聖杯大会本戦統合スレNO.5

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  • 1あやか◆8UqAuWjxP.2020/12/26(Sat) 14:20:07ID:Q0NDkxNDY(1/1)NG報告

    ・当スレッドはTYPE-MOON様原作Fateシリーズを題材とした二次創作作品をでもにっしょん掲示板利用者により共同制作したリレーSSを掲載するスレッドです。
    ・作品、設定作りの相談。参加者間の雑談は「聖杯大会予選会場」をご利用ください。
    ・次スレは>>950、又は>>970を踏んだ人がカテゴリー「その他」に建ててください。
    ・投稿前に混線を防ぐため投下の宣言並びに名前欄に作品タイトルを記載して下さい。また、確認の上他の方が投稿中である場合は少々時間を置いてからにして下さい。
    ※現在進行中の「Fate/TV SHOW~アイランド編~」、「Fate/TV the "SHOWt"」の2スレッドは順次統合予定です。掲示板利用者の方々には大変ご迷惑をおかけしております。
    ・まとめwiki :https://fatetv1830.wiki.fc2.com/

  • 2名無し2020/12/26(Sat) 16:16:16ID:czMjUxMDQ(1/1)NG報告

    サムネ

  • 3ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:43:37ID:cyNzA5MjA(1/15)NG報告

    じゃあ、召喚シーンが出来たので投下します

  • 4ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:44:08ID:cyNzA5MjA(2/15)NG報告

    「身嗜みはこれでいいわよね……。」
    姿見の前で、白のペプラムトップスと青のロングスカートを着た自分を見てぽつりと呟く。服に目立った皺などもないし、問題はないと思う。
    ……どういうわけか、へその下に令呪が現れた手前、それを隠すための服装にはなってしまうのだけど。
    「準備もこのくらいで大丈夫かしら……?」
    他に何か持っていく物はないか自室を見回す。海外へのパスポートはペレス島で行われる聖杯戦争への参戦が決まったその日のうちに申請して、一昨日受け取り今は麦わら帽子と共に机の上に置いてある。ペレス島へは船を使わないと行けないため、その近くまでの空港のチケットとペレス島へ向かうための船のチケットもショルダーバッグの中に入っている。ホテルも既に父が手配してくれているので問題はないだろう。残っている魔術道具や魔導書も、今回の聖杯戦争で使うのには嵩張るため置いていくことにした。
    あと必要なものと言えば英霊……サーヴァントを呼ぶための触媒くらいのものなのだけど─────
    トントン、とドアをノックする音が聞こえる。
    「はい?」
    ドアを開けると、うちで働いている家政婦『宮友』さんが立っていた。
    「おはようございます、お嬢様。」
    そう言ってロングスカートの端を摘み恭しく礼をしてくる。
    「も、もう……私の方が一回りも年下なんですから、そのようになさるのはやめてください、宮友さん。」
    「いえ、そういうわけにも参りません。確かに年齢で言えば私の方が上でございますが、立場は違います。私は旦那様に雇用された一労働者、そしてお嬢様は私から見れば雇用主である旦那様の愛娘でございます。そんな方に対して礼節を欠けば、私は旦那様に仕事を辞めさせられてしまうでしょう。」
    凛とした顔立ちの家政婦である宮友さんが表情を崩さぬまま、淡々とありのままの事実を語る。そして咳払いを一つし、用件を告げる。
    「こほん。それよりもお嬢様────旦那様が書斎にてお待ちでいらっしゃいます。」
    「お父様が……」
    「事の仔細に関しまして、私は何も仰せつかっておりません。恐らく、お嬢様とお二人で話したいことなのでしょう。」
    「そう、ですか……。」
    恐らくはサーヴァントを召喚するための触媒のことと……聖杯戦争へ赴くための心構えあるいは薫陶を授ける、といったところだろうか。

  • 5ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:45:05ID:cyNzA5MjA(3/15)NG報告

    「お嬢様。出立のお荷物は出来ていらっしゃいますか?」
    「え、ええ……。あとはパスポートを持てば終わりですけれど……。」
    「ではお荷物の方は先に下に下ろしておきましょう。里道さん、すみませんがお嬢様のお荷物を運んでくださいますか?」
    宮友さんが近くにいた初老の男性─────里道さんに声を掛ける。
    「ええ、分かりました宮友さん。蘇芳お嬢様、お荷物はどちらに?」
    「あ……待ってください、今、持って参りますから。」
    一度部屋の中へ引っこみ、机の上のパスポートをショルダーバッグの中に入れて、麦わら帽子と大きめのキャリーバッグと共に部屋の外まで持っていく。
    「すみません、お待たせしました。」
    「いえいえ待ってなどおりませんよ。では、お荷物は車の方に運んでおきます。」
    「はい、よろしくお願い致します。」
    「そちらのショルダーバッグは如何なさいますか?」
    「これは……お父様から何かいただくかもしれませんので、私が持っています。」
    「かしこまりました。」
    里道さんが礼をして荷物を抱え、宮友さんが立っているところとは逆方向に向かう。
    「では参りましょうか。」
    「……ええ。」
    宮友さんが先導する形で前へ行き、私はその後ろをついて行く。
    しばらくして父の書斎の前で宮友さんが足を止めて立ち止まる。私も彼女に倣い足を止めて立ち止まる。
    宮友さんが父の書斎のドアを、トントントン、とノックする。

  • 6ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:45:52ID:cyNzA5MjA(4/15)NG報告

    「旦那様、お嬢様をお連れいたしました。」
    「中に入れてやってくれ。」
    「かしこまりました。……お嬢様、中へお入りください。」
    そう言って宮友さんは書斎のドアを開け、私に中へ入るようにと誘導する。……そんなことをしなくても逃げることなんてできはしないのに。
    開けられた書斎のドアの前に立ち、父に向かって一礼する。
    「おはようございます、お父様。」
    「おはよう、蘇芳。そんなところに立っていないで早く中に入りなさい。」
    「……はい。」
    「静音は外で待っているように。くれぐれも聞き耳なぞ立ててくれるなよ?」
    「承知しております。」
    宮友さんが書斎のドアを閉める。もうこの場には私とお父様の二人しかいない。
    「さて……。お前を呼んだのは他でもない、今回の聖杯戦争についてだ。」
    場の空気に緊張感が満ちる。
    「お前にも概要は説明したと思うが……覚えている範囲で構わないから私に説明してみなさい。」
    「はい、お父様───────」
    息を、すう……はあ、と整え、記憶にある聖杯戦争開催の経緯を引き出し頭の中で簡略にまとめ、声に出す。
    「……まず、事の発端は地中海に地殻変動の影響で浮上してきた『ペレグリヌスベース』───以降は『ペレス島』と呼称させていただきますが───の中核部分にて、聖堂教会が願望機相当の魔力反応を検知し、それを『聖杯』と認定したことが始まりです。」
    目線で、父の様子を伺う。
    「……続けなさい。」
    「……はい。教会はまず第一にそれを確保、次いでペレス島そのものも手中に収めようとしましたが……ペレス島からは現代において貴重とされる鉱石資源が産出されるため、周辺諸国から多くの抗議が寄せられ、静謐を主とする教会は抗議を受け表層地帯……現在のペレス島における居住区や観光地などがあるエリアを開放しました。」

  • 7ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:46:29ID:cyNzA5MjA(5/15)NG報告

    もう一度だけ息を、すう……はあ、と整える。
    「しかし最近になって教会より『ペレス島にある願望機を優勝商品とした戦いを夏に行う。』というメッセージが魔術協会、及び魔術協会に関連する組織の上層部に密かに届きました。お父様はその情報を手に入れ、私の聖杯戦争への参加を取り付けた──────」
    「結構。それだけ覚えているのなら改めて説明する必要は無いな。さすがは才能ある『黒鳥家』の後継者だ。」
    「……っ、ありがとう、ございます……。」
    嗚咽が漏れてしまわぬよう、下唇を強く噛み締める。父にバレてはいけない。もし私が兄にされている仕打ちを知ったのなら─────兄がどうなるかなんて明白だから。
    「だが、所詮は教会が流した情報だ。必ずしも届いたメッセージに書かれていることが真実であるとは限らない。そも"願望機"とは言っているが……それが真であるかどうかなど、こちらでは判断のしようがことだ。」
    「……そうですね。」
    「故にこそ、注意は払わねばならん。お前に求めることは、ただ一つだ。」
    父がこほんと咳払いをする。
    「─────何をしてでも生き残れ。それが私がお前に求めることだ。」
    「えっ……?」
    思わず素っ頓狂な声が出る。生き残れ?聖杯戦争で優勝しろ、ではなく?
    「たとえ無様を晒しても、生き恥を晒してもかまわん。私達にとって『お前は』大切な後継者だ。後の代のためにも、お前を失うわけにはいかんのだ。かのエルメロイ家のような惨状になるのは御免だからな。」
    「…………はい、分かりました。」
    まるで『お前の兄はそうではない』────そう言い切っているも同然ではないかと思ったが、口には出さない。

  • 8ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:47:41ID:cyNzA5MjA(6/15)NG報告

    「差し当たって、お前に渡すものがある。」
    そう言って、父は書斎にある机の二番目の引き出しからトネリコの木で作られた木箱を取り出し、私の前に持ってくる。
    「……?あの、それは一体──────」
    「今回の聖杯戦争のために大金を叩いて購入したある英雄にまつわる触媒だ。お前なら見ただけでそれが何であるか分かるだろう。」
    父がトネリコの木箱の蓋を取る。
    そこにあったのは、黄金色の捻じ曲がった刀身。
    「……っ!?これは、まさか──────」
    「お前が思った通りの英雄だよ。そしてこの戦いにおいては、お前を守る剣となり盾となるだろう。」
    父が蓋を閉じ、私の手に木箱を持たせる。
    「飛行機の時間も近い、そろそろ出立しなさい。」
    父が書斎のドアを引き、外で待機していた宮友さんに声をかける。
    「静音。蘇芳を車まで連れていってやってくれ。」
    「かしこまりました。」
    「私も愛娘の出立を見送りたいから、同行させてもらうが……かまわないね?」
    「はい、旦那様の仰せのとおりに。」
    では参りましょうか─────宮友さんが先行し、その後に父、さらにその後に私が続く。
    玄関を出ると黒のリムジンと共に里道さんが待っていた。
    「お待ちしておりました。出立の準備は出来ております。いつでもご出発出来ますよ。」
    「ああ。……蘇芳、乗りなさい。」
    「……はい。」

  • 9ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:48:30ID:cyNzA5MjA(7/15)NG報告

    私が前に出ると、里道さんがリムジンの後部座席のドアを開ける。
    「よろしくお願いします、里道さん。」
    そう里道さんに言って会釈をし、リムジンに乗り込む。私が乗り込んだのを確認してから里道さんがドアを閉める。
    「では、里道さん。くれぐれも蘇芳に怪我のないよう頼むよ。」
    「心得ております。蘇芳お嬢様に万が一のことなど起こしませんとも。」
    昔からの付き合いである父と里道さんのやりとりの後、里道さんが運転席に乗り込みシートベルトを締める。私も後部座席ではあるが、近年の法改正のことを覚えているのでシートベルトを締める。
    「では、出発致します。お忘れ物などはございませんね?」
    「……ええ。出発してください、里道さん。」
    「かしこまりました。」
    里道さんがクラクションを軽く鳴らし、シフトレバーを入れ、アクセルを踏み込む。
    ゆっくりとリムジンが前進していく。
    ふと後ろを振り向くと、そこには深々と礼をする宮友さんと手を後ろ手に組み私を見送る父の姿があった。
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    「………………………」
    「………………………」
    重い沈黙が空気を支配する車内。
    沈黙の主たる原因は私だ。何度か里道さんに話しかけられても「はい」だとか「ええ」だとか、そんな風に返してしまうから会話が途切れて後に続かない。里道さんの振ってくれるお話はどれも他愛のない世間話程度のことばかりなのに、だ。
    それゆえに、空港まで続いている高速道路に入ってからはてんで会話は無くなっていた。

  • 10ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:48:59ID:cyNzA5MjA(8/15)NG報告

    「はあ……。」
    ため息を吐く。里道さんに対してではない。何を話せばいいのか分からない、会話を続けられない、そんな弱虫で情けない自分自身に嫌気が差して。
    「蘇芳お嬢様。」
    そんな空港に続く高速道路に入ってから、初めて里道さんに話しかけられる。
    「……なんでしょうか?」
    「蘇芳お嬢様は旦那様……お父上のことはお嫌いですか?」
    「えっ───?」
    そんなことを言われて私は即座に返答できなかった。
    「ご安心ください。ここでの会話は旦那様には内密に致しますので。」
    「そう言われましても……。」
    私は答えに窮してしまった。
    父のことを嫌いであるはずがない。魔術師としても、一人の父親としても、尊敬に値する人物だと私は思う。
    けれど、それでも答えに窮したのはひとえに兄のことがあるからだろう。
    私が兄よりも優れた魔術師としての才を見せたあの日から、父にとって……いや、父母にとって兄はどうでもいい存在になったのだ。そうなる前は私がそうだった。幼くしてバイオリンのコンクールで賞を取った時も人前でこそ褒めはすれど、人前でなくなればそんなことはどうでもいいと言わんばかりに無視をした。兄や里道さんや宮友さんに褒められて嬉しかったが、だけどそのことをいの一番に褒めて欲しかったのはやはり他ならぬ父母なのだ。
    だから父母の興味を惹くために、当時どういうものなのかも、何に使うものなのかも分からない魔術器具に手を出して、なんとか完成させてみたのだ。……それが結果として兄との関係に軋轢を生むことになったのだけど。
    「蘇芳お嬢様。」
    思考の渦に飲まれかけていた私を、里道さんが優しい声音が正気に戻した。
    「……何かしら?」
    「お優しい蘇芳お嬢様のことです。きっとお父上のことは好きでも、兄上である千寿様のことで素直に好きだと言えないのではありませんか?」
    「────っ。」

  • 11ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:50:05ID:cyNzA5MjA(9/15)NG報告

    当たりだった。いや、きっと私が分かりやすいだけなのだろう。
    「私はそれでも良いと思いますよ。」
    「そう、でしょうか……?」
    「人の評価というのは時が経てば変わるもの。子供の時には輝いて見えていたものが、大人になればどこにでもある普通のものに見えてしまう。逆もまた然りです。」
    「……私には、よく分かりません。」
    手を膝の上で小さく握り締める。里道さんが、ははは、と笑う。気が付くと空港はもう目と鼻の先だった。
    「蘇芳お嬢様にも、いつか分かる日が来ますよ。」
    里道さんは穏やかな笑みを浮かべて、そう言う。
    「…………はい。」
    私は、一体どんな表情(かお)でその言葉に答えのだろうか?
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    空港にて里道さんに「では、お気を付けていってらっしゃいませ。」と見送られ、空港の国際線ターミナルから出立した。一度フランスで飛行機を乗り継ぎギリシャからバスでペレス島行きの船が出ている港へ向かい船に揺られ、日本からかれこれ半日以上。
    「はあっ……疲れた……。」
    ようやくペレス島に到着した。時差ボケによる倦怠感はあるものの、動けないほど酷くはない。空を見ると既に夕焼けが差し込みつつあった。
    「先に監督役の方に挨拶しないといけないわね……。」
    夜になって訪れても迷惑だろうし、早めに済ませてしまおう。
    「とりあえずは市街地ね。ホテルもそこにあるのだし、監督役に挨拶してからチェックインしても問題はないはず。」

  • 12ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:50:59ID:cyNzA5MjA(10/15)NG報告

    もしかしたら晩ご飯を食べ損ねるかもしれない、とも思ったが普段からあまり多く食べるというわけでもない。一食程度抜いても問題ないかもしれないわね。
    そんなことを考えながら市街地行きのバスに乗りこむ。船に乗っている時も味わったが、日本とはまた違った潮風とその匂いはここが日本から遠く離れた異国の地であることを実感させる。
    「まもなく"市街地・教会前"です。お降りの方は─────」
    バスの硬貨口に空港で両替した小銭を入れ、バスを降りる。
    目の前にあったのは、およそギリシャの市街地の雰囲気にそぐわない厳かな礼拝堂。色こそ白色であるものの、外見は明らかにギリシャ正教会のものではなく彼らの本山─────聖堂教会でよく見られるものだ。
    ドアの取手を掴み、トントン、トントン、と四回ノックする。
    「はーい、少々お待ちくださいねー。」
    建物の内部から若い女性の声が聞こえてくる。声の感じからして、私とそう年は変わらない……ように思う。
    「すみません、お待たせしましたー……って、あら?あなたは──────」
    出てきたのは年若い……というより明らかに私より年下の少女だった。見た目から考えるのならば、ここに勤めているシスター、だろうか?
    ともかく、挨拶をしないのは失礼だろう。
    「お初にお目にかかります。私は黒鳥蘇芳というものです。魔術協会より今回の聖杯戦争のために遣わされました。今日は監督役の方にご挨拶に参りました。」
    深々と頭を下げる。すると嬉しそうな声が聞こえ、右手を上げさせられ小さな両手で包まれてしまう。
    「まあ!あなたがそうなのね!会えて嬉しいわ!」
    「は、はあ……。」
    確かに同年代ではあるのだし、喜ぶのは納得できる。とはいえ目の前の少女が監督役だとは、とてもではないが思えなかった。
    「あの、失礼とは存じますが、監督役の方はどちらにいらっしゃいますか?」
    「はい?監督役は私ですが?」
    「え?」「え?」
    思わずお互いに聞き直す。……そんな馬鹿な。目の前にいる少女が、この聖杯戦争の監督役、だって言うの?

  • 13ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:51:29ID:cyNzA5MjA(11/15)NG報告

    「あのー……失礼ですが、もしかして私のこと聞いていなかったりします?」
    「え、ええ……。私は父を経由して今回のお話をいただきましたので……。」
    「あー……まあ、そうですよねー。私みたいな小娘が監督役とか、普通は思いませんものねー……。」
    ずーん、と目の前の少女が暗くなる。
    「す、すみません……お気を悪くさせてしまって……。」
    「あー、いえいえ、仕方のないことですよ。私だってこんな小娘が監督役だ、なんて言われたらビックリしますもの。」
    あはは、と快活に笑ってみせる少女。
    「こほん。では私も自己紹介をば。私はメイベル・B(ブルトン)・クラークと申します。此度の聖杯戦争を監督せよ、との命を教会より受けて、このペレグリヌスベースの地に派遣されました。万が一の際には教会までお越しください、何があっても必ずその身を保護させていただきます。これでも代行者見習いですので、腕には自信がありますよ?」
    悪戯っ子な笑みを浮かべるメイベルと名乗った少女。私は改めて礼をする。
    「先程は失礼致しました。これからよろしくお願いします、ミズ・クラーク。」
    「メイベル、でかまいませんよ。私もあなたのことは、スオウ、と呼ばせていただきますので。」
    彼女と互いに握手を交わす。
    「ところでスオウ。サーヴァントの召喚はお済みですか?」
    「いえ、それはこれからです。」
    「早くした方がいいですよ。他の参加者達はもうサーヴァントを召喚していますから。」
    「……ご忠告、感謝します。それでは私はこれで失礼します。」
    私はもう一度メイベルに礼をして、父が予約したホテルへ向かった。

  • 14ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:51:59ID:cyNzA5MjA(12/15)NG報告

    ホテルのチェックインを済ませ、キャリーバッグから陣を敷くための道具を一通りショルダーバッグに入れて移動する。
    神秘の秘匿のことを考えると市街地や倉庫街などでの召喚は避けるべきだと考え、あまり人が立ち寄らない場所の方がいいだろうと考え─────
    「ここで良いかしら……。」
    青々とした木々が生い茂るペレス島西部にある森林地帯の開けた場所に、私は足を踏み入れていた。
    周りは既に闇に覆われており、これ以上深くなれば戻ってくるのは容易ではないだろう。
    「早く済ませてしまいましょうか……。」
    ショルダーバッグを手頃な切り株の上に置き、ショルダーバッグから陣を敷くための道具を取り出し、手順に沿って陣を敷いていく。陣を描き終えたところで、私はトネリコの木箱から触媒である黄金色の捻じ曲がった刀身を取り出す。
    「あとはこれを陣の中央に置いて、と……。」
    これで準備は整った。
    「すう……はあ……」
    深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。
    大切なのはここからだ。

  • 15ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:52:34ID:cyNzA5MjA(13/15)NG報告

    「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師黒鳥天彦。
     降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」
    「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
     繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する─────」
    大気に満ちる魔力(マナ)の動きが変わる。
    「───── 告げる。」
    「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
    聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
    魔力(マナ)が突風となって吹き荒び、周囲の木々を揺らしていく。あと少し─────
    「誓いを此処に。
     我は常世総ての善と成る者、
     我は常世総ての悪を敷く者。
     汝三大の言霊を纏う七天、
     抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」
    最後の詠唱を終え、陣の中央に巨大な魔力が収束し、閃光を放って爆ぜる。
    「きゃっ────!?」
    その衝撃の強さに私は思わず目を閉じ、自分の身体を支えきれずに尻もちをついて倒れる。
    「─────────あ、」

  • 16ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:53:40ID:cyNzA5MjA(14/15)NG報告

    そして私が再び目を開くと、私は言葉を失った。
    目の前にいたのは、先程まではそこに存在しなかった長身の精悍な男だった。
    すらりとした長い手足、深い青色の髪、夜であろうとはっきりと認識することが出来る真紅の双眸、蒼い装束と肩当てとプレートメイルのみの軽装鎧、その上からでも分かるほどに鍛えられ練り上げられたしなやかな筋肉。
    だが何よりも目を引くのは、その背にある黄金の光を放つ螺旋状の剣。その剣が何であるか、見間違いようもない。
    男が口を開く。
    「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ、参上した。」
    男の眼が尻もちをついたままの私に向けられる。
    「────問おう。お前が、オレのマスターか?」
    返答次第では即座に斬る。そう意思が込められている気がした。
    「え、ええ。私が、あなたのマスター、です……。」
    「そうか、そりゃあ良かった!こんな別嬪さんを殺 すなんざ寝覚めが悪りぃからな!あんたがマスターで良かったよ!」
    がはは、と豪快に笑うセイバー。
    「立てるか、マスター?」
    「え、ええ……。ありがとうセイバー。」
    セイバーが右手を差し出し、私がその手を握るとそのまま私を引っ張り上げ立ち上がらせる。
    「マスター、あんたの名前は?」
    「……蘇芳。黒鳥蘇芳よ。」
    「黒鳥蘇芳、ね。よし、覚えたぜ!オレの真名は────」
    「クー・フーリン。ケルト神話、アルスターサイクルで語られる大英雄……よね?」
    「お。なんだ、オレのこと知ってんのかい?」

  • 17ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2020/12/31(Thu) 00:54:11ID:cyNzA5MjA(15/15)NG報告

    「お。なんだ、オレのこと知ってんのかい?」
    「触媒を見たときに『もしかして』と思ったもの。あなたではなく、兄弟子のフェルディアが召喚されるかもしれないとは思ったけれど……。」
    「なるほどね。まあ、改めて自己紹介させてくれや。」
    セイバーが私の顔をじっと見て改めて名乗りを上げる。
    「オレの真名はクー・フーリンだ。今回はセイバーのクラスでの現界だが……まあお互い悔いを残さないように頑張ろうや、マスター。」
    「ええ、こちらこそよろしくねセイバー。」
    改めて握手を交わす。
    今日この夜、私は一つの運命と出会った────のかもしれない。

  • 18スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:19:38ID:IyODMxMjg(1/10)NG報告

    第■回、三日目戦闘開始します。

  • 19スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:20:26ID:IyODMxMjg(2/10)NG報告

    『弁護士士郎の今日のごはん。本日はあったか寄せ鍋を……』

    『男子バスケ、昨日の来栖ストームズは……』

     暇を持て余したアサシンが見てるテレビの音声が聞こえる中、昼食の準備をする。
    といっても自炊したのはご飯位で、味噌汁はフリーズドライだし、漬物とエビフライとスコッチエッグはスーパーで買ったやつだけど。
    少し多めだけど今朝は食欲が無くてお粥と沢庵で済ませてたから、この位食べないとアサシンが満足しないし。

    「アサシン、飯にするぞ」

     という感じに、昨日の乱戦が嘘だったかのように平穏な時間を過ごす筈だった。
    他陣営に比べて消耗が大きかったのもあって少し様子見に徹しつつ身体を休める……その判断自体はおかしく無かった筈だ。
    しかし、それが起こったのは、食べ終わって後片付けしようとした時だった。
    隣室から強烈な轟音と振動、それに結界が容易く破られ、崩落する壁は竪琴……自動的に侵入者の気力を減退させる音を鳴らす魔術礼装を押し潰した。

    「チッ、反則にならねえギリギリを!逃げるぞ!」

     そして、状況を把握しきる前に俺はアサシンにマンションから連れ出された。

  • 20スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:22:31ID:IyODMxMjg(3/10)NG報告

    「アーチャー、これ、本当に大丈夫なんですか?失格になりません?」

    「安心しろ、敵サーヴァントが敵マスターを守る余裕も、敵陣営が脱出する余地も十分に与えている。最も、そうでなくとあのサーヴァントならマスターを連れて脱出してるだろうな」

     雑居ビルの屋上から敵陣営の拠点があるマンション……というか、敵の拠点の隣室へ
    まさかの砲撃。
    更に、マンションが壊れない程度に拠点となる部屋以外へと砲弾が撃ち込まれていく……。
    拠点にしようとした北西の山が運営の管理下にあって入れなかったのもありますけど、情報収集に徹している間に二陣営も敗退したのはアーチャーにとっても衝撃だったようで……結局、割り出した敵拠点の破壊へと作戦を変更する事になりました。
    ちなみに、手鏡を起点に幻影を発生させているので、相手に見られる事は無いはずです。

    「これで終わりだ」

     おっと、いよいよ敵拠点となる部屋に砲撃……限界を迎えたマンションが崩壊しました。
    この他にも二つの陣営の拠点を目星がついてますし、残る一つの陣営もその片方と同盟を組んだようです。
    ええと、次は……。

  • 21スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:23:37ID:IyODMxMjg(4/10)NG報告

    「伏せろ!」

     アーチャーが叫ぶと同時に降り注ぐ矢の雨。
    咄嗟に身を伏せると、此方に飛んでくる矢は全てアーチャーがサーベルで叩き落としましたが……何かが割れる音。
    そちらを見ると幻影を発生させていた手鏡が矢に貫かれていました。

    「砲撃の来る方向から此方のおおよその位置を割り出したか……来るぞ!」

     矢が飛んできた方向には、褐色の男が弓を構えていました。

  • 22スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2020/12/31(Thu) 14:26:31ID:IyODMxMjg(5/10)NG報告

    以上です。

  • 23ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:15:53ID:AxNjg5Mzc(1/5)NG報告

    来た道を戻りながら、ライダーさんは私の置かれている状況を一つずつ丁寧に教えてくれました。

    今回の聖杯戦争はどこかにあるダンジョンの奥底にある聖杯への競争であること。
    正式に参加を認められるためには、どこかにある教会まで行って監督役の人に報告する必要があること。
    でも、その前であっても敵の「魔法使い」であるところの人たちは(正確には「魔術師」というのが正しいのだけれどね、とライダーさんは注釈をいれました)平気で襲ってくるから備えておく必要があること――

    それからややあって、実感が無いなりにも私がこれらのことを呑み込めたことを確認するとライダーさんは言いました。

    「どうするにしても――とりあえずまず、マスターは家に帰って服を着替えるべきだね。エレガントなドレスだけれども、あまり動き回るには向いていないとライダーは思うよ」

    その通りでした。
    なるべく見つからないように抜け出すために、私は着の身着のままこっそりと抜け出してきたのでした。
    あまり装飾の多くないフォーマルなドレスとはいえ、ここまで来るだけで何度も着替えてくるんだったと後悔したくらいですし、当然のことです。
    しかしながら私の口をついて出てきたのは、そんな論理的な考えとは正反対の言葉でした。

    「嫌です!」
    「どうして?服装のことを除いても、何かと準備は必要だとライダーは思うけれど」
    「それはその・・・・・・ほら!私、ワクワクしちゃって今すぐにでも行きたいなーって言いますか!」
    「そんなハイヒールじゃ、ダンジョンなんて歩けないよ」
    「うぅ・・・・・・それはその通りですけど・・・・・・」

  • 24ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:16:13ID:AxNjg5Mzc(2/5)NG報告

    >>23
    煮え切らない態度の私にライダーさんはううん?と首をひねりました。
    が、すぐに大きくうなずきました。

    「わかったよ。事情は分からないけれど、戻りたくない理由があるんだね。でも、そのままっていうのはやっぱり危ないから――誰にも見つからないようにこっそり荷物だけ取りに行こうよ」
    「そんなことできるんですか?」
    「当然!ライダーは『騎兵』のクラスで召喚されたサーヴァント。このクラスのサーヴァントは便利な乗り物を持っているんだ。それに乗って、窓からピュッと入っちゃおう」

    この提案は、私にとって渡りに船でした。
    両親に見つからないことが大前提ですが、服装はともかく大切な宝物を置いてきてしまったので、それだけでも回収したいというのが本心だったからです。
    ライダーさんにしてみても「これ以上は譲らない」といった様子であったため、私は今度こそおとなしく従うことにしました。

  • 25ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:16:45ID:AxNjg5Mzc(3/5)NG報告

    >>24
    ◆◆◆◆◆◆

    帰路の半ばくらいまで来たときでしょうか。
    突然、先を行っていたライダーさんがはたと足を止めました。

    「妙に人通りが少ないとは思っていたけれども・・・・・・見つかったか!」

    一瞬何を言っているのか理解できなかった私でしたが、すぐにハッとしました。
    ここに至るまでの20分ほどの道のり。その途中で確かにまだ誰ともすれ違っていません。
    いくら中心部から離れているとはいえ、ここは観光地。まだそこまで遅い時間でもありません。これだけ歩けば、1人2人くらいには出会って当然とも思います。
    表情をこわばらせたライダーさんの様子からいっても、敵の魔術師が人払いを済ませていたという事なのでしょう。

    『命がけで戦う』。ライダーさんはそう言っていました。
    これまでどこかテレビ番組の設定のような気持ちで聞いていたこの言葉が急に現実的に感じられ、心臓の鼓動が早鐘のように響きます。

  • 26ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:16:56ID:AxNjg5Mzc(4/5)NG報告

    >>25
    ナイフのような緊張感の中、通りの向こうから2人組の人影が現れました。
    ギラギラとした獣のような男の人と、穏やかな雰囲気を纏った男の子。
    ライダーさんがさっと私をかばって立ちふさがりましたが、男の人は拍子抜けしたような声を上げました。

    「なんだ、随分弱そうな連中じゃねぇか、オイ。殺意がまるで感じられねえ。マジで戦争の参加者なのか?」

    一瞬、人違いであるところの状況を期待したのですが、男の人はすぐに鋭い爪を構えて、口角をギッと残酷に吊り上げました。

    「まあ、サーヴァントを連れているってことは間違いないんだろ。オレのアドニスを脅かそうとするやつは例外なく全排除だ!」

  • 27ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2020/12/31(Thu) 19:21:17ID:AxNjg5Mzc(5/5)NG報告

    >>26
    以上です。

    市街地での正面からの戦闘。
    ルドルフ2世の初手は、目先の脅威と判断したジェラールに向けて金糸で編み上げた無数の鎖付き楔を飛ばします。
    来野を守りつつの撤退戦を意識しているため、可能な限りアウトレンジからの攻撃を行い隙を見ます。

    山星さん、よろしくお願いします!

  • 28第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:49:53ID:I3ODU1MDg(1/14)NG報告

     鏡のようなものを見ているのかと思った。
     どこか私に似ていて、どことなく私と違うそんな女性の夢。
     彼女は私と違って可憐で、華やかで、とても可愛らしくて。
     隣にいる彼が笑うのは、当然のようなことに思えて。
    「アー……チャー……」
     目が覚めて最初に出たのは、そんな力無い言葉だった。
     全てを見ていた。パスを通して知覚していた。
     彼の生き様を。彼の王道を。ファラオという一つの在り方を。
    「アーチャー……アーチャー……アーチャー……ア、メン……」
     私を守ると、共にあると誓ってくれた弓兵(かれ)は、狂戦士(へび)と相打ちになった。
     彼女が……クローディア嬢が隣で寝ていることを忘れてしゃがみこみ、そのまま泣き崩れる。
     手放したくなかった。失いたくなかった。私の起源は譲渡。それは理解していたつもりだけど、まさかここまで無くすなんて思ってなかった。
     ……本当に、笑わせてくれるわ。
     まさか勝ちまで『譲る』ことになるだなんて、誰も思わないじゃない。
    「本当に、馬鹿な女……」
     何も、何も出来なかった。
     共に戦うことも。勝利に貢献することも。彼が聖杯を手に入れる一助にすらなれなかった。
     彼には与えられてばかりで、何かを与えることが出来なかった。

  • 29第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:52:28ID:I3ODU1MDg(2/14)NG報告

    >>28
    「何が譲渡よ。馬鹿じゃないの。肝心な時には役に立たないくせに」
     口から出るのは呪いに濡れた言葉ばかり。
     ああ、本当に。この感情が私を塗り潰して、息の根を止めてくれたらいいのに。
    「そう泣くな。せっかくの美人が台無しではないか」
     私は馬鹿で。どうしようもなく、最低な女で。
     だから、掛けられた声に即座に反応することが出来なかった。
    「アー、チャー……なんで、どうして……」
     テラスに立っていたアーチャーの姿を目視して、慌てて表へと飛び出した。
     貴方は消えた、倒されたはずじゃ。それだけの言葉がどうしても口に出来ない。
     だって、それを言ったら……私たちの、ううん。彼の負けを、認めてしまうことになるから。
    「……曲芸。見事なり。シズカ、汝はな。あの直前で余との契約を断ち切った……それに汝の起源が加わり、今の余は、この地の聖杯と契約を結んでいる。とは言っても、あまり猶予はないのだがな」
    「……そう。どうしようもないとは思ってたけど、土壇場で仕事をしたのね。私の起源は」
     ということは……あの人が、きっと彼の妻。
     彼の夢を見たということは、大なり小なりまだ繋がりがあったというわけね。

  • 30第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:52:53ID:I3ODU1MDg(3/14)NG報告

    >>29
    「うん? ……汝と起源の間にどのような悶着があったかは知らぬが……まあともかく、だ。
     ―――ごめんよ、シズカ。僕は負けた。サーヴァント失格だ」
     頭を下げる少年王。歳も変わらず、背丈もほぼ私と同じ子供。この小さな身体に、私は幾度となく助けられてきた。
     少年王ツタンカーメン、18王朝を収めたファラオ。幾度となく戦場を駆けたその背中が、小さく震えていた。
     ―――私は、彼にどれだけの重荷を背負わせていたのだろう。
     ―――私は、彼にとってどれだけの重荷となっていたのだろう。
    「そんなことはない!」
     その華奢な肩を掴み、私は思いの丈を吐き出した。
    「貴方に出会えてよかった。貴方と戦えてよかった。私は不出来で、みっともないマスターだったけど、貴方への想いは誰にも負けてないつもり。そこだけは、誰にも譲らない」
    「そうか……それは良かった。感謝するぞ、マスター。
     余は―――いいや。僕は、君という女性を誇りに思う。
     君に出会えたこと、君と戦えたことは僕にとってとても幸福だったさ……君は似ているんだよ。アンケセナーメン……僕の、かつての妻だった女性に。
     ああ、ごめんよ。もう少しだけ君の助けになりたかったけど、これでお別れだ」

  • 31第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:53:14ID:I3ODU1MDg(4/14)NG報告

    >>30
     消えていく。アーチャーが、アメンが消えていく。
     こんな状況でも私は何も出来なくて、ただ思ったことを口にすることしか出来なかった。
    「……十分、よ。十分なくらい、貴方には助けられてもらった」
    「そうかい? ……そう言われると心配だな。僕がいなくなって、朝起きられるといいんだけど」
    「大丈夫よ。元々一人だったんだから」
    「朝起きて、着ていた服を脱ぎ散らかすというのは……」
    「そ、それは貴方が脱がしただけでしょう!?」
     馬鹿。本当に馬鹿。私の初めて返しなさいよ。
     最後の最後までこんな調子。出会った時と何も変わらない―――今では、永遠に続くことを願ってしまうような時間。
     だからといって、こんなことをいつまでも続けるわけにはいけない。
     私は生者で彼は死者。こうして交われたことが本来なら有り得ないのだから。
     呪う、ということは魂から零れた感情を以てこの世界に働きかけるということ。
     魂というカタチに触れる私達は、死者と生者の境を厳守しなければならない。

  • 32第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:54:06ID:I3ODU1MDg(5/14)NG報告

    >>31
     日が昇り、朝焼けの光が私達を優しく照らす。
     聖杯大会中は太陽を見ることがあまり出来なかったから、その光はまるで施しのようだった。
     それでも。不思議と懐かしくは感じなかった。
    「ファラオというのはラーの息子、太陽を司るものなんでしょう? もう少し発言に清くありなさいよ」
     ……きっと、貴方がそばにいてくれたからね。アーチャー。
    「確かに君の言う通りだが……今の僕がファラオを名乗るのはおごがましい。僕はアーチャー……君を守る、ただ一人のサーヴァントさ」
    「羞恥心とか無いのかしら……じゃあ、私も言わせてもらうけど」
    「うん。どうぞ?」
    『今までありがとう。貴方に出会えて良かった』
     それだけを。ただそれだけを伝えればよかったのに。
     振り絞って、振り絞って、振り絞って振り絞って振り絞って。
     出たのは、あまりにも単純な言葉だった。





    「―――アーチャー。貴方を、愛しています」

  • 33第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:54:40ID:I3ODU1MDg(6/14)NG報告

    >>32
     私は何も出来なかった。
     貴方に何かを与えることが出来なかった。
     元々私に与えられるものなんてたかがしれていて―――あとはもう、この心しか渡すものがない。
     私の心を貴方に差し上げます。アーチャー。
     貴方さえ良ければ、どうかこの思いを受け取って欲しい。
     十七年間の集大成とも言えるような、一世一代の大勝負。
     そんな言葉に、彼は。

    「―――シズカ。僕も、君を愛している」

     いつもと同じ表情でそんなことを返してきた。
     その変わらなさに、私は不覚にも笑ってしまって。

     瞬き一つか二つの刹那―――彼は消えてしまっていた。

  • 34第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:55:10ID:I3ODU1MDg(7/14)NG報告

    >>33
    「本当に……貴方は、最後まで変わらない……」

     サーヴァント、アーチャー。ツタンカーメン。
     あまりにも劇的だった彼との出会いは、その最期の瞬間までもが絵画のようだった。
    「……ありがとう。アーチャー」
     ツタンカーメン。偉大なるファラオ。ラーの息子。太陽のような人。
     私はこれからも進んでいきます。貴方との出会いの全てを胸に抱いて。
     前を向いて、まっすぐに―――こんな私のことを誇りと呼んでくれた貴方の顔に泥を塗ることがないように。
     私はきっと迷いません。私の胸の中には貴方がいる。
     貴方が私の進む道を照らしてくれる限り、私はきっと大丈夫。
    「貴方は、太陽。これからも貴方は私を照らしてくれる……そうでしょう? アーチャー?」
     朝の強い日差し、アメリカ独特の気候を肌で感じながら私はそんなことを何ともなしに呟いた。
     誰も聞くものがいないはずの言葉。そんな独り言に……

    『無論。余は汝の従者である故にな。マスター』

     いつかどこかで聞いたような言葉が、耳をくすぐった。

  • 35第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:55:58ID:I3ODU1MDg(8/14)NG報告

    >>34

     その日、夫婦の元に一通の手紙が届いた。
     夫婦は中を開き、たいそう喜んだという。
     さて。その内容とは……?

    『親愛なるお父さんとお母さんへ。お久しぶりです。静香です。
     詳しく話すと長くなるので手短に済ませますが、以前話していた古書堂の件について前向きに考えてみたいと思います。
     大事なことと思うので、先んじて手紙を送らせてもらいました。また今度電話をしようと思います。言質が欲しいならこれを使って好きなだけ呪術をかけてください。
     私は逃げも隠れもしませんから、どうぞお好きなように。
     それと、年明け前には一度帰国しますので。話はその時にでも』






    第一回聖杯大会・5日目早朝

    アーチャー(2騎目)陣営/エピローグ『曙光の別離』End.

  • 36第1回乱入弓陣営『曙光の別離』◆4QvCgGuW1A2020/12/31(Thu) 19:56:14ID:I3ODU1MDg(9/14)NG報告

    >>35
    以上です

  • 37魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:37:37ID:A0MjE3MDM(1/5)NG報告

    vs山星不湯花&キャスターの続きです。 


     相手を打ち倒すための宝具同士の鍔迫り合いであるならば、神秘の寡多はあれど、より深く踏み込んだ方が押し込めるものである。
     百鬼夜行のもののけたちへと神代の毒が浸透していく。
     しかしながら、届かない。それはまるで上流から下流へと向かう川の流れに逆らうようにして槍と毒が浸透していくが、大きな流れは変わらない。
    「っつぅ…………!!」
     ランサーはさらに空中で槍を投擲する。杭打ちのように射出された槍は毒の魔力を推進力にして、穂先で百鬼夜行をかき分け撃ち抜いた。
     駆け抜けた槍は群を抜け空を裂き、しかしながら何にも突き刺さることなく飛んでいった。
    「割に合わない……!」
     つまるところ、キャスターとそのマスターを取り逃したのだ。

  • 38魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:38:40ID:A0MjE3MDM(2/5)NG報告

    >>37
     ところで。一方で、あった。
     空中に向けて思いっきり投げさせた上に、キャスターによって喚起状態を解除させらものだから、ただの魔術師に戻った青年がまっさかさまに墜落した。
    「あでっ」
     まずひっくり返ったせいで肩から地面に激突して、
    「ふげっ!」
    そのままバウンドして、
    「ほでっ……!」
    3回目でごろごろ転がって、ルーカスはようやく地面にくっつくことができたのだった。まあ相当に格好は悪いけれど、とりあえずオーディエンスは退場したであろうし、観客に見えない位置ならいいだろう。ストーリー・アウト。ここからは幕外のことである。
    「いっ…………いだだだだ…………」
    「……済まない、仕損じた」
     ランサーは地面に刺さっていた槍を拾い、マスターの元へと歩いてきた。すでに限界まで高められていた敏捷のステータスも、もとの、(それでもランサーらしく高いのだが)数値に戻っており、それも含めて戦闘が終了したことを両者に理解させていた。
     ルーカスは仰向けに転がってぴくりとも動かない。
    「マスター……マスター?」
    「……………………た」
    「もしかして、立てな」

    「逃した逃した逃した逃した逃した!逃したぁ!!」
     打って変わって仰向けのまま、ルーカスがじたばたと手足を振り回す。先ほど地面に激突した肩や、戦闘中に負傷した腹部はやや庇いながら、とにかくじたばたしていた。
    「あああああああああ逃したぁぁ!!!仕留め損なったああああ!!!!」

  • 39魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:39:14ID:A0MjE3MDM(3/5)NG報告

    >>38
     ランサー・テレゴノスは、はぁ、とため息をつく。
    「思いのほか元気そうでよかったよマスター」
    「いやあランサー、そこまで元気ではないかな」
     とりあえず呪詛だけは解析して外しておくよ、と言うと、魔術師の両腕の魔術刻印が明滅を始めた。黄泉比良坂が展開されて、神の光を喚起するまでの間に受けた亡霊たちからの呪詛を、一つ一つ解析して、知恵の輪を外すようにほどいていく。最初にキャスター側から雨のように降り注がれた攻撃や、終盤に全員が揃った状態でキャスターから撃たれた乱撃を全回避させたタネもここにある。
     つまりは、光量子を用いたフォトニック・コンピューターのまねごとである。
     魔術師の魔術回路はスマートフォンに匹敵するほどの演算機能を持たせることができる、なんてことを誰かが言った。携帯端末は単なるトランシーバーでは無い。持ち歩きの可能なコンピューターである。魔術師はそれを体内に内蔵出来る上、ルーカス・ソールァイトはさらに光素を用いることでさらに演算機能を増産している。
     結果として、ちょっとしたルームくらいのコンピューターのスペックを出力することが出来ているのだ。解析、演算、資格情報を与えられた上での分析ならば、個人で相当なことまで出来てしまう。
    「ん……解けた。それでダメージがなくなるわけでは無いのだけれどさ」
     ルーカスが体を起こす。ホコリを払って立ち上がる。

  • 40魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:40:10ID:A0MjE3MDM(4/5)NG報告

    >>39
    「だから言ったのに。とりあえず直感的にも早々に退かせておいた方がいいんじゃないかと」
    「いやいや、とりあえずも何も、セイバーもアーチャーもライダーもキャスターも、全員僕たちで始末するんだよ、ランサー?」
    「全員がバトルロワイヤルをやっている中でうちのマスターだけは勝ち抜き戦をやっておられる」
    「うん?本当なら同じことだよ?僕が本当に強ければ」
    「はぁ……君は勝つ上では良いマスターかも知れないが、生き残る上でははずれだよ。まったく」
     言われる当の本人は気にせず体を伸ばしている。
    「それにしてもキャスターのマスターは興味深い…………人間でないと意味がない僕の決戦術式(ワールドエンド)に引っかかっていたのに、人でない部分もあるようでいて、うん…………おもしろい」
     こくこくと1人で勝手にうなずいてランサーの方に向き直る。
    「また、やるのかい?」
    「うん。またやるよ?出来れば今からでも追いかけ回したいくらい」

     リスクマネジメントが出来ていないうちのマスターは、きちんと手をかけていないとでしゃばりで死ぬ。
     ランサーはそう理解してルーカスに肩を貸した。

  • 41魔術師◆TvNZI.MfJE2020/12/31(Thu) 22:40:33ID:A0MjE3MDM(5/5)NG報告

    >>40

    「あぁ……ところで、僕が導くに足るような英雄がその辺に転がってはいないものだろうか」
    「そこらで拾うより君がなった方がよほど早いのでは?」
    「ランサーは馬鹿だなぁ、この手のものは魔導士が自分でなるなんて言ったらひどい目に遭う前フリと同じなんだよ」
    「あと交戦していないのはどこだったかな、セイバーとライダーには仕掛けた後にキャスターの方から来てくれて手間が省けたわけだから」
    「じゃあ次バーサーカーだけ早々に始末したら面倒になる前にアサシンを仕留めておこうかな」

     キラキラと今後の展開を語る。
     彼にはそれを実現できるだけの実力はあるのだから。



           Battle_is_over.
           Lancer_and_Master_outed.

  • 42亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/01/09(Sat) 20:17:08ID:EzMTM3Mjk(1/6)NG報告

    暗殺者が握る黒いナイフは不規則な軌道を描いて此方を刻もうと迫り来る。
    とても捉えどころがなく、一定の形を有さない。まるで黒いガスか雲のように、勝ち筋を掴み取ることが困難な戦い方をしてくる。


    決して強い訳ではなかった。
    アサシンの霊基は不安定で、それは先程対峙した亥狛も知るところだ。
    けれど目の前で刃を振るう彼女にそんな素振りは見られない。ただ純粋に不気味で、底知れなくて、怪人という名に相応しい。


    アサシンは軽く肩で息をしてからナイフを構え直す。
    ランサーは彼女の一挙手一投足を見逃すまいと、集中力を研ぎ澄ます。
    二度不覚を取った相手に油断などない。
    たとえ戦闘力は此方が上手であろうと、向こうには自分達が予想だにしない戦略の幅があるし、なりふり構わない分非道な手段も厭わない。

  • 43亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/01/09(Sat) 20:18:06ID:EzMTM3Mjk(2/6)NG報告

    >>42
    基本的に、戦闘は非情な者ほど強い。
    こだわりがなく呵責もない方が取れる戦術が純粋に多くなるからだ。
    騎士道に重んじ、精神の高潔さが戦闘力に直結しているランサーはそういった点でいうなら特別使い難い類の英霊と言えよう。

    「──────、」
    黒い刃が光る。
    手に持ったナイフをランサーに投擲したアサシンは、彼女の槍がナイフを弾くタイミングに合わせて胸許まで入り込んだ。
    「ばーか、隙だらけだよん」

    背後に忍ばせたもう一本の凶刃を、今手に持ち、ランサーの頸筋に正確に突き立てる。



    突如。
    アサシンの視界が激しく揺さぶられた。
    うっかりカメラを落っことしてしまったみたいに、目の前の世界がぐるぐる揺れる。
    同時に顎に走った鈍痛。
    それはアサシンが何らかの手段で吹き飛ばされた事実をまざまざと思い知らせる。

  • 44亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/01/09(Sat) 20:18:46ID:EzMTM3Mjk(3/6)NG報告

    >>43
    停止仕掛けた思考を叩き起こして、体制を整える。
    アサシンが涙目で睨むようにランサーを見つめると、彼女は膝を高々と上げていた。
    「テンカウ(膝蹴り)とか騎士道としていかがな訳!?」
    「蹴り技上等、モードレッド卿直伝の喧嘩殺法です!
    …私も騎士としてどうかと思いますが、貴女にはこちらの戦闘法のが有効とみました」

    そういうか言わないか、ランサーはアサシンとの距離を詰める。
    休む暇は与えない。
    逃げる暇は与えない。
    吐く息一つ許さず、反撃の糸口さえ手繰らせない。
    銀色の連撃は少しずつだが確実にアサシンの身体を消耗させる。


    戦術の幅に差があるなら、思想の都合上外道になれないのなら、それを補って余りある強さを持てば事足りる。
    円卓の面々を始めとする騎士達はそういった理念の元鍛錬を続け、過酷な旅をやり仰せた。

    ならばその末端に座すガレスもその例に違わず────有無を言わさぬ強さをもって、敵の奸計を薙ぎ倒す。

  • 45スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 22:58:04ID:AwNDEyMzI(6/10)NG報告

    第■回、時間進めます。

  • 46スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 22:58:32ID:AwNDEyMzI(7/10)NG報告

    『……市在住の岩野栗太さんと薩摩豪さんがさつ害された事件で警察は昨日、無職の赤城疾風容疑者を逮捕し……』

     テレビからニュースの音声が聞こえてくる。
    というのも、拠点から脱出した俺達は近場の小さな家電店に緊急避難したからだ。
    運営の人払いにより店内には誰もいないとはいえ、こんな所に隠れているとは思わないだろう。
    しかし、さっきの容疑者の名前って実家と同じ街の魔術師だったような……魔術自体はバレてないみたいだし、まあ良いか。

    「さて、俺は行ってくる。マスターは此処に居ろよ」

     と言って、アサシンは店を出て駆け出す。
    唯一生き残った弟、ドゥフシャーサナへ加勢するために。

  • 47スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 22:59:57ID:AwNDEyMzI(8/10)NG報告

     屋根の上を駆け抜ける。
    目標はビルの屋上……跳躍して、ドゥフシャーサナが足止めしてる奴に鎚鉾を振り下ろす。
    とはいえ、屋根を飛び移りながらでは流石に狙いが甘い……軽く避けられた。

    「初手から人の家潰すとは……やってくれるじゃねえか」

    「新手……いや、そちらが本体か」

     ヨーロッパ辺りの軍服を纏い、二角帽を被った男装の麗人……クラスは恐らくアーチャー。
    その真名は、マスターがすぐに見抜いていた。

    『あの帽子!?それに大砲まで……ナポレオン、そいつはナポレオンだ!』

     ナポレオン・ボナパルト……フランスの英雄。
    目の前に居る奴の戦慣れした感じからしても、恐らくは正解……しかし、どこか得体の知れない悍ましさを感じる。
    けど、考えるのは後だ……アーチャーが引き抜いたサーベルによる斬撃を鎚鉾で受ける。
    続いて放たれた蹴りを避けつつ下段に構え……鎚鉾の振り上げからの突き、そして背中を向ける程に大きく振りかぶってからの横スイング。
    だが、相手のサーベルも伊達じゃない……攻撃を全て受け流された。

  • 48スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 23:01:42ID:AwNDEyMzI(9/10)NG報告

    「チッ、アーチャーの癖にセイバー並かよ」

    「そちらこそ、残ってるクラスからしてアサシンといった所だろうに」

     これだけの攻防で互いの実力を読み合う……小手調べは此処までだ。
    俺は側転の要領で鎚鉾の振り上げと蹴りをほぼ同時に行い、着地と同時に鎚鉾を左右に振るう。
    それらを全て避けきったアーチャーに対して更に鎚鉾を振るい、そのまま突きを放つ……が、有効打には至らない。
    そんな中、ドゥフシャーサナとアーチャーのマスター、和銀京郎が動き出した。

    「アーチャー、支援しますよ」

    「邪魔はさせねえぞ!」

     アーチャーのマスターこと和銀京郎が手鏡を取り出し、ドゥフシャーサナの矢がその手鏡を粉砕する。
    鏡を媒体に魔術を行使するようだが、発動前に鏡を割れば良いだけの事。
    それを尻目に鎚鉾をアーチャーに振り下ろし、それを受け流したアーチャーが体制を整える間に上段に構え、振り下ろす。
    ドゥフシャーサナの矢がアーチャーの退路を絶つ中、鎚鉾とサーベルが打ち合った。

  • 49スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/14(Thu) 23:03:43ID:AwNDEyMzI(10/10)NG報告

    以上です。

    魔術の痕跡は完璧に消せたのに、科学捜査で普通に逮捕された魔術師が居たようです。

  • 50スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/20(Wed) 23:05:53ID:U2MzU4MDA(1/3)NG報告

     目を開けると、何処かの病院らしき部屋だった。
    私は、確か屋敷に攻め込んできたサーヴァントと遭遇して、令呪を……。

    「お目覚めになりましたか?檜葉靖彦さん」

     そこで漸く、この部屋に誰かが……いや、アンジェリーナ・コスタが居る事に気付いた。
    しかし、何だこのプレッシャーは……彼女は所詮表の世界にかぶれた小娘でしかない筈。
    得体の知れない恐怖の余り、思わず袖を捲って右腕を見るが、そこに有る筈の預託令呪は無かった。

    「預託令呪なら、小聖杯が貴方の元から奪われた時点で私に移るようになってますので……ええ、勝手な事を困りますもの」

  • 51スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/20(Wed) 23:06:59ID:U2MzU4MDA(2/3)NG報告

     まさか、全部バレている!?
    この私が掌の上で踊らされていた……だと……!?
    私は咄嗟に歌魔術を使おうとして……激しい胸の痛みで大きく息を吸うことさえ覚束ない。

    「あら、言い忘れましたけど肋骨が何本も折れてますので、余り喋らないほうが良いですわよ。さて、私達は、正当な勝者から報酬を掠めとろうとするものに容赦はしませんので……ええ、速やかに……」

     いや、歌えたところでどうしようもない。
    痛覚を刺激する歌では彼女には通用しないし、私の歌が起こす魔術的防御では良くても死ぬまでの時間が延びるだけだ。
    おのれ、嘗ての名門たるハルピア家が……時計塔を追われても檜葉家と名を変え、以前の管理者である大文字正義を家系ごと潰し、それでも刃向かってきた星野家を滅ぼし、この地の管理者となった我が家系が……こんな、こんな所で……。

    「処分されて下さいませ」

  • 52スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/01/20(Wed) 23:07:50ID:U2MzU4MDA(3/3)NG報告

    というわけで、管理者の末路でした。
    時系列的には三日目の午前になります。

  • 53膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:39:35ID:YwNTU3ODY(1/9)NG報告

    「あぁ、すいません。私ばかり話してしまって」
    「いえいえ、問題ありませんよ。人と話す事には精神を安定させる効果もあります」

    そう言って西行は続けて?と促す。歓談による精神的効果もあるがこの調子でこの異聞帯の事を聞き出すことも目的だった。
    実際その後火の着いた様に話し出したミュンヘンからは有益な情報も幾つか聞き出せた。
    王国軍の兵達は『亜人兵』と呼ばれていてそれぞれが五種族から更に遺伝子操作によって創り出された屈強な戦士たちであること。ミュンヘンの夫は退役した亜人兵であること(この際「夫は国よりも自分を守ると言ってくれた」等と盛大に惚気られた)

    そして夫との馴れ初めから楽しげに話し始めたミュンヘンを見て二人は情報収集を切り上げ、暫く聞き手に徹する事にした。
    しかし楽しい時間はそう長くは続かず、時系列が現在に近付くにつれてミュンヘンの顔に陰りが見え始める。

    「夫は私とミュウから変異種を遠ざける為に一人で戦って……変異種と相討ちになって、命を落としました。あとは皆さんが知るように病弱な私を養う為にミュウは命懸けで魔獣を狩るようになって…
    本当はあの時、私が死.ねば良かったんです。いえ、今からでも私が死.ねばあの子は無理に魔獣を狩らずとも王都でも何処でも行けるのに…」

    それは、これまで話し続けたことで勢いに乗り口をついて出てしまった秘めた本音。自分の為に我が子が危険を冒す事が、自分が娘を縛り付けている事が耐えられないという母親としての言葉。それは一概には間違いと言えないかもしれない。しかし

    「──それは、違いますよ」

  • 54膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:39:58ID:YwNTU3ODY(2/9)NG報告

    >>53
    ミュンヘンと三号が顔を向けた先にはそれまでの人あたりの良さそうな表情が抜け落ちた西行が居た。

    痛々しいほどの沈黙が場を支配する。
    ミュンヘンの喉から「ひ」と引きつったように息を呑む声が聞こえたところで、見かねた様子の三号があえて大げさに椅子を鳴らし立ち上がった。
    「……マスター・キャスリーン。相手は患者です」
    「………そうですね」
    西行が静かに顔を抑え、その手が離れた時には、今一度しっかりと優しい微笑みを貼り付けていた。
    先程までの沈黙はまるで幻だったのではないかと思わせるほどに、欠陥の見当たらない穏やかな笑顔。しかし部屋の温度が下がっている状態であることは依然変わりない。

    「……少し、外に出ますね。あとはよろしくお願いします」

  • 55膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:40:29ID:YwNTU3ODY(3/9)NG報告

    >>54
    「あまり気にならさないでください。少し体調を崩しているようです」

    退出した西行のただならぬ振る舞いに慌てるミュンヘンに、3号は柔らかく諭す。
    3号にとっての西行は生みの親であり、迷宮の如き精神構造をした上司でもあった。
    その複雑怪奇な在り方は付き合いが長い3号にすら全貌を把握出来ているものではなく、今は当たり障りの無い言葉でお茶を濁すほかなかった。
    そして―――ミュンヘンのその言葉は、他ならぬ3号にも逆鱗となる。

    「ところで、今の言葉の意味を詳しく聞かせていただいても?」

  • 56膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:40:46ID:YwNTU3ODY(4/9)NG報告

    >>55
    「意味、と言われましても…」

    少し考え込んだ後ミュンヘンは改めて3号を見る。

    「本来、弱肉強食のこの世界で私のような病弱な者が生きているのがおかしいんです」

    それからミュンヘンはこの二年間自分がいるせいで娘を縛り付けているのではないか等の思いの丈を論う。しかし対する三号の中では呆れを超えて怒りすら浮かんでいた。

    ミュンヘンの言っていることは結局は死ん.で楽になりたいということに他ならず、娘であるミュウ本人の気持ちを考えていない独り善がりなものである。その上治る気がない患者にはどんな治療を施しても治るものも治らない。

    「本当に、死ん.でもいいのですか?」

    三号がミュンヘンの話を遮り放った言葉にミュンヘンがびくりと体を震わせる。

  • 57膝に伊吹童子を受けたユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/01/22(Fri) 02:40:55ID:YwNTU3ODY(5/9)NG報告

    >>56
    「あなたはさっき旦那さんが亡くなった事に涙しましたがそれはミュウちゃんもまたお父さんを亡くしたということ。あなたはミュウちゃんに父親だけでなく母親も亡くさせたいのですか?

    ミュウちゃんの事を思うのなら、生きてください。あの子だってあなたを見捨てて楽に生きるよりも大変でもあなたと一緒に生きたい。そう思ったから今の生き方を選んだんでしょうから。
    身体を治して健康になって、一緒に狩りをするなり王都へ行くなりする。ね、その方がずっと良い。」

    三号がゆっくりと言い聞かせるように話していくと徐々にミュンヘンの目に涙が浮かんでくる。涙はやがて目の端から零れ、口を押さえて泣きじゃくる。

    「私…本当に治るんでしょうか…?」
    「ええ、治します。どんな手を使ってでも。ですがその為にはまずあなたが治ろうとする気概を見せなければ」

    ミュンヘンは頷き涙を拭うと椅子から立ち上がる。その表情は晴れやかで先程まで思い悩んでいたのが嘘のようだ。

    「私、西行さんに謝ってきます。それから改めて私のことを治してくださいとお願いするんです。
    ミュウのためにもどんなに苦い薬でもどんなに痛い注射でも頑張りますっ」

    そう言ってぱたぱたと走り去って行くミュンヘンを見送り、三号はこれから必要になるであろう医療器具や薬品を取り出しながら通信越しに一連の流れを聞いていた西行の様子を伺うのだった。

  • 58伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:16:58ID:Q1NDkxNzA(1/14)NG報告

    >>44
    打ち合いを始めておよそ数分が経った。
    迅速なるランサーの槍撃。それを避けて再び攻撃に移ろうとするアサシン。
    互いに決め手に欠け、睨み合いが続き、戦況は硬直している。
    何も知らない第三者ならそう判断するだろう。
    だが、それは突然だった。

    「ぐっ…!?」

    空中で、静止したかのようにアサシンは硬直する。まるでアサシンの周りだけ重力が増えたかの如く、そのまま力無く落下した。
    驚きの声を漏らしたのはランサーと亥狛だけでは無い。アサシン本人もだ。

    「あぁ…そうか…もう限界か…」

    金色の粒子がアサシンの手足の先から溢れ、空へ溶けていく。霊基の崩壊。サーヴァントとして、現世からの消滅が近い証だった。
    普段のうるささは鳴りを潜め、ただ茫然と消えていく己の体を見つめるアサシン。依然としてランサーは構えを崩さないがアサシンはそんな事は気にせず座り込む。

  • 59伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:17:18ID:Q1NDkxNzA(2/14)NG報告

    >>58
    「まぁいいさ。好き放題…やってやったんだ。ははは!私の勝ちだ!みんな苦しんだ!私は有名になれた!!」
    「…介錯は不要のようですね」
    「ふん、もう聖杯なんてどうだっていい。精々君達も生き縺後s縺ー繧!?!!てて0÷87pはみpま'7078.8.0888.j4たなたららららららららららららららられられららららら」

    聖杯戦争とは狂気の儀式。
    一秒先の予測すら不可能といっても過言では無い。
    そう、この場合は誰もが気に留めていなかった彼の介入だったが。

  • 60伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:17:53ID:Q1NDkxNzA(3/14)NG報告

    >>59

    「………」

    アサシンがランサーのマスターを攫ってから数分。ウィリーは場所を移動することもなくその場にいた。
    使い魔にあるまじき自我の確立。魂単位での悪性。そして活動をすればするほど進行する霊基の崩壊。
    アサシンは、聖杯戦争を勝ち残る上ではあまりに『ハズレ』といって差し支えの無い要素の塊であった。
    湧く情も無い。

    「これ以上は無意味だ」

    そして、既にウィリーはこの伏神での聖杯戦争から降りるつもりであった。脱落者も増えてきた現状では、マスターを失ったサーヴァントが都合良くいるとは思えないし、何よりあの影のような存在は気がかりであった。
    あのようなイレギュラーがいる以上、聖杯も正常に活動しているとは考えづらい。
    …時間の無駄だ。起源が示した目的を達成するためにこれ以上、不確定なことに余計な時間は割けない。寿命を得る方法も世界を探せばきっと見つかるはずだ。

    「惜しいことをした」

    この手で拷問し、殺したライダーのマスターを回顧する。きっと他の記憶と同様、永遠にウィリーの中には残り続けるのだ。
    最も、彼は今更こんな事では顔を歪めたりはしないが。

  • 61伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:18:14ID:Q1NDkxNzA(4/14)NG報告

    >>60
    「あぁ、そういえばこれがまだあったな」

    左手の内側に発現した令呪を見やる。アルファベットのような形で構成されたそれは、一度アサシンに使ってからそれきりだ。
    解析し、蒐集したくもあるがこの街を出れば消えてしまうし残ったとしても預託令呪として監督役の元に行くだけだ。

    「………」

    ならばこの手で使い、その効果を知るべきだろう。彼の中に唯一残っている人間らしい感情、魔術への興味心が鎌首を上げる。
    例えば霊基の格が低いサーヴァントには令呪がどこまで通用するのか───

    「令呪を持って命ずる」

    …本当に興味心だけだろうか。どこか、色素の濃い感情も混じってるように思えた。

    「アサシン。お前の可能性を全て見せてみろ」

    少なくとも穏やかな最後など、悪役には相応しくないだろう。

  • 62伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:18:34ID:Q1NDkxNzA(5/14)NG報告

    >>61

    マッドガッサーの正体は諸説ある。
    男であったり、女であったり、改造生物であったり、サイボーグであったり、はたまた宇宙人という荒唐無稽なものまで。
    共通項が見当たらない数多の正体は当時のアサシンの犯行が鮮やかであることを示すが、霊基の不安定さも示している。
    スキルである『可能性の闇』を持って制御しているそれが今、マスターの令呪によって全て同時にこの世界へと引き摺り出された。

    「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️────!!!」
    「何だ、あれ…」

    亥狛は本能的に思わず後退りしてしまう。
    アサシンの体のシルエットが無くなったかと思えば不定形に歪む。そして腕が何本も飛び出してきたかと思えば蒸気が噴き出し、触手が地面を這いずり回る。
    瞬く間にアサシンはアサシンで無くなってしまった。

    「⬛️⬛️⬛️⬛️!?⬛️⬛️⬛️⬛️!!!⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️!!!」

    完全に霊基が崩壊しきっても尚、令呪による強制力と魔力によってアサシンは現界をし続けていた。抗えるほどの霊格を持たないアサシンの自我は完全に無くなり、抑えきれない衝動のままに暴走するだけだ。
    プライドのある怪人では無く、ただの怪物がそこにはいた。

  • 63伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:19:23ID:Q1NDkxNzA(6/14)NG報告

    >>62
    「⬛️⬛️⬛️⬛️!!!」

    闇雲に振り回された手がコンクリートの地面を叩く。
    それだけで建物全体が揺らぎ、亥狛は思わずよろけてしまう。
    ここに長くいては危険だと判断し、視線を左右に振るが咄嗟に飛び移れそうな場所は無い。
    するとランサーが亥狛の横に並び立つ。

    「イコマ、ここは私に任せてください。一撃で終わらせます!」
    「…あぁ、任せた!!」
    「はぁっ!!」

    二人を潰すべく伸ばされた巨大な腕を飛んで躱し、そのままランサークラス特有の迅速さで腕を登って怪物の頭の上にまで到達する。
    そして槍を両腕で構えた瞬間、白亜の光が強まり輝きを放つ。

    「参ります!!我が全てを輝きへ!!信じるものを貫くため!!無穢なる誓槍(ノゥブル・マナス)!!!」

    宝具の真名解放。
    それは今までとは桁外れの強さをサーヴァントに与える。悪と名の付くモノはその槍の前に、消滅するしかない。

  • 64伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:19:46ID:Q1NDkxNzA(7/14)NG報告

    >>63
    「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ーーー!!!」

    目の前の脅威を感じ取ったのか怪物も触腕を振り回して反撃に出るが、ランサーに触れようとした端から浄化されるかの如く消えていく。
    人に害をなす悪という可能性を保有する怪物と、善性の結晶であるランサー。相性は正しく最悪であった。

    「これで…終わりだ!!」

    魔力の奔流を穂先の一点に集め、怪物に向かって放つ。その一撃で、伏神市の空に蔓延る暗雲は吹き飛んだ。
    そして、全てを受け止めた怪物の巨体は光の波濤へと消え失せていった。

    「これが…宝具の力か」

    改めて己がどれほど強大な存在を従えているのか、亥狛は実感した。伝説に名を刻み未来でも語られるとはこういう事だ。

    「大丈夫でしたか、イコマ」
    「あぁ。…手強い相手だった」

    アサシンとは最初から最後まで分かり合えず、言葉をぶつけ、拳を出しあった。
    だが、彼女との出会いがあったからこそ亥狛は自身の願いに対する覚悟を決めることが出来た。

  • 65伏神アサシン陣営2021/01/30(Sat) 00:20:49ID:Q1NDkxNzA(8/14)NG報告

    >>64
    「…うっ」
    「私の肩で良ければ、貸しますよ」
    「ちょっとだけ…頼む」

    真名解放で一気に魔力を持っていかれたせいだろうか。少しだけ足元がふらつく。ランサーの提案に素直に乗っかる事にする。
    空に浮かぶ月明かりを、久しぶりに見た気がした。

  • 66ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:18:00ID:M4NzA5MQ=(1/18)NG報告

    「随分と………慣れてないなぁ」

    サーヴァントであると思われる方は警戒心を抱いているし、何よりこちらに手出しができるようにしているが……マスター側のなんて隙。おそらく戦い慣れていないのだと。


    「動くと痛ぇぞ」


    その言葉とともに駆け抜ける爪の軌跡が空に色を描く。飛んでくる、少女の首元を正確に狙い、そのままもぎ取ってしまうだろうと誰もが予想できるほどの死の鎌になって飛んでくる。


    「そうはさせないのがサーヴァントだろう!」
    「ええ、そしてやはり時には主を押し退けるのも、またサーヴァントでしょう」


    主人と己を守るように張り巡らされた金の楔が獣を穿たんとする時に、そこの狭間に旋風が巻き起こり、獣を吹き飛ばす。

    「………お前がやるのか」
    「ええ。相手はサーヴァント。マスターも神秘の古さで劣るとは思いませんが、いかんせん性能が違うでしょう」
    「任せよう、ジェラール。僕たちのサーヴァントは強いんだから」

  • 67ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:18:48ID:M4NzA5MQ=(2/18)NG報告

    「というわけで、こんにちは。黄金の君」
    「黄金の君というのはもしかしてルッ………私のことを言っているのかな?ふむふむ、ふむ……良い!実にいい名称だ!」
    「………喜んでもらえてよしとしましょう」

    踏み込んだ勢いを利用して繰り出された回し蹴りは巻き起こした風の後押しもあるのか素早く硬い。人間の頭なぞ簡単に蹴り潰してしまうかのように。

    「甘いぞ!その程度で負けるようではな!」

    回避行動を取れば即座に蹴りの勢いを利用してさらに強い一撃をかますつもりであったが、回避行動の一つも取らずに激しい速度でライダーは後ろに引き寄せられる。そのおかげで生じた隙を突いて編み出した金糸の殴打と刺突に阻まれ、再びアウトレンジの膠着状態へと持ち込まれてしまう。

    「………困りました。咄嗟の判断力が素晴らしい。これでは中々進みませんね。どうしましょうか」
    「その風の技を使ってみたらいいと思うよ。私は」
    「ふふ、そうですね……これなんていかがでしょうか」

    手拍子と共に噴き上がる焔。轟々と叫び暴れ狂うその紅い腕はまるで蛇のようにライダーに喰らい付く。

    「………起きよ」
    「っ……」

    爆炎は突如宙に満ちた大水によって掻き消える。息を吸うかの如く自然法則を起こすバーサーカーには、それは何かはわからなかった。

  • 68ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:19:50ID:M4NzA5MQ=(3/18)NG報告

    「空想具現化ではない……まあ、当たり前か。それにしても、今のは……」
    「余所見をしている暇はないぞー!君の手からは何か呪いに似たものを感じるけれど、だからといって当たらなければどうということはないんだからな!」
    「拳を当てても砕かれない……先ほどのやり取りでこちらの硬さを把握してそれに対応した質にしたのか?巧いですね」

    殴打をしてもぐにゃりと衝撃が逃され、引きちぎろうとするとびよんと音を立てるバネであるかのように伸びる。こちらの攻撃の仕方に合わせた対応力の高い攻撃である。


    「こっちにも飛んでくるんだが。あーめんどくさ」
    「あわ、あわわ……一つ一つはそこまでだけど……」
    アドニスを片手で抱き抱えながら拘束、もしくは牽制を試みようとする金糸を打ち砕き続けるジェラール。サーヴァント同士の戦いのそれと違ってこちらに対し傷つけようとするほどの殺意は感じないのはわかってはいるが、なにぶん面倒くさい。

    「ジェラール、離して。あの子に武器をあげに行くから」
    「………怪我したらどうすんだ、大人しく抱かれてろ」
    「過保護だよ、それは。こんな状況なら僕の方が有用だし」
    言うが速いか動くが速いか、アドニスの首から噴き出した大量の血液が刃となり金糸の鎖を断ち切りバーサーカーとの間に隙を作る。そこを逃さず、アドニスは己の腕に手を添えて……


    「剣の一つや二つ、使えるよねっ……!」

    引きずり出した腕骨を剣のように変形させて、そのままそれをバーサーカーへと投げつける。無論、その程度の速度であればバーサーカーが受け止め損ねることはない。

  • 69ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:20:18ID:M4NzA5MQ=(4/18)NG報告

    「……この骨一つで上質な概念武装に類するほどの神秘。外敵からの傷でなく、己の意志での肉体分離作動だからこそできる芸当……きっと魔力を溜めて式を発動させたんだね。だから腕も問題なく生えてる」


    剣に病を纏わせ、駆け抜ける。拳という打撃や握力という圧に耐え切れるように性質を変化させた金糸も、切断する刃物的特徴のそれの前ではまるで糸のように、などとは言わないが砕かれていっている。


    「この距離ならこっちの方が速いかな?でも、どうせ防ぐんだろうね」
    「………なんでわかったのか、不明であるな」
    「勘」

    首筋に刃が届き、柔らかい肉が裂けてしまうのかという所に、それを防ぐように鋼鉄が挟み込まれる。相当な動体視力や判断力、予見しているなどといった要素などがなければなし得ない出来事だろう。戦士の中には動体視力に優れたものも多いので参考にはならないが。
    そしてそこにカウンターとして張られていた金糸の串刺し刑とも言えるような杭……ほとんど不意打ちに近いものをライダーに距離を取られたとはいえ見越していたともいうべき避け方で躱したバーサーカーもバーサーカーである。

  • 70ペレス:バーサーカー2021/01/31(Sun) 22:20:37ID:M4NzA5MQ=(5/18)NG報告

    ライダー陣営に手番、お返ししますー

  • 71スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/02/02(Tue) 00:30:58ID:AwNzU4NTQ(1/29)NG報告

    来栖市北西部、大聖杯を設置するためその全域を工房化した森林地帯。
    そこを走る侵入者が二人……筋肉質な中年男性と癖毛の黒人女性。
    男の方は確か……隣町の魔術師、板野智久だったか。
    彼等を囲もうとするのは幻聴を起こそうとするものから霊障による攻撃を行うものまで多種多様な霊達。
    しかし、女が何かを唱えるとその髪が伸び、電撃を纏って霊を振り払っていく。
    見慣れぬ魔術……いや、呪術のようだが、もう関係ない。
    何故なら、たった一つの銃弾が彼女の心臓を撃ち抜いたのだから。

    「アロム!?」

     板野が女の名前を叫ぶがもう手遅れだ。
    凶器は、俺達魔術系スタッフに支給された専用拳銃。
    神秘を付与された50口径徹甲弾は、当たりさえすればサーヴァントにもダメージを与えられる可能性もあるという代物だ。

  • 72スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/02/02(Tue) 00:31:28ID:AwNzU4NTQ(2/29)NG報告

    「くそっ、魔術師がこんな物を……!?」

     腰に付けているアステカ辺りの魔術礼装らしき物のおかげか、素早い動き次々放たれる弾丸を避けていく板野。
    それと同時に、岩石を念動力の如く浮遊させ、此方目掛けて射出してくる。
    こんな苦し紛れの攻撃を喰らう部下など居ないが、流石に攻撃は途絶えてしまう。
    だが、俺が手を出す必要は無かった。

    「こ、今度は何だ!」

     剣と円形の盾を持った骸骨がこの場に現れ、板野を襲う。
    中世の兵士の人骨に霊を憑依させたそれは、生前の技量はそのままにゴーレムのように動き出し、主であるアンジェリーナに与えられた命令に従って行動する。
    そう、この森林に何十体も存在する内の一つが、此処に駆け付けた。
    そして、岩石を操って俺達を牽制するので手一杯な板野に抗う手段など残っておらず……骸骨の剣が、板野の首を刎ねた。

  • 73スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/02/02(Tue) 00:34:06ID:AwNzU4NTQ(3/29)NG報告

    以上、ふと第■回の大会中の大聖杯防衛の様子を書いてなかったのを思い出したので、小ネタとして書いてみました。

  • 74ここのえ@第■回ライダー陣営2021/02/03(Wed) 14:07:55ID:g0NDMyNDc(1/3)NG報告

    「ぐふっ……英雄どころか、それすら超える怪物とは、な……すまねえ、マスター……」
    ランサーの魔槍によってサーヴァントの魂である霊核を貫かれ、逆流する血液を吐く。ライダーの霊基を形作る霊子が霧散し続けていく。
    もう、エーテルで受肉するだけの力が無くなっている。
    「ぁっ、ライダー……」
    へたり、と地面に座り込む。
    不意に訪れた別れに、言葉も出ない。
    確かにペウケスタス自身、戦闘力に秀でた戦士ではない。
    防衛、それも主の守護という役割に特化した盾持ちであるのが彼だ。怖がりで、傷付くのが嫌な癖に、目の前で失われる命には自分の安全よりも敏感な。
    でも、こんな突然に。
    敗北という二文字を突き付けられるなんて。
    「まぁ、こんな半端者を召喚(よ)んでくれて、ありがとうな……」
    その言葉を最後に、騎兵の英霊ペウケスタスは消滅した。

  • 75ここのえ@第■回ライダー陣営2021/02/03(Wed) 14:08:15ID:g0NDMyNDc(2/3)NG報告

    >>74
    「短い間だったけど、ありがとう。私のサーヴァント」
    天を仰ぐ。
    涙の一つや二つ、流れるかと思いきや孤独が当然となった自分の心は、とうに乾いていたらしい。寂しくはあるが、哀しくはない。

    夜の暗闇に、照明の灯りが眩しく映る。
    彼らが乗っていた乗用車、あるいは輸送車の類だろうか。
    これから聖杯大会の運営者が、アスパシア一人だけが残された戦場に駆けていくのだ。
    「これからの、事。もっとちゃんと考えなければね」
    封印指定という事実上の死刑宣告を、乗り越えるための意志を振り絞ろうと、立ち上がるために膝に力を入れた。
    征服王イスカンダル麾下、例外的な八人目の側近護衛官(ソマトピュラケス)。ペルシス……ファールス州……の太守。後継者(ディアドコイ)の一人。
    エウメネスを裏切った時も、私が見た情けない顔をしていたのかな。

    「さよなら、ライダー」

  • 76ここのえ@第■回ライダー陣営2021/02/03(Wed) 14:10:08ID:g0NDMyNDc(3/3)NG報告

    >>75
    ライダー、君を追想する終幕

    以上で第■回のライダー陣営は完結です~

  • 77亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/02/06(Sat) 23:37:08ID:M3MDMyODY(4/6)NG報告

    >>65
    足元でサイレンの音がする。
    騒がしく右往左往する喧騒、その少し高いところでシスカは事態の行く末を静観する。

    アサシンとバーサーカー、二騎の怪物達は停滞しつつあった聖杯戦争を面白いぐらいに引っ掻き回してくれた。
    これで残る陣営も僅か三つ。聖杯が万能の願望器として機能してくれるまで、あと少しとなった。


    ちらちらと光る街の灯りは通常運行。
    人がばたばたと倒れ、下界は猫を放り込まれた鼠の群れの様に混沌としている筈なのに、人の世は変わらず回り続けている。

    何とまあ冷たいことか、と思う。
    どうやら人の社会は他者を偲び歩みを止める一瞬の余裕さえもないらしい。

    「無粋なことだなぁ」

    無感情に呟く、頬杖をついて何とも退屈そうな顔を浮かべながら。
    フィルター越しに眺める世界は本当に灰色で現実味がない。いつだったか仮想の街を創造するゲームをしたことがあるが、それに似た感覚だった。
    作るも壊すも思うがまま、そこに住まう人間の意思など一切考慮しない俯瞰した視点は、どこまでも自分を残酷にしてくれる。

  • 78亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/02/06(Sat) 23:37:51ID:M3MDMyODY(5/6)NG報告

    >>77
    こと聖杯戦争において舞台となったこの街はある種の箱庭といっても過言ではない。
    出過ぎた陣営は討伐指令を出されるというがそれも魔術の秘匿と聖杯戦争の運営に支障をきたす場合に限っての話だ。
    やり過ぎなければ問題ないこと、そのラインは件のアサシンが示してくれた。

    右手に宿った令呪をみやる。
    綺麗に三画残った歪な流線型は、真っ赤に脈動している。
    自らの従者は酷く身勝手で使い所の悪い、躾のなっていない猛犬のようなサーヴァントだ。
    だが馬鹿と鋏は使いようといったもので、役に立たないわけではない。
    使い所さえ誤らなければ絶大な力を発揮してくれる。

    今日のように。

    「さて……従者を倒された気分はどうだい?」
    振り向くと、床に座り込んだ玲亜の姿がある。
    アヴェンジャーの姿はない。
    ただ絶望に打ちひしがれた様子で地面と睨めっこするばかりで、シスカの問い掛けに答える余裕はなさそうだ。
    「……安心したまえ、君を殺.すつもりはないよ。君にはメッセンジャーとしての仕事が残っているからね」

  • 79亥狛の人(伏神ランサー陣営)2021/02/06(Sat) 23:38:20ID:M3MDMyODY(6/6)NG報告

    >>78
    一歩、また一歩と哀れな少女に歩み寄る。
    この世で最も残酷なキャットウォークでつかつかと。
    最早あの子に成す術はない。魔術の腕もサーヴァントの戦いも、全て自分が上回っているのだから。
    残された行為は勝者による慰めか、それとも蹂躙か。
    選択はシスカに委ねられる。


    肩を掴むと、玲亜の身体が少し跳ねた。


    「亥狛くんに伝えるんだ。親離れの時は来たぞ、と」

  • 80ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/13(Sat) 23:59:57ID:E4NjQzODk(1/6)NG報告

    >>69
    戦いの世界において最大の敵は「迷い」だという。

    怒り、恐怖、動揺、日々の生活から生まれるちょっとした悩み。それらの積み重ねが肉体を硬直させ、洞察力を失わせ、ときとして歴戦の戦士を敗北へと導く。
    武道に精神修業が取り入れられるのも、『無我の境地』へ至りこういった雑念を追いやるためである。
    長い時間をかけて、一本の丸太から仏像を彫りだすように少しずつ戦うための自分を象っていくのだ。

    『(分割思考並行接続(トレース・オン)――主人格遷移・“黒”(ブレインシフト・ニグレド)!)』

    達人でも一筋縄ではいかないその工程を、ライダーは“戦闘に向いた自分”へと文字通り「思考を切り替える」ことで瞬時に終わらせた。

    彼の中に埋め込まれた5つの分割思考による順応力と常人の5倍ならぬ5乗の思考演算力。
    それが、地力で劣る彼の持ちえる最大の武器である。

    ◆◆◆◆◆◆

  • 81ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:00:31ID:k4NjMxNDI(2/6)NG報告

    >>80
    (やはりこの者・・・・・・強い!!)

    敵マスターへのけん制で注意をそらしつつ、相手が踏み込んできたタイミングを狙ってカウンター攻撃。
    動きを完全に読み切り、不可避の一撃だったはずのそれを、はかなげな少年の姿をしたサーヴァントはこともなさげにかわしてみせた。
    すかさず距離を取りながら追撃の杭を放つが、それも全て見た目からは想像もつかない円熟した剣さばきで切り払われてしまう。
    魔力で練られた金糸をただの糸であるかのように軽く薙ぎ払ってしまうあの剣が自分の首を捉えたら・・・・・・たとえ身の入っていない一撃だったとしても、霊基を破壊されてしまうであろうことは容易に想像がついた。

    戦闘の局面は、圧倒的に不利な中、いつ崩れてもおかしくないような危うい均衡の上に成り立っている。
    このまま長引けば相手の奥に控えている荒々しい男が行動を起こすかもしれないし、騒ぎを聞きつけた別陣営が現れないとも限らない。

    ここを切り抜けるには短期決戦しかない!
    そう判断したライダーは再び大量の杭の弾幕を飛ばしながら、あえて余裕のある声色を作った。

    「なるほど、素晴らしき戦いの腕であるな。だけど、この程度ではライダーには一向に届かないぞ!」
    「見え透いた挑発・・・・・・しかし、確かに。マスターの方もいい加減やきもきしている頃でしょうし、この辺で終わりにしよう。いくよ」

  • 82ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:01:40ID:k4NjMxNDI(3/6)NG報告

    >>81
    小柄なサーヴァントは静かに答えると、黄金のつぶての中へと飛び込んでいく。
    そして、不規則な軌道で襲い掛かるそれを時に切り払い、時につむじ風のようにすり抜けながら、一瞬でライダーとの間合いを詰めた。
    ライダーはまだ杭を発射したときの反動で動けない。

    「すでにその攻撃は見切りました。さようなら」

    その首へ狙いをつけて、すいと白刃が構えられた。

    ◆◆◆◆◆◆

    (かかった!)

    絶体絶命の状況にありながら、ライダーは勝機を感じていた。
    もとよりあの程度の攻撃でこのサーヴァントを仕留められるとは思っていない。本命は――

    ライダーのマントを貫いて、ひときわ鋭い杭が相手のサーヴァント目掛け飛び出した。

    弾幕と同時に背後へ放った一本!
    電柱に巻き付けるように向きを変えて戻すことで、自らの体をブラインドにした完全な死角からの時間差攻撃だ!!

  • 83ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:01:54ID:k4NjMxNDI(4/6)NG報告

    >>82
    今にも渾身の一撃が額を射止めようとした瞬間、ふっと相手の姿がかき消えた。

    (!?――いや、そうではない――!!)

    着弾の寸前に身をかがめたのだ。全く見えないはずの攻撃を予見していたとでもいうように!

    「見切ったといったでしょう」

    そういって振り下ろされる骨剣を、ライダーは絶望的な気分で見ていた。
    すでに万策尽きて、身をかわすことすらできそうにない。
    迫りくる死の気配に、ぞっと背筋に冷たいものが走った。

  • 84ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:02:15ID:k4NjMxNDI(5/6)NG報告

    >>83
    もうだめだ。諦めかけたその時。
    どん、と重い衝撃を脇腹に感じ、同時にライダーの体が小さく弾き飛ばされた。
    それまで首があった場所を白刃が鋭く通過する。
    一体なにが、と衝撃のあった方へと視線を向けると、子猫ほどの大きさの白い生き物が宙に浮いているのが目に入った。
    鯨だ。小さな鯨が宙を泳いでライダーに強烈な体当たりをかましたのだ。

    呑み込めない状況への動揺を別の思考回路へ押し付け、あくまでも冷静な頭を最大限に回転させる。
    どんな理由であれ、一瞬の時間を稼ぐことができた。
    策をめぐらせても勝てないのなら、やるべきことはひとつ。逃げの一手である。
    すかさず地面へと手を当てる。そして、今のライダーが持ちえる最大規模の攻撃魔術を行使する。

    「『理導/開通(シュトラセ/ゲーセン)』ッ・・・・・・!!」

    稲妻のような錬金反応が周囲へと走り、敵サーヴァントの足元に巨大な奈落が口を開いた。

  • 85ガイ【ペレス・騎】vs狂陣営2021/02/14(Sun) 00:02:58ID:k4NjMxNDI(6/6)NG報告

    >>84
    お待たせしました。
    山星さんにバトンをお返しします。
    よろしくお願いします!

  • 86ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:06:05ID:g2MDc3Ng=(6/18)NG報告

    ───────なんだろう。アレは、いったい何だろうか。

    崩落に巻き込まれ、上は落石下は奈落に落ちゆく最中にあの白くて可愛らしい怪物が何だったのかを夢想する。陸に浮かぶ鯨なんていただろうか。

    「白い、鯨……そういえばモビーディックなんていう神獣がいた気がする。でも、うん。あの破壊兵器にあんな器用な真似は出来ないよ」


    不意を突かれたとはいえこの眼は本質を見抜くから。あのライダーの殺意が視えるし、そこ行使する技が魔力の流れからしても魔術に相当するものだとはわかった。しかし、あの白鯨がライダーの産物であるかといえば否だろう。

    あれは「生物」ではない。生きているものではない。真っ当に生きて真っ当に育って真っ当に子孫を増やす生態系のそれではない。単細胞生物のように生命に溢れてすらもない。この眼が映すそれは今を生きる輝ける生命などではなかったのだから。

    「それにしても底は見えなかったけど。アレだけじゃないかなぁ。………底といえば、これどこまで落ちるんだろう。適度なところで上がらないとマスター達が心配だなぁ」

    いったい奈落に果てはあるのか。長ったらしい詠唱は無しの魔術による地形崩壊のようだからマントルほどではないとは思うが、と前置きをしつつ下を眺める。



    眺めてしまった

  • 87ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:07:20ID:g2MDc3Ng=(7/18)NG報告

    「──────────」


    いけない。これはワタシ(ガイア)とワタシ(死)には天敵だ。死にはしないが本能と理性が総動員で周りを殺し尽くしてしまう。何かはわからないがそれだけは確かで、だからこそこのままゆっくりと上がり続けるという選択肢は取れずに─────


    『お前じゃ咄嗟の判断はつかねぇよ。大人しく俺に代われ』






    「………バーサーカー、大丈夫かなぁ」
    「生きてはいるな。それまでだが」

    地表にて、己がサーヴァントが落下した様を眺めた二人は相手の様子を伺っている。はてさて、どうしたものか。あちらはサーヴァントがいない自分らを攻撃する様子はないようだが、それは令呪による転移のカウンターを警戒してなのかそれをするほどの魔力がないのかはたまた別の理由なのか。


    ───────まるで、気圧が粘性を帯びたように、己の身を縛り付けるように。とりあえず身構えてはみようとした瞬間に二人の体は固まって、動けなくなる。それと同時に襲う倦怠感。魔力が持っていかれたのだ。彼らの魔力はそこらの魔術師のそれではなく、インチキともいうべきものではあるが、まさかそれがここまで削られるとは思わず。

  • 88ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:08:53ID:g2MDc3Ng=(8/18)NG報告

    「ごめんね。ちょっと急いで出ないと僕が壊れかねなかったから」
    その元凶たるバーサーカーが、宙を浮きながら現れる。彼の周りを取り巻く砂塵はざあざあと極小規模な砂嵐を展開している。
    「………嘘だろう?あの数の落石だぞ。というか、浮かんでいるのか、魔術で?」
    「神代の魔術師ならば魔術で浮くのも造作もないでしょ。尤も、僕は魔術師じゃないしこれは魔術でもないっていうのは君もマナの流れからわかるだろうけど」
    「ならば、尚のことおかしい。君のそれは魔術の範疇でないというなら何だという」
    「さあねぇ。今は混乱してるかもしれないけど、君ほど聡明な英霊ならすぐに辿り着けるんじゃないかなぁ。あとこれは君のアイデアのおかげだよ」

    降り注ぐ多数の落石を砂に分解し、大気の操作によって己を浮かせて急上昇する。馬鹿みたいなことを馬鹿みたいな魔力を使ってしでかした。

    「とはいえ、マスターがこの調子なのでここでお暇させていただこうかなぁって。ね、美しき黄金」
    「………………」
    「美しさとは、其れすなわち欲望の発露だ。
    美しき女や男はそれを好む者に組み敷かれ、稀代の美術品は金稼ぎの道具あるいは強欲により所有権を主張され、美しい生物や風景は傲慢な人々の価値観で無理に保全される。
    美しく人知を超えた神だってそうさ、人の信仰で歪められる。そうなり得る状況を作り出したのは人間なのにね」

    いつのまにか現れていた黒と白の双子の虎がマスターを1人ずつ背負う。

    「美しさとは穢されるもの。誰かの欲望で支配されゆくもの。けれど……本当に存在する天上の美というものは誰にも触れられないものだ。絵に描き、文にしたため、詩を唄い、それでも表現しきれぬもの。君は、どちらかというとこっちだと思うよ」
    「随分と褒めてくれるではないか。私のことをなぜそこまで評価するのか、気になるところではあるね」
    「………なんでだろう。この眼で捉えた色が映し出してるまんまだから、君の人物像とか僕は知らないし勘みたいなもんなんだよねぇ。また出会う時が来たら、もしその時に君を理解できたら、その理由を言わせてもらうよ」

  • 89ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:10:12ID:g2MDc3Ng=(9/18)NG報告

    話はそこで終わり。そう打ち切るように、大穴の横に砂山を積み、大の大人ほどの大きさの鳥に乗って狼と共に去って行こうとバーサーカーは振り返って、ああそうだけれど一つ言うことがあったんだと思い出して振り返って。


    「僕たち、この戦闘を終了して帰っても良いのかな?殺し合いはこちらも撤退を選ぶつもりだけど話があるなら付き合うけど」

  • 90ペレス:バーサーカー2021/02/16(Tue) 23:10:54ID:g2MDc3Ng=(10/18)NG報告

    終わりです
    なんかお話する!とかならこのまま続行ですしいや戦闘終了、解散ー!というのであれば多分バーサーカー達はこのまま拠点に帰ります

  • 91獣国 ◆qjazSIB7S22021/02/17(Wed) 22:29:13ID:M1NjIxMTk(1/3)NG報告

    >>57
                        ***
    「……全く、君というやつはとんだ困り者だよな」
    自分を背負う男が一歩足を進めるたびに、ぐらぐらと頭が揺れるような感覚がした。話すのも気怠いので黙っているとどうやら真面目に聞いていないのだと判断されたらしく、男がさらに話を続ける。
    「術に頼って無理矢理体を動かさなければ歩くこともできない状態なのに、こんな辺鄙なところまで隠れに来て。右足を捻っているのにも気づけないほど具合が悪いんだろう?腫れ上がっている」
    確かに気づかなかった。体はいつだってどこかしら痛いものだったし、いちいち何処が痛いかなど付き合わせて考えてはキリがなかったのだ。それに、痛がったところで何かが起こるとも思わなかった。
    「とにかく……体を無理矢理動かすのは禁止する。少なくとも、俺と仕事をしている間は許さないと思ってほしい。必要なら、契約に含めようか?」
    文句をつけたいところだが、喉が痛くて声を出すのが面倒極まりない。背中に顔を預けながらも、不服を示すように首を動かした。
    「………あのなぁ……心配しなくても、俺以外だって君の世話を嫌がるような者などいるものか。我等が大望……一族の存続のために生まれる究極系が、とんでもない偉業じゃないなんて保証は何処にもないからなぁ。見た目が怖い、雰囲気が怖いで怯えるような者はうちにはいらない」
    事もなさげに、そいつは人間を切り捨てる宣言をしていた。普通の人間から見たらきっと情がないだとか怖いだとかいうのだろうが、こういう冷徹さと打算があるからこそ俺は気に入られているのだとも思う。俺は、こいつにとってこれ以上なく役に立つ。それ以外に、こうしてわざわざ連れ戻しに来るほどの理由が思い当たらなかった。

  • 92獣国 ◆qjazSIB7S22021/02/17(Wed) 22:29:24ID:M1NjIxMTk(2/3)NG報告

    >>91
    「……なんだ?違う理由かな?」
    歳は大して変わらないのにこうして子供のように扱われている気がするのは、取引相手として文句が言いたいところである。そう思って口を開いたが、依然喉は痛いままだったので必要最低限だけを述べる事にした。
    「………いつものこと…放って、おけば、治る……手間の無駄、は、必要ない」
    「君なぁ。いつも偶然大丈夫だっただけで、これから本当に駄目な時が来るかもしれないだろう。そうなったとしたら非常に寝覚めが悪いから、俺は何度だって探しに行くからな。手間の無駄を惜しむなら、落ち着いて寝てもらおうか」
    口を開いたせいか、余計に全身が苦しくなった。反論したいのは山々なのだが、もう諦めて寝てしまいたいほどに今日の調子は最悪だった。こういう状況は情報処理の効率的にも非常にまずい。
    「……本当に俺の事を考えて手間を省きたいのなら、是非とも完治して元気になるといい。……理由が理解できないなら、利用するためだということでいいから」
    最後の言葉は聞こえないと思って言ったのだろうが、俺の耳は余計なことを聞きつける事に関しては一級品だったので一言一句逃さず聞こえていた。
    あの時は何を言いたかったのかよくわからなかった。けど––––
                        ***

  • 93獣国 ◆qjazSIB7S22021/02/17(Wed) 22:29:44ID:M1NjIxMTk(3/3)NG報告

    >>92
    「……他の奴らに何言われるかは知らんが」
    西行が物陰に潜むような姿勢で背中を丸めると、艶やかな黒髪が腿の上に散った。
    「助けられる気がない奴を助けるなんざ不可能だ」
    だから、仕方ない。
    あの時のことも、あの時のことも、あの時のことも、あの時のことも。今回のことも。
    一切合切仕方がない。そういうものなのだ。だから、誰一人だって悪くはない。悪いとしたら自分だけ。
    「……問題はこれからの身の振り方だな。旅時代とは違うから、嫌んなったら離れりゃいいってわけにゃあいかねェ」
    いかないから、今までみたいに逃げることもできない。
    「……………やだなぁ」
    通信越しに流れてくる声に耳を傾けることも煩わしいと思いつつも、全部投げ出すわけにもいかない。そうして、西行は膝を抱えていた。……有り体に言うと、拗ねているのだ。なまじ大抵のことはやりたい通りにできる故に、そういうわけにもいかない他人の思想に関わる問題に関しては投げやりになりがちなのが西行の欠点であった。
    通信機の向こうからは、女性の泣き声が流れてきている。
    生来、西行は愁嘆場が嫌いである。周りの人間が感情に塗れるたびに、その場に入り込めないという疎外感だけが増していく。共感しているふりというのも気が乗らねど、しなければひとでなしと謗られる。そんないるだけ損の場というのが、彼の「辛い場面」への認識だ。
    なので、通信機の向こうの彼女がこちらに「謝りに来る」と言った時も、驚いたり怒ったりする以前に「どうしよう」という困惑が勝っていた。
    助けを求めてくれなかった相手に、助けを求めなかったことを謝罪に来られた事などない。ならば、どう対応するのが正解なのか。
    その疑問に解をつける前に、彼女は此処にたどり着く。着いて、こちらに頭を下げる。
    そうなれば、彼にできる事は「わかりました」と言って治療に戻る事だけだった。

  • 94ガイ【ペレス・騎】2021/02/17(Wed) 23:10:11ID:Q4NTc5Mjk(1/1)NG報告

    >>89
    「……いや、強いていうのなら。もう二度と会う機会がないことを、ライダーは切に願うよ」


    というわけで、戦闘終了でお願いします。
    ライダー陣営はこの後、ライノの泊まっているホテルに荷物を取りに戻ります。
    他の方々、リレーの続きをお願いします。

  • 95伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:21:33ID:kyMTA3NjI(9/14)NG報告

    アサシンの消滅、そして聖杯戦争の敗北を悟ったウィリーは一人、誰もいない路地裏を闊歩していた。
    月がいつまでも空から無くならないように、彼の顔には一切の焦燥も浮かんでいなかった。今はただ思考にのみ集中させる。

    「解析した暁には蒐集してやろう」

    左手の内側には一画だけ、令呪が残っていた。聖杯戦争の環境下でしかまず手にできないそれは他の魔術とは比べ物にならないほどの希少性があるはずだ。
    この伏神の土地においての聖杯戦争が終わるまでに解析する必要がある。

    「………」

    そうしてウィリーが拠点である廃ビルに向かって歩を進めている時だった。
    何かの違和感を覚えたウィリーは足を止めて振り返る。

    「何だ…?」

    胸の奥がざわつく。
    誰かにつけられているわけではない。気配を遮断できるアサシンはもういないはずだ。
    だが、何かがいる。油断せず周囲を警戒し、魔術回路を起動させる。対物ライフルの銃弾であっても弾き返せる障壁をすぐに展開できるようにするためだ。
    恐らく銃を構える時間は無いだろう。ウィリーは冷徹な視線を路地裏の奥へと投げかける。

  • 96伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:22:00ID:kyMTA3NjI(10/14)NG報告

    >>95
    「………」

    痺れを切らしたかのように、突然それは現れた。
    暗がりから、影から、闇から、姿を見せる。いや、それを姿と言っていいのかわからない。
    一つだけ確かなのは、ウィリーが一番会いたくない相手だったということだ。

    「………!!」

    詠唱をするために出すはずだった声が詰まる。手が意識とは逆に震えだした。
    あの時英霊ですら喰らおうとした正体不明の脅威が、スコープ越しでは無く目の前にいる。魔術師然とした鋼の理性を持ってしても、意識を失わないようにするので精一杯だった。
    全く知らないのならまだ良かった。一度、それを見たことがあるという『記憶』こそが恐怖の温床となり、彼らは増殖を繰り返す。

    「 」

    影は言葉など使わない。
    ウィリーの周囲を静かに取り囲む。純然たる捕食の意思だけを剣のように突きつけた。

    「ふざけるな…!!」

  • 97伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:23:00ID:kyMTA3NjI(11/14)NG報告

    >>96
    ウィリーは逃走を選択した。自身の肉体へと強化魔術を多重に詠唱し、人類が本来出せるスピードを遥かに超えた速度で路地裏を抜け出す。
    この辺りの土地勘なら全て頭に入っている。最短ルートで廃ビルに転がるようにして入り込むと、そこで始めて振り返った。
    殺.風景な深夜の車道には誰もいない。

    「         」

    当然だ。
    廃ビルの中に、既にそれはいたのだから。無駄な足掻きを嘲笑うように影は動きだすがウィリーもまた同様だった。

    「TURN・ON(目覚めよ)!!」

    廃ビルに仕掛けてあった爆弾を詠唱によって起爆させる。万が一侵入者が来た時に備えてあったものだが、今がその時だろう。
    一階から屋上までにある全ての『爆発反応装甲(リアクティブアーマー)』が連鎖的に次々と廃ビルの中で爆発していく。

    「………ぐっ!!」

    大きな破壊音と砂煙が一帯を支配する。殺.せたとは思えないが、それでもある程度は神秘の入った火薬なのでダメージは与えられたはずだ。
    命の危機があるというのならもうこの街にいる意味はない。令呪は惜しいが、本懐を果たせなくなる事が最も恐ろしいことだ。
    ウィリーは時間を稼いでいる間に急いで逃げ出そうとする。

  • 98伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:24:00ID:kyMTA3NjI(12/14)NG報告

    >>97
    だが。

    「 」
    「 」
    「 」
    「 」

    影はウィリーを囲む。それは遊びの時間の終わりを告げていた。
    全ての方向から瞬く間に手が伸ばされ、彼の全身を強く握りしめた。

    「が、ぐ、ぅう…!!」

    叫ぶ事すら許されず、視界が全て黒く染まった時、ウィリーは無限に広がる別世界の入り口を見る。
    そして彼の手だけは、何かを掴もうと最後まで空へと向けられていた。
    人の欲に終わりは無いが━━━━

    「俺は、まだ…何も…!!」

    ━━━━死ん.でしまえばそこまでだ。

  • 99伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:24:36ID:kyMTA3NjI(13/14)NG報告

    決着がついてから数分後。
    怪物はその身を正義の光によって吹き飛ばされ死んだが、怪物の核となっていたアサシンはまだ生きていた。

    「はぁっ…はぁっ…」

    最も、下半身が無くなり地面を這いずる力さえ残っていない者を生きている、というのが正しいかはわからないが。

    「ここ、までか…」

    時間が来たようだ。アサシンの上半身が光の粒へと変わっていき、空へと溶けていく。自分が為したいことは為したのだからもういいだろう。
    未だに喧騒が絶えない街を見下ろすとふと、何気なく生前を思い出そうとした。
    ガスマスクの怪人を作り出したあの田舎町。100年近く時が経った今でも残っているのだろうか。
    と、ここでアサシンはあることに気がついた。

    「あれ…?誰だっけ私…?」

    過去が、思い出せない。自分の名前も、親の顔も、どうやって死んだのかも、どうして怪人となって犯行を繰り返したのかも全てが靄にかかったようだ。
    僅かな記憶にすら手が届かない。

  • 100伏神アサシン陣営2021/02/18(Thu) 18:24:54ID:kyMTA3NjI(14/14)NG報告

    >>99
    「あーそうか…」

    簡単な話だ。
    英霊としてのマッドガッサーは、『あの街で暴れ回った正体不明の怪人』という人々の憶測の情報だけが全てであり中核だ。そこに経緯や過去は一切合切不要なのだろう。

    「とりあえず知らない人たち沢山苦しめた分だけ知名度、上がってるといいなぁ…」

    今更動揺などしない。周囲から愛された善人の死期のように穏やかな声色でありながら、腐りきった根本は変わる事なく。

    「そしてマッドガッサーはぁ…またいつか、帰ってくるぞ!!!」

    そう言い放ってようやく現世から闇へと退去した。
    ガスマスクの下に顔があるかは、誰にもわからないままだが━━━
    ━━━あるとするなら満足げに笑っていたのだろう。

  • 101ぺレス島殺◆B8D4AQBhU22021/02/22(Mon) 23:08:07ID:E1ODY5NzA(1/2)NG報告

    「さて、どのような方が来るのでしょうか…。楽しみですね。それにしても、月が綺麗だ」
    今己が居るのはペレグリヌスベース、通称ぺレス島。その倉庫街と港をつなぐ中心…から少し離れた場所にある半ば朽ち果てられた廃工場である。この聖杯戦争が開始される少し前に不祥事があったらしく、現在は人の往来が減った…というような事をマスターである刹那様から聞いた。立体駐車場や陳列しているコンテナなど、ぺレス島の工業の賑わいがある程度うかがえる光景である。
    さて、ではなぜ己がそのような場所に佇んでいるのかと言えば、それはひとえにマスターである刹那様からの依頼だからである。

    ◆◆◆

    「ほほぅ…、これがサタンのスペックなんだネ!結構色々出来て便利そう…」
    己のステータスを確認し、興味深そうにうなずく刹那様。持ちうる能力、つまり己の宝具や刹那の魔術といった部分を確認しあい、方針を決める、という流れになった。聖杯戦争に参加するに辺り、我がマスターはまぁまぁ戦略眼を持っている、と考えてよい気がする。
    そうして最低限以上のコミュニケーション…すなわちお互いのどうしても嫌な事やしたい事などを開示しあい、己は他のサーヴァント、ひいてはそのマスターの能力などを把握する為の威力偵察を行い、その間にある程度なら自衛も出来る刹那様は此度の聖杯戦争を管理する監督役に挨拶する為に聖堂教会に向かう、という事になった。

  • 102ぺレス島殺◆B8D4AQBhU22021/02/22(Mon) 23:08:19ID:E1ODY5NzA(2/2)NG報告

    >>101
    ◆◆◆

    さて、まずは周囲にある程度のサーヴァントの気配を感じるまでぺレス島を歩き回り、気配の感知や丁度よい戦場になりそうなココを見つけ、威圧による敵寄せを行った、という訳です。とりあえずは挑発にかかる方がいないか、待ちの一手、といった所でしょうか。ふふ、なんて冗談を言っている間に、他のサーヴァント様が来ましたね。

    「なんだぁ?挑発、戦闘の誘いを行うサーヴァントがいるんで来てみたら、案外貧相な恰好じゃねぇか。待ってやるから、マスターに頼んで治癒でもして貰え」
    「お気遣いには感謝いたします。が、この傷は己の誇りのようなモノでしてね。最初から保持しているものですから、治癒も何もないのです。さて、その闘気。セイバー或いは三騎士のいずれかとお見受けしますが、如何でしょうか?」
    まず相対する事になったのは、獣のような戦士と、少々不安げな雰囲気を身にまとう少女。ふむ、なかなか良き試練のようですね。立ち塞がれるのが楽しみです。
    「さてな、そんなのは戦闘じゃどうでもいいだろ?それがアンタの全力を出せる状態だってのなら是非もねぇ、人気もねえし、さっさとおっぱじめようや」
    そういって構える己と戦士と己。構えるは剣と拳。己が行うべきは威力偵察。手のうちは出し過ぎない方がいいでしょう。まずは徒手空拳で…
    「がっ…!?」
    視点がブレる。頭部がクラクラしますね。角の一部が抉れた、ですかね?威力。そして痕跡から見るに狙撃でしょうか。暫定的ですが、アーチャーも釣れたというのは大きな収穫と言えましょう。
    「着弾などの状態から推理するに、そちらですかね?」
    腕を振り、予測した狙撃地点に向けて黒雷をいくつか放つ。相手に当たるかは二の次であり、牽制が第一目的だ。目の前の剣士から目を離す訳にもいかない訳ですし、ね。さぁ、己と彼と、まだ見ぬ貴方で、互いの試練を始めましょうか。

  • 103ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:46:07ID:UyMjM2NjA(1/12)NG報告

    「■■■■■■■■───ッ!?!?!」

     ライダーの一矢 ……宝具が、バーサーカーの霊核を打ち砕き、フラカンの霊基が崩れ落ちる。
     堕ちた神霊であれど、核を破壊され、要となる契約者(マスター)を喪ったとなればこの後に待ち受ける未来は消滅のみだ。

    (あぁ……消える、我が……消える)

     他の者からすれば狂戦士の英霊(サーヴァント)の消滅に過ぎないが、フラカン自身にとって、この終焉は異なる意味を持つ。
     本来、フラカンの意識は星を放浪する残留思念であり、偶然にも狂戦士として召喚されたハリケーンという霊体に寄生するカタチで自身を聖杯戦争に参加する一騎であると定義付けていた。
     つまり、フラカンは聖杯に呼び出された座の英霊ではなくそれ以前から世界に漂っていたモノだ。
     そして、狂戦士の霊基と複雑に癒着してしまったその自我は、霊核の破壊と共に致命的な破損を受けてしまっていた。
     聖杯戦争のサーヴァントであるハリケーンのみならず、神代から原題まで生き長らえてきたフラカンの意思もまた世界に溶けようとしてる。
     仮にフラカンという存在が再度世界に出現したとして、ソレは世界に合わせてカタチを変えた存在、今まで保ってきた自我とは異なる存在となっているだろう。

    (神代から、零落して尚、消え果てることを拒んだというのに……よもや、死者の影法師如きに……)

     自身にとって疎むべき神性を有するサーヴァントによって討ち取られたことにフラカンは屈辱を感じていた。

    (我は何を間違えた……何故……)

  • 104ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:46:34ID:UyMjM2NjA(2/12)NG報告

    >>103
     残滓となってまで意識を保ち続けたはずの自身がどうしてこのような目にあっているのかと、思考を巡らせる。
     そして、幾度となく思考の中に去来するのは猜野 芽衣の姿であった。

    (クハハ、 神代の終わりから数千年の放浪……そのうち、たったの二日に過ぎぬ時間で……我は満たされていたというのか……)

     数千年間、執着した筈の自己さえ投げ出してしまうほどに……。
     誰よりヒトを拒んでいた筈の神(フラカン)が、よりにもよって芽衣(ヒト)に満たされていたのだ。
     結局のところ、誰かと共にありたかったのだ。忘れられたくなかったのだ。
     それに気づいた時には既に後戻りは出来なくなっていた。

     だから、ここから先に吐き出されるのはただの虚勢だ。

    (芽衣は我という万能(カミ)を手にしながら、それを手放した……覇久間の聖杯とやら、我すら翻弄した貴様という万能(カミ)に、人間共がどのような所業を成すのか……せいぜい楽しみにしているが良い、クッ クハハハハ!!)

     覇久間における聖杯戦争、四日目にして遂にサーヴァント一騎が脱落した……。

  • 105ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:47:06ID:UyMjM2NjA(3/12)NG報告

    >>104
    (私は……台風からはじき出されて、それから、どうなったんだっけ)

     令呪の行使後、魔力消費と風雨による体力低下により失われていた、芽衣の意識が覚醒する。
     夏美達に後を託したはずだが、自身がその後どうなったかについては覚えていない。

    「目を覚ましたか、バーサーカーのマスター」
    「……ッ!?」

     目を覚ました芽衣を待ち受けていたのは先日の戦いで邂逅した、上から目線で全てを品定めするような褐色の男。

    「わ、私を……助けてくれたの?」
    「あぁ、凡俗の人間如きを拾い上げるなど業腹だが……貴様も聖杯戦争のマスターだからな」

     そう告げて、男は芽衣の手の甲を見遣る。
     男── ゲーティアは狙っているのが芽衣の令呪であることは明らかだった。
     芽衣はゲーティアの動きを警戒し、身構えるが……

  • 106ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:47:29ID:UyMjM2NjA(4/12)NG報告

    >>105
    「……ッ痛 !」

     突然、眼が疼き出して痛みが走る。
     それは芽衣の持つ“天気を読む”異能 晴眼が発動する前兆であった。
     芽衣の眼は、望む望まないに限らず近い未来の空模様を映し出す。
     日常的にも起こり得るが、突発的な痛みを伴う場合は余程の異常気象である確率が高い。
     それを覚悟し、芽衣が覗き込んだ空の景色は……

    (何、これ……?)

     “視た”はずの空の景色が、何であるか理解出来ない。
     そんなことは芽衣にとってははじめての事だった。
     天気に精通し、フラカンという災害と共にあった芽衣ですら察せない『何か』。それが空まで届いている。
     或いは他の魔術知識を持つマスターであれば理解出来たかもしれない。
     だが、理解出来ずともソレが先のフラカンの暴走に負けず劣らずの厄災であることは芽衣の“眼”にも明らかだ。
     そして、芽衣が“視た”景色には、ソレだけでなくゲーティアと同じ褐色の少女……アサシンの姿が映っていた。

  • 107ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:48:01ID:UyMjM2NjA(5/12)NG報告

    >>106
    「……今のは、何? 貴方と一緒にいたあの娘は、一体何をするつもり……?」
    「千里眼や占星術とは異なるが、予見を可能とする眼か、煩わしいな」
    「質問に答えて!」
    「コチラに答える義理がない。 貴様はただ残った令呪を差し出せば良い」
    「私達みたいにまた覇久間を巻き込むつもりなら、令呪は絶対に渡さない……!」
    「では月並みだが力尽く奪わせてもらおう。 使い魔の無い人間にどう抵抗できる」

     ゲーティアが腕ごと奪い取ろうとするように芽衣へと迫る。
     彼の言う通り、サーヴァントを持たない芽衣には抵抗する事が出来ない。
     それでも、皆が各々の想いで覇久間を守るため奮闘した事実を知っている芽衣は、また街を巻き込みかねない存在に対して気丈に睨み続けていた。

     ゲーティアの魔の手が芽衣まで届こうとした瞬間……

    「セイバー!」
    「えぇ、分かっているわ!」

     かつて芽衣を狙った刃が、目前のゲーティアに向かって振り下ろされた。

  • 108ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:48:45ID:UyMjM2NjA(6/12)NG報告

    >>107
    「不意打ちとは、最優の騎士が聞いて呆れるな」

     ゲーティアは悪態をつきながら、刃を躱す為に芽衣から手を引いた。

    「生憎と、暗躍は其方だけの特権ではありません。 事が動くとしたら全員が対バーサーカーで消耗したこの瞬間だと思っていましたよ」

     刃が向かってきた方向から一人の男が姿を現す。
     アレン・メリーフォード。セイバーのマスターである私立探偵だ。
     その傍には当然ながらセイバーのサーヴァントであるオードリー・ヘップバーンも控えていた。

    「それで、どうしますか? 貴方が彼女を狙うのであれば、僕達は二つの理由で彼女を護り、貴方と戦う覚悟もありますが……」
    「私も構わないわ。 バーサーカーとの戦いでは他のサーヴァントに役どころを持ってかれてしまって不完全燃焼ですもの」

     徹底抗戦の姿勢を見せるセイバー陣営に対してゲーティアは嘆息した。

    「魔力のリソースを得る為に戦い、魔力を失うなど割に合わん。 先に貴様らに手を出してアレにとやかく言われるのもあまり気分がよくない」

     そう告げると、ゲーティアは拍子抜けするほどアッサリと身を退いた。

  • 109ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:49:13ID:UyMjM2NjA(7/12)NG報告

    >>108
    「大丈夫ですか、猜野芽衣さん?」

     ゲーティアの撤退を確認すると、アレンは芽衣の元へと駆け寄ってきた。

    「えっと……貴方はどうして私を助けてくれたんですか……?」

     今まさに命を救われたとはいえ、一度は命を狙われた相手であるため、警戒を緩められない芽衣。それに対してアレンは……

    「窮地の淑女を助けるのは紳士として当然、などと言えれば格好もつくのでしょうが……ひとつは彼の陣営が新たな令呪(リソース)を獲得するのを妨害するため。そしてもうひとつは……」

     一旦、話を区切ってからアレンは自身の携帯を取り出し、芽衣へと差し出した。

    「探偵としての仕事です。あなたのお姉さん……猜野聖さんから貴女を捜索するように、と依頼が来ていましてね。 電話、繋がりますよ?」
    「……聖が?」

     聖の行動によって九死に一生を得るカタチとなり、芽衣ははじめて純粋に姉に感謝した。

  • 110ハクマ狂陣営2021/03/06(Sat) 12:55:26ID:UyMjM2NjA(8/12)NG報告

    5/1 狂陣営 『九死に一生』 了

  • 111ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:14:43ID:I3NTM4ODA(9/12)NG報告

     アレンにより救助された後、芽衣は一時的に覇久間の教会にて保護され、聖杯に回収され令呪が消失したのを確認した後に教会から去った。
     一度参加した以上、最後まで事の行く末を見守るべきかとも考えたが、自衛の手段を持たない芽衣では徒に身を危険に晒すだけである。
     それは自身の命を救ってくれた夏美やアレン、他のサーヴァントに対する恩を無下にする行為だ。
     故に芽衣は早急に覇久間の地を立ち去るという選択を採った。

    (猜野本家のゴタゴタに巻き込まれるのも、勘弁したいところだしね……)

     先のバーサーカーの暴走で、仮にも猜野の代表であるマスターがサーヴァントを制御化に置けていなかったこと、またソレを秘匿していたことについて教会や蒲池の家から問い詰められているらしい。
     芽衣にも当事者として申し訳なさを感じつつも、自身も猜野の策とフラカンの存在に巻き込まれたようなモノであるため、わざわざ擁護する気にはなれなかった(何より魔術の話は専門外。魔術師同士で話し合うべきだろう。)

    「夏美ちゃんとキチンと話せなかったのは名残惜しいけど……」

     彼女もまた聖杯戦争の参加者であり覇久間における御三家の魔術師。
     夏美にとっても今が大事な時期なため、芽衣が余計な気を遣わせるワケにはいかなかった。

    (……頑張ってね、夏美ちゃん)

     先日見た“未来の空模様”を思い出し、僅かな不安が過ぎり、芽衣は夏美達の無事を祈った。

  • 112ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:15:08ID:I3NTM4ODA(10/12)NG報告

    >>111
    「芽衣〜〜〜!!」

     色んな事を思案していると、遠くから軽自動車が芽衣に向かって走ってきた。
     車から聞こえてくる声の主はアレンの連絡によって、芽衣を覇久間まで迎えに来た、姉の猜野聖であった。

    「芽衣! 怪我はない? 体調は……っていうか生きてる!? 足はある!?」
    「聖、うるさい。」
    「だって、芽衣が何日も連絡くれないし、猜野の本家も知らないっていうし……私のせいで芽衣の身に何かあったらって思うと……」

     やたらめったら喋る聖にウンザリしつつも、芽衣はその反応が何も大袈裟なモノではないと気づいていた。
     一歩間違えたら、というよりも助かった方が奇跡的な状況だったのだから。

     それから芽衣は覇久間で何があったか、かいつまんで説明した。
     聖は半信半疑と言った様子だったが、芽衣からするとストレート全て信じ込むよりは余程安心出来る反応だった。

    「まぁ、でも……私が普段研究している超能力者(ヒト)達も、そのカミサマとそんなに変わらないのかもなぁ……何処か理解を求めていて寂しがり屋だ」
    「そう、かもね……」

  • 113ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:15:31ID:I3NTM4ODA(11/12)NG報告

    >>112
     聖の意見に芽衣は曖昧な返しながらも同意した。
     芽衣は聖の言う超能力者にはあったことはないが、フラカンが何より理解者を欲して共に在りたかったというのはよく分かっていた。

    「ねぇ、聖。しばらくこういう依頼とかの連絡はしてこないで」
    「……もしかして、というかやっぱり怒ってる?」

     芽衣の呟きに、聖は恐る恐ると言った感じで問いかける。
     その問いかけに芽衣は穏やかな口調で返す。

    「ううん、そういうことじゃなくて……ちょっと、もう一度また一から勉強したいなって……」

     結果の出せない自分に絶望しても、誰かのスター性を羨望しても、やはり幼い頃に見た「お天気お姉さん」になるという夢はまだ芽衣の中で燻っていた。
     折れても、挫けても、自身の想いを欺いてしまえば、やがて自分自身も見失ってしまう。
     それを知っているからこそ、芽衣は前を向くしかないのだ。
     フラカンを呼び出した芽衣の、法では裁かれない罪もまた、それを抱えて生きることでしか贖うことは敵わない。

    「どんな心境の変化があったか、私には分からないし……芽衣なりに辛かったんだろうね。でもさ、今の芽衣……いい顔してるよ」

  • 114ハクマ狂陣営2021/03/08(Mon) 18:16:56ID:I3NTM4ODA(12/12)NG報告

    >>113
    「そうかな……?」
    「でも芽衣、辛かったらすぐお姉ちゃんに言ってよ」
    「うん。ありがとうお姉ちゃん。」

     斯くして、猜野芽衣はマスター権を放棄し、万能の願望器を手にする機会を失った。

    5/2(土) 雨上がり/エピローグ 了

  • 115ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:16:21ID:Q3OTc3NjA(10/14)NG報告

    「―――匂いが、するわ」

     召喚から数十分。ホテルに向かう足取りの最中、弓兵(アーチャー)――――パウサニアスはそんなことを口にした。
     正確にはアーチャーの持つ理性蒸発の効果だったのだが、今の2人は頓着していなかった。
     アーチャーは自身の感覚に自信があったし、そのマスターは、アーチャーの勘を信用していた。
     弦には確信があった。目の前は少女は狩人という共通点によって召喚されたのだろう。

     が、その確信は脆くも崩れ去ることになる。

    「いたわマスター! 早速行きましょう!」

     遠距離も遠距離、まだ気づかれていない相手に、少女は突撃を決めようとし。

    「―――いい加減にしろよ。餓鬼」

     次の瞬間、流れるような男の動きに抵抗できずに捕らえられた。

  • 116ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:17:05ID:Q3OTc3NjA(11/14)NG報告

    >>115
     銃口を喉元に突きつけ、人の姿をした獣は唸るように告げる。
    「お前は何だ? 狼か? 狩人か? その銃は飾りなのかよ、ああ?
     別に強制をするつもりはねえが……英霊(せんし)として戦場に立つなら矜持を持て。
     狼なら獣らしく、狩人ならクレバーに――――好きにしろ、どちらでもいい。
     ―――どっちに転ぼうが、俺にとっては同じことさ」
     静かな、それでいて確かな怒りを内包した男の声。
     それに真正面から対峙した少女は。

    「そんなの……わからないわ……だって、考えたことがないんだもの……」

     涙ながらにそう吐き出した。
     召喚当初の獰猛さはどこに消えたのか。今ではどこにでもいる―――景伏弦の娘と同年代の少女にしか見えない。

    「……泣くなよ。ああ、悪かったよ。餓鬼っつうのは言いすぎた。
     まずは深呼吸しろ。それから、泣くのをやめて銃を構えろ。
     アーチャーっていうくらいだ。構えるくらいは出来るだろう。
     わからんって言うなら教えてやるさ。獣としての戦い方も。戦士としての戦い方も。
     だから……もうそんなに泣くな。可愛い顔が台無しだ」

  • 117ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:17:48ID:Q3OTc3NjA(12/14)NG報告

    >>116
     ポケットから取り出したハンカチで少女の涙を拭き取りながら、先程までが嘘かのような柔らかい声で弦が語りかける。
     子供は苦手だ。我が子ならともかく、他人の子となるとやりづらい。
     それが泣き出したのだというのだから、今の彼にとっては手に負えなかった。 

     景伏弦は人面獣心の戦士である。
     暴性に乗じて全てを破壊し尽くすことも、敵の裏の裏まで読み尽くすことも、彼にとっては児戯に等しい。
     死神と呼ばれた狙撃手がいる。
     殺人機と呼ばれた傭兵がいる。
     戦技の教導は、彼にとっては最も簡単なコミュニケーションだった。
     ここは既に戦場となっている……少なくとも、泣いている子供相手に右往左往するよりは、強引にでも自分の得意な領域に引きづり込む方がマシだろう。

    「そうだ。それでいい。今はまだ待てばいい。撃つべきタイミングってやつは相手が教えてくれる。
     お前はただその時を待てばいいんだ―――よし! よくやった!」

     男が内心でガッツポーズをしたその瞬間。

    「マスター! 避けて!」

     狙撃手(しょうじょ)は悲痛な叫びが、戦場にこだました。

  • 118ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:18:06ID:Q3OTc3NjA(13/14)NG報告

    >>117
     膨張した魔力を察知した男は、瞬時に術式を構築した。 

     それは、男が『壁』と称するものの中でも秘奥中の秘奥。
     最大十二層の壁を同時に纏うことで、魔力消費の甚大さと引き換えに対魔術に特化した術式。
     キャスターの放った漆黒の稲妻が弦を貫くその刹那―――その術式(わざ)は成立した。



    「順転開始(サーキットスタート)、階層装填(トリガーセット)
     奉納殿十二層(サークルコード・トゥエルブ)―――是、多層転身(ブーストドライブ・イグニッション)!!!!」



     黒雷が上げる土煙の中、景伏弦がそこにいる――――!!!!

  • 119ペレス弓陣営『Proud to be a warrior』◆4QvCgGuW1A2021/03/20(Sat) 00:18:20ID:Q3OTc3NjA(14/14)NG報告

    >>118
    以上です

  • 120一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/03/22(Mon) 11:56:55ID:c0MjE2MDg(1/3)NG報告

    競走馬か原動機付自転車もかくやの速度で疾走する銀河と、それに隣り合って飛行するカーペットに乗ったキャスターとセイバー陣営。
    「──────いた!あの時のサーヴァントと…………何、アレ……?!」
    「アレは…………!『降臨者(フォーリナー)』!?」
    ビルの屋上で戦闘する二体のサーヴァントを見つけたキャスター陣営は、アサシンと思しきサーヴァントと相対する『アーチャーらしきナニカ』を見て驚愕する。
    「フォーリナー……余所者?」
    カーペットに乗ったハリーが、小首をかしげ聞き返す。
    エクストラクラスにアヴェンジャーやルーラー等がいるとは聞いたがフォーリナーというクラスなど聞いたことがない。
    「フォーリナーは虚空より来たるモノ……夢見るままに待ちいたる神……要はこの世のルールを外れた存在だ」
    「故にフォーリナー、か…………って、アレ?キャスター普通に喋れてないか?!」
    今まで気がつかなかったが、銀河の翻訳を通さずに会話ができていることに驚くセイバー。
    「制限が解けたんだ…………………………相手が相手だからな」
    彼女の言葉を聞いて、セイバー陣営も気を引き締める中、銀河は今朝のキャスターとの会話を思い出していた。

  • 121一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/03/22(Mon) 11:57:12ID:c0MjE2MDg(2/3)NG報告

    >>120
    @@@

    「《マスター、調子は大丈夫か?》」
    「あ、うん!大丈夫!一日寝たからぜんぜんへーき!!」

    「《……マスター、君に私の宝具が持つ力を教えておくよ》」
    「宝具、って確かサーヴァントが持つ必殺技みたいなモノだよね……」
    「《そうだ…………私の宝具は二つ、この世ならざるモノを討つ為の方法が記された宝具、それを用いて人外の存在を封印する宝具だ。この世界のモノで無ければ更に効果は高くなる》」
    「……私がキャスターを召喚できた理由に関係してるんだよね」
    「《………………………………そうだ》」
    「……そっか、やっぱりそうなんだよね」
    「《もし、私がこの宝具を使用するときは約束してくれ。『君は、責任を持つな』》」

    @@@

    「……………………むちゃ言ってくれるなぁ」
    ぼそりと、か細く呟いた一言は風の音と近づく戦闘音にかき消されていった。

  • 122一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/03/22(Mon) 11:58:10ID:c0MjE2MDg(3/3)NG報告

    >>121
    第■回投下は以上です。
    やっっっとできた!!!!

  • 1233ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:23:13ID:E0NTI3NzQ(1/10)NG報告

    とりあえず開戦までの流れが出来たので、投下します

  • 124ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:23:50ID:E0NTI3NzQ(2/10)NG報告

    無事にセイバーを召喚した私は、召喚陣などの周囲の片付けや魔術の痕跡を消す隠滅作業をしていた。
    「……ふぅ、血痕はこれで大丈夫ね。あとは────」
    「なあマスター?」
    ふと、後ろで見ていたセイバーから怪訝そうな声で話しかけられた。
    「見てて思ったんだけどよ、そいつはマスターが片付けなきゃいけないもんかい?」
    「いえ、必ずしもやらなければならないことではないですけれど……。」
    「ならそんなもん、監督役にでも押しつけりゃいいじゃねえか。わざわざマスターがやる必要あんのか?」
    「それはそうですけど……。でも、監督役のメイベルさんは私とそう歳は変わらないように見えましたし、そんな子にあまり負担は掛けたくありません。私個人で出来ることがあるなら、出来るだけメイベルさんを頼ることがないようにしたいんです。」
    先刻会ったシスターの少女─────メイベルの姿を思い出す。
    私ですら『クー・フーリンのマスター』という大役が務まるかどうか不安で仕方がないのに、彼女は『聖杯戦争の監督役』という私よりも何倍も重く難しい役目を背負っている。もちろん一概にどちらの方が辛いかなんて語れるものではないけれど、それでも彼女の方が私よりも忙しいのは確実だろう。
    それならば、出来るだけ彼女に迷惑はかけたくない。私個人で完結できることならば、私個人でなんとかできるように努力するべきだろう。
    セイバーが呆れたように頭を掻いて言う。
    「まあ、なんだ。マスターがそうしたいなら好きにすりゃあいいさ。」
    「セイバー……。」
    「とはいえ、今みたいなのんびりとした時ならいいがな、本気で俺がヤバいって思った時はマスターの意思に関係なく引っ張ってくからな?」
    「……ええ、分かりました。その……ありがとう、セイバー。」
    私は謝意をこめてセイバーに頭を下げる。
    「別に感謝されるようなことじゃねえよ。オレはサーヴァントだからな、出来る限りマスターの意思は尊重するだけさ。」

  • 125ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:24:29ID:E0NTI3NzQ(3/10)NG報告

    >>124
    「それでも嬉しいです。あなたほどの英雄がここまで私に歩み寄ってくれるだなんて、正直思ってもいなかったから。」
    これは私の勝手な想像だけれど、基本的に『英雄』と呼ばれるような人達は周りを振り回すものだと思っていた。もちろん大なり小なり個人的な思惑とかもあるかもしれないが、それでもやはり神話や歴史に名を連ねるような大人物ほど周囲の人間を振り回しているという印象が強くある。
    名を挙げるのであれば、たとえば一代でマケドニア帝国という巨大な帝国を築き、世界に大きな影響を与えたヘレニズム文化を作り上げたアレキサンダー大王。
    元々の自領の国民だけではなく、敵国の国民すら魅了し心酔させ巨大な版図を作り上げただけでも凄まじいけれど、それ以上にインドの更に果て─────この場合は現在の地図で言うなら中国あたりが妥当だろうか─────を目指そうとする王に将官や兵士が反発するまで誰もがかの王の背についていったというのは驚嘆すべきことだと思う。それほどまでに魅力に満ち溢れ、そして正負どちらにせよ事を為す人物であったという何よりの証拠だ。
    マケドニア帝国そのものは高熱で床に臥せたアレキサンダー大王が最期に遺した言葉、『最強の者が国家を継承せよ』の一言が原因で分裂してしまうが、逆を言えばもしアレキサンダー大王が床に臥せず存命していたのならマケドニア帝国の分裂はもっと先の話だったとも言えると思う。
    他にも例を挙げるならば新大陸を発見したクリストファー・コロンブス、フランス革命の後に市民からの支持を得て皇帝となったナポレオン・ボナパルト。日本でならば、第六天魔王とも並び称された織田信長、農民から太閤にまで上り詰めた豊臣秀吉あたりがそうだろうか。
    兎にも角にもそんな人物ばかりゆえか、本で読み知り出来る範囲の中で私の中の『英雄』とは即ちそういう存在なのだ。
    多くの人々を魅了し、惹きつけ、夢を見せ、そして大事を為す者。
    それこそが『英雄』なのだと。
    だから、クー・フーリンほどの大英雄が私の意思を尊重してくれるだなんて、とてもではないけれど考え付かなかったのだ。

  • 126ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:25:26ID:E0NTI3NzQ(4/10)NG報告

    >>125「そんなに不思議なことかねえ……。」
    「私はそう思った、というだけのことですよ。きっと他の人なら違う感想を持つと思います。」
    「ま、こちとら仕事で来てるようなもんだからな。なら、雇用主に従うのは当然だろ?オレにはその辺のこだわりみたいなのが無いからな。どんな善人だろうと、どんな悪人だろうと、基本的には従ってやるさ。まあだからってなんでもかんでも従うってわけでもないんだが。」
    「分かってます。あなたにはあなたなりの意志や信念があって、それに私が反さない限りは見逃してくれているだけなのですよね?」
    「そういうことだ、よく分かってんじゃねえか。いや、分かりすぎてるというべきか?」
    「そんなことはない、と思うけれど……。」
    でも確かに小学生だった頃の周りと比べられると、よく『黒鳥さんは物分かりがいい子ね』などと言われた回数は多い気がする。
    同時に『黒鳥さんは周りの子より大人びてるのね』なんて言われたことも多かったと思う。
    でもそれはそう見えただけ。
    あの時には、もう、私は────────
    「……っ!」
    目に、涙が浮かびかける。あの日のことを思い出したから。
    幼い私が、無邪気に兄から何もかもを奪って、そして『魔術師(この場所)』に立つことになったあの日。
    あの日から、私が目指すべき道は一つとなった。
    今回の聖杯戦争もそう。
    私の意思なんて、介在する余地もない。
    なのに、私は心を捨て切れないでいる。
    魔術師には不要な物だと、何度も教えられているのに。
    兄に対する気持ちを捨て切れない。
    魔術師として不要な物のはずなのに、私はそんな気持ちを切り捨てられないでいる。

  • 127ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:26:11ID:E0NTI3NzQ(5/10)NG報告

    >>126
    そんな私の様子を不審がったセイバーが話しかけてくる。
    「……どうしたマスター?」
    「っ、な、なんでもないわ、セイバー。も、もう少しで片付くから待っててもらえるかしら?」
    「おう。ゆったりと待っとくから、そんなに急がなくてもいいぞー。」
    私は平静を取り繕い、残っていた隠滅作業を手早く終わらせ、荷物を抱えた。
    「ごめんなさいセイバー、待たせてしまって……。」
    「気にしてねえよ、マスターが必要だと思ったからやったことだろ?なら、その行動に胸を張りな。せっかくのスタイルが台無しだぜ?」
    と、セイバーは私のお尻に手を伸ばして触ってきた。
    「きゃっ……!?ちょ、ちょっと、セイバー……!」
    「ははっ、なかなか良い尻してんじゃねえか!やっぱ美人ってのはこうでなくちゃな!」
    「も、もう……!そういう冗談は嘘でもやめ──────」
    私が否定の言葉を言い掛けた時、背筋にぞわりとした感覚が駆け抜けていった。
    そして、瞬時に───────とても強い殺気を感じ取った。
    「─────っ!?セイバー、今のってまさか……!?」
    「ああ───────どうやらそう遠くないところに誰かサーヴァントがいるらしい。」
    セイバーが武器を構える。
    「行ってみるかいマスター?これが罠の可能性も捨て切れねえが──────」
    「……行きましょう。どちらにしたって戦う相手の情報は必要だわ。」
    ここで避けたところで、どのみちいつかは戦う相手─────敵なのだ。それなら手持ちの情報(カード)を増やすのに越したことはないはず。

  • 128ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:27:23ID:E0NTI3NzQ(6/10)NG報告

    >>127
    「決まりだな。それじゃ─────よっ、と。」
    「え、わ、きゃっ……!?」
    セイバーは武器をしまうと、軽々と私の体を両腕で抱え上げた。
    「セ、セイバー……重く、ないかしら……?」
    「重いどころかむしろ軽すぎるくらいだ。ちゃんと飯食ってんのか、マスター?」
    「べ、別に人並みだと思う……けど……。」
    真っ赤な嘘だ。私は本来自分が食べるべき物を、兄にいつも譲っている。そうでなくとも、元からあまり肉が付きにくい体質なのだけれど。
    「それじゃ、しっかり掴まってろよ?一気にかっ飛んでいくからな─────!」
    一瞬の間のうちに、セイバーが殺気の出処へと跳躍する。
    しかしながら、サーヴァントが自身の力を引き出して跳躍……もとい移動するということは、即ちジェットコースターの最大瞬間速度を初速で味わうようなもので。
    「きゃあああ.あああ.ああああ─────────っ!?」
    私は情けない絶叫を薄闇の空に響かせたのだった。

  • 129ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:27:59ID:E0NTI3NzQ(7/10)NG報告

    >>128
    私とセイバーが殺気を追って辿り着いたのは、ペレス島の市街地からやや外れたところ。
    廃工場、とでも言えばいいだろうか。
    多くのコンテナが打ち棄てられたその場所に、セイバーに抱えられた状態から私は地面に降り立った。
    そしてその場に似つかわしくない異形の様相をした─────それこそ『悪魔』という呼び方が相応しい姿をしたおそらくサーヴァントだろう青年が、私達を見つめるように立っていた。
    「……っ!」
    ただそこに立っているだけ。
    にも関わらず、私の足は目の前のサーヴァントが放つ重圧を前に竦み上がっていた。そばにセイバーがいなければ、きっと膝から崩れ落ちていただろう。
    セイバーが私を守るように前へ出る。
    「嬢ちゃん、下がってな。」
    「え、ええ……。セイバー、気を付けてね。」
    セイバーに励を送り、セイバーの言葉に従い彼の後ろに下がる。
    セイバーは剣を抜き、そしてサーヴァントと思しき青年を誘うように煽る。
    「あぁ?なんだよ、『戦おうぜ』なんてこれ見よがしに殺気を垂れ流しにしてる奴がいるから来てみりゃ、ずいぶんと華奢で貧相な体つきの奴しかいねえじゃねえか。そのなりじゃ大方、テメェのクラスはキャスターかアサシンってとこか?チッ、ちょいとアテが外れたな。」
    ……煽りにしてはなんだか本音が混ざってるような気がしないでもないけれど、今はそれは置いておこう。
    対する謎のサーヴァントはそれを何とも思っていないように、揚々と言葉を返す。
    「ふふ、ご期待に添えずすみませんね。ですが、この傷は己の誇りのようなモノでしてね。最初から保持しているものですから、治癒のしようがないのです。」
    そして、セイバーを挑発するように言葉を続ける。

  • 130ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:28:47ID:E0NTI3NzQ(8/10)NG報告

    >>129「さて、その闘気。セイバー或いは三騎士のいずれかとお見受けしますが、如何でしょうか?」
    「さあな。剣を持ってるからセイバー、なんて安直な考えはやめた方がいい。俺はランサーかもしれねえし、ライダーかもしれねえし、もしかすりゃあバーサーカーかもしれねえぞ?ま、戦いになりゃそんなのはどうでも良くなるさ。生きるか死ぬか───────あるのはただそれだけだ。」
    剣を謎のサーヴァントに向け、構える。
    「来ちまったもんは仕方ねえ。さあ、かまえな。テメェの素っ首……斬り落としてやるよ。」
    「それが出来るものならすればよろしいと思います。まあ、不可能だと思いますがね?」
    謎のサーヴァントも拳を構え、臨戦態勢を取る。
    「はっ─────勝手にほざいてろ!」
    セイバーが謎のサーヴァントに駆けようとした、刹那。
    「がっ……!?」
    「─────っ!?」
    パァン、と廃工場に乾いた銃声が木霊し、謎のサーヴァントの頭の角が欠ける。
    セイバーが念話をかけてくる。
    「(どうやらもう一騎、この誘いに乗った奴がいるらしいな。)」
    「(ど、どうしましょう……!?)」
    「(落ち着けマスター。焦ったら、向こうの思う壺だ。周りをよく警戒しろ、今はそれだけでいい。)」
    セイバーとの念話が切れる。
    謎のサーヴァントの方を見ると、角の部分を押さえながらも狙撃された方向へと手を翳し、
    「着弾などの状態から推理するに、そちらですかね?」
    そう言って腕を振り下ろし、黒雷を数発放つ。
    凄まじい稲光と熱が広がり、土煙が周囲に満ち、その黒雷の着弾点に僅かながら魔術で編まれた障壁を視認した。

  • 131ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:29:10ID:E0NTI3NzQ(9/10)NG報告

    >>130
    もう一つの陣営がそこにいるという証拠。
    今ここに、一つの乱戦が幕を開けた。

  • 132ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/03/22(Mon) 15:29:30ID:E0NTI3NzQ(10/10)NG報告

    はい終わり!こっからは話し合っていきましょー

  • 133スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/05(Mon) 23:57:10ID:A2NjE5MzU(4/29)NG報告

    第■回投下します。

  • 134スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/05(Mon) 23:57:58ID:A2NjE5MzU(5/29)NG報告

    『亡くなられたのは来栖市桂町にお住まいの星野 亮さん……』

     テレビからニュースが流れる中、アサシンとの視界共有で戦闘の様子が映し出されていく。
    最初こそ此方が押してたものの、急にアーチャーの動きが良くなって膠着状態に陥りつつあるのが素人目にも見えてくる。
    今も、振り払うような鎚鉾の一撃を避けたアーチャーがサーベルの乱れ突きを放ってくる。
    ゲームによくある百裂突きを再現したかのようなそれをアサシンは鎚鉾で捌いていく……だが、後一歩が足りない。
    ドゥフシャーサナが敵マスターの牽制で動けない以上、撤退するか令呪を使うかしかない……だが、この状況は程なくして動いた。

  • 135スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/05(Mon) 23:59:47ID:A2NjE5MzU(6/29)NG報告

     サーベルの間合いから離れ、乱れ突きを凌ぎきる。
    一時的に任意のスキルを獲得する能力を持っているらしく、技量差による優位は消えつつある。
    だが、手の内を暴いてもないのに逃げる訳には行かないと俺は接近して鎚鉾を振るう。
    やはり空を切るがこれは見せ札……現世のゲームとやらにあったサマーソルトキックなる技、それを再現したものが本命だ。
    しかし、それすらも見抜いたかのように避けられ……着地の隙を狙おうとしたアーチャーを第三者の斬撃が襲った。

    「っ!?……お前は!」

     その斬撃をサーベルで受け止めたアーチャーは、斬り上げ、斬り下ろし、横薙ぎと続く斬撃を避けてそのまま距離を取る。
    その視線の先に居た襲撃者は……セイバーだ。

    「フォーリナー、貴女の存在を見過ごす訳にはいきませんので」

    「フォーリナー?……一体何を言って……ごえっ!?」

  • 136スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/06(Tue) 00:01:49ID:g4NDIxNjI(7/29)NG報告

     アーチャー、いやフォーリナー?のマスターがセイバーに問い掛けようとして、鞭のように束ねられた風の打撃に倒れた。
    セイバーのマスターの仕業だ……この手際、相手を無力化するのに慣れてやがるな。
    しかし、フォーリナー……エクストラクラスか?セイバーが嘘を吐いてないのは確かだが……まあ、奴の得体の知れなさを考えるとエクストラクラスのほうがしっくりくるな。

    「よく解らんが、とりあえずだ。セイバー、今回だけは味方で良いんだな?」

    「ええ、あのサーヴァントは危険です」

     断言するセイバー……茅理銀河のサーヴァントが入れ知恵したか?まあ良い。

    「ならば、合わせろ!」

     アーチャー、いやフォーリナーとの距離を詰め、鎚鉾で薙ぎ払う。
    大振りのそれを避けるフォーリナーだが、ドゥフシャーサナの援護射撃で逃げるルートは固定され、そこにはセイバーが居る。
    セイバーが放つは袈裟斬り、横薙ぎ、唐竹割り……避けきったフォーリナーだが、その姿勢は崩れている。
    その隙にフォーリナーの左手側に回り込んで跳躍、渾身の力で鎚鉾を振り下ろす。
    咄嗟に奇妙な形状の笏を実体化させて受け止める。
    だが、鎚鉾が笏をへし折り……いや、その衝撃すらも利用してフォーリナーが後ろに飛ぶ……なんて直感と思い切りだ。
    だが、奴もそろそろ限界の筈。

  • 137スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/06(Tue) 00:02:29ID:g4NDIxNjI(8/29)NG報告

     手にした鎚鉾が天井に突き刺さって新たなひび割れを作りながらも、俺はそう叫んだ。
    それに応えるかのようにサーベルを投げつけるセイバー。
    そのサーベルを叩き落としたフォーリナーだが、その頃には既にセイバーが距離を詰めていた。
    そして、セイバーの手には新たなサーベルがあり、フォーリナーを切り裂かんとばかりに振るわれた。
    最早、フォーリナーに打つ手は無い……筈だった。

    「『深淵に吼えよ、不可無き皇帝(マイン・ポッシブ・バッテリー)』」

     その時、悍ましい何等かの力で空間が歪んだ。
    原理も過程も解らないままにフォーリナーは斬撃を避けて間合いを抜け出し、ドゥフシャーサナの目の前に現れてサーベルを横に一閃。
    ドゥフシャーサナの上半身だけが衝撃で浮き上がってそのまま後ろへと倒れていき……その命と共に消滅する。
    それを為しやがったフォーリナーの軍服には歪な五角形の紋様が浮かび上がり、背には触手が出現。
    そして、その左手には人皮で装丁された本が握られていた。

  • 138スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/06(Tue) 00:07:32ID:g4NDIxNjI(9/29)NG報告

    以上です。

  • 139ペレス殺◆B8D4AQBhU22021/04/18(Sun) 23:44:02ID:Y3NDQwMzI(1/11)NG報告

    さて、どうしますか…。先ほどの狙撃への反撃はしましたが、おそらく防がれた、少なくとも大きなダメージにはなっていない筈。己は着弾の衝撃で吹っ飛んだ頭部、そして負担がかかった首の調子を戻す為に、ポンポンと頭に手を当てつつ考える。仮定戦況はセイバーとアーチャーとの乱戦、となればあらゆる距離からの攻撃へと対応できる状況に己を置いておいた方がいいでしょうか。そうだとしても、今は『堕天・暁の明星(ルシフェル)』の権能だけを行使するべきでしょうね…。『戦嵐・異邦より来る悪獣(セト=アン)』は範囲も広いですし、まだまだ隠しておきたい手札です。情報改竄という己のスキルも過信し過ぎはいけませんし、あまり派手にやり過ぎて監督役様たちから睨まれても刹那様に申し訳ないですし。
    「などと、考えている時間も無さそうですね?」
    思案しつつも顔を上げると、そこには急加速によって己に近づき今にも斬撃を浴びせようと剣を振り上げる獣のような彼がいた。

  • 140ペレス殺◆B8D4AQBhU22021/04/18(Sun) 23:44:20ID:Y3NDQwMzI(2/11)NG報告

    >>139
    「おいおい、敵である俺を前にして余所見と考え事たぁ余裕だ、なっ!!」
    気合いと共に、己に彼の剣が届く…。その直前に、己は両腕をドラゴンのそれに変え、頭部を保護するように掲げる。
    刃物と龍の鱗がぶつかり合い、甲高い音が響く。その音と同時に、彼我は衝撃によって弾かれ、後退する。とその間、つまり先ほどまでどちらかの頭部が存在していた空間を喰らうように弾丸が通り過ぎ、コンクリートの地面を抉った。
    「ふふ。先ほどは失礼しました。獣のように鋭い貴方。ええ、確かに試練の最中に他に気を移すなどいけませんね」
    己がそんな事を言う間にも、獣の彼は剣を振り回し、追撃をしようと此方へ前進してきます。斬撃を主体に、蹴りや拳打などを織り交ぜ、流れるように吹き荒れるような一撃を絶え間なく己の肉体の芯や致命となり得るであろう場所にに叩き込まれようとしている。それに対して、己はドラゴンと化した己の爪と鱗を最大限活用し、手の甲や掌で衝撃を受け流し、前腕を鎧のように扱って防御。そして剣と体術の隙間を穿つように此方も爪による攻撃、そして電撃による射撃を行う。
    そういった舞踏のようにも思える攻撃の応酬の間に、噛み殺さんとでも言わんばかりの銃撃が彼我の肉体を狙う。コレは軽装とは言え鎧を纏う彼の方が脅威度は低く、しかし避けながら己に対して連撃。
    己も負けじと反撃を当てにかかる。しかし、後退しながらの行動はやはり大変ですね。拍子と言いますか、調子が狂いますから。そうこうしているうちに廃工場には破壊の嵐が吹き荒れる。コンテナや地面が斬り開かれ、或いは凹み。弾丸によって抉れたり、穴の開いている場所もあり、アスファルトの地面がまるで満点の星空のようですね。
    と、いうような事を思いつつ、顔の間近まで降りかかった斬撃を大きく弾き、一度距離を取る。フフッ、やはり此度の試練も素晴らしいですねぇ。。。
    「いやはや、汝様は素晴らしい試練ですね。そこまで強くない己としては非常に嬉しいです」

  • 141ペレス殺◆B8D4AQBhU22021/04/18(Sun) 23:45:39ID:Y3NDQwMzI(3/11)NG報告

    >>140
    拍手をしながら、眼前の彼と、此処にはいない暫定アーチャー様に向けて、拍手をしながら讃える言葉を放つ。正直言ってもう少しは拮抗できるかも、などと考えていたのでかなり素直な賞賛だったのだが、彼にとっては不快な言葉だったようだ。露骨に、という程では無いが、見て分かる程度には顔を顰められてしまった。
    「なんだよ、妙な事言い始めやがって。聖杯戦争ってのに参加した割には、苦戦の状況でも笑顔たぁおかしなヤツだぜ」
    「ええ、そうですね。己は、他のサーヴァントの方とはまた違った動機で参戦しているのでしょうし。しかし今の苦境では中々に己の本懐は遂げられません。と、いう事で。己は汝様とまだ見れない狙撃の何方かを両方等しく相手どる為、こうする事にしましょうか」
    己の顔へと自然と浮かんだ微笑とともに、己の体はふわり、と浮かんだ。己の背中に在る翼によって飛翔を開始したのです。コレによって剣士である彼とはヒット&アウェイにより距離をとりつつ削り、常に移動する事で狙撃の何方かには狙いを絞らせ難くする、という戦略である。
    「では、行きますよ。乗り越えて下さいね?」
    そう言うが早いか、己の体は加速した。ドラゴンの爪による斬撃攻撃や同じく飛行開始と同時に生やした竜の尾を振り回し。無差別に、全方向に雷撃を撒き散らして戦場である廃工場とその周囲の土地を思い切り蹂躙する。先ほどよりも更に激しい斬撃と打撃、雷撃によって地面やコンテナが焼き切れ、立体駐車場の鉄骨が曲がり、己という試練を存分に世界に示す。縦横無尽の雷雨!斬撃と衝撃の嵐!ああ、己は、サタンは此処にいる!!…楽しい。やはり、己の力を振るい、試練そのものと成れるのはいつも己が領分や矜持を満たす感覚がして楽し


    「…ん?」

  • 142ペレス殺◆B8D4AQBhU22021/04/18(Sun) 23:45:52ID:Y3NDQwMzI(4/11)NG報告

    >>141
    世界への敵対者として高揚した気分の中で、鈍痛が体に響いた。その痛みによって少しクールダウンし、ドクドクとした痛みの原因を見やると、腰から胸元にかけて斜めにバックリと斬り傷を負っている。丁度袈裟斬りの逆、と言えば解りやすいだろうか。どうやら先ほどまで主である儚げな雰囲気を纏う少女を庇いつつ回避に徹していた獣の彼が、変幻自在の跳躍によって己にその剣で傷をつけたようですね。「どうだ!!」と誇るような勝気な笑みが眩しい。だが、やはり跳躍。次の一手をどうするか、と悩ましくしかし楽し気な空気もまた帯びている。
    「…ゴプフッ。…フフ、フハハハハハッ!!!」
    口と胸元から、血が流れる。ふむ、当たり前ですが、かなりのダメージのようですね。”敵対者”の応用によってはまだまだ戦闘続行は可能かもしれませんが、思考の隅に「撤退」の二文字は置いておいた方がいいかもしれません。
    「素晴らしい!!素晴らしいですよ獣のような汝様は!!ああ!やはり汝様のような人間が試練を乗り越えていく時はいつも心が荒ぶります!ああ、天上に御座す主たる貴方に、変わらぬ感謝を高らかに謳いましょう!ハレルヤ!いざ此処に、万雷の喝采と絶対的な祝福を!!喉が裂ける程に!声が掠れる程に!!アリルゥゥイヤァァッ!!!」
    ああ、己は嬉しい!己は高まっている!威力偵察を、と仰った刹那様には悪いですが、己は今酷く感動しています。素晴らしい、褒め称えなくては!そう、我が力を更に披露して差し上げなくては!!…己の背後に、バチバチとゴロゴロと力が集まる。黒雷が、暗雲と共にやってくる。
    「世界は愛に!試練に!悲しみ、怒り!そして喜びに満ちている…っ!!!──真名封鎖、宝具限定解放──『■■・■■□■(◆◆◆◇◆)』!!!」
    そして己は、先ほどの小手調べに放っていたよりも更に威力の高まった雷撃を降り注がせた。
    さぁ、どう防ぎますか!?見せて下さい。貴方の試練の踏破を!……そして。雷撃が地面に到達する前に。
    廃工場に可憐な少女の「──真名封鎖、宝具限定解放──『■■■■□■■■■(◆◆◆◇◆◆)』ッ!!」という叫びが響いた。ああ、新しく試練の挑戦者がいらしたのでしょうか!?フフフフ、胸が躍りますねぇ!!

  • 143一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/04/22(Thu) 11:19:33ID:g0MDQwODY(1/5)NG報告

    第■回を投下します。

  • 144一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/04/22(Thu) 11:20:39ID:g0MDQwODY(2/5)NG報告

    大会SS

    「─────あ」
    「止まるな!マスター!」
    斬殺されたアサシンの姿に一瞬攻め手が止まった銀河へ襲いかかるも、触手が不可視の障壁に阻まれる。
    障壁に弾かれ、あらぬ方向にいったそれはハリーの風の刃とセイバーの太刀筋に切り刻まれたが、すぐに再生。

    「や、はり、この世界(ホシ)では……カラダが上手く動かない、な……」
    ぎくしゃくと人形のような動きのフォーリナーが声を発するが、その声音はまるでコンピューターの合成音声のような───それでいて背筋があわだつような恐怖の疼きをかき立てる音色が含まれた───モノだった。

  • 145一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/04/22(Thu) 11:21:18ID:g0MDQwODY(3/5)NG報告

    >>144
    「マスター……『アレ』はまだ使えるか?」
    「…………正直不安はあるけど、何とか……!」

    そう言って、銀河は何処からともなくピースを取り出した。
    しかし、そのピースは通常のモノよりも大きく、シルバーのパーツを隔てて若草色と桃色の二色に分かれていた。
    「十分だな」
    そう言って、キャスターの体からは一冊の本が飛び出した。
    「みんな……少しだけ、時間を稼いでくれ……ヤツを『封印』するッ!」
    「「「OK!」」」
    【NINJA PHASE!】
    【心に忍ばす無慈悲な刃……………影に潜めば者と化す!】
    銀河が銀色のパーツを回転させ、矢印を桃色側に合わせベルトに装填する。
    それに危機を覚えたのか定かではないが、フォーリナーがサーベルを構え人知を超えた速度で迫る。

  • 146一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/04/22(Thu) 11:21:45ID:g0MDQwODY(4/5)NG報告

    >>145
    「させん!」
    それに対し、セイバーが放たれた剣閃と触手を文字通り切って落とし────。
    「シッ……!」
    ─────いつの間にか懐に潜り込んだハリーの風を纏った拳ががら空きの顔面に突き刺さり、フォーリナーが大きくたたらを踏む。
    「大変身(トランス・エボリューション)!」
    その隙を突いて、銀河が詠唱(せんげん)。それと共に装甲が取り付き、障子戸が勢い良く閉まり少女を隠す。

    「■■■■■■■■■■■!!!!」
    全方位からフォーリナーがやたらめったらに触手を伸ばす、セイバー陣営は紙一重で全て避けるも、それらは障子戸に向かっていく。
    「まずっ……!」
    焦るセイバーのマスター、しかしそんな彼を余所に障子戸が勢いよく開き、影が躍り出る。
    瞬間、触手が全て切り裂かれフォーリナーの左腕が落ちる。
    その後方、避雷針の上に立ち太陽を背にした姿────!
    【METAMORPHOSE!NINJA GLADIUS!】
    成長した姿の銀河が、そこにいた。

  • 147一般通過フォーリナー◆gmmefYfW/o2021/04/22(Thu) 11:22:34ID:g0MDQwODY(5/5)NG報告

    >>146
    投下は以上です。
    腹は決まった、ならば後はやってみせるのみ。

  • 148ガイ【ペレス・騎】ホテルにて2021/04/26(Mon) 22:21:37ID:A3OTQ3NTI(1/3)NG報告

    「マスター・・・・・・出発の準備をしようとは言ったけれども、それはちょっといろいろ持ちすぎじゃない?ってライダーは思うよ」

    ライダーはあきれた様子でため息交じりに言った。
    なにせ下畑ときたら、大きなリュックサックぱんぱんにものを詰め込んで、その上、両手に抱えるような鳥を象ったぬいぐるみクッションを押し込もうと悪戦苦闘しているのだ。

    「でもですね、この子を置いて行っちゃうのはちょっとかわいそうって言いますか」
    「必要なものだけでいいよ。重くて動きにくくなっちゃう」
    「うーん、わかりました。じゃあ、ちょっと荷物を整理しまして・・・・・・そうだ、この子がいれば寝袋とかいらないですね!この辺を置いていきましょう!」
    「いや逆!」

    せっかくしまい込んだ荷物を再びひっくり返そうとするマスターを、彼女の従者は慌てて制止する。

    「マスター・・・・・・さっきも伝えたと思うけれども、これから始まるのは遊びじゃなくて危険な戦いなんだよ?本当にそういうものが必要なのか、ライダーは疑問に思うよ」
    「いえいえ、だからこそです!そういう戦いにこそこの子を連れていくことでですね――」
    「連れていくことで?」

  • 149ガイ【ペレス・騎】ホテルにて2021/04/26(Mon) 22:22:36ID:A3OTQ3NTI(2/3)NG報告

    >>148
    「――途中で私の人生が終わることになったとしても、大切なものに囲まれて最期を迎えられるじゃないですか」

    屈託ない笑顔でそう言い放つ少女に、ライダーははっと息をのんだ。
    そうだ。「願いを叶えるために聖杯を奪い合う」という聖杯戦争のルールにおける大前提のため「そんなものなのだろう」と流していたが、この少女はやけにあっさりとこの戦いで自分の負うリスクを受け入れている。
    果たして闘争から縁遠い暮らしをしているただの少女が、こんなにも軽いのりで命を天秤にかけられるものなのだろうか。

    「・・・・・・マスターは死に急ぐヒト?」

    思わず口をついて出たその言葉に、下畑は困ったように苦笑した。

    「いえ、そういうわけでは。私は今の生活で最高に幸せですから、死にたいとかはありません。さっき襲われたときも、怖くて怖くてドキドキでしたし。ただ――ただ、そう!プチ家出的な!!」
    「プチ家出?」
    「そうです!私の両親ときたら、こっそり抜け出したことに気が付かないくらい、私のことなんてどうでもいいって思っているんですよ。本当に生粋の仕事人間。だから、家出です!私がいろいろ荷物をもって出ていったら――」

    そのあとに言葉は続かなかったが、ライダーには「心配してくれるといいなぁ・・・・・・」というつぶやきが聞こえた気がした。

  • 150ガイ【ペレス・騎】ホテルにて2021/04/26(Mon) 22:23:20ID:A3OTQ3NTI(3/3)NG報告

    >>149
    幕間。とりあえず以上です。

  • 151ガイ【ペレス・騎】ホテルにて②2021/04/29(Thu) 16:28:46ID:k2NjY3NzY(1/2)NG報告

    >>149
    そうであるならば。曲りなりとも人生の先達として示すべき道は一つだろう。

    「マスター、この戦い、絶対に勝とう」

    それが“どの自分”の言葉なのか、ライダー自身にもわからなかった。
    だが、構わない。仮にも自分であるのなら、どれに聞いても同じことを言うだろう。そういう実感があった。

    「マスター。実はね、聖杯戦争に参加する資格を手にした者には2つの選択肢があるんだ。マスターとして戦争を戦い抜くか、もしくは――教会に令呪を返還して棄権するか。先だった戦闘でも肌で感じ取ったとは思うけれども、ライダーは決して強いサーヴァントではないよ。実際、相手は小手調べといった様子だったのに、全力を尽くしてなお届かなかった。もしマスターの助けが無かったら、もしくは相手が撤退する気になってくれていなかったら、あの場でライダーたちは終わっていただろう。それどころか――今、この瞬間に朧げながら感じる戦いの気配を考慮しても、もしかしたらライダーたちの戦闘能力は一番低いかもしれない」

    ライダーは下畑をまっすぐに見つめた。
    続く言葉を静かに待っているこの純粋な少女に、このような試練を与えて、果たしていいのだろうか。もしかしたら、このまま棄権して当たり前の生活を平穏に過ごすのが幸せなのかもしれない。
    だけれども、少しでも人生を変えようと思うのであれば。変わっていかなくては。

    「それでも一緒に戦うことを選んでほしい。勝とう、マスター。幸いにも此度の戦いは『聖杯探索』。正面から戦わなくてもいい。最後まで生き残って聖杯を手にすれば、その陣営の勝利だ。勝ち残ったその先で、必ず君の望みは成就する。だから、共に“最弱”なれど“勝者(さいきょう)”になろう」

    ライダーの全力の思いを受けて、一瞬の沈黙ののち、下畑は微笑んだ。

    「もちろんです。よろしくお願いします」
    「ありがとう!そして、改めて自己紹介を。サーヴァント、ライダー。真名、ルドルフ2世。“魔術皇帝”ルドルフ2世だよ。よろしく、マスター」

  • 152ガイ・フォークス【ペレス騎陣営】2021/04/29(Thu) 16:35:06ID:k2NjY3NzY(2/2)NG報告

    >>151
    追加分ここまでです。
    この後、ライダー陣営はどこかのホテルで一泊してから地下探索に繰り出す予定です。

  • 153スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:52:23ID:Y5ODczODM(10/29)NG報告

    第■回、投下しますね。

  • 154スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:52:42ID:Y5ODczODM(11/29)NG報告

    「『深淵に吼えよ、不可無き皇帝(マイン・ポッシブ・バッテリー)』」

     再びの宝具発動。
    悍ましい気配と共にフォーリナーの左腕が瞬時に再生し、斬り落とされた触手が意思を持つかのようにセイバー達へと襲い掛かる。
    正直にいって信じ難いが、奴の宝具は不可能を可能にする……いや、奴の言葉で言うなら不可能を無くすといった所か。

    「それは、さっきも見たよ!」

     全身にハートマークが描かれた忍者へと姿を変えた銀河も負けてはいない。
    影に潜り込んで移動し、姿を現したかと思えば全身のハートマークから生やした刃で触手を切り刻んでいく。
    そこにセイバーとそのマスター:ハリー・ウォーカーの攻撃も加われば、動き出した触手は瞬く間に全滅……が、フォーリナーは笑みを浮かべている。。

    「触手では足りんか……ならば目覚めよ、『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』」

     フォーリナーの左手にある本……いや、もう一つの宝具が魔力を放つ。
    そして、聖杯からの知識で言うならタコとヒトデとイソギンチャクをごちゃ混ぜにしたような化物……海魔が次々と召喚されていく。

    「銀河はそのまま切り込んで、ハリーとキャスターは私が守ります」

    「解ったよ。グラディ影刀!」

  • 155スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:54:23ID:Y5ODczODM(12/29)NG報告

     胸部のハートマークから刀を引き抜いた銀河が、海魔の群れへと駆け出す。
    影と高速移動を使い分け、海魔を切り捨てていく銀河。
    近付いた海魔を斬り伏せつつ、手が空いたらサーベルを投擲して遠くの海魔を縫い付けるセイバー。
    ハリーの風魔術による援護もあり、海魔の群れは本による召喚で個体数を維持するのが限界といった所か。
    だが、フォーリナーの余裕は崩れない。

    「成程、しかし此処までだ」

     そう言い、フォーリナーは銀河のサーヴァント、キャスターに大砲を向ける。
    褐色の肌の豊満な女性の姿をしたキャスターは、宝具らしき本を使って封印の術を準備しているようで、一切の身動きをしていない。
    故に、一度砲弾が放たれればキャスターは一溜まりも無いが……大砲は内側から爆散した。

    「何!?」

    「一人見落とした代償は高く付いたな、弟の仇」

  • 156スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:55:20ID:Y5ODczODM(13/29)NG報告

     そう、大砲が爆散した原因を作ったのは俺だ。
    フォーリナーの意識がセイバー達に向かっている隙に俺は一度気配を遮断。
    後は、フォーリナーが大砲を撃とうとする直前に鎚鉾で殴って砲身を歪める……そうすれば、行き場を失った力が大砲を破壊するって寸法だ。
    最も、爆発の効果範囲から逃れきれずに俺も手傷を負ってしまったが、動けない程ではない。
    そして、大砲を破壊されて驚いたフォーリナーを見逃すセイバー達ではない。

    「隙有り!」

     セイバーのサーベルにハリーが風を纏わせ、フォーリナーが持つ本目掛けてセイバーはそれを投擲。
    咄嗟に叩き落としたフォーリナー……だが、サーベルが纏った風が海魔を薙ぎ倒し、フォーリナーへと続く一本道が出来ていた。

    『絶命NINPOW』

     目にも留まらぬ速さでその道を駆け抜け、フォーリナーの両手足を蹴り上げる銀河。
    すると、十字架状のエネルギーが宙に浮かびあがり、フォーリナーを磔にするかのように拘束。

    『GRAND CRUSADE!』

  • 157スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:56:01ID:Y5ODczODM(14/29)NG報告

     その十字架よりも高く銀河が跳躍し、フォーリナーの心臓目掛けて渾身の跳び蹴りを放つ。
    率直に言って、今まで俺が見た銀河の技の中で最も強力な攻撃だ。
    奴が俺の知っている概念では説明の付かない力で戦っているので説明出来んが、恐らくはサーヴァントの命に届き得るだろう。
    しかし、それでもフォーリナーの霊核を破壊するには僅かに足りなかった。

    「……『深淵に吼えよ、不可無き皇帝(マイン・ポッシブ・バッテリー)』」

     落下しながら瞬時に再生し、何事も無かったかのように着地するフォーリナー。
    致命傷一歩手前の状態からも瞬時に再生する化物……だが、その抵抗も此処までだ。
    それを示すかの様に、キャスターはその宝具の名を唱えた。

    「『終の空より、汝を久遠に堕とす(フェイタルコード:アル・アジフ)』」

  • 158スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:57:40ID:Y5ODczODM(15/29)NG報告

    「で、フォーリナーが封印されたのを確認したらすぐに撤退したと」

    「流石に手傷負ったままあいつ等と戦ったらろくな戦果も挙げられんだろうし」

     失った拠点の代わりとして、どうにか見つけ出した空家。
    撤退したアサシンと合流した俺は、そこを仮の宿として過ごす事にした。
    最も、財布とスマホは無事だったので明日からは何処かのビジネスホテルにでも泊まる予定だ。
    電気もガスも水道も止まってるし、家具も無いから大会終了まで過ごすのは厳しい。

    「まあ、手傷と言っても明日の朝には治る程度だし、飯にしようぜ」

     と言ってコンビニで買った弁当を取り出すアサシン。
    ちなみに、俺が焼きそばでアサシンがカレーライス。
    常に財布を持ち歩く癖が無かったらこうやって食事をするのにも苦労していたと考えるとゾッとする。
    袖口とポケットの鎖を除いた魔術礼装は全て失われ、アサシンの弟達も全滅した。
    残ってる参加者の中でダントツに消耗していて、先の事を考えると気が重い。
    けど、諦める訳にはいかなかった。

  • 159スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/29(Thu) 23:58:17ID:Y5ODczODM(16/29)NG報告

    「終わりました、わね……」

     思わず、後ろの椅子にもたれかかりました。
    変貌し、その性質を顕現させたフォーリナー:ナポレオン・ボナパルト。
    それは、大きな被害を出す前にキャスターの手で斃されました。
    一歩間違えれば討伐令どころか大会の中止まで有り得た事態……この大会も、そう何度も開催は出来そうに無いですわね。

    「……冷や汗まで……私もまだまだですね」

     とりあえずは、他の事を考えましょう。
    敗退した参加者の内、アスパシア・テッサロニカは敗退後即座に来栖市からの脱出を希望し、私達はそれを受理しました。
    彼女を密かに狙っていた蛆と毒虫を操る執行者、レーマイア・ギミマフィアスは不慮の戦闘で死亡していますし、封印指定にされる前に少しでも移動しておきたいのは当然と言えるでしょう。
    私達に出来るのはそこまで……後は、彼女次第ですわ。
    一方、リザ・ハロウィンは来栖市に残って観戦希望……のはずが今日の朝食にイチゴジャムトースト二枚を食べ終えた所で急遽脱出に方針転換。
    傍迷惑な話ではありましたが……フォーリナーの一件に比べれば可愛いものですね。

    「今日敗退した和銀京郎は、大事をとって今日一日は安静……骨折等はないとはいえ腹部への攻撃で気絶してますからね」

     結局、問題が一つ片付いた所で大会はまだまだこれから。
    気を抜いてなど居られませんわね。

  • 160スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/04/30(Fri) 00:00:43ID:UxNjc2MTA(17/29)NG報告

    以上です。
    猫さんもフォーリナーさんも多忙な為、後からキャスターの宝具シーンを書き出せるようにしつつ、三日目を終わらせておきます。

  • 161京極さんの◆B8D4AQBhU22021/05/05(Wed) 23:06:26ID:Q0NjcxMjA(5/11)NG報告

    「…まさか人理の危機とはいえ、再びこの地を拝む事があるとはな。」
    そう一人零しながら、ランサー・趙雲子龍は湖畔に足を踏み入れた。
     時は三国時代。厳密に言えば三国時代の特異点。何らかの原因により黄巾が復活、否、黄巾を付けてはいるが、実際の黄巾党とは似て非なる魔が跳梁跋扈し、混沌を呼び起こしている地。彼は、この地にはぐれサーヴァントとして召喚された。
    まだ鍵となるであろうマスターにも、他のサーヴァントにも遭遇できていない為、放浪の身となっている。
     この地は赤壁。嘗て覇を唱えんとして常勝に近い戦果を挙げていた曹操軍を、孫権と劉備の連合軍が下した運命の地。
    この周辺で川が氾濫する、どこか恐ろしげな声を聴いた、等の噂を小耳に挟み、その歩みを赤壁に進めてはみたものの…一見、黄巾の魔は見当たらず、長閑な地の様には見える。
    …だが、黄巾どころか、鳥の鳴き声一つすら聴こえない。数多の戦場を経験した趙雲にとっては、どこか不穏な空気を感じざるを得なかった。
    (…何かが妙だ。)
    そう感じた時だった。少年の歌声が、彼の耳に入ったのは。
    「…?」
    どこか惹かれる様な、あどけなさが残る声。しかし、これは…
    趙雲は、音を出さない様に、歌声の源がいると思われる浮島に近付く。
    木々の生い茂る小島の崖の上。そこには、黒い特徴的なフードを被った少年がいた。彼は此方に気付いたらしい。歌うのを止め、不思議な顔で偉丈夫を見る。
    「…わぁ、大きいお兄さんだ!!」
    警戒もせず、子供らしい明るい顔でこちらを見る。どこか妙な感覚を覚えながら、話しかける。
    「……少年。…申し訳ないが、一つお聞きしたい。」
    「…なんだい?お兄さん。」
    そう言って、少年は此方を見つめる。
    …その時、気付いた。
    …奇妙な線が入った目。そして服の裾から見える、触手の様な物に。

  • 162◆B8D4AQBhU22021/05/06(Thu) 00:08:44ID:YwNTAxNDQ(6/11)NG報告

    >>161
    ぼくは今。とても大きい川ですごしている。不思議な川だった。おんねんとか、とうし。とか。そういったモノが渦巻いていて、なんだか気分が良い。だけど、最初はあまりよく無かった。だって、人どおりが少なかったもの。だから川の水で遊んだり、お歌を歌ったりして、誰か来ないかなぁ、って。してたんだけど、誰も来なかった。迷子になるのもイヤだったから、「だれかー」って旅人さん?みたいな。のが通りがかった時に声を出したら、逃げられちゃった。悲しい。
    ぼくは、たぶん、はぐれサーヴァント。最初のお友達(ますたー)は、居ないし。水遊びも飽きちゃった。海は。苦手で、川なら、そこまでじゃなかったけど、さ。でも…寂しい。
    「だれか、来ないかなぁ…」
    そんな事を呟きながら、ぼくは今日も歌を歌う。誰か、ぼくを見て?ぼくと遊んで、いっしょにいてくほしい…。
    背後で、音が聞こえたような気がした。もしかしたら、誰かがぼくの友達になりに来てくれたのかもしれない。ふふ、そうだと。嬉しいね?振り向くと、そこには緑色がキレイな武具で。身を包んだ男の人がいた。
    「…わぁ、大きいお兄さんだ!!」

  • 163◆B8D4AQBhU22021/05/06(Thu) 00:08:52ID:YwNTAxNDQ(7/11)NG報告

    >>162
    嬉しいな、楽しいな。きっと、ぼくとなかよくなってくれるんだ!自分の顔がほころんでいくのが、分かる。
    「……少年。…申し訳ないが、一つお聞きしたい。」
    お兄さんは、ぼくと遊んでくれる前に、気になった事があるみたいだ。なんだろう。
    「…なんだい?お兄さん。」
    「俺は、この周辺の変な噂を聞き調査に来たのだ。川の氾濫や、変な声だな。少年は何か知らないか?」
    なぁんだ、そんな事か。それは、きっと。ぼくだ。
    「ぼくだ、よ?でも、恐ろしいなんて言われると。嫌だな、ぼくは。友達になって欲しいだけなのに」
    あぁ、さっきまでの期待が、しぼんでしまうのを、感じる。きっと。このお兄さんは、ぼくと遊んでくれないみたいだ。ぼくを????りに。来たんだ、それならしかたない、よね?ぼくは怒られるの、イヤだから。このお兄さんをからかって、遊ぼう。
    「お兄さんは。ぼくの友達に。なってくれない、よね?だから僕。は、貴方で遊ぼうかなって思うよ」
    ぼくは、ぼくの持っている、宝具。それを解放、して。両手や周りでうごく、ぼくの触手で、海賊さんが持つみたいな剣。カトラスをじったいか、させて。持つ。チャンバラごっこ、だ!
    「やはり…貴殿がここら一帯に影響を及ぼしている黄巾の魔か!子供故、殺しはしないが、少々痛い目には合ってもらうぞ」
    お兄さんも、やる気十分。だ!きっと、楽しく遊びになる、よね。

  • 164京極2021/05/06(Thu) 09:06:45ID:kxOTY5MA=(1/7)NG報告

    >>163
    「お兄さんは。ぼくの友達に。なってくれない、よね?だから僕。は、貴方で遊ぼうかなって思うよ。」
    目の前の少年がそれを言った瞬間、趙雲は後ろに飛び退いた。その無垢な言葉とは裏腹に彼から感じる圧。それは、少年が只者ではないという事を気付かせるに十分であった。
    「やはり…貴殿がここら一帯に影響を及ぼしている黄巾の魔か!子供故、殺しはしないが…少々痛い目には合ってもらうぞ。」
    趙雲は確信していた。この少年は、間違いない。サーヴァントだと。ならば…背に掛けている、包帯に包まれた得物を抜き、彼は詠唱を唱え始めた。
    「…我は猛風を手懐けし者。風を纏いし我が槍には、敵う者無し。荒ぶれ、涯角槍!!」
    唱え終わった瞬間、趙雲の周辺に風が息吹き始めた。それと同時に、包帯から現れるは深緑の槍。生涯無敗と言われた槍。涯角槍を構えて、趙雲は臨戦の態勢を取った。
    「わぁ、かっこいい槍だね。楽しくなりそう!」
    「…少年、得物を取れ。始めよう。」
    「うん!それじゃあ、遊ぼう!!」
    その瞬間、先程まで静まり返っていた湖から、騒めきが聞こえ始めた。

  • 165◆B8D4AQBhU22021/05/06(Thu) 15:12:37ID:YwNTAxNDQ(8/11)NG報告

    >>164
    緑色の槍兵と、碧い騎兵の武器が激突する。ランサーの槍捌きはなるほど歴戦の強者。それまでの戦いの経験と彼自身の闘志、更には無辜の民草を恐怖させる魔を討たんとする気迫がその穂先に乗っている。
    対するライダーが振るう武器の軌跡は、ランサーとはまた違った強さがある。それは、多勢、手数が多いという強みだ。武威という物は全く感じられないが、自らの両腕、そして身にまとう触手に持たせた剣が変幻自在の動きを見せる。一つの剣を躱したら他の剣が迫り、息つく暇がないと思わせる程の連撃だ。
    その数の脅威にランサーは刮目するものの、冷や汗一つ掻かず、冷静に対処していく。カトラス向かってくるを弾き飛ばし、続いて襲い掛かる日本刀を同じように吹き飛ばす。中華刀をベキリと折り、レイピアを折り曲げる。だが一度視界に入った刃物を幾度負っていこうがその刃物は全く尽きる事が無いように思えた。
    どちらも相手に負けじと攻撃を続けているが、なかなかどうして埒が明かない。ランサーの一撃は使い捨てられる剣に阻まれ、ライダーの武具はランサーの槍に壊される。
    「ふむ。なかなかだな、少年。尽きぬ武器を持つとは…。君の正体はまだ掴み兼ねているが、俺をそう簡単に倒せるとは思うなよ」
    戦いの高揚に身を任せ、ランサーは不敵に笑った。逆にライダーは、頬を膨らませ、不機嫌な様子を隠そうともしていない。チャンバラごっことはいう物の、あまり相手に攻撃が届いていない事が不満なのかもしれない。
    そうした撃ち合いが暫く続き、ランサー、ライダー二騎の周りにライダーがまき散らした壊れた武具の小さい山がいくつか出来た頃、ライダーがランサーから距離を取った。
    「なんだか、チャンバラ。ごっこは、飽きて来ちゃった。だから、今度は、お兄さんとぼくでボール遊び。しよう?」
    そういったライダーの背後に、大小さまざまな丸い機械のようなモノが具現化した。機雷だ。
    それが、二騎のサーヴァントの周りを回遊していく。起爆するのは、そう遠いタイミングではないだろう。

  • 166京極2021/05/06(Thu) 16:40:29ID:kxOTY5MA=(2/7)NG報告

    >>165
    「機雷か…!」
    回遊する大量の丸い爆弾を見ながら、趙雲は高速で情報を整理する。
    この少年は無数の剣を操り、そして機雷を少年の意思で出現させた。魔力による物だろうか?
    クラスは何だ?真名は?恐らく中華の者ではない事は分かるが…
    いや、考えても仕方ない。取り敢えずは、機雷をどうするかを考えろ。
    そう己に言い、翡翠の槍兵は策を巡らせる。
    「お兄さん、早く動かないと、ボールが。割れちゃうよ?」
    「…溜まってるな。ならば!!」
    その時趙雲は、思い切り槍を地に突き刺した。
    「お兄さん、何を…」
    「涯角槍、風圧解放!」
    瞬間、趙雲の槍を起点として、荒ぶる竜巻が引き起こされた。
    涯角槍。彼の宝具が一つ。それは風を吸収し、エネルギーに変える槍。噴出させ槍捌きの速度を使い手に応じて底上げする。それが通常の使い方だが、応用として、地に突き刺す事で一時的に、少し小さいが竜巻も巻き起こす事ができる…!!
    かなりの風のエネルギーを消費するのが欠点だが、それを加味してもかなり強力なカードと言って過言ではないだろう。
    それを利用して緑の槍兵は、竜巻を巻き起こし、機雷を打ち上げて爆破させる作戦に出たのだ。
    そして、大小の機雷を打ち上げた今こそ、サーヴァントの少年に攻撃を仕掛ける好機!
    「はァッ!!」
    趙雲は、少年へと槍を構え突進した!

  • 167◆B8D4AQBhU22021/05/06(Thu) 23:25:56ID:YwNTAxNDQ(9/11)NG報告

    >>166
    「あ。危ない、ね?」
    自身へと突進してくるランサーを眼前にして、ライダーはのほほんと呟いた。
    「えっと。どうしよ、ぅかなぁ」
    そんな事を呟きながら、自分の前に鉄板やテトラポット(消波ブロック。海岸にあるコンクリートなアレ)を具現化し、ランサーの槍から己を守る為に楯、身代わりにする為だ。
    しかし、ランサーの槍は、生半可な障害など意にも介さず、それらを粉砕し、ライダーの小さな腕を切り裂く。その裂傷は
    血を吐き出し、ライダーの魔力を確実に削っていく。先ほどまでのランサーの防衛により、それらしいチャンバラごっこが出来なかったライダーは更に機嫌が悪くなり、激痛に顔を歪ませる。
    ライダーはその恨みをぶつけるかのように魚雷を召喚し、ランサーに向けて発射した。しかしランサーは、華麗な身のこなしでその突撃を躱す。しかし、そのある種無防備になったランサーの体を、触手で拘束し、ライダーは崖から飛び降りた。
    その墜落の先にあるのは赤壁の大河。ランサーは水面に激突する直前に、すんでの所で触手を引き離し、足元へ魔力を集中させ、川の水面から少し距離を開けて立つ。静かな大河の真ん中で、ランサーは周囲を警戒する。態々触手を一本犠牲にしてまで此処にやって来たのだ、おそらくはこの川が奴本来の土俵だ、と。
    そんな危惧を証明するかのように、大河に船が浮上する。そこまで大きくは無いが、素早く移動しそうな小型の帆船だ。
    「ぼくはね、此処だと。強い、よ?」
    さぁ、第二ラウンドの開始のゴングが鳴ろうとしている。

  • 168京極2021/05/07(Fri) 18:38:23ID:M5MjU1NQ=(3/7)NG報告

    >>167
    緑の槍兵は周囲を見渡した後、小型の帆船に乗った少年のサーヴァントを見ながら考える。
    恐らく奴は水中にある物体を自由に扱える。しかも赤壁の大河の広さ、深さは、嘗て孔明殿を迎えに行き、海戦自体に参加できなかった俺も知っている。それこそかの戦いでの大船団や、曹操軍が作った水上要塞の残骸もある筈。
    …これは、中々分が悪いな。
    「行くよ?」
    少年は無邪気で、だがどこか恐ろしげな笑顔を浮かべながら、水中から大量の魚雷を浮上させた。
    「どっかーん!!」
    指を指すと共に、魚雷が一斉に趙雲へと突撃する。
    「…風圧開放!!」
    だが、アドバンテージもある。

  • 169京極2021/05/07(Fri) 18:53:44ID:M5MjU1NQ=(4/7)NG報告

    >>168
    川岸に爆音が響いた。少年には、勝負は決した様に思えた。だが、それは一瞬にして払われた。
    「…あれ?お兄さんは?」
    爆煙が消えると、緑の槍兵も、それがいた痕跡も無い。
    「こっちだ。」
    「えっ…!?」
    その時、風が吹き始めた。それと同時に、男が船頭に降り立つのが見えた。
    その男、紛れもなく先の槍兵、趙雲子龍。
    「どうして、お兄さん、が?ここに?」
    「俺の得物であり宝具、涯角槍は、風を吸収し、力に変えられる。それが例え、爆風であってもな。そして槍の一部分から風を噴出させる事により、この程度の距離ならば即座に飛び移れる!」
    趙雲は、雄々しく不敵な笑みを見せた。そして、槍を構え始める。
    その時、川に風が吹いた。川風である。
    風は強く、船の周囲は水に囲まれている。
    まさしく、両者共に有利な決戦の地!
    「…うん、楽しい!楽しいよ!!じゃあ、今度こそ、行くよ?」
    「望む所だ…!!行くぞ!」

  • 170スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/05/07(Fri) 23:33:04ID:UwNDUwODk(18/29)NG報告

    第■回投下します。

  • 171スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/05/07(Fri) 23:34:26ID:UwNDUwODk(19/29)NG報告

    「エビグラタンとアイスクリームに……」
    「……とピラフですね。ご注文は以上で……」

     俺達が居る来栖市北部のファミレスに店員の声が響き渡る。
    客の話し声で賑やかなのもあり、これなら此方の話を聞かれる心配も無いだろう。
    褐色の肌に赤髪という目立つ容姿のアサシンも気配遮断スキルを使えばそこらの通行人程度の存在感になるのも検証済みだし、漫画喫茶のシャワーで身嗜みも整えているので目立つ事は無い筈。

    「しかし、拠点にしてる訳でも無い公園を工房化とは……一体何考えてるのやら」

     そう呟くアサシン。
    というのも、俺達はランサー陣営から小聖杯を奪取する為に動いていた。
    このままセイバー・キャスター同盟とランサーが潰し合うのを待ってたところで、結局は小聖杯を得た勝者と戦う羽目になるだけ……そうなれば、余程相手が消耗してない限り俺達が先に息切れする。
    だからこそ、小聖杯を手に入れた上でセイバー・キャスター同盟とランサーが潰し合う形に持っていくしかないというのが俺達の結論だ。
    その為、大会初日のSNSで得たランサーのマスター:天音木シルヴァが人形劇をしていたという情報を元に来栖市北部を探索。
    しかし、ランサー陣営の拠点は見つからず、代わりに見つけたのは工房化していた公園だけ。
    公園に誰かが住んでる痕跡どころか人通りすら無いし、拠点探しは早くも暗礁に乗り上げた。

    「魔術師としての技量に差が有り過ぎて全く手出し出来ないし。しかも、相当な魔力をを溜め込んでるっぽいから、無理矢理干渉したら何が起こるか想像も付かない……」

  • 172スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/05/07(Fri) 23:35:10ID:UwNDUwODk(20/29)NG報告

    「……まあ、とりあえず拠点だが……北部にもホテルの類いは数軒あるが、それ以外の施設に忍び込んでる可能性は否定出来ねえ」

     実際、俺が初めて見た聖杯大会の番組でもライダー:ヘロストラトスのマスターが敢えて廃工場を拠点に選んでいた。
    最も、序盤にセイバー:宇治の橋姫とそのマスターである日本人らしき女性が襲撃してきて、その女性の放った跳び蹴り一発でマスターが気絶。
    ヘロストラトスも初手に放った右フックを避けられ、そのまま宇治の橋姫によって×の字に切り裂かれて敗退という瞬殺劇のほうが印象深かったけど。

    「って事は、やっぱり……」

    「奴等を誘き寄せるしかねえ」

     アサシンの気配遮断を解いた状態で北部をうろつき、ランサー陣営を誘き寄せる。
    ルール通りならアクセサリー化してる筈の小聖杯を奪う必要がある以上、俺もアサシンの近くに……それどころか、人形使いを相手にする以上アサシンのすぐ傍に居ないと危ないか。
    どうにかしてアクセサリー化した小聖杯に触れてそれを奪って即逃走……成功率は低いけど、これが俺達に残された唯一の活路。
    といった所で店員がやってきた。

    「肉野菜炒めとガーリックライスのセットとビーフとマグロのダブルステーキプレートになります。ごゆっくりどうぞ」

     こうして二人で食事するのも最後になるかもしれない……そう思ってつい奮発した昼食。
    それを食べ終えると、俺達は何も言わずに席を立ち、支払いを済ませて店を出る。
    そして、起死回生の作戦が始まった。

  • 173スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/05/07(Fri) 23:36:33ID:UwNDUwODk(21/29)NG報告

    以上です。

  • 174◆B8D4AQBhU22021/05/09(Sun) 23:49:54ID:A3OTkyMTY(10/11)NG報告

    >>169
    ランサーとライダーの戦いは、まさに佳境だった。武芸者として高い戦闘力、即ち質を持つ個人であるランサーがライダーの命を穿つか。具現化するモノの質は平均すればそこまで高い訳では無いライダーが、数の暴力でランサーを磨り潰すか。そういった戦いである。武威を示す槍と、それを繰る武練。対するは海の悪魔、そして沈んだモノの怨念だ。
    機雷が宙を漂い、起爆のタイミングを今か今かと待ち。そして魚雷はランサーを狙い撃つ好機をうかがっている。その兵器と爆破の大瀑布を、ランサーは跳躍によって弾き飛ばし、蹴り飛ばす。そして首魁たるライダーの首を狙う。
    だがライダーも黙ってはいない。戦士としての技術はランサーに劣るかもしれないが、群を操る力量はかなりの手腕だったし、子供故の純粋さ、無垢な残酷さは全くサーヴァントとしての戦闘能力に些かの支障は無く、むしろそれによるある種型が存在しない独特過ぎる戦闘スタイル及び変幻自在にして無尽の戦法はランサーをライダーを致死に導く領域まで到達させることを許さない。
    「ふふっ、楽しい、な。さっきまでは。当たらない、事にイライラ。してたけれど。沢山のオモチャで遊べるの、いい、よね。まとあてゲームとか。そういうのみたい、で楽し。いよね」
    「生憎だが。俺はそんな気分にはなれんな!」
    気合一閃。叫ぶと同時にランサーは周囲の機雷を槍技によって一掃した。だがそれでも尽きぬ武器、兵器の数々、それはさながら遮那王牛若丸と武蔵坊弁慶の攻防を思わせる光景であったし、或いは兄と弟が遊んでいるソレにも似ていた。見る人が見れば、演武のようだと感嘆の声を上げたかもしれない。しかし、やはり先ほどまでの景色とは違う所が一点。お互いに消耗している事であった。
    ランサーは跳躍や武威による体力がジワジワと削れていたし、ライダーは度重なる具現化で魔力が減っていた。それでもお互いに民を恐怖から守る為、そして自分の笑顔、楽しさの為に、戦いを続ける。それはまだまだ続くだろうと思わせるモノであったが、やはり変化は訪れる。ライダーの剣撃が、ランサーの槍を叩き落としたのである。
    「い、ま。だぁ~!」
    戦の素人だとは言え、それを見逃すライダーでもない。ここぞとばかりに一気の攻勢へと打って出る。そして、ランサーは…。

  • 175京極2021/05/10(Mon) 10:55:46ID:U2MDYyMDA(1/1)NG報告

    >>174
    「ッ…!!」
    槍を叩き落とされた。一瞬狼狽するランサーの隙を無垢なライダーは逃さなかった。
    「今だぁ!!」
    ライダーのその一声で、大河に落ちていた剣が八方より現れる。逃げ場は無いと悟り、武練を積んだランサーも肝を冷やす。
    「お兄さん、怖い?けどね、僕は、楽しいよ?まだ、遊びたいけど、これで、バイバイだね。」
    「…。」
    「…お兄さん?返事してよ。」
    「…怖い、か。」
    そう零しながら、ランサーは、鞘に収めていた青い柄の剣を取り出した。
    「…紅き稲妻宿す剣よ、万夫を穿ちて凱を叫べ。」
    突如、銀色だった刀身が紅に輝き出す。そしてライダーは、それだけでなく、緑の槍兵の纏う闘気が鋭くなるのを感じた。早く、やらないと、まずい。そう本能で感じた少年のライダーは、腕を振り下ろし、剣を限界の速度でランサーへ撃ち込む。
    「宝具解放、断て!『青紅剣』!!」
    …瞬間、彼は雷の如き素早さで周囲の剣を砕いた。確かに剣が刺さる音も聴こえはする。だが、振り下ろした刃の殆どは、赤い残光が消える頃には鉄の破片と化していた。
    「……なんで…」
    そう悲痛の言葉を上げた瞬間、ライダーは眼前に圧を感じた。そこには、身体の所々に剣が刺さり、息を荒げているにも関わらず、堂々と立ちながらこちらを睨むランサーの姿があった。
    「…怖いか、と言ったな。」
    「……」
    「…確かに、怖くない訳ではないさ。…だがな。長坂での主と共に逃げた民や、夷陵での我が主を護れなかった時の恐怖に比べれば…恐るるに足りん。」
    一瞬、何処か哀しげな顔をしたランサーは、再び稲妻の消えた剣を構える。ライダーは…

  • 176◆B8D4AQBhU22021/05/12(Wed) 23:08:06ID:U1NDgyODg(11/11)NG報告

    >>175
    困ったなぁ…、とライダー。デイヴィ・ジョーンズは思った。
    お兄さんとのチャンバラごっこは非常に楽しめるものであったが、割ともうやれることが無いのだ。カトラスなどの剣では軽い。この漢を貫く事は出来ないだろう、と感じた。機雷や魚雷などの武装も弾かれたり防御されたりで、多分もう使う意味が無いだろう。いや、めくらましなどのかくれんぼで使うなら意味があるかもしれないが、少なくとも自分は大事なたからものであるオモチャを、そんな風にムダに使いつぶす事には、気が進まない。
    しかし、このお兄さん。カッコイイなぁ、とライダーは改めて思った。武力の高さやその武の力強さや美しさであったり。一番スゴいな、と思ったのは、その「他者を守る」という信念の強さだ。その心を、ライダーは評価した。
    そういえば、お兄さんが言っていた
    「あれ、黄巾って。なんだろ?」

  • 177京極2021/05/13(Thu) 20:19:51ID:IyOTc0NQ=(5/7)NG報告

    >>176
    「…え?」
    咄嗟の言葉にランサーは、目を少し丸くして幼いライダーを見た。
    「…ねぇ、お兄さん。黄巾、って何だい?」
    ランサーは呆気に取られ、脳内が少し混乱したが少なくとも少年には攻撃の意思は完全に無いという事を認めた緑の槍兵は、剣を納めながら問いを掛けた。
    「…あ、あぁ。その…黄巾は、この特異点で暴れている凄まじい勢力を誇った賊の事なんだが……もしかして、知らないのか?」
    「うん、そうだね。」
    「…誰か、俺以外のサーヴァントや珍しい服装の人物には会ったか?」
    「いや。会ってない、かな。」
    ランサーの声が徐々に震え始め、顔が強張り出した。
    「…つまり…特に悪意は無く、この辺りにいただけって事か?」
    「うん。僕はこの辺りで遊んでいて、お兄さんと遊ぼうかなって思っただけだよ?」
    ランサーは、石の如く固まった。
    (つまり…俺は完全に敵を見誤り、敵ではない者に誤解で戦いを挑んでしまったという事…しかも、無邪気な少年に、痛い目に遭ってもらうと言った…?)
    全てを悟った時、趙雲は顔の前で右の拳を左手で包む動作を取っていた。
    「えっ!?お兄さん、どうしたの!?」
    「すまない…!!本当に申し訳ない…!!!」

  • 178京極2021/05/13(Thu) 20:43:50ID:IyOTc0NQ=(6/7)NG報告

    >>177
    「…本当にすまない。黄巾を倒すという目的に夢中になり、敵ではない者と戦ってしまう等…」
    「お兄さん、大丈夫だよ?僕は、とても、楽しかったし。それに、かっこよかったよ?」
    「……貴殿には格好よく見えるかもしれないが、少なくとも格好付く様な物では無いだろうよ…」
    そう話しながらランサーとライダーは、湖畔の木の下で身体を休めていた。
    両者余り消耗している様には見えず、怪我も互いに軽症であった為に回復はした。
    「…ところでお兄さんは、何で旅をしてるの?」
    少年の質問に、偉丈夫は向き直った。
    「…俺も、貴殿と同じくはぐれサーヴァントとして召喚された身だ。奇しくも、俺の生前と同じ時代の特異点にな。人理の危機ならば、可能性はあると思った故に現在マスターやサーヴァントを探しながら流浪の身になっているのだが…」
    「お兄さん、旅をしているの!?」
    食い気味に、少年は偉丈夫の説明に割り込んだ。
    「まぁ、そうだな。…噂も解った故にそろそろ出立しようとは思うが…」
    「そうなんだ。楽しかったから、さみしいな…そうだ!お兄さん、僕も連れてってよ!」

  • 179京極2021/05/13(Thu) 20:59:22ID:IyOTc0NQ=(7/7)NG報告

    >>178
    突然の少年の言葉に、趙雲は驚いた。そして同時に少し考え、口を開く。
    「…此処はもういいのか?」
    「うん!水遊びは、充分やったし、お兄さんと一緒なら楽しそうだもん!」
    無垢な少年の瞳を見て、趙雲は軽く微笑んだ。それは彼が戦闘時には見せない、柔らかい表情だった。
    「…そうだな……ならば、共に行こうか。…言い忘れていた。俺はランサー、真名は趙雲子龍。貴殿は?」
    「ライダー。デイヴィ・ジョーンズ。よろしくね!」
    微笑み合った後、二人は立ち上がり、足を進め始めた。

  • 180久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/17(Mon) 22:44:09ID:M1NjI1Ng=(1/4)NG報告

    >>142
    時はランサーが戦闘に乱入する少し前に遡る。


    「駄目」
    「そんな!」

    提案を呆気なく却下され驚くランサー。彼女は索敵中に一騎のサーヴァントを発見し、彼が他のサーヴァントを誘い出そうとしているのを見て自分達も参戦したいと言い出したのである。

    「まだ敵の情報は何も分かってないでしょ?そんな状況で首を突っ込むなんてリスクが高いよ。今回は傍観に徹して情報収集して次の機会を待つ方がいいよ。
    聖杯戦争ってのは別に倒した数で勝敗が決まるんじゃない。バトルロワイヤルなんだから極端な話最後に生き残ってればいいんだからさ」
    「それは、そうなんですが…」

    それでもなんとか説得を試みようとするランサーの姿に飛鳥は魔術の師である朽崎遥の言葉を思い出した。

    「(マスターとサーヴァントで聖杯戦争に掛ける心意気の重さが違うことがあるって遥さん言ってたっけ。確かに私にとっては程々に聖杯狙いつつレアな素材も手に入ればいいな程度のつもりでもパラスちゃんにとっては生前巡ってこなかった実戦。少しでも戦いたいってことなのかな)」

    飛鳥が朽崎から聞いた話では一世一代の願いを掛けたマスターとまた次の機会があると切りたくない切り札を封じていたサーヴァントの軋轢が致命的な決裂を齎したという。
    出来ることなら目の前の美少女とそんな別れはしたくない。ならここは最悪勝てなくても死ななければいい自分が折れるべきかと飛鳥は思案する。

  • 181久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/17(Mon) 22:44:20ID:M1NjI1Ng=(2/4)NG報告

    >>180
    「はぁ、仕方ないなぁ」
    「マスター!」
    「ただし!」

    ぱぁっと明るくなったランサーの顔の前に飛鳥が指を三本立てて突きつける。

    「三つ条件がある。全部守れるなら行っていいよ。

    一つ、あくまで今回は威力偵察。少しでも不利になったら撤退すること。
    二つ、宝具の防御を他の人に割譲しないこと。
    三つ、フィルニースを代理マスターとして連れて行くこと。どう?守れる?」
    「一つ目と二つ目は分かるのですが、三つ目の代理マスターとは?」

    その質問にフィルニースが割って入る。

    「早い話が影武者だよ。僕が人間に化けてマスターのように振る舞えば他のマスターからは僕がマスターのように見えるからね」
    「あとは二つ目の理由に関係してて私がついて行くとパラスちゃんは私のことも守らなきゃいけないでしょ。そうなった時に宝具の防御をこっちに割くのは良くないからさ」

  • 182久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/17(Mon) 22:45:07ID:M1NjI1Ng=(3/4)NG報告

    >>181
    「分かりました、全部守ります。なのでその…」

    すぐにでも戦場へ飛び込んでいきたそうにうずうずした様子を隠せないランサーの様子に飛鳥は思わず笑みを浮かべる。

    「うん、行っていいよ」
    「やったー!」
    「っと、その前にフィルニースが化ける姿を決めとこうか。うーん…」

    少し考えた後飛鳥がフィルニースに指示を出すと「あの姿あんまり好きじゃないんだよね」とぼやきつつもぐにゃりと姿を変えていく。

    「さて、行こうか。ランサー」
    「は、はい!(凄く印象変わったなぁ)」

    フィルニースが化けた姿、それはフィルニースが初めて捕食した魔術師である“成人男性”の姿であった。

    「(心做しかマスターと似てるような…?)」

    黄色人種系の黒髪ということでそう見えたのだろうと結論付け、ランサーは目的地へと跳んだ。

  • 183久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/17(Mon) 22:45:15ID:M1NjI1Ng=(4/4)NG報告

    >>182
    現在に戻る。
    アサシンの雷撃を防ぎながら戦闘へ乱入したランサーは瞬時に思考を巡らせた。

    「(さて、どちらに加勢すべきか。個人的には恐らくセイバーである彼の方と戦ってみたいですがここはやはり手負いの方を共闘して落とした方が確実)
    敵の敵は味方、とまでは言いませんが今は手を組みませんか?」

    ランサーはセイバーとそのマスター黒鳥蘇芳に向けてそう言うのだった。

  • 184正親中納言2021/05/22(Sat) 23:35:56ID:EwOTc4ODQ(1/8)NG報告

    「ほ、本当に行くんですか…?」
    「そりゃ、ここまで来たんだからな」

     覇久間市内。中心部からやや離れ、昔風の風情と道の造り、家々の並びを抱える住宅地のまた少し奥まった位置。大きく、広く、古式ゆかしき邸宅の門前で、キャスターと郁は顔を見合わせた。
     バーサーカーの討伐戦後の打ち上げで、郁自身は疲労からポテトをつまみ腹を膨らすのに精一杯で何も聞けていなかったが、キャスターはライダーたちの居所を聞き出したという。そうして、今こうやってその居所の前に立っている。また、帰ってから戦闘でのサーヴァントたちの立ち回りを観察し、そこから得た情報より力量を類推し、その結果バーサーカーが脱落した後の連中だとライダー、アサシン、アーチャー、セイバーのいずれもが強力であり、ランサーはそれに数歩半劣るもののそれでも実戦慣れした動きを見せていたと聞いた。やはりというか、キャスターたちより下はいないらしい。
     それと同時に、各々の真名というものにもある程度の目星がつくこととなった。それでいてキャスターは「小生の真名、多分現時点で分かる奴いないと思うなー」と誇らしげに言っていたが、正直相手方の真名が分かっているのも、キャスターの真名が分かっていないのも現状大きなアドバンテージになるとは思いにくい。
     だから、ライダーたちに会う。聞くにライダーのマスターの少女は今回の聖杯戦争の監督役であり、そこそこに良識も備えている。そして、キャスター曰く「無色で無欲で無難で、そんな無い無い尽くしだからこそゆとりがある」性格らしい。そんな彼女ならばと二人で訪問することになったのだ。

  • 185正親中納言2021/05/22(Sat) 23:36:21ID:EwOTc4ODQ(2/8)NG報告

    >>184
    「そんじゃ、折角だしピンポンダッシュでもしてみるか?」
    「い、いやそんなことしちゃ怒られますよ!」

     ライダーの強さを直に見たというのに、キャスターは変わらず呑気なことこの上ない。信頼してはいるが、やはりもう少し見ていて心配になるようなものではない方がいいなと思う。

    「然らば、気を取り直して…ピンポーン!」

     別に口で言わなくても良いのに、キャスターはインターホンを押し、音を真似して声を出した。邸宅周辺に人がいなかったことを有難く感じる。
     しかし、こうやって眺めると先入観込みとはいえ「魔術師らしいな」なんていう勝手な感想が浮かぶ。古びていて、それなのに整然としていて、周りの景観に馴染むことを良しとしない。生垣や草木は高く太く生い茂り、側面から中のことを窺うのは難しい。郁の実家だって旧くこそあれ、このような異様な雰囲気を湛えてはいなかった。そしてその異様さは「魔術師の家だから」というもので納得ができてしまうような種類のものであった。
     そんなことを考えていると、インターホンから少女の────恐らくは邸宅の使用人の声がした。キャスターが掛け合うと、「少しお待ちください」という声を最後にインターホンが切れ、そして門の奥の扉が開く音が聞こえた。

    「どうぞ、お上がりください」

     出てきたのは声の主で、いかにも使用人といった外見の女性だった。彼女の先導に対してキャスターは「どうもどうも」と会釈をしながら遠慮なく入っていき、郁も慌てて後を追った。
     通されたのは客間であろう一室で、和風な外観の邸宅の中で希少な洋風の空間であった。大きな深みのある色合いの机と椅子はどちらも上質で、ホテルのものと比べても相当に座り心地がよく、その分人を畏まらせるもので、何か先方から動きがあるまで郁は身だしなみを見える範囲だけでも整えた。見ると、手首の付近に薄い、少し大きなかすり傷があった。
     その後、使用人がお茶を二つ分運んできて、そのまた後、扉が開きライダーたちが現れた。まず威圧感のある大男で、次に鮮やかな髪色の少女。いつ見ても目に悪い。

  • 186正親中納言2021/05/22(Sat) 23:36:58ID:EwOTc4ODQ(3/8)NG報告

    >>185
    「また急だな。俺たちがいなかったらどうする気だったんだ?」
    「またまた。ちゃんとアポ取ったじゃん」
    「…「いつか行けたら行く」のどこがアポになるかわからないんだが」
    「まあまあ、たらればは話したって仕様がないし。…それで、何の用?」

     キャスターとライダーの漫才のようなやり取りを諫め、少女は居直り敢然と郁たちを見る。ライダーも同様だ。真っ直ぐな視線は矢のようで、逸らし、半歩引こうとするが、座っているために脚を動かすことが出来ず、一連の挙措は背もたれにより深く背を埋めるに止まった。

    「いやさ、そう畏まらんでも。大したものじゃないし」
    「どうかしら。キャスターが陣地を離れるなんて相当だと思うけど」
    「はは、流石はお嬢さん、鋭いねえ。目移りを気取った小生の上さんくらいだ」
    「世辞は良い。あまり長くは聞けん」
    「手厳しいねぇ、小生喋らなきゃ死んじゃう系なのにー」

     緊張が微かに滲んだ空気を濁す────よく言えば和ませるのは、いつだってキャスターだった。郁はこの二人と相対しているだけで息が詰まりそうだし、今だって、キャスターが不用意なことを万一言ってしまわないかと気が気でない。無論、キャスターのことは、殊談判などの「言葉」を介した事においては信頼している。しかし、いかにキャスターが口上手でも、相手がどういった人物か正確に掴めぬ以上心の平安は認められない。
     いつだってそうだ。安心したときに恐怖は訪れる。胸をなでおろすと同時に厄災は注がれる。笑んだ瞬間に化け物は嗤ってくる。美しいものは醜くなって、正しいものは歪んでしまう。信じられるのは一つだけしかない。「信じる」なんて感情も朧げだ。

  • 187正親中納言2021/05/22(Sat) 23:37:21ID:EwOTc4ODQ(4/8)NG報告

    >>186
    「ぷっはー、いや、お家柄はお茶にも現れるんだねー。何杯でもいけちゃいそうだよ」
    「それはどうも。本当に何かを褒めるのが得意なのね」
    「そりゃあ、小生媚び諂い崇め奉るのにかけちゃ折り紙付きだかんな!」
    「…いい加減、本題を聞きたいのだが」
    「ガビーン、小生の話つまんないんですかい?」
    「そうではない。ただ、その褒め言葉は長くは聞いていたくないんでな」
    「ひっどいなー。…まあ、こっちは頼む側だし?お茶も十分堪能できたし。とりま、端的にいきましょうかね」

     チラとキャスターがこちらに目配せをしてくる。緊張を解す…わけではないが、場をある程度温めてから話を切り出すというのは予定通りだ。予定通りにいった、というだけで気が幾分か軽くなり、しかし一方でその後の完遂へ意識を向けさらなる重圧を覚える。
     それを振り払うのも兼ねて、郁はキャスターに頷いてみせる。

    「…うん、頼み事ってのも単純なもんだ。ズヴァリ、…もし、其方らが聖杯を得たのなら。その時は、小生らに聖杯を譲ってほしい」

     言葉選びは簡潔に。けれど間はやや緩慢に。キャスターは朗らかな笑みを消して、真剣そのものな眼差しで正面に座する二人を見張る。緊張を溶かして生まれた水をまた丁寧に凍らせるようにして、場を築き上げた。
     二人の反応はというと、少女はただでさえ大きな瞳をいっとう大きく丸めて一種の驚愕と不信を隠しきれずにいる。もう一人、ライダーは瞼を閉ざし、眉根を寄せて、しかし自身のマスターのように瞠目の色は見せず、空気の流れを汲み取っているように黙している。
     キャスターは喋らない。少女も、ライダーも、勿論のこと郁も。今の彼に、普段の饒舌さはない。どれだけ空気が重くなろうと、張りつめようと、濁しも和ませもしないでいる。そんな中で、口火を切ったのは少女だった。

  • 188正親中納言2021/05/22(Sat) 23:37:49ID:EwOTc4ODQ(5/8)NG報告

    >>187
    「……なるほどね。どうして私たちにそれを?」
    「決まっておろう。其方らが現状最も力があると見受けたからだ」
    「ほう、言ってくれるじゃないか」
    「言っておくが、小生の観察眼と有言実証率は伊達ではないぞ。いかに強かろうと、物事には因果というものがある。それを加味した上で、花は桜木人は武士の御言葉に則って、桜木のように可憐な乙女子と、勇壮なる武士に頼んだのだよ」

     読み通りの疑問が提起され、予定通りの旨を返す。万事恙ない。郁が心のうちで息を吐こうとし、ライダーが「ならば」と言葉を継いだ。

    「ならば、その目的は何だ?何故聖杯を求める」
    「初歩的なことだねライダー君。聖杯戦争に参加するようなの、多かれ少なかれ聖杯への欲と願いはあるでしょうに」
    「だが、生憎と俺たちは監督役だ。ホストとして、景品の使い道くらいは聞かなければならない」
    「あなや、其方思ってた以上にお堅いのね。OK、オーケー。お望みとあらばお聞かせしましょう。何故と言うにだね、」
    「いや、お前に聞きたいのではない」
    「……………へ?」

     声が出たのは郁だった。視線を上げると、ライダーが郁を見ていた。後退りたくなって、後退れなくて、これ以上沈められないほどに背を背もたれに沈める。何を言われたのか脳が処理をしていない。ただ、予定通りではないことがわかる。

    「前に聞いた。キャスター、お前は聖杯を求めようという気はそこまでないとな。では必然、聖杯を希求しているのはマスターだろう?ならば、マスター自身の口から聞くべきであろう」
    「そうね。貴方じゃ、脚色が大半を占めそうだし」
    「いや、なんとも。言い得て妙と言いたくなるけれど、素気無いもんだね…」

  • 189正親中納言2021/05/22(Sat) 23:38:17ID:EwOTc4ODQ(6/8)NG報告

    >>188
     二人分、四つの眼が郁に向けられている。一つ分でだって呼吸困難を感じるような眼が、四つ。沈黙がある。
     予定なんてしていなかった。郁は座っているだけで、口から出すのはキャスターへの同調と約束してくれたライダーたちへのお礼だけのはずだったのに、よりによって、郁にとって最も言い難いことを訊かれている。沈黙は続く。
     縋るようにしてキャスターに目配せをするが、キャスターの方も事態を十全に砕け切っていない。今頼るのは酷としか言えない。沈黙はなおも続く。
     目を伏せる。うかうかしていればそれだけ信用度を下げていくというのは分かっているのに、その警句を優に超す形で困惑が心中を席巻している。思い浮かべるのは過去ばかり。脳裏を過るのは夢ばかり。誤った言葉を選んでしまって、皆に迷惑をかけてしまったり。言葉が運べず、無暗に不和を招いたり。読んで書くのは出来たって、話すとなると今までてんで駄目だった。
     同じくして浮かんだのは不信と疑惑。ライダーたちへの懐疑。キャスターはああ言っていたが、それは表面的なものなのかもしれない。人間はふとした拍子に裏返る。或いは覆し、或いは掘り起こす。少女の鳶色の瞳は綺麗だ。だから怖い。綺麗な瞳は郁を嗤った。形良い口は郁を陥れた。確固たる理性は郁を千切った。いつかの誰かがそうだった。それに似ているように思えてならない。予定からの逸脱の焦燥を彼女に転嫁させているだけの取るに足らないものなはずなのに、疑心はそんな一義的なものとは思えないほどに厚く粘っこい。
     でも言わなければならない。キャスターが折角ここまでお膳立てしてくれたのだから、それを最大限活用しなければならない。相手に疑心を抱いたまま真実を言う時ほど恐ろしい時はない。しかしその恐れを呑み下さなければいけない。

    「………、……す…」
    「?」

     一音だけが相手に届いた。これだけで限界に近いが、相手は不審そうにしているだけで郁の言いたいことを理解してはいない。言葉の続きを、または言い直しを待っている。

  • 190正親中納言2021/05/22(Sat) 23:38:40ID:EwOTc4ODQ(7/8)NG報告

    >>189
    「……す、すいません。…詳しくは、話せません」

     ようやく言葉が出た時、郁は前からだけでなく横からも、刺すような疑懼を詰めた目線を感じ取った。キャスターの中で組んでいたであろう急ごしらえの予定が崩れていく音がする。
     少女が、愛想笑いをぎこちなく浮かべて、郁を眇めている。そして、一息吐いて、

    「話せないっていうのは、どういうこと?やましいことってわけ?」
    「ち、違います、でも、…本当に、詳しくは言えません。ただ、誰かを傷つけたりするものじゃありません。…誰も、傷つけるつもりはありません」
    「…ものによるよ。本当にそうだとしても、頼み方によっちゃ…」
    「本当です!…本当に、もう、嫌で…縁を切りたいんです。私、は…二度と…」

     遠のく意識を何度も連れ戻す。洗いざらい話してしまいたい情動を何度も規制する。少女が見せる表情は不審を通り越してある種の心配すら浮かんでいる。自分が今どんな顔をしているのか、想像する余裕すらない。
     あれは厄物だ。だから誰にも言わずにいた。キャスターにも、明確には話していない。話してしまえば、その者の記憶に残ってしまえば、言葉として刻まれてしまえば、郁の夢は他人の夢さえ食んでいく。少女は郁にとっては疑いと恐れしかないようなものだが、それでも、今は夢じゃない。なら、彼女は現実で、夢に来てはいけない存在だ。だから言えない。だから言わない。

    「えっと、うん、これくらいで勘弁して頂戴な。ほら、今にも倒れそうだし。今日はお暇させてもらいたいね、返事は後日ってことで良いんで」

     あまりの気まずさに耐えかねたのか、キャスターが乗り出して収拾をつけようとする。もしくは、よほど郁が酷い表情をしていたのかもしれない。事実、今の郁は正気とか理性とか平静とかを問われると答えられない。
     そのままなし崩し的に辞去することになり、ふらつく足をキャスターに何度か支えてもらって邸宅を出た。最後まで少女とライダーは不安げな面持ちで郁を見ていた。
     そうして邸宅の門を抜け、住宅街から脱した時、安心感────と呼ぶには些か無遠慮で蒙昧なものが突沸していくのを感じ、身体から力が抜け、重心の支えを失くした身は斜めに傾き、そのまま横に落ちていった。薄暗がりとなった視界の端では、乾ききらずに残った水溜まりが陽光を強烈に照り返していた。

  • 191正親中納言2021/05/22(Sat) 23:40:15ID:EwOTc4ODQ(8/8)NG報告

    >>190
    5月2日(土)覇久間術陣営以上です

  • 192久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/25(Tue) 04:03:19ID:Y2ODkzMjU(6/9)NG報告

    「はて、私は何故ここに召喚ばれたのだろうか」

    懐かしい風を感じながら草原を歩きながら独り言を零す。人理が不安定なこの特異点とやらに召喚されたはいいものの自分が誰に、なんの為に召喚されたのか皆目見当もつかない。
    ただ、神霊である自分を召喚できる存在となると心当たりも限られてくる。

    「大なり小なりこの件にお前も関わっているのだろう?お前はいつも説明が足りない。それで要らぬ誤解を招いたり着いていけないと離反する者が現れるのだ、まったく」

    独り言が愚痴に変わりながらも歩き続ける。なんとなく此処に来た方がいいという勘の赴くままに歩いた先、小さな森の入口でその男は立っていた。

    「────久しいな。私を覚えているか?」

  • 193監獄長◆VENk5mkP7Y2021/05/25(Tue) 04:24:30ID:U0NzYwMjU(1/1)NG報告

    >>192
     獣のような低い唸り声と共に白い息を吐き出す。
     嗚呼、この感覚、この気配は忘れもしない────憎き神の気配に他ならない。
     ならば言葉も、理性も、何かも不要であろう。己が抜くべきは凶器と狂気……これのみ尽きる。

     ローズルを視認した直後、ビャルキは得物を引き抜いて彼女の視界から消えた。

     ────犂星(スニルティル)。

     そして、彼女の背後から刃が襲い掛かろうとする。

  • 194久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/25(Tue) 04:52:00ID:Y2ODkzMjU(7/9)NG報告

    >>193
    「っ、消え────ぐぅっ!」

    宝具であるフレイの剣。持ち主に勝利をもたらすという剣の効果でなんとか見失った彼の男、ボズヴァル・ビャルキの振るった刃に対応出来た。
    受け流したとはいえ人外の膂力で振られたそれの衝撃が残る痺れた腕に無茶を言い原初のルーンを刻む。

    「…ふふ。久し振りの再会だというのに、随分な挨拶ではないか。そんなに神々[私たち]が憎いか?狂戦士よ」

    自身に一節、両手の剣にそれぞれ一節、周囲の地面に二節、今は私の背後になった森の木に一節、ルーンを刻んでとりあえずの仕込みは出来た。

    「■■■■■!!!!」

    あとはどうやってこの嵐のような攻撃の嵐を掻い潜って距離をとるかが問題だな。

  • 195監獄長◆VENk5mkP7Y2021/05/25(Tue) 05:34:32ID:QwMDQxMDA(1/1)NG報告

    >>194
     正に獣の如き……否、獣そのものを連想させる程にビャルキの剣戟は鬼気迫っていた。
     しかし、そんな野生的な動きであっても戦士として洗礼された無駄のない剣技をローズルに叩きつけていた。

    「ッ……理性のないバーサーカーでもあっても技量は色褪せないか」

     剣だけでなく、四肢をも利用した肉弾戦で徐々に体力を奪っていく。
     なんとか間を見つけては反撃に出るローズルだが、如何に神であろうとも生粋の戦士には押され気味になってしまう。
     だが、それでいい。彼女からすれば致命傷を負わず、時間を稼いで自身の地の利を得られればいいだけなのだから、下手に反撃に打って出て返り討ちに遭うなんて事態は避けたい。
     このままいけば、と考えたところで戦況が変化した。

    「████────!」
    「なっ────ぐぅっ!?」

     バーサーカーが突きを放った瞬間、再び視界から消えた。
     ゾクリと、悪寒を感じたローズルは直感で勝利の剣を背後に向かって振り払う。

     ────金属音と共に火花が散った。

  • 196久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/25(Tue) 06:30:35ID:Y2ODkzMjU(8/9)NG報告

    >>195
    まったく!フレイの剣が無ければ二度は死ん.でいたところだ。第一私は別に戦闘向きな神霊ではないというのに、ぽんぽんと切り札を切りおって。
    だがなんとなく読めてきた。奴の宝具は膨大な魔力リソースを消費して奇跡を起こす類のもの。剣に宿る魔力を見るに少なくともあと一回は使えるだろう。

    「ふ、そんなに手の内を晒しても良いのか?それとも判断力まで獣に堕ちたか」

    そんなことを言ってはみるが通じてはいないだろう。そういった理性を振り払い戦うからこその狂戦士[ベルセルク]なのだから。
    戦闘向きではない頭を必死に回して打開策を考える。何とかしないと次も防げる保証は無い。

    「くっ!」

    思考にリソースを割いた分目の前の戦いが疎かになり攻撃を食らうようになってきた。このままではジリジリと削られる一方だ。
    こうなったらやるしかない。この男の前で一瞬でも武器を手放すのは非常に怖いがそれでも────!

  • 197久々にスレッド鬼になったユージーン【大罪戦争ss】◆H2jQDESDK22021/05/25(Tue) 06:30:45ID:Y2ODkzMjU(9/9)NG報告

    >>196
    ローズルが地面に刻んだルーンを発動し離れた場所へと転移する。その手にフレイの剣は無い。

    「私は此処だぁっ!」
    「████────!」

    ビャルキが犂星(スニルティル)を使いローズルの元へ跳び致命の一撃を放つべく武器を振り上げる。しかしこの状況はローズルの望んだものだった。
    転移前に置き去りにしたフレイの剣、ビャルキ、ローズルが一直線に並んでいた。

    「フレイの剣よ、我が敵を打ち砕け!『悉くを打ち払う勝利の剣[イングナル・レヴァンティン]』!!」

    二振りの片刃剣だったフレイの剣が本来の両刃剣の形に戻り、流星の如き輝きを放ちながらビャルキへと襲いかかった。

  • 198監獄長◆VENk5mkP7Y2021/05/25(Tue) 07:02:14ID:M3ODA1MDA(1/2)NG報告

    >>197
     視界を覆う程の土煙が戦場に舞う。
     ローズルの放った一撃は物の見事な必中の攻撃と化し、如何なる英霊であっても致命傷は免れないものだった。
     にも関わらず、彼女の心中は穏やかではなかった。

    (……躱された。あの一撃を)

     邪魔な土煙が晴れる。
     そこにいたのはローズルただ一人で、敵として殺し合った筈のビャルキの姿がなかった。
     そう、ローズルが地形を使い、原初のルーンを使い、宝具を捨てるという危険な行為まで進めた決死の作戦は────失敗に終わった。
     油断はしていなかった。寧ろ最大限警戒して戦闘を行った……が、しかし失敗した。

    (あの魔剣に込められた魔力リソースを全て消費させ、作戦通り宝具を起動させた……そこまでは筋書き通りだ)

     一瞬の隙をついた攻撃であったので、魔剣の力を使い果たしたバーサーカーに回避する術はなかった筈だった。
     だが、読みが外れてしまった。オーディンの叡智を以ってもっと深く観察するべきだった。
     まさか、ビャルキの保持していた鞘が魔力ストックを補充する宝具だったなんて誰が思おうか。
     あの僅かな時間で魔剣を鞘に収納し、抜刀と同時に能力を使うだなんて……理性のないバーサーカーに一杯食わされた気分であった。

    「理性が狂気に呑まれようとも、確実に“神々(私たち)”を殺.す為の手腕は失われない……やはり、そんなに“神々(私たち)”が憎いか」

  • 199監獄長◆VENk5mkP7Y2021/05/25(Tue) 07:02:33ID:M3ODA1MDA(2/2)NG報告

    >>198
     勝利の剣を呼び戻し、擦り傷を修復しながら彼女は思う。

     ────憎いだろうな。

  • 200ディック2021/06/01(Tue) 22:41:56ID:M0MjE1MjI(1/4)NG報告

    ハクマ投稿します

     バーサーカーの暴威──突如として現れた台風に被害を受けながらも営業していた、ファーストフード店に、一部の聖杯戦争関係者たちが集まっていた。
     ブリュンヒルド・ヤルンテイン、彼女が召喚したアーチャー。
    ローガン=クレイドル、彼が召喚したランサー。
    蒲池夏美、彼女が召喚したライダー。
    真逆小路郁、彼が召喚したキャスター。
    総勢八名がファーストフード店に一堂に会していた。バーサーカーとの闘争で疲弊した彼らは誰が言ったのかハンバーガーを食べるためにやって来ていた。
     郷土料理がヘルシー系なものが多いため食べ慣れていないハンバーガーの旨味にドはまりしたブリュンヒルド、当世の食べ物に関心が強いアーチャー、大食漢のライダーはセットメニューに加えて単品で多くのバーガーを注文していた。特にライダーは全メニューのバーガーを注文していた。無論、支払いはライダーのマスターである夏美持ちである。
    「ば、バーガーにポテト! そしてコーラ! ふはぁっ、背徳的ぃ!」
    「痴れ者が、口にものを含みながら話すな」
    「ブリュンヒルド! 夜中にそんなに食べたら太るよ」
     友人に諫言する夏美はセットメニューの中からポテトを黙ってライダーのトレイに移した。
    「か、カロリーは怖いけど、後で運動するから!」
    「引きこもりの汝が何を言うか」
    「アーチャーはあたしへの扱いが冷たい!? うう~、でも困ったことに美味しい……」
     べそかきながらもハンバーガーを齧るブリュンヒルドに、キャスターが微笑みかける。

  • 201ディック2021/06/01(Tue) 22:42:40ID:M0MjE1MjI(2/4)NG報告

    >>200
    「安心するが良い。がんぜない子どもよ。この食べ物は丸い、つまりゼロ、カロリーゼロな! それにそなたが飲むウーロン茶は一緒に飲むとカロリーがゼロになるし、フライドポテトは細いからカロリーゼロだ!」
    「そ、そうなの!?」
    「ちょ、ちょっと嘘教えないでよキャスター!」
     夏美の剣幕に無関係の郁のほうが怯えてしまった。ただキャスターの陰にいるため夏美には気づかれていなかった。
    「嘘などではないぞ。我が国の英雄の末裔の金言だぞ」
    「それはジョークの類なんだよ……」
     呆れた様子のライダーの言葉にキャスターはなんと、と呟いて驚いていた。
    「まあ、一応、あのホテルにはジムがあったはずだから使ってみたら……」
     絶望に打ちひしがれているブリュンヒルドに夏美が慰めるよう言葉をかける。
     そんな中、一人の男がやってくる。褐色の肌、編み上げた白髪、端正な顔立ちが人間的な温かみを感じない青年である。
    「雑兵どもが雁首揃えているとはちょうどいい」
     唐突に冷ややかでぶっきらぼうな声が放たれる。
    「お前はアサシンの……」
     ローガンが愕然としたように呟く。彼らの前に現れたのはアサシンの守護英霊であるゲーティアであった。ワイシャツに黒の細身のズボン姿である。
    他のマスターたちも言葉こそないが、彼と同じように慄然としている。アサシンがいかに強大極まるサーヴァントであるのかはよくわかっているマスターたちは、背筋に氷塊が滑り落ちたような寒気がした。

  • 202ディック2021/06/01(Tue) 22:44:21ID:M0MjE1MjI(3/4)NG報告

    >>201
     対してサーヴァントたちに大きな動揺もなく、だが油断もなく構えていた。
     ゲーティアは相も変わらず名乗ることもなく、近くの椅子を引きずり、足を組んで座り込む。
    「アサシンの走狗が如何なる用向きかな?」
     アーチャーは名刀のような鋭い視線をゲーティアに向ける。
    「今日はご主人様のスカートの中に隠れてなくていいのかい?」
    「有象無象どもに割いてやる時間も惜しい」
    「言ってくれるねぇ」
     超越存在であるとい自負故、ゲーティアはアーチャーやライダーの不遜な態度にも片眉を吊り上げる程度でしか反応はしなかった。
     ライダーも敬意を抱ける相手でもない相手の使い魔へ鷹揚になる気になれなかった。その経緯故、特権に驕る者の腐臭を感じ取ればその態度はより冷ややかになる。
    キャスターはハンバーガーを食べながら状況を黙して見定め、ランサーは先日の雪辱を思い出し言葉こそ出さないが敵愾心剥き出しの剣呑な眼光を光らせる。
    「貴様らの聖杯を求める理由を、主は望んでいる。疾く答えよ」
    「ほほぅ、聖杯問答か? それは小生も興味あるなぁ」
    「あなたも要求に乗っかるの?」
     夏美の呆れたような視線にも、キャスターは平然としている。
    「当たり前のクラウドデザイン。聖杯を求める理由は気になるだろう? お互いの望むところをわからないまま戦いあうというのも、ノーサンキュー、ノーメルシーというものではないか」

  • 203ディック2021/06/01(Tue) 22:45:37ID:M0MjE1MjI(4/4)NG報告

    >>202
     饒舌な、それでいて本心を読みにくいキャスターの言葉に毒気を抜かれた、あるいは成り行きに身を流した者たちが話す者、韜晦する者、口を緘して語らない者もいた。
     夏美はライダーがまた何か軽口を言わないようにと思い、彼女の胴回りよりも太い腕に手を添えて抑えていた。
     
     ◇◆◇

     ゲーティアは話を訊き出すだけで、やってきた目的も語らずに消えた。それは一応の同盟関係だった夏美たちにも不可解な行動である。二階堂家は果たしてアサシンを統制することができているのだろうかと、夏美は不安を覚えるのであった。

    これで以上です。予定していた内容は情報量が多くて一つの話に収めきれませんでした。

  • 204第■回/ランサー2021/06/05(Sat) 23:48:02ID:g4NzQwNQ=(11/18)NG報告

    「誘われてるね」




    若い有望な子が無謀なことをする、というわけでないのだろう。むしろ最近の子はそこらの大人よりも物事を俯瞰して見る癖がある。その影響からか、諦めが早い子も何人かいたりするけれど。あと、若者の人形離れが早いっていうのも死活問題。


    「乗ってあげてもいいけれど、圧倒的に有利なのはこっちなのよね」
    「けど逃げるのはなんか違いますよねぇ。あ、それ美味しそうですね……そうそう、そこのそれ」
    「アップルパイよ。はい、どうぞ」

    アップルパイを作るなら、やはり林檎のキャラメリゼに手を抜いてはいけないと思う。シナモンを入れることを嫌う人は一定数いるけれど、私としては入れないとどうも美味しいと感じない。スパイスは人によって好みが分かれるからそれはどちらともおかしくないけれど、やはり個人的には、あって然るべきだと思ってしまうのだ。


    「残存している子たちも少ないし、逃げてばかりいるのは……おかしな話よね」
    「あなたの信条に合わないのではないですか?私も合いませんし」

  • 205第■回/ランサー2021/06/05(Sat) 23:48:42ID:g4NzQwNQ=(12/18)NG報告

    そうだ。それこそこの大会において私の定めた生き方だ。
    つまらない幕引きなどで終わらせない。そのような生き方などさせないし、興味もない。それは私らしくないだろう。


    「出ます。もちろんそれ相応の準備はしてからではありますが、彼らを殲滅します」

    「そうでなくては。私も傾城の魔性。ただ待ち構えるだけでは面白くありません。それでは私の方が城ですもの」



    踊れ、歌え、叫べ、騒げ。それは他の参加者だけでなく、私もそうであるべきだろう。高みの見物をする性ではないし、しようとする気にもなれない。



    「ここで彼を落とします」



    至高の人形劇にするには、人形も本気であたらねばならないから。

  • 206第■回/ランサー2021/06/05(Sat) 23:49:18ID:g4NzQwNQ=(13/18)NG報告

    「近くの廃れたお家にお邪魔しましょう。必然的に彼らの攻撃を防衛する形になりますが、むしろそれで歓迎ですわ」



    娘の熱意を裏切って、継いだ血統はここで終わらせると決めたから。


    「私も彼もマリオネット。さあ、戦の劇を行いましょう」





    愛しい愛しい夢のため。
    我ら傾城の魔導の主従、今こそ此処に王を陥す。

  • 207スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/06/08(Tue) 23:40:02ID:EyNDgwMTY(22/29)NG報告

    第■回投下します。

  • 208スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/06/08(Tue) 23:40:19ID:EyNDgwMTY(23/29)NG報告

     俺達は、とある廃屋の前に居る。
    ランサーらしき気配はその廃屋から動かず、此方を誘ってるのは明白だ。

    「籠られたな。本来の拠点では無さそうなのが救いだが……」

    「アサシン、気配遮断ならどうだ?」

    「いや、俺のランクだと来ると解ってて待ち構えられたら途中でバレる。かといってこの状況で宝具使ったらペナルティ喰らうかもしれんし……それならいっそ強行突破だ!」

     現代の知識だとヤクザキックとかいう蹴りで、玄関の扉を蹴破る。
    すると、即座に棘の弾幕が迫ってきたので、それを回し蹴りによる風圧で弾き返す。
    そして、棘を放った植物に右フックで止めを刺し……。

    「これで……おおっと!?」

  • 209スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/06/08(Tue) 23:42:02ID:EyNDgwMTY(24/29)NG報告

     飛んできた植物を咄嗟に頭突きで迎撃する。
    続く二体の植物を左右のパンチで潰し、右拳からの回し蹴りで後続も潰す……まだ次々と増援がやってくるな。
    武器を振り回すには狭い……が、やりようはある。

    「しゃらくせえ……マスター、突破するぞ!」

     俺がやるのは単純な事だ。
    壁が壊れないギリギリの威力で右拳を振るう。
    当然、直接殴られた植物は千切れ飛ぶが、それだけじゃない。
    攻撃の余波だけで群がる植物が潰れていく。
    元が植物だからか、それとも数を重視した為に性能が低いからか、こいつらは脆い。
    だから、サーヴァントには通用しない程度の余波でも簡単に無力化出来る訳だ。

    「よし、次が来ない内に進むぞ」

  • 210スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/06/08(Tue) 23:43:47ID:EyNDgwMTY(25/29)NG報告

    以上です。

  • 211ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:03:19ID:U2NTYxNTY(1/12)NG報告

    ペレスの続き投げまーす

  • 212ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:04:03ID:U2NTYxNTY(2/12)NG報告

    「(マスターはそこの物陰にいろよ?巻き込まれたら危ねえからな。)」
    「(え、ええ・・・・・・分かったわ。)」
    魔術障壁と謎のサーヴァントの雷撃の衝突によって発生した土煙に紛れ、私は念話でセイバーに言われるがまま大きなコンテナの影に隠れた。
    「(んじゃ、軽く暴れてくるわ。オレとアンタの華々しい初陣といこうじゃねえか!)」
    セイバーは念話を切ると、土煙を割くように勢い良く飛び込んでいき、
    「おいおい・・・・・・。敵である俺を前に余所見と考え事たぁ余裕だ、な!」
    右上段からの袈裟斬りを謎のサーヴァントに向けて放つ。しかし、袈裟斬りが当たる寸でのところで謎のサーヴァントの腕が─────形状から考えるに竜種系のものだろうか─────に変化し、セイバーの攻撃を防ぐために交差して掲げた。
    けれどそれだけではセイバーの剣の勢いは相殺出来なかったのか、後ろに弾かれるように謎のサーヴァントは後退した。セイバーもまたわずかにたたらを踏んだが、それでもすぐさま態勢を立て直し謎のサーヴァントへと疾駆する。
    「ふふ。先ほどは失礼しました。獣のように鋭い貴方。ええ、確かに試練の最中に他に気を移すなどいけませんね。」
    不敵に、そんなことを言う謎のサーヴァント。
    だが、セイバーはそれを気にも留めず、連続で斬撃を放っていく。それだけでなく、剣を振る間を埋めるために拳や蹴りなどの格闘術も織り交ぜている。
    『さすがはクー・フーリン!』と思わず称賛したくなるけれど、そこはグッと心の内に抑え込む。
    謎のサーヴァントもただでやられてくれるはずもなく、変化した腕で攻撃を捌きながら爪による攻撃を加えようとしたり、電撃による射撃攻撃を行なっていた。

  • 213ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:04:40ID:U2NTYxNTY(3/12)NG報告

    >>212
    それでも力の差ははっきりとしていた。セイバーが持つ『矢避けの加護』。この効果により、セイバーに襲いかかるはずの電撃による射撃攻撃はセイバーに当たる軌道から逸れ、周囲のコンテナを焼くように当たっていた。同時にセイバーと謎のサーヴァントに向けて、これもまた謎のサーヴァント─────あえてクラスを予想するなら、弓などの遠距離武器を扱うアーチャーだろうか─────の狙撃が放たれる。だが、それがセイバーに当たることはない。
    ルーン魔術の一つ、恐らくは千里眼の効果を持つルーンが刻まれたルーンストーンがセイバーのはるか頭上で輝いている。きっと私が召喚陣の片付けをしている間に作っていたのだろう。謎のサーヴァントとの対決の僅かな間で頭上に放り投げ、隠れているもう一人の謎のサーヴァントの警戒もしていたということだ。
    そして、それが何を意味するかというとセイバーはもう一人の謎のサーヴァントを認識しているということ。それは即ち、矢避けの加護の発動条件に他ならず。セイバーに当たるはずだった弾丸は悉くがセイバーを避け、コンテナに当たり弾けていく。
    それゆえにセイバーは歩みを止めず、剣の間合いまで謎のサーヴァントに詰め寄り謎のサーヴァントの眼前に剣を振り下ろすが、謎のサーヴァントは辛くもそれが直撃するのを阻止し、大きく後退する。
    「いやはや、汝様は素晴らしい試練ですね。そこまで強くない己としては非常に嬉しいです」
    その言葉に、私は何故だかぞくりと背中に悪寒が走る感覚がした。
    ─────何かがおかしい。
    追い詰められているのは向こうのはずなのに、私達の方が追い詰められているような。
    セイバーもその言葉に気味悪さを感じたのか、分かりやすく悪態をつくように言葉を吐いた。
    「なんだよ、妙な事言い始めやがって。聖杯戦争ってのに参加した割には、苦戦の状況でも笑顔たぁおかしなヤツだぜ。」
    そう。実力差は明白、それに加えてもう一方の謎のサーヴァントの相手もしなければならない。
    なのに、あまりにも余裕がありすぎる。

  • 214ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:05:55ID:U2NTYxNTY(4/12)NG報告

    >>213
    私は、先程のセイバーの推測の言葉を頭の中で反芻する。
    『そのなりじゃ大方、テメェのクラスはキャスターかアサシンってとこか?』
    セイバーは謎のサーヴァントの姿を見て、そう推測した。もちろんセイバーの見立てを疑うつもりはないし、むしろあの歴戦の猛者たる大英雄が言うことなのだ。余程の詐称上手でもなければ間違っているはずもない。そういった経験の無い私には得られない知見から、セイバーはそう判断したのだ。
    だから逆を言えば。セイバーのその判断に疑問や思考を巡らせるのが、マスターである私の役目・・・・・・なのだと思いたい。
    「(もしも、あのサーヴァントがセイバーの言うとおり、キャスターかアサシンのクラスだったとして・・・・・・。そんな易々と前に、表舞台に姿を現すものかしら?)」
    魔術師(キャスター)、暗殺者(アサシン)。
    この二つのクラスはどちらかといえば真正面から戦うことには向かないクラスだ。権謀術数を張り巡らせ、敵の動向を窺い、隙あらば漁夫の利を狙うのがこの二つのクラスの常道であり王道だろう。キャスターであれば穴熊をして陣地を強化し神殿を作り上げて陣地に侵入してきた敵を討ち、アサシンであればあらゆる情報を集め闇に潜み敵の寝首を掻くのが戦術の基本となるはず。
    だが目の前の謎のサーヴァントはそれらとは真逆、自らが前線に立ち戦いに交わるそれは三騎士のクラスや四騎士の残りであるライダーとバーサーカーのクラスが得意とする戦術だ。
    だけどだとしてもおかしな点しかない。セイバーはまず私のサーヴァントだから目の前の謎のサーヴァントのクラスとしてはありえず、この場にいるもう一方の謎のサーヴァントがアーチャーならばそれもまたありえない。そうなるとランサー、ライダー、バーサーカーのどれかということになるけれど、謎のサーヴァントの得物や言動などから考えていずれのクラスの特徴にも当てはまらない。
    「(バーサーカーなら、まだ可能性はあるかもしれないけれど・・・・・・。だとしても狂化の影響を受けていないとは考えづらいわ。)」

  • 215ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:06:31ID:U2NTYxNTY(5/12)NG報告

    >>214
    バーサーカーのクラススキルである『狂化』。ランクの高さに応じて言語能力と引き換えにサーヴァントのステータスに上昇補正を加えるものだけれど、目の前の謎のサーヴァントの意思疎通具合を鑑みるにありえてもランクC程度が限度ではないだろうか。そうでなければ、あまりにも流暢に謎のサーヴァントは喋りすぎている。
    「(あるいは自分の手札を晒さないために、あえて力を温存している・・・・・・?)」
    恐らくはお互いにとって、これが聖杯戦争の初戦なのだと考えるとありえない話ではない。敵情視察が目的なのだとすれば、むしろ合点のいく話だ。
    と、そこまで思考したところで。薄らと謎のサーヴァントが笑みを浮かべる。
    「ええ、そうですね。己は、他のサーヴァントの方とはまた違った動機で参戦しているのでしょうし。しかし今の苦境では中々に己の本懐は遂げられません。と、いう事で。己は汝様とまだ見れない狙撃の何方かを両方等しく相手どる為、こうする事にしましょうか。」
    背中にあった翼をはためかせ、謎のサーヴァントは空へと羽ばたいた。
    「では、行きますよ。乗り越えて下さいね?」
    そう謎のサーヴァントが言い放った瞬間、周囲の空間が魔力で歪んだ気がした。

  • 216ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:07:20ID:U2NTYxNTY(6/12)NG報告

    >>215
    「チッ・・・・・・!マスター!」
    「セイバ、きゃっ!?」
    セイバーが左腕で私を抱え、近くのコンテナまで飛び上がる。
    と、同時に。先程まで私がいた場所の地面が抉られていた。いや、それだけではない。この廃工場全てに、あらゆる攻撃が無差別に放たれていた。
    「セ、セイ──────」
    「マスター!舌ぁ、噛みたくなかったら黙ってろよ!ちょいと暴れるからなッ!!」
    謎のサーヴァントの攻撃を、私を抱えたまま右手に持った剣のみで捌いていくセイバー。無理筋な攻撃も魔力放出スキルを利用することで筋肉の動きを加速させ、一つ一つ斬り伏せていく。
    だけど、それにだって限度はあるはずだ。いくらセイバーが強くても、いつまでも出来るわけじゃない。セイバー自身、それは分かっているのだろう。
    故に───────
    「宝具、真名限定封印───────」
    セイバーが言祝いだのは完全な真名解放ではなく、あくまでも一部分のみを使用する限定的な真名解放。それでもこの場においては十分のはずだ。
    魔力が剣に満ち、輝きが増していく。そして宙に浮いたコンテナだったものに足がつくと同時に後方へと跳躍し、
    「『陽光揺らめく光の剣(ソフド・クラウソラス)』──────!!」
    右下から剣を振り抜き、謎のサーヴァントに向けて光の斬撃を飛ばす。そして、その一撃は確かに謎のサーヴァントへと届いた。
    同時にセイバーが地面へと降り立ち、私を地面へと下ろす。けれど、私は気付いてしまった。
    「マスター、怪我はねえな?」
    セイバーが私の顔を覗きこむ。ニヤリと笑うその笑顔に、私は耐えられなかった。
    「わ、私は平気よ!でもあなたの腕が・・・・・・!」
    血が滴り落ちる左腕。もちろんセイバー本人からすれば大した傷ではないのだろう。けれど、私にとっては私が彼の足を引っ張ったから付けられてしまった傷にしか思えなかった。

  • 217ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:09:02ID:U2NTYxNTY(7/12)NG報告

    >>216
    「ん?・・・・・・ああ、このくらいなんてこたぁねえよ。マスターがそんな顔するほどじゃねえさ。」
    「で、でも!私を庇いさえしなかったら、あなたはそんな傷を負わずに──────」
    済んだかもしれないのに。そう言おうとして、セイバーに頭を軽く小突かれた。
    「あうっ・・・・・・!?」
    「あのな、マスター。無傷で戦いを終えられる奴なんていねえんだよ。俺にしろ他の英雄にしろ、生涯一度も傷を負わずに死んだ奴はいない。むしろこういう傷なんざ日常茶飯事だ。こんなんで一々そんなこと言ってたら身が持たねえぞ?」
    「で、でも─────」
    「いいかマスター?俺は確かに強い。だが俺は無敵じゃねえ。傷は負うし怪我だってする。だけどそれはマスターの責任じゃなく、防いで凌ぎきれなかった俺の未熟だ。何よりも、だ。マスターは俺にとっちゃ大切な存在だ。それを守るのは当たり前のことだろ?」
    「・・・・・・セイバー。」
    セイバーが笑いながら軽く頭を掻く。
    「あれだな。マスターは戦いにゃ、てんで向いてない性格だな!」
    「うっ・・・・・・。」
    「だけどな、俺はそれでもいいと思うぜ?全員が全員、戦うのが好きなわけじゃない。俺の時代だって、戦うことを拒む奴はいた。俺の時代はそういう奴ほど死ん でいったが……今の時代は違う。マスターみたいな優しい奴が無理に戦わなくても生きていける。ならマスターが戦いのためにわざわざ変わる必要なんてねえ。マスターがマスターのまま、マスターらしく戦う方法を見つければいい。」
    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
    私らしく、戦う方法───────
    「…フフ、フハハハハハッ!!!」
    「──────!」
    傷を負った謎のサーヴァントが高笑いする。
    そして私達を睥睨すると、まるで賛歌を歌うように言い放った。
    「素晴らしい!!素晴らしいですよ獣のような汝様は!!ああ!やはり汝様のような人間が試練を乗り越えていく時はいつも心が荒ぶります!ああ、天上に御座す主たる貴方に、変わらぬ感謝を高らかに謳いましょう!ハレルヤ!いざ此処に、万雷の喝采と絶対的な祝福を!!喉が裂ける程に!声が掠れる程に!!アリルゥゥイヤァァッ!!!」

  • 218ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:10:01ID:U2NTYxNTY(8/12)NG報告

    >>217
    謎のサーヴァントの後ろに黒き雷雲が立ち込め、そして──────
    「世界は愛に!試練に!悲しみ、怒り!そして喜びに満ちている…っ!!!──真名封鎖、宝具限定解放──『■■・■■□■(◆◆◆◇◆)』!!!」
    放たれるは超広範囲の雷による爆撃。私は不意に悟った。
    ─────だめだ。いくらセイバーと言えど、これは防げない。
    『矢避けの加護』はあくまでセイバー自身を狙う狙撃、射撃、あるいはそれらを含む遠距離攻撃において有効だ。
    だが、それが広範囲に渡るものとなると話は別だ。なぜなら、対象がセイバーだけではないからだ。セイバーが避けられたとしても、私が避けられない。ましてやセイバーが私を置いて逃げる、なんて選択はしないだろう。私を守る選択をセイバーなら取るはずだ。
    ルーン魔術である程度は防げるかもしれない。だけれど、それだって万全とは言い難い。
    「チッ─────!」
    それでも迫り来る雷撃から私を守るべく、セイバーが手元のいくつかのルーンストーンを使おうとした───────その瞬間。
    「──真名封鎖、宝具限定解放──『■■■■□■■■■(◆◆◆◇◆◆)』ッ!!」
    流星の如き白銀の槍が、雷撃を跳ね除ける。
    私とセイバーの前に降り立ったのは、緑と銀の鮮やかなグラデーションが特徴的な少女だった。それも───────
    「(この魔力・・・・・・!この子もサーヴァント・・・・・・!?)」
    先程のことを考えると、恐らくランサーのサーヴァントだろう。
    そしてランサーだろう彼女は振り返り、こう提案してきた。
    「敵の敵は味方、とまでは言いませんが今は手を組みませんか?」
    「え・・・・・・?」
    それは、つまり。

  • 219ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:10:31ID:U2NTYxNTY(9/12)NG報告

    >>218
    「俺達とこの場限りの同盟を組みたいってことか?」
    「はい、そう受け取っていただいてかまいません。」
    セイバーの確認に、彼女は肯定で返す。
    「どうするマスター?こいつはこう言ってるが?」
    「ど、どうって言われても・・・・・・。」
    いきなりそんなことを言われても、どう返すべきかなんて私には分からない。
    「セ、セイバーが決めてくれないかしら?私には、その、どうするべきかなんて分からないから──────」
    「・・・・・・あのなあ、さっき言ったろ?『マスターの意思は尊重する』ってな。だからここはマスターが判断してくれや。こいつの言葉を信用するか否かを、な。」
    「そ、そんなこと言われても・・・・・・。」
    戦いとは無縁だった私にとって、あまりにもその判断は重すぎる。
    彼女と手を組むことは、確かに、ここで相争うよりはいいのかもしれない。だけど、もし彼女がセイバーが疲弊したところを狙っているのだとすれば、簡単に首を縦になんて振ることは出来ない。
    けれど、単純に善意で言ってる可能性だってある。紛れもなく本心で、私達に協力したいのだと。
    信じれるものなら信じてあげたい。だけど、安易に信じるのは危険な気がしてならないのだ。
    これは聖杯戦争。魔術師達と召喚されたサーヴァント達による命の奪い合い。あらゆる可能性を考慮しないなんて、私には出来ない。
    我ながら、なんて臆病なのだろう。
    差し伸べられた手を掴みたくても、その手を掴むことがとてつもなく怖い。手を掴んで裏切られることが怖い。見えた希望を奪われることが怖い。信じて大丈夫だと安心させられることが怖い。
    覚悟なんて出来ていないのだ。
    彼女の顔を見る。

  • 220ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:11:22ID:U2NTYxNTY(10/12)NG報告

    >>219
    「(─────ああ。なんて、強いのだろう。)」
    サーヴァントだからあまり外見はあてにならないけれど、それでも外見だけなら年はきっと私と変わらないはずだ。なのに、彼女の表情は強さを秘めていた。覚悟、とも言うべきだろうか。それほどまでに彼女の表情からは強い意志を感じられた。
    それがとても羨ましかった。弱い私には、とてもではないけれど持ち得ないもの。
    セイバーもそうだ。召喚された直後に見た、覚悟と自信に満ち溢れ堂々とした顔。それはきっと英雄であれば、誰もが持ち得るものなのだろう。
    「(私には持てないもの─────)」
    マイナス思考に沈みかけた時、ふとセイバーの言葉が脳裏をよぎる。
    『ならマスターが戦いのためにわざわざ変わる必要なんてねえ。』
    『マスターがマスターのまま、マスターらしく戦う方法を見つければいい。』
    「(私らしく、戦う方法─────)」
    そんなもの、まだ分からない。分からないけれど、でも─────
    「・・・・・・ふふっ。私がセイバーの言葉を信じなくて、どうするのかしら。」
    私は思わず自嘲するように笑った。自分が召喚したサーヴァントを、セイバーを信じなければ私は何も出来はしないのだ。だから、今はセイバーに甘えよう。
    「・・・・・・決めたか?」
    「ええ、もちろん。」
    私は彼女に向き直る。
    「あなたはランサー・・・・・・でいいのよね?」
    「ええ、如何にも。私はランサーのサーヴァントです。」
    彼女の確認を取り、私は大きく深呼吸をする。

  • 221ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:11:50ID:U2NTYxNTY(11/12)NG報告

    >>220
    「すう・・・・・・はあ・・・・・・。」
    緊張している自分を落ち着かせるためでもあるが、一つの決断を下す覚悟を決めるための深呼吸。
    そして、私は私の決断を彼女に─────ランサーに伝える。
    「ランサー、あなたの提案をお受けします。今、この場は共に戦いましょう。」
    「・・・・・・ありがとうございます。その選択に感謝を。セイバーのマスター。」
    ランサーはどこか安堵したような表情を浮かべ、胸を撫で下ろしたようだった。
    「さて、話はまとまったみたいだな。なら、早速で悪いが──────」
    セイバーが宙に浮かぶ、謎のサーヴァントに剣を向ける。
    「一緒に、あの宙に浮かんでるアイツを撃ち落とそうや!ランサー!」
    「ええ、もちろんです!セイバー!」
    それを見て、謎のサーヴァントはケタケタと笑う。
    「ああ!素晴らしいッ!なんて素晴らしいのでしょう!!己に立ち向かわんとする勇者が二人!まさしく試練とするにはこれほどのものはないでしょう!!」
    両腕を広げ、そして高らかに謎のサーヴァントは宣言する。
    「─────さあ、来るがいい!!己の試練を超えてみせろッ!!」
    その宣言に応えるようにセイバーとランサーが、謎のランサーに向けて疾駆し跳躍する。
    まだこれは、この聖杯戦争のほんの1ページ。
    だけれど、私はこの日のことを忘れないだろう。

  • 222ドロテーア【ペレス聖杯戦争:剣陣営】2021/06/13(Sun) 23:12:47ID:U2NTYxNTY(12/12)NG報告

    以上でーす・・・・・・これ本当に序盤の展開?

  • 223ここのえ@覇久間アサシン陣営2021/06/26(Sat) 23:01:19ID:I0MjU5ODY(1/5)NG報告

     魔神柱と呼ばれる高次元生命体が蠢く、枝木が重なって鳥の巣のような形状となった大樹、といった趣の足場を踏みしめる。それは見る者が見れば、ソロモン王の魔術回路を基盤にした固有結界に似て非なる、かつてネブカドネツァルが滅ぼした“ソロモン神殿”であると分かっただろう。
     玉座には、まだ少女のごとき齢の女王がいて。
     その傍らにはソロモン王の写し身たる使い魔ゲーティアが立ちはだかる。

    「……こうも、馬鹿正直に来るとは思っていなかった」
    「さすがに万を越える人々を無思慮に焼くと言うのであれば、応じる他ないでしょう」

     アレン、最優たる剣士の英霊(セイバー)のマスター、アレン・メリーフォードは憮然とした面持ちで答えた。天上王ネブカドネツァルが“血迷って”セイバーが……陣地、そう魔術師の英霊(キャスター)の作る陣地……に来なければ、覇久間の民を滅ぼすと声高らかに宣言して、およそ6時間が経っていた。

    「あまり上品ではないから、驚いてしまったけど」
    「……貴様、ああ、セイバーか。ふん、これが最優の枠に収まった器とは。けっきょく“此度の”聖杯戦争で超抜種の域と言えるのは、このネブカドネツァルだけだったな。あの魔人が如きライダーは、惜しかったが。人の形を捨てて変生すれば神の階に足を踏み入れることも叶っただろうに」
    (…………なるほど。此度、と称しますか。神霊の視座を持つ者は、高次元から異なる並行世界の事象を知り得るというのが時計塔の論文にあった、記憶がある。天上王も同等の視座に達しているという事か……!)
    「それって要するに、貴方、上しか見ていないっていうことかしら」

  • 224ここのえ@覇久間アサシン陣営2021/06/26(Sat) 23:02:29ID:I0MjU5ODY(2/5)NG報告

    >>223

     セイバー、その真名はオードリー・ヘップバーン。かの合衆国における名女優である。
     美しく柔和な微笑みを湛えていた彼女の表情が、双眸が、“敵”を認識する。

    「天上王なんて聞いて呆れる。理想(カミ)しか見て来なかったんだ?」
    「――――」
    「貴方は日々の暮らししか考えられない人たちのこと、知らないんでしょう。娯楽っていうものが何のためにあるかっていうの、分からない人なんでしょう。だから、“ネブカドネツァル”なんて名前を名乗れるのよ」
    「――――知ったような…」


    「知ったような口を利くのね、この私に」


    (空気が、変わった……!)
     アレンはようやく口を開いた天上王の威光、その重圧を肌で感じる。
     ゲーティア自身はネブカドネツァルの守護英霊であり、七十二の魔神を再構築・再召喚した影法師である。神の如き術式とはいえ、人が作り出した存在であり、生命としての主体ではない。
     真実、ネブカドネツァルは違う。
     天上王と謳われ、地上に君臨した破格の人間。ソロモン王の罪の証。

  • 225ここのえ@覇久間アサシン陣営2021/06/26(Sat) 23:02:54ID:I0MjU5ODY(3/5)NG報告

    >>224

    「その時をただ生きるためにビールを飲み、他者と交わる。そして友と笑い、泣く。それは確かに、人の営みでしょう。だが、それはただの生命活動の余剰に過ぎない。三大欲求とはよく言ったもの。ただそれを満たすことだけしか考えられないような者がいると――貴方も想像したことがあるでしょう?」

     古代、神代とは魔術師にとっては確かに理想の時代だったのかもしれない。
     かの英雄王ならば自らの治めていた時代の民草の方がより“強かった”と言えるのかもしれない。
     だが、それは欺瞞であると、ネブカドネツァル個人は思う。
     結局のところ、彼女の生きていた時代はあまりにも死に溢れていた。その中で、オードリー・ヘップバーンのような職種の提供する娯楽などは整った福祉、“パンとサーカス”のような基盤がなければ民衆は享受できないだろう。確かにエンターテイメントとは、精神を豊かにする。それは間違いない。だが、肉体(いのち)を豊かにするとは限らない。
     歯車そのものではなく、歯車をロスなく回すために必要な潤滑油。

    「――――ええ、覚悟していますわ」

     確かに女優オードリー・ヘップバーンを知り得るのは、かつての貴族のような暮らしを佳しとするような…合衆国がそうであったように…だけだろう。
     それでも、彼女はそれに救われた。
     現実の厳しさを知らない女性ではない。国際連合児童基金の前身組織に助けられ、また自身の晩年を親善大使として捧げた人である。

    「全人類を、お前では救うことはできない」
    「それは前提が間違っている。救う、のではなく、助け合う。でしょう?」

  • 226ここのえ@覇久間アサシン陣営2021/06/26(Sat) 23:03:21ID:I0MjU5ODY(4/5)NG報告

    >>225

     セイバーは、自身のマスターであるアレンの顔を見つめる。
     いつになく真剣な眼差しを、アレンは気品と受け取った。貴族の振る舞いと言い換えても良い。真の意味で高潔なる人のノブレス・オブリージュをオードリーに見たのである。

    「…………そうか」
    「えっ?」
     オードリーには天上王と呼ばれた女性の、嘘偽ざる本心が、その一言に現れたように思えた。が、それもネブカドネツァルから溢れ出す魔力の圧によってすぐさまかき消された。成人にしては小さい体であっても、ただの圧だけで身を浮かすような魔力の、波に。


    「――――我が声を聴く者は、皆が予言の証人となるがいい。
    決着は、空を流れる星が消えるよりも早く終わるだろう!」


     アレンは令呪に力を込める。
     セイバー、オードリー・ヘップバーンとの魔力の経路(パス)を強く意識する。
     オードリーもまたその意図を正確に把握し、『列して称えよ、輝きし銀幕の星々を(ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム)』に魔力を注ぐ。
     アサシン、ネブカドネツァルもまた自身の『聖なるかな至上の星(ロード・カルデアス)』を握る手に力を込める。

  • 227ここのえ@覇久間アサシン陣営2021/06/26(Sat) 23:04:29ID:I0MjU5ODY(5/5)NG報告

    >>226
    覇久間リレー5月2日
    『天の光、あるいは地の光』です~

  • 228ペレス弓陣営『You can be will strong』◆4QvCgGuW1A2021/07/12(Mon) 21:41:32ID:M2Mjk3Mjg(1/3)NG報告

    (……付き合いきれん。撤退するぞ。アーチャー)
     男の放った念話には、明確な疲弊の色が見て取れた。
     男が契約したサーヴァント、アーチャーの本質は子供だ。召喚してからの付き合いはごくわずがだか、人を見る目に長けた男はそれを察していた。
    (撤退? もう? しょ、勝負はこれからでしょ?)
     少女の些細な感情の変化を男は目敏く感じ取った。
     震えている。怯えている。目の前のサーヴァント達の闘争を見て、完全に怖気づいている。
    (これからだから、だよ? 分の無い賭けはしない主義でね。そら、行くぞ!)
     懐から取り出したスモークグレネードを、男は渾身の力で地面に叩きつけた。そのまま少女を抱えあげ、煙に紛れて遁走する。

     強化を施した全力疾走から約15分。
     男を追いかける敵は1人もいなかった。

  • 229ペレス弓陣営『You can be will strong』◆4QvCgGuW1A2021/07/12(Mon) 21:41:46ID:M2Mjk3Mjg(2/3)NG報告

    >>228

    「……お前、ビビっただろ。わかるんだよ。そういうのは。職業柄でね」
    「っ! ……そうよ。勝てない、と思った。当然よね。獣(わたし)が人に倒されるのは当たり前のことだもの」

     溢れる涙を隠そうともせず少女は淡々と語る。背中がじわりと濡れていく感触、彼女は男の衣服で眼を拭いていた。

    「それはどうかね? 獣害って言葉があってな。俺の国でもお前みたいな獣が暴れたことがあるくらいだ。そいつは人間の味を覚えた熊だったそうだぜ」
    「獣が……?」
    「ああ……獣(お前)が、だ」

     背中に背負った少女の声色がわずかに変わったのを、男はまたも見逃さなかった。

    「教えてやるよ、これから。お前が強くなれる方法ってやつを。そういうのは得意分野でね。これも何かの縁ってやつだ。
     お前はこれから強くなれる。今のお前が弱いとも思わんが、成長ってもんに限界は無いからな。教わる気があるなら今の言葉は覚えておけ」

     そこで男は一拍置いて。

    「何より―――お前は、かつて人間戦車と呼ばれたこの景伏弦のサーヴァントだ。そんなお前が、強くないわけがないだろう?」

  • 230ペレス弓陣営『You can be will strong』◆4QvCgGuW1A2021/07/12(Mon) 21:41:56ID:M2Mjk3Mjg(3/3)NG報告

    >>229
    以上です

  • 231第■回槍陣営2021/07/13(Tue) 01:31:09ID:kxMjc5Mw=(14/18)NG報告

    「ロード級の工房ならまだしも、私のような二流魔術師の工房でサーヴァントに対応できるはずもありませんし」

    かといって、しっかり育てていた可愛い植物を殴り散らし荒らされるのは納得がいくかどうかと言えば否だ。あまり好ましくない、というか心に対して不健康である。


    「んー……なら、こうかしら」


    植物単体、人形単体で完結するならばそれは単なる植物使いや人形師であるというだけだろう。ベルリーズの一族の利点はそれらを使った人類文化と自然に富んだ空間の融合だ。ようは、点ではなく面。単体ではなく群体。その場を作り替えてこそだ。


    「サーヴァントを最大限活かす。それがマスターのすべきことだと思うのよ、私は」


    そうだ。サーヴァントという己を糸とした人形を最大限魅せるのであれば、彼女の特徴を活かした空間にすべきだろう。




    「舞台設定変更。益荒男駆け巡り刃と刃が迸る、舞台は麗しき天守閣」

  • 232第■回槍陣営2021/07/13(Tue) 01:31:34ID:kxMjc5Mw=(15/18)NG報告

    サーヴァントでも、魔術師でも……神秘に類する者ならばその変化を感じ取ることができただろう。

    マナが変動する。今までの流れが変わる。屋敷が揺れ動く。それは地震などではない。屋敷に生え蔓延り、絡みついた「植物」が揺れ動いて鳴動を起こしているのだ。




    ──────かのアッシュボーンが有する剥離城アドラ。その土地において「地上で最も優美なハイエナ」と称されたエーデルフェルトの令嬢は、他者が有する工房を侵略するために己の宝石で城の魔術経路を覆い、奪うといった仰天ものな事をしでかそうとしたという。


    結果は失敗に終わったが卓越した魔術師が有する幾重にも神秘が張り巡らされた魔術工房においても「理論上は可能」とされたもの。ならば、それを魔術の手も入っていないただの土地で、魔術師が精魂こめて育て上げた植物で包み込んだならば?

  • 233第■回槍陣営2021/07/13(Tue) 01:32:00ID:kxMjc5Mw=(16/18)NG報告

    「あらかじめの詠唱、瞬間契約っ……!少し荒々しいけど、ごめんあそばせ。相手の領地に踏み込んだということは、それなりの覚悟があるのでしょう!?」


    屋敷の中、その様相が一変する。床はすべて柔らかい草に覆われた草原となり、天井は果てが見えないような星空へと変化する。もちろんそれはそう見えるだけであって、高位の魔術師が時間をかけて用意する異界化の類や固有結界ではないのだが、「演出する」ことこそがオーレリアの魔術なのだから問題ない。

    美しく、儚く咲く光の花々に囲まれて、まるで春風に攫われてしまいそうな無垢な顔を浮かべる人形がステップしながら緩やかにダンスを踊っている。
    月に叢雲花に風。周りには崩れ果てた建物の残骸のような瓦礫。あいにく夜の散歩とするには向かない荒れた様子であるが、だからこそ命と命の奪い合いらしいというもの。見方によってはそれも風流。



    慣れた足取りで槍を回す赤い着物の美女。彼女が放つ色気は、まさに傾城。

    それは、この荒れた中にも美しさを残す戦場に咲く嫋やかな血の華のようにも、そもこの戦場を築いた忌むべき魔にも見えるのであった。

  • 234第■回槍陣営2021/07/13(Tue) 01:33:08ID:kxMjc5Mw=(17/18)NG報告

    それと同時に、アサシンのマスターに私は声をかける。

    「ランサーが持つスキルの効果を倍増させているわ。常人は愚か、普通の……男の魔術師が彼女を見て正気を保てるかは私にはよくわからないけど。私の方に挑むか、アサシンの勇姿を見届けるか。貴方の思うようにした方がいい。勝っても負けても、きっと後悔する」



    以上です。ランサーの持つ傾城魚のスキルの効能を補助して高めた……みたいな感じです
    ワンランクも上がってるぐらい過剰な感じではないです

  • 235第■回槍陣営2021/07/13(Tue) 01:38:46ID:kxMjc5Mw=(18/18)NG報告

    あと魅了の魔眼の対抗レジストとかできるんじゃないかなぁ、とか意志の力で耐えれることも可能なんじゃないかなぁ、とは思ってます
    お任せします

  • 236正親中納言2021/07/21(Wed) 02:01:14ID:A2MTEwNDA(1/7)NG報告

     空の彼方から、大きな崩落音がする。同時に、彼方にあった強大な魔力も大いに減衰していっている。
     地響きとすら見紛う音はさながら魔神の叫びのようで、避難を続ける地上の住民たちはそこでまた更に悲鳴を上げ、慌てふためき混乱を極めている。どこへ逃げれば良いのか分からず、どうすれば良いのか分からず、危機が去ったのかも分からず、四方八方へ逃げまどい、荒れ狂う波か何かのような人いきれを作り上げた。そんな中で、もみくちゃにはならないようにと脇にそれた主従の二人がいた。

    「あの、音は…」
    「どうやら、セイバーたちがどうにかしてくれたようだな。あとは時間の問題といったところだな」

     不安げに空を見つめるマスター、郁に、人麻呂は同じく空を見遣りながら呟くように答える。その声は、周囲の騒音に搔き消されそうなものであったが、しかし不思議に消えることなく音となって響いた。
     アサシンが宣戦布告をして、その後に上空に大規模な結界────神殿と呼ぶに相応しきものが現れた。以前のバーサーカーの時と同様、いやそれ以上の災害が差し迫る中、一番に動いたのはセイバー陣営だった。次に、土地の管理者であるライダー陣営、アーチャー陣営、ランサー陣営が神殿へ向かっていくのを見た。人麻呂たちは、討伐へ向かうサーヴァントたちへ出来る限りの支援をかけ、見送った後に住民たちの誘導を戦況を見定めながら行った。
     控えめに言っても、アサシンの異端とも称せる強さの一端は覇久間の地を容易に蹂躙する代物だった。それを、セイバーたちは迎撃し、押しとどめ、押し返し、そして、今この瞬間打ち勝ったのだ。主を失くした神殿は脆く壊れゆくのみで、遠目からではまる空中を流れ星が降り落ちているようにも見える。
     その内で、一つ。唯の流れ星、神殿の瓦礫とは異なる色を認めた。
     星は、翼を傷めた鳥が、それでも飛ぼうとするように、危なっかしくも、どこか物悲しく、一筋墜ちて行っていた。落下位置は、角度から見るに公園。奇しくも、人麻呂たちとアサシンたちが初めて顔を合わせた場所だ。

  • 237正親中納言2021/07/21(Wed) 02:01:40ID:A2MTEwNDA(2/7)NG報告

    >>236
    「……行くか」
    「え、…行くって、何処に?」
    「さっき、アサシンが墜ちてった、そこに」
    「そ、それ…は、危険では…?」

     怯えた表情で郁がこちらを見ている。顔は白く、元気も生気も活気もない。思い出してみれば今日一日で色々なことがあって、その殆どすべてが郁にとっては疲労の原因となるものだった。何なら、今朝には熱中症でぶっ倒れていた。それを押して今までいたというのだから、感心も過ぎて呆れてしまう。
     自分ひとりが行くとしても、郁は置いていくべきだ。しかしホテルに返すには事態の収拾が落ち着いていない。避難所に匿ってもらうか。

    「いや、小生一人で行こう。其方は避難所で休憩しておれ」
    「そういう訳には…」
    「これ以上、身体壊して床に臥すわけにもいかんだろう?」
    「そ、れは、そうですけど…」
    「なぁに、小生は無問題さ。あのお嬢さんには一つ言ってやりたいことがあるからな。それまでは退場はさせられんよ」
    「……わかりました。…何かあったら、必ず。言ってください」
    「おうよ!そんじゃ、しばしバイビー!」

     笑ってみせて、走る。その途中でも時々立ち止まって郁の方を見ると、彼も彼で人波を避けつつ避難所の方へ歩いていた。足取りにはまだ力がある。そして、人麻呂と違って振り向いてこちらを見たりはしない。己を信頼してくれているのであろう、と感じ、安堵の感情が浮かんだ。
     その安堵をゆっくりと拾いつつ、自分は自分で公園へ駆ける。人いきれを掻い潜り、路地を通り抜け、カーブや坂道もひた走る。距離はそこまでないはずだが、それでもサーヴァントの消滅は早いときは一瞬だ。一瞬に間に合わなくては意味がない。

  • 238正親中納言2021/07/21(Wed) 02:02:29ID:A2MTEwNDA(3/7)NG報告

    >>237
     そうやって、やっと辿り着いた時。公園の見慣れた土は、白い花に包まれていた。ここのような平地ではまず咲くことのない花────高貴な白、白い露に濡れて咲く花、エーデルワイス。その花畑と化していた。
     花々の中へ、一足入れる。もう一足。更に一足。慎重に、雪山を歩くように進んでいくと、不意に視界の端に、白一面の世界には似つかわしくない色が映った。赤い、赤黒い、血の色だった。それを頼りに、また一歩ずつ足を動かしていく。血は進むごとに見える範囲が広がっていき、ついにはエーデルワイスを赤く染め上げる地帯を見つけた。その中心にいるのは、当然のことながら、あの日出会った少女────アサシンであった。

    「────ねぇ、そこの魔術師さん?」
    「……変わらないなぁ。いつから気づいてたよ?」
    「気づいてなんていないわ。…ついさっき、何かいるなって思ったら、貴方だったの」
    「………変わんないなぁ、ホント…」
     
     少女自身は、傷つき、血に濡れ、今にも消え入りそうな姿をしているというのに、態度はやはり初対面での印象と違わぬ高慢で鳥瞰的なものだった。折角の儚さが台無しだな、などと思っていると、意外に余力があるのか、アサシンは口を開いた。

    「…それで?私に何か用かしら?」
    「ああ、そうそう。其方には一発ガツンと何か言ってやろうと思ってな」
    「あら、何かしら」
    「うんにゃ、今まで考えておったが…閃かんかった」
    「……ならどうして、大事なマスターを置いてきたのかしら。貴方の首くらいなら、狩れるかもしれないのに」
    「いや…それはないっしょ?」
    「さあ。試してみる?」
    「結構でーす。小生まだ生きてたいでーす」

  • 239正親中納言2021/07/21(Wed) 02:02:55ID:A2MTEwNDA(4/7)NG報告

    >>238
     おどけた風にしていると、アサシンは笑った。まったくどこまで余裕があるのか知れたものではない。いつも傍らにいたあの男がいないだけましだと思っていたが、全然そんなことはなかった。

    「とにかく。小生はな、其方に一つ歌を捧げようと思うのだ」
    「歌?貴方、歌うの?」
    「違う違う。詠うのさ」

     もしかしたらこの少女は天然なのかも知らん。そんな考えがふと浮かんだが、今更相手の性格を類推したところで何にもならないだろうからと頭を掻き、気を取り直す。そもそも、天然という性格は当たっていたとしても治しようのないものだ。仕様のないことだ。
     少女は、一体なにがあるのかと人麻呂を、大して期待とも言えない面持ちで見ていた。これが、人麻呂が彼女を高飛車だと思った所以だ。今見ると、ただ受け身になっているだけに見えてしまう。

    「えー、こほん。では、アサシン。其方の今わの際に一首手向けよう。」
    「“天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ”────うむ。実に適した歌であるな」

     人麻呂が、生前のうちに詠った歌の一つ。夜空に見る雲間の三日月を詠んだ歌。
     アサシンは、これを聞き、なにを感じたのか。静かに目を瞑った。それが長くあったので、初めは人麻呂でさえ人間のように────あろうことか、生者のように、静寂のうちに果てたのかと思った。しかしそのすぐ後、アサシンはパチリと眼を開き、

    「それ、私だけに詠ってはいないわね」

     とだけ、射止めるように話した。

  • 240正親中納言2021/07/21(Wed) 02:03:22ID:A2MTEwNDA(5/7)NG報告

    >>239
    「その通りだとも。其方のマスターのお嬢さん宛てでもあるさ」
    「あの子が今どこにいるのかなんて知らないのに、思い切ったことをするのね」
    「わからずともな、小生くらいになれば「この状況だとこんなことするだろうなー」ってのがわかるのよ。庶民派だから。小生」
    「なるほどね。……えぇ。お察しのとおり。あの子は、今、飛行機に乗って、もうどこか…少なくとも、ここにはいないわ」

     アサシンの傍にマスターの少女がいないのは不思議で、アサシンの大暴れ前に国外逃亡をしたのは容易に見当がついた。調べたところ、少女は覇久間の御三家の一角を担う二階堂家の娘のようで、縁を頼りに発ったのだろう。

    「まあ、だからこの歌にしたのよ。お嬢さんの空の果てへの旅の無事を僭越ながら祈願して、な」
    「その解説は、余計だったんじゃなくって?」
    「だって、其方ピンと来てなさそうだったしー」
    「あら、そんな顔、してたかしら」
    「してなかったって言ったら嘘になるな」
    「…でも、貴方も殊勝なものね。敵方の無事を祈るなんて」
    「いやさ。お嬢さんは敵だったかもしれぬが、今は違うだろう。お嬢さんは今もっては唯の少女。ならば、己の言葉がそのあえかなる旅路の一助となるを願うのが小生という者よ」
    「戦争には向かない寛容さね」
    「まあなー。小生、唯の人なわけだし」
    「…ありがとう。礼を言うわ」

     アサシンは微笑んでそう言った。確かにそう言った。あまりに似つかわしくない言葉であったために驚いていると、彼女はその顔が愉快だったようでまた笑った。

  • 241正親中納言2021/07/21(Wed) 02:03:43ID:A2MTEwNDA(6/7)NG報告

    >>240
    「そんなに愉快なもんかねぇ?」
    「えぇ、とても。…でも、もうお終いね。少し残念だわ」
    「これ以上暴れられたら実際小生たち終わってたからなぁ。…今度は、味方としていたいもんだ」
    「…ロマンのあることを、言うものね」
    「応とも。何度も言うが、小生は…唯の人、だからな。ロマン大好きな」

     光が見えた。淡い、泡沫のような光が、現れては消え、消えては現れと、アサシンの姿を覆って、空へと昇っていた。それがサーヴァント、英霊としての消滅を意味することは、誰に言われるでもなくわかった。
     アサシンはもう何も言わなかった。ただ、あんなに暴れたというのに、随分と安らかに、目を閉じて、その光の群れに包まれるを良しとして何もせずに時が過ぎるのを待っていた。人麻呂も同じように、移ろっていく時間の流れを見守っていた。
     少女の身体の一片一片が溶けるように、攫われるように消えていく。風の吹くこともないまま、光たちは身体を撫でながら地を離れていく。エーデルワイスの花畑も、それに従って消えていく。人麻呂すらその景色に包まれる。
     何も見えなくなって、そして何か見えるようになって、その時には、公園は元の、一脚のベンチが据えられたどこか殺風景なものになっていた。空を仰ぐと、色は既に夜の深い青へと塗り替えられていた。
     そういえば、アサシンは────古き天上王、ネブカドネツァルは、あの時「またいつかの夜に会いましょう」なんて言っていた。それは、まさかこれも見越していたのだろうか。問う相手はもういなくなっていた。

  • 242正親中納言2021/07/21(Wed) 02:04:52ID:A2MTEwNDA(7/7)NG報告

    >>241
    5月2日(宵)覇久間術陣営「空の果てへの旅」以上です。

  • 243スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/07/22(Thu) 23:06:43ID:M3OTM4OTQ(26/29)NG報告

     右回し蹴りに左膝蹴り、襲い来る茨をアサシンのラッシュが叩き潰していく。
    ランサーとの距離は近い……アサシンに言わせれば正面にある扉の向こう。
    アサシンが両手を組んで振り下ろし、扉を守る植物……その最後の一つを叩き潰し……その時、世界が塗り変わった。

    「ランサーが持つスキルの効果を倍増させているわ。常人は愚か、普通の……男の魔術師が彼女を見て正気を保てるかは私にはよくわからないけど。私の方に挑むか、アサシンの勇姿を見届けるか。貴方の思うようにした方がいい。勝っても負けても、きっと後悔する」

     先程まで屋敷にいた筈なのに、視界は夜の草原……いや、詳しく風景を眺める余裕なんてない。
    ランサーだ、只でさえ人間離れした色気はこの空間によって増幅されて、正常思考すら奪わんとしてくる。
    俺の魅了の魔眼とは出力が違い過ぎる……正気を保つので精一杯だ。

    「落ち着け!」

     空気を震わせるアサシンの一喝。
    お陰で少しはマシになったが、とてもじゃないが身体を動かす余裕は無いし、アサシンの戦況も思わしくない。
    鎚鉾の一撃はランサーを捉える事はなく、ステータスからしてフォーリナーよりは遅い筈のランサーの槍は今まで見たこと無かった位に当たるギリギリの所までアサシンを追い詰める。

  • 244スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/07/22(Thu) 23:07:37ID:M3OTM4OTQ(27/29)NG報告

    「ちっ、厄介な小細工しやがって……」

    ふくらはぎを狙ったランサーの薙ぎ払いを、アサシンが後ろに跳んで避ける。
    今度はアサシンが跳び膝蹴り……と見せ掛けて右足での蹴りに移行。
    しかし、それは容易く柄で受け止められ、反撃の二連突きを鎚鉾で受けたアサシンがよろめき、そのまま後ろに下がる。
    いや、何時ものアサシンならあの二連突きは受け流していた筈。
    アサシンの動きを悪くしてるもの……答えは一つだ。

    「令呪を以て命ずる。アサシン、魅了されるな」

     ランサーの薙ぎ払いがアサシンの手から鎚鉾を叩き落としたその時、令呪の効果が発動する。
    続く薙ぎ払いを後ろに跳んで避けるアサシン……これまでよりも早いタイミングでの回避行動。
    そして、反撃の跳び蹴り……それはランサーが柄で受け止めたが、アサシンの行動は早い。
    右腕を大きく振りかぶり、前進しながら振るわれた拳がランサーの左肩を捉えた。
    咄嗟に後ろに跳んで衝撃を減らすランサーだが、その隙にアサシンは鎚鉾を拾い、構え直す。

    『マスター、動くのは……無理そうだな。ビーマみたいな力任せが相手とはいえ、ライダーを殺った時の強化を使われたら不味い……よし、宝具を使うぞ。マスター、隙と動く余裕が出来たらどうにかして小聖杯を奪ってくれ』

    『ああ、お前に任せる』

  • 245スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/07/22(Thu) 23:08:53ID:M3OTM4OTQ(28/29)NG報告

     槍を構え、迫り来るランサー。
    俺との念話を終えたアサシンはランサーに先んじて突きを放って牽制。
    咄嗟に足を止めたランサー目掛けてアサシンが鎚鉾を振り下ろし、ランサーは横
    柄で受け止めてそのまま衝撃を利用して後ろに跳ぶ。

    「我が親友よ。今一度、力を貸してくれ。『親友よ、共に戦え(ヴァスシェーナ)』 」

     夜空に不似合いな火球が浮かび上がる。
    直径数メートル程のそれは、英霊の座に居るアサシンの親友『施しの英雄カルナ』の魔力を借り受けた物。
    火球自体が砲台となって援護射撃を行い、その連携で相手を圧倒するアサシンの第二宝具。

    「という訳で、頭上注意って奴だ」

     アサシンがそう言うと、ランサーへと降り注ぐように火球より炎が放たれた。

  • 246スルトちゃん&マグダレーナ陣営【第■回&アメリカ異聞帯】◆SOkleJ9WDA2021/07/22(Thu) 23:17:27ID:M3OTM4OTQ(29/29)NG報告

    以上、第■回の更新でした。

    魅了を強化する空間が解除されない限り丈は動けません。
    令呪使うのが精一杯で、魔術も使えない状態。

    令呪で魅了耐性を得たアサシンは技量差でランサーに有利になれるのですが、ランサーを倒した時の強化魔術を使われたら、フィジカルの差が大きくなり過ぎて押し切られる模様。

    最後の炎は、とくに支援とかなくてもランサーなら回避出来ます。

  • 247監獄長アーチャー陣営◆VENk5mkP7Y2021/07/29(Thu) 20:51:35ID:k3NTk1MzE(1/3)NG報告

     攻防が続いてかなりの時間が経過した頃、ついに決着の瞬間が訪れようとしている……そんな空気が漂っていた。
     アーチャーとランサー、両者の姿は激戦を終えた兵士のようにボロボロで、特に槍兵の疲労困憊具合はより酷く見える。
     しかし、クレーターだらけの戦場の真ん中で対峙する二人は決して手から武器を離さなかった。それは英雄と呼ばれるにまで至った者の矜持────負けられぬ戦いに足踏みする武人としてのプライドがあったからだ。
     テレビの前の視聴者たちも彼らの姿を見て息を呑んでいた。

    「そろそろ年貢の納め時だね……魔力供給に問題はないとはいえ、精神的にくたびれていないとは言えない。なら、次の一撃で決着をつけた方がお互いの為だ。どうだい?」

     ゲルトからの提案に双介は思慮する。
     確かにこれ以上戦闘を長引かせれば埒があかないし、どちらかと言えばこちら側に不利になっていく可能性が高い。
     自身のサーヴァントの事は信用しているが、ランサーはアーチャーのと比較しても段違いに消耗しているだろう。
     故に、戦闘の長期化は得策とは言えない。なのでゲルトの口車に乗るのが正解なのだろうが……。

  • 248監獄長アーチャー陣営◆VENk5mkP7Y2021/07/29(Thu) 20:52:35ID:k3NTk1MzE(2/3)NG報告

    >>247
    (次で決着というのは、あの宝具を使うって事だ。あんなものを使われたら敗北は必須……!)

     奥歯を噛み締める。
     考えろ、考えるんだ。この状況を打破する方法を────そう思考を加速させるが、いかんせん彼は経験不足に加えて、相手は逆にこの手の修羅場を潜ってきた猛者に分類される。
     こちらの練った策など直ぐに見破られるかもしれない。

    (考えれば考えるほど、思考が泥沼化していく。どうすりゃ────)

     そこで、双介はふと視線を感じる。
     ランサーがこちらを尻目に何を訴えかけているようで、そこには決意の眼差しがあった。
     ────嗚呼、なんだ。ここに来て俺は、揺らいでしまっていたのか。
     信用はしていたが、信頼はできていなかった。この二つは似ているようで違い、この認識の差で己は愚考してしまうところだった。
     短い期間ではあったが、自らの相棒と呼べる槍兵からの激励で再認識する事ができた。マスターとして何をすべきかを。
     正否なんて関係ない。自身が信じ、サーヴァントが信じてくれた事を成すのみ。

    「どうやら、決心がついたようだね。じゃあこちらも遠慮なく────潰させてもらう!」

     ゲルトの嘯きによって、彼の令呪が輝く。

  • 249監獄長アーチャー陣営◆VENk5mkP7Y2021/07/29(Thu) 20:53:04ID:k3NTk1MzE(3/3)NG報告

    >>248
     ────令呪を以って命ずる。アーチャー、黄昏の射手よ、俺たちに栄光なる勝利を!

     瞬間、アーチャーの膨大なまでの魔力が装填され、さながら神核を有したサーヴァントの如きオーラが渦巻く。
     これは宝具開帳の前触れ────。

    「やるぞランサー! ここが最後の気張り時だ!」

     これは号令ではない、マスターとサーヴァントの双方が共に戦う為の壮大なる大挙である。

    (そうだ、それでいいマスター。無闇に難しく考える必要はない。主の思うように、無策で挑む素人のような突拍子もない挙動の方が、この手の戦いに慣れた者に効く)

     こうして、真の最終決戦の火蓋が切って落とされる。

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