
    「ほでっ……!」
    3回目でごろごろ転がって、ルーカスはようやく地面にくっつくことができたのだった。まあ相当に格好は悪いけれど、とりあえずオーディエンスは退場したであろうし、観客に見えない位置ならいいだろう。ストーリー・アウト。ここからは幕外のことである。
    「いっ…………いだだだだ…………」
    「……済まない、仕損じた」
     ランサーは地面に刺さっていた槍を拾い、マスターの元へと歩いてきた。すでに限界まで高められていた敏捷のステータスも、もとの、(それでもランサーらしく高いのだが)数値に戻っており、それも含めて戦闘が終了したことを両者に理解させていた。
     ルーカスは仰向けに転がってぴくりとも動かない。
    「マスター……マスター?」
    「……………………た」
    「もしかして、立てな」

    「逃した逃した逃した逃した逃した!逃したぁ!!」
     打って変わって仰向けのまま、ルーカスがじたばたと手足を振り回す。先ほど地面に激突した肩や、戦闘中に負傷した腹部はやや庇いながら、とにかくじたばたしていた。
    「あああああああああ逃したぁぁ!!!仕留め損なったああああ!!!!」

  • 39魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:39:14ID:A0MjE3MDM(3/5)NG報告

    >>38
     ランサー・テレゴノスは、はぁ、とため息をつく。
    「思いのほか元気そうでよかったよマスター」
    「いやあランサー、そこまで元気ではないかな」
     とりあえず呪詛だけは解析して外しておくよ、と言うと、魔術師の両腕の魔術刻印が明滅を始めた。黄泉比良坂が展開されて、神の光を喚起するまでの間に受けた亡霊たちからの呪詛を、一つ一つ解析して、知恵の輪を外すようにほどいていく。最初にキャスター側から雨のように降り注がれた攻撃や、終盤に全員が揃った状態でキャスターから撃たれた乱撃を全回避させたタネもここにある。
     つまりは、光量子を用いたフォトニック・コンピューターのまねごとである。
     魔術師の魔術回路はスマートフォンに匹敵するほどの演算機能を持たせることができる、なんてことを誰かが言った。携帯端末は単なるトランシーバーでは無い。持ち歩きの可能なコンピューターである。魔術師はそれを体内に内蔵出来る上、ルーカス・ソールァイトはさらに光素を用いることでさらに演算機能を増産している。
     結果として、ちょっとしたルームくらいのコンピューターのスペックを出力することが出来ているのだ。解析、演算、資格情報を与えられた上での分析ならば、個人で相当なことまで出来てしまう。
    「ん……解けた。それでダメージがなくなるわけでは無いのだけれどさ」
     ルーカスが体を起こす。ホコリを払って立ち上がる。

  • 40魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:40:10ID:A0MjE3MDM(4/5)NG報告

    >>39
    「だから言ったのに。とりあえず直感的にも早々に退かせておいた方がいいんじゃないかと」
    「いやいや、とりあえずも何も、セイバーもアーチャーもライダーもキャスターも、全員僕たちで始末するんだよ、ランサー?」
    「全員がバトルロワイヤルをやっている中でうちのマスターだけは勝ち抜き戦をやっておられる」
    「うん?本当なら同じことだよ?僕が本当に強ければ」
    「はぁ……君は勝つ上では良いマスターかも知れないが、生き残る上でははずれだよ。まったく」
     言われる当の本人は気にせず体を伸ばしている。
    「それにしてもキャスターのマスターは興味深い…………人間でないと意味がない僕の決戦術式(ワールドエンド)に引っかかっていたのに、人でない部分もあるようでいて、うん…………おもしろい」
     こくこくと1人で勝手にうなずいてランサーの方に向き直る。
    「また、やるのかい?」
    「うん。またやるよ?出来れば今からでも追いかけ回したいくらい」

     リスクマネジメントが出来ていないうちのマスターは、きちんと手をかけていないとでしゃばりで死ぬ。
     ランサーはそう理解してルーカスに肩を貸した。

  • 41魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:40:33ID:A0MjE3MDM(5/5)NG報告

    >>40

    「あぁ……ところで、僕が導くに足るような英雄がその辺に転がってはいないものだろうか」
    「そこらで拾うより君がなった方がよほど早いのでは?」
    「ランサーは馬鹿だなぁ、この手のものは魔導士が自分でなるなんて言ったらひどい目に遭う前フリと同じなんだよ」
    「あと交戦していないのはどこだったかな、セイバーとライダーには仕掛けた後にキャスターの方から来てくれて手間が省けたわけだから」
    「じゃあ次バーサーカーだけ早々に始末したら面倒になる前にアサシンを仕留めておこうかな」

     キラキラと今後の展開を語る。
     彼にはそれを実現できるだけの実力はあるのだから。



           Battle_is_over.
           Lancer_and_Master_outed.

  • 42亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/01/09(Sat) 20:17:08ID:EzMTM3Mjk(1/6)NG報告

    暗殺者が握る黒いナイフは不規則な軌道を描いて此方を刻もうと迫り来る。
    とても捉えどころがなく、一定の形を有さない。まるで黒いガスか雲のように、勝ち筋を掴み取ることが困難な戦い方をしてくる。


    決して強い訳ではなかった。
    アサシンの霊基は不安定で、それは先程対峙した亥狛も知るところだ。
    けれど目の前で刃を振るう彼女にそんな素振りは見られない。ただ純粋に不気味で、底知れなくて、怪人という名に相応しい。


    アサシンは軽く肩で息をしてからナイフを構え直す。
    ランサーは彼女の一挙手一投足を見逃すまいと、集中力を研ぎ澄ます。
    二度不覚を取った相手に油断などない。
    たとえ戦闘力は此方が上手であろうと、向こうには自分達が予想だにしない戦略の幅があるし、なりふり構わない分非道な手段も厭わない。

  • 43亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/01/09(Sat) 20:18:06ID:EzMTM3Mjk(2/6)NG報告

    >>42
    基本的に、戦闘は非情な者ほど強い。
    こだわりがなく呵責もない方が取れる戦術が純粋に多くなるからだ。
    騎士道に重んじ、精神の高潔さが戦闘力に直結しているランサーはそういった点でいうなら特別使い難い類の英霊と言えよう。

    「──────、」
    黒い刃が光る。
    手に持ったナイフをランサーに投擲したアサシンは、彼女の槍がナイフを弾くタイミングに合わせて胸許まで入り込んだ。
    「ばーか、隙だらけだよん」

    背後に忍ばせたもう一本の凶刃を、今手に持ち、ランサーの頸筋に正確に突き立てる。



    突如。
    アサシンの視界が激しく揺さぶられた。
    うっかりカメラを落っことしてしまったみたいに、目の前の世界がぐるぐる揺れる。
    同時に顎に走った鈍痛。
    それはアサシンが何らかの手段で吹き飛ばされた事実をまざまざと思い知らせる。

  • 44亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/01/09(Sat) 20:18:46ID:EzMTM3Mjk(3/6)NG報告

    >>43
    停止仕掛けた思考を叩き起こして、体制を整える。
    アサシンが涙目で睨むようにランサーを見つめると、彼女は膝を高々と上げていた。
    「テンカウ(膝蹴り)とか騎士道としていかがな訳!?」
    「蹴り技上等、モードレッド卿直伝の喧嘩殺法です!
    …私も騎士としてどうかと思いますが、貴女にはこちらの戦闘法のが有効とみました」

    そういうか言わないか、ランサーはアサシンとの距離を詰める。
    休む暇は与えない。
    逃げる暇は与えない。
    吐く息一つ許さず、反撃の糸口さえ手繰らせない。
    銀色の連撃は少しずつだが確実にアサシンの身体を消耗させる。


    戦術の幅に差があるなら、思想の都合上外道になれないのなら、それを補って余りある強さを持てば事足りる。
    円卓の面々を始めとする騎士達はそういった理念の元鍛錬を続け、過酷な旅をやり仰せた。

    ならばその末端に座すガレスもその例に違わず────有無を言わさぬ強さをもって、敵の奸計を薙ぎ倒す。

  • 45スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 22:58:04ID:AwNDEyMzI(6/10)NG報告

    第■回、時間進めます。

  • 46スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 22:58:32ID:AwNDEyMzI(7/10)NG報告

    『……市在住の岩野栗太さんと薩摩豪さんがさつ害された事件で警察は昨日、無職の赤城疾風容疑者を逮捕し……』

     テレビからニュースの音声が聞こえてくる。
    というのも、拠点から脱出した俺達は近場の小さな家電店に緊急避難したからだ。
    運営の人払いにより店内には誰もいないとはいえ、こんな所に隠れているとは思わないだろう。
    しかし、さっきの容疑者の名前って実家と同じ街の魔術師だったような……魔術自体はバレてないみたいだし、まあ良いか。

    「さて、俺は行ってくる。マスターは此処に居ろよ」

     と言って、アサシンは店を出て駆け出す。
    唯一生き残った弟、ドゥフシャーサナへ加勢するために。

  • 47スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 22:59:57ID:AwNDEyMzI(8/10)NG報告

     屋根の上を駆け抜ける。
    目標はビルの屋上……跳躍して、ドゥフシャーサナが足止めしてる奴に鎚鉾を振り下ろす。
    とはいえ、屋根を飛び移りながらでは流石に狙いが甘い……軽く避けられた。

    「初手から人の家潰すとは……やってくれるじゃねえか」

    「新手……いや、そちらが本体か」

     ヨーロッパ辺りの軍服を纏い、二角帽を被った男装の麗人……クラスは恐らくアーチャー。
    その真名は、マスターがすぐに見抜いていた。

    『あの帽子!?それに大砲まで……ナポレオン、そいつはナポレオンだ!』

     ナポレオン・ボナパルト……フランスの英雄。
    目の前に居る奴の戦慣れした感じからしても、恐らくは正解……しかし、どこか得体の知れない悍ましさを感じる。
    けど、考えるのは後だ……アーチャーが引き抜いたサーベルによる斬撃を鎚鉾で受ける。
    続いて放たれた蹴りを避けつつ下段に構え……鎚鉾の振り上げからの突き、そして背中を向ける程に大きく振りかぶってからの横スイング。
    だが、相手のサーベルも伊達じゃない……攻撃を全て受け流された。

  • 48スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 23:01:42ID:AwNDEyMzI(9/10)NG報告

    「チッ、アーチャーの癖にセイバー並かよ」

    「そちらこそ、残ってるクラスからしてアサシンといった所だろうに」

     これだけの攻防で互いの実力を読み合う……小手調べは此処までだ。
    俺は側転の要領で鎚鉾の振り上げと蹴りをほぼ同時に行い、着地と同時に鎚鉾を左右に振るう。
    それらを全て避けきったアーチャーに対して更に鎚鉾を振るい、そのまま突きを放つ……が、有効打には至らない。
    そんな中、ドゥフシャーサナとアーチャーのマスター、和銀京郎が動き出した。

    「アーチャー、支援しますよ」

    「邪魔はさせねえぞ!」

     アーチャーのマスターこと和銀京郎が手鏡を取り出し、ドゥフシャーサナの矢がその手鏡を粉砕する。
    鏡を媒体に魔術を行使するようだが、発動前に鏡を割れば良いだけの事。
    それを尻目に鎚鉾をアーチャーに振り下ろし、それを受け流したアーチャーが体制を整える間に上段に構え、振り下ろす。
    ドゥフシャーサナの矢がアーチャーの退路を絶つ中、鎚鉾とサーベルが打ち合った。

  • 49スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 23:03:43ID:AwNDEyMzI(10/10)NG報告

    以上です。

    魔術の痕跡は完璧に消せたのに、科学捜査で普通に逮捕された魔術師が居たようです。

  • 50スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/20(Wed) 23:05:53ID:U2MzU4MDA(1/3)NG報告

     目を開けると、何処かの病院らしき部屋だった。
    私は、確か屋敷に攻め込んできたサーヴァントと遭遇して、令呪を……。

    「お目覚めになりましたか?檜葉靖彦さん」

     そこで漸く、この部屋に誰かが……いや、アンジェリーナ・コスタが居る事に気付いた。
    しかし、何だこのプレッシャーは……彼女は所詮表の世界にかぶれた小娘でしかない筈。
    得体の知れない恐怖の余り、思わず袖を捲って右腕を見るが、そこに有る筈の預託令呪は無かった。

    「預託令呪なら、小聖杯が貴方の元から奪われた時点で私に移るようになってますので……ええ、勝手な事を困りますもの」

  • 51スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/20(Wed) 23:06:59ID:U2MzU4MDA(2/3)NG報告

     まさか、全部バレている!?
    この私が掌の上で踊らされていた……だと……!?
    私は咄嗟に歌魔術を使おうとして……激しい胸の痛みで大きく息を吸うことさえ覚束ない。

    「あら、言い忘れましたけど肋骨が何本も折れてますので、余り喋らないほうが良いですわよ。さて、私達は、正当な勝者から報酬を掠めとろうとするものに容赦はしませんので……ええ、速やかに……」

     いや、歌えたところでどうしようもない。
    痛覚を刺激する歌では彼女には通用しないし、私の歌が起こす魔術的防御では良くても死ぬまでの時間が延びるだけだ。
    おのれ、嘗ての名門たるハルピア家が……時計塔を追われても檜葉家と名を変え、以前の管理者である大文字正義を家系ごと潰し、それでも刃向かってきた星野家を滅ぼし、この地の管理者となった我が家系が……こんな、こんな所で……。

    「処分されて下さいませ」

  • 52スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/20(Wed) 23:07:50ID:U2MzU4MDA(3/3)NG報告

    というわけで、管理者の末路でした。
    時系列的には三日目の午前になります。

  • 53膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:39:35ID:YwNTU3ODY(1/5)NG報告

    「あぁ、すいません。私ばかり話してしまって」
    「いえいえ、問題ありませんよ。人と話す事には精神を安定させる効果もあります」

    そう言って西行は続けて?と促す。歓談による精神的効果もあるがこの調子でこの異聞帯の事を聞き出すことも目的だった。
    実際その後火の着いた様に話し出したミュンヘンからは有益な情報も幾つか聞き出せた。
    王国軍の兵達は『亜人兵』と呼ばれていてそれぞれが五種族から更に遺伝子操作によって創り出された屈強な戦士たちであること。ミュンヘンの夫は退役した亜人兵であること(この際「夫は国よりも自分を守ると言ってくれた」等と盛大に惚気られた)

    そして夫との馴れ初めから楽しげに話し始めたミュンヘンを見て二人は情報収集を切り上げ、暫く聞き手に徹する事にした。
    しかし楽しい時間はそう長くは続かず、時系列が現在に近付くにつれてミュンヘンの顔に陰りが見え始める。

    「夫は私とミュウから変異種を遠ざける為に一人で戦って……変異種と相討ちになって、命を落としました。あとは皆さんが知るように病弱な私を養う為にミュウは命懸けで魔獣を狩るようになって…
    本当はあの時、私が死.ねば良かったんです。いえ、今からでも私が死.ねばあの子は無理に魔獣を狩らずとも王都でも何処でも行けるのに…」

    それは、これまで話し続けたことで勢いに乗り口をついて出てしまった秘めた本音。自分の為に我が子が危険を冒す事が、自分が娘を縛り付けている事が耐えられないという母親としての言葉。それは一概には間違いと言えないかもしれない。しかし

    「──それは、違いますよ」

  • 54膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:39:58ID:YwNTU3ODY(2/5)NG報告

    >>53
    ミュンヘンと三号が顔を向けた先にはそれまでの人あたりの良さそうな表情が抜け落ちた西行が居た。

    痛々しいほどの沈黙が場を支配する。
    ミュンヘンの喉から「ひ」と引きつったように息を呑む声が聞こえたところで、見かねた様子の三号があえて大げさに椅子を鳴らし立ち上がった。
    「……マスター・キャスリーン。相手は患者です」
    「………そうですね」
    西行が静かに顔を抑え、その手が離れた時には、今一度しっかりと優しい微笑みを貼り付けていた。
    先程までの沈黙はまるで幻だったのではないかと思わせるほどに、欠陥の見当たらない穏やかな笑顔。しかし部屋の温度が下がっている状態であることは依然変わりない。

    「……少し、外に出ますね。あとはよろしくお願いします」

  • 55膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:40:29ID:YwNTU3ODY(3/5)NG報告

    >>54
    「あまり気にならさないでください。少し体調を崩しているようです」

    退出した西行のただならぬ振る舞いに慌てるミュンヘンに、3号は柔らかく諭す。
    3号にとっての西行は生みの親であり、迷宮の如き精神構造をした上司でもあった。
    その複雑怪奇な在り方は付き合いが長い3号にすら全貌を把握出来ているものではなく、今は当たり障りの無い言葉でお茶を濁すほかなかった。
    そして―――ミュンヘンのその言葉は、他ならぬ3号にも逆鱗となる。

    「ところで、今の言葉の意味を詳しく聞かせていただいても?」

  • 56膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:40:46ID:YwNTU3ODY(4/5)NG報告

    >>55
    「意味、と言われましても…」

    少し考え込んだ後ミュンヘンは改めて3号を見る。

    「本来、弱肉強食のこの世界で私のような病弱な者が生きているのがおかしいんです」

    それからミュンヘンはこの二年間自分がいるせいで娘を縛り付けているのではないか等の思いの丈を論う。しかし対する三号の中では呆れを超えて怒りすら浮かんでいた。

    ミュンヘンの言っていることは結局は死ん.で楽になりたいということに他ならず、娘であるミュウ本人の気持ちを考えていない独り善がりなものである。その上治る気がない患者にはどんな治療を施しても治るものも治らない。

    「本当に、死ん.でもいいのですか?」

    三号がミュンヘンの話を遮り放った言葉にミュンヘンがびくりと体を震わせる。

  • 57膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:40:55ID:YwNTU3ODY(5/5)NG報告

    >>56
    「あなたはさっき旦那さんが亡くなった事に涙しましたがそれはミュウちゃんもまたお父さんを亡くしたということ。あなたはミュウちゃんに父親だけでなく母親も亡くさせたいのですか?

    ミュウちゃんの事を思うのなら、生きてください。あの子だってあなたを見捨てて楽に生きるよりも大変でもあなたと一緒に生きたい。そう思ったから今の生き方を選んだんでしょうから。
    身体を治して健康になって、一緒に狩りをするなり王都へ行くなりする。ね、その方がずっと良い。」

    三号がゆっくりと言い聞かせるように話していくと徐々にミュンヘンの目に涙が浮かんでくる。涙はやがて目の端から零れ、口を押さえて泣きじゃくる。

    「私…本当に治るんでしょうか…?」
    「ええ、治します。どんな手を使ってでも。ですがその為にはまずあなたが治ろうとする気概を見せなければ」

    ミュンヘンは頷き涙を拭うと椅子から立ち上がる。その表情は晴れやかで先程まで思い悩んでいたのが嘘のようだ。

    「私、西行さんに謝ってきます。それから改めて私のことを治してくださいとお願いするんです。
    ミュウのためにもどんなに苦い薬でもどんなに痛い注射でも頑張りますっ」

    そう言ってぱたぱたと走り去って行くミュンヘンを見送り、三号はこれから必要になるであろう医療器具や薬品を取り出しながら通信越しに一連の流れを聞いていた西行の様子を伺うのだった。

  • 58伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:16:58ID:Q1NDkxNzA(1/14)NG報告

    >>44
    打ち合いを始めておよそ数分が経った。
    迅速なるランサーの槍撃。それを避けて再び攻撃に移ろうとするアサシン。
    互いに決め手に欠け、睨み合いが続き、戦況は硬直している。
    何も知らない第三者ならそう判断するだろう。
    だが、それは突然だった。

    「ぐっ…!?」

    空中で、静止したかのようにアサシンは硬直する。まるでアサシンの周りだけ重力が増えたかの如く、そのまま力無く落下した。
    驚きの声を漏らしたのはランサーと亥狛だけでは無い。アサシン本人もだ。

    「あぁ…そうか…もう限界か…」

    金色の粒子がアサシンの手足の先から溢れ、空へ溶けていく。霊基の崩壊。サーヴァントとして、現世からの消滅が近い証だった。
    普段のうるささは鳴りを潜め、ただ茫然と消えていく己の体を見つめるアサシン。依然としてランサーは構えを崩さないがアサシンはそんな事は気にせず座り込む。

  • 59伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:17:18ID:Q1NDkxNzA(2/14)NG報告

    >>58
    「まぁいいさ。好き放題…やってやったんだ。ははは!私の勝ちだ!みんな苦しんだ!私は有名になれた!!」
    「…介錯は不要のようですね」
    「ふん、もう聖杯なんてどうだっていい。精々君達も生き縺後s縺ー繧!?!!てて0÷87pはみpま'7078.8.0888.j4たなたららららららららららららららられられららららら」

    聖杯戦争とは狂気の儀式。
    一秒先の予測すら不可能といっても過言では無い。
    そう、この場合は誰もが気に留めていなかった彼の介入だったが。

  • 60伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:17:53ID:Q1NDkxNzA(3/14)NG報告

    >>59

    「………」

    アサシンがランサーのマスターを攫ってから数分。ウィリーは場所を移動することもなくその場にいた。
    使い魔にあるまじき自我の確立。魂単位での悪性。そして活動をすればするほど進行する霊基の崩壊。
    アサシンは、聖杯戦争を勝ち残る上ではあまりに『ハズレ』といって差し支えの無い要素の塊であった。
    湧く情も無い。

    「これ以上は無意味だ」

    そして、既にウィリーはこの伏神での聖杯戦争から降りるつもりであった。脱落者も増えてきた現状では、マスターを失ったサーヴァントが都合良くいるとは思えないし、何よりあの影のような存在は気がかりであった。
    あのようなイレギュラーがいる以上、聖杯も正常に活動しているとは考えづらい。
    …時間の無駄だ。起源が示した目的を達成するためにこれ以上、不確定なことに余計な時間は割けない。寿命を得る方法も世界を探せばきっと見つかるはずだ。

    「惜しいことをした」

    この手で拷問し、殺したライダーのマスターを回顧する。きっと他の記憶と同様、永遠にウィリーの中には残り続けるのだ。
    最も、彼は今更こんな事では顔を歪めたりはしないが。

  • 61伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:18:14ID:Q1NDkxNzA(4/14)NG報告

    >>60
    「あぁ、そういえばこれがまだあったな」

    左手の内側に発現した令呪を見やる。アルファベットのような形で構成されたそれは、一度アサシンに使ってからそれきりだ。
    解析し、蒐集したくもあるがこの街を出れば消えてしまうし残ったとしても預託令呪として監督役の元に行くだけだ。

    「………」

    ならばこの手で使い、その効果を知るべきだろう。彼の中に唯一残っている人間らしい感情、魔術への興味心が鎌首を上げる。
    例えば霊基の格が低いサーヴァントには令呪がどこまで通用するのか───

    「令呪を持って命ずる」

    …本当に興味心だけだろうか。どこか、色素の濃い感情も混じってるように思えた。

    「アサシン。お前の可能性を全て見せてみろ」

    少なくとも穏やかな最後など、悪役には相応しくないだろう。

  • 62伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:18:34ID:Q1NDkxNzA(5/14)NG報告

    >>61

    マッドガッサーの正体は諸説ある。
    男であったり、女であったり、改造生物であったり、サイボーグであったり、はたまた宇宙人という荒唐無稽なものまで。
    共通項が見当たらない数多の正体は当時のアサシンの犯行が鮮やかであることを示すが、霊基の不安定さも示している。
    スキルである『可能性の闇』を持って制御しているそれが今、マスターの令呪によって全て同時にこの世界へと引き摺り出された。

    「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️────!!!」
    「何だ、あれ…」

    亥狛は本能的に思わず後退りしてしまう。
    アサシンの体のシルエットが無くなったかと思えば不定形に歪む。そして腕が何本も飛び出してきたかと思えば蒸気が噴き出し、触手が地面を這いずり回る。
    瞬く間にアサシンはアサシンで無くなってしまった。

    「⬛️⬛️⬛️⬛️!?⬛️⬛️⬛️⬛️!!!⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️!!!」

    完全に霊基が崩壊しきっても尚、令呪による強制力と魔力によってアサシンは現界をし続けていた。抗えるほどの霊格を持たないアサシンの自我は完全に無くなり、抑えきれない衝動のままに暴走するだけだ。
    プライドのある怪人では無く、ただの怪物がそこにはいた。

  • 63伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:19:23ID:Q1NDkxNzA(6/14)NG報告

    >>62
    「⬛️⬛️⬛️⬛️!!!」

    闇雲に振り回された手がコンクリートの地面を叩く。
    それだけで建物全体が揺らぎ、亥狛は思わずよろけてしまう。
    ここに長くいては危険だと判断し、視線を左右に振るが咄嗟に飛び移れそうな場所は無い。
    するとランサーが亥狛の横に並び立つ。

    「イコマ、ここは私に任せてください。一撃で終わらせます!」
    「…あぁ、任せた!!」
    「はぁっ!!」

    二人を潰すべく伸ばされた巨大な腕を飛んで躱し、そのままランサークラス特有の迅速さで腕を登って怪物の頭の上にまで到達する。
    そして槍を両腕で構えた瞬間、白亜の光が強まり輝きを放つ。

    「参ります!!我が全てを輝きへ!!信じるものを貫くため!!無穢なる誓槍(ノゥブル・マナス)!!!」

    宝具の真名解放。
    それは今までとは桁外れの強さをサーヴァントに与える。悪と名の付くモノはその槍の前に、消滅するしかない。

  • 64伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:19:46ID:Q1NDkxNzA(7/14)NG報告

    >>63
    「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ーーー!!!」

    目の前の脅威を感じ取ったのか怪物も触腕を振り回して反撃に出るが、ランサーに触れようとした端から浄化されるかの如く消えていく。
    人に害をなす悪という可能性を保有する怪物と、善性の結晶であるランサー。相性は正しく最悪であった。

    「これで…終わりだ!!」

    魔力の奔流を穂先の一点に集め、怪物に向かって放つ。その一撃で、伏神市の空に蔓延る暗雲は吹き飛んだ。
    そして、全てを受け止めた怪物の巨体は光の波濤へと消え失せていった。

    「これが…宝具の力か」

    改めて己がどれほど強大な存在を従えているのか、亥狛は実感した。伝説に名を刻み未来でも語られるとはこういう事だ。

    「大丈夫でしたか、イコマ」
    「あぁ。…手強い相手だった」

    アサシンとは最初から最後まで分かり合えず、言葉をぶつけ、拳を出しあった。
    だが、彼女との出会いがあったからこそ亥狛は自身の願いに対する覚悟を決めることが出来た。

  • 65伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:20:49ID:Q1NDkxNzA(8/14)NG報告

    >>64
    「…うっ」
    「私の肩で良ければ、貸しますよ」
    「ちょっとだけ…頼む」

    真名解放で一気に魔力を持っていかれたせいだろうか。少しだけ足元がふらつく。ランサーの提案に素直に乗っかる事にする。
    空に浮かぶ月明かりを、久しぶりに見た気がした。

  • 66ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:18:00ID:M4NzA5MQ=(1/10)NG報告

    「随分と………慣れてないなぁ」

    サーヴァントであると思われる方は警戒心を抱いているし、何よりこちらに手出しができるようにしているが……マスター側のなんて隙。おそらく戦い慣れていないのだと。


    「動くと痛ぇぞ」


    その言葉とともに駆け抜ける爪の軌跡が空に色を描く。飛んでくる、少女の首元を正確に狙い、そのままもぎ取ってしまうだろうと誰もが予想できるほどの死の鎌になって飛んでくる。


    「そうはさせないのがサーヴァントだろう!」
    「ええ、そしてやはり時には主を押し退けるのも、またサーヴァントでしょう」


    主人と己を守るように張り巡らされた金の楔が獣を穿たんとする時に、そこの狭間に旋風が巻き起こり、獣を吹き飛ばす。

    「………お前がやるのか」
    「ええ。相手はサーヴァント。マスターも神秘の古さで劣るとは思いませんが、いかんせん性能が違うでしょう」
    「任せよう、ジェラール。僕たちのサーヴァントは強いんだから」

  • 67ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:18:48ID:M4NzA5MQ=(2/10)NG報告

    「というわけで、こんにちは。黄金の君」
    「黄金の君というのはもしかしてルッ………私のことを言っているのかな?ふむふむ、ふむ……良い!実にいい名称だ!」
    「………喜んでもらえてよしとしましょう」

    踏み込んだ勢いを利用して繰り出された回し蹴りは巻き起こした風の後押しもあるのか素早く硬い。人間の頭なぞ簡単に蹴り潰してしまうかのように。

    「甘いぞ!その程度で負けるようではな!」

    回避行動を取れば即座に蹴りの勢いを利用してさらに強い一撃をかますつもりであったが、回避行動の一つも取らずに激しい速度でライダーは後ろに引き寄せられる。そのおかげで生じた隙を突いて編み出した金糸の殴打と刺突に阻まれ、再びアウトレンジの膠着状態へと持ち込まれてしまう。

    「………困りました。咄嗟の判断力が素晴らしい。これでは中々進みませんね。どうしましょうか」
    「その風の技を使ってみたらいいと思うよ。私は」
    「ふふ、そうですね……これなんていかがでしょうか」

    手拍子と共に噴き上がる焔。轟々と叫び暴れ狂うその紅い腕はまるで蛇のようにライダーに喰らい付く。

    「………起きよ」
    「っ……」

    爆炎は突如宙に満ちた大水によって掻き消える。息を吸うかの如く自然法則を起こすバーサーカーには、それは何かはわからなかった。

  • 68ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:19:50ID:M4NzA5MQ=(3/10)NG報告

    「空想具現化ではない……まあ、当たり前か。それにしても、今のは……」
    「余所見をしている暇はないぞー!君の手からは何か呪いに似たものを感じるけれど、だからといって当たらなければどうということはないんだからな!」
    「拳を当てても砕かれない……先ほどのやり取りでこちらの硬さを把握してそれに対応した質にしたのか?巧いですね」

    殴打をしてもぐにゃりと衝撃が逃され、引きちぎろうとするとびよんと音を立てるバネであるかのように伸びる。こちらの攻撃の仕方に合わせた対応力の高い攻撃である。


    「こっちにも飛んでくるんだが。あーめんどくさ」
    「あわ、あわわ……一つ一つはそこまでだけど……」
    アドニスを片手で抱き抱えながら拘束、もしくは牽制を試みようとする金糸を打ち砕き続けるジェラール。サーヴァント同士の戦いのそれと違ってこちらに対し傷つけようとするほどの殺意は感じないのはわかってはいるが、なにぶん面倒くさい。

    「ジェラール、離して。あの子に武器をあげに行くから」
    「………怪我したらどうすんだ、大人しく抱かれてろ」
    「過保護だよ、それは。こんな状況なら僕の方が有用だし」
    言うが速いか動くが速いか、アドニスの首から噴き出した大量の血液が刃となり金糸の鎖を断ち切りバーサーカーとの間に隙を作る。そこを逃さず、アドニスは己の腕に手を添えて……


    「剣の一つや二つ、使えるよねっ……!」

    引きずり出した腕骨を剣のように変形させて、そのままそれをバーサーカーへと投げつける。無論、その程度の速度であればバーサーカーが受け止め損ねることはない。

  • 69ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:20:18ID:M4NzA5MQ=(4/10)NG報告

    「……この骨一つで上質な概念武装に類するほどの神秘。外敵からの傷でなく、己の意志での肉体分離作動だからこそできる芸当……きっと魔力を溜めて式を発動させたんだね。だから腕も問題なく生えてる」


    剣に病を纏わせ、駆け抜ける。拳という打撃や握力という圧に耐え切れるように性質を変化させた金糸も、切断する刃物的特徴のそれの前ではまるで糸のように、などとは言わないが砕かれていっている。


    「この距離ならこっちの方が速いかな?でも、どうせ防ぐんだろうね」
    「………なんでわかったのか、不明であるな」
    「勘」

    首筋に刃が届き、柔らかい肉が裂けてしまうのかという所に、それを防ぐように鋼鉄が挟み込まれる。相当な動体視力や判断力、予見しているなどといった要素などがなければなし得ない出来事だろう。戦士の中には動体視力に優れたものも多いので参考にはならないが。
    そしてそこにカウンターとして張られていた金糸の串刺し刑とも言えるような杭……ほとんど不意打ちに近いものをライダーに距離を取られたとはいえ見越していたともいうべき避け方で躱したバーサーカーもバーサーカーである。

  • 70ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:20:37ID:M4NzA5MQ=(5/10)NG報告

    ライダー陣営に手番、お返ししますー

  • 71スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/02/02(Tue) 00:30:58ID:AwNzU4NTQ(1/9)NG報告

    来栖市北西部、大聖杯を設置するためその全域を工房化した森林地帯。
    そこを走る侵入者が二人……筋肉質な中年男性と癖毛の黒人女性。
    男の方は確か……隣町の魔術師、板野智久だったか。
    彼等を囲もうとするのは幻聴を起こそうとするものから霊障による攻撃を行うものまで多種多様な霊達。
    しかし、女が何かを唱えるとその髪が伸び、電撃を纏って霊を振り払っていく。
    見慣れぬ魔術……いや、呪術のようだが、もう関係ない。
    何故なら、たった一つの銃弾が彼女の心臓を撃ち抜いたのだから。

    「アロム!?」

     板野が女の名前を叫ぶがもう手遅れだ。
    凶器は、俺達魔術系スタッフに支給された専用拳銃。
    神秘を付与された50口径徹甲弾は、当たりさえすればサーヴァントにもダメージを与えられる可能性もあるという代物だ。

  • 72スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/02/02(Tue) 00:31:28ID:AwNzU4NTQ(2/9)NG報告

    「くそっ、魔術師がこんな物を……!?」

     腰に付けているアステカ辺りの魔術礼装らしき物のおかげか、素早い動き次々放たれる弾丸を避けていく板野。
    それと同時に、岩石を念動力の如く浮遊させ、此方目掛けて射出してくる。
    こんな苦し紛れの攻撃を喰らう部下など居ないが、流石に攻撃は途絶えてしまう。
    だが、俺が手を出す必要は無かった。

    「こ、今度は何だ!」

     剣と円形の盾を持った骸骨がこの場に現れ、板野を襲う。
    中世の兵士の人骨に霊を憑依させたそれは、生前の技量はそのままにゴーレムのように動き出し、主であるアンジェリーナに与えられた命令に従って行動する。
    そう、この森林に何十体も存在する内の一つが、此処に駆け付けた。
    そして、岩石を操って俺達を牽制するので手一杯な板野に抗う手段など残っておらず……骸骨の剣が、板野の首を刎ねた。

  • 73スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/02/02(Tue) 00:34:06ID:AwNzU4NTQ(3/9)NG報告

    以上、ふと第■回の大会中の大聖杯防衛の様子を書いてなかったのを思い出したので、小ネタとして書いてみました。

  • 74ここのえ@第■回ライダー陣営2021/02/03(Wed) 14:07:55ID:g0NDMyNDc(1/3)NG報告

    「ぐふっ……英雄どころか、それすら超える怪物とは、な……すまねえ、マスター……」
    ランサーの魔槍によってサーヴァントの魂である霊核を貫かれ、逆流する血液を吐く。ライダーの霊基を形作る霊子が霧散し続けていく。
    もう、エーテルで受肉するだけの力が無くなっている。
    「ぁっ、ライダー……」
    へたり、と地面に座り込む。
    不意に訪れた別れに、言葉も出ない。
    確かにペウケスタス自身、戦闘力に秀でた戦士ではない。
    防衛、それも主の守護という役割に特化した盾持ちであるのが彼だ。怖がりで、傷付くのが嫌な癖に、目の前で失われる命には自分の安全よりも敏感な。
    でも、こんな突然に。
    敗北という二文字を突き付けられるなんて。
    「まぁ、こんな半端者を召喚(よ)んでくれて、ありがとうな……」
    その言葉を最後に、騎兵の英霊ペウケスタスは消滅した。

  • 75ここのえ@第■回ライダー陣営2021/02/03(Wed) 14:08:15ID:g0NDMyNDc(2/3)NG報告

    >>74
    「短い間だったけど、ありがとう。私のサーヴァント」
    天を仰ぐ。
    涙の一つや二つ、流れるかと思いきや孤独が当然となった自分の心は、とうに乾いていたらしい。寂しくはあるが、哀しくはない。

    夜の暗闇に、照明の灯りが眩しく映る。
    彼らが乗っていた乗用車、あるいは輸送車の類だろうか。
    これから聖杯大会の運営者が、アスパシア一人だけが残された戦場に駆けていくのだ。
    「これからの、事。もっとちゃんと考えなければね」
    封印指定という事実上の死刑宣告を、乗り越えるための意志を振り絞ろうと、立ち上がるために膝に力を入れた。
    征服王イスカンダル麾下、例外的な八人目の側近護衛官(ソマトピュラケス)。ペルシス……ファールス州……の太守。後継者(ディアドコイ)の一人。
    エウメネスを裏切った時も、私が見た情けない顔をしていたのかな。

    「さよなら、ライダー」

  • 76ここのえ@第■回ライダー陣営2021/02/03(Wed) 14:10:08ID:g0NDMyNDc(3/3)NG報告

    >>75
    ライダー、君を追想する終幕

    以上で第■回のライダー陣営は完結です~

  • 77亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/02/06(Sat) 23:37:08ID:M3MDMyODY(4/6)NG報告

    >>65
    足元でサイレンの音がする。
    騒がしく右往左往する喧騒、その少し高いところでシスカは事態の行く末を静観する。

    アサシンとバーサーカー、二騎の怪物達は停滞しつつあった聖杯戦争を面白いぐらいに引っ掻き回してくれた。
    これで残る陣営も僅か三つ。聖杯が万能の願望器として機能してくれるまで、あと少しとなった。


    ちらちらと光る街の灯りは通常運行。
    人がばたばたと倒れ、下界は猫を放り込まれた鼠の群れの様に混沌としている筈なのに、人の世は変わらず回り続けている。

    何とまあ冷たいことか、と思う。
    どうやら人の社会は他者を偲び歩みを止める一瞬の余裕さえもないらしい。

    「無粋なことだなぁ」

    無感情に呟く、頬杖をついて何とも退屈そうな顔を浮かべながら。
    フィルター越しに眺める世界は本当に灰色で現実味がない。いつだったか仮想の街を創造するゲームをしたことがあるが、それに似た感覚だった。
    作るも壊すも思うがまま、そこに住まう人間の意思など一切考慮しない俯瞰した視点は、どこまでも自分を残酷にしてくれる。

  • 78亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/02/06(Sat) 23:37:51ID:M3MDMyODY(5/6)NG報告

    >>77
    こと聖杯戦争において舞台となったこの街はある種の箱庭といっても過言ではない。
    出過ぎた陣営は討伐指令を出されるというがそれも魔術の秘匿と聖杯戦争の運営に支障をきたす場合に限っての話だ。
    やり過ぎなければ問題ないこと、そのラインは件のアサシンが示してくれた。

    右手に宿った令呪をみやる。
    綺麗に三画残った歪な流線型は、真っ赤に脈動している。
    自らの従者は酷く身勝手で使い所の悪い、躾のなっていない猛犬のようなサーヴァントだ。
    だが馬鹿と鋏は使いようといったもので、役に立たないわけではない。
    使い所さえ誤らなければ絶大な力を発揮してくれる。

    今日のように。

    「さて……従者を倒された気分はどうだい?」
    振り向くと、床に座り込んだ玲亜の姿がある。
    アヴェンジャーの姿はない。
    ただ絶望に打ちひしがれた様子で地面と睨めっこするばかりで、シスカの問い掛けに答える余裕はなさそうだ。
    「……安心したまえ、君を殺.すつもりはないよ。君にはメッセンジャーとしての仕事が残っているからね」

  • 79亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/02/06(Sat) 23:38:20ID:M3MDMyODY(6/6)NG報告

    >>78
    一歩、また一歩と哀れな少女に歩み寄る。
    この世で最も残酷なキャットウォークでつかつかと。
    最早あの子に成す術はない。魔術の腕もサーヴァントの戦いも、全て自分が上回っているのだから。
    残された行為は勝者による慰めか、それとも蹂躙か。
    選択はシスカに委ねられる。


    肩を掴むと、玲亜の身体が少し跳ねた。


    「亥狛くんに伝えるんだ。親離れの時は来たぞ、と」

  • 80ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/13(Sat) 23:59:57ID:E4NjQzODk(1/6)NG報告

    >>69
    戦いの世界において最大の敵は「迷い」だという。

    怒り、恐怖、動揺、日々の生活から生まれるちょっとした悩み。それらの積み重ねが肉体を硬直させ、洞察力を失わせ、ときとして歴戦の戦士を敗北へと導く。
    武道に精神修業が取り入れられるのも、『無我の境地』へ至りこういった雑念を追いやるためである。
    長い時間をかけて、一本の丸太から仏像を彫りだすように少しずつ戦うための自分を象っていくのだ。

    『(分割思考並行接続(トレース・オン)――主人格遷移・“黒”(ブレインシフト・ニグレド)!)』

    達人でも一筋縄ではいかないその工程を、ライダーは“戦闘に向いた自分”へと文字通り「思考を切り替える」ことで瞬時に終わらせた。

    彼の中に埋め込まれた5つの分割思考による順応力と常人の5倍ならぬ5乗の思考演算力。
    それが、地力で劣る彼の持ちえる最大の武器である。

    ◆◆◆◆◆◆

  • 81ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:00:31ID:k4NjMxNDI(2/6)NG報告

    >>80
    (やはりこの者・・・・・・強い!!)

    敵マスターへのけん制で注意をそらしつつ、相手が踏み込んできたタイミングを狙ってカウンター攻撃。
    動きを完全に読み切り、不可避の一撃だったはずのそれを、はかなげな少年の姿をしたサーヴァントはこともなさげにかわしてみせた。
    すかさず距離を取りながら追撃の杭を放つが、それも全て見た目からは想像もつかない円熟した剣さばきで切り払われてしまう。
    魔力で練られた金糸をただの糸であるかのように軽く薙ぎ払ってしまうあの剣が自分の首を捉えたら・・・・・・たとえ身の入っていない一撃だったとしても、霊基を破壊されてしまうであろうことは容易に想像がついた。

    戦闘の局面は、圧倒的に不利な中、いつ崩れてもおかしくないような危うい均衡の上に成り立っている。
    このまま長引けば相手の奥に控えている荒々しい男が行動を起こすかもしれないし、騒ぎを聞きつけた別陣営が現れないとも限らない。

    ここを切り抜けるには短期決戦しかない!
    そう判断したライダーは再び大量の杭の弾幕を飛ばしながら、あえて余裕のある声色を作った。

    「なるほど、素晴らしき戦いの腕であるな。だけど、この程度ではライダーには一向に届かないぞ!」
    「見え透いた挑発・・・・・・しかし、確かに。マスターの方もいい加減やきもきしている頃でしょうし、この辺で終わりにしよう。いくよ」

  • 82ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:01:40ID:k4NjMxNDI(3/6)NG報告

    >>81
    小柄なサーヴァントは静かに答えると、黄金のつぶての中へと飛び込んでいく。
    そして、不規則な軌道で襲い掛かるそれを時に切り払い、時につむじ風のようにすり抜けながら、一瞬でライダーとの間合いを詰めた。
    ライダーはまだ杭を発射したときの反動で動けない。

    「すでにその攻撃は見切りました。さようなら」

    その首へ狙いをつけて、すいと白刃が構えられた。

    ◆◆◆◆◆◆

    (かかった!)

    絶体絶命の状況にありながら、ライダーは勝機を感じていた。
    もとよりあの程度の攻撃でこのサーヴァントを仕留められるとは思っていない。本命は――

    ライダーのマントを貫いて、ひときわ鋭い杭が相手のサーヴァント目掛け飛び出した。

    弾幕と同時に背後へ放った一本!
    電柱に巻き付けるように向きを変えて戻すことで、自らの体をブラインドにした完全な死角からの時間差攻撃だ!!

  • 83ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:01:54ID:k4NjMxNDI(4/6)NG報告

    >>82
    今にも渾身の一撃が額を射止めようとした瞬間、ふっと相手の姿がかき消えた。

    (!?――いや、そうではない――!!)

    着弾の寸前に身をかがめたのだ。全く見えないはずの攻撃を予見していたとでもいうように!

    「見切ったといったでしょう」

    そういって振り下ろされる骨剣を、ライダーは絶望的な気分で見ていた。
    すでに万策尽きて、身をかわすことすらできそうにない。
    迫りくる死の気配に、ぞっと背筋に冷たいものが走った。

  • 84ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:02:15ID:k4NjMxNDI(5/6)NG報告

    >>83
    もうだめだ。諦めかけたその時。
    どん、と重い衝撃を脇腹に感じ、同時にライダーの体が小さく弾き飛ばされた。
    それまで首があった場所を白刃が鋭く通過する。
    一体なにが、と衝撃のあった方へと視線を向けると、子猫ほどの大きさの白い生き物が宙に浮いているのが目に入った。
    鯨だ。小さな鯨が宙を泳いでライダーに強烈な体当たりをかましたのだ。

    呑み込めない状況への動揺を別の思考回路へ押し付け、あくまでも冷静な頭を最大限に回転させる。
    どんな理由であれ、一瞬の時間を稼ぐことができた。
    策をめぐらせても勝てないのなら、やるべきことはひとつ。逃げの一手である。
    すかさず地面へと手を当てる。そして、今のライダーが持ちえる最大規模の攻撃魔術を行使する。

    「『理導/開通(シュトラセ/ゲーセン)』ッ・・・・・・!!」

    稲妻のような錬金反応が周囲へと走り、敵サーヴァントの足元に巨大な奈落が口を開いた。

  • 85ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:02:58ID:k4NjMxNDI(6/6)NG報告

    >>84
    お待たせしました。
    山星さんにバトンをお返しします。
    よろしくお願いします!

  • 86ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:06:05ID:g2MDc3Ng=(6/10)NG報告

    ───────なんだろう。アレは、いったい何だろうか。

    崩落に巻き込まれ、上は落石下は奈落に落ちゆく最中にあの白くて可愛らしい怪物が何だったのかを夢想する。陸に浮かぶ鯨なんていただろうか。

    「白い、鯨……そういえばモビーディックなんていう神獣がいた気がする。でも、うん。あの破壊兵器にあんな器用な真似は出来ないよ」


    不意を突かれたとはいえこの眼は本質を見抜くから。あのライダーの殺意が視えるし、そこ行使する技が魔力の流れからしても魔術に相当するものだとはわかった。しかし、あの白鯨がライダーの産物であるかといえば否だろう。

    あれは「生物」ではない。生きているものではない。真っ当に生きて真っ当に育って真っ当に子孫を増やす生態系のそれではない。単細胞生物のように生命に溢れてすらもない。この眼が映すそれは今を生きる輝ける生命などではなかったのだから。

    「それにしても底は見えなかったけど。アレだけじゃないかなぁ。………底といえば、これどこまで落ちるんだろう。適度なところで上がらないとマスター達が心配だなぁ」

    いったい奈落に果てはあるのか。長ったらしい詠唱は無しの魔術による地形崩壊のようだからマントルほどではないとは思うが、と前置きをしつつ下を眺める。



    眺めてしまった

  • 87ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:07:20ID:g2MDc3Ng=(7/10)NG報告

    「──────────」


    いけない。これはワタシ(ガイア)とワタシ(死)には天敵だ。死にはしないが本能と理性が総動員で周りを殺し尽くしてしまう。何かはわからないがそれだけは確かで、だからこそこのままゆっくりと上がり続けるという選択肢は取れずに─────


    『お前じゃ咄嗟の判断はつかねぇよ。大人しく俺に代われ』






    「………バーサーカー、大丈夫かなぁ」
    「生きてはいるな。それまでだが」

    地表にて、己がサーヴァントが落下した様を眺めた二人は相手の様子を伺っている。はてさて、どうしたものか。あちらはサーヴァントがいない自分らを攻撃する様子はないようだが、それは令呪による転移のカウンターを警戒してなのかそれをするほどの魔力がないのかはたまた別の理由なのか。


    ───────まるで、気圧が粘性を帯びたように、己の身を縛り付けるように。とりあえず身構えてはみようとした瞬間に二人の体は固まって、動けなくなる。それと同時に襲う倦怠感。魔力が持っていかれたのだ。彼らの魔力はそこらの魔術師のそれではなく、インチキともいうべきものではあるが、まさかそれがここまで削られるとは思わず。

  • 88ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:08:53ID:g2MDc3Ng=(8/10)NG報告

    「ごめんね。ちょっと急いで出ないと僕が壊れかねなかったから」
    その元凶たるバーサーカーが、宙を浮きながら現れる。彼の周りを取り巻く砂塵はざあざあと極小規模な砂嵐を展開している。
    「………嘘だろう?あの数の落石だぞ。というか、浮かんでいるのか、魔術で?」
    「神代の魔術師ならば魔術で浮くのも造作もないでしょ。尤も、僕は魔術師じゃないしこれは魔術でもないっていうのは君もマナの流れからわかるだろうけど」
    「ならば、尚のことおかしい。君のそれは魔術の範疇でないというなら何だという」
    「さあねぇ。今は混乱してるかもしれないけど、君ほど聡明な英霊ならすぐに辿り着けるんじゃないかなぁ。あとこれは君のアイデアのおかげだよ」

    降り注ぐ多数の落石を砂に分解し、大気の操作によって己を浮かせて急上昇する。馬鹿みたいなことを馬鹿みたいな魔力を使ってしでかした。

    「とはいえ、マスターがこの調子なのでここでお暇させていただこうかなぁって。ね、美しき黄金」
    「………………」
    「美しさとは、其れすなわち欲望の発露だ。
    美しき女や男はそれを好む者に組み敷かれ、稀代の美術品は金稼ぎの道具あるいは強欲により所有権を主張され、美しい生物や風景は傲慢な人々の価値観で無理に保全される。
    美しく人知を超えた神だってそうさ、人の信仰で歪められる。そうなり得る状況を作り出したのは人間なのにね」

    いつのまにか現れていた黒と白の双子の虎がマスターを1人ずつ背負う。

    「美しさとは穢されるもの。誰かの欲望で支配されゆくもの。けれど……本当に存在する天上の美というものは誰にも触れられないものだ。絵に描き、文にしたため、詩を唄い、それでも表現しきれぬもの。君は、どちらかというとこっちだと思うよ」
    「随分と褒めてくれるではないか。私のことをなぜそこまで評価するのか、気になるところではあるね」
    「………なんでだろう。この眼で捉えた色が映し出してるまんまだから、君の人物像とか僕は知らないし勘みたいなもんなんだよねぇ。また出会う時が来たら、もしその時に君を理解できたら、その理由を言わせてもらうよ」

  • 89ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:10:12ID:g2MDc3Ng=(9/10)NG報告

    話はそこで終わり。そう打ち切るように、大穴の横に砂山を積み、大の大人ほどの大きさの鳥に乗って狼と共に去って行こうとバーサーカーは振り返って、ああそうだけれど一つ言うことがあったんだと思い出して振り返って。


    「僕たち、この戦闘を終了して帰っても良いのかな?殺し合いはこちらも撤退を選ぶつもりだけど話があるなら付き合うけど」

  • 90ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:10:54ID:g2MDc3Ng=(10/10)NG報告

    終わりです
    なんかお話する!とかならこのまま続行ですしいや戦闘終了、解散ー!というのであれば多分バーサーカー達はこのまま拠点に帰ります

  • 91獣国 ◆qjazSIB7S22021/02/17(Wed) 22:29:13ID:M1NjIxMTk(1/3)NG報告

    >>57
                        ***
    「……全く、君というやつはとんだ困り者だよな」
    自分を背負う男が一歩足を進めるたびに、ぐらぐらと頭が揺れるような感覚がした。話すのも気怠いので黙っているとどうやら真面目に聞いていないのだと判断されたらしく、男がさらに話を続ける。
    「術に頼って無理矢理体を動かさなければ歩くこともできない状態なのに、こんな辺鄙なところまで隠れに来て。右足を捻っているのにも気づけないほど具合が悪いんだろう?腫れ上がっている」
    確かに気づかなかった。体はいつだってどこかしら痛いものだったし、いちいち何処が痛いかなど付き合わせて考えてはキリがなかったのだ。それに、痛がったところで何かが起こるとも思わなかった。
    「とにかく……体を無理矢理動かすのは禁止する。少なくとも、俺と仕事をしている間は許さないと思ってほしい。必要なら、契約に含めようか?」
    文句をつけたいところだが、喉が痛くて声を出すのが面倒極まりない。背中に顔を預けながらも、不服を示すように首を動かした。
    「………あのなぁ……心配しなくても、俺以外だって君の世話を嫌がるような者などいるものか。我等が大望……一族の存続のために生まれる究極系が、とんでもない偉業じゃないなんて保証は何処にもないからなぁ。見た目が怖い、雰囲気が怖いで怯えるような者はうちにはいらない」
    事もなさげに、そいつは人間を切り捨てる宣言をしていた。普通の人間から見たらきっと情がないだとか怖いだとかいうのだろうが、こういう冷徹さと打算があるからこそ俺は気に入られているのだとも思う。俺は、こいつにとってこれ以上なく役に立つ。それ以外に、こうしてわざわざ連れ戻しに来るほどの理由が思い当たらなかった。

  • 92獣国 ◆qjazSIB7S22021/02/17(Wed) 22:29:24ID:M1NjIxMTk(2/3)NG報告

    >>91
    「……なんだ?違う理由かな?」
    歳は大して変わらないのにこうして子供のように扱われている気がするのは、取引相手として文句が言いたいところである。そう思って口を開いたが、依然喉は痛いままだったので必要最低限だけを述べる事にした。
    「………いつものこと…放って、おけば、治る……手間の無駄、は、必要ない」
    「君なぁ。いつも偶然大丈夫だっただけで、これから本当に駄目な時が来るかもしれないだろう。そうなったとしたら非常に寝覚めが悪いから、俺は何度だって探しに行くからな。手間の無駄を惜しむなら、落ち着いて寝てもらおうか」
    口を開いたせいか、余計に全身が苦しくなった。反論したいのは山々なのだが、もう諦めて寝てしまいたいほどに今日の調子は最悪だった。こういう状況は情報処理の効率的にも非常にまずい。
    「……本当に俺の事を考えて手間を省きたいのなら、是非とも完治して元気になるといい。……理由が理解できないなら、利用するためだということでいいから」
    最後の言葉は聞こえないと思って言ったのだろうが、俺の耳は余計なことを聞きつける事に関しては一級品だったので一言一句逃さず聞こえていた。
    あの時は何を言いたかったのかよくわからなかった。けど––––
                        ***

  • 93獣国 ◆qjazSIB7S22021/02/17(Wed) 22:29:44ID:M1NjIxMTk(3/3)NG報告

    >>92
    「……他の奴らに何言われるかは知らんが」
    西行が物陰に潜むような姿勢で背中を丸めると、艶やかな黒髪が腿の上に散った。
    「助けられる気がない奴を助けるなんざ不可能だ」
    だから、仕方ない。
    あの時のことも、あの時のことも、あの時のことも、あの時のことも。今回のことも。
    一切合切仕方がない。そういうものなのだ。だから、誰一人だって悪くはない。悪いとしたら自分だけ。
    「……問題はこれからの身の振り方だな。旅時代とは違うから、嫌んなったら離れりゃいいってわけにゃあいかねェ」
    いかないから、今までみたいに逃げることもできない。
    「……………やだなぁ」
    通信越しに流れてくる声に耳を傾けることも煩わしいと思いつつも、全部投げ出すわけにもいかない。そうして、西行は膝を抱えていた。……有り体に言うと、拗ねているのだ。なまじ大抵のことはやりたい通りにできる故に、そういうわけにもいかない他人の思想に関わる問題に関しては投げやりになりがちなのが西行の欠点であった。
    通信機の向こうからは、女性の泣き声が流れてきている。
    生来、西行は愁嘆場が嫌いである。周りの人間が感情に塗れるたびに、その場に入り込めないという疎外感だけが増していく。共感しているふりというのも気が乗らねど、しなければひとでなしと謗られる。そんないるだけ損の場というのが、彼の「辛い場面」への認識だ。
    なので、通信機の向こうの彼女がこちらに「謝りに来る」と言った時も、驚いたり怒ったりする以前に「どうしよう」という困惑が勝っていた。
    助けを求めてくれなかった相手に、助けを求めなかったことを謝罪に来られた事などない。ならば、どう対応するのが正解なのか。
    その疑問に解をつける前に、彼女は此処にたどり着く。着いて、こちらに頭を下げる。
    そうなれば、彼にできる事は「わかりました」と言って治療に戻る事だけだった。

  • 94ガイ【ペレス・騎】2021/02/17(Wed) 23:10:11ID:Q4NTc5Mjk(1/1)NG報告

    >>89
    「……いや、強いていうのなら。もう二度と会う機会がないことを、ライダーは切に願うよ」


    というわけで、戦闘終了でお願いします。
    ライダー陣営はこの後、ライノの泊まっているホテルに荷物を取りに戻ります。
    他の方々、リレーの続きをお願いします。

  • 95伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:21:33ID:kyMTA3NjI(9/14)NG報告

    アサシンの消滅、そして聖杯戦争の敗北を悟ったウィリーは一人、誰もいない路地裏を闊歩していた。
    月がいつまでも空から無くならないように、彼の顔には一切の焦燥も浮かんでいなかった。今はただ思考にのみ集中させる。

    「解析した暁には蒐集してやろう」

    左手の内側には一画だけ、令呪が残っていた。聖杯戦争の環境下でしかまず手にできないそれは他の魔術とは比べ物にならないほどの希少性があるはずだ。
    この伏神の土地においての聖杯戦争が終わるまでに解析する必要がある。

    「………」

    そうしてウィリーが拠点である廃ビルに向かって歩を進めている時だった。
    何かの違和感を覚えたウィリーは足を止めて振り返る。

    「何だ…?」

    胸の奥がざわつく。
    誰かにつけられているわけではない。気配を遮断できるアサシンはもういないはずだ。
    だが、何かがいる。油断せず周囲を警戒し、魔術回路を起動させる。対物ライフルの銃弾であっても弾き返せる障壁をすぐに展開できるようにするためだ。
    恐らく銃を構える時間は無いだろう。ウィリーは冷徹な視線を路地裏の奥へと投げかける。

  • 96伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:22:00ID:kyMTA3NjI(10/14)NG報告

    >>95
    「………」

    痺れを切らしたかのように、突然それは現れた。
    暗がりから、影から、闇から、姿を見せる。いや、それを姿と言っていいのかわからない。
    一つだけ確かなのは、ウィリーが一番会いたくない相手だったということだ。

    「………!!」

    詠唱をするために出すはずだった声が詰まる。手が意識とは逆に震えだした。
    あの時英霊ですら喰らおうとした正体不明の脅威が、スコープ越しでは無く目の前にいる。魔術師然とした鋼の理性を持ってしても、意識を失わないようにするので精一杯だった。
    全く知らないのならまだ良かった。一度、それを見たことがあるという『記憶』こそが恐怖の温床となり、彼らは増殖を繰り返す。

    「 」

    影は言葉など使わない。
    ウィリーの周囲を静かに取り囲む。純然たる捕食の意思だけを剣のように突きつけた。

    「ふざけるな…!!」

  • 97伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:23:00ID:kyMTA3NjI(11/14)NG報告

    >>96
    ウィリーは逃走を選択した。自身の肉体へと強化魔術を多重に詠唱し、人類が本来出せるスピードを遥かに超えた速度で路地裏を抜け出す。
    この辺りの土地勘なら全て頭に入っている。最短ルートで廃ビルに転がるようにして入り込むと、そこで始めて振り返った。
    殺.風景な深夜の車道には誰もいない。

    「         」

    当然だ。
    廃ビルの中に、既にそれはいたのだから。無駄な足掻きを嘲笑うように影は動きだすがウィリーもまた同様だった。

    「TURN・ON(目覚めよ)!!」

    廃ビルに仕掛けてあった爆弾を詠唱によって起爆させる。万が一侵入者が来た時に備えてあったものだが、今がその時だろう。
    一階から屋上までにある全ての『爆発反応装甲(リアクティブアーマー)』が連鎖的に次々と廃ビルの中で爆発していく。

    「………ぐっ!!」

    大きな破壊音と砂煙が一帯を支配する。殺.せたとは思えないが、それでもある程度は神秘の入った火薬なのでダメージは与えられたはずだ。
    命の危機があるというのならもうこの街にいる意味はない。令呪は惜しいが、本懐を果たせなくなる事が最も恐ろしいことだ。
    ウィリーは時間を稼いでいる間に急いで逃げ出そうとする。

  • 98伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:24:00ID:kyMTA3NjI(12/14)NG報告

    >>97
    だが。

    「 」
    「 」
    「 」
    「 」

    影はウィリーを囲む。それは遊びの時間の終わりを告げていた。
    全ての方向から瞬く間に手が伸ばされ、彼の全身を強く握りしめた。

    「が、ぐ、ぅう…!!」

    叫ぶ事すら許されず、視界が全て黒く染まった時、ウィリーは無限に広がる別世界の入り口を見る。
    そして彼の手だけは、何かを掴もうと最後まで空へと向けられていた。
    人の欲に終わりは無いが━━━━

    「俺は、まだ…何も…!!」

    ━━━━死ん.でしまえばそこまでだ。

  • 99伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:24:36ID:kyMTA3NjI(13/14)NG報告

    決着がついてから数分後。
    怪物はその身を正義の光によって吹き飛ばされ死んだが、怪物の核となっていたアサシンはまだ生きていた。

    「はぁっ…はぁっ…」

    最も、下半身が無くなり地面を這いずる力さえ残っていない者を生きている、というのが正しいかはわからないが。

    「ここ、までか…」

    時間が来たようだ。アサシンの上半身が光の粒へと変わっていき、空へと溶けていく。自分が為したいことは為したのだからもういいだろう。
    未だに喧騒が絶えない街を見下ろすとふと、何気なく生前を思い出そうとした。
    ガスマスクの怪人を作り出したあの田舎町。100年近く時が経った今でも残っているのだろうか。
    と、ここでアサシンはあることに気がついた。

    「あれ…?誰だっけ私…?」

    過去が、思い出せない。自分の名前も、親の顔も、どうやって死んだのかも、どうして怪人となって犯行を繰り返したのかも全てが靄にかかったようだ。
    僅かな記憶にすら手が届かない。

  • 100伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:24:54ID:kyMTA3NjI(14/14)NG報告

    >>99
    「あーそうか…」

    簡単な話だ。
    英霊としてのマッドガッサーは、『あの街で暴れ回った正体不明の怪人』という人々の憶測の情報だけが全てであり中核だ。そこに経緯や過去は一切合切不要なのだろう。

    「とりあえず知らない人たち沢山苦しめた分だけ知名度、上がってるといいなぁ…」

    今更動揺などしない。周囲から愛された善人の死期のように穏やかな声色でありながら、腐りきった根本は変わる事なく。

    「そしてマッドガッサーはぁ…またいつか、帰ってくるぞ!!!」

    そう言い放ってようやく現世から闇へと退去した。
    ガスマスクの下に顔があるかは、誰にもわからないままだが━━━
    ━━━あるとするなら満足げに笑っていたのだろう。

  • 101ぺレス島殺◆B8D4AQBhU22021/02/22(Mon) 23:08:07ID:E1ODY5NzA(1/2)NG報告

    「さて、どのような方が来るのでしょうか…。楽しみですね。それにしても、月が綺麗だ」
    今己が居るのはペレグリヌスベース、通称ぺレス島。その倉庫街と港をつなぐ中心…から少し離れた場所にある半ば朽ち果てられた廃工場である。この聖杯戦争が開始される少し前に不祥事があったらしく、現在は人の往来が減った…というような事をマスターである刹那様から聞いた。立体駐車場や陳列しているコンテナなど、ぺレス島の工業の賑わいがある程度うかがえる光景である。
    さて、ではなぜ己がそのような場所に佇んでいるのかと言えば、それはひとえにマスターである刹那様からの依頼だからである。

    ◆◆◆

    「ほほぅ…、これがサタンのスペックなんだネ!結構色々出来て便利そう…」
    己のステータスを確認し、興味深そうにうなずく刹那様。持ちうる能力、つまり己の宝具や刹那の魔術といった部分を確認しあい、方針を決める、という流れになった。聖杯戦争に参加するに辺り、我がマスターはまぁまぁ戦略眼を持っている、と考えてよい気がする。
    そうして最低限以上のコミュニケーション…すなわちお互いのどうしても嫌な事やしたい事などを開示しあい、己は他のサーヴァント、ひいてはそのマスターの能力などを把握する為の威力偵察を行い、その間にある程度なら自衛も出来る刹那様は此度の聖杯戦争を管理する監督役に挨拶する為に聖堂教会に向かう、という事になった。

  • 102ぺレス島殺◆B8D4AQBhU22021/02/22(Mon) 23:08:19ID:E1ODY5NzA(2/2)NG報告

    >>101
    ◆◆◆

    さて、まずは周囲にある程度のサーヴァントの気配を感じるまでぺレス島を歩き回り、気配の感知や丁度よい戦場になりそうなココを見つけ、威圧による敵寄せを行った、という訳です。とりあえずは挑発にかかる方がいないか、待ちの一手、といった所でしょうか。ふふ、なんて冗談を言っている間に、他のサーヴァント様が来ましたね。

    「なんだぁ?挑発、戦闘の誘いを行うサーヴァントがいるんで来てみたら、案外貧相な恰好じゃねぇか。待ってやるから、マスターに頼んで治癒でもして貰え」
    「お気遣いには感謝いたします。が、この傷は己の誇りのようなモノでしてね。最初から保持しているものですから、治癒も何もないのです。さて、その闘気。セイバー或いは三騎士のいずれかとお見受けしますが、如何でしょうか?」
    まず相対する事になったのは、獣のような戦士と、少々不安げな雰囲気を身にまとう少女。ふむ、なかなか良き試練のようですね。立ち塞がれるのが楽しみです。
    「さてな、そんなのは戦闘じゃどうでもいいだろ?それがアンタの全力を出せる状態だってのなら是非もねぇ、人気もねえし、さっさとおっぱじめようや」
    そういって構える己と戦士と己。構えるは剣と拳。己が行うべきは威力偵察。手のうちは出し過ぎない方がいいでしょう。まずは徒手空拳で…
    「がっ…!?」
    視点がブレる。頭部がクラクラしますね。角の一部が抉れた、ですかね?威力。そして痕跡から見るに狙撃でしょうか。暫定的ですが、アーチャーも釣れたというのは大きな収穫と言えましょう。
    「着弾などの状態から推理するに、そちらですかね?」
    腕を振り、予測した狙撃地点に向けて黒雷をいくつか放つ。相手に当たるかは二の次であり、牽制が第一目的だ。目の前の剣士から目を離す訳にもいかない訳ですし、ね。さぁ、己と彼と、まだ見ぬ貴方で、互いの試練を始めましょうか。

  • 103ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:46:07ID:UyMjM2NjA(1/12)NG報告

    「■■■■■■■■───ッ!?!?!」

     ライダーの一矢 ……宝具が、バーサーカーの霊核を打ち砕き、フラカンの霊基が崩れ落ちる。
     堕ちた神霊であれど、核を破壊され、要となる契約者(マスター)を喪ったとなればこの後に待ち受ける未来は消滅のみだ。

    (あぁ……消える、我が……消える)

     他の者からすれば狂戦士の英霊(サーヴァント)の消滅に過ぎないが、フラカン自身にとって、この終焉は異なる意味を持つ。
     本来、フラカンの意識は星を放浪する残留思念であり、偶然にも狂戦士として召喚されたハリケーンという霊体に寄生するカタチで自身を聖杯戦争に参加する一騎であると定義付けていた。
     つまり、フラカンは聖杯に呼び出された座の英霊ではなくそれ以前から世界に漂っていたモノだ。
     そして、狂戦士の霊基と複雑に癒着してしまったその自我は、霊核の破壊と共に致命的な破損を受けてしまっていた。
     聖杯戦争のサーヴァントであるハリケーンのみならず、神代から原題まで生き長らえてきたフラカンの意思もまた世界に溶けようとしてる。
     仮にフラカンという存在が再度世界に出現したとして、ソレは世界に合わせてカタチを変えた存在、今まで保ってきた自我とは異なる存在となっているだろう。

    (神代から、零落して尚、消え果てることを拒んだというのに……よもや、死者の影法師如きに……)

     自身にとって疎むべき神性を有するサーヴァントによって討ち取られたことにフラカンは屈辱を感じていた。

    (我は何を間違えた……何故……)

  • 104ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:46:34ID:UyMjM2NjA(2/12)NG報告

    >>103
     残滓となってまで意識を保ち続けたはずの自身がどうしてこのような目にあっているのかと、思考を巡らせる。
     そして、幾度となく思考の中に去来するのは猜野 芽衣の姿であった。

    (クハハ、 神代の終わりから数千年の放浪……そのうち、たったの二日に過ぎぬ時間で……我は満たされていたというのか……)

     数千年間、執着した筈の自己さえ投げ出してしまうほどに……。
     誰よりヒトを拒んでいた筈の神(フラカン)が、よりにもよって芽衣(ヒト)に満たされていたのだ。
     結局のところ、誰かと共にありたかったのだ。忘れられたくなかったのだ。
     それに気づいた時には既に後戻りは出来なくなっていた。

     だから、ここから先に吐き出されるのはただの虚勢だ。

    (芽衣は我という万能(カミ)を手にしながら、それを手放した……覇久間の聖杯とやら、我すら翻弄した貴様という万能(カミ)に、人間共がどのような所業を成すのか……せいぜい楽しみにしているが良い、クッ クハハハハ!!)

     覇久間における聖杯戦争、四日目にして遂にサーヴァント一騎が脱落した……。

  • 105ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:47:06ID:UyMjM2NjA(3/12)NG報告

    >>104
    (私は……台風からはじき出されて、それから、どうなったんだっけ)

     令呪の行使後、魔力消費と風雨による体力低下により失われていた、芽衣の意識が覚醒する。
     夏美達に後を託したはずだが、自身がその後どうなったかについては覚えていない。

    「目を覚ましたか、バーサーカーのマスター」
    「……ッ!?」

     目を覚ました芽衣を待ち受けていたのは先日の戦いで邂逅した、上から目線で全てを品定めするような褐色の男。

    「わ、私を……助けてくれたの?」
    「あぁ、凡俗の人間如きを拾い上げるなど業腹だが……貴様も聖杯戦争のマスターだからな」

     そう告げて、男は芽衣の手の甲を見遣る。
     男── ゲーティアは狙っているのが芽衣の令呪であることは明らかだった。
     芽衣はゲーティアの動きを警戒し、身構えるが……

  • 106ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:47:29ID:UyMjM2NjA(4/12)NG報告

    >>105
    「……ッ痛 !」

     突然、眼が疼き出して痛みが走る。
     それは芽衣の持つ“天気を読む”異能 晴眼が発動する前兆であった。
     芽衣の眼は、望む望まないに限らず近い未来の空模様を映し出す。
     日常的にも起こり得るが、突発的な痛みを伴う場合は余程の異常気象である確率が高い。
     それを覚悟し、芽衣が覗き込んだ空の景色は……

    (何、これ……?)

     “視た”はずの空の景色が、何であるか理解出来ない。
     そんなことは芽衣にとってははじめての事だった。
     天気に精通し、フラカンという災害と共にあった芽衣ですら察せない『何か』。それが空まで届いている。
     或いは他の魔術知識を持つマスターであれば理解出来たかもしれない。
     だが、理解出来ずともソレが先のフラカンの暴走に負けず劣らずの厄災であることは芽衣の“眼”にも明らかだ。
     そして、芽衣が“視た”景色には、ソレだけでなくゲーティアと同じ褐色の少女……アサシンの姿が映っていた。

  • 107ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:48:01ID:UyMjM2NjA(5/12)NG報告

    >>106
    「……今のは、何? 貴方と一緒にいたあの娘は、一体何をするつもり……?」
    「千里眼や占星術とは異なるが、予見を可能とする眼か、煩わしいな」
    「質問に答えて!」
    「コチラに答える義理がない。 貴様はただ残った令呪を差し出せば良い」
    「私達みたいにまた覇久間を巻き込むつもりなら、令呪は絶対に渡さない……!」
    「では月並みだが力尽く奪わせてもらおう。 使い魔の無い人間にどう抵抗できる」

     ゲーティアが腕ごと奪い取ろうとするように芽衣へと迫る。
     彼の言う通り、サーヴァントを持たない芽衣には抵抗する事が出来ない。
     それでも、皆が各々の想いで覇久間を守るため奮闘した事実を知っている芽衣は、また街を巻き込みかねない存在に対して気丈に睨み続けていた。

     ゲーティアの魔の手が芽衣まで届こうとした瞬間……

    「セイバー!」
    「えぇ、分かっているわ!」

     かつて芽衣を狙った刃が、目前のゲーティアに向かって振り下ろされた。

  • 108ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:48:45ID:UyMjM2NjA(6/12)NG報告

    >>107
    「不意打ちとは、最優の騎士が聞いて呆れるな」

     ゲーティアは悪態をつきながら、刃を躱す為に芽衣から手を引いた。

    「生憎と、暗躍は其方だけの特権ではありません。 事が動くとしたら全員が対バーサーカーで消耗したこの瞬間だと思っていましたよ」

     刃が向かってきた方向から一人の男が姿を現す。
     アレン・メリーフォード。セイバーのマスターである私立探偵だ。
     その傍には当然ながらセイバーのサーヴァントであるオードリー・ヘップバーンも控えていた。

    「それで、どうしますか? 貴方が彼女を狙うのであれば、僕達は二つの理由で彼女を護り、貴方と戦う覚悟もありますが……」
    「私も構わないわ。 バーサーカーとの戦いでは他のサーヴァントに役どころを持ってかれてしまって不完全燃焼ですもの」

     徹底抗戦の姿勢を見せるセイバー陣営に対してゲーティアは嘆息した。

    「魔力のリソースを得る為に戦い、魔力を失うなど割に合わん。 先に貴様らに手を出してアレにとやかく言われるのもあまり気分がよくない」

     そう告げると、ゲーティアは拍子抜けするほどアッサリと身を退いた。

  • 109ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:49:13ID:UyMjM2NjA(7/12)NG報告

    >>108
    「大丈夫ですか、猜野芽衣さん?」

     ゲーティアの撤退を確認すると、アレンは芽衣の元へと駆け寄ってきた。

    「えっと……貴方はどうして私を助けてくれたんですか……?」

     今まさに命を救われたとはいえ、一度は命を狙われた相手であるため、警戒を緩められない芽衣。それに対してアレンは……

    「窮地の淑女を助けるのは紳士として当然、などと言えれば格好もつくのでしょうが……ひとつは彼の陣営が新たな令呪(リソース)を獲得するのを妨害するため。そしてもうひとつは……」

     一旦、話を区切ってからアレンは自身の携帯を取り出し、芽衣へと差し出した。

    「探偵としての仕事です。あなたのお姉さん……猜野聖さんから貴女を捜索するように、と依頼が来ていましてね。 電話、繋がりますよ?」
    「……聖が?」

     聖の行動によって九死に一生を得るカタチとなり、芽衣ははじめて純粋に姉に感謝した。

  • 110ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:55:26ID:UyMjM2NjA(8/12)NG報告

    5/1 狂陣営 『九死に一生』 了

  • 111ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:14:43ID:I3NTM4ODA(9/12)NG報告

     アレンにより救助された後、芽衣は一時的に覇久間の教会にて保護され、聖杯に回収され令呪が消失したのを確認した後に教会から去った。
     一度参加した以上、最後まで事の行く末を見守るべきかとも考えたが、自衛の手段を持たない芽衣では徒に身を危険に晒すだけである。
     それは自身の命を救ってくれた夏美やアレン、他のサーヴァントに対する恩を無下にする行為だ。
     故に芽衣は早急に覇久間の地を立ち去るという選択を採った。

    (猜野本家のゴタゴタに巻き込まれるのも、勘弁したいところだしね……)

     先のバーサーカーの暴走で、仮にも猜野の代表であるマスターがサーヴァントを制御化に置けていなかったこと、またソレを秘匿していたことについて教会や蒲池の家から問い詰められているらしい。
     芽衣にも当事者として申し訳なさを感じつつも、自身も猜野の策とフラカンの存在に巻き込まれたようなモノであるため、わざわざ擁護する気にはなれなかった(何より魔術の話は専門外。魔術師同士で話し合うべきだろう。)

    「夏美ちゃんとキチンと話せなかったのは名残惜しいけど……」

     彼女もまた聖杯戦争の参加者であり覇久間における御三家の魔術師。
     夏美にとっても今が大事な時期なため、芽衣が余計な気を遣わせるワケにはいかなかった。

    (……頑張ってね、夏美ちゃん)

     先日見た“未来の空模様”を思い出し、僅かな不安が過ぎり、芽衣は夏美達の無事を祈った。

  • 112ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:15:08ID:I3NTM4ODA(10/12)NG報告

    >>111
    「芽衣〜〜〜!!」

     色んな事を思案していると、遠くから軽自動車が芽衣に向かって走ってきた。
     車から聞こえてくる声の主はアレンの連絡によって、芽衣を覇久間まで迎えに来た、姉の猜野聖であった。

    「芽衣! 怪我はない? 体調は……っていうか生きてる!? 足はある!?」
    「聖、うるさい。」
    「だって、芽衣が何日も連絡くれないし、猜野の本家も知らないっていうし……私のせいで芽衣の身に何かあったらって思うと……」

     やたらめったら喋る聖にウンザリしつつも、芽衣はその反応が何も大袈裟なモノではないと気づいていた。
     一歩間違えたら、というよりも助かった方が奇跡的な状況だったのだから。

     それから芽衣は覇久間で何があったか、かいつまんで説明した。
     聖は半信半疑と言った様子だったが、芽衣からするとストレート全て信じ込むよりは余程安心出来る反応だった。

    「まぁ、でも……私が普段研究している超能力者(ヒト)達も、そのカミサマとそんなに変わらないのかもなぁ……何処か理解を求めていて寂しがり屋だ」
    「そう、かもね……」

  • 113ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:15:31ID:I3NTM4ODA(11/12)NG報告

    >>112
     聖の意見に芽衣は曖昧な返しながらも同意した。
     芽衣は聖の言う超能力者にはあったことはないが、フラカンが何より理解者を欲して共に在りたかったというのはよく分かっていた。

    「ねぇ、聖。しばらくこういう依頼とかの連絡はしてこないで」
    「……もしかして、というかやっぱり怒ってる?」

     芽衣の呟きに、聖は恐る恐ると言った感じで問いかける。
     その問いかけに芽衣は穏やかな口調で返す。

    「ううん、そういうことじゃなくて……ちょっと、もう一度また一から勉強したいなって……」

     結果の出せない自分に絶望しても、誰かのスター性を羨望しても、やはり幼い頃に見た「お天気お姉さん」になるという夢はまだ芽衣の中で燻っていた。
     折れても、挫けても、自身の想いを欺いてしまえば、やがて自分自身も見失ってしまう。
     それを知っているからこそ、芽衣は前を向くしかないのだ。
     フラカンを呼び出した芽衣の、法では裁かれない罪もまた、それを抱えて生きることでしか贖うことは敵わない。

    「どんな心境の変化があったか、私には分からないし……芽衣なりに辛かったんだろうね。でもさ、今の芽衣……いい顔してるよ」

  • 114ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:16:56ID:I3NTM4ODA(12/12)NG報告

    >>113
    「そうかな……?」
    「でも芽衣、辛かったらすぐお姉ちゃんに言ってよ」
    「うん。ありがとうお姉ちゃん。」

     斯くして、猜野芽衣はマスター権を放棄し、万能の願望器を手にする機会を失った。

    5/2(土) 雨上がり/エピローグ 了

  • 115ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:16:21ID:Q3OTc3NjA(10/14)NG報告

    「―――匂いが、するわ」

     召喚から数十分。ホテルに向かう足取りの最中、弓兵(アーチャー)――――パウサニアスはそんなことを口にした。
     正確にはアーチャーの持つ理性蒸発の効果だったのだが、今の2人は頓着していなかった。
     アーチャーは自身の感覚に自信があったし、そのマスターは、アーチャーの勘を信用していた。
     弦には確信があった。目の前は少女は狩人という共通点によって召喚されたのだろう。

     が、その確信は脆くも崩れ去ることになる。

    「いたわマスター! 早速行きましょう!」

     遠距離も遠距離、まだ気づかれていない相手に、少女は突撃を決めようとし。

    「―――いい加減にしろよ。餓鬼」

     次の瞬間、流れるような男の動きに抵抗できずに捕らえられた。

  • 116ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:17:05ID:Q3OTc3NjA(11/14)NG報告

    >>115
     銃口を喉元に突きつけ、人の姿をした獣は唸るように告げる。
    「お前は何だ? 狼か? 狩人か? その銃は飾りなのかよ、ああ?
     別に強制をするつもりはねえが……英霊(せんし)として戦場に立つなら矜持を持て。
     狼なら獣らしく、狩人ならクレバーに――――好きにしろ、どちらでもいい。
     ―――どっちに転ぼうが、俺にとっては同じことさ」
     静かな、それでいて確かな怒りを内包した男の声。
     それに真正面から対峙した少女は。

    「そんなの……わからないわ……だって、考えたことがないんだもの……」

     涙ながらにそう吐き出した。
     召喚当初の獰猛さはどこに消えたのか。今ではどこにでもいる―――景伏弦の娘と同年代の少女にしか見えない。

    「……泣くなよ。ああ、悪かったよ。餓鬼っつうのは言いすぎた。
     まずは深呼吸しろ。それから、泣くのをやめて銃を構えろ。
     アーチャーっていうくらいだ。構えるくらいは出来るだろう。
     わからんって言うなら教えてやるさ。獣としての戦い方も。戦士としての戦い方も。
     だから……もうそんなに泣くな。可愛い顔が台無しだ」

  • 117ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:17:48ID:Q3OTc3NjA(12/14)NG報告

    >>116
     ポケットから取り出したハンカチで少女の涙を拭き取りながら、先程までが嘘かのような柔らかい声で弦が語りかける。
     子供は苦手だ。我が子ならともかく、他人の子となるとやりづらい。
     それが泣き出したのだというのだから、今の彼にとっては手に負えなかった。 

     景伏弦は人面獣心の戦士である。
     暴性に乗じて全てを破壊し尽くすことも、敵の裏の裏まで読み尽くすことも、彼にとっては児戯に等しい。
     死神と呼ばれた狙撃手がいる。
     殺人機と呼ばれた傭兵がいる。
     戦技の教導は、彼にとっては最も簡単なコミュニケーションだった。
     ここは既に戦場となっている……少なくとも、泣いている子供相手に右往左往するよりは、強引にでも自分の得意な領域に引きづり込む方がマシだろう。

    「そうだ。それでいい。今はまだ待てばいい。撃つべきタイミングってやつは相手が教えてくれる。
     お前はただその時を待てばいいんだ―――よし! よくやった!」

     男が内心でガッツポーズをしたその瞬間。

    「マスター! 避けて!」

     狙撃手(しょうじょ)は悲痛な叫びが、戦場にこだました。

  • 118ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:18:06ID:Q3OTc3NjA(13/14)NG報告

    >>117
     膨張した魔力を察知した男は、瞬時に術式を構築した。 

     それは、男が『壁』と称するものの中でも秘奥中の秘奥。
     最大十二層の壁を同時に纏うことで、魔力消費の甚大さと引き換えに対魔術に特化した術式。
     キャスターの放った漆黒の稲妻が弦を貫くその刹那―――その術式(わざ)は成立した。



    「順転開始(サーキットスタート)、階層装填(トリガーセット)
     奉納殿十二層(サークルコード・トゥエルブ)―――是、多層転身(ブーストドライブ・イグニッション)!!!!」



     黒雷が上げる土煙の中、景伏弦がそこにいる――――!!!!

  • 119ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:18:20ID:Q3OTc3NjA(14/14)NG報告

    >>118
    以上です

  • 120一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/03/22(Mon) 11:56:55ID:c0MjE2MDg(1/3)NG報告

    競走馬か原動機付自転車もかくやの速度で疾走する銀河と、それに隣り合って飛行するカーペットに乗ったキャスターとセイバー陣営。
    「──────いた!あの時のサーヴァントと…………何、アレ……?!」
    「アレは…………!『降臨者(フォーリナー)』!?」
    ビルの屋上で戦闘する二体のサーヴァントを見つけたキャスター陣営は、アサシンと思しきサーヴァントと相対する『アーチャーらしきナニカ』を見て驚愕する。
    「フォーリナー……余所者?」
    カーペットに乗ったハリーが、小首をかしげ聞き返す。
    エクストラクラスにアヴェンジャーやルーラー等がいるとは聞いたがフォーリナーというクラスなど聞いたことがない。
    「フォーリナーは虚空より来たるモノ……夢見るままに待ちいたる神……要はこの世のルールを外れた存在だ」
    「故にフォーリナー、か…………って、アレ?キャスター普通に喋れてないか?!」
    今まで気がつかなかったが、銀河の翻訳を通さずに会話ができていることに驚くセイバー。
    「制限が解けたんだ…………………………相手が相手だからな」
    彼女の言葉を聞いて、セイバー陣営も気を引き締める中、銀河は今朝のキャスターとの会話を思い出していた。

  • 121一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/03/22(Mon) 11:57:12ID:c0MjE2MDg(2/3)NG報告

    >>120
    @@@

    「《マスター、調子は大丈夫か?》」
    「あ、うん!大丈夫!一日寝たからぜんぜんへーき!!」

    「《……マスター、君に私の宝具が持つ力を教えておくよ》」
    「宝具、って確かサーヴァントが持つ必殺技みたいなモノだよね……」
    「《そうだ…………私の宝具は二つ、この世ならざるモノを討つ為の方法が記された宝具、それを用いて人外の存在を封印する宝具だ。この世界のモノで無ければ更に効果は高くなる》」
    「……私がキャスターを召喚できた理由に関係してるんだよね」
    「《………………………………そうだ》」
    「……そっか、やっぱりそうなんだよね」
    「《もし、私がこの宝具を使用するときは約束してくれ。『君は、責任を持つな』》」

    @@@

    「……………………むちゃ言ってくれるなぁ」
    ぼそりと、か細く呟いた一言は風の音と近づく戦闘音にかき消されていった。

  • 122一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/03/22(Mon) 11:58:10ID:c0MjE2MDg(3/3)NG報告

    >>121
    第■回投下は以上です。
    やっっっとできた!!!!

  • 1233ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:23:13ID:E0NTI3NzQ(1/10)NG報告

    とりあえず開戦までの流れが出来たので、投下します

  • 124ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:23:50ID:E0NTI3NzQ(2/10)NG報告

    無事にセイバーを召喚した私は、召喚陣などの周囲の片付けや魔術の痕跡を消す隠滅作業をしていた。
    「……ふぅ、血痕はこれで大丈夫ね。あとは────」
    「なあマスター?」
    ふと、後ろで見ていたセイバーから怪訝そうな声で話しかけられた。
    「見てて思ったんだけどよ、そいつはマスターが片付けなきゃいけないもんかい?」
    「いえ、必ずしもやらなければならないことではないですけれど……。」
    「ならそんなもん、監督役にでも押しつけりゃいいじゃねえか。わざわざマスターがやる必要あんのか?」
    「それはそうですけど……。でも、監督役のメイベルさんは私とそう歳は変わらないように見えましたし、そんな子にあまり負担は掛けたくありません。私個人で出来ることがあるなら、出来るだけメイベルさんを頼ることがないようにしたいんです。」
    先刻会ったシスターの少女─────メイベルの姿を思い出す。
    私ですら『クー・フーリンのマスター』という大役が務まるかどうか不安で仕方がないのに、彼女は『聖杯戦争の監督役』という私よりも何倍も重く難しい役目を背負っている。もちろん一概にどちらの方が辛いかなんて語れるものではないけれど、それでも彼女の方が私よりも忙しいのは確実だろう。
    それならば、出来るだけ彼女に迷惑はかけたくない。私個人で完結できることならば、私個人でなんとかできるように努力するべきだろう。
    セイバーが呆れたように頭を掻いて言う。
    「まあ、なんだ。マスターがそうしたいなら好きにすりゃあいいさ。」
    「セイバー……。」
    「とはいえ、今みたいなのんびりとした時ならいいがな、本気で俺がヤバいって思った時はマスターの意思に関係なく引っ張ってくからな?」
    「……ええ、分かりました。その……ありがとう、セイバー。」
    私は謝意をこめてセイバーに頭を下げる。
    「別に感謝されるようなことじゃねえよ。オレはサーヴァントだからな、出来る限りマスターの意思は尊重するだけさ。」

  • 125ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:24:29ID:E0NTI3NzQ(3/10)NG報告

    >>124
    「それでも嬉しいです。あなたほどの英雄がここまで私に歩み寄ってくれるだなんて、正直思ってもいなかったから。」
    これは私の勝手な想像だけれど、基本的に『英雄』と呼ばれるような人達は周りを振り回すものだと思っていた。もちろん大なり小なり個人的な思惑とかもあるかもしれないが、それでもやはり神話や歴史に名を連ねるような大人物ほど周囲の人間を振り回しているという印象が強くある。
    名を挙げるのであれば、たとえば一代でマケドニア帝国という巨大な帝国を築き、世界に大きな影響を与えたヘレニズム文化を作り上げたアレキサンダー大王。
    元々の自領の国民だけではなく、敵国の国民すら魅了し心酔させ巨大な版図を作り上げただけでも凄まじいけれど、それ以上にインドの更に果て─────この場合は現在の地図で言うなら中国あたりが妥当だろうか─────を目指そうとする王に将官や兵士が反発するまで誰もがかの王の背についていったというのは驚嘆すべきことだと思う。それほどまでに魅力に満ち溢れ、そして正負どちらにせよ事を為す人物であったという何よりの証拠だ。
    マケドニア帝国そのものは高熱で床に臥せたアレキサンダー大王が最期に遺した言葉、『最強の者が国家を継承せよ』の一言が原因で分裂してしまうが、逆を言えばもしアレキサンダー大王が床に臥せず存命していたのならマケドニア帝国の分裂はもっと先の話だったとも言えると思う。
    他にも例を挙げるならば新大陸を発見したクリストファー・コロンブス、フランス革命の後に市民からの支持を得て皇帝となったナポレオン・ボナパルト。日本でならば、第六天魔王とも並び称された織田信長、農民から太閤にまで上り詰めた豊臣秀吉あたりがそうだろうか。
    兎にも角にもそんな人物ばかりゆえか、本で読み知り出来る範囲の中で私の中の『英雄』とは即ちそういう存在なのだ。
    多くの人々を魅了し、惹きつけ、夢を見せ、そして大事を為す者。
    それこそが『英雄』なのだと。
    だから、クー・フーリンほどの大英雄が私の意思を尊重してくれるだなんて、とてもではないけれど考え付かなかったのだ。

  • 126ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:25:26ID:E0NTI3NzQ(4/10)NG報告

    >>125「そんなに不思議なことかねえ……。」
    「私はそう思った、というだけのことですよ。きっと他の人なら違う感想を持つと思います。」
    「ま、こちとら仕事で来てるようなもんだからな。なら、雇用主に従うのは当然だろ?オレにはその辺のこだわりみたいなのが無いからな。どんな善人だろうと、どんな悪人だろうと、基本的には従ってやるさ。まあだからってなんでもかんでも従うってわけでもないんだが。」
    「分かってます。あなたにはあなたなりの意志や信念があって、それに私が反さない限りは見逃してくれているだけなのですよね?」
    「そういうことだ、よく分かってんじゃねえか。いや、分かりすぎてるというべきか?」
    「そんなことはない、と思うけれど……。」
    でも確かに小学生だった頃の周りと比べられると、よく『黒鳥さんは物分かりがいい子ね』などと言われた回数は多い気がする。
    同時に『黒鳥さんは周りの子より大人びてるのね』なんて言われたことも多かったと思う。
    でもそれはそう見えただけ。
    あの時には、もう、私は────────
    「……っ!」
    目に、涙が浮かびかける。あの日のことを思い出したから。
    幼い私が、無邪気に兄から何もかもを奪って、そして『魔術師(この場所)』に立つことになったあの日。
    あの日から、私が目指すべき道は一つとなった。
    今回の聖杯戦争もそう。
    私の意思なんて、介在する余地もない。
    なのに、私は心を捨て切れないでいる。
    魔術師には不要な物だと、何度も教えられているのに。
    兄に対する気持ちを捨て切れない。
    魔術師として不要な物のはずなのに、私はそんな気持ちを切り捨てられないでいる。

  • 127ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:26:11ID:E0NTI3NzQ(5/10)NG報告

    >>126
    そんな私の様子を不審がったセイバーが話しかけてくる。
    「……どうしたマスター?」
    「っ、な、なんでもないわ、セイバー。も、もう少しで片付くから待っててもらえるかしら?」
    「おう。ゆったりと待っとくから、そんなに急がなくてもいいぞー。」
    私は平静を取り繕い、残っていた隠滅作業を手早く終わらせ、荷物を抱えた。
    「ごめんなさいセイバー、待たせてしまって……。」
    「気にしてねえよ、マスターが必要だと思ったからやったことだろ?なら、その行動に胸を張りな。せっかくのスタイルが台無しだぜ?」
    と、セイバーは私のお尻に手を伸ばして触ってきた。
    「きゃっ……!?ちょ、ちょっと、セイバー……!」
    「ははっ、なかなか良い尻してんじゃねえか!やっぱ美人ってのはこうでなくちゃな!」
    「も、もう……!そういう冗談は嘘でもやめ──────」
    私が否定の言葉を言い掛けた時、背筋にぞわりとした感覚が駆け抜けていった。
    そして、瞬時に───────とても強い殺気を感じ取った。
    「─────っ!?セイバー、今のってまさか……!?」
    「ああ───────どうやらそう遠くないところに誰かサーヴァントがいるらしい。」
    セイバーが武器を構える。
    「行ってみるかいマスター?これが罠の可能性も捨て切れねえが──────」
    「……行きましょう。どちらにしたって戦う相手の情報は必要だわ。」
    ここで避けたところで、どのみちいつかは戦う相手─────敵なのだ。それなら手持ちの情報(カード)を増やすのに越したことはないはず。

  • 128ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:27:23ID:E0NTI3NzQ(6/10)NG報告

    >>127
    「決まりだな。それじゃ─────よっ、と。」
    「え、わ、きゃっ……!?」
    セイバーは武器をしまうと、軽々と私の体を両腕で抱え上げた。
    「セ、セイバー……重く、ないかしら……?」
    「重いどころかむしろ軽すぎるくらいだ。ちゃんと飯食ってんのか、マスター?」
    「べ、別に人並みだと思う……けど……。」
    真っ赤な嘘だ。私は本来自分が食べるべき物を、兄にいつも譲っている。そうでなくとも、元からあまり肉が付きにくい体質なのだけれど。
    「それじゃ、しっかり掴まってろよ?一気にかっ飛んでいくからな─────!」
    一瞬の間のうちに、セイバーが殺気の出処へと跳躍する。
    しかしながら、サーヴァントが自身の力を引き出して跳躍……もとい移動するということは、即ちジェットコースターの最大瞬間速度を初速で味わうようなもので。
    「きゃあああ.あああ.ああああ─────────っ!?」
    私は情けない絶叫を薄闇の空に響かせたのだった。

  • 129ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:27:59ID:E0NTI3NzQ(7/10)NG報告

    >>128
    私とセイバーが殺気を追って辿り着いたのは、ペレス島の市街地からやや外れたところ。
    廃工場、とでも言えばいいだろうか。
    多くのコンテナが打ち棄てられたその場所に、セイバーに抱えられた状態から私は地面に降り立った。
    そしてその場に似つかわしくない異形の様相をした─────それこそ『悪魔』という呼び方が相応しい姿をしたおそらくサーヴァントだろう青年が、私達を見つめるように立っていた。
    「……っ!」
    ただそこに立っているだけ。
    にも関わらず、私の足は目の前のサーヴァントが放つ重圧を前に竦み上がっていた。そばにセイバーがいなければ、きっと膝から崩れ落ちていただろう。
    セイバーが私を守るように前へ出る。
    「嬢ちゃん、下がってな。」
    「え、ええ……。セイバー、気を付けてね。」
    セイバーに励を送り、セイバーの言葉に従い彼の後ろに下がる。
    セイバーは剣を抜き、そしてサーヴァントと思しき青年を誘うように煽る。
    「あぁ?なんだよ、『戦おうぜ』なんてこれ見よがしに殺気を垂れ流しにしてる奴がいるから来てみりゃ、ずいぶんと華奢で貧相な体つきの奴しかいねえじゃねえか。そのなりじゃ大方、テメェのクラスはキャスターかアサシンってとこか?チッ、ちょいとアテが外れたな。」
    ……煽りにしてはなんだか本音が混ざってるような気がしないでもないけれど、今はそれは置いておこう。
    対する謎のサーヴァントはそれを何とも思っていないように、揚々と言葉を返す。
    「ふふ、ご期待に添えずすみませんね。ですが、この傷は己の誇りのようなモノでしてね。最初から保持しているものですから、治癒のしようがないのです。」
    そして、セイバーを挑発するように言葉を続ける。

  • 130ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:28:47ID:E0NTI3NzQ(8/10)NG報告

    >>129「さて、その闘気。セイバー或いは三騎士のいずれかとお見受けしますが、如何でしょうか?」
    「さあな。剣を持ってるからセイバー、なんて安直な考えはやめた方がいい。俺はランサーかもしれねえし、ライダーかもしれねえし、もしかすりゃあバーサーカーかもしれねえぞ?ま、戦いになりゃそんなのはどうでも良くなるさ。生きるか死ぬか───────あるのはただそれだけだ。」
    剣を謎のサーヴァントに向け、構える。
    「来ちまったもんは仕方ねえ。さあ、かまえな。テメェの素っ首……斬り落としてやるよ。」
    「それが出来るものならすればよろしいと思います。まあ、不可能だと思いますがね?」
    謎のサーヴァントも拳を構え、臨戦態勢を取る。
    「はっ─────勝手にほざいてろ!」
    セイバーが謎のサーヴァントに駆けようとした、刹那。
    「がっ……!?」
    「─────っ!?」
    パァン、と廃工場に乾いた銃声が木霊し、謎のサーヴァントの頭の角が欠ける。
    セイバーが念話をかけてくる。
    「(どうやらもう一騎、この誘いに乗った奴がいるらしいな。)」
    「(ど、どうしましょう……!?)」
    「(落ち着けマスター。焦ったら、向こうの思う壺だ。周りをよく警戒しろ、今はそれだけでいい。)」
    セイバーとの念話が切れる。
    謎のサーヴァントの方を見ると、角の部分を押さえながらも狙撃された方向へと手を翳し、
    「着弾などの状態から推理するに、そちらですかね?」
    そう言って腕を振り下ろし、黒雷を数発放つ。
    凄まじい稲光と熱が広がり、土煙が周囲に満ち、その黒雷の着弾点に僅かながら魔術で編まれた障壁を視認した。

  • 131ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:29:10ID:E0NTI3NzQ(9/10)NG報告

    >>130
    もう一つの陣営がそこにいるという証拠。
    今ここに、一つの乱戦が幕を開けた。

  • 132ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:29:30ID:E0NTI3NzQ(10/10)NG報告

    はい終わり!こっからは話し合っていきましょー

  • 133スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/05(Mon) 23:57:10ID:A2NjE5MzU(4/9)NG報告

    第■回投下します。

  • 134スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/05(Mon) 23:57:58ID:A2NjE5MzU(5/9)NG報告

    『亡くなられたのは来栖市桂町にお住まいの星野 亮さん……』

     テレビからニュースが流れる中、アサシンとの視界共有で戦闘の様子が映し出されていく。
    最初こそ此方が押してたものの、急にアーチャーの動きが良くなって膠着状態に陥りつつあるのが素人目にも見えてくる。
    今も、振り払うような鎚鉾の一撃を避けたアーチャーがサーベルの乱れ突きを放ってくる。
    ゲームによくある百裂突きを再現したかのようなそれをアサシンは鎚鉾で捌いていく……だが、後一歩が足りない。
    ドゥフシャーサナが敵マスターの牽制で動けない以上、撤退するか令呪を使うかしかない……だが、この状況は程なくして動いた。

  • 135スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/05(Mon) 23:59:47ID:A2NjE5MzU(6/9)NG報告

     サーベルの間合いから離れ、乱れ突きを凌ぎきる。
    一時的に任意のスキルを獲得する能力を持っているらしく、技量差による優位は消えつつある。
    だが、手の内を暴いてもないのに逃げる訳には行かないと俺は接近して鎚鉾を振るう。
    やはり空を切るがこれは見せ札……現世のゲームとやらにあったサマーソルトキックなる技、それを再現したものが本命だ。
    しかし、それすらも見抜いたかのように避けられ……着地の隙を狙おうとしたアーチャーを第三者の斬撃が襲った。

    「っ!?……お前は!」

     その斬撃をサーベルで受け止めたアーチャーは、斬り上げ、斬り下ろし、横薙ぎと続く斬撃を避けてそのまま距離を取る。
    その視線の先に居た襲撃者は……セイバーだ。

    「フォーリナー、貴女の存在を見過ごす訳にはいきませんので」

    「フォーリナー?……一体何を言って……ごえっ!?」

  • 136スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/06(Tue) 00:01:49ID:g4NDIxNjI(7/9)NG報告

     アーチャー、いやフォーリナー?のマスターがセイバーに問い掛けようとして、鞭のように束ねられた風の打撃に倒れた。
    セイバーのマスターの仕業だ……この手際、相手を無力化するのに慣れてやがるな。
    しかし、フォーリナー……エクストラクラスか?セイバーが嘘を吐いてないのは確かだが……まあ、奴の得体の知れなさを考えるとエクストラクラスのほうがしっくりくるな。

    「よく解らんが、とりあえずだ。セイバー、今回だけは味方で良いんだな?」

    「ええ、あのサーヴァントは危険です」

     断言するセイバー……茅理銀河のサーヴァントが入れ知恵したか?まあ良い。

    「ならば、合わせろ!」

     アーチャー、いやフォーリナーとの距離を詰め、鎚鉾で薙ぎ払う。
    大振りのそれを避けるフォーリナーだが、ドゥフシャーサナの援護射撃で逃げるルートは固定され、そこにはセイバーが居る。
    セイバーが放つは袈裟斬り、横薙ぎ、唐竹割り……避けきったフォーリナーだが、その姿勢は崩れている。
    その隙にフォーリナーの左手側に回り込んで跳躍、渾身の力で鎚鉾を振り下ろす。
    咄嗟に奇妙な形状の笏を実体化させて受け止める。
    だが、鎚鉾が笏をへし折り……いや、その衝撃すらも利用してフォーリナーが後ろに飛ぶ……なんて直感と思い切りだ。
    だが、奴もそろそろ限界の筈。

  • 137スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/06(Tue) 00:02:29ID:g4NDIxNjI(8/9)NG報告

     手にした鎚鉾が天井に突き刺さって新たなひび割れを作りながらも、俺はそう叫んだ。
    それに応えるかのようにサーベルを投げつけるセイバー。
    そのサーベルを叩き落としたフォーリナーだが、その頃には既にセイバーが距離を詰めていた。
    そして、セイバーの手には新たなサーベルがあり、フォーリナーを切り裂かんとばかりに振るわれた。
    最早、フォーリナーに打つ手は無い……筈だった。

    「『深淵に吼えよ、不可無き皇帝(マイン・ポッシブ・バッテリー)』」

     その時、悍ましい何等かの力で空間が歪んだ。
    原理も過程も解らないままにフォーリナーは斬撃を避けて間合いを抜け出し、ドゥフシャーサナの目の前に現れてサーベルを横に一閃。
    ドゥフシャーサナの上半身だけが衝撃で浮き上がってそのまま後ろへと倒れていき……その命と共に消滅する。
    それを為しやがったフォーリナーの軍服には歪な五角形の紋様が浮かび上がり、背には触手が出現。
    そして、その左手には人皮で装丁された本が握られていた。

  • 138スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/06(Tue) 00:07:32ID:g4NDIxNjI(9/9)NG報告

    以上です。

レス投稿

1.レス内の『>>(半角数字)』はアンカー、『http~』から始まる文字列はテキストリンク、
 YouTube・ニコニコなど一部動画サイトURLはプレイヤーに自動変換されます。
 アンカーは各レスの『』をクリックで自動入力が可能です。
2.名前の後に『#(任意の文字列)』でトリップを生成可能です。(※2ちゃんねると互換性なし)
3.画像投稿は1回の投稿につき1枚まで可能、各画像はサムネイル表示されます。
 GIF形式の画像はクリックまたはタップで再生されます。
4.誹謗中傷・暴言・煽り・スレッドと無関係な投稿は削除・規制対象となる場合がございます。
 また、他サイト・特定個人への中傷、暴言はおやめください。
※悪質な場合はプロバイダに通報させていただきますのでご了承ください。
 規約違反がある場合は各レスについている『報告』ボタンから管理人へ通知可能です。
 個別の削除依頼は『お問い合わせ』からご連絡ください。