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聖杯大会運営まとめwiki
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”マスター系キャラが魔術関係ない家に生まれてたらどういう職業についたりしているか”ですが……。
例えばクッチーは魔術関係ない世界だったら外科医をやってそうだな、とかそういう感じです
肉体を切ったり開いたり縫ったりするのは『破壊』起源持ちとしては楽しく勤務できそうだし建て乙です。
魔術関係ない家に生まれてたらか…。
少なくともビオランテは役者の道は進んでたし、タララーワは日本へ行ってフィリピンパブ勤務からの太客と国際結婚してたかもしれない。前スレ990
うおおおお!!ジル、ジルが来てくれた!
完っ全に予想してなかったのでただ今バチク.ソに興奮しております
地下水道の一件で縁ができたのも遠い昔のようだ…ちなみにうちの面々ですと魔術関係ない家に生まれてた場合、以下の通りになります
・ニキータ→故郷の内戦という運命が変わらない限り傭兵ないし難民生活ほぼ確定
・ジェイド→裏社会で権力者相手に商売()しながら権力争いを煽ったり煽らなかったり
・黒江→魔術がなければ異常に気付く事もなし。なので学生時代はやや不思議ちゃんの気がある生徒として過ごしつつ、将来的には起源の影響で美術(特に絵画)の道を歩んだりするかも
・加々見→魔術師にならない=本家と分家に分かれてないので本家暮らしのまま神職生活。こっちだと多少真面目になってるかも?
・アクアステラ→欧州における医者の名門となった実家の跡取りとして日々奮闘中。医者として熱心に向き合う姿と腕前が高く評価され、いずれは欧州医療史に名を遺すのでは?と噂されてるとかされてないとか。こっちの世界でもオタク文化に興味を持つが、変に暴走してはおらず真っ当に一ユーザーとして楽しんでる
・マチルダ→世界線が変わっても魔術が絡まないだけで過酷な実家事情に変化はなし。ただしカルデアに流れ着く事がない為、設定通り分家に放逐されてからは何だかんだ彼女なりにたくましく生きている
・ユウキ→例の限界集落で生まれ、普通に育つ。特に混血とかそういった異能もなく、両親もお互い集落内で生まれ育った者同士であり迫害もされない。ただどの道集落自体が過疎化の限界に達しつつあるので、彼女が成人する頃には両親と揃って村を出ていく予定魔術関係ない未来ですと、パッと思いつくのは:
ゲルト→各地を歩く回って持ち前の女運の悪さを発揮。
ブリュンヒルド→引きこもって鍛造生活。崩壊世界の魔法杖職人(神秘なし)ルートへ。
バプロディカ→ちょっとエッチなお姉さん。
浄架→ただの甘党シスター。
句音→母親になりたいけど未成年では法という壁を破れず自堕落ルート。即興で考えた銀髪キャラ。
シルヴァリン・アルゴスペル(Silvallyn Argospell)
身長:169cm 体重:55kg
スリーサイズ:B84W56H88(Dカップ)
好きな物:敬虔な信徒、シルバーアクセサリー
苦手な物:分かり合えない人
所属:聖堂教会(第八秘蹟会)
魔術系統:洗礼詠唱、第八秘蹟
魔術回路:質:C/量:C 編成:正常
【解説】
聖堂教会に所属する代行者のシスター。第八秘蹟会に在籍しており、異端と深く関わる都合により各地に飛び回っている。
【人物】
銀髪銀眼で、氷のような冷ややか顔つきの女性。
職務に忠実且つ信仰心の篤い聖職者。しかし決して堅物という訳ではなく、新しいものは取り入れるべきという柔軟な考え方を持つ。
聖堂教会という組織ではなく「神の子」に忠節を誓っており、「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」という一節に倣って異教であっても排斥するにではなく、その思想に一定の理解を示し、受け入れて一つになるべきと考えている。
シルバーアクセサリー愛好家で、ロザリオや指輪など至る所に銀の装飾品を身につけている。>>8
【能力】
優等生で優秀であるが故に、代行者としても真っ当に強い。格上には勝てずとも、負けはしないし死なない戦い方をする。
灰錠、黒鍵どちらも使用し、その熟練度も高い。また表向きは異端とされている魔術を修めており、洗礼詠唱も使えるが、代行者として戦う際は魔術の方を頻繁に使う。
同僚に黒鍵を六本持っている姿を見られたら「◯ルヴァリン」と揶揄される事も。
・天名言唱
天使の名前を唱える事で、名に準えられた神秘を一時的に行使する。簡易的な術式なので、洗礼詠唱のような爆発的な効果は望めない。不足を補うための小手先の技。灰錠や黒鍵と併用して使う。
◼︎神の腕(ゼルエル)
腕部を限定とした筋力と技巧を上昇させる。
◼︎神の速さ(カフジエル)
移動速度を上昇させる。
◼︎神の影(べザリエル)
この術式を黒鍵に組み込み、相手に影に突き刺す事で動きを封じ込めることができる。影縫い。
◼︎突き刺す神(トゥトレシエル)
この術式を使用した状態で黒鍵を投擲すると貫通力が上昇する。
◼︎神は私の番人(ゾフィエル)
黒鍵を四方に突き刺し、結界を展開する。自陣防御結界としても、相手を閉じ込めて炎に包む結界としても使える。創作欲をお手軽に発散する方法
絵を描きましょう!(クッソバカデカ声)>>15
>創作の人任せは嫌
いやいや、そこの感覚は別に普通だと思います
自分も「AI導入してんの?じゃあルナティックも代筆して貰えばいいじゃん」
って言われたら断固としてNOですし。
少なくとも聖杯大会系創作においてはプロット練り込み、キャラクター磨き上げ、辺りの壁打ち相手、編集者やアドバイザー的な補助役としての運用が基本です。
あくまで筆者は私!表に出さないネタ……ナチス聖杯戦争のネタはありますね。ただ、この世界線を作ろうにも、ダーニックをどうやって始末すればいいのか分からなくて頓挫していますが。
>>21
ああ、ありですね。それ+聖堂教会の「あれナチスとダーニックの手に渡ったらやばいのでは?」という考えによる追撃と、ファルデウス君家のご先祖様の最後っ屁(アサシン)が何故かダーニックにだけ当たってナチスは棚ぼたで大聖杯ゲット……。>>9
>同僚に黒鍵を六本持っている姿を見られたら「◯ルヴァリン」と揶揄される事も
黒鍵使用者の大半にぶっ刺さりそうな言葉!
実際シエル先輩とか言峰神父みたいに、原作でもそういう使い方してる人たち多い……多くないです?
>>11
ありがとうございますありがとうございます
そう言ってもらえるとこちらも生み出した甲斐があるというものです
そしてお手軽な創作欲の発散方法ですか…
自分が思いつくのだと、SSの内容をもっとお手軽な感じに書くとかですかね
人物とか状況描写を必要最低限にして、主に登場人物の台詞回しを中心に書き進めていく感じです
これだとその都度状況を細かく説明しなくてよくなりますし、文字数もだいぶ抑えられるので一挙に完結する事もできるかと
まあこの手法思いついたのが別掲示板サイトでの二次創作という、ある意味身も蓋もない裏事情があったりすのですが…>>30
ようこそ、
ようこそお絵描きの大海へ(両肩ガシッ)side-ジル・セレナード
「私がその命を繋ぎましょう───貴女を、殺してでも」
宣言を終え、錯乱状態にあるルナ・アードゥルへ向けて疾走。二本のメスを挨拶代わりに投擲。
「ちょっ、」
傍らにいたもうひとりの男性───彼の傷も後々診なければならない───の声を一旦無視する。優先順位を間違えてはならない。
投げたメスは、振るった光の槍に落とされた。充分。次の、いやこの一歩で間合いに入った。
「ハッ、ハァッ!」
今まで一度も見せたことの表情、笑い声でルナらしからぬルナが槍を振る。
いつかの人狼の事件で彼女の魔術も見ている。こんな槍を持ち出した姿はまるで知らない。知っていれば絶対に止めていた。
なぜなら、肉の焦げる臭いがする。
ルナの手元から。いや槍を握る、手そのものが焦げている。あの光の槍は、自他の区別を置かずにすべてを灼くのだろう。>>33
すなわちこれは、明確な自傷行為にあたる。自分自身の意思で死へと近づいているのだ。
ふざけるな。死にたいのか。ふざけやがって。殺.してやる。死なせるものか。死なせないから、殺.してやるのだ。
「いいな! 死ぬ気でくるか!?」
「いいえ。生かすのです」
半ば捨て身で肉薄していく、新たに取り出したメスをまっすぐに突き出した。これは槍に弾かれる。
投擲。刺突。弾かれようとも都度くりかえす。
足を止めてはならない。この身が苦痛にひるめば、ひるむだけ目の前の誰かが死へと近づいていく。
あってはならない。
許してはおけない。
想うほどに躊躇は消し飛んでいく。幾重にも別たれた光をかきわけて、ついに私の一歩は届いた。
メスの投擲とほぼ同時の一刺しだった。被せるように放ったそれは見事槍の防御をすり抜けた。
肩と鎖骨の中間、つまり肩鎖関節を狙った一刀はキレイに突き刺さる。
払いのけるような一振りをかわして、距離を置く。結果的にはこちらも片腕に大きな火傷と裂傷を負った感覚があるが……
「ン……この傷ひとつで、上がらんのか」>>34
向こうも同じのようだ。
ルナは口調こそ別人のようだが、状態・状況の認識能力は落ちていないようだ。メスが刺さって脱力した片腕をむしろ興味深そうに眺める。
由来はわからないが彼女は吸血種の特性を持つ。聖別された刃は特に効くはずだ。事実、脱力した腕が動き出そうとする気配はない。
お互いに腕一本なら五分五分だ。いや槍という長モノを扱う以上、有利はこちらに傾く。
「そして、全身を制圧する」
「いいのか? 人間の身体って脆いんだぜ?」
「ご安心を。必ず治します。治すために壊します。貴女は、ただ治療を受け入れてください」
「あァそうだ、そうだったな。貴様は人の尺度でイカレていたな」
「記憶が戻りましたか? それは良い兆候です」
「そういうところだろうよ」
不意に、そして脈絡なく。光の槍がくるりと回った。
ただそれだけで少女は自らの肩から先を、斬り飛ばしてみせた。
「───」
それもまた、許せない行為のひとつ。
人の言葉を忘れてなお余る怒りを覚える。>>35
血が冷えた。沸騰した頭がすべての些事を忘れた。自分のなかでなにかの糸が切れるという確信があった。
だが……止まった。
怒りを押しとどめたのは、ほんのささいな疑問だった。
「───……血が?」
本来あるべきアカイロが見えない。傷口の大きさに見合うだけの出血がない。彼女の肩を覆う色彩は赤ではなく、白。
白い灯火だった。
朝焼けのような光が彼女の肩を覆い……ちかちかと瞬いて消えた。
それだけだ。ほんのそれだけで、傷は最初から無かったとでも言うように、別たれた腕が何食わぬ顔で生えている。
見事なものだ。いやさ異様と言うべきか。
いかに神秘とされる力でも限度はある。魔術と呼ばれる力も例外ではなく、いくつもの制約・限界があるはずだ。これらを踏み倒そうと思えば、相応の代償を支払うか時間をかけねばならない。
だと言うのに……、
「……治癒の魔術ですか? いつかの下水道から、ずいぶんと上達したようで」
「さてどうだろうな……ま、結果は同じさ。だから安心って言葉をそっくり返すぜ、俺様はその程度じゃ殺.せないからな」
「よろしい。それでも、殺してみせましょう」>>36
腕一本分の有利がそのまま不利に転じた。だからなんだ? やることは変わらない。
刃は通った、ならば良し。まずは四肢を削ぐことからはじめよう。
そう思い、残った腕でメスを握りしめたとき、
「ストップ! ストッーーープ!」
見知らぬ男性が私と彼女の間に割って入ってきた。
side-間久部理仁
オレ、なにやってんだろうなぁ。
弟に、会いに来ただけのはずだったのになぁ。
それがどうして、やたら滅多にアブナイ初対面の人を止めることになってんのかなぁ??
「治療の邪魔です。おどきなさい」
「いいから止まれ、一旦オレの話聞いてくれ」
「そのような時間はありません。彼女は予断を許さぬ状態です。一刻も早く救わねば」>>37
「助ける気ならそれ置け! まず女の子に刃物なんか向けるな!」
「見知らぬ貴方、救う命に男女の区別などありはしないのですよ」
「そうだろうけど! そうじゃなくてさぁ!」
なんでこんな話通じないヤツばっかなんだよ!!
ちくしょう間近で話してみても狂った殺人鬼じゃないと言い切れない。でも殺意とか感じないし……マジでなんなんだよ。
「悪いけどあの子は弟の友達なんだ。切り刻まれたら困る」
「私にとっても彼女は友人です。なので殺さねばならない」
「……今更だけどあんたシスターだよな? そういうコスプレとかじゃなくて」
「教会の代行者です。正式に認められた修道者ですよ」
「ああ……うん。いいや、もう突っ込まん」
教会って聖堂教会のことだよな、とか。
それ時計塔ともバッチバチな組織じゃないっけ、とか。
じゃあ代行者のあんたと魔術師のルナが友達ってどういうことなんだよ、とか。
聞きたいことが一気にあふれてきたが、もうそれどころじゃない。オレは無理矢理にでも代行者サンの隣に並び立って、なんとか2対1の構図を作る。>>38
「間久部理仁だ。本気で助けるつもりなら手伝ってくれ」
「ふむ……現地の協力者に感謝としておきましょう。ジル・セレナードです。ジルとだけお呼びください」
「オーケー。ならとっととアイツを、」
「───悪いが、ここまでだ」
「……は?」
なんだ。
光が。
トラウィスの槍に集まっていく。熱く、白く、煌々と猛る炎が、集まっていって……構えを取った。
槍を持つ手を後ろにもっていき、逆の手を前に突きだした。オリンピックで見たような、投げ槍にも似たポーズ。
まずいという直感がある。ジルさんも同様の危機感を覚えて動く。
だが開いた距離は一歩や二歩で埋められるものじゃなかった。それでも何もしないよりマシと自分を叱咤して、その一歩だけでも詰める。
オレたちに対する反応はなく。
声だけが聞こえた。
目にしみる朝焼けのような、澄んだ声だった。>>39
「我は、神を墜とす神である。
我は、死に冷える神である。
我は、星を明かす神である。
よって知るがいい。
是なるは天意に仇なす一刺しなれば───我は、太陽(かみ)を撃ち墜とす明星なり」
怪獣映画かなにかで見たようなワンシーンだった。
光が集っていく。
音が間延びしていく。
スローモーションになっていく世界で、一瞬後に迎える絶望を想像しながら手に汗にぎる。
今はちょうど……なんだろうか。ああ、怪獣を口を開いた瞬間になるのかな。
ならオレはこのあとモブみたいに灼かれるのか。
それとも、オレは、
オレは───
「リッ、ィィィィィイイイイイッッ!!」
───オレのことなんかお構いなしに、動く植物みたいなバケモンが、二体目の怪獣が現れた。
ためらいなく向けられた白い光が、バケモンにぶつかってまき散らされて、>>41
この肉体を動かせない理由はいくらでも挙げられるが、つまるところ、私の無力に原因がある。先祖代々と子々孫々に顔向け出来ない恥である。
結局のところ"逆さ花"の成長は止まらなかった。モートン・ドラモンドおよびダグラス・ブリージスの両名の攻撃力を大きく上回るだけの、回復力を獲得した。
途中で方向転換して封印を試みるも時すでに遅く。不完全な封印を一蹴して"逆さ花"はまたも花びらを車輪のようにして移動していった。
(ダグラスは……どうなった……?)
視界が昏い。
眼が潰されてはなかろうが、あちこちの感覚がひどく鈍い。まどろみに落ちる寸前にも似た感覚を覚えるが、あるいは今まさに意識を手放そうとしているのか。
それでもと必死に部下の姿を探す。見つからない。
(……この目が届かぬ場所で果てるなど許さんぞ……!)
怒りすらも声にならない。不甲斐なさに身が震えた。
不幸中の幸いは、アレに自分たちを仕留めるという発想がなかったことだ。
アルビオンから湧き出た怪物だからと必要以上に身構えていたが、結局のところ"逆さ花"も大枠で見れば花の一種でしかないようだった。魔力という魔力を使い果たして出がらしとなった自分たちに価値などないのだろう、より上質な栄養を求めて移動したと見える。
つまり、どうあれ、まだ生きている。
まだ動ける身体があり、そしてまだ仕事は残っている。
(……ならば、立たねば)>>42
そうだ立つのだ。立たねばならない。
私はモートン・ドラモンド。
ドラモンドの名を背負った魔術師。その名を託した魔術師。とうにその名を無くした、私は、名無しの教室の、講師なのだ。
ここで倒れたままでいることは貴族の名折れであり、また庶民どもに対する敗北である。
できることなら今すぐにでも手放してやりたい。高貴なる私が庶民のひとりひとりを導いてやるなどまるで貴族らしくない。
だがしかし庶民のひとりすら導けぬ。それもまた貴族らしくない。
そら……そら、今も聞こえるだろう。庶民どもの声がする。私が聞いてやらねばならない、私たちの生徒の声を聞かねば───
『レディーーーー…………ス、アンッドッ!! ジェントルメェーーーーーンッッッ!!!』
「……は?」
なに、なんだ……? 思っていたのと……違う声がするな……?>>51
ちょっとでも楽しいと思えてくださったなら、それが何よりの発見なんですわ〜(何目線)余所でやってる創作が脱稿!!!やったぜ。
なのでGW中はルナティックを進めて、鯖鱒情報もブラッシュアップするぞ!!!(セルフ追い込み)。具体的には塵塚怪王の疑似皇帝特権を削除して別の強みに変えたり!
ダラケずに頑張っていきたい……。いっぱい書き直してました
レイド間に合いませんでした
これ投下したらイベントいっぱい走るんだぁ…いくぞー!!side-シウン・ヴィルクレツィア
「ひっ、ひぃぁああ……!」
すっかりおびえきった声を発しながら"逃亡者"が逃げていく。
"走る"と"転がる"の中間にありそうな、バタついた動作で私から少しでも距離を取ろうともがく。
そんな私の足下には、先ほど逃亡者が頼りにしていた牧羊犬が転がっている。
……べつに直接蹴ったり殴ったりしたわけじゃない。これは私と密着して、そのまま勝手にこうなった。それだけの話だ。
「なんでだ、なんでだよぅ、霊墓の霊障をかき集めた、とっておきの呪毒なんだぞ、なんで生きてんだよあの女ぁ……!」
おびえながらも恨みがましい声。
なんでと言われても、そういう体質だからしょうがない───と言ったら、また汚い声を上げそうだ。黙っていよう。
さておき奥の手もあっけなく尽きたらしい。まだ羊の群れは残ってるが、ここからではどう頑張っても間に合うものでもない。
あとは油断なく詰ませる。それでこの逃亡者の対処は終わる。
のに、>>59
『レディーーーー…………ス、アンッドッ!! ジェントルメェーーーーーンッッッ!!!』
「なっ……」
降ってわいた声と同期するように、眼前の視界が場違いな土壁に覆われた。
自然、足が止まる。 視界がふさがれてしまえば逃亡者の姿も見失う。
「ちっ」
これもまたごく自然に舌打ちがこぼれた。なんて邪魔が入ったのかと嘆息する間にも、あたりの風景が変わっていく。
置き換えられていく。
やかましいにもほどがある笑い声と連鎖するように、世界が変わっていく。
伝統あるロンドンの町並み。石畳と煉瓦造りの壁から連なる風景が、野性味あふれる土石混じりのそれに変わっていく。
苔むしていて規則性が見えづらい。岩と、土と、どこか神秘を思わせる妖しい光に満ちた世界。
どこかの洞窟のような……あるいはまるで"地下迷宮"のような。
「これは、いや、違う? ……ニセモノ?」
よくできているが、よく見れば違うとわかる。これは霊墓アルビオンを模して描いた超巨大な"背景"だ。>>60
なんのことはない。ごく初歩的な置換魔術と同様の現象だ。
あらかじめて用意していた素材を、すでにそこにあった物質の表面だけ置き換える。
ぺたぺたと切り貼りしているに過ぎない。空間も座標もなにひとつ変じていない。よくできているだけのハリボテでしかない。
一方で感じられる規模だけは莫大と見える。おそらくは同様の仕掛けがこの街一帯に生じているはずだ。そのすべてを使って形だけの迷宮を再現しようとしている。
いわばこれは───『なんちゃって霊墓アルビオン』とでも呼ぶべきイミテーションだ。
なんて意味のない魔術。大がかりな仕掛けに反して得るものはない。こんなものは文化祭の出し物と同レベルのレクリエーション以上のものにはならない。
これをやった人物に問い詰めたところで、出来心だの遊び心だのとうろんな返事しかしないだろう。
そんな人物は、名無しの教室においてひとりしかいない。
脳裏に浮かべた顔が、声が、これもやはり事前に仕込んでいたのだろうスピーカーから垂れ流される。
『ごきげん麗しゅう我が同輩たち!
この芸術魂あふるる贈り物に!
この俺の遠大なる仕込みに!
エンデ・エルフィリーデ・リヒテンシュタインのサプライズに! 驚いていただけたかなァ!!?』
「あんの道楽王子……!」>>61
side-間久部理仁
……。
……………。
……………………なにが、どうなったんだろう。
もうなにがなんだかわからなくなってきた。
弟とどんな関係かもわからんルナが、これまたよくわからんトラウィスとか名乗って暴れて、気づけばオレがそれを止めることになっていて、かと思えばやたらと物騒なシスターのジルさんがオレより先に突っ込んで、それで、
「生きていますか?」
絶対に聞き覚えのある声。かるくトラウマになりかけたこの声は……、
「…………め、メレク!? メレクかっ!?」
「なんだ、元気そうですね」
「ほ、本物? いやさっきオレ、死にかけて、」
「先の熱線なら僕が防ぎました。上物のエメラルドをひとつ丸々消費してしまいましたが」>>62
「な、なんでここに、」
「誰かさんが迷子になったので迎えに来たんです。おかげで予定していた待ち合わせ時間はとっくに過ぎているんですよ」
「わ、ワリ……じゃなくて!」
どうしよう、どこから何を言えばいいんだ。
ルナに会ったところからか? 知り合いらしいしトラウィスのことから話したほうが……トラウィスのことも知ってたら時間の無駄か? つーかこっちはこっちで聞きたいこといっぱいあるし、あのルナとどういう関係なのか聞いておき……聞いたら怒るか? 関係自体秘密にしてるすげぇ地雷ってこともあるんじゃ、てかまず何が起こったのかを、
「無駄な思考を回す余裕があるなら、周囲に目を向けてみてはいかがです?」
「今やろうとしてたんだよ!!」
逆ギレみたいになりながら周囲を見渡す、と───……
「……は?」
自分でもどうかと思うほど、すっとんきょうで間の抜けた声が出た。
けれど仕方ないとも思う。目が覚めて異世界にいたら誰だってこうなるだろう。
「どこだよここ!?」>>63
洞窟だった。
一言で表すとそうなってしまう。右から左からせり上がった岩壁が、持ち上げた視線の先で天上の形をとっている。土と砂利にまみれたそれは至るところが苔むして、人の手が届かない年月を想起させた。ここに白骨とさびた剣でも突き立てればRPGのダンジョンにしか見えないだろう。
もちろんそんなはずがない。オレはついさっきまでロンドンにいたんだぞ。
「そう悩まずとも現在地は変わっていませんよ」
「なんでそう落ち着いているんだお前は!?」
「事情は把握しましたし、先ほどから目立ちたがりの"放送"があったものでして」
「はぁ? いや……え? 放送??」
「いいから黙って聞いてください。今あちらの通りをルピア嬢が確保しています。フェーブスの車もあるのでさっさとここから離れるように」
「まってルピアっつった? いやそりゃフェーブスはいるだろうけどルピアってあのルピア? マジ? なんで??」
「だから黙って聞けと───」
「リィィィィィィイイイイッッッ!!!」
オレたちの会話を、バケモノがかき消した。
さっき割り込んできた"花"だ。
「アレもまだ生きてんのかよ!」>>64
生きているどころじゃない。
一周まわってギャグみたいな光景だ。
花びらにあたる部分をぐるんぐるん回転させて爆走してる花がいる。あたりの壁や床が洞窟っぽくなった今じゃ比較できるものもないが、日本で見た4~5階建ての建物くらいの高さはありそうだ。つまりマジでデカい花。
……さっきまで、そんな大きさはなかったのに。
いやそれ以前の話。あのタイミングで割りこんできたせいで、トラウィスの熱線が直撃していたはずだ。オレから見ても半分以上は消し飛んでいて、生きているだけで奇跡みたいな状態だったのに。
なんで生きているんだ。なんで元気にウエヨコナナメに伸ばした触手をぶんぶん振り回しているんだ。
『───お集まりいただいた皆様には、』
たたみかけるような知らない声。
だめだ。もうオレにはわけがわからない。
side-アクアステラ=リキッドクラウン
現在地は考古学科・名無しの教室……その準備室だ。
俺は、いや俺たち3人は、この一室を乗っ取って周囲一帯を巻き込んだ大魔術に没頭していた。背中を預けた同志エンデ・エルフィリーデ・リヒテンシュタインは、イタズラが成功した子供のようにはしゃぎまくっている。
俺もまったく同じ気持ちだ。>>65
「客入りはどうだ!?」
「大盛り上がりさ! 主に驚愕と困惑と俺への文句で!」
「迷宮に対してのクレームは!?」
「無論ゼロだとも! 紳士淑女の皆様もまことの美を前にしては閉口するしかないらしい!」
「ヨシ!!! だが君のセンスはたまに疑わしいがね!」
「なんだって!? 聞こえなかったなァ!?」
背を向け合って口々に言いながらも、意識は手元に集中している。
床に大きく広げた"それ"は地図状にこしらえた『なんちゃって霊墓アルビオン』の操作盤だ。通路の配置、術式のほころび、点在する動植物の位置、そしてもっとも重要な客(プレイヤー)の表示までなんでも出来る。
よりゲームらしくするため<ふりだしにもどる>や<プレイヤー同士の位置交換>などの機能も盛り込みたかったが……空間転移は魔法に限りなく近いとされる天上の御業だ。冠になんちゃって、とついた迷宮モドキには贅沢が過ぎた。次の機会があるならば是非とも天上の域に挑戦してみたい。
おおっと閑話休題。
ともあれこの準備室にいる限り、俺たちは盤上を見下ろすゲームマスターというわけだ。物理的に干渉することは難しいが、現場の情報はすべてここから把握し、共有できる。
エンデの担当は矢面に立っての司会進行役と、迷宮の操作・調整。
そしてこの俺、アクアステラ=リキッドクラウンの担当は……ある意味でダンジョンにおける最高の花形。プレイヤーたちの乗り越えるべき壁。
そう、つまり、モンスター&トラップである。
わずかな魔力を操作盤に込める。ここからでは認識できないが、手塩にかけて仕込んだアレやコレやが起動したはずだ。
このアクアステラ=リキッドクラウンが主とする魔術は液体魔術だ。水の気を扱う以上、使える範囲は幅広く、その気になればなんだってできるだろう。そのなんでもできる特性を真っ向から無視して作り上げたのが、服だけ溶かす液体もとい『愚者の王水』である。今回、俺が手がけたトラップにはすべてこの『愚者の王水』を用いている。……ん? あぁ誤解しないでくれ、あくまで迷宮の流儀に則って彩りを添えたいだけだ、それだけさ、他意はないとも。当然じゃあないか。>>66
さて。
しかし。
トラップというものは基本的に動かない。やはり今回のようなフィールドでは"モンスター"が輝きやすい。
「さぁ起きてくれ。俺の大事な大事な……作品たち」
街中にあらかじめ配置しておいたこれはエンデとの合作だ。
使い魔に特化した液体魔術で作成したスライムに、エンデが描いた"絵"を被せる。要は迷宮を形作るハリボテと仕組みは同じだ。
形だけの見せかけ。戦闘力は無いも同然。ただの液体なので叩けば滴に変じて終わる。
だがそれゆえに形状は無限大。絵描きの手により色彩も無限大。元が液体だからこそ、どんなモンスターだって演出してみせる。
「見てくれデセフィオくんとやら。これから俺とエンデの合作が街を闊歩する。よぉく見た上での感想を聞きたい。いっぱい聞きたい」
「あぁ、いや、うん。その前にワケもわからずここまで引っ張ってこられた理由を説明してほしいのだが」
「共犯(ぎせい)は多い方がいいというエンデの提案だ。なぜってこのあと必ず怒られるだろうからね」
「よし僕は逃げる。ここから出してくれ。いや勝手に出る!」
「ははは、やめておくといい。どうやら今この街は、俺たちの迷宮と無関係にピンチらしい」
「はぁ? それはどういう……」
「見ればわかるさ。さぁ覚悟を決めて一緒に見守っていこうぜ?」>>68
side-メレク・アルマソフィア
「あぁもったいない。彼女がいれば目を輝かせていたでしょうに」
side-間久部理仁
「いやなんでお前こんな状況に慣れてんの?」
side-トラウィスカルパンテクートリ
「??? …………なに、なんなの? 今どういう状況?」
side-ダグラス・ブリージス
「うぉおおおお!? 洞窟が!? 霊墓がせりあがってきた!? "泡"だけでないというのか!? なぜエルフィリーデの声が響いてくるのだぁぁああ!!?!?」
side-エンデ・エルフィリーデ・リヒテンシュタイン
「さて……お集まりの諸君には、何が起きているか、その説明がほしいところだろう?」
「当たり前だク.ソ王子! 状況見て物言えコラ!」「ルナちゃんが大変なんですよ!?」「なに? ねぇなんなの? なんの声なのこれぇ」「おぉぉぅぅぁあああ服がぁ! 謎粘液で服がぁぁああああ!!!」「やっと着いた。今からそっち行くわね」「……(放心)」「緊張感ってものがないの?」「なんでもいいから教えてくれ!」「空気を読むってことを知らないのかな?」「後で覚えておけ、とそれだけ言っておきます」>>72
これ見たお兄ちゃんが「えっマジ?」ってなっててくれると私がうれしい
デスゲームはバースデー用のプレゼントです。でしたしばらくドット絵を描くことないかなと思っていたけれど、トモコレくんが「描け」って言うのでドット打ってます
逃げられない
ハイ投下します。今回は状況整理回~『───お集まりいただいた皆様には……デスゲームに参加してもらうッ!!!』
side-アロッコ
一体何を言っているんだコイツは?
突如、様相を変えた周囲の景色。石造りの街並みから一転した土と岩の洞窟に。
それはどこか見覚えがあるようで……よく見たら細かい違和感がひたすら募ってくる、そんな迷宮モドキに変じていた。
「ハッ、ハッ、ハァッ……!」
なぜか、なんてわかるわけもない。
乱れた呼吸にもつれる足。血が巡れど巡れど酸素がまるで足りない脳みそに、わかる事柄はいくらもない。
ただ偶然にも追っ手から───もう二度と顔を見たくない化物みたいな女───は、振り切れた。こればかりは幸運と言っていい。
あとはこの迷宮モドキを対処するか、あるいは無視すればいい。具体的にはどうするべきか。
罠か、幻惑か、そう警戒したところに降りてくる……声。
ぴんと張った品のある声が、120%ふざけまくってることでいろいろ台無しになった声が迷宮モドキのあちこちから聞こえてくる。>>78
『現在、ロクスロート全域には俺たちが事前に用意した結界が張られている。その名も……なんちゃって霊墓アルビオン』
『あくまでフェイクだが……本来なら秘骸解剖局を通さなければ入れない秘境を、自分たちなりに再現したのさ。かの地で冒険したがっていた誰かさんのためにね』
『そしてここからが本番だ。ただのピクニックじゃ面白みがない、険しきを冒さねば冒険とは呼べない、よって俺の筋書きに則ったデスゲームに参加してもらう!! 言うなれば体験型プレゼントというわけなのだよハッピー・バースデイ!!』
ナメてんのかコイツ。名前もよく聞き取れなかったコイツを殴ってやりたい。
そもそも名付けがふざけすぎだろう。『なんちゃって霊墓アルビオン』だぁ? 俺たちが地獄を見たあの場所はこんなものじゃないぞ。
まず通路が均等すぎるし直線すぎる。ヒトの意思が見え隠れする道順のなんと理解しやすいことか。このザマなら専任の地図役を用意しなくても、片手間で魔術回路に書き込むだけで一生迷わない。こんなものが"迷宮"であってたまるか。
それになんだこのやたらと光る苔、こんなモノはあの迷宮にないぞにわか野郎め。いや似たような光源はたしかに迷宮にもあるがアレは群生だし瞬いてるしそもそも色が違うというか不定形なんだぞちゃんと勉強しろそれでも頭でっかちな地上の魔術師か? ああん? 聞きかじりの知識だけでバカにしてんじゃねぇぞちくしょうめが。
この杜撰さでゲームだと?
マジでいい加減にしねぇとコイツ……
『……と、思っていたが、やめました』
やめたんだ。
』>>79
『先も言ったが俺たちの迷宮は完全にフェイク、イミテーションだ。実際に霊墓アルビオンを知る人間が見れば文句の百も千も出ることだろう』
『そんなニセモノの中になぜかホンモノが紛れている。現在俺たちが観測している範囲で、見覚えのない怪物がわんさといる。原因も事情も知らんが、ここは冒険の舞台の真っ只中というわけだ』
『主役も生徒も講師も部外者も。俺たちの結界からはすべて見えている。しかるべき人間をしかるべき場所までたどりつけるよう誘導する。合理的な魔術師諸君が、俺の言葉を信じてくれることを期待する』
『ああ、それと。地下からの"逃亡者"さんに忠告だ』
……は?
『走って車道に飛び出すのはやめたほうがいい。危ないからね』
何を言って……
「……い!?」>>80
side-セシボン・トゥー・ザ・パラチンタ
脇道から小汚えボロをまとった誰かが飛び出してくるのを、ガラス越しに認める。
ブレーキはかけない。
アクセルを踏みこんだ。
愛車のキッチンカーがうなりをあげて前へ前へと進む。それだけで、当たり前のように交通事故が起きた。
人身事故確定だ。このまま走り去れば俺はひき逃げ犯になるだろう。
だからってわけじゃないが、車は止めた。
「どうだ、死んだか?」
「魔術師があの程度で? まさか」
屋根から冷ややかな声。わかりきったことを聞くなと言外に語ってるようだ。
ンなことはわかってる。エンデのヤツが言っていた通りなら、コイツはさっきまでシウン・ヴィルクレツィアとやりあってた魔術師にして逃亡者だ。
曲がりなりにも地下から上がってきたっつう魔術師が、車にひかれてオダブツなんざギャグにもならねぇ。
「く、ぅ……ァ……!」>>81
それを裏付けるようなうめき声。なるほどたしかにそうだ、見る限りじゃぜんぜん元気じゃねぇか。
立ち上がる足には震えよどみも無し。あの様子なら戦るも逃げるも即座だろう。
んじゃ、まァ、やるか。
『さぁ、さぁさぁさぁ! やっておしまいよクラッフ&セシボン! 野蛮な決闘形式なら、お前たちが教室ツートップだろう!?』
「うるせぇウエメセ野郎。後で覚悟しとけよ」
「何もなければシウンが終わらせてたのに。余計な仕事をふやしてくれる」
余計な仕事というのがまさにそのまんまの意味で。
ここは俺のキッチンカーが通れるような大通り。迷宮風になった今では、迷宮に似合いのデケェ怪物が待ち構えていそうな縦長の空間になっている。
となりゃあ……羊の群れくらいなら、余裕で暴れられるだろう。
裏付けるように、どかどかと喧しい足音があちこちから響いてくる。さっきまでキッチンカーでなんとか撒いてきたキメラどもだ。あの逃亡者が飼い主ならぬ調教師というなら、集まってきてもおかしくはない。
「……ハァ、せっかくバラけさせたのに、また一カ所に集めんのか」
「役割分担だとさっき確認したでしょう? あちらに余計な変数が入らぬように、」
「わーってるよ囮だろ?! それでもあるだろ? もったいないってよ」
「そんなこと言い出したら自分だって弾の一発一発が……いやまず魔術師が戦闘をすること自体が……」>>82
『…………うん! ごめん! 応援してるぞ! がんばえー!』
「だってよ」
「何の足しにもなりませんよ」
ボヤきながらもフロースはマスケット銃に銃弾をこめる手を止めない。
いつだったか俺にも向けられたそれが、今度は集まりつつあるキメラすべてに向けられると思うと不憫でならない。
一方の俺も"映写機"を取り出して構える。やっと愛車のハンドルから手を離せたんだ。これで思いっきり暴れられる。
血が騒いじまって抑えるのも一苦労だ。
「……本当に理解してます? あくまで時間稼ぎですよ?」
「だとしてもやるこたぁ同じだ! ここに集まってくる全部を───倒しちまってもいいんだろォ!?」
side-ジル・セレナード
「ミスター、ご無事でしたか」
すっかり様変わりしたロクスロートに、先ほどとそう変わらぬ青年……理仁の姿を見つける。
既知の仲らしい少年も増えているが今は問題にしていられない。状況はよりいっそう混沌としてきているのだから。>>83
「ジル……さん! 今これどうなってんだ!?」
「落ち着いて、そして冷静に。私たちのやることは変わっていません」
周囲のなんちゃって迷宮は無視していい。羊の群れだの『調教師』だのという話もあったが私たちには関係ない。
今、すべきことは、
「ルナの救助が最優先。私たちの共通事項はそれだけでしょう?」
「そう、だけど! こんな訳わかんねぇときになんだってジルもそうケロッとしてんだ!?」
「ケロッと……?」
「してるだろ!? 今!!」
「最優先事項以外は棚上げにしているのです」
「現実逃避ってコト!?」
「神霊トラウィスカルパンテクートリを自称していたそうですね?」
ふいに少年が口をはさんでくる。
顔に覚えはないが、その声はいつかの下水道で聞いたことがあった。この青年と、そしてルナの双方と既知の仲であるのだろう。重畳だ、この状況で友人知人の声かけは大きな助けになる。>>84
「メレクは知ってるのか? ルナと、トラウィスのこと」
「そのときは名乗りませんでしたが……フィンランドの冒険からその気配はありました」
「知ってるなら、とびっきりの対処法とかは───」
「ありません。当時も僕が必死に降しただけですから」
目の前の少年に、必死、という言葉がどうにも当てはまらなかったがそこはそれ。旅の思い出に口を挟む暇もない。
似たような思いはあったのだろう、少年はすぐに代案を出してきた。
「なので、今回も僕が力尽くで止めます」
「はぁ??」
「なんですか」
「止めるって言ったのか? お前自身が? ……メレク・アルマソフィアが?」
「含みを持たせないでください。何が言いたいんですか?」
「そういうキャラじゃなかったろ、オレなりフェーブスなりを矢面に立たせて自分は盤面見てるってヤツだった。今回会うのだってほとんどフェーブス越しに計画走らせてた。なんでコレだけ人に任せない?」
「いちいち人をはさんでいては彼女に追いつけないのですよ」
それだけ答えて、話は終わりだというように少年はきびすを返した。魔力探知にでも優れているのか、すでに行き先の検討はつけているようだった。
少年が目を向けた───その方向から"花"は現れた。
車輪じみた花弁をぎゃりぎゃりと唸らせて地面をえぐる。"花"の通った痕だけなんちゃって迷宮の外装がはがれ、元のロクスロートの石畳が露出していた。>>85
「リィリィリィリィィィッッッッィィィィイ!!!」
ち、と思わず出てきた舌打ちが、3人のうち誰が発したものかはわからなかった。
気持ちだけは同じだったのだろう。それを示すように足が前に出る。
「やることはわかりやすくなりましたね」
「……また面倒事が増えて……」
「おいメレク、お前が何言ってもオレは最後までやるからな」
「ルピア嬢が『ムカついた』と言っていたとしても?」
「ぅ…………。い、いや、やる! ルナもトラウィスもほっとけないんだよ!」
「まぁ、それは同意しますが」
ひとまずの合意は得られたようだ。兄弟喧嘩未満のなにかを見守った甲斐はある。今はなによりも人手がほしい。
目の前の植物の駆除。後に捜索と鎮圧。やることは山積みなのだ。
アレの標的に未だ私たちは入っていないらしい。右往左往しながらその巨体をふりまわす。
「お二方、どうぞご安全に。無茶を通して二次被害が出るようであれば、私がすべて片付けます」
「……」
「…………ハイ」>>86
side-ライカ・サオトメ
───人身事故が起きる数分前。
僕とヨモの2人はキッチンカーを飛び出していた。
エンジン音を轟かせてゆれる車内から、なお負けぬ跳躍音をともなって2人分の重量が外へ飛び出す。
なんなく着地。走行中の車から人を抱えて飛び出すくらいの行為は、魔術師ならわけもない……なんて、ヨモの背中でおんぶにだっこの僕じゃ説得力はないけれど。
「ごめんね、背負ってもらって」
「い、いえ、『強化』だけが取り柄なので……それより、走りますから」
「あぁ飛ばしておくれ」
言われるまでもないらしい。ヨモの『強化』された下肢は弾丸じみた勢いで加速した。
今や岩と土にしか見えない洞窟然とした道を疾駆していく。
先ほどのバカみたいな全体放送の直後、エンデから僕たち"キッチンカー組"に個別で連絡がきた。
要約するとこうだ、>>87
『ルナ嬢が見たことのないテンションで暴れている』
『それを止めようと一般人らしい男性が戦ってる』
『そこに顔見知りらしい代行者が乱入してきた』
『ドラモンド先生を倒した"花"も乱入してきた』
『光って、爆発して、そこから先はわからない』
それを聞いたヨモの表情の悲痛さといったらもう、ね。見ていてかわいそうになるくらいだった。
さておき。現在ロクスロートの問題は霊墓アルビオンから浮かびあがる"泡"と、そこからあふれる怪物群だった。そこにまったくの別軸の『変貌して暴れるルナ』という問題が出てきてしまった。前者と後者に即座に対応していかなきゃならず、だから僕らは二組に分かれた。
前者は撃退と囮係を兼ねてクラッフとセシボンが。後者は僕とヨモが……というかヨモが率先して手を上げたのでフォロー係としてついてきた形だ。それだけ、思うところがあるのだろう。背中越しでもいろんな感情が渦巻いているのが見て取れる。
「っ……」
ヨモは普段からあまり笑わない子ではあるけれど、それにしたって今の思い詰めた様子はそうそう見ない。>>88
どんな言葉をかけるべきか。「きっと大丈夫だよ」「ポジティブに考えよう」「思い詰めちゃ肝心な時に」……ダメだな。この様子じゃ、こんな根拠のうすい言葉たちじゃ、なにを言っても気休め未満になるだけだ。
言うべきか言わないべきか。悩むだけだなんてのもよくないだろうけど……。
それに、重ねて問題になってしまいそうな懸念点がひとつ。
『そう不安そうにするものでないよヘルメくん! どうせアードゥルのヤツなんか……なんか……~~っ、ええい! 早く現場に向かいたまえよ! ハリーハリー!』
なんと、いやさよりにもよってナビ役がデセフィオだ。贅沢は言ってられないけどもっと他になかったのかと言いたくなる。
ああもう、本当に大丈夫なのか?昨日と今日でなんとか進めようと思ってたら発熱して進まなさそう
地道にやるのって大事ね。>>91
今回の件で心労やばいのはぜったいヨモちゃんです
その対象がよく知らん俺様野郎になってるのがまた何ともね…>>98
やっぱり先人の体験談が一番ありがたいですわなぁ…
言われてみると浅いの買った自分が「まだ届かない!?」とか言ってるの余裕で想像つきますもん
買おう、深いのオフトゥンで寝てるだけなのに車酔いみたいになるの謎すぎてこわい…
番外編投下シマースside-『フィーバー・ファーム』
調教師アロッコが使役する羊の群れである。
『フィーバー・ファーム』という名は『牧羊犬』にならんで調教師自ら名付けたものであるが、前者に関してはある一因によって最初から群れの体を成していた。
あえて言うならそれは精神汚染の一種だろう。
特性は狂気の伝播。各個体の恐慌状態が無作為にまき散らされることで成立している。狂気を帯びた個体は、また別の個体に近づいて狂気をともにする。
そこに種や個体数の垣根はなく、精神抵抗を有していない生命はたやすく群れに取り込まれる。
恐るべきことに群れは、そのことごとくが種を分かつ個体同士でありながら、狂気を通して意思の共有を果たしている。個体のひとつひとつはあくまで手足であり……その本質・本体は群れようとする病的な狂気そのものである。
すなわち、群れの正体は霊墓アルビオンのみに確認される"感染症"なのだ。
加えて言えば魔術師や魔術使いに発症するケースも確認されており、現地では『寄生病』といった通称で認知されている。
精神汚染として見れば低ランクなもので、新人が引っかかりやすいトラップであるとも。また「あの程度の群れに呑まれるようじゃここでは生きていけない」という、ふるいの側面も持ち合わせている。事実、一定以上の質を備えた魔術回路があれば、息を吸って吐くだけで無効化できる。
よって……この"感染症"に対して重視するべきは二つ。病そのものへの抵抗力と、先に感染していた群れへの対応力。この二つがなければならない。
つまり───>>101
「全部ノしちまえば話は簡単だろォが」
セシボン・トゥー・ザ・パラチンタが、軽口を叩きながら羊じみた怪物を沈黙させた。どうやらフィルムから取り出したナイフをそのまま眉間に突き入れたらしい。
そこにクラッフ・フロースからの冷ややかな声が返る。
「もう少し、現実的な指標を寄越しなさい」
目も合わせずに右手で握ったマチェットを振るった。すでに取り出したマスケット銃も左手に構え、しかしどちらも疎かにはしない。
2人は背中合わせになりながら、そして足を止めないまま怪物の群れと相対していた。
セシボンが映写機から出した銃器類を、半ば使い捨てるような勢いで火花を撃ちきっていく。そうして攻めに偏ることで生まれるセシボンのスキを、クラッフが的確に埋める。
ケモノの群れに囲まれる危機的状況にあって、2人は過不足ない連携をもって生き残っていた。
だが……
「なにせ、現状のままではそう保たない」
「……まぁ、それはわかるが」
方向性の違いはあれど両者は百戦錬磨といえるだけの経験値がある。その経験が告げるのだ、長続きはしない───と。>>102
「さすがにアルビオン出身ってところか? まったく息切れしてくれる気配がねぇな」
「魔力の流れ方も異質。反応の短さと出力される力がどう見ても釣り合わない」
「……つまり?」
「1+1でなぜか3や4が返ってくるようなものです」
「ズルじゃん?」
「だからそうだと言ってる。……撤退も視野に入れては?」
「それはもうちょい後でいいだろ」
弾を撃ちつくした軽機関銃を用済みとばかりに振りまわし、蛇の尾に向けてぶん投げた。間髪入れずに二丁のサブマシンガンを展開、景気よくバラまいていく。
「つか時間稼ぎはどうなんだよ? 足りてるのか? まだ要るのか?」
「さぁ……後輩たちを信じて、とか言えればいいんだけど」
立ち向かうこと、生き残ること、そういった闘争の経験値は豊富にある2人だったが、敵でも味方でもない他者が介在するとなると話は別だ。正義の味方でもやっていない限り、他者を守るための立ち回りが身につけられるケースはまれであり、2人もまたその例にもれない。
「こういうときのルナさんって、中々止まってくれないからなぁ」
「それ言ったらヘルメも不安だろうよ。アイツ声小さいから時間かかンだよ」>>103
まあサオトメが付いてるならマトモ/マシではあるけど……と意見が一致したところで"羊の群れ"の動きが変わった。入れ替わり立ち替わりを演じる乱戦から、どこか統一した意思による動きを見せる。
群れは大きく二分した。大雑把に囲むのではなく、左右で挟めるように一度距離を取る。
右と左で分かれた群れの、その右のほうから声がした。
「アレだッ!! アレが最後の獲物だッ!! 狩りの時間だぞ『フィーバー・ファーム』ッッ!!」
「…………」「…………」
「あの二匹をすぐに退けて───俺は逃げる、自由になるッ」
つい数分前に人身事故に遭っておいてなお元気に叫ぶ調教師アロッコ。
その言動が群れの動きに影響していることは誰の目にも明らかであり、すなわちそれは群れの弱所を示すことと同じであり……セシボンとクラッフの両者もまた同じ結論に達していた。
セシボンが先んじてその結論を口にする。
「あれ、任せるぜ」
「任されました」
セシボンが足を止めてフィルムから重量級の火器をいくつも出した。
クラッフが足を早めて右手に向かって走り出した。
狩りの時間が、始まった。>>104
side-アロッコ
俺はスパイとして生きる運命だったらしい。
らしい、というのは伝聞だからだ。
四代ほど前のご先祖サマが時計塔の民主主義派ってトコから、命令を受けてわざわざ霊墓まで身を投じたのだという。
いい迷惑だ。
おかげで、こんな目に遭わなきゃいけなくなる。
「来るなァ!!」
一直線に走る羊の背の上。
俺は怒りと焦燥感に駆られて叫ぶ。が、そいつが意に介する様子はない。
「……」
無言。名前も知らない眼鏡をかけた少年魔術師。
左右の手にはそれぞれマスケット銃とマチェットをにぎっている。そして俺を追っている。
「来るなと言っているだろう……! やれ、『フィーバー・ファーム』ッ!!」>>105
興奮・誘引に特化させた匂い袋を後方へぶちまける。自分が乗る羊からは逸れるように注意したが、これで残りはすべてあの眼鏡に集中する。
すぐに"羊の群れ"がたったひとりに殺到する。絶叫とも悲鳴ともつかぬ羊の鳴き声があたりをゆらして、すぐに俺の声などかき消えた。
これでいい。これで俺が逃げ切れるだけの時間稼ぎになる。羊どもは単純な力くらべだけなら容易く抜けるものでは───……
「……あ?」
ぱん、と小気味よい銃声がひとつ。
どうやら足下に向けて放たれたらしいそれは、着弾後に拡散する形で効果を発揮した。
見れば羊の群れ全体の動きが緩慢になっている。"おだやか"になっている。今の弾丸か、あの弾丸が殺傷を目的としたものではなく、沈静・催眠に特化させたものであるなら……
「残り、ひと」
「……くそったれっ!!」
角を掴んだまま匂い袋を乗った羊の口内に放り込む。
高ストレスをかける純然な匂い袋だ。
途端に暴走がはじまる。このまま放置すれば右往左往して終わりだが、ここで超微量の快楽成分を漂わせる。「こっちに向かえば楽になる」と示してやれば、羊はありもしない"楽"を求めてまっすぐ進んでくれる。
逃げる、逃げられる。>>106
「逃げられる……から! 消えろ! 消えろよちくしょうが! テメェ時計塔の子飼いか!? 点数稼ぎにでもしてんのか!?」
地下───俺にとっては故郷での暮らしが、なにからなにまで嫌だったわけじゃない。
確かに危険な毎日だった。だが命がけだからこその充実感があった。
日常風景が、地上からでは手の届かぬ光景と知ったときは優越感を覚えた。
身の危険がせまったときに「同業者だろう」と手をさしのべられるだけの温もりは、あった。
生きる意味みたいなものは確かにあった。
でも俺は逃げた。
逃げて、自由になる。
そのためだけに走る。
「テメェも……ッ!」
迫りくる眼鏡野郎を見据える。見るかぎりじゃフィジカルに恵まれたようには見えんがスピードだけはある。『強化』の賜物かそれともブーツに仕込みであるのか、どうあれ俺の羊に追いつこうとしている。その現実だけが目の前にあった。
「根源とやらが欲しいクチか!? そうやってまた次の子孫にまで呪いを残すのか!?」
八つ当たりとわかっていても口が止まらない。
どんな事情があるにせよ、アイツが神秘に由来する力を使っているのは変わらない。つまり同類だ。魔術社会だか魔術協会に属して、無意味なモノのために弱者を食い物にしてるカスみてぇな連中だ。こうして身体張ってる時点で、下っぱではあるだろうが……>>107
「テメェらみたいのが!! スパイだなんだとタグつけて放り出してくれたおかげでいい迷惑だ!! 呪われてしまえ!! そうやって使い捨ててきた人間のひとりひとりに命があったんだと自覚して、ああク.ソ! いい加減にしろよク.ズどもが!!」
「俺は生きてる! 俺だけが生きている! 何度見送ってきたと思う!? 同じような境遇と時間を分かち合ってきた仲間が!! 何度───何度!! お前らのような人でなしのためにッ!!!」
「何もッ! 悪いことじゃない! ことさらに否定されることじゃないはずだ!! ほんの一時でも……永遠だろうとも! 『逃げる』なんて誰でもすることだろうッッ!?」
少なくともあの迷宮ではそうだった。
怪物から逃げる。地形から逃げる。異常から逃げる。普通から逃げる。他の探索者から逃げる。自分の欲から逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。ただそれだけをくりかえす。
そうしないと生きてはいけないから。
そうしないと死.んでしまうのだから。
だから、逃げることは俺にとっての絶対の正義だ。それは今も、この先の人生でもずっと変わりはしない。
立ち向かう? 七難八苦に自ら挑む? バカを言え、どうしてそんな無意味なことをしなきゃならない。戦うなら絶対に勝てるときだけで、万が一を察知すればやはり逃げる。あくまで俺にとってはそれが絶対に正しい。
根拠は、こうして俺が地上に出ていることだ。
現在まで続いた俺の命が、俺の行動の正しさをすべて証明している。
「……そうですか」
ここではじめて、追跡してきた眼鏡が返事をした。確認するような声音ではなく、明確な意思で返事をしてくる。
熱のない、平坦な声。>>108
「人に歴史ありとも言いますし……霊墓アルビオン出身という貴重な視点からの身の上話は、大変深くもありますが、」
むしろ冷めているとすら思える。
一歩引いたような声色で、そいつは、言った。
「それ、自分となにか関係あります?」
「───……は? ぁァあ?」
殺そうと思った。
イヤ決めた。ここで殺してしまおう。
駆る羊を反転させて、その角が上手く当たるように狙ってやって、どこにだって刺さってしまえるように、
「ああいえ、聞かなかったことにしましょうか───"月を掴む"」
「え、あ??」
なにか、ブーツに妙な作用があった。
そう思った時には視界が濃紺に染まっていた。
それが眼鏡野郎のはいたズボンだったと、ズボンに包まれた膝蹴りだったと気づいたのは、宙に浮かされて空を仰いでからだった。
俺は、大の字になって背中から地面に落とされていた。>>109
「ぐっ、か……!」
「こんな挑発ひとつに乗るようでは、その『逃げる』とやらもどれほど真実味があるか、疑わしいので」
言葉を吐き捨てながらもマチェットの刃先は俺の首筋に突きつけられている。
動けばどうなるか、なんて悠長な警告はなかったが、獣の牙と比較すれば断然やさしいだろう。でなきゃ俺の喉笛はとっくに意味のないものになっている。
一縷の望みをかけて視線だけで羊を追う。
即、銃声。
「ひとつ、質問をします」
両腕を踏みつけられた。人間ひとりの分の重量が上に乗って身動きがとれなくなる。
マチェットが動く。刃先がほんの少しだけ皮をやぶって、肉をうすく裂いた。
慣れ親しんだ血の感触がした。この痛みにきっと"次"はないだろう。>>113
アロッコはそういうヤツです
因果応報のようであり染み付いた習性のようでもあり一朝一夕では落ちないサガでもあり……ありあり……>>120
あぁやっぱり近いのはあるんだ…
私が基本イカロスのイメージに引っ張られてるのもあると思いますけど、突き抜けた人が痛い目に合いがちな気しますます>>116
普通に楽しんだけど、あんまり創作そのもののネタに繋がる要素はなかった感じかなぁ
刹那の保護者をロードからプレラーティにするのアリか?と一時期考えてた事あるけど、プレラーティズのスタンスとしては刹那にそこまで関わらなさそうなので断念
個人的にはヒッポリュテさんのキャラクター性が良かったですね>>116
好感度が1番上がったのがプレラーティズでしたね……。
三臨フランチェスカの邪女神感スコスコ。
逆にジョンはクッソ嫌いです。そろそろ暑さで心身がへにょへにょになってきた中でのとうかっかっかターイム
side-セシボン・トゥー・ザ・パラチンタ
「いい加減にしやがれ!! キリがねぇってんだよボケ共がぁ!!」
火花が散る。
比喩でなく魔力と硝煙に彩られた光がまたたく。一定の速度と指向性を持たされた弾丸は怪物の群れに容赦なく食い込んでいった。
攻撃は有効。攻撃回数を増やせば、ケモノたちはその個体数を減らしていく。何十分の、または何百分の一という割合ではあるが。
「だからなんだってんだよコラァ!」
繰りかえす。
幾度となくこなした戦闘経験が"無駄弾"と吐き捨てるのが聞こえる。実際、この場にいる群れのすべてをひとりで狩り尽くすだなんてどだい無理な話だ。そも目的は時間稼ぎで、それだって達成したと言えるくらいには戦い続けている。
もし時間稼ぎが足りてなかったとしても、群れの弱点らしいヤツはフロースが抑えに行った。だったら帳尻は合うだろう。
つまり、ここで踏ん張っている意味は、もう、あまり無い。
……。
逃げるか?
「……───無ェな!」>>125
ガンッと鈍い金属音が響く。弾切れを起こした鉄の塊でブン殴った音だ。血まじりの空気に鉄の濃度が増していく。
このロクスロートが自分の命より大事とは言わない。あの教室であってもそれは変わらないし、そこにいる小煩い連中も変わりやしない。……ただ。ひとつでも胸くそ悪い結果が出れば、ここで食わせてやるパラチンタがまずくなる、それはよくない。
「結局やるしかねぇってことだよな」
嘆息。即、新たな火器を取りだす。
死ぬまでとは言わんが、まぁ、やるだけやってやろう。
「……んん?」
妙だ。
羊の数が不自然に少ない。
思いがけず自分が倒しすぎた……ということはないだろう。戦場で自他の戦力差を見極められないヤツの末路なんていくらでも見てきた。
なら、なぜ?
答えは羊どもの視線の先にあった。
視線を奪うモノがあった。
そこに"美"があった。
「アレは……」>>126
魔術っぽい、という間の抜けた感想が浮かぶ。
立つ。手をゆるくふって、靴を鳴らす。たったそれだけの所作のひとつひとつが輝くようで、それゆえに目を引く。人も羊たちも例外なく。
すでに羊の何匹かは、その2人に視線を向けるために足も戦意も止めていた。
その2人は教室でも何度か見た顔だ。
たしか……シャフリヤーナ・アスタムと、ローザ・ユスティングリー。そういう名前だった。知らぬ仲ではないが、緊急事態の考古学科に駆けつけてくれるような間柄でもないはずだ。
「なんでお前ら2人が、」
ここにいる? と、そう続けようとして、俺は間違いに気づいた。
2人じゃない。いくらでも来ている。
「吸血鬼さんの誕生日って聞いてきたのにぃ、どうしてこんなことになってるのぉ?」
「ルナさんならアルビオンの幻想種にモテモテでもおかしくないけど……」
「さすがに彼女でもそこまで顔が広いとは思えないけど。いやこうして招待状もらった身ではあるけどね?」
「あぁいやだいやだ、ほんと野卑だこと」
「まぁ、懐かしくはあるな。オレにとっちゃアルビオンの名前にロクな思い出はないが」
「待って待ってちょっと待って君たち。ここロクスロートよ? 今って外部からは封鎖中だったりするんだよ? どうやって入ったの? 」
「まぁまぁ、べつにいいじゃないのぉ」
「よかないんだよ!!」>>127
なんか紛れてきてたダグラスまで叫んでいる。
大きいのと小さいの。男と女。おそらく所属する学科もバラバラな連中。共通しているのは『ルナの知り合い』くらいのものだろう。
どう見てもまとまりのない連中が、ほぼほぼ力技だけで連れてきたのは……
「さぁ! さぁさぁさぁ!!! とくと目に焼き付けらませ!!! このわたくしが、淫蕩女王ことノルが!!! 本日の主役であるルナ・アードゥルの顔見知りたちをォ、連れてきて差し上げましたわよ!!!」
ああ、アイツか。アイツだな。なんてわかりやすいヤツなんだ。
だがおかげで、……とそう言うべきだろう。羊の群れは見るからに勢いを失っていた。
光線の魔術が射貫いている。墓荒らしの魔術が地を這っている。意味のわからんキメラ同士で張り合っている。なおも"美"が興奮を霧散させている。王の振るう槍が、なに容赦することなく向けられている。
部外者が紛れ込んでいるのは大問題だろうが、まぁ俺の考えることじゃない。
今はなにも考えずに、暴れてやろう。
「よっしゃおかわりをくれてやる!! まァだまだ味わってもらうぞコラァ!!」>>128
side-ジル・セレナード
"花"の挙動が変わった。
さまようように右往左往していた様子から一転、なにか目標を見つけたようにまっすぐ進む。
花弁が地を掴んだ。素人が乗った一輪車さながらに全身をゆらして、それでも倒れること花弁が回る、回る、回る。
駆けた。
大輪はタイヤのように。植物にあるまじき加速度で"花"が私たちから遠ざかる。
「そういうもんじゃねぇだろ花びらって!!」
「そうこともあるでしょう。霊墓の名が付くなら、なおさらに」
「どうあれ止めます。アレが次の死傷者を出さないとも限らない」
メスを投擲……イヤ、追いつかない。距離が開いては有効な手は皆無になる。
ならば詰めるだけだ、距離を、すき間を埋めるために両足へ込められた魔力だけに、集中する。
倣うようにして彼も走り出していた。ありがたい、この状況で手が届く人手はいくらあっても困らない。
少年と青年と、3人で並んで走る。
無人の街をただ走る。道といわず壁といわず突っ切っていく植物型の怪物を、ひたすらに追いかける。少年だけがすぐにバテはじめたのは想定外だったが。
幸いにも、そう間を置かずに"花"は止まった。>>129
「まぁたなんか来やがったぞぉ!!」
「ギャー!! キモいバケモン花ですわぁー!!」
次いで困惑まじりの絶叫と悲鳴。見ればあからさまな魔力反応をともなった者が複数。年若い者が多いことから見てあれは時計塔の生徒なのだろう。それもただ群がっているのではなく、あちらもあちらで戦闘行為のさなかだったらしい。人の群れの向こうに羊の群れが見えた。
アレも、アルビオンから這い出たものか。
ひどく間が悪い。二つの問題が同じフィールドに揃ってしまった、逃亡したルナのことも含めれば三つだ。なぜかと問いたくもなる。
アルビオンに縁ある者は惹かれ合うとでもいうのだろうか。どうせ考えたところで知りようもないし、学者然として解き明かす気は毛頭無いが。それでも重なる問題を前に愚痴りたくもなる。
───だから、知るよしもなかった。この場には『調教師』が残していった誘引の効果が広がっている。あくまで羊の群れにと調整されたそれが、まさか植物にも効いてしまった……などと。
"花"は、羊の群れへと向かった。
「ィィィ……ィ、ィ、ィ……!」
捕食していると思った。
実際は融合かもしれないし寄生という可能性もあるだろう。それでも自分の視界に映る光景は、食うものと食われるものでしかなかった。
あの羊の群れも一般的なイメージから大きく逸脱したケモノに見える。それでも、今なお成長を続ける"花"とは明確な差があった。>>130
また、羊は周囲の魔術師たちと"花"のどちらを狙うべきか決めきれずに。
それが決め手となった。
瞬く間にケモノたちの悲鳴が響いていく。
あたりの魔術師たちも困惑の声を上げている。
私のとなりに並んだ彼もどうすべきか決めあぐねていて、
……情けないことに、私もまた次をどうすべきか決めきれずにいた。
「ィィ、ィ、……、…………ィィィeeィィeeイeeeeイイeeeee!!!」
多くに見守られる中で、ついに"花"は盛大な産声をあげてみせた。
花と羊の嬌声が不気味な不協和音となって、無人の街並みを揺らしている。
もう一度言うべきだろう。花と、羊だ。……二種類の声が、一個の生命から発生している。
羊の群れを吸収した"花"はその全容を大きく変化させていた。
たとえば、四方八方へと伸びる触手には筋肉にも似た一本筋が通っている。
たとえば、節々には元は羊毛であったのだろう綿毛が生えるようになっている。
だが、それらに対してこの場にいる多くが、その意識の一割も向けられない。>>131
目を引くものは、上にあった。
一般的な植物の上下を入れ替えれば、上にくるのは根となるだろう。
根にあたる部位には『羊の群れ』がいた。ただし頭部だけ、と付け加える必要があるが。
率直に言って冒涜的な光景だ。まるで生け花かなにかのように羊の頭部が束になって鳴き声をあげている。所狭しとひとくくりにされた頭部の群れは恐るべきことに表情の差があった。
怒りと悲しみに二分されているように見えるが……見たままの現象が起きているなら、アレは頭部だけで生かされていることになる。身動きなど取れるはずもない"根"の尖端として。
「……むごいものですね」
人の手によるものなら鬼畜外道の所業と切り捨てて終わる。しかしながらアレの実行者はただの"花"だ。人の目から見た冒涜的な光景も、植物目線では効率的な吸収・成長でしかないのかもしれない。そこにあるかもわからない悪意を推し量るなど栓のない話だ。
「あんなのどうしろってんだ……」
「どうか冷静に。やるべきことは変わっていません。であれば物事を順序立てて解決に望むべきです」
「順序ったって、あのバケモン倒すだけだろ? ゲームみたく順番に弱点でも出てくるわけじゃあるまいし」
「それは前提条件です。本件の解決は『ルナの救出』という一点を置いて他にありません」
「……そりゃそうだろうけど、だからって対策とかあんのか?
「ありませんよ」
「……じゃあ、代行者だけのとっておきとか」
「異端滅ぶべし、という意思表示でよければ」
「……オーケーよくわかった。ステゴロでがんばろうか」
「同じ結論に達していただけたようですね。何よりです」>>132
side-ヨ■・ヘ■メ
どうしていつもこうなっちゃうんだろう。
どうしてルナちゃんはいつもいつも遠くへ行っちゃうんだろう。
どうして? どうして? どうして? ってそんなコトわかってるのにね。それこそどうして、だよ。わかりきったことをなんども確認するだけって飽きないの?
いいやわかるよ、そうしていたいよね。おなじ話とおなじ嘆きを繰り返すだけで悲劇のヒロインみたいな気分にひたれる。そりゃあしょうがないさ。誰だって似たようなコトしてるはずだよ。
まさに"今"がそうとも言えるかもな。とっくに答えがでた自問と、ただ悦を覚えるための自答。いやこれは実にいい趣味だと思うね、なんといってもコスパがいい。誰にも迷惑をかけたりしない。
ちがうよ、ちがう。だれかに迷惑をかけていたいの。だれかにワガママをきいてほしいの。自分の中だけに抱えこんで我慢するのはもうイヤだから。
そんなの好きにしろって話だ。どうせ乙女心なんて感情任せに並べた言葉の波、そこに跡づけたていの理屈でしかない。風の具合でどうとでも形を変えるし雨露だって流れ放題の落ち放題。ひとつのルールに当てはめようとするのが大間違いだ。
……なら、どうすればいいの?
……じゃあ、どうしようかって話だ。>>133
舌が言葉を乗せたがっている。
肺が溜息を吐きたがっている。
歯が苦笑に飽きたがっている。
骨が亀裂を見せはじめている。
喉が嗚咽を零そうとしている。
胃が悲鳴を融かしてしまって。
眼が本心を言えなくなった。
そんなヨ■・ヘ■メを───真府四方を、どうしようかって話なんだよ。
まるで脳髄(わたし)だけが悪いかのように言う。いつもはただの他人のクセに。我が物顔で間借りしてるだけの邪魔者のクセに。私の思い通りにならない私ばっかりで邪魔くさい。消えてしまえなんて言わないからみんなでどこにでも遊びに行けばいい。そして二度と帰ってくるな。
旅行とかいいね/うるさい。
旅はいいものだ/うるさい。
冒険は楽しいよ/うるさい。
ねぇ、どうして"あの子"にもそう言ってあげないんだい?/うるさいうるさいうるさいうるさい!
言えない言わない言いたくない言ってなんてあげないの。痛い思いも苦しい思いも危ない思いもいらないいらないいらないの。心配になるの不安になるのこわくてたまらないのさびしくてたまらないのどこかに消えてしまうことばっかりかんがえちゃうの。応援してあげたいのにがんばれって言いたいのにちゃんと見送ってあげたいのにいってらっしゃいって言葉だけでいいのにそれもできなくなってきた。もうわからなくなってきたのにそれでも泣きたいのはずぅっと変わらないから。
ルナちゃんはもう、冒険なんかに行かなくたっていいんだよ。
───ほんとうに?>>116
2部仕立てのシナリオにレイドにコラボ先のキャラ同士の掛け合いにと、個人的にはだいぶ満足なイベントでした(小並感)
平たく言ってお腹いっぱい
個人的にはちょうどハマってた歴史マンガでジョン王が出てくるくだりがあったのでまさかのFakeコラボでのジョン王登場にビビり散らかしてたのですわ
ブルターニュ花嫁異聞って言うんですけども
https://www.comic-ryu.jp/36077/
>>135
モンスター花がさらなるクリーチャーになってしまった…
花弁を車輪代わりに走り出した時は思わず噴き出しかけましたが、ほんと何でもありだなアルビオン産は(白目)
そしてヨモちゃんがいよいよ限界だァ>>136
正直アルビオン産なら何やらせても「やりすぎ」にはならないだろうという慢心があります。だって霊墓だから…
ヨモちゃんはね…そろそろいい感じになるといいね…風邪の引きはじめと病み上がりみたいな状態がずっと続いてて、まーたメンタルやってると思ったら今なんか「謎の風邪」なるものが流行ってるとかなんとか
早とちってましたね私
みなさんもお気をつけください
そんなわけで投下ですside-■■・■■■
ライカ先輩を背負って走っている。……と、思う。
本当のところはわからない。
どこかふわふわしているみたい。背中にあるはずの体重もふわふわしてて、あってあたりまえの体温もわからなくて、聞こえてくる声はノイズまみれ。
「ヨモ、おいヨモ! またボーっとしてないか!?」
「大丈夫です」
大丈夫です、と返した口も、どれだけ私に意思にしたがってくれているものか。
自分がばらばらになっていくみたい。
それとも、ひとつになっているのかな。
どっちでもいい。結局なにも変わらないし、やることも同じまま。どうせ身体は動いてくれる。
「ほんとうに、大丈夫なんです」
地面を蹴った。
石の割れる音がした。>>140
やっぱり自問自答を繰り返す。答えなんか出やしないのに。
そもそもの話だ、遠くに行かなければどうにかなるのか? そばにいればしてあげられることがあるのか? がんばろうとしている人間の足を引っぱるだけになるんじゃないか?
そんなことわかってる/いいやわかってない。わかっていればそんなこと/そんなことでもわかりたくて、
ああ、また。
声が煩い。
なにもしないんでしょう?
なにかできるなんて思ってもないんでしょう?
できないやらないしたくないって同じことばっかり。なんにもできないくせに、なにがしたいの?
『…………さっきから聞いていれば』
……?
なんだろう。
なにか、わたしより、不機嫌そうな声が、
『なァーにをトンチンカンなことばかり吹いているのか! いつもの常識人ぶったヘルメくんはどこいったァ!?』
「デセフィオ、くん……?」>>141
きいきいとうるさい声を上げるのは、自分よりちょっとだけ後輩にあたるデセフィオくんだった。
聞いていればってなんだろうか。聞こえて、聞かせてしまっていたんだろうか。だとしたら申し訳ないけれど……それだけでそんなにも怒るものだろうか。
『アードゥルが大丈夫かどうかだと? そんな疑問自体がまちがっているだろうヘルメくん! 見当違いも甚だしいと言わんばかりだろう!?』
「どう、して……」
『どうしてもなにもない! あのお転婆娘が大丈夫だった瞬間など、一度だって無いのだから!』
「…………え」
『ロンドンにいるからなんだ、時計塔にいるからなんだ!? 教室も学科も好き勝手に飛び出していくやつに、平穏の文字がついた日は一度もない! なにも変わらない!!』
「───……」
『つまりは───いつも通りだ!
アードゥルがやらかして、僕が巻き込まれて! それを先輩方が笑って、まとめて先生に叱られて! その全部をヘルメくんが横から心配している! 飽きるほど僕たちの教室でくりかえした光景だ、そうだろう!?』>>142
「…………うん」
『だから、今やるべきこともいつも通りなんだ! 心配して、笑ってやって、それからおもいっきり叱ってやるんだ!
ああそういうことなら! ならば! このデセフィオ・カロレンツ・ウェルペンは全力で協力するぞ! なにせアードゥルの奴に言ってやりたい文句など積もるほどにあるんだからな!!』
「うん。……うん……!」
そうだな。
そうだね。
それはいい。
こんなに心配かけられたんだ。なら、文句のひとつも聞いてもらわなきゃつりあわない。
side-クラッフ・フロース
先ほど羊の群れと戦った幅広のストリートまで戻ってきた。
時間稼ぎをするという話だったが、すでに地に足つけた羊は一頭もいない。これだけ見ればセシボンが八面六臂の活躍を見せたと賞賛するしかない。
……だが、
「……すごいな、これ」>>143
対処と拘束を終えた『調教師』を引きずるようにして戻ってきた現場は、神秘の名にふさわしい混沌模様を見せている。
槍を振るう者がいる。美を誇る者がいる。銃火器を鳴らす者がいる。宝石を輝かせる2人がいる。
大多数の魔術師がそろって一個の脅威に対処している───否、戦っている。
その中心に構えて迎え撃つのは、未だ衰える気配を見せない"逆さ花"だ。アレはドラモンド先生すら押し切ることのできなかった、正真正銘の怪物だ。
「羊の群れがくっついているのは……まァ、弱体化なんかじゃないんだろうな」
聞けば"逆さ花"の特性は吸収にあるという。ならばアレは"逆さ花"なりの自己強化という可能性もあるだろう。なんにせよ討伐・捕獲が困難な強さを持つことは間違いない。今、戦っているメンバーだけではまだまだ決め手に欠けるだろう。
ならば自分もまた見ているわけにはいかない……のだが。
「くそっ、邪魔だなこの荷物」
件の『調教師』だ。
拘束はしているし気も失っている。何度か蹴りをいれて確かめたから狸寝入りの可能性もゼロだ、ここで放置してしまってもいいが、不安要素はある。
もし……"調教"のおよぶ範囲が羊の群れだけに留まらないとしたら?
あそこで大暴れしている"逆さ花"に余計な茶々を入れられる可能性があるのでは?
どうあれ霊墓で活動していた魔術使いだ、気絶していても打てる手の一つや二つがあってもなんら不思議はない。場合によってはみんなの邪魔をするだけになるかもしれない。
むしろ加勢するのではなく、この『調教師』を連れてここから離れるのが、現状では最大の援護になるんじゃないか?>>144
「…………でも……」
はがゆい。
魔術師の合理的な判断とやらが、今だけは枷とすら思える。
本来、迷う必要はないのだ。ヨモさんの話を信じれば事態はロクスロート全域に広がっており、自分ひとりが無茶をしても解決するわけではない状況にある。
ならば逃げ道を確保した上で安全策に徹するのがもっとも正しい。
……正しいが、正しいだけじゃダメなんだ。
ならばどうする。中途半端に迷って時間を浪費するのが一番よくない。
いっそのこと足下の荷物を、文字通りのモノにしてしまおうか───……
「あら、邪魔そうな荷物ねミスター。お預かりしましょうか?」
「……───」
背後からの声。
芝居がかった口調の、何度も何度も聞いてなじんだ声。
振り向かずに答える。>>145
「……よろしいので? 淑女には似つかわしくないモノですが」
「いいのよ。元々、私が拾いきれなかったモノだもの」
「ああ。そういえばそうでした」
そのあたりの報告もエンデから聞いたような気がする。
これが最善の判断だろう。彼女の憑き物はそれなりの距離まで近づく必要があり、そんな距離まで近づけば銃弾や投げ槍の巻き添えになるのは考えるまでもない。
だからここで荷物となった『調教師』を抑えておく。それによってフリーになった自分は、なに気兼ねなく加勢に行ける。
「……ありがとう。助かった」
「お互い様よ。さ、行ってきなさい」
今度は答えない。
振り返りもしない。
まっすぐに、みんなの元へと走っていった。
side-トラウィスカルパンテクートリ
からからと落ちる石片を見つめて理解する。
そら見たことか、と自虐心がうずく。上下を逆さまにした世界でガレキとアカイロにまみれているのがいい証拠だ。片足はこの身より重いモノに潰されており、腹からはこの身より硬いモノに貫かれている。>>146
「…………失敗したな」
俺様の槍は太陽を撃ち墜とさんとした神の技。なべて冷えた夜に堕ちた神の業だ。只人の身で振るおうものならどうなってしまうか、考えるまでもなかったろうに。
なんと脆い肉体であることか。
こんな弱さでいくつもの冒険を越えてきたのか。
ああ全く、可笑しいったらない。
「ふんっ」
槍で重いモノが軽くなるまでバラバラにした。硬いモノに固定された身体を開いて、外した。
そのまま放置すれば際限なくアカイロが零れていくだろう。なので、心臓の神秘をもってこれを"新生"した。
俺様という存在を含めて、すべてはこの心臓に集約される。
『黎、世明けの太陽石』
そんな銘を付けられた人造の宝具が、今やルナの心臓代わりを果たしている。
かつてトラウィスカルパンテクートリと名がついた神が紐づけられているのは、あくまでモチーフに最適だったからでしかなく、この槍も、意思も、本来の用途からすれば余禄でしかない。>>147
まァ、本来の用途なんてものだってロクでもない。世界の新生だの第六の太陽だのと標榜していたシロモノだ、どう転んだっていい結果にはならない。事実、この石ころが及ぼす"新生"の範囲はルナの身体が限界なのだから。
まとめてしまえば身体を新しく造り変える。それだけのモンだ、現象としては新陳代謝と相違ない。
そうやって戻るのは身体だけで、衣服はその限りではないが。ボロをまとっただけの姿は、少々体裁が悪い。
「だがまァ、動くには支障ない」
魔力が続くかぎり手足がちぎれたり腹から裂かれたりしても元に戻せる。それこそ心臓に杭を打ち込みでもしなきゃ止まらないだろう。
現代のレベルなら充分に不死身の怪物としてやっていける回復力だ。やっと吸血鬼らしくなってきたじゃないか。自分じゃ使い方もわからないことを除けば、な。
さて、ここからどうするか。
「リッッッ、リッッッ、リッッッ、ィィィィィィeeeeeeeeeeee!!!」
少し遠く、けれど近く。
道をひとつかふたつ空けた位置から喧しい植物の鳴き声がする。魔力の感じ方からして、先ほどまで邪魔になっていた2人も近くにいるようだ。
つまり今なら、なんら問題なくここから離れられる。この身体を遠く遠くの冒険へと導ける。相棒代わりの兄貴をさらえなかったのは惜しいが……それはそれだ。これで、また、
ルナ・アードゥルの冒険が、楽しめる。>>152
エウリュステウス、まさに神授の王権の体現者だし、暗君・暴君の共通項で結びつける「黒獅子」もなんか活かせそうだなぁと
エルゴに対する若瓏的なポジションも作れるかも
>ノルちゃんの王威の一つってラックランド王……?
違いますね、グレートブリテン島の王ではありますが……過去スレを遡っていたらクッチーさんのデモゴルゴンがエロすぎてびっくりした(笑)
遡るとwikiに居ないキャラとかいて新鮮味が味わえるネ絶対百足戦線WAGAYAが勃発したので空中で夜を明かす日々が続いております
この土日でちゃんとしたハンモック買うんだぁ…
そんなわけで投下……しようと思ったんですが、次の投下分がキリのいいとこまでいくと一万字をよゆうで超えててさすがにどうかと思いとどまった次第
これ…中途半端でも二回に分けるのと、一万オーバーの一回で丸投げするのどっちがいいと思います…?>>161
よし、けっこう悩んじゃったけどもうまとめてドーンと出すことにします
というわけで大ボリュームゆえ皆様お許しください
投下しますside-■■・■■■
朝焼けを返す、銀色の光をみつけた。
それが誰なのか、考えるのも迷うのも要らない。友達を見つけるのは、たったそれだけで充分だった。
ライカ先輩とはそこで分かれた。先輩は先輩で、預かった伝言を届ける大役があるけれど、そこに私がなにかできる余地はない。
私は、私のできることをやる。
「なんにもできないのに?」
そうだ。なんにもできない。そんなことはわかってる。
でも、やる。
やらなきゃいけない、と、思う。
やってみたい、とも、思う。
これが本当に脳髄(わたし)の声かどうかはわからないけれど、そうだったらいいな、と思った。>>163
「そんなことないよ」「都合のいいこといわないでよ」「わからないままでいいじゃないか」「知らないふりをしてるだけでいいんだって」「どこまでいっても他人のハナシなんだし」「ああそうだ止めてしまえ」「どうせ」「たぶんいやきっとでもけれどかならず」「そうかな」「どうかな」「そんなこともあるかもしれないね」
いいの。
それでもいいの。私はやる。
最低でもひとつはやる。私は怒ってるんだってすなおに言ってやるんだ。■■ちゃんみたいに本気で、ちからいっぱいの大声で、なにひとつごまかしのない本音で、
言ってやらなきゃ気がすまない。
side-ヨ■・ヘ■メ
そういう風に決めたから、できるかどうかなんてもういいの。どうでもいい。
「本当にいいの?」「失敗するよ?」「間違えちゃうよ?」「怒られるのはどっちかな?」「なんにも言ってもらえないかも?」「これでもう終わっちゃうかも?」「友達以上から」「他人未満になっちゃうみたいな」「さびしいお話になるかもしれないね?」
それは、そうそれは、とてもこわい。
目の前から大事な人がいなくなる。自分のことを見てもらえなくなる。
想像するだけで足がふるえてとまってしまいそう。耳をふさいでぜんぶなかったことにしたくなる。>>166
side-トラウィスカルパンテクートリ
ほんっとに面倒くさいったらありゃしねぇ。
面倒くさくて辛気くさくてひたすらに重苦しい女がいる。
ヨモ・ヘルメ。
我が宿主殿のオトモダチでそれ以上でもそれ以下でもない。だってのに事あるごとに引き留めやがるからコイツの足が何度も止まる。本気で邪魔くさくて面倒だ。……いっそ、なんて思考すら過る。そんなワケにもいかねェのがまた面倒で。
「あなた、誰ですか」
ああそうかい、同じ顔で違う誰かさんなのも把握済みと。
「トラウィスカルパンテクートリ。呼びにくかったらトラウィスでいい」
「まったく同じ神様の名前を、考古学科の授業で聞きました」
神様、と。
その言葉に在ってしかるべき畏れも祈りもなく、訥々と言葉を吐き出している。
……好いな。好い不敬だ。なんの見所もない少女と見ていたが、なんだ、神を相手に間違えられるだけの勇気が持てたか。
そんな姿を見せられればつい調子に乗ってしまおうものだ。一息で飛ばすのが惜しくなる。>>167
「魔術師としては……敬意を示すべきなんでしょうけど」
「へェ? なら貴様は神の名の元に信仰を捧げ、道をお空けになってくれるってか?」
「あなたが私の友達をかえしてくれるなら、それでもいいですよ」
「悪ィな。それは無理なんだ」
「じゃあ、もう、聞きません」
そんなコワい顔しておいてよく言うぜ、最初からクチだけで済ます気なんぞ毛頭なかったろうよ。
ファイティングポーズ未満の中途半端な構え。なにがやりたいのかも曖昧なら、しかし戦士さながらの烈気を放つ。
「まっててね、ルナちゃん」
「わかってねェな"ヨモちゃん"よ。コレが言われて待つタマか? 知らねェ仲じゃねェだろうよ」
ボロをまとった新品同然の肉体で三度、光の槍を取り出す。感触を確かめるようにクルクルと回して見せた。
この身体の持ち主を、ルナ・アードゥルを止めるつもりなら説得なんてヌルすぎる。一度は死に、冷え切った夜のようになってなお進む大馬鹿野郎だ。オトモダチの涙ながらの言葉で止まれるなら、コイツは今もまだあの地下都市に残ってる。
「なぁ教えてくれよ。この大馬鹿野郎を、無二の親友サマはどうやって止めてくれる気だ?」
「殴ります」
「……ん? 殴るの?」>>168
「はい殴ります。女の子の顔とか気にせず、殴ります」
「俺様だけを祓う……ってワケじゃなさそうだな?」
「トラウィスカルパンテクートリさんもまとめて殴ります。……私、怒ってるんです。すごくすごく怒ってるんです。
いつもいつも心配かけて、なのにルナちゃんだけ平気そうに笑って、そんな顔を見せられたら何も言えなくなって。
そうして何も言わないままでいたら、本当にどこか遠くに行っちゃうかもしれないから。
なので殴ります。ごめんね。ゆるしてなんて言わないから、怨んだっていいからね」
「…………マジかぁ」
想像を超えて重っ苦しい女だった。この女の内側(なかみ)ってのはどうなってやがる? ちょっと外に漏れ出ただけでこれか?
我が主に友人は選んだほうがいいと言ってやってやるべきなのかもしれない。どうせ聞くわけもねェが。
「だから───まっててね、ルナちゃん」
「あァ……本当に面倒極まりないな、貴様」
side-ヨモ・ヘルメ
なんだろう、なんだか身体が軽い。
ぶおんぶおんと私目がけて突き出される光の槍は、容赦なく鋭くて、熱い。
神様を名乗ったこのヒトは、たぶん戦うことに関してだけルナちゃんよりずっと強い。ライカ先輩には『強化』しか取り柄がないようなことを言ったけど、そんななけなしの取り柄ひとつすらマトモに通じない。>>169
「シィッ!」
「っ……!」
そう多くないやりとりで、もう優劣が見て取れる。
まだお互いにケガらしいケガこそしてないけど、それは私が手加減されてるからだ。向こうがその気ならとっくに燃やされてるし切り刻まれてる。
そうなっていない理由は……きっと油断でも怠慢でもない。
「どうせ聞きゃしねェだろうが言うだけ言ってやろう。下がったほうが身のためだぜ?」
本心だ。
ルナちゃんの顔で、ルナちゃんの声で、けれど絶対に違う声色で……私はそのひとつひとつに怒るべきなのに。
理解してしまう。このヒトは本当に私の身を心配しながら槍を振るってる。それがどうしてなのかはまだわからないけど、悪意があるようには思えない。
自分のことはまだまだ信じられないけど、そのことだけは信じられると思った。
「でも、ごめんなさい。無理です」>>170
だって私は私で、やりたいことがある。
ルナちゃんを止めたいし、ルナちゃんに言ってやりたい。身の安全でなんて理由でやめてあげられる段階はとっくの昔にすぎさっている。
殴ってでも止めるつもりだった。だから殴られたってやめるつもりはない。
「ふっ、ふふ……」
そう思ったらなんだかおかしい。ルナちゃんと同じ顔、同じ声、ただそれだけの違う人ってわかってるはずなのに。
言葉だけじゃどうにもならないから荒っぽいことをする。私とルナちゃんの間にはまったくなかったやりとり。
今までまったくしてこなかった……友達同士の、ケンカをしてるみたい。
「ンだよ、好い顔しやがって」
「ごめんなさい。自分でも、止められなさそうで」
「いいだろ。止めなくても」
本当にやめてほしい。
その顔も声も、自分を肯定するにはまぶしすぎる。>>171
「だが───そろそろ止まってもらわにゃぁ、歯止めがきかなくなりそうだ」
「それも、困ります。やられっぱなしじゃ、後でルナちゃんが気にしそうで」
「抗ってみせるか? 神に」
「いいえ。……その必要も、ないと思います」
後方に視線を向けた。
昇りつつある陽の光が、その人の眼鏡に反射してこちらへ向かう。
さっき分かれたばかりのライカ先輩が、大きく大きく息を吸うのが見えた。なんの神秘にも依らない行為。
ただ、叫ぶ。
「コぉぉぉラ先輩だぞシカトすんなーーー!」
「いいかげんに起きろっての、この寝ぼすけ後輩ーーー!」
「このままじゃ後悔するけどいいのかルナ! 本当にいいんだなーーー!?」
びくり、とルナちゃんの身体が止まる。
「そしてもうひとりの先輩から! クラッフからの伝言だ! ───宿題を終わらせないまま、どこへ行く気なんだってなーーー!!!」>>172
side-トラウィスカルパンテクートリ
なんだ、何を言っている?
俺様がヨモ・ヘルメに注目しているうちに、はるか後方へ回っていた女───同じ教室でライカ・サオトメとかって呼ばれていた女───が、何事かをさけんでいる。
その内容はどうも的を得ない。その宿題とやらがこいつらにとっての試練であることは理解している。
それがどうした?
コイツの冒険を止めるものではないはずだ。どう言いつくろったところで、日常的なタスクが奇跡への道のりを阻むものか? いくらでも後回しにできることだろう? そんなものは後でまとめてしまえばいい。
俺様はそう思うし、身体もそう思うものと考えた。
「───っ!?」
足が止まった。否、止められた。
半ば覚醒しかけた本当の身体の持ち主が、意に沿わぬ動きを阻害している。
こいつらが欲しかったのは、その瞬間の隙だけだったんだろう。
「ッ……!!」
ヨモ・ヘルメが全身で突っ込んできた。>>173
間に合わない。
いいや嘘がある。ヨモ・ヘルメの命を貫けば、まだ止められた。……それを、俺様は躊躇してしまった。
だから最悪の一手をゆずることになる。
「───取った!!!」
槍を持つ右手、その手首を掴まれた。
勝利への秘策。その動きとしては、それで終わった。
「なにを……、…………っ!?」
ただ現象としては、続きがあった。
掴まれた手首からまったく別の伝わるものを感じ、戦慄した。
「貴様、魔術回路の接続をっ!?」
「これしかないんです!」
魔術回路の接続。その行為の主導権は"干渉された側"にある。
今このときだけなら、俺様はヨモ・ヘルメの魔術回路を用いて新たな槍を象ることも出来れば、逆に魔術回路そのものを使えないよう組み替えることも、さらに言えば焼き切ることすらできる。>>174
ともすれば俺様にとっては、アステカの神秘においては、ひどく馴染みある行為だ。それはヒトの身体を裂き、心臓を捧げることと何も変わらないのだから。
何のつもりだと疑問があった。
趣味じゃねェと怒りが湧いた。
そのすべてが、すべてに、付随してくる"声"を聞いた。
「やったね」「やればできるじゃん」「はじめからやればいいのに」「はじめからやるのは大変だよ」「こんにちはー」「もう一回やるのも大変だ」「いやだよやめようよ」「死にたくないよ死ぬわけないよ死ぬのとおんなじだよ」「またそんなこと言ってる」「まだそんなこと言ってる?」「聞こえてますかー」「一回できたらあとはカンタン」「もう二度とやりたくないけど」「こわいこわいこわいこわい」「聞こえてなかったら困るけど」「お返事なんか期待してないからさ」「聞こえてますよねー?」「本当に本当の本当な神様」「これがわたしのやりたいことだから」「ずっと無視されたらさびしいし」「わたしたちの声が、聞こえますか?」
……なるほど、これか。
魔術回路ごしに聞こえてくる声は普段、ヨモ・ヘルメに巣喰っているもんだろう。神でも王でもない身で有象無象の声を聞かなきゃならんとは同情しかない。
だが今はその余裕もない。
こちとらただでさえ居候で間借りしてる身。そこに余計な同居人がごまんとあふれてきたらロクに制御もおぼつかない。
ああ、ちくしょうめ。
これじゃあ……起きちまうだろうな。>>176
あれ?
いまの私って、どうなってるんだろう?
寝てる? 起きてる? 考えてるから起きてる?
なんにも動けないから寝てる? まとめてしまうと夢を見てるのかな? それとも夢から覚める直前みたいな???
『───、──────!』
……誰かの声がした。
ぜったいどこかで聞いたことのある、声がした。
『っ…………。───』『、、~~……!!』『……?』
『~~~……───っ!』『───。───、───』『───・・───』
『───■■! ───!?』『~~───、……~~~ッ』『──────ッ!! ───~~~!!!』
うるさいな。うるさいけど、
あともうちょっとで上手く聴こえそう。
耳をすませる。意識を傾ける。なんだかふわふわして知らない方向に向きそうな自分を、ちょっとだけがんばって正してやる。
そうして聞こえてきた声は……やっぱり馴染みのある声で、でもちょっと意外な声。>>178
そこだけ感覚のある気がする手を動かして……不思議なことに片手しか動かない感じがして、もどかしい。
おまけになにかが邪魔をしようとしている。知ったことか。関係あるもんか。
勝手知ったる自分の身体。ちょっと手間どったところで最後は私が勝つ。
そうして……懐に入れっぱなしだった、目的のものをつかむ。
自分なりの答えがそこにある。
私は、自分の、杖をとる。
side-トラウィスカルパンテクートリ
ああ、これはダメだろうな。悪神ぶったところでこのザマだ。神として情けないにもほどがある。
だがまだ納得はしてやらないぜ。もうすぐ身体の制御も取り返されるだろうが……やるだけはやってやるさ。
俺様にとっては、これがお前の冒険にとっての最善だと信じるから。
そんな俺様の最後の抵抗をあざ笑うかごとく、両足がズレてさらに動きを止めた。
「っ……ルナちゃんっ!?」
くそが、オトモダチも目敏いったらねぇ。歩幅のズレくらいで気づくもんじゃねェだろが。 右手にある光の槍はまだ消えてない。熱も失せてない。まだいける、右手は動く。足の制御だってすぐに取り返せる感覚がある。
だが、左手だけは、>>179
「ぁ……ァあ!?」
まったく別の生き物のように左手が動く。
端から見れば、さぞ不気味な動きをしていたことだろう。上半身は右と左でポーズが分かれて、下半身を取り合うようにしているのだから、まずマトモなヒトの動きじゃないはずだ
事実としてコレは俺様とは別個の意識が動かしているんだ、そりゃあ奇妙な動きにもなる。 そうして、自らのふところに潜り込んでいった左手は、"なにか"を引っ掴んでもどってきた。
───杖だった。
光沢のある朱色に染まった、枝先のような杖。
あるいは白夜の空に輝いた……陽のような光。
分類としては短杖とでも呼ぶべきものだろう。元よりふところに収まるサイズだ、さしたる威厳も威容も感じられない。
それでも俺様は知っている。
その杖が、かつて北欧の冒険で失い、そして託された友の亡骸であることを。
杖を持った手が、高々と掲げられた。
「……それが、」
どうした、そこからどうするつもりだ───そう声にしようと瞬間、左手の中で杖がくるりと回る。器用なもので、取り落とすことなく杖は順手から逆手へと持ち変えられた。
すなわち、杖の先を自らへと向ける形になる。>>180
「っ……!? オイ正気かよご主人サマ?!!」
「ルナちゃん!? だめ!!」
俺様は半ば信じられず。ヨモ・ヘルメは確信をもって。
それでも互いに結論は共通した。コイツならやる、という日頃の行いが積み重ねた結論。
この瞬間だけ俺様の声を奪い返された。自信に満ちた声が、喉の奥から響いた。
「───下っ手くそ」
その声は、笑っていたように思う。
なにひとつためらいの瞬間は無く。杖をもった左手が、自分自身の肉体へ向けて振り下ろされる。
俺様の動かす右手は間に合わず、ヨモ・ヘルメの制止も届かず、ボロ同然となった外套モドキなどたやすく貫き、皮も肉すらも抜けていって。
そのまま、杖は、ルナ・アードゥルの心臓へとふれた。
side-『黎、世明けの太陽石』
それは■■ないしは■の■が鋳造したと目される、人造の宝具である。>>181
ランク:EX
種別:対界宝具
レンジ:地平線から水平線まで
最大補足:この世全て
外見は黒曜石の塊。大きさは一般的な人類種の頭部に近い。ただしその重量は一般的な人類種の頭部の3から4倍に達している。
■■特有の鋳造過程から人体への親和性が非常に高い。よってひとりの人間の一個の世界と定義することも可能。
本宝具を成立させるため、鋳造の過程で特殊な素材が使用されている。それは副次的な作用を発現させるに至ったが、本来の機能において無関係であるので割愛する。
本来の機能は『世界の新生』と定義する。■■■■■を目指して鋳造されたそれは必要なだけの魔力───莫大な魔力リソースたる"聖杯"が複数あっても足りぬほどではあるが───を用意すれば、世界の終わりと始まりを単一意思の元に顕せる。
ただし、現在時間軸において本宝具は複数に分割されており、本来の機能を発揮することは現実的でない。いわゆる"欠片"となった後はいくつかのやりとりを経て、各地の組織・個人が管理下に置いている。
現在、この"欠片"のひとつがルナ・アードゥルの体内に埋め込まれている。心臓の代替品として活動しているものの、その本来の機能は個人規模にまで縮小し、副次的作用も制御しきれてはいない。
「───っていう感じなんだよね。オーケーオーケー、もうわかっちゃった」
もう完璧に理解した。
なぜってそりゃ最高にわかりやすいお手本がいたんだ、しかも他ならぬ自分自身の身体を通しての神秘実践! そんなの理屈すっとばして感覚ですべてわかっちゃうに決まってる。>>182
「わかっちゃった以上、これから使えるってわけで」
キモはあくまで世界に向けた神秘であるということ。人体は宇宙に照応できる───……なんて話は定番だけど、やることはそれに近い。私がやるのはその具体的な調整だ。
コツはとにかく丁寧に繊細に慎重に。巨人の指先で、砂漠の砂粒ひとつをピンポイントで掴みあげる───……みたいな、細かい調整が要る。ま、その感覚はもうわかっちゃったんだけど。
「それもこれもお手本がいてくれたからね。えーっと……トラウィスカルパンテクートリ、さん?」
「さんは要らねェ。どうしたって主はお前だからな」
「そう? ご主人サマの身体で好き勝手しておいて、まだそんなこと言うんだ?」
「親切心でやったお節介だからな。俺様にとっては善行さ」
「おにーさんに、ジルさんに、ヨモちゃんに……槍を向けたのも、善行?」
「俺様にとっては、な」
「なんでそんなことしたの?」
「言わなきゃダメか?」
どうだろう。今こうしてても念話に近いというか、頭の中だけでしゃべっているような感じがするし、わざわざ答えてもらわなくても理解できそうな気がする。
いまもなんとなくムカついてこないのは、そんな風にでもぼんやり伝わるからかもしれない。
でも、うん。>>183
「そうだね、聞かせて? じゃなきゃ許さない」
「……仰せの通りに。だが理由はシンプルだぜ。貴様が『正しいこと』をしていたからだ」
「『正しいこと』? 私が?」
「ああそうだ。この時計塔に留まり、学生の本分とやらを全うする。ひどくひどく正しい行いだ。フィンランドの冒険を終えてからのそれは、とりわけ長いものだった」
「それのなにがダメだっていうのさ」
「つまらん」
「…………あー、やっぱりそういう感じ?」
「自覚もあるようでなによりだ。そりゃぁ魔術師なら一生涯引きこもって机と書に向かうのが正しい姿だろう。貴様も、その周りも、それが正しい姿だ。それが俺様にとってひどくつまらない」
「正しいのがつまらないって、神様の言うことなの?」
「俺様にとっては、なによりも重要なことなんだよ」
「だからヒトが間違えているすがたが面白いって?」
「そうさ、そうともさ、特に貴様の標榜する"冒険"とやらはなにからなにまで正論から遠ざかった愚行だ。魔術師に大事なのは効率と理想だろう? 未知を求めてなんとするよ」
「えぇ? 私の冒険が間違えまくってるからたのしくて……それだけであんなことしたわけ?」
「正しい。そのために俺様はわざわざ外出の手間を代替してやったのに、なんだあの邪魔者どもは、まったく不敬な……ああまったく好い不敬を見せてくれて……クク」
それがトラウィスカルパンテクートリと呼ばれた神様の、大事なことらしい。わかるようで、わからない話だった。>>184
「つまり、結局は、私が冒険しないのがイヤだったってこと? 神様が?」
「そうなるな」
「……やっぱり、なんで?」
「ここまで言ってもわからんか?」
「うん、ぜんっぜん」
「簡単な話だよ。ここにいる俺様は、内なる神は。貴様の───ルナ・アードゥルの冒険のただのファンだったって話さ」
「…………ぇ。ぇぇぇえ~~~???」
なんじゃそりゃ。
「なんせ普段は心臓やってるからな。いつも特等席から見ていたぜ」
「え、なにそれいつから?!?!」
「最初から見ないヤツがいるか。下水道の……ってそんな話はまた今度だな」
「なんでだー!?」
「オトモダチが呼んでるからだよ。俺様がお叱りを受けるのが筋なんだろうが、どうもそういう雰囲気じゃなさそうでな」>>185
それはなんとなくわかる。
夢から覚めそうな感覚があって、その向こうには私に呼びかけてくる声だって聞こえる気がする。
その声の主が誰かってこともわかるし、あとぜったい怒ってるってこともわかる。
「ま、がんばってくれやご主人サマ」
「おいこら待て! 待てって! 私の心臓のくせに!」
「さっきの"左手"は擁護できねェからな。ま、がんばれ」
「ずるいぞーーーー!!!」
side-ヨモ・ヘルメ
「ルナちゃんっ!」
自分の胸を自分で貫く凶行も、私が呼びかけたくらいじゃ止まりはしなかった。
「……」
どこかうつろな時間が数瞬だけ続く。
ややあって、銀髪をたたえた頭が持ち上げられた。その表情、雰囲気がよく見知ったものに戻っている。>>186
「ルっ、」
「ごめんヨモちゃん。ちょっと待ってて」
先手を取られた制止に、声も言葉も身体も止まる。
ルナちゃんが戻ってきた喜びと、それそのものが無に還りそうな目の前の現実が、慌ただしく脳内に流れてくる。
言ってやりたいことがいくらでもあったはずなのに、そのどれもが正しい形になってくれない。怒りたいような泣きたいような。そんな暇があるなら大声で誰でもいいから人を呼べと、
「ふんっ!」
「?!?」
ちょっと固いビンでも開けるようなノリで、心臓に刺さった杖を引き抜いた。
そんなマネをすれば信じられないほど血が出る。小学生でも知っているような現実が、けれど私の目の前であっさりと否定された。
「血、が…………?」
出血はない。
ぼろ切れの隙間からのぞく素肌には丸く、小さく、黒い空隙がたしかにある。そこにあるべきアカイロだけがない。
代わりに、火の粉みたいな光がちらと見えた。ルナちゃんの身体からあふれるその光が、どこか魔力光にも似ていると気づいたときには、何事もなかったようの無傷の身体に戻ってた。>>187
「……んー。こんなもん、かな?」
口ぶりからすると、ルナちゃんは今の治癒魔術───と断言していいのかどうか迷うけど───で、胸の傷を消したらしい。まるで焦りの見えない様子から、ここまで織り込み済みだったとわかる。
外から見てるだけじゃわからないことばっかりだけど、一連の自傷行為にもなにかしらの意味はあったんだろう。結果だけ見ればルナちゃんはケガひとつないまま、自称・神様からその意識を取り戻した。
まとめれば結果オーライってことになる。
そんな姿を目の前で見せられたヒトの気持ちを、考えなければ。
「で……ええっと、ヨモちゃん」
「……」
「その……ごめんっ! 朝、だまって出てってごめん! あんなヤツに勝手に使われてごめん! それでこんなことになって、」
「……ううん」
ひどいなぁ。そんな風に謝られたら、私から強く言えるわけないのに。
殴る、とか言ったのに。いっそ叫んで、びっくりさせてやるくらいのつもりでいたのに。
ぜんぶ台無し。わかってやってるんじゃないかって、疑いたくなっちゃう。>>188
「…………いいよ、いいの。ぜんぶがぜんぶ、ルナちゃんのせいじゃないし。……でも、ほんとうの、ほんとうに、いっぱい心配したんだから」
「……ごめん」
「ずっと……ずっと、心配してるんだから。台湾のときも、死霊病棟のときも、博物館のときも、フィンランドのときも、いまも、ずっと」
「それは……。…………それに、心配しないでって言っても、むりだよね」
「……」
いいや、ある。
私も、誰も、心配せずにいられる方法が、ひとつだけある。
「ルナちゃんが、冒険に行かなかったらいいんだよ」
「ごめん。できない」
………………………………………っ、
…………………………。
……そう、だよね。
あーあ、ちょっとくらいは、迷ったりしてほしかったなぁ。
「……ヘンなこと言って、」
「できないけど、でも、ヨモちゃんに泣いてほしくもない」>>189
ヘンなこと言うのはルナちゃんも同じみたいだった。だってそれじゃ私が、泣いてるみたいだ。
そんなわけないのに。
勝手な心配を押しつけるばっかりで、泣いたりするなんておかしいにきまってるのに。
ああ、もう。ひどいなぁ。
「だからもう心配しないでなんて言わない。言わないための───お願いがあるの」
「……なに?」
「私のこと、心配して!」
「ぇ……」
「今よりもっと、もっともっと、もっっっと心配してて! 全身全霊で! 全力全開で!」
「……なに、それ」
「砂漠を歩いていても、深海をもぐっていても、空飛ぶ島から落っこちても! その全部を心配してて! ヨモちゃんがそう想ってくれてるって信じられたら、
それだけで私、ぜったい帰ってこようって気持ちになれるから!」
めちゃくちゃなことを言っている。それじゃあなんにも変わらないでしょ。
心配かけないでって話をひたすらにポジティブに言い換えただけでしかないのに。どうして、>>190
「だから───待ってて!」
どうして、私はルナちゃんに言われるだけで信じたくなるんだろう。
どうしたって、この笑顔にはかてないんだって、わかりきっているクセに。
「…………ひどいよ。よくそんな、自分勝手なことばっかり」
「ごめん! でもヨモちゃんにも自分にもウソつけないから、こう言うしかないんだ」
「だよね……うん、ルナちゃんは、そうだよね」
「……ゆるしてくれる?」
「ゆるさないって言ったら、どこにも行かないでくれる?」
「それは……やっぱりムリ、なんだけど」
「ほら平行線になる。だったらしょうがないよ」
しょうがない、なんて言うけどホントはなんにも納得してない。
けどそれはルナちゃんも同じ。行くか、止まるか、ふたつにひとつしかないなら、私はぜったいにルナちゃんを止められない。
ルナちゃんを止めたい、危ないことをしてほしく、どこにも行かないでほしい。その気持ちがありながら、でも先へ先へと進んでいくルナちゃんを、見ていたい気持ちもあるから。
だから、でも、けど、ああ───……>>191
「リィィィッッッ!! ィッ、ィッ、ィッ、ッッィィィィイイアッッッ!!!!」
手は届かないくらいの、けれどけっして遠くない距離にいる"逆さ花"が吼える。
トラウィスカルパンテクートリとやり合ってるうちに、こんなところまで近づいていた。
そのまわりを魔術師たちが囲んでいた。
「なんでまだデカくなるんだよ!」
「キリがありませんね」
「早いうちに封印する方針に変更するか?」
『いいが、ロクスロートに収まりきらんやも───』
「ぎぇええええなんっかヌルヌルしてますわーーーっ!!」
気づけば名無しの教室……いや考古学科では見かけない顔もたくさんあった。
全部、ルナちゃんのとなりで見知ってきた顔だった。
「……みんな、来ちゃったんだ」>>192
呆然としてしまう私に、ルナちゃんの声が届く。
そのまま立った。
そして、私と顔を合わせないまま、言う。
「納得は、してくれないと思うけど。伝えるだけ伝えようと思う」
「…………なに、を?」
「私が見てるモノ、感じてるモノ、そういうモノたちを、ほんのひとかけらだけでもヨモちゃんに───みんなに」
ルナちゃんが右手に杖を持った、かと思えば光の中でさらさらと杖が消える。
いや違う。消えたのではなく、形を変えた。細枝のような短杖から、朱い指輪となって白くほそい指におさまっていた。
「なにをするの?」
「見ててね、ヨモちゃん」
一度だけふりかえって、にっと笑ってみせる。
花か、青空か、太陽か。なにに喩えても足りないほどの笑顔が、
はじめて出会ったときに見つけた銀色の星が、今も、そこにある気がした。
「私のとっておき、すごいから!」>>193
side-ルナ・アードゥル
アントン爺さんから渡されたナインの亡骸で。
それを形にすることがクラッフ先輩から出された宿題で。
そして、いつかメレクと一緒にひとつの魔術礼装として完成させた。
それが私の杖。ナインと呼ぶかどうか迷って、でも結局は火焔幻奏(ハーモニー)と名付けた、私だけの、杖。
この杖で出来ることは、今はまだまだ少ない。でも私にとっての大魔術を使うことなら出来る。
トラウィスのせいか魔力がいくらか持って行かれてるけど、もともと体力の魔力が要る術式じゃない。必要なのは私以外の神秘で、それはこの場にいくらでもいる。
だから大丈夫。なんにも問題はない。
指輪と化した杖をはめた右手を伸ばす。まっすぐに、まっすぐに、自分自身がぶれないよう伸ばす。
星へ、届くように。
夜を、泳ぐように。
そのためだけの言葉を紡ごう。>>197
ヨモちゃんならこれくらいは重くしてくれる。私は信じてる
本人に直接伝えるかどうかは解釈の余地ありとの見解です
番外編だけで見たら半年ぶりくらいの登場なのでまぁ長い長い
主人公ってなんなんでしょうね…>>197
>似てる……まあ、似てると言えば似てる
どういう部分が”似てる”のか?についてはルナティックで描写したいなー、という気持ち……。
ルナティックの主題はどこまで行っても”朽崎遥の願望とはなんなのか?”が代表になる、みたいな部分はあると思うので
まぁそんな大見栄切って、彼の内面イマイチ掴み切れてない感もありますが!具体的には狂暴性とか。
クッチーの内面、なんか色々と”居過ぎ?”なんだよな。
>>196
ルナちゃん、起床!なんだかんだ他者誑しというか、色々な人に応援される子ですよね、彼女
起床のトリガーの描写ではティアとエルメロイ教室のアレを思い出したり。フラットくんとルナちゃんって相性良かったりするんかな?
>主人公ってなんなんでしょうね…
「物語の主軸になる人」ですかね、個人的な意見としては。なのでルナちゃんも立派に主人公!>>199
対人関係だとルナはめっちゃわるいヤツですから…次回もそんな感じですし…
やらかし枠としては相性いいと思います。というかルナのエルメロイ教室適性がまず高い
時計塔的な立場よわよわで、自分じゃ扱いきれない神秘抱えてて、面倒みてくれる人を振り回すのがお得意……ともうこんなん教室行くしかねぇってくらい揃ってる
行かなかったんですけどね。そんなIFルートもアリと思う不覚にもハンモックの揺れでホームシックになりかけててさびしい
波の音が恋しくなりながら投下します
>>201
プレラーティーズのときは「だろうなぁ」と思ってましたがあのお姉さんもなんだ…
じゃあちゃんとやばいヒトなんだなぁ…(未召喚)side-クラッフ・フロース
ルナさんが右手を伸ばした。
まっすぐに、まっすぐに、それ自体が一本の杖であるかのように、まっすぐに。
伸ばされた手の、その指にはめられている指輪が、いつか自分の出し"宿題"の成果だという。
無茶と無理と無鉄砲を重ねる、彼女の身を案じての提案だったけど、思いのほかとっぴな方向に伸びていったらしい。
本音を言えば、楽しみだった。
あんな自信満々でいるだけの魔術は、どんな形で、どんな色になったのか、楽しみだった
『"我に夜あり"』
そうして、少女が呪文を唱えはじめる。
自分が注目するのは、やはりあの指輪。
現時点の見立てでは汎用性と真逆の位置にある魔術礼装だ。彼女の大魔術を成立させるためにあの指輪はある。そのためだけの礼装としてデザインしている。
大元となる膨大な術式はすべてあの指輪に書き込まれているはずだ。
今、ルナさんが唱えているのは、その膨大な術式を一意に取りだすためのショートカットキーといったところだろうか。>>203
『"帳をおろして"』
ぶわん、と彼女を中心に広がるものがあった。
黒くも昏く、光を通さぬ。闇だの影だのといった言葉で表すにはとても足りない無明の恐るべきもの。
アレは夜だ。
昇りつつある朝焼けすら無視して、黒々とした範囲を円形状に広げていく。
結界───イヤ、陣地作成とするべきか。
彼女の魔術は、自らを中心として夜を広げるものだったんだ。
(……でも)
それが何になる?
そも何をもって夜を、夜と定義する?
暗くなることか? 寒くなることか? 静まりかえることか?
ああそれは恐怖の源ではある。信仰となりえるだろう。そしてそれは、灯りと温もりによって現代人類がすでに遠ざけた恐怖でもある。
人類史という大きな視点で見れば魔術すべてがそうであるのかもしれないが……その中でも特に『夜』というテーマは時代遅れだ。なにせ夜の打倒はトーマス・アルバ・エジソンの大いなる偉業であり、彼によって人類は24時間すら我が物とした。星の巡りを喰い尽くすように。
そんな現代で、ただ夜を広げるだけの魔術が何になる?
何を、見せてくれる?>>204
『"光をかくして"』
闇にしずんでなお、静寂の似合わぬ少女の声が響く。
わかっている。あんな楽しそうに紡いでいくルナさんの魔術が"広げるだけ"で終わるはずがない。夜を広げるのは単なる前置きにすぎない。
言外の彼女と言わんとしていることがわかる気がした。
こんなもんじゃないぞ、って。
眼にもの見せてやる、って。
だから自分は魔術の終わりをただただ待ちわびる。それが結実する姿に思いをはせてひたすらに待つ。
───……?
なにかが、触れた。
遠くから呼びかけられたような。友人に肩を叩かれたような。曇りない親愛が込められたコンタクト。
つい振り返る。誰もいない。けれど、理解できた。
ああこれか。
これがルナさんにとっての夜か。
これが、ルナさんの新しい魔術なのか。>>205
『"見果てぬ空のはじまりを"』
いいなと思う。
らしいと思う。
だってそれは、ずっと彼女が口にしていたことだ。嘘偽りのないキモチが、今こうして魔術に形になっている。たったそれだけの話だ。
なるほどこれは───ルナ・アードゥルの大魔術にふさわしい。
解答用紙にこれがあったら文句なしに花丸をつけている。"宿題"というなら満点だ。
ああいや術式の細々した部分に言いたいことはあるけどね? コンセプトはいいけれどやりたいことが先行しすぎていて……って、やめとこう。講師ならいざ知らず、ただの先輩の身でそんな偉そうな講釈を垂れるわけにもいかない。
今はただ最後まで見守るだけだ。
そんな気持ちを込めて、ルナさんの"呼びかけ"に肯定の意を返した。>>206
side-メレク・アルマソフィア
『"夜が───"』
僕は知っている。
ルナの新しい魔術が一種の契約術であることを。そしてその大元となる術式は、白夜の下のフィンランドで手に入れたことを。
僕はよく知っている。
いっしょに冒険をして、一連の事件を乗りこえて、すべてが終わってから一緒に造りあげたものだから。
『───告げる"』
大元となった術式は召喚術と契約術を複合したものだ。とある魔術儀式における最初の関門。
過去現代未来より人類史に名を刻む者……魔術社会においては境界記録帯(ゴーストライナー)と呼ばれるそれを降ろし、のべ七名の参加者たちが聖杯を求めて相争う血濡れた魔術儀式。
マスターとなる魔術師は、この術を用いて使い魔となるサーヴァントを召喚するという。
すなわち、英霊召喚。>>207
『"汝の魔は 我が下に"』
そう言うと大げさになってしまうが、実際のところ召喚の工程はカットしている。
不要だからだ。
ルナが求めたのはあくまで契約術だけ。ルナのことをマスターと呼び、そして今はルナの杖となった"彼"を繋いでいた術式をルナは採用した。そのことに少し妬けるものがあるが、今はまぁいい。
これは魔術師同士での契約術だ。
形式は多対一。
当然にルナが一であり、その他すべての魔術師を多としている。
周囲一帯へ向けて、念話に乗せた魔力の波が伝わっていく。これがルナから発信されているコンタクトだ。これに是と返すだけで契約は果たされる。極めてシンプルなものであり、契約破棄にあたってのデメリットは一切存在しない。
「なあ、これ、返していいのか? 問題とかないのか?」
なにがなにやら、という顔をした兄が無粋な声をあげる。
これが契約術であることだけは理解できたのだろう、詐欺でも疑うような目でこちらを見ていた。
「あるわけないでしょう」
ばっさりと切りながら、返答と同時にルナへの肯定を返す。
まったく……今いいところなんだ。少しは空気を読んで静かにしていてほしい。>>208
それにしてもルナは時計塔の魔術師だけでなく、この兄すらも契約術に巻きこんだのか。まったく節操のない人だ。いつもいつもふらふらと目移りされるこっちの身にもなってほしい。この分じゃ向こうの代行者にも同じことをしているんだろう。いちいち聞かなくたってわかってしまう。
悪い人だ、本当に。
『"我が夜を 汝の杖に"』
そして契約は果たされた。
契約に際してもたらされる恩恵は『信仰の上乗せ』となる。
夜そのものが有する信仰を、ルナを通して契約者たちのものとしてプラスするのだ。
ルナをマスターに見立て、自分たちをサーヴァントに見立てるならば……夜としての知名度補正がかかる、という表現が妥当だろう。
要は、全体支援。
それがルナの新しい魔術だった。この契約を受けた者は持ち前の神秘をさらにパワーアップした状態で使えるわけだ。太陽などの相反する属性は例外らしいが……そこはさらなる"とっておき"の領分らしい。
だがそれでもルナらしくないと思う。彼女自身ではなく、その周りばかりを輝かせるための魔術なんて、と。正直なところ不満を覚えてすらいたのだ。特に隠すことでもないので率直にぶつけたりもした。
だからいいんだと、彼女は言っていた。
「……貴女しかやりませんよ、こんな魔術」
「どういう意味だよ?」>>209
「疑問ではありませんか? 一口に魔術といってもその在り様は千差万別。一度にまとめて支援など本来できるものではない」
「できないったって、今すぐ目の前で実演されてるだろ?」
「これは"一度にまとめて"なんて大雑把なものじゃありませんよ。契約内容に差違を設けて、彼女は契約したひとりひとりに合わせた支援を寄越しているはずです」
「……んん? え、それって、ここにいる全員分?」
「そうでなければこの魔術は成立しませんよ」
「いや…………無理だろ?」
「ほぉ、無理と。なぜそう思います?」
「お前が言ったんだろ、魔術は千差万別だって。全科目のテストをいっぺんに解いてるようなもんだ。オレなら頭爆発するし一つ二つでギブアップする」
そうだろう。そうだろう。
まったくもって正しい理解だ。正しい見解だ。自分だってそう捉える。
『強化』『召喚術』『占星術』『魔術礼装』『使い魔』『暗示』『巫術』『魔眼』『降霊術』『結界術』……魔術とカテゴライズされるモノは世に数多ある。
魔術師はそれらの基礎的な知識を一通り修める。そして、自分なりの要不要を見極めて取捨選択していくのだ。
より効率的に。
より合理的に。
根源の渦という唯一の目的地にたどりつくために。
目的地が唯一であればそこへ至る道筋もまたひとつでいい。
たったひとつでいいのだ。ひとつ以外はあってないものなのだ。
だからこそ、この世全ての魔術を必要とする魔術師は、魔術師を名乗るがゆえに存在しない。>>210
「ですが、彼女は求めるのですよ」
だって彼女は"それ"を愛するあまりに夜を見つめてきた人だから。
さらに夜の闇が広がっていく。ぶわんと広がる夜闇は契約者からも生じていた。これが陣地作成の効果を持つのなら当然の結果だろう。自分たちもまた彼女の一部と認められたことを証明しているのだ。
この周囲にはルナからの契約を拒む者はまずいない。
ぶわん、ぶわん、と次々に夜闇の発生点が増えていき、連鎖していく。ひとつがふたつに、ふたつがよっつに、次から次へと繋がりはじめる闇は際限を知らずに増していく。
夜が広がり、闇ばかりが世界を覆った。
暗くて、見えない。
それが夜だ。
暗く、冷たく、静かに。
だからこそ見えてくるものもある。
さぁ見上げてみろ。曇りなき夜空に、煌々と浮かぶものを知れ。
『"この意 この理に従うなら 契ろう"』
星が、見えた。>>211
いいやそれは単なる魔力光だ。契約者となった魔術師たちの持つ魔力が、ルナの支援を受けて輝きを増した。それだけの現象だ。
それだけの世界が、綺麗だと思える。
魔力ひとつ神秘ひとつが輝いて、それが星々のようにきらめいている。
夜あればこそ星は輝く。
畢竟、この魔術はそのためだけにあった。
自分の好きなものを自分の好きなように美しくする。それを惜しげもなくさらして行く人見る人へ分かち合う。
たったそれだけで良しとした。
───だって、彼女は魔術が好きなんだから。
僕たちの生きている星は回っている。ガリレオ・ガリレイが残した言葉の通りに。
だから夜への恐怖も信仰も万国共通だ。地球という星が回り、動き続けているかぎり、僕たちは都度繰りかえす昼夜の巡りに想いをはせずにはいられない。
僕にはわかる。
ルナのこの魔術は、世界のどこにいても使えるようにと組み上げたものだ。
この星にあふれる神秘のすべてを輝かせるために、造り上げたものだ。
ただ、ただ、自分の好きなもののために。それだけを願って。>>213
side-観測球ルクスカルタ
───報告。
───ロクスロート郊外に『夜』の現出を観測。
───並びに連鎖事象を観測。
───以下の観測結果に暴発の懸念を提議。
───以下の事象の中心人物を特定。
───該当者は、
side-ヨモ・ヘルメ
ずるいなぁ。
ルナちゃんはいっつもずるいや。
だってこれはルナちゃんは見ている世界そのものだ。自分っていう夜があって、好きなものっていう星があって、それを取りまくありとあらゆるものを自分の中に巻きこんでいって。
夜がある。
星がある。
私にとっての月ですら見えている。
そんな世界が美しく感じない───ワケがないのに。こんなものを見せられたらいよいよ何も言えやしない。>>214
『"ここに あれ"』
きっとルナちゃんはこの世界が見えるから、がんばれるんだ。
こんな世界をもっと見たいって思えるから、冒険に行くんだ。
ずるいなぁ、ほんとに。
別に私の気持ちが変わるわけじゃない。危ないから心配だから不安だから行かないでって、今も言いたいのは変わらないんだ。なのに、なのに……応援したくなってしまう。
こんな世界に挑戦しようとしてるルナちゃんに、がんばれって───やっちゃえ、って声を張りたくなる。
でも、今は、言ってあげないけど。
まだ、言葉にはならないけど。
大好きな背中にかける言葉は、見つかったような気がした。
side-ルナ・アードゥル
ああ、たのしい。
メチャクチャたのしい。きもちいい。でもちょっとくやしくて、うらやましい。だからいつまでだって続けていたい。
そうら見ろ、見ろ、見ろ───見ろ。
聞こえる。みんなの声が聞こえてくる。
見えてる。みんなの光が見えすぎている。
自分の好きなものであふれた世界、自分から広がっていく星を輝かせるための、夜、空、星!>>218
ずっっっと前からやりたかったことなのでガチガチのガチです
このルナを見てうきうきのメレ坊は書いてて大変楽しゅうございました>>222
(照)
でもそこに関してはわりとお互いさまといいますか…ほい、はい10月後半からリゾートに囚われることが確定したので今のうちに書けるだけ書いておかねばならない
投下もしもす
残り3話~side-エンデ・エルフィリーデ・リヒテンシュタイン
『ハーッハッハッハ!! こうなれば! こうなってしまえば! もはやこまっしゃくれた情報共有なんぞ要らんだろう皆の衆!!』
ルナ嬢の新魔術とやらは味方ありきのものだ。たったひとりでは如何な場面も打破できるものではない。
しかし、だがしかし、ここは時計塔の考古学科がお膝元のロクスロート。
魔術師ならばいくらでも湧いてくるし生えてくる。加えてバースデーの勢いで他の科の魔術師たちに加えて見ず知らずにお兄様や代行者まで仲間入りしているときた。
『ここからはレイドバトルだ! なおも成長を続ける"逆さ花"撃滅に向けて!! 各々好きに暴れろ!! 以上!!』
カンペキな号令だった。士気もうなぎのぼりになるはずだがどうも実感がうすい。
それどころか、お前も来いだの働けボケだのと野卑で野蛮なヤジが飛んでくる始末。まったくなにを言っているのやら、今の俺は言うなればゲームマスターであるぞ。
こんないいポジションを手放すわけが……わけが……イヤ、しかしそれはもったいないか?
……そろそろプレイヤー気分も味わいたくなってきたな?
「よし俺も参戦するぞ! 主役は後から遅れてくるというしな! 今から走って間に合うか……微妙だが!」
「エンデ……先輩? 言いにくいことなんだが、そのさっきのアクアステラ? とかいうのがな?」>>225
「どうしたデセフィオ……いやそうか、そうかそうかお前もか友よ! アクアステラよ! ならばゆこうぞ……いやまて友の姿がないな? どこへ消えた?」
「さっきこっそり出て行った」
「まじで?」
「伝言もある。『俺の作品はこんなもんじゃないぜ!』だ、そうだ」
「……抜け駆けだッ!! 友よッ!? 友情は!!?」
side-アクアステラ=リキッドクラウン
───遡っては数分前。
「おっ、ぉぉぅううおおおおっ!!??」
ひどく野太い叫びがロクスロートの街に広がっていく。
俺のものではない。叫び声の主は、考古学科で教鞭を執るモートン・ドラモンドという筋肉魔術師だった。
彼は今、俺が手がけた作品───ゲル状の使い魔によって運ばれている。並んで移動する俺も同様だ。
「なんっ、なんだ! なにをしようというのだアクアステラ=リキッドクラウン!」
「おや、俺のことまでご存じとは光栄です。……エンデのやつから聞いてたりしました?」>>226
「エルメロイに紐づいた悪名など嫌でも耳に入るわ! いやそうか、先の放送ではリヒテンシュタインとも共犯だったな貴様!?」
「おおっとヤブヘビ。まぁそれは置いておいて、今の話をしましょうか」
「今というなら、それこそどういうつもりだ!? なぜ貴様のスライムは群れてまで私を運ぶ!?」
満身創痍の身体でよくそんな叫べるものだと感心する。
スライムたちが担架代わりになって彼を運んでいるため、動かせるのは首から上くらいのものだが、たったそれだけでも多少の威圧感がある。
「乗り物酔いにはご注意を! まァ俺がそばにいる限り安っぽい揺れなどありえませんが!」
「乗り心地より状況を! 説明しろというのだ! 今の状況で役立たずとなった私は運んでなんとする!?」
異なことを言う。
今の状況で、最強の"駒"を放置する手はない。
単身で"逆さ花"と拮抗できる魔術師など現状ではモートン・ドラモンドただひとりしかいない。時計塔全体で見ればまだまだいるだろうが、この戦場に間に合えるかどうで言えばやはりひとりしかいないのだ。
「なにをおっしゃるミスター・ドラモンド! 貴方の脳筋短絡指導についてはエンデからよーく聞き及んでおります! 役立たずなわけがないでしょう!」
「頭の痛い単語は聞き流してやるから、とにかく降ろせ!」
「降ろして、どうするのです?」
「そこらに捨て置けと言っている! 貴様の使い魔は有用だ! 私ひとりを軽々運べる膂力がある! 無形故に発想次第でいかようにも使い道を広げられる!」>>227
「オォ……これはこれは、お褒めにあずかり、」
「勘違いするな! 事実を突きつけて貶しているのだこの庶民めが! この使い魔を"逆さ花"に差し向けるだけでマシになるだろう!!」
合理的な判断だと思う。
なるほどダメージの抜けきらないモートン・ドラモンドは、我が作品たちよりも使えない。合理的で、正しい判断だと思う。
判断材料が足りていないことを除けば、だが。
「さて突然ですが、俺は『服だけ溶かす液体』の製法を確立してましてね」
「何の話だ?」
「紳士淑女の秘め事を情緒豊かに暴く代物ですゆえ、教授にもたっぷりとお叱りを受けまして。あ、教授というのは皆様ご存じ現代魔術科の名物講師と言われる───」
「おい、それは私が聞くことか?」
「そんな人から賜った金言の数々に俺も反省したわけですよ。暴くだけでは風情が足りない……暴くも秘めるも思うがままなメビウスの輪こそを求めるべき、とね!」
「本当に、本当になんの話をしている???」
渋面から一瞬だけ気の抜けた、ぽかんとした顔が見える。水面から顔を出したアザラシのようだった。
「ここまで言えば……おわかりですね?」
「どうしたことだろう。まったく理解できんではないか」>>228
「貴方はまだ立てるということです。無茶をして一度きりが限度でしょうが」
「なっ、は???」
元々ここに配置していたスライム一同は、なんちゃって迷宮というアトラクションのために用意したものだ。
かのアトラクションはデスゲーム兼脱出ゲーム。そこそこガチめのトラップなんかも用意したので、当たり所が悪ければけが人が出るやもという不安があった。
よって、モンスター役と配置したスライムは、そのすべてが治癒性の粘液で構成してある。 そして、彼を運びながら覆っていくスライムたちも、そのすべてが事前に用意していたもの。
つまり、
「俺の作品によってモートン・ドラモンドは完全復活する……!」
「待て、待て待て待て、本当になにを───!?」
side-ローザ・ユスティングリー
その原因を正しい形で理解しているわけじゃない。
しかし理解できるものはある。たとえば、目の前の異形そのものである花が、その全容にふさわしい狂気を伝播させようとしている、とか。
おそらく狂気の対象は問わない。無差別で闇雲、誰でもいいから呑まれてしまえという美しさの欠片もない意思が見える。
魔術師であり、魔術回路を備えた者たちであれば苦もなく抵抗できようが……それでもいくらかのリソースと無意識が割かれてしまうだろう。
目が奪われてしまうだろう。>>229
「───この私を、さしおいて?」
ああダメ、鼻で笑ってしまいそう。
けれど、そう、そういうことならお話にならない。笑うなというのも無理がある。
それはつまり、人の無意識に訴えかける争いだ。
振り返らずにはいられない……目で追いかけずにはいられない。そういう存在が、勝者たりうる争いだ。
そして、ここにいるのはローザ・ユスティングリーだ。
それ以上の理由は無粋にしかならない。
ただ、立つ。そのポーズ、そのワンアクションでこの狂気の意味は消えてなくなるだろう
「ルナの"夜"もあることだし、ね?」
夜にありて星を輝かせる。
そんなコンセプトの魔術はまさしくローザ・ユスティングリーの"美"にうってつけだ。この場においては最高の相性と言っていいだろう。
並み居る星々の輝く夜空においてさらに、かの美しさは一番星を誇るにふさわしい輝きに満ちていた。
金色の光をなびかせて───ローザ・ユスティングリーが立った。
天上の椅子に座る者が誰かを、そこにいる全ての者が理解する。
あたり一面の星々が、唯一無二の一番星を見上げた。>>231
うめき声にすら苦悶の色がうすい。いける、などという熱に浮いた感覚すらある。
加速するままに身体が前へ前へと出る。
巨大化していく自分を省みて、広さのある大通りへ出た。
「───あれか」
"夜"が見えた。
ドーム状の夜闇につつまれた空間。内部にはいくつもの魔力光が見え、戦いを続ける魔術師たちの声が聞こえる。視界に暗視用の術をほどこせばその姿も鮮明に見えた。そして、今一番の脅威と化した"逆さ花"も同様に。
車輪じみた花弁は止まっている。どうやら羊頭が生えた触手を動かすのに専念しているようだ。つまり、まずは、アレからだ。
呼吸をひとつ、はさんだ。
「そこをぉ退けい!! 庶民共ォ!!!」
私の警告に真っ先に反応したのは教え子たちだった。こちらを確認し、
力任せの声を出しながら、全身の筋肉になお過剰な全力を込める。
自身を傷つけるだけになりそうな負荷をスライムたちへ押しつけて、力という力をこの身ひとつに滾らせる。
「私が!! モートン・ドラモンドが征くぞお!!!」>>233
風が横切っていった。
硬い音と柔らかい音が同時に聞こえた。まばらに粘着質な音も混ざる。
改めて"逆さ花"を見れば……
「……うわぁ……」
現実と思いたくない光景がそこにあった。
おそらく巨人は腕を大きく広げて、ラリアートの構えで突進したのだろう。筋肉質な両腕には体力の触手が引きちぎられる形で絡んでいた。
さらに尖端にくっついていたいくつもの羊頭は潰れて、元々巡っていた体液が飛び散っていた。巨人としてまとっていたゲル状の諸々も合わせて本当に正視に耐えない。
率直に言ってキモい。
自分なら今すぐ離れてしまいたい、そんな凄惨そのものの現場に。
まっさきに身を躍らせる代行者の姿があった。
side-ジル・セレナード
言うまでもなく好機だった。
助っ人なのか新手の横槍かはわからないが、しかし"花"を崩すだけの一打となることは間違いなかった。
巨人に突撃から逃れていた触手を切り離す作業に没頭する。今はそれだけでいい。それ以外の一切を不要とする。>>234
だから、あたりを包もうとする"夜"だって私は受け入れなかった。
これは神秘のための夜であるとともに、魔術師のための夜だ。
代行者である私が混ざれば余計な濁りとなるだろう。濁りにならないのなら、それこそ種への信仰の妨げになる。彼らを異端とする組織に属する者として、最後の一線だけは守る。
「……やはり回復しますか」
硬質な音とともに触手が自らの損傷を埋める。より強靱に、より凶暴に成長して。
本当に厄介だ。これさえなければと切に思う。
大部分の触手は数の暴力でその動きを封じこめている。切って焼かれて穿たれて、無力化までの道のりもそう遠くない。
最後の詰めの、最大の壁があの回復だ。あれがある限りジリ貧のまま延々と戦いつづけるしかない。
回復があれば"花"はいくらでも挽回できる。
「つまり……それさえ封じれば打つ手がないのでしょう?」
あの"花"が回復する源はなんだろうか。聞けばそれは吸収と成長であるという。
さらに突き詰めれば、急成長の原因は霊墓から地上へ上がってきたことだ。環境の変化というストレスが"花"を現在進行形で強靱に育てている。長期的に見れば苦痛をあたえることはむしろマイナスとなる。
「ならば祈りましょう」>>235
メスを向ける。
切って切って切ってなお切り開いた深奥へ、深く刃を突き立てる。
攻撃のためではない。これから込める魔力を直接流すためだ。魔力を込めて、なお心を込めて……唱える。
『"私が殺.す。私が生かす。私が傷つけ私が癒やす"』
『"我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない"』
『"打ち砕かれよ"』
洗礼詠唱。
魔術協会を異端とする、聖堂教会において唯一習得することが許される奇蹟。
魂へと語りかける奇蹟は人の心を癒やすのにふさわしいものである。ひるがえってそれは霊体や魔性にうってつけの効果を発揮するとも。
効果はシンプルだが世界でもっとも浸透した信仰をもって唱えられる言の葉は、比類なき影響力を誇る。
『───"唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる"───』
それにしても、もったいない。
代行者と魔術師。そんな関係でなければ彼女の魔術を一心に体感できたというのに。
大きく成長して、見違えるほどになったルナの成長を実感できたのに。>>236
ああ……おかしなことを考えている。別に私たちは親族でも友人でもない。たまさか縁があって一度きりの冒険をともにしただけの間柄。
それでも彼女の冒険のはじまりを知っている。
たったそれだけのことで、今のルナ・アードゥルを感慨深く思ってしまうのは、ちょっと行き過ぎなのかもしれない。
『───"許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を"───』
いつか下水道で出会った時からまったく変わらない。
ああいや、成長という意味では大きく変わっただろう。きっと私も知らない冒険をいくつも乗り越えて何度だって強くなってきた。私と出会ったころのルナではこんな大魔術を使うことはできなかったことは間違いない。
今のルナならいつかの人狼騒ぎだってひとりで解決できるだろう。
今なら、私相手でも出会い頭に殺されかけるなんてことにはならないだろう。
『───"休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう"───』
『───"永遠の祈りは、死の中でこそ与えられる"───』
でも、その芯にある想いはみじんも色あせてはいないように見える。
いつだって全力で、どんなときでも夢中になって、身体ひとつでどこへだってとびこんでいく。たったひとつの星を追いかけるために。
そんな姿をまた見られたらいいなと思った。
それが、背中を見送るものか隣にならび見るものかはまだわからないけれど。>>238
うなりを上げて地をえぐる。
移動する気だろう。それも位置調整などではなく、この場から逃げだすつもりだ。
これだけの怪物が外界に放たれれば事は考古学科だけに収まらない。時計塔全体───いやもっと大規模な神秘の秘匿をゆるがす事件になるだろう。
『逃げられれば、だがなぁ! やっておしまいクラッフ&セシボン!』
「上から言うなってんだよ!」
「まったくです」
『そう言うな! 俺たちの仲だろう!?』
どんな仲があったというのか。申し訳ないが、同じ教室に通う知り合い以上の共通点を見いだせそうにない。
まぁ……なにがやりたいか察することができるくらいの仲であることは、認めてやらなくもないが。
「どうせあのあたりだろ!」
「やりそうなポイントですね」
通りと通りを結ぶ交差点にむけてひた走る。
見ればアイツのなんちゃって迷宮がノイズのように走っている。一部の地面に"なにかある"と思わせる場所がある。>>239
そこが本命だ。
植物にわかるかどうかは甚だ疑問だが……あの直線的な動きを見れば、それも杞憂というものだろう。
「用意は!?」
「当然、できていますよ」
まず、出てきたのはクラッフ・フロースが手ずから調整した弾丸を込められたマスケット銃。
受けて取りだしたのはセシボン・トゥー・ザ・パラチンタの映写機。名を『幻廻灯帰(キクロス)』という。
本来の使い方とは違うが、彼が普段扱う銃器類はこの映写機に端を発する。フィルムの一部を寸断し、自己のイメージに合わせた武器を形成することができるのだ。
ただしイメージの精度はその出来に大きく影響する。不確かなイメージで見ず知らずの聖剣を模倣するような無法はできない。
ならば『目の前にあるマスケット銃』ならばどうだろうか?
「答えは───こぉうだ!!」
二種類の魔術礼装が共鳴する。
黒い帯状のフィルムたちが、オリジナルを目前にした確かなイメージをもって形作られる。まずひとつ、ひとつがふたつ、ふたつがむっつ、そこから先は数えるのも面倒な数に。
「本当に、無駄遣いの多い!」>>240
銃声もまた数えるのが面倒な数だけ響く。連打する。連鎖する。
単発式のマスケット銃を用いて連射を実行する。一発ごとに使い捨てられた一丁が、時間経過とともに元のフィルムに戻っていく。
それを、繰り返す。
逃げようとする"逆さ花"すらも、逃げ道が限定されるほどに、撃って撃って撃ちならす。
「ッッッィィィィ、ィィィリリリィィィ!!!」
悲鳴まじりに逃げた先は、あたりをつけておいた交差点。
エンデ・エルフィリーデ・リヒテンシュタインの"なんちゃって迷宮"。人をだまくらかして喜ぶための仕掛けがある。
そこにないはずの道をあるように見せかけて、そうまでして進ませたそこには……『落とし穴』がある。
「ィ──────ィギィィイァァァ!?!!!?」
落とし穴は戦場で出来た破壊痕を利用したものだ。あっちこっちで大暴れして出来た空隙は"逆さ花"の巨大な花弁も飲み込むまでの大穴として使えた。
一輪車じみたシルエットがすっぽりと穴におさまる。ダメージを残す触手たちも本体を持ち上げる力はない。
……だがそこまでだ。穴底には落ちてきたものを串刺しにする槍のトラップなどはない。一時的に動きを止めただけであり、間もなく回転する花弁は穴から脱出してしまうだろう。
なので、『槍』は外に用意している。>>241
「最後の、一手!」
「トドメは譲ってやる!! かませよ、ノルとやら!!」
side-「ですから『揺蕩女王(ランドレス・クイーン)』と! お呼びくださいまし!!」
「ここにきての大一番!! このわたくしが決めてさしあげましょう!!」
すでに幻槍の準備は終えている。
地に足つけて、狙いを定めて。
王に傅く騎士の如くに引き連れた十二の槍たちはすでに、十全へ足りうるだけの魔力が迸っている。
極めつけには槍と言わず己と言わず、全身へ駆けめぐる"夜"の信仰。いつかやり合った屋根の上からも飛び出さんとぶつかりあったチカラが、今は形と温度を変えて自分に流れ込んでくる。
悪くはない。
いや、むしろ良い。
とてもよろしいと言えるだろう。ルナの新魔術も、王に献上された信仰と捉えればそれは最上級の供物であるはず。なんと、なんと自分向きにあつらえられた祈りであろうか。
見方をひとつズレしただけでさらに自らが高まっていく確信があった。
最大効率をもって加算されたパワァが、今か今かと解放されるときを待つ。
申し訳ありませんわね。お集まりいただいた皆々様。
美味しいところ、いただいてしまいますわ。>>245
好きなものもりもり詰め込んだぜ、って感じの回でした
嘘つきました。詰めすぎてこぼれた分はカットしなきゃいけないくらいにドカ盛りでした。レイド書くのが楽しすぎたんだ…
最初から最後まで全部語ってくれてもいいんですのよ?暑さでもうろうとしながらも人にやさしくできたので今日の私は120点です
さてはて番外編の投下投下
残り二話~side-ヨモ・ヘルメ
膨大な魔力に灼かれた"逆さ花"は、ぷすぷすと小気味いい音と焦げくさいだけのオブジェになった。
落雷でまっぷたつにされた大木みたいになっている。そのお膝元できゃっきゃとはしゃぐのはトドメをさした『槍』の主と、あたり一帯を支配していた『夜』の主。
「ご覧になりまして!? このわたくしの!! ノルの放った全身全霊の一撃を!!」
「見た!! スゴかった!!」
「でしょう!!? そうでございましょう!!! もっと! より! さらに! 褒め称えてよろしくてよ!!」
「めっっっちゃスッッッゴい!! 本日の1等賞で一番星!!!!」
「ん、ん、ん~~~~~!!! いいわいいわ、最ッ高の気分ですわぁ~~~!!!」
……すごいなぁ、あの2人……。
ルナちゃんとノル……ちゃんが揃うと、ものすごくすごい。言葉を選ばなければうるさい。すごくうるさい。
金銀にかがやく頭がぴょんこぴょんこと跳ね回って、視覚的にもとにかくうるさい。
そんな2人の姿がはっきり見えるようになっている。それはここにいる魔術師の数だけ広がっていた夜が霧散したのを示していて、
「ヨモちゃん!」>>249
「かっ、隠して! なんでもいいから隠して!」
「そんなこと言ってもー!!」
さっきまでの魔術師らしさたっぷりの空気は鳴りをひそめて、ルナちゃんはうずくまってぴーぴーいうだけのイキモノになってしまった。
かくいう私もおろおろおたおたと狼狽えるばっかりで、なんの意味もなさない布面積のハンカチを差し出すことしかできない。
おろおろぴーぴーおたおたぴーぴーとやってるうちにルナちゃんの友達らしい代行者のヒトが、羽織っていた白衣をそのまま貸してくれた。そうやって時間を稼いでいるうちにセシボン先輩が『映写機』からフィルムを裁断して真っ赤なドレスを仕立ててくれた。
「たすかった~……セシボン先輩ありがと」
ルナちゃんが安堵のため息をもらす。私もまったく同じように息をはきだした。どうしてこうもいろんな方向に心配させてくるのか。
「なんでこんなド派手なやつなのかは気になるけど……」
「映画のシーンから切り取ったからな。すぐ出せてルナにちょうどいいのがそれしかなかったんだよ」
「まぁそういうことなら、仕方ないと思うけど」
「なるべく長持ちするやつ選んだから安心しろって。たぶん2、3時間くらいは保つから」
「短ッ!? 服の寿命じゃないよ!?」
「元はフィルムだからしょうがないだろ。お前な、映画のワンシーンを1時間以上も引き延ばすのがどれだけ恐れ知らずなことかっていう……」
「いい! 聞いてる場合じゃないしそれどころじゃない!」>>250
ルナちゃんはなおも半分パニックみたいになっていた。
一緒に戦っていたみんなも集まってきた。誰かが顔を赤くして目をそらして、また別の誰かが指をさして笑ったりしていた。
それが、そうしてわいわいぎゃあぎゃあ騒ぐ姿が、いつもの教室で見るルナちゃんとなにも変わらなくって。
「……よかったぁ」
つい、思ったままが口に出ていた。
耳ざとく聞いたルナちゃんが顔を向ける。
「ごめんね、心配かけて」
「……いいよ」
「これからも心配かけちゃうけど、それもごめんね?」
「……いい、とは言わないけど。うん、しょうがないよ」
あんな光景を見せられてしまったら、なにがなんでもダメとは言えない。代替になるなにかを私が差し出せるわけでもない。……元をたどれば、私は差し出すどころか誕生日にかこつけてルナちゃんの好きな物を取り上げようとしたんだし。
あ、そうだ、元々はルナちゃんの誕生日って話から……。…………誕生日?
なんだっけ、なにか、大事なことをわすれているような……。>>251
「…………ぁ、あーーーーーーーーっっっ!?!!?!?!!」
我知らず口をついてでた絶叫に一同の動きがぴたりと止まる。一番さわがしくしていたルナちゃんとノルちゃんも、目を丸くしてこっちを見ている。
「おぅなんだ、どうしたどうした」
「なになになに!? ヨモちゃんなに!?」
『おおヨモ嬢よやっと気づいてくれたか? 俺という主役のいない空しさに、』
「クッッッッソやかましいですわね!! 一体なんですの!?」
「俺の……俺のヴィーナス……どうして、どうして……」
「……ヨモってあんなに声だせるんだなぁ……」
びっくりさせてごめんなさいという気持ちも今はそうそう湧いてこない。だってそれ以上に申し訳ない事態が、現在進行形で発生中なんだから。
「誕生日! ルナちゃんの誕生日っ! バースデーパーティー!!」
ルナちゃんをロクスロートから遠ざけようとしていた、そもそものバースデーパーティーは何も中止になったりしてない。
今もここから離れた全体基礎科の一角を借りる形で、進行しているはずだ。主役不在のまま、ずっと。
…………というだけの内容を、しどろもどろになりながら何とかみんなに伝える。その間もどうしようどうしようという焦りが止まらない。>>252
「つまりどういうことよ?」「誕生日なんだって」「誰の?」「あ、私」「そうなの? おめでとう」「ありがと!」「(ほっこり)」「いや違う、じゃなくてさ、」「結局やばいのは主役不在ってことでしょ?」「あの会場、今ヤベぇですわよ」「どういう風に?」「意味深で不気味な輩がごまんと!」「民主主義と中立主義が組むみたいな話とか」「ロード・トランベリオが関わってるって話も出てたような」「僕が確認しただけでも色位の方は来てましたね」「なんでよ????」「ただの誕生日パーティーなんだよね?」「あ、法政科的には探り入れろくらいの話になってまーす」「めちゃくちゃ大事になってるじゃん」「ルナどうすんの?」「私? これ私がわるいの???」「言うまでもなく日頃の行いは悪いでしょう」「そうだけど!」
「はわわ……」
ダメだ、こっちはこっちはまとまりそうがない。私の頭もなんだかぐるぐるしてきた。わけがわからなくなって、フリーズしそうになる。
「なにはともあれ、事情の説明は必要でしょう」
たしか代行者の……ジルさんがぴしゃりと言って、みんな少し静かになった。
「これはただの誕生日を祝う会なのだと、主役と主催者をそろえた上で宣言するのがもっとも話が早い」
「主役はルナとして……主催者って?」
「名義の上では僕ですが、実際はヘルメさんですね」
メレクくんがすっと話に入って、流れるようにバトンをパスした。
その場の全員の視線が集中する。
ルナちゃんでもメレクくんでもなく私に集中する。全身のそこかしこから聞こえる声が悲鳴の形でそろった気がした。>>254
だのに待てど暮らせど目当てのエサは見つからない。ありもしない裏の真意を図りかねてはよからぬ想像ばかりふくらませていく。
「事故というなら数だけ揃えた民主主義派がああもいるのが事故だ。なにが待ち受けているにせよ、この場にふさわしくないことだけは確かだろう」
「なんだ? 無駄にデカい声で聞こえるように言ってくれるな? それがお貴族様の作法ってか?」
「ほう?」
「あぁ?」
一触即発。
真相も過程もあやふやな状況で、派閥の違いという明確な現実に人々は寄りかかろうとしていた。
その時だ。轟音と衝撃があった。
間髪入れずにどたどたばたばたぎゃーぎゃーわーわーと品もなにもない騒がしさ。
パーティー会場に通ずる、もっとも大きなとびらがばーんと開かれる。
赤いドレスがはためいた。
少女が銀色の頭をゆらして駆けていく。一歩後ろをまた別の少女と、そして少年とが追いかける。
ひとりと、ふたりが、会場でもっとも目立つ場所まで踏み込んだ。
すでにほぼ全員の視線が集まる中、少女がさけぶ。>>255
「遅れてしまってごめんなさい! 本日の主役……らしいルナ・アードゥルです! お集まりいただきありがとうございます!」
「わた、わたた、私は、私が今回の主催者をつっ、つとめさせてもらいましたヨモ・ヘルメです! 今日はルナちゃんの誕生日パーティーに来てくれて、ありがとうございます!」
あらかじめ用意していたセリフだろう。つっかえながらも大きな声で言いきって見せた。
さてさて、それを受けた紳士淑女方の反応は……やはりというかなんというか、さぞ困惑されていた。
「誕生日ってなに?」「暗号のつもりか? すでにふるいへかけられて……」「いやそもそも前提からして確かな話は、」「主催者だぁ? アレが? あの小娘たちが?」「なんか……ヘンだな? なにかというか全部ヘンだな?」「身代わり……にしても貧相だな」「どこの家の者だ?」「ロード・トランベリオの新しい妾では?」「若すぎる」「娘というのなら理解できるが」「少なくとも貴族ではあるまい」「でもあの子ちょっとカワイイぞ」「"ちょっと"ォ!!?!?」「でもこれが本当だとしたら……」「ん? あっちの子いつか飛んでたような……」「いいやこれは陽動だ」「なんだ暴れるヤツが」「あるはずなんだ本命が。ここは時計塔なんだぞ!?」「黒幕だよ黒幕!!」
お集まりいただいた皆様は口々に、そして思い思いの言葉を吐く。
そんな中でもひとつの疑念が湧き上がっていた。「もしかして本当にただのお誕生日パーティーなのか?」という疑念が……あるいは直感が。
なぜなら誰しもが何かあるとだけ考え、何があるかを把握していた者はひとりもいなかったのだ。
大仰な噂話に流されて、無駄に話の規模だけが大きくなっていった。自分たちもその流れに一役買うことになってしまった。
滑稽である。
ひどくひどく滑稽である。
この事実に憤りを覚えた。こんな空回りを演じさせられては屈辱でしかない。理解がもたらした憤りはそのまま、怒声として発せられる寸前まできていた。
それは当然の話。
彼ら、彼女らは、時計塔の歴史をつむいできた貴族たちなのだから。>>256
(…………しかし……………)
貴族だから、貴族であるゆえに動けない。声にならない。
それもまた当然の話。貴族ならば優雅たらんとせねばならず、この場で感情のまま声を上げることは醜態を晒すことと同義だった。『噂話に踊らされた間抜け』という烙印を押されることは、時計塔においては致命的だ。
誰かが一声あげればそれでよかった。
だが、声はない。
保身に走ることを考えた。
無難に流すことを考えた。
そうして───……ぱち、ぱち……と小さな音がはじまった。拍手である。ひとりがはじめれば、すぐさま我も我もと音が連なっていく。
拍手──────祝福ッ!!
この場があくまで『お誕生日パーティー』であるなら、そのように進めるべきと判断したのだった。
自分たちは良き隣人を祝福しただけ。それ以外の目的はなにもない。おっと噂話? はははそんな話を真に受けているのかい? いいから君も手を叩きたまえよ……と。景気のいい拍手とパーフェクトな作り笑顔でアピールしていく。
図らずも会場の人々は一致団結した。主に保身によって、ためらいのない祝福があふれていく。
「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとうルナ・アードゥル!」「ハッピー・バースデー!」「君の生誕に祝福あれだ!」「おめでとう!」「おめでとう!」「お誕生日───おめでとう!」>>259
どったばったやってハッピーエンドというか何処となく爽やかなエンディングに向かってる感じ。
まさしくルナちゃんの誕生日みたいなエピソードだなぁと
>>221
>自分がどう認知されてるか調査するのが流行ってるらしいから私もやってみたい
なんというか、まとめ役というか。現状の大会スレ代表、という認識ですかね、自分→黒鹿さんへのイメージとしては
不在時間は少ないし、コンスタントにSSの投稿もしてる印象。あとはリレーSSのGM経験もある訳で。
なので自分としては”引率役”や”リーダー”って感覚になる部分はあります。
>いろいろいっぱいやらかしてきた
(うっ心が……っ!)同じように私の認知調査をすると、結論が”トラブルメーカー”になりそうな気がする……ので割とビクビクですわ~!!!>>221
>バイキルトそのものにバイキルトかける…なんかそういう実験やりそうだな…
実際問題、ルナちゃん新魔術(術式名どんなだろ?詠唱は出たけど、明確に術式名が登場した訳じゃないですよね?)の支援限界、辺りは検証した方がいいでしょうし
>主人公のとっておきが全体バフなんて地味すぎると思ったんですが、ルナならこうするよなぁとも思ったのでこんな形に
キャラの”とっておき魔術”がどうなるかってのはまた色々と発展性のある話題……。でも「こういうキャラなのにこういう魔術になった!?」というのは案外頻発するのかも。渇望というかある種欲求の到達点になるのでしょうし。
……なんでこんな事言うかっつったら実はクッチーにも”とっておき魔術”があってぇ……ちょいちょい『下拵え』に関する描写もしてたりしてぇ……。ちなみにキャラ的にありそうな”攻撃系”じゃないんだなコレが>>263
確かに最近はかなり活動量が低下してますよね……私も寂しい。
ガンガン書きたいけど時間を作れない集中力は持続しない中々うまく筆が進まない、甘えなのは解ってるんですが
黒鹿さんはどうやってるので?以前の活気があった時期でも、個人で継続的に、ってのは案外いなかったと思うんですよね。印象としては。なのでこう、繰り上げ評価ってつもりはそんな無いかな
>ステラリウム
素敵なお名前……。こういうのはセンス、大事……。クッチーの”とっておき魔術”は「とある人物名(ネタバレにつき伏字)の沼船(デッドマンズ・テスト)」だったり。早くルナティックで登場させたいなぁ
つーか最近はかなり読書量が減ってるというか、創作的娯楽的なインプットアウトプットが停滞してる……。改善していかないとアカンまじでside-モートン・ドラモンド
「首尾はどうだ」
考古学科・名無しの教室が入る学術棟の一室、その執務室でのこと。
いくつかの"後始末"を一任していたテレータ・タブロイエフから報告を受けていた。
まだまだ陽の高い時間帯ではあるが、今日は……というより、ここ数日は教室の講義も停止している。
先日の霊墓と繋がった一件はそれほどの出来事だった。今も名無しの教室講師一同は事後処理にかかりきりになっており、まともに授業ができるほど手の空いている者は非常勤を含めてひとりもいないというのが現状だった。手も足も止めている暇はない。
「ヘマしてりゃ疲れるだけの報告会なんてサボってますよ、ドラモンド先生に怒鳴られたくはないですもん」
「報告という自覚があるなら直裁に述べろ」
それでもこの報告だけは手も足も止めて聞かねばならない。
噂好きのテレータ・タブロイエフ。聞くも話すもお茶の子さいさいな軽薄男に任せたのは、端的に言えば情報操作だった。
ロクスロートだけに繋がった、あえて言うなら考古学科が独占できる形にあった霊墓アルビオンの"泡"は言うまでもなく極秘事項だ。その極秘事項に絡んで大暴れした阿呆共が集結したのが先日の一件なのだから、最大限気を遣わねばならない。
さらに言えば阿呆共のうちの一名は我が教室の生徒───とはいえ神秘絡みの事情もあったようだが───であるルナ・アードゥルが盛大にやらかしてくれた。これには胃痛も捗るというもので、この情報操作は元々の予定も併せて念入りにやるよう徹底したのだ。>>266
「それで……どうだ、上手くいったのか? 噂の上書きは」
「えぇそりゃもう! 丁~度よく期待と憶測が半々まじりに飛び交ったバースディパーティーがあったもんですから! こんな根も葉もそろった幹同然の話題なんていくらでも広げられるってもんですよぉ~!」
普段の気怠げな態度もどこへやらだ。なまじ趣味の領分でもあるだけに、その口はくるくるとよく回る。
「他学科にまたがって顔を見せていた行動力があったのも……おっと、いやまァ? ドラモンド先生におかれましては素行不良と怒鳴りつけたいところでしょうがね? それでも顔か名のどちらかが知られているってだけで、話題性はダンチになるもんですよ。どこぞの悪名高き二世殿が良い例です。いや悪い例かな?」
「……どちらでもいい。とにかく本命が隠せれば、それでいいのだ」
「もっちろんバッチリですよぉ! もともと考古学科総巻き込みの一大プロジェクトってなりゃ手も声もいくらでもってもんです!! 貴族・民主・中立それぞれの派閥に余すとこなく広がりまくったことでしょう!」
「だが……ここは時計塔だ」
「ま、勘づくヤツはいるでしょうね。それでも今の状況ならどうしたって情報のタイムラグは出る。我ら考古学科はスタートダッシュ一歩分の余裕があり、その余裕が埋まる頃にはつかむ尻尾は影も形もありません」
「そう、か」
知らず、身体の重みが増していた。
気が抜けたのだと自覚したのは、数瞬後のことだった。
「あらら、あーららら? どうやらお疲れのようで? 今日はこのあたりにしておきます?」
「馬鹿を言え。噂の上書きだけで後始末が終わるものか。仕事は、まだいくらでもある」
「うへぇ、やだなぁ……」>>267
「露骨にやる気を無くすんじゃない」
「そうは言いますけどねぇ、あと何があるんです? 『"逆さ花"』『フィーバー・ファーム』『調教師』『トラウィスカルパンテクートリ』と大方の問題は片付いたでしょう?」
「それらが暴れに暴れてくれた破壊痕の補修は必須だ。人払いはしておいたが道路や建物はそのままというわけにもいかん。街灯から水道管まで伝統あるロンドンの街並み、その一部だからな。演出にも気を遣わねばならん」
「モロ肉体労働じゃないですかぁ、それ本当に講師陣の仕事です?」
「手が足りん。それがすべてだ」
とはいえこれも楽な部類だろう。
余所では神秘の秘匿を原則に各方面の辻褄合わせに奔走していると聞く。例のバースデーパーティーでその大部分をカバーできたのは非常に大きい。
「つってもこのところず~~~っと働きっぱなしですよ。ぶっちゃけ休みたい」
「耐えてもらう他ない。とはいえ貴様も今回は立派な功労者だ。すべてが終われば、非常勤の2人も交えてドラモンド流ディナーを馳走しようではないか」
「絶対イヤですよ。どうせ筋肉式なんでしょう」
「闘牛式だ」
「ひとりで宅飲みします」
むぅ、私の立場で贈れる最大限の褒美であるのにどうも受けが悪いな……孫のベルディオールは大喜びで参加していたものだが。牛角を握り砕くのは今時の若者には流行らないのだろうか。
「……シウンとダグラスにも聞くだけ聞いておこうか?」
「上司の押しつけって今の時代アブないですよ。ホラもうそんなことより仕事しましょ仕事!」>>268
なんと珍しい、テレータが仕事への意欲を見せている。
その行動理由には釈然としないものを大いに感じるが、やるべき事が山積みなのもまた事実。
「うむ。では───仕事をするか」
side-名無しの教室
いくつもの騒ぎから、また数日経った日のこと。
「ご、ぉぉうぉぉおおお、ぐ、ぐ、ぐ、ぐぎぎぎいぃぃぃいいい!!」
昇りつつある陽がさしこむ穏やかな午前の教室に、まるでふさわしくない絶叫が響いている。
絶叫の主はエンデ・エルフィリーデ・リヒテンシュタイン。未だ白紙のままのキャンパスを前にひたすら苦しんでいる。すぐそばには厳しい顔つきのシウン・ヴィルクレツィアが陣取っていた。
おおよその事情を知られるところであり、教室の中に彼を気にかける生徒はひとりもいない。
唯一、事の顛末を知らないネズミだけが気にかけた。
「……なにアレ」
「カヴン先輩は気にしないでください」>>269
「なるでしょ、うるっさいのよアレ」
「あぁ、そこは『かわいそう』とかじゃないんですね」
「そーゆーのアイツに似合わないでしょ。どうせなんかやらかしたんだろうし」
「自業自得なのはまぁその通りなんですが」
「で、なにしてんのアレ?」
「反省文代わりの課題だそうです。シウンの憑き物をキャンパスに収めろと」
「……それ課題にならなくない? アイツ絵ぇ描くの好きじゃなかった?」
「はい。なのでシウンが被写体になったみたいです」
「???」
どういうこっちゃ、と疑問を全身でアピールするネズミ。
見ていればわかる、とばかりにエンデの方をあごで示すクラッフ。
そして当のエンデ本人はというと、
「くぅぅ美しくない……直接的に言えば呪い同然のケガレなどまったくまるで全然美しくない……そも、見えん……!」
「見えないのならば見えるようになりなさい」
「そんな簡単に!! お茶目なサプライズの代償がトラウマの払拭とは少々酷では!?」
「は? お茶目?」>>270
「失言でございました! 我が行いについては海の底より深く反省しております!」
「……はぁ。魔眼が問題なら、問題ないように操ってみせなさい。これはそういう課題です」
「しかしですねぇ!! そう簡単に操れるものなら苦労はないですよ!? 我が魔眼はこれでもいっぱしの問題児! じっくり語れば人生に根ざす勢いの根源的課題と言ってもいいほどなのですから!! それをこんな罰の代わりのように克服するなどロマンに欠けるというもの───」
「なら今日は運命の分かれ道ですね。よりいっそう励むように」
「oh…………」
絶対に逃がさないぞという決意を秘めた一声だった。
エンデはうめいて、そして諦めたように目をこらす。数秒でまた発狂していた。
「……とまぁ、ああいう感じでして」
「まぁアイツが思いつきでやらかすのはいつも通りね。シウンがキレ気味なのは珍しいけど」
「あー……色々あったといいますか……」
考古学科管理下に集中して霊墓の『泡』が大量発生するという珍事。
そこに被せるべくして起きたルナ・アードゥルのバースデーパーティー。
二つの騒ぎがぐるぐるまざって大変なときに、場をひっかきまわすようなやらかしをしたのがエンデだった。>>271
「なんか……デスゲームしようとしてたらしくて」
「ですげ~む~~~???」
「なー、意味わかんねーよなー」
ここで、セシボン・トゥー・ザ・パラチンタも加わってきた。暇つぶしの雑談だろう。
ちなみに本日、名無しの教室で行われる講義は1コマもない。講師陣がそろいもそろって忙しくしているため、本格的な授業再開はまだ時間がかかるということだった。
非常勤講師であるシウンもまた、それなりに無理をして教室まで出向いている。
よって、さびれた教室はいつも以上に閑散としているのだった。
「だからあんな怒られンだよ。『時間が経ってなぁなぁにされても困る』とかって」
「ふぅん、テキトーに五年くらい掃除させときゃいいのに」
「いや長っ」
「あっという間でしょ?」
「たまに出てきますね時間感覚の違い……」
「アンタらもすぐわかるわよ。で? それでアイツだけ罰受けてんの?」
「デセフィオもじゃなかったか? 先週ずっとトイレ掃除してたろ」
「あとは現代魔術科のリキッドクラウンも、ですね。例の略奪公から直々にお叱りを受けたようで、しばらく忙しさで缶詰とか」
「うっへぇ」>>272
「……忙しさという意味では自分も大差ないですがね」
「そういや教室でフロースの顔見たのも久々な気ぃすんな。なにしてたんだ?」
「法政科と秘骸解剖局を往復していただけですよ」
「?? なんでまた?? べつに用事ねぇだろ??」
「……なんでそう極端に察しが悪くなるんでしょうね」
「……………?? んー………………あ! アレか! とっ捕まった『調教師』がどうのこうのと、」
「思い出せたようでなにより。用と言えばたったそれだけですよ」
それっきりクラッフは口を閉ざした。具体的に何をしていたか言うつもりはないらしい。言わないのか、言えないのか、その胸の内はわからない。
自称・大先輩のネズミはぼんやりした口調で言った。
「なんか、色々あったのね。アタシがいないうちに」
「他人事のように……」
「実際ほぼ他人事でしょ」
「てかそうだ、それだよ」
「どれよ」
「あの騒ぎのとき先輩いなかったろ? 何してたんだよ?」
「あぁー……んー……」>>273
妙に歯切れの悪い返事。いつも思考と言動が直結しているようなネズミには、珍しいことである。
「いやアタシはアタシで後始末してたっていうか……ママが見つかって面倒だったっていうか……そうね、そんな感じよ」
「わかんねぇよ」
「まぁ何してても不思議はありませんが……」
「…………まぁ、結果だけならあるけど?」
「結果ァ??」
「後始末に結果……?」
「アレよ、アレ」
どれだ、と示されたほうを見ればそこは教室の前方窓際だった。
日当たりがよく、ゆえに日に焼けて色あせたデスクの上に"それ"はあった。
「……花瓶?」
「違和感があるとは思いましたが……」
セシボンとクラッフがそれぞれ凝視する。
初見のものをじっくりと観察して、それでも思い当たるものがなかったようで、ゆっくり視線を戻す。>>275
side-間久部理仁
2人分の靴が石畳をたたく。
「んしょ……っと……」
ヒースロー空港から歩いて15分ほどの場所で車を降りた。
どれほど効果があるか疑わしい小細工だけど、弟が言うにはこういうときこそ注意して人目を避けなきゃいけないらしい。
お貴族様ってのものめんどくさいな。そう思いながらここ数日のロンドン観光で物が増えまくったキャリーも降ろす。
「ありがとうな、フェーブス。送ってもらっちゃって
「いえ。執事ですので」
「はは」
運転席から返ってくる声は昔の記憶となにも変わらなくて、ついつい懐かしくなってしまう。
オレはもう執事なんかお付きになれる立場じゃないってのに、律儀なやつめ。>>276
「もっとテキトーにしてくれてもいいんだけどな。なんならタクシーとかでも、」
「そういう訳にはまいりません。主からもこちらを優先するように、と重々言い含められておりますゆえ」
「律儀なのは主従揃ってかよ」
「不慮の事故とはいえ、予定外の騒ぎに巻きこんでしまったという負い目も、あるようでしたので」
「……オレが道に迷わなきゃそれで終わってた話の気もするけどな?」
道に迷って、ルナに出会って……で、そこから首突っ込んだのはオレ自身だから、あんまり気にすることでもないと思うんだけどなぁ。
そもそもこのタイミングで呼び出さなければ、とか考えてんのかな。……そこまで考えるようなタイプかなアイツ。わかんねーや。
「"間が悪かった"だけで割り切れぬことが、世には多々ありましょうから」
「それ言うならオレ的には"間が良かった"になるけどな。今回みたいな形でもないと会えなかったろ」
ルナ・アードゥル。
オレの知らなかった、弟の相棒。
ちらっとしか聞けなかった冒険話もきっといろいろあるんだろう。トラウィスのことだって完全には終わってないだろうけど……でもその一端を知れて、それどころか混ざることもできた。
その上で今こうして平穏無事にロンドンを発とうとしているんだ。全部ひっくるめて"間が良かった"としか言いようがない。>>277
「だから、本当に良かったよ。あんなふうに弟から自慢されたのも初めてだったしな」
「それはそれは。ようございました」
「ふぅん? へぇぇ? ほぉぉ~~~???」
「……な、なんだよルピア」
「今からあたしとスコットランド行くのに、もうそんな終わった感出しちゃうのね?」
「いや……そりゃ、それとこれとは、別だろ」
こちらもまた大きな荷物を引くルピア・ヴィルガルムが、挑発するように理仁の肩をぐいぐいと押す。
「てか……本当に行くのか? 法政科とかってのもまだまだ忙しいんだろ?」
「は? 行くに決まってる。元々そのつもりで、その予定だったんだし?」
「その予定が一回ぶっ壊れたから大丈夫かって聞いてんだけど……」
「だから改めて大丈夫なようにしてきたっつの。向こうじゃ朝から晩までつきっきりだから」
「うん、それがまた不安なんだけどな……」
ここ2、3日のロンドン観光もほぼ顔合わせてなかったし……それが今日会ってみたらこのはりきりようだ。
スコットランドに着いたらなにをされるかわかったもんじゃない。
いやまぁ別に? ぜったいになにがなんでもイヤってわけじゃねぇけどさ? こっちはこっちでタイミングとかもあるわけだし……。>>278
「そう言ってもまんざらじゃないだろ? 俺と2人っきりなんだから」
「~~っ……あーもう! いいから行くぞ! 飛行機の時間だってあるんだから!」
「やぁん♪」
わざとらしい声をあげるルピアを力任せに引っぱっていく、んだけど、すぐに体重を預ける形にされてしまった。くそ、荷物が増えただけじゃねぇか。
心中でぼやくのを一旦しまって、最後に、フェーブスに振り返った。
「じゃ、そろそろ行くよ」
「はい。なにか、言伝はありますか?」
誰に、なんてのは聞くだけ野暮だろう。
とはいえオレからの言葉にどれほど意味があるか。魔術がどうの貴族がどうのって分野はオレよりよっぽど精通してるだろうし、かといって仰々しい言葉もなんか似合わないし。
だから、うん、これくらいがいい。
「『よき旅を』っつっといてくれ」
「あぁ……ふふ、それはちょうどいい」
「ちょうどいい? なにが?」
「便も向きも違いましょうが。あちらはあちらで───」>>280
これが私の出した論文が話題になってるとかなら、優越感たっぷりにどや顔してるのに
もしくは呪いみたく指向性をもった悪意なら、ひとり残らず噛みついてやるのに。
「……ってわけよ」
「まじか、すげーお騒がせ娘じゃん」
「だろ? これで実際に動いた連中がごまんといるんだよ」
「そこデマくさいけどな。ンな生徒一人に注目する訳ないし」
「格のある家がそこそこいたんだよ。それで話題になったとこあって、」
話題はもっぱら例の誕生日のこと。
ほぼほぼ知らない人たちから誕生日を祝われた謎すぎる誕生日パーティーは、その顛末にふさわしいおかしな話題の広がり方をしたらしい。
あれで私は時計塔全域に顔と名前を覚えられてしまった、もっと名誉ある形で話題になりたかった。10代で典位に至ったエルメロイ教室の生徒、みたいな感じのやつで。
とにかく自分のうわさ話が聞こえるのはよろしくない。
するりと向きを変えて道を変える、と……
「あ、アレじゃない?」「どれ? どの子?」「この頃よく聞くなルナ・アードゥルって」「結局何もなかったってオチなわけ?」「ロードすら動いたのに何もない?」「それこそウソくせぇわ」「情報操作よ情報操作!」「パーティーの参加者しか知らない真相が───」「アードゥルって西にいたモグラだろ」「それ参加したけどホントになにもないよ」「マジ??」「マジ」「例のエルメロイも探り入れてきたって」「どこ情報?」「いつものスパイ」「蓋を開けりゃしょうもないってあるあるだろ」「魔術師がそんなこと言うんじゃありません!」「なんかすごいことやったんだろ?」>>281
うぁー。
こっちのほうがひどい。
いっそ走って突っ切ってやろうか。
そう思っていたところに、ゆるい風が頬にふれた。
「……これ……」
なじみのある魔力。
手招きするような空気を流すだけの魔術だ。
誘われるままさらに向きを変えて、風に逆らわず歩いていく。せまくるしい廊下をぬって、一度空き教室をまたいで、そうして向かった先に術の主はいた。
「そのように人目を避けて……まるで時の人ですね?」
「メレク-!」
見慣れた顔と聞き慣れた声にほっと一息。
待ち合わせにはまだまだ早い時間だけど、状況がコレだから迎えにきてくれたんだろうか。
「ありがとメレク。もうほんとたすかった~」
「いいえこちらこそ。おかげで貴重なものが見れました」>>282
「へ? なんかあった?」
「周囲に振りまわされるルナ、という貴重かつ面白いものが見れました。ありがとうございます」
「…………」
よし前言撤回。コノヤロウ、とだけ思っておこう。口には出さないけど。
代わりに足を動かす。
外に向けて歩いていく。
どうやらメレクは本当に面白がっているらしい。いつもより多い口数で主催者の裏事情を聞かせてくる。
「何よりも、この一件を画策したのがヘルメさんというのが、また面白いのですよ」
「メレクとヨモちゃん2人で黒幕してたんだってね……うらむよ」
「おやそれは恐ろしい。自らの日頃の行いが、巡り巡った事実を棚にあげてまで恨み節ですか?」
「コノヤロウ」
しまった出ちゃった。
にくたらしい顔をしていたからつい。
「それに、ヘルメさんに対してもそう言えますか? 生誕の祝いをそっくりそのまま呪いにすると?」>>283
「……そりゃ、…………いや無理かもだけど……」
「そうでしょう? ならば滅多なことは口にしないことです」
「魔術師が言うとシャレにならないってんでしょ、わかってますよーだ」
横向きにべーっと悪態ひとつ。
そんな私に気を悪くするでもなく、むしろ安心したような顔をしてみせた。
「そんな調子で大丈夫か……とも思っていましたが、心配することはなさそうですね」
「どういう意味で大丈夫?」
「これからの話です。今から出発するんですよ、次の冒険に」
「ああ。うん」
そうだ。
そうなんだ、私はまた冒険に行く。
だから今の格好も時計塔の制服じゃなくておでかけ用のポンチョだ。トラウィスのアホにめちゃくちゃにされたからコレのおニューのやつだけど。
……このおニューを用意するだけで一騒ぎあったけど、それはまた別の話だ。>>285
「見送りにきてくれたの?」
「う、うん」
「ありがとー!」
手をとってとられてぶんぶんぶん。大型犬にじゃれつかれているみたいだった。
出発直前でテンションが高いのあるんだと思う。視界に入るなにもかもを楽しんでいるようにすら見える。今はまだ、日常と変わらない景色だろうに。
「ルナ、ほどほどにしてくださいね? ヘルメさんも困ってしまいますよ」
「ん、そだね、ごめんねヨモちゃん!」
「ううんぜんぜん、べつに、ぜんぜん」
ルナちゃんがぱっと手をはなした。けれどうずうずしてしまうのは変わらないみたいで、まだ何事かを口にしようとしている。
そのまえに、私はメレクくんに顔を向ける。
「メレクくん!」
「はい」
「本当に……本当にルナちゃんのことお願いするね! メレクくんが最後の希望だから!」
「お任せください。必ずや、五体満足で生還させてみせましょう」>>286
「ありがとう、でも、メレクくんも一緒にね! 帰ってくるときは2人揃って、だからね!」
「言うまでもありません。無事と帰還を、お約束いたします」
「うん…………うん!」
「ねぇなんでそこ通じ合ってんの? 私めっちゃおいてけぼりなんだけど」
今だけルナちゃんの抗議も聞かない。
言っても開き直られるだけってことは、この前のことでよーくわかったんだから。
「ルナちゃん!」
「あ、はい」
「メレクくんの言うことちゃんと聞かないとダメだからね」
「う、うん、聞くよ、聞きます」
「知らない人にホイホイ着いていったらダメだからね」
「行かない行かない、行かないよそんなの」
「知らない神秘をみつけても、すぐ飛びこんじゃダメだからね」
「………………。………………ぅー」
「ルナちゃん?」
「善処しまぁす!」>>287
返事はしてくれたけど、いざってときは100%飛びだすっていう確信がある。そこはやっぱりメレクくんを信じるしかない。
「あとは生水を気をつけなきゃだし、荷物も細かく見ててほしいし、ホテルも本当に大丈夫かどうか何回も確認して、それとは別に忘れ物は本当に注意して、神秘の秘匿もあるから魔術の使いどころも気にして、あとやっぱり危ないことはなるべく避けてほしいし、あと───」
「ヨモちゃん」
「っ───……」
「大丈夫! 帰ってくるから!」
「…………うん」
結局、この笑顔ひとつでまたなにも言えなくなる。またずるい顔してた。
あれこれとまくし立てたけど、見送る側にできるのはどうしたってここらが限度。
心配。不安。そんなところに根を張った言葉だけじゃ、あとはもう似たようなことのくりかえしになってしまう。
「ルナ、そろそろ」
「そだね。じゃあヨモちゃん、」
「……うん、ルナちゃん」お久しぶりデース、いや本当に
心身ともに余裕の介在が少なく、ROMれてもレスするための言葉が纏まらないことが多く…閻魔亭の周回の中で気力がちょっと回復したので生存報告をば
>>290
↑の通り実は全編黙読させてもらっていました〜なんて素敵な番外編なんだ…!
教室のメンバーを中心に、普段チラホラと交友のあった時計塔のメンバーどころか全派閥を結果的にとはいえ巻き込んでみせたルナちゃんはまさに太陽ですね…グラビティ重力圏…!
それでいて彼女が今回で身につけた奥義が自身が輝くというわけではなく、輝ける全天の星の光(神秘)をより眩く!という方向性なのがあまりにらしい。太陽のような明るさがありながらも、“月”として自ら輝くものたちのことをよく知っているからこそのもので心の中のヨモも大興奮でした
ヨモの葛藤のお騒がせっぷりが作者として申し訳ねぇ〜このペトリコールガールが…!となったもののそこからそれでも進む、鬱ぎがちな雲の隙間からでも手を伸ばし足を伸ばすルナちゃんは本当に月明かりだなと…
無事にまた見送ることができるようになってよかった、今度からは待つことを少しは楽しめるようになれてたら…なれてるかな…いいね…
他のキャラも読んでいて掛け合いとかがとても温度を感じることができて、セシボンのクラッフくんとの遠慮会釈のないやり取りとかテレータのだらしなさとかにヘドバンが止まりませんでしたわ!
感想書けてなくて申し訳なさで一杯ながらも、新たなルナちゃんの旅路への期待がいや増すSSをありがとうございました〜!>>291
よかったぁ……本当によかった……!
お久しぶりに生存確認できたのもよかったしそんな風にも言ってもらえてよかった
もう一安心です。魂が抜けます。抜けました
今回ある意味でヨモちゃん編として好き勝手しまくった上で、ルナに対してこういうこと考えてそうだなって思ったものを詰め込んだのでもうほんと……ほんとに……ぁぁあ……
いろいろ全部ひっくるめてこちらこそありがとうございます! ヨモちゃんがいなければこの番外編はありえませんでした!
あと、絶対読んでくれてるってことだけはずっと信じてました!!!『郷愁永巡刻盤パスト・カルデア』開幕から2週間でようやく話せる……!
北欧の伝承保菌者考えてたら直球で三女神が運命の糸宝具まで持って出てくれてめっちゃ捗る!
運命・時間の女神の在り方もめっちゃ味わい深い!
そんでもって2週間スレ断ちしてたので感想をば……
>>217
召喚詠唱調のルナちゃんの新詠唱よすぎる……!切り札が魔術師(なかま)へのバフってのも魔術が見たいルナちゃんらしさがあっていいですね!
>>244
ルナちゃんに続いてジルさんの洗礼詠唱もタイミングがめっちゃ良い、筋骨隆々のモートン先生がスライムアーマー纏ってる絵面も凄い
そんでもってノルがまためっちゃいい役をもらってる!!ありがたい!
>>259
こういう時計塔内の政治的立ち回りの話も好きなので、なんか誕生日会に参加させられてもとりあえず祝福して場をやり過ごす貴族の皆さんもめっちゃ面白い
>>290
相変わらずside演出がオシャレすぎる……!冒険旅行記の番外編でしたものね、このエピソード
これだけの登場人物に見せ場を与えつつ爽やかな締め、お見事です お疲れ様でしたとってもいっぱいものすごーく気が抜けております
書きたいものがいっぱいあるはずなのにボディとメンタルがまったく一致してくれない
どうすればぁ…
>>293
すごく、めちゃくちゃ褒められてる……ありがとうございます……
今回はフィンランドの反省点込みでとにかく「キャラを動かす」ことを重視してやってました。なのでチェックポイント以外はこのキャラならこうしそう、に任せたアドリブだったり
そんなこんなでどんどんグラビティ化してくヨモちゃんに「やばいどうしよう」ってなってたのはナイショ
ルナ「ヤダー!不名誉はどこまでいっても不名誉ー!」
有名になるなら魔術師として評価されたいそうです
>>294
終盤は書きたい盛り盛り祭りだったのでそんな風に読んでもらえるとニッコニコです
大半のside演出はその場の思いつきでやってましたがこれだけは最初から決めてました。だからこその番外編
ルナの新技が全体支援だから別で超のつく火力要員がほしくてぇ、そこにノルちゃんがぴったりすぎてぇ、なのでお借りしましたありがとうございました!!>>294
パストカルデアとっても良かったすね!
個人的にはジキルハイドがシナリオで一矢報いてたのが蒼銀術暗ファンとしてクルものがあった……!
……ところでモーション改修は(ry>>299
ヤバいと思ったらちゃんと休みましょう!創作活動は継続が力なり!つまり無理してエネルギー切れを起こして機能停止する前にちゃんと補給と休養を取るのも大事!……だと思う。
>ポンチョ入手
後日談SS、成程。また別にエピソードとして投稿という感じ、でいいのかな……?
違ったらすいません……。ひっさしぶりにキリのいいとこまで書けたので、ルナティック最新話を投稿します。
****
夜空に月が爛々と輝いてた。その光を浴びながら、廃ホテルの屋上にいる竜の合成獣、ジジェはクピクピと缶ジュースを飲んでいた。月見酒ならぬ月見ジュースという訳だ。ちなみに酒のつまみはそこら辺で取ってきた虫やネズミなどの小動物。コンビニとやらの食品は
「プァー、美味イ。コノ葡萄じゅーす?ッテノモいけルナ。アト紫色ダカラ、アンマきもクネェ……」
『おーい龍坊。オメェさん、今どこにいるんだぃ?』
しみじみと月を眺めながら、咥えた缶を傾けるジジェ。ゴクゴクと飲み切った後は、ペッと屋上のそこらに放り捨てた。そして次の一杯を開けようとした時、彼の脳内に声が響く。いきなりの声掛けに仰天したジジェはウオッ!?と叫び、それが己のサーヴァント、塵塚怪王からの念話である事に気付く。
『アー、屋上ダ。ナンカオ月様ガ綺麗ダッタ?カラ、じゅーす飲ンデル』
『そうかぃそうかぃ。そりゃあ何より。でだ、龍坊。白旦那が”見せたいモンがある”ってんで呼んでるから、早いトコ降りてきな。この宿サンの一階玄関に来てくれってヨ』
『ワカッタ。今行クゼ』
そういってジジェは開けかけだったジュース巻のプルタブをプシュリと解放し、ソレを咥えて屋上入口にノソノソと四つん這いで歩いていった。
『ナンダロ……。めしカナ?』>>301
◆◆◆
「今からサーヴァントを召喚する。よく見ておけよ、ジジェ」
ホテルのエントランスの到着するなり、ジジェに向かって放たれた台詞がコレである。ヴィクトルは普段の仏頂面から少し表情を崩し、楽しそうにしている。如何に「己は王である」と公言していても、流石にサーヴァントを召喚するとなれば喜ばしいモノもあるのだろう。だが、対するジジェの表情が硬めだ(もっとも、今は竜形態であるので、まだまだ交流の浅いヴィクトルには伝わりきっていないのだが)。ふぅん、と気のない返事をしつつ、自らのサーヴァントである塵塚怪王に視線をやって、ボソリと呟く。
「……メンドクセ」
それを聞いた者たちの反応は対照的である。やれやれ、とでも言うように両手を挙げて、首を振る塵塚怪王。逆にヴィクトルはその小さな呟きを耳にするや否や、ギロリと目を眇めて強制的に弟子としたドラゴン合成獣を睨んだ。
「面倒、だと?ふざけるな。王(オレ)の魔術行使に立ち会える機会を嫌、とはどういうつもりだ。そもそも貴様もアヴェンジャーを召喚した以上は魔術師だろう。ソレを受け入れないといいうのは怠慢というモノでな……」
クドクド、という擬音が似合う説教に対してもジジェはどこ吹く風。お叱りを無視して、のんびりとエントランスの内部を歩行していき、そのまま自分の従者である塵塚怪王の隣で座り込んだ。所謂”お座り”だが、彼は結構な巨体なのでギャップが凄い。
「たいまん、タッテ。じじぇハ別ニあべんじゃーヲ召喚シタッテ訳ジャナイカラナ。コノほてるニ不時着?シタ時ニ、『痛ェエエエ!』ッテ叫ンダラ、ナンカあべんじゃーガ出テキタ、ミタイナ?ダカラじじぇハ魔術ナンテヨー知ラネェンダよ」
今度は苛立ちでは無く、驚きによって目を見開く王権魔術師。少々不格好だと感じつつも、そのまま疑問を口にする。
「つまり……ジジェ。貴様はアレか?儀式の準備も、詠唱も無く、サーヴァントを召喚した、と?それは本当か、アヴェンジャー?王(オレ)としては信じ難いのだが……」
率直に疑問を呈する魔術師に、復讐者たる鬼の王は気のない返事だ。横に立つジジェの方を見やり、困り顔を浮かべながら腕組みをする。>>302
「信じ難いって言われてもだなぁ……儂としても、気が付いたらなんか召喚されていた、って感じではあるしよぉ。あーでも確かに召喚陣?みてぇなのは無かったなぁ。竜坊の周囲に陰陽道やら妖術なんやらの痕跡も無かったしよぉ。ま、即席の召喚魔術って言われた方がらしくはあるわな」
「ナンカ召喚デキチマッタンダカラ、ショーガネーダロ」
そう言って、互いに『ナー?』と顔を見合わせる。緊張感というモノがまるでない。緩すぎる主従に対する呆れを隠さぬ、しかしどう返答をすべきかと逡巡する……そんななんとも言えない顏をしながらも、ヴィクトルは召喚の前準備を整える。
「呑気な……まぁいい。そんな自己流、偶然、テキトーな召喚をしたというならば、猶更だ。しっかり王(オレ)の儀式を見ておけ。別に真面目に魔術師をやれ、と言いたい訳ではない。貴様も魔術世界の端くれに座するつもりならば、関心は持っておけ。必要ないかもしれんがな。しかし、世界に興味を持つというのは大事だ」
「ソーイウもんナノカ?マァ今ノじじぇハほんとーニ暇ダシ、見テルグライナラ良インダケドよ」
飲み過ぎて眠いのか、欠伸をしながら、心あらずといった風に頷くジジェ。気を抜きすぎな仮弟子の態度にヴィクトルは不満げだが、とりあえず自分の召喚儀式に同席するという結果についてはヨシとして、そのまま準備を進める彼。
暫くして、エントランスの中心に巨大な魔法陣が完成した。ヴィクトル自身の血液、水銀、溶解させた宝石など、様々な液体によって描かれたソレを見下ろし、納得したように一つ頷き、王権を司る魔術師は詠唱を開始する。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公──────」
詠唱を始めると同時、魔法陣を構成している線が色鮮やかな光を放ち始め、彼が次の言葉を紡ぐ毎に、その光は輝きを増していく。>>303
……ちなみに。ヴィクトル・デュランベルジェは柔軟性や合理的ではあれど、普段から「世界は必ず、最終的に全てが自分の思い通りになる」と放言して憚らない弩級の自己中心主義者であるが、彼が行使する魔術は基本的には正統派かつ王道、過去に確立された理論を無駄なく実行するタイプである。しかしそれは必ずしも、彼の思考回路に先人への敬意が存在する、という訳ではない。傲岸不遜な支配者がリスペクトするのは”今”を生きるモノに対してのみだ。古典的な魔術師の姿勢と、それは似ていた。『先達の魔術師』には敬意を払ってもいいが、彼ら彼女らの理論は王(オレ)の所有物。そんな思考がヴィクトル・デュランベルジェの根本だ。努力を怠らない。自分は未だ”王者ではない”と理解した上で、己が”王者である”と信じている。失敗する可能性を恐れず、忘れず、しかし必ず己の願望が実現すると確信している。
──────故に、此度のサーヴァント召喚も必ず成功する。
「サーヴァント・セイバー、現界した。……貴公が我が同盟者か!?波瀾万丈、活力に満ちた聖杯戦争を約束しよう!さぁ、敵は何処で、戦いは何時だ!?───ところで、そこの黒いトカゲ?と翁は何者だ?ご老体の方はサーヴァントのようだが……、もしや貴公、襲撃を受け、慌ててオレを召喚したのか!?ならば安心するが良い!オレは必ず、貴公を守護してみせる!」
焔のような爽やかさと、輝くような勝気な笑顔が特徴的な女騎士。少々のすれ違いがあるようなので、まずはその誤認を正す事から始めよう。
「そこの二人は王(オレ)の同盟者、のようなモノでな。敵では無い。なのでその剣を納めろ。……さて、では自己紹介だ。貴殿は『貴公が我が同盟者か』と聞いたな。──────そうだ。王(オレ)が貴殿の、支配者(マスター)だ」>>306
感想ありがとうございます
条件的には”竜種”だから、ではなく”ジジェ”だったから、という方が近いですね
ジジェの内部構造が伏神の聖杯戦争と相性良かったという感じ
という訳でサーヴァントも出揃ったし、本格的な聖杯戦争始動の前にキャラのブラッシュアップかなぁ
主に能力調整の塵塚怪王、常世教やらプロフィール面での充実度合いがちょい薄めな鳳蝶さん、ルナティックではメイン役な誉さん!
塵塚怪王は皇帝特権もどきが不要な気がするのと、宝具の風景をゴ.ミ屋敷に変更したい……。めっっちゃぽこあしてました、してます
どこにでも飛んでついてきてくれるヘラクロスを相棒にしながらジラーチをお迎えすべく駆け回ってます。やめるタイミングがなさすぎてこわい
そんなことしてるからね…やりたいことがドンドコ重なっていくわけですよ…!
後日談SS書いて、文化祭ネタが大事になりそうで、今しか出せなさそうなキャラ作って、ジャパン編プロットも作って、その前に2人を動かす肩慣らし短編を、
銀髪っ子つくりたい!!!!1!!!!近頃故あってモーシェ・デ・レオンのことを調べ直す機会があったんですが、深堀りしていったらこの人魔術系現代創作に不可欠な人物で腰抜けた。
デアラに仮面ライダーセイバー、とあるにブルアカと大抵の作品の根幹にコイツのカバラ神秘主義があるじゃないですか、と……。
『神の思惑は私達が知り得ない隠された世界にあってその痕跡は光みたく感知はしにくいものである』ってそれを認識して言語化出来るお前is何……?>>314
私もほぼ確実にそのパターンだとは思うんですよね、まさか時計塔がキャッキャワイワイするためだけの文化祭なんてやるはずもないですし
って考えると文化祭には時計塔目線ならではのメリットがあるはずなんですよね絶対
普段ならやらない大規模のオークションやってんのかなーとか、他派閥や他学科の有望株をヘッドハンティングしに行ってるのかなーとか、どシンプルに男女のお見合いでもやってんのかなーとかいろいろ考えちゃってますね
たぶん『交流』がメインとは思うんですが規模感がまだちょっと計りかねるところもあり…>>316
お久しぶりです〜!
ここのえさん不在の間にヴェロニカさんお借りしてました>>316
>ヴィクトル君が延々とリアクション役なのだがそれが面白い
おっかしいなぁ、本来ならヴィクトルこそが「……このク.ソ傲慢自己中野郎は何を言っているんだ?」って周囲を振り回すタイプの筈なのに、この王様基本ずっと他人の世話焼いてるぞ?
やっぱりスラムで大将やってただけあって面倒見がいいんだな、うんうぉおおお今月はやりたい新作ゲームが2種類あるぞー!
そして片っぽはもうプレイ可能だからやるぞー!!
……ところで鳳蝶さんの設定をブラシュアップするにあたって「鳳蝶さんの義眼→『常世の神”オモイカネ”の神體!』ってしたら面白いんじゃないか!?」と思ったんですが、神體の設定をしっかり把握するにはロード・エルメロイ2世の冒険を何巻まで読めばいいんですかね?>>343
見えない(隠れる)部分を考えるのも絵描きってもんでさ旦那……!(あとアイビスの素材に助けらてたりなんだり〜)
申し訳ない、そう仰っていただきありがとうございます…>>341
なるほど……やはり全巻ですか。
現状11巻までは持ってる(そして積んでた)ので、時間見つけて消化していかなきゃなぁ……。
頑張って読みます!
ところで以下はAIに生成させた誉さんのビジュアルのサンプルなのですが、皆様のイメージに近いのはどれですか?黒鹿さんのみではなくて、他の人からの印象も知りたいです生存報告がてら懺悔。
エイプリルフールに間に合わなかった嘘予告の内容は
・聖杯惑星のパラレル続編
・バルベルデの経済侵略によりもっと景気が良くなった+バブルが弾けても好景気のまま平成が終わりを迎える日本が舞台
・バイディワが日本生の日本育ち
となるはずでした。黒鹿さん、いらっしゃいますか?
>>349
すっご……かわいい、かわいい……綺麗……すごくてすごい美人さんすぎる
黒に!赤の!浴衣!いやもう、もうね、よくぞやってくれましたという気持ちで胸がいっぱいです。柄は桜と牡丹ですかね? 似合うねかわいいね……本当に本当にかわいい……かわいい
この超〜〜〜ナチュラルな笑顔、視線、表情!一生メモリアルに残る一瞬とかそんな勢いですよくぉれは
正直今の感情が「かわいい」「きれい」「しゅげぇ…」ばっかりでまともな言葉が出てこないんですよ
見えないところも描いてるって話もそうですけど、ネイルやらピアスやらで細かいところまでおしゃれさんですごいんですよ
こんな気合い入りまくったルナの浴衣姿を描いていただいて私はもうどうしたらいいか途方に暮れてるんですよ、ありがとうございます。ありがとうございます!
心臓が100倍くらい元気になったのでたぶん明日には爆発してると思います。本当にありがとうございます!!!気合入りまくったのでジャパン編いくぞおりゃー!って言いたいんですが、まだプロットらしきナニカの完成度が体感20%ほどしかなく……
なので何回かに分けた短編を投下していきます
いざやいざいざカステルメッツァーノ
>>353
暑さは本当に本当にやばいのでひたすらにお気をつけあれ…
体力欲しいなァ……歩いたり走ったりしても中々増えない…窓ガラス越しの世界がうしろへうしろへと流れていく。
私たちが乗ったバスはとっくに都市部を離れて、今は遠くはなれた山間に向けてのんびり走る。
バスは大きくて揺れが少ない。だから外に向いた意識もいつもよりずっとゆっくりしていた。
緑が多い。
土も多い。
空が、開けていた。
「あっメレク見て! 牛いた牛! 白い牛の群れ!」
「見てます。見てますよ」
「あの仔牛だけ群れからはなれてない? なにあれいじめ?」
「はしゃいでる内にそうなったんでしょう。どこかの誰かさんみたいに」
「なんだぁ? やんのかこらー」
「いいからルナは窓だけ見ててください。まだ4、5時間はあるんですから」
メレク───今回の冒険にもついてきてくれたメレク・アルマソフィアが、いつもどおりの調子で私をたしなめてくる。
その私ことルナ・アードゥルは、そんな言葉ひとつもあまり耳に入らない。わくわくしてるときの会話なんてそんなもんだと開き直ってみたりする。>>355
「4、5時間なんてしゃべってたらすぐだよすぐ!」
「ただの移動でなにを話していろと、」
「うわ谷! 崖! すんごいふっかぁーい!!」
「……寝てるので着いたら起こしてください」
「メレクメレク! 今の見た!? ほら見てメレクほら! なんか跳ねてる!」
「寝ると言ったばかりでしょうが!」
そんなやりとりをくりかえしてバスは走る。いくつもの街を素通りして目指すは山と崖を背に立ち並ぶ村。
そこに、先輩から教えられた"禁書"が持ち主がいるという。
◇ ◇ ◇
つい先日のこと。考古学科・名無しの教室にある準備室での話だ。
準備室と言いながらも実態は実験室兼物置兼サボり部屋になっている。ちょっと人目につかないことをしようと思い立った人が、怒られる前にコトを完遂するため使う部屋になっていた。まぁ大体私のことなんだけど。
そんな部屋に呼び出しを受けて入っている。呼び出したのは、カラッポの棚の上でふんぞり返っているしゃべるネズミ。
「ここに本棚があります」
「はい。あります」>>356
「そして禁書が収められています」
「いやどう見てもカラッポだよ先輩」
「昔は入ってたのよ、いいから黙って最後まで聞きなさい」
「へーい」
はてさてなんの話なんだか。"禁書"なんてワードにはちょっぴりいやすごくわくわくするところだけど、さすがに私でもカラッポの本棚にはときめいたりしない。
「元々ね、この本棚は『禁書だけが収められる本棚』としてウチの名物になってたのよ」
「初耳の名物だよ」
「そりゃ古い話だし、実際は読むだけで呪われたり祝われたり噛まれたりする本しかないし」
「一筋縄では読めないすごい魔導書ってこと!?」
「残念ハズレ」
「えぇー……」
「そーゆースゴい本を作ろうとした"失敗作"だけが集められてたのよ。厄介払い的なアレで
」
「失敗作っていうと……中身は普通なのにトラップだけスゴいとか?」
「中身全部が白紙のクセに噛みついてくるヤツもいたわよ」
「本じゃないじゃん!」>>357
「だから失敗作なのよ。そうよ白紙のヤツに限ってアタシのキュートな尻尾に向かってくるから放火騒ぎになったくらいで」
「あぁー……なんか、名無しの教室っぽいやつだ……」
一応カテゴリとしては魔導書だし、神秘に属する本だし? 誰にとっても価値はないけど神秘の秘匿的にはそれなりの扱いしないとだし? あー困ったなーどこに置いても困っちゃうなーおっここちょうどいいんじゃなーい?って調子で名無しの教室に目をつけられたのが簡単に想像できた。できてしまった。
昔からそんな感じなんだろうなここ……。
「でも、じゃあ、なんで今はカラッポなの?」
単なる厄介払い、微妙な立ち位置の本をまとめて放り込むだけの場所ならむしろ増えてそうなものなのに。
改めて見ても本棚には一冊も収められていない。馬鹿には見えない本でもあるかと思ったけど伸ばした手は空をかくばかり。
本、どこ?
「そこから本題なのよ。出来損ないと失敗作ばっかり集められた本棚にいつからか『本物の禁書が紛れ込んだ』なんて噂が出るようになってね」
「あったの!? 禁書!!」
「さぁ?」
「さぁ、て」
「今のアンタみたいに目ぇ血走らせたOBとOGがこぞって持ち出したのよ。ま、ほぼほぼハズレ引いたんだけど」>>358
「ほぼほぼハズレ、ってことは……?」
「ま、そういうことよ。アタシにとっても価値のある一冊を持ち出したOBがいるわけ。───で、そのOB野郎から手紙が届いたの」
なんか話の流れが読めてきた。先輩が私に何させたいかもわかってきた。
「今はどこそこの村でなになにをしてます的な、よくあるヤツよ。それだけで住所は割れたから、ルナ、ちょっと入ってきて本を取り返してきなさい」
「一応聞くけど、なんで私?」
「博物館にも来ておいてよく言うわ。外に出るならアンタが一番でしょ」
「もう一個聞くけど、カヴン先輩が直接行くとかは……」
「ネズミボディじゃ本とか無理だし"カヴン・プラミア"が行くにはママの許しがいるの。めんどいわ」
「だから、私?」
「そゆこと。あのメレクってのと一緒にひとっ走りお願いね」
「パシリじゃん」
「どうせ行くでしょ?」
「行くよ。行くけど……場所は? まさかロンドン周辺じゃないでしょ?」
「だったらアタシが行ってるわよ。まぁそんな遠くないわ」
「どこなの?」
「イタリア」>>359
◇ ◇ ◇
より正確にはカステルメッツァーノという場所らしい。
街並みが面白かわいい観光名所ということだけど、そんなところに魔術師がいるのかはほとほと怪しい。もっと穴蔵とか森の奥とかに隠れ潜むものじゃないのか。
「それを言ったら魔術協会の総本山はロンドンにありますよ」
「たしかに」
ロンドンの知名度なんてそれこそワールドクラス、ある意味では魔術師なんか絶対なじめない世界の最先端のひとつに数えられる。
「いやでもそれ霊墓ありきじゃない?」
「だとしても人を受け入れてきたことは事実でしょう」
「そっか、そだね。その辺は頭カタいばっかりじゃないってことかなぁ」
「まぁそもそもが産業革命にのまれただけとも───」
五分もしたら忘れるような、思ったことをそのまま口にだすような会話を続ける。
本来なら人目があるところで話す内容じゃない。それでも遠慮なしに魔術協会だの霊墓だのと言えるのは、私たちの会話にテキトーかつ自然なノイズが走る細工をメレクがしてくれているから。こういうときはとにかく便利だった。>>360
外を見る。薄黄色の鳥がとんでいた。
メレクを見る。鳥のことは見てなかった。
窓ガラスとメレクの顔を交互に見る時間をつづけた。
「……ぁふ」
ふと、メレクが小さなあくびを噛みころした。表情を繕うのがパーフェクトなメレクにしてはめずらしい。
「もしかして、本気でねむい?」
「……寝不足であることは認めます」
「ごめん、さすがに急すぎたもんね今回……着くまで寝とく?」
「そうします。僕の目がないからと騒ぎすぎないように」
「先生かっ」
私のツッコミもほどほどに流してメレクは寝る体勢に入った。
マスコットぽさのある謎生物が描かれたアイマスクまでしっかり装着している。無地じゃないんだ、とか変ないきものだなぁ、とか見たままの感想を浮かべてるうちに寝息が聞こえてきた。>>369
ありがとうございます!
ではとりあえずラフを描いてきます、来週の水曜日までには投稿できるかと…かなーり早めに言っちゃうと今回の短編は「こやつら二人きりだとどんな感じだっけ」を再確認するための練習半分な日常回となっております
なので大事件やら流血沙汰やらはナシです。ノンシリアスな旅行話と思っていただければ
>>366
今回はご褒美もあるやもないやも、やったぜメレ坊>>372
ぶっちゃけちゃうと書いててすっごくよぎりましたよね某インデックスさん
まぁ完全に別物だしええやろうと思いましたが、もうちょっとひねるべきだったかも……今日はやるぜやるぜ短編の続き投下するぜくらいの気持ちでいたんですが、めちゃくちゃショッキングなニュースが入ってきたので一晩寝込みます
元気が戻ったら明日出します
つらくてさびしいなにかきっかけがあったワケでもないのにミズゴロウが愛しく思えてきた今日この頃。とても不思議
ぽこあにもいなかったのになぁ…本当になぜ…
>>375
お大事になさりましたのでもう元気です!ハイ!
帰ったら短編どーんといきますというわけで昨日分のリベンジいくぜいくぜいきますぜ
投下~ロンドンとローマ、つまりイギリスとイタリアの時差はざっくり一時間ほど。肌感覚でわかるほどには開いていない。だからここで見えている夕焼けも、ロンドンからもそう変わらずに見えるはずだ。
飛行機で一時間強、待ち時間で一時間弱、そしてバスにゆられておおよそ六時間。合計で約八時間の旅路を乗りこえて、そうして私とメレクは目的地の『カステルメッツァーノ』に到着していた。
「着いっっ……たーーー!」
両腕をおもいっきり伸ばして喜びの一声。新しい空気をあるだけ吸いこんで、全身で堪能する。冒険にワクワクしながらバスの揺れに飽きてきてた私はそりゃもう解放された気分でいっぱいだった。
じゃらじゃらじゃりじゃりと音を立てて一歩、二歩。クツの下になって転がる砂利を感じながら、ばっと振り向く。さして広くない駐車場をいっそう狭く見せるバスに向けて、声を張る。
「まーだ寝ぼけてんの? もう着いたんだってば!」
「そう、大声を出さずとも……ぁふ……聞こえていますから」
あくびを抑えるようにしてメレクがバスからのそのそと出てくる。他に乗っていた人たちはもうとっくに降りていた、私たちが最後の客。
「どうぞ。忘れ物などございませんか?」
「はい大丈夫です!」
寝ぼすけさんを一緒に待っててくれた運転手さんがバスから荷物を降ろしていく。まだ目蓋が重そうなメレクの代わりに、私がメレクの持ってきたキャリーケースを受け取った。
運転手さんにありがとうございましたしてから、並んで歩き出す。>>378
「よっし! じゃあどこから調べようか!」
「今日はそのままホテルに向かいますよ」
「……マジで言ってんの? まだ移動しかしてないよ?」
「予約したチェックインの時間が迫っているので。旅先の時間管理をまだ甘く見ていますか?」
「ぶー……」
「駄々をこねないでください。明日すぐに帰るわけでもなし」
「でもせっかく来たんだし、ちょっとくらい……」
「荷物だけ置いてすぐに戻ってくればいいでしょう?」
「……ハイ。そのとおりです」
「わかればよろしい。ほら、行きますよ」
やっと調子がもどってきた様子でメレクが先導する。本当に私を置いていきそうな勢いだったからばたばたと急いで追いかけた。
本格的に日が落ちてきて、ゆっくりゆっくりと夜の影がのびてくる。
◇ ◇ ◇
カステルメッツァーノは山岩に張りつき、はさまり、そして隠れるようにして家々が並ぶ村だった。大きな岩の隙間を中~小サイズの石で埋めつくして、それが土台になって建物がででーんと建っている。
だからこの村はとにかく坂が多い。前後左右どこに移動しようとしても坂、坂、坂の連続。比較的なだらかなメインストリートから村の中心に向かうほど、斜面の角度は容赦なく増していった。
そんな場所を移動しようと思ったら散歩気分でもまぁまぁ大変なわけで。つまりどうなるかというと……。>>379
「…………ハァ…………ハァ…………」
息が細切れになるメレクのできあがりです、と。
大きめの荷物はぜんぶホテルに置いてきて身軽になって、それなのにまだしんどそうだった。……あのキャリーそのまま引っぱってきてたら動けなくなってかもしれないなぁ……。
「……ちょっと休憩する?」
「お構い、なく……この程度で、今さら……ハァ、ハァ」
「もうすでに限界っぽいんだけど。『強化』くらい使ったら?」
「…………こんな、ことぐらいで魔力を消費していては……」
「いや使いなよ。ぜったい魔力以外のなんかがゴリゴリ削れてるから」
「それは………………。…………」
悲しい沈黙だった。メレク本人もちょっと自覚あったのかもしれない。
「というか……原因のいくらかはルナにもありますからね?」
「私? え、なんでなんで?」
「貴女が目についたものに片っ端から飛びつくから、結果的に僕も振りまわされるんでしょうが」>>380
「えー? そんなことなくない?」
「道ばたの子猫。前輪だけ抜けた三輪車。不自然に点滅する街灯。屋根から屋根に伸びる謎の糸。標識に裏に書かれたかすれ文字のラブレター。これら全部を20分以内に見つけておいてまだそんなことを言いますか?」
言われてみればそんな気もする。旅先って小さいことでもなんか面白く見えちゃうんだよね。
というかメレクはよくもまぁ私が見つけたものをちゃんと全部、それも順番通りに覚えてられるもんだなと思う。すごいなぁ。
「なに謎の感心をしてるんです? これでも責めているつもりですが?」
「いやぁ、すごいなぁって」
「はぁ?」
「自分のことならともかくさ、人のやってることをそんな覚えてられるよねって。あ、イヤミとかじゃなくね?」
「何を言うかと思えば……そんな当たり前のことを」
「当たり前なんだ?」
「ルナを見たいがために同行しているんですから。貴女から目を離していては本末転倒でしょう?」
「そっか、そだね。…………そうかな?」
「そうですよ」
そうらしい。
本人から直々に肯定されたらそんなもんかと思うしかない。>>381
「むしろ、ルナこそよく次から次へと見つけられるものだと感心しますが」
「それほめてる? ほめてるんだよね?」
「どちらかと言えば。……いえ本当に、こう中途半端な暗がりでは見落とすものも多いでしょうに」
まぁそれは自分でもそう思う。
着いたときには夕方頃だったカステルメッツァーノも、チェックインだ荷物置きだとしてる内にどんどん暗くなってきていた。ほんのりとした温かみのある街灯に照らされた空間だけが目につきそうな状態だ、フツーなら自分の足下とか来たばかりの道に意識が向くんだろう。
「なんかね、夜目が利くっぽいんだよね私」
「暗視用の調整をしている、とかではなく?」
「んにゃ魔術抜き。なのに真夜中でも見えにくいってこととかあんま無い」
「吸血鬼だからですか?」
「かなぁ?」
そんな気はしなくもないけど、絶対にそうだと言えるほどハッキリしたものじゃない。
洞窟とか水の底とかに潜ると見えにくさがぜんぜん違うし、真っ昼間の太陽を見上げてもまぶしさが目が焼けるってこととかないし……。
いや本当に正真正銘の吸血鬼ならお日さまの下に出ただけでアウトだもんね。>>382
「なんと言いますか……貴女の吸血鬼らしさって中途半端ですよね」
「なんてこと言うの」
「ですが"らしい"部分もちゃんとありますし」
「まぁね。人の血、美味しいもん」
ちなみに血の味はけっこう個人差がある。メレクのはけっこうわかりやすい甘さがあって、ヨモちゃんだと甘さひかえめの苦味まじり。師匠のやつはあまじょっぱい感じだった。
まぁこの3人以外飲んだことないんだけどね。……いつか時計塔にいる魔術師全員の血の飲み比べとかしてみたいなぁ……。夢だね夢、うん。
「……ぐふふ……」
「おそろしい企みをしてそうな笑いですね」
「ふふふ、わかっちゃう?」
「えぇ、同時に叶いそうにはないなとも」
「ひでぇ」
「というか味だけなんですか? 吸血種には吸血衝動というものが付きものでしょう」
「あー……まぁ、あるっちゃあるかな」
「多少、聞くべきか迷うんですが……それは、放置しても平気なものなんですか?」
「どうだろ? なんか自分の血なめてたらそれで落ちついちゃうんだよね」
これは落ちつくだけであんまり美味しくはない。不思議だ。>>383
「……自給自足できるのはいいことですね」
「あ、でも大丈夫! メレクの血のほうがぜんっぜん美味しいから!」
「なんでしょう、ひどく不安が増してくるような情報ですね」
「ウソじゃないから!」
「真偽がどちらにも傾いても微妙ですね……」
そう言うメレクは本当に微妙そうな顔してた。暗がりの中でもちょっと目そらしてるのはしっかり見えた。
なんでだろう、私的には褒め言葉のつもりだったんだけどなぁ……男の子だからかなぁ。
「夜目が利く、血を好む、あとは……え、まさかこれで終わりですか?」
「あ、あるし。夜行性だし、夜とかぜーんぜん眠れないし」
「……はぁ。やはりと言うべきか、貴女を吸血鬼と呼ぶにはどっちつかずで中途半端で曖昧な点が多いですよね」
「めちゃくちゃ刺してきた」
「かといってファッションと決めつけられるほど希薄ではないですし……ルナってなんなんです?」
「私は私としか言いようがないんだけど……」
「ダンピール、なんてこともないですよね?」
「いやないないない! 私の親どっちもちゃんと魔術師だったし」>>384
お母さんはアードゥル家の本家本元を継いでた人で、お父さんはそのお相手にと選ばれてるんだから、夫婦そろってちゃんとした魔術師だったとは思う。まぁお母さんが育児放棄してるときにお父さんは家庭放棄してたから親としてはどっちもアレだ。いやうんホントに……いろいろ全部ダメだよね……なんか思い出してるとむかついてきたな。
「……くそぅ」
「なぜ急に苛立たしげな早歩きに」
「……なんでもないし」
「その文脈は『なにかある』と同義ですよ」
「……あるけど! 聞かないで!」
「わかりました。聞きはしませんが、ひとついいですか?」
「なに!?」
「ちゃんと足下を見ないと転びますよ?」
「へっ? ───ふぎょっ?!」
ころんだ。
顔からいった。
そしてカステルメッツァーノはどこへ行くにも坂の多い村。そんな場所で転んでしまえば……
「ぎょえええぇぇぁぁああああ!?!!??」
「あちゃあ」>>385
ごろごろどっかーんといっそ美しいくらいの円を描いて坂道をくだるハメになった。幸いにもカステルメッツァーノは網目のような曲がった細道がいくつもある、さっき目につけた不自然にカチカチしてる街灯にぶつかってすぐに止まった。
それにとっさの反応で『強化』をかけるのだけは間に合ったから、ケガらしいケガだってしていない。
ただ、全身を砂ぼこりで汚しまくっただけだ。
「……無事ですか?」
「……一応ね」
坂道を降りながら笑い半分の心配半分なメレクが、おさえた声を投げてくる。
でもメレクはメレクで道中での疲労が顔に出始めてる。というか私がゴロゴロやったせいでドッと疲れがでたような感じだった。
さて、と、場を仕切り直すようにして。
「……ホテル、戻りますか?」
「……そうしよっか」
そんなこんなで、初日のカステルメッツァーノ調査は、なーんの成果も出ませんでしたとさ。>>389
今後は高低差というか上下運動がインフレしていくので坂道くらいでひぃひぃ言ってるようではね、後が大変なんですよぉ…
許されるならメレ坊のトレーニング話とかも書きたいですわね>>392
リードごと飼い主を引っぱるワンコの図です。だいたいルナが悪いです
ちなみにこれルナも体力♾️じゃないので限界きたらばたーんといきます。はしゃぎすぎて夕方にはおねむな子どもと大差ないです>>394
今回はnot大騒動です。いつも通り感を集めた平和回
今までの冒険で「今それどころじゃないしなぁ…」と省いてた小ネタが集まってたりもしてます>>398
ありがとうございます〜!皆さま学祭礼装は決まりましたか
私は一枚が確定してもう一枚が一生決まっておりません
こんなん決まるわけがァ……でも決めなきゃ……このごろ苦しみを伴う決断が多いよぅ
そんなタイミングでも続きを投下~あの後。
私とメレクはそれぞれ別の疲労感に抱かれながらホテルに戻った。
とにかく私の汚れ方がひどかったんだろう。メレクに「お風呂でもシャワーでもなんでもいいから早めに」と背中を押されまくって私は湯を浴びてた。
石のタイルの規則的な並びが面白いと思いながらも、面倒なものはとっとと終わらせて浴室から出た。
「はふぃーーー……」
シャワーをすませて、温度も湿度もちがう空気を胸からいっぱいに吐き出す。
身体は一通り拭いても髪の毛はまだまだ水を吸っている。重い。背中にうっとうしく張りつこうとする銀髪共をまとめてタオルで挟んでやってぽんぽんぺしぺしぱたぱた。
まだ重い。
ぜんぜん水が残ってる。
こういうときほど長い髪の毛が邪魔くさく感じる。自分で伸ばしてるからしょうがないんだけど。
「うわっ、濡れたままで出てこないでくださいよ」
「だってあと髪だけだったしー」
「それが一番問題なんでしょうが。ああもうしぶきが……」>>401
椅子でぐったりしていたメレクが少しだけ顔をあげて、でも足は限界みたいでただ身じろぎするだけに終わった。
そんなメレクを尻目に部屋をぐるりと見回す。
チェックインのときは外にばっか興味がいってて、さっき戻ってきたときは汚れをどうにかすることばっか考えててちゃんと見れていなかった部屋。
広さは充分。エアコン完備。全体的な色合いはやわらかいクリーム色で、タンスやドレッサーなんかの家具はバニラ系統で統一されていた。
大部分は岩と土を固めたような造りをしてて、重要そうなところにだけレンガを使ってアーチ状に組まれていた。これ、面白いのが家具やらドアノブやらも意図的な曲線の細工があるんだよね。
色以上に、無意識のうちに視界に入ってくる"丸さ"がやわらかい印象を与えてるんだ。……いやほんと面白いなぁ……なんかの魔術に使えないかなぁ……。
「またなにかおかしなことを考えていますね……」
そんなつぶやきを漏らすメレクは二つのベッドに挟まれていた椅子にぐったりとすわりこんでいる。
「いつも通りのことしか考えてないもーんだ」
ベッドに背を向ける形で置かれたドレッサーと向き合った。備え付けられた黒一色のドライヤー───安物っぽさが無ければ高級感もない至ってフツーなやつ───を、手に取ってスイッチオン。ぶおぉぉーと唸りながら出てきたぬるい風を髪に当てていく。
ある人は前髪から乾かすのが良いと言う。またある人は頭の根元から乾かすのが良いと言う。またあるローザは千差万別だからしっかり見極めろと言う。ちなみに私は一番面倒で一番やりにくい後ろ髪からやる派だった。>>402
「………………」
しばしの間、ぶおーぶおーという音が響く時間がつづく。……ぶおー……ぶおー……ぶおぉー……。
ぶおぉぉー………………。
……………………。
……はぁ、
「めんどい」
「そんな深々と言わずとも」
「だってホントにめんどいもん。毎日コレやってんだよ? 毎日! 365日!」
「それも必要なことでしょう? 淑女としてではなく、魔術師として」
「そーだけどさー……」
魔術師の身体はある意味でまるごと魔力を蓄えられる立派な媒介になる。体液や心臓はもちろん、髪の毛だって立派な武器になる。
とりわけ魔女の流れを汲んで伸ばされた女性の長髪は、大量の魔力を込めておけてさらに一気に解放できる、そんな一級品の魔術触媒になるのだ。
概念的な要素も含めて『女性』であればなお効果は増大する。逆に男の人はそんなでもないらしいので女に生まれてよかったなとハッキリ思えるポイントだった。だった、けど……。
「めんどいもんは、めんどい」>>403
そこそこ時間かかるし、見えないとこは油断してるとまばらになるし、明日になったらまた同じことしないといけないし。
いっそ魔術でぽんと乾かせばいいのではと思わないでもないけど、魔力を溜める髪のために魔力を消費して手入れするって本末転倒っぽさある。もったいない精神というか。まぁそんなこと言ってるからめんどい思いしてまでやらなきゃいけなくて……はぁ、後ろもうこんなもんでいいかなぁ。
「まだ内側が濡れたままに見えますよ」
「えー、まだぁ? どのへん? このへん?」
「もう少し右の、あ、遠ざかりました」
「こっち?」
「いえ鏡越しではなくて……ああもう、少しじっとしていてください」
メレクがゆっくりと立ち上がって、これまたのろのろと歩いて私のうしろまで来た。
「ほら、ドライヤーを渡してください」
「ん? メレクがやってくれるの?」
「貴女に右だ左だと指示を出すのは手間なんです。こちらのほうがよっぽど簡単だ」
「……んじゃ、はい」
ちょっと悩んで、でもいいかと思ってドライヤーを渡した。>>404
「……案外、簡単に任せるんですね」
「まぁ魔術絡みのことだし? 自分でやろうかなーと思ったけどさ、メレクならいいかなって」
「魔術絡みなら尚、他の魔術師に任せるのは危機感が足りていないのでは?」
「え、でもメレクって魔術のことは大体なんでも丁寧に扱うでしょ」
「───…………」
「たまーに商売の道具みたいな言い方するけど、だからって雑にしてるとこ見たことないし」
「…………そうですか」
「だから私の髪も任せるくらいならいいかなって……って、なにその顔?」
「はい? 至って普通の顔でしょう」
「いやどういう感情なのかぜんぜんわかんないような───わぷ」
「いいから。面倒なことはさっさと、かつ丁寧に済ませてしまいましょう」
言うが早いがメレクはドライヤーの風を当てながら私の髪をかわかし始めた。
どうやらメレクは頭頂部からやる派らしい。上から下に向かって丁寧に丁寧に風を当て、手櫛で梳かしていく。>>405
ゆっくりと落ちついたリズムで、あんまり突飛なことはしないで、時間の流れ方がおかしくなるような心地がした。
「ふへへぇ」
「なんですか」
「めっっっちゃイイ気分」
「なによりです」
「私ちょっとね、すごいことに気づいちゃったんだよ」
「はぁ、なんですか?」
「人に髪を乾かしてもらうのってね……すごく楽!」
「はぁ、そうですか」
「座ってるだけで髪が乾いてくなんて最高だよ! メレクもやってもらえばわかる! やったげようか!?」
「お生憎様。人の手が要るほど髪を伸ばしてはいないもので」
「えー、やりたい。やってみたーい」
「貴女さっきまで面倒だと連呼してましたよね?」
「人にやるのは別だよ別!」
「人にやるつもりなら櫛のひとつでも用意してから言いなさい。というか貴女、自分用のも無いんですか?」
「あるけどね、持ってくるのわすれた!」
あ、すっごいため息。メレクが見せつけるためだけにやってるやつだコレ。>>406
「別に用意しておく必要があるかもしれませんね……」
「一回髪にはさむだけで全部乾いて全部整えてくれる神秘もりもりのやつがいい」
「バカなことを言ってないで、もっと優先度の高い話をしておきましょう」
「え、なんかある?」
「例の"禁書"の話とかあるでしょう。僕はまだ具体的なことを聞いていないですし」
「んっとそれね、先輩いわく読んだら死ぬ本なんだって」
「また安直な……『どうやって書いたんだ』なんて話から始めるつもりですか?」
「さぁ? 先輩次第じゃない? とにかく危ないから中身は読まずに持って帰れって」
「……自分で行けばいいものを……」
「だよね、わかる。でもどうせここまで来ちゃったんだしさ、ね、ね?」
「今さらやっぱり帰ろうとは言い出しませんよ。それで? 明日は件のOBとやらがいるという住所に向かう、ということでいいんですか?」
「うん、まぁ、そんな感じで」
「ルナ? 隙あらば寄り道する気満々でしょうルナ? 貴女そうやっていつも面倒事を招くと理解していますかルナ? ルナ???」
「だぁってぇー! あるかもしれないじゃん人の無意識に置かれたなんかの儀式の要石とか! あったら気になるじゃん! 探してみたいじゃんかー!」
「はいはい、余裕があったら探しましょうね」
なおも半ば呆れまじりに諭されながら、私の髪が綺麗に乾いてくれるまでそうしていた。>>407
◇ ◇ ◇
空気の漏れる音がする。
人が、息をしている音がする。
すー、ふー。すー、ふー。すー、ふー。すー、ふー。
よぅく聞いて確かめる。安定して続いている。間断なく続いている。小さくて、乱れはなくて、人が寝入っていることを認めるには充分な呼吸。
メレクはちゃんと眠ったらしい。
私を身体を起こした。
「……ん、ん~……」
寝起きの人間が朝日を浴びながらするように身体を伸ばす。ただしモーションは最小に、月の光を浴びながら、だ。
ゆっくりゆっくり、夜の時間にふさわしい静けさでベッドから降りる。
小さく首を動かしてメレクを見た。身体を横たえて呼吸のたびに小さく身体をゆらす姿が見える。顔には道中のバスでもつけてたアイマスクをしていた。この様子ならしっかり眠ってくれているだろう。
別に起きたって構わないけど、眠ってくれていたほうが私にとっては都合がいい。
……なんだか悪いことをするような思考になってる気がしなくもない。まぁ、夜更かしは一般的に良いことでもないけど。
改めて痛感する。私は、吸血鬼だと。>>408
だから夜が長い。長く、感じるのだ。
夜行性とか深夜型とか、そんな言葉で片付けきれないような……生物としての特性が、私にはある。カンタンに言ってしまえば"寝つきが悪い"くらいのもんだけど、その根深さがなかなかひどいのだ。
夜に在れば在るほどに目が冴える。血が巡る。心臓がどくんどくんと急かすように私を動かす。一時的なものなんかじゃなく、ずっと…………それこそ、一度魔術が使えなくなってドン底に落ちたあの日から私はずっと、ちゃんとした寝方というものができていない。
トルコの地下都市でも。時計塔の学生寮でも。今まで巡った冒険のどこでだって、私は本当の意味で眠れたことはない。だってのに寝不足で脳みそが回らないようなこともない。だからこれはきっと自分だけの体質なんだと思う。
瞳をとじる。意味はない。
呼吸を整える。意味はない。
頭を空っぽにする。意味は、意味は、ああまったく意味はない、眠気なんか訪れやしない。またお日さまが顔を出すまでひとりぼっちの夜が流れていく。
さてと。
私はつとめて音を立てないように自分の荷物から紙の束を取りだした。出がけに用意しておいた読み途中の魔術論文だ。表題は『重みに囚われた光』とかいう天体科の魔術師が考案したという新しい術式。
灯りをつけるわけにはいかないので、窓際から差し込む外の灯りを頼りに文字を読む。
左から右に文字を読み進めていく。
読んで、読んで、また読む。
集中しているはずなのにどこか浮いたような心地のまま、文字に焦点を合わせる行為をふわふわと続ける。
そうして太陽がのぼってくるまで、私はいつもどおりの夜を明かすんだろう。
「……長いなぁ」
誰知らず、無意味なつぶやきをこぼしながら。後ろの正面カムイさんに嵌って女主人公とキャラのフラットな百合にニヨニヨしてたらそういうことと女主人公の聖さに理解と敬意の念を飛ばしながら性癖の為に人間性を穢しに行く麗奈って殺.人とか大規模破壊みたいなそこらの悪役みたいな派手さがないのに真正の“邪悪”だよなって再確認した。
>>415
>端的に言えばNTR系ゲームの竿役の精神(メンタル)。
その例えで言うとクッチーはイチャラブ派なのにNTR系で抜いてる人(絵柄は好みだがシチュエーションは苦手)になっちゃう……
『破壊』の起源「キミ素質あるよw」今日がバニーの日と聞いて
脳裏にチップ代わりのハグを要求してくるウーサーイーツなペルカというネタがよぎっていったんですが、たぶん今後つかうことはなさそうなのでここに供養していきます
…響き的にはウーサーキャッツとかでもいいかもなぁ…なんかに使えないかな…>>419
今回はゆるめな旅ですゆえ…
おつらい部分もじわりじわりとなのですよ、短くなればいいなぁと思っております
>>421
かなしみ…
私もうっかりで祝装一枚取り逃したからわからないでもないですよぉ…
めんどいめんどい言いながらも魔術師としてちゃんと髪を伸ばしてるっていうのは最初からずっとあった設定だったんですが、ほんっっっとに出すタイミングがなくてですねぇ…
おっとまぁさてさて根本的な原因は…なんなんでしょうね!
>>420
あ、あんなつぶやきひとつでこんな可愛いウーサーイーツが形になって…!?か、書かなきゃ…!!
いやでも見れば見るほど配達員ペルカ概念はアリだと思う私ですよ、移動力↑↑↑な子だからぜったい似合う
ヘルメットのウサマークがお似合いですわねぇ!!
おぉネコチェン……暑さにどんよりしすぎていつものクールビューティーっぷりがないよネコチェン……
いっぱい日陰入ってもろて…>>425
ではちょっと頑張って考えてみましょうか……!
ホッホッホッ、青春してるのう〜>>424
学園祭ですか……。
やはり私は孫権の学服……。孫権好きすぎるなコイツ。
部活でいえばミリタリー研究会。ガチじゃなくてカッコイイー!なライトな部分で。
制服はゆるーく着て健気真面目で通ってるけど私的では内心サボりがちな、ね。ひとりでやるゲームで海の底行って、人とやるゲームでも海の底行って、また別方向から湖底建築手伝えとお達しがあった本日
この流れでいくと水着イベントでも水の底に引きずりこまれるんだろうなと震える私でございます
すずしくていいね
>>427
なにィ、メイドsideに追加メンバーがあるとは思いませんでした
こうなると本職のメイドさんもほしいですわね
本職のメイドさんってなんじゃぁ…?ハァ……ハァ……
今日、日付が変わるか変わらないか辺りで水着イベについて投稿させていただきます某ジャンプラ漫画を読んでると、ははーんウチのサタンって邪知暴虐のデーモン(破壊者)というよりはシステマティックなデビル(圧政者)なんだなぁ、とか思う今日この頃。
まー更にいうならデーモン(秩序・悪)でもデビル(混沌・悪)でもない『中立・悪』でやはりまたズレるんだろうけど……。
性質的には『障害』や『試練』、『困難』の擬人化的キャラクターで性格的にはヴリトラみてーだよな、というのがなんとなくの印象だけど、より深い部分だとテスカトリポカがもっと近いのか?
ポカニキのマテリアルにもテスカトリポカ≒サタン(ないしルシファー)なトコあるよ!って言及はあるし。
まだまだ掘り下げが足らんなー。このお盆休みで冒険完走とキャラシートのブラッシュアップをしっかりやりたいが、割と予定も詰まっている。生活にメリハリつけんと……。>>431
いくぞい、いくぞい!
それは、2026年、夏のこと。
【サーヴァント※1】は考えた。
日々、人理の為に必死で駆け抜けるマスターとカルデアの面々に、素敵な暇を与えたくなったのだ。
(それは気まぐれかもしれないし、自ら課した使命感からかもしれない)
ではどんな休暇が良いかとぐるぐる、ああでもないこうでもない、自分らしさも風情もないと考え、ふと、カレンダーなるものを見やる。
時期はもうすぐで夏。
夏といえばマスターの故郷(にほん)において夏の休暇とは如何なるものか、調べてみた。
『夏休み、そして夏休みといえば宿題、宿題といえば自由研究』……とな?
なるほど。ただ休むだけではなく、個性に合わせて学び、成長も出来る休みとは素晴らしいものだ。
では、サボろうなどと考える愚か者が出ないよう、快適だがリタイア不可能な特異点(おり)も作ろうではないか。【サーヴァント※1】はそんな結論に至り、即座に密かに行動に移した。
(それは嗜虐めいた考えかもしれないし、純粋な善意からかもしれない)>>434
【オリジナル専門用語】
自由探索(グランドオーダー)
今回の水着サーヴァントたちに与えられた試練、あるいは呪い、または祝福。
それはその者が気にしていた自らの欠点だったり、向き合うべきトラウマだったり、無自覚な願望だったりと、個人に合わせた夏の宿題のようなもの。
このシステムを作り上げたのは主に【サーヴァント※1】に命じられたバフォジャック。
悪魔らしい、「人の苦悩や願望を嗅ぎつける事に長けている」力をもってすれば、宿題作りなんて朝飯前だとか。
なお、個人のプライバシー。
【配布サーヴァント】
☆4(ただし、選択式なので実質2騎にする)
【サーヴァント※1】から自由探索(グランドオーダー)を与えられた代わりに、それらを乗り越えれば、見違えるような成長を遂げられる。
水着サーヴァントたちの中でも、未知の可能性を秘めていて、成長パターンが二つある。
【限定サーヴァント】
☆5 =【サーヴァント※1】
黒幕。オーナー、伊吹童子(水着)に似たポジション、強大な力持ちサーヴァント推奨
☆5or4 =【サーヴァント※2】
黒幕側、特異点の雇われ管理人、スカディ(水着)に似たポジション>>443
よっしゃー!じゃあコツコツやっていきます
創作関連だけでタスク重なりまくってるんで時間かかるかもですが…コツコツやると言いましたが勢いでばーっとカステルメッツァーノ編書けたので、この勢いのまま水着組のあれやこれやもだーっといきます
その前に4話と5話を続けて投下シマース「…………ん、むぅ?」
窓から少しずつ陽が差し込むようになってきた朝の時間。かすかに呻くような声といっしょにメレクが目を覚ました。
早起きすぎる早起きでとっくに覚醒してた私は、ぱっと顔を向けて朝のあいさつをする。
「おはよ、メレク」
「……おはようございます」
普段よりいくらか低くなった寝起きの声でメレクがあいさつを返す。いつもの愛想の良さもすぐには発揮できないみたいで、このときのメレクは私の知ってる中で一番男の子っぽいメレクだなぁと思う。
「……ルナは、もう、起きていたんですか……ぁふ」
「なんか目が冴えちゃってね」
「旅先で、寝込むよりはよっぽど、んん……良いと思いますが……」
「とりあえず顔洗ってきたら?」
「……そうします」>>446
低血圧なんだろうか。のそのそとベッドから降りてメレクは洗面台に向かっていった。すぐにぱしゃぱしゃと水音。
この分だと本格的に動くまでもうちょっとかかりそうかなぁ。あんまりやることないから私のほうの準備はもうとっくに終わっている。
さてどうしよう、こーゆー五分とか十分くらいのびみょーな待ち時間ってニガテだ。天体科の論文も読み終えたし手持ち無沙汰。本当に本気でやることない。
……困った。ヒマだ。
「むぅ」
意味もなくベッドにぼすっと乗っかる。重力に任せて背中からダイブ、その反動で両脚をぐーっと上に伸ばした。今度は両脚がたおれるのに任せて上半身を持ちあげる。以下くりかえし。
あげて、おろして、おろされ、あげられ、やっぱり意味はないくりかえし。けれどもこの世界は意味のない行為が楽しめるようにできているみたいて、やってるうちに気分がノってきた。
いいじゃんいいじゃん楽しくなってきた、ぐいんぐいんぶらんぶらんと続けるほどに身体のキレが増していく気がする。いけるぞ、やれるぞ、今の私なら自己ベスト間違いなし。さぁいくぞやれいくぞ、次の一振りは天上にも届く勢いで全力の下半身を、
「貴女は朝からなにをしているんですか?」
「ぅぉわわわわわ!!」
ほとんど反射みたいにしてすっとんだ。自分でも制御できない両脚に引っぱられて飛び上がって、どっすんばったんごろごろとひっくり返る。ベッドからも落ちた。
「猫かなにかですか?」
「びびびっくりした! はや、早いねメレク、もういいの?」>>447
気づけばうしろにはすっかり目を覚ましたメレクの姿。ちょっと顔の血色が薄いくらいで、表情から髪型までパーフェクトにいつも通りだった。パーフェクトな表情とは隠す気ゼロの呆れ顔のことを指している。
と、その呆れ顔がにんまりとした意地の悪い笑みに変わった。
「貴女を待たせるわけには……と急いだのですが、いやはやまったくの杞憂だったようで」
「い、いやいいよ? ぜんぜんうれしい気遣いよ?」
「おや? おやおや? そうなのですか? あんなにも楽しそうにドタバタとはしゃいでいたのに。玩具を垂らされた猫と見紛うような躍動っぷりでしたよ。いやまさかルナにあのようなモーニングルーティーンがあったとは今日まで知りませんでした。以後は気をつけて、ひとりきりの時間を設けるようにしましょうか」
「よくもまぁすらすらと言えるねぇ! そんなに面白かった!?」
「正直に言えばものすごく滑稽で面白いです」
「だろうねぇちくしょうめ!」
ああ、もう。
はずかしい、はずかしい、はずかしい───はずかしい!
◇ ◇ ◇
さてもはてもそんなこんなで落ちついて朝ごはんの時間。
このホテルの朝食はセルフサービスらしく、小さめのキッチンと小さめの冷蔵庫にチーズやらパンやらベーコンやらがほどほどの量で入れられている。>>448
私はシナモンをどっさりまぶしたクロワッサンと限界までカリカリに焼いたベーコンを食べて、メレクはヨーグルトひとつと紅茶一杯で済ませていた。
一日中机にかじりついているならともかく、これから新しい場所を目いっぱい駆け回ろうっていうのにあれだけで足りるんだろうか。まぁ足りなかったらそのときはそのときだ。
ごはんはすませて、着替えもおわって、トイレもバッチリ。
よし、準備完了。
「じゃあいってきまーす!」
にこにこと手を振ってくれる受付のおばあちゃんに手を振りかえす。メレクはぺこりと一礼してた。
扉をあけて、新しい空気にさらされて、さぁカステルメッツァーノでの冒険二日目だ。
「っ、んーーー……!」
「……まぶしい」
朝日をあびて私は気持ちよくて、一方メレクはうっとうしそうに。
陽の光で全容を見せたきれいな景色が私たちの目に入る。
「おぉ~」>>449
いい景色だと思う。いわゆる美辞麗句をあれやこれやと並べるようなものではないと思うけど、それでも私はいい景色だと思う。
緑と岩のまだら模様に囲まれて、溶け込むようにしたうすいベージュ色の家屋が建ち並ぶ光景。あの遠くに見える山から見ても、なんなら上から見下ろしたってきっと、整って見えるんだろうなと思った。
「ほらメレクも見なよ! 昨日ろくすっぽ見てなかったじゃん!」
「見てます、見ていますよ」
「どう? どう!?」
「……えぇ、とても綺麗ですよ。ずっと見ていたいくらいだ」
「だよね!」
同じものを見てるってだけで嬉しくなったり楽しくなったりするのも不思議なもんだ。
振りかえってみると、メレクの位置からじゃ私が重なって本当に景色を見えたのか怪しい角度だった。ちゃんと見えてたのかな?
……いやメレクなら邪魔なときは邪魔ってハッキリ言うよね。じゃあいっか。なんかネガティブさがカケラもないため息もらしてるし、たぶん大丈夫そうだよね。うん。
私がそんな風にじーっと見ているとコホンとせきばらいがひとつ。仕切り直すようにしてメレクがひときわ声を大きくする。
「それよりも、気づいていますか?」
「どれのこと? なんかある?」
「本当にここに魔術師の工房があるのか、という話です」
「…………この村に魔力の気配がぜんぜんないよねってハナシ?」>>450
「そう、それです」
魔術は、そして神秘は秘匿されるべきもの。ここに例外はない。
だから一般の目にも触れる場所でその気配がないのは当然のことだ。……その一方で、魔術師であるなら痕跡や気配以外のいわゆる"勘"が働くことはままある。たとえ神秘に頼らずとも魔術師が魔術師である以上はその一挙手一投足に無意識の作為を隠しきることはできない。
なぜか? と聞かれたら、それが魔術師っていう生き物だからと答えるしかない。
「そもこの村は魔術師が居を構える場としては中途半端です。人口こそ比較的少ないですが観光地としての知名度はある分、人目が向けられる機会はいくらでもあるはず」
「あと、住みにくそうだよね。ずっとキツめの坂道だらけだし」
「それらを上回るだけのメリット───例えばペリマンニたちの遺産───のようなものがあれば理解はできますが……」
「なんかねー"ない"って感じちゃうよね。ずぅっとのどかで、そぼくで、ゆるいだけの環境」
なんとしてでも根源にたどりつく、なんて熱量が育めるような場所じゃない。かといって魔術という超常の力で悦に浸れるほど俗世に近くもない。
ここは、この環境は、魔術師に向いていないんだ。
「……まぁ、そうとわからないくらい上手く隠してるのかもだけど!」
「そうであれば心からの賞賛を送りますよ。隠形の一芸だけで生涯食べているとね」
メレクの言葉とは裏腹に絶対ないだろうと確信じみた雰囲気がでている。>>451
なんだろう、なんかダメだな。
ちょっとだけ、ヤな感じがしてきちゃった
◇ ◇ ◇
昨日も思ったけど、やっぱりこの村……村? 街? はとにかく坂道が多い。元々が岩山のすきまを埋めるようにして道やら建物が置かれているみたいだから、当然といえば当然のハナシ。
それでも目的地の住所はわかっているんだから、まっすぐに向かえばそう遠くない。もともと広い場所でもない。
昨日見た、いくつもの目印を横目に抜けていく。ふと目について、そのどれもが神秘の気配を持たないちょっと変わってるだけの目印たち。
本当の本当になにもない。なにも起きない。
衝撃的な登場人物はいない。災害の予兆だってない。誰かの叫び声も聞こえてこない。
ない。ない。ない。
ただ、ないんだ。
そうして、
「……着いちゃった」>>453
一見して、なんでもないように見える空き家。
いいやそれは本当になんでもないし、ついてもたたいてもただの空き家以外のなににもならないだろう。
細かい傷がいくつもついたドアノブをにぎり、引いた。施錠されていない扉はあっけなく開いた。
扉を開いた風でわっと埃が舞った。それはこの扉が一定期間使われてなかったことを示している。
「…………」
やめておけ、と本能じみたナニカがささやく。お前の求めるものはここにはないと、どこかで聞いたような声が心臓の鼓動に変わる。
必死さはなく、また悲壮感もない。ただの時間の無駄だからやめたほうがいいという親切心だ。
でも、
「どうせ行くんでしょう?」
「そりゃね」
そんなの今さらだと空き家に踏み入った。うすく積もった埃に足跡をつけていく。
清々しい朝にありながら閉めきられて暗く沈んだ床、壁、天井。やわらかい色合いが演出する温かみなんていくらも感じとれない。>>454
備え付けられた木造のキッチン。それに合わせて用意したイスもテーブルもまとめて埃まみれ。空っぽの本棚やまともに見れそうにないテレビだってそう。
さびしい空気だ。人がいたら出せない空気だ。ここにはなにもない。
だってのに……"ある"と感じてしまう。
「……」
今、私たちは明確に侵入者となった。
知らない人が見たら明らかな不審者で犯罪者。そして魔術師から見たら歓迎の挨拶をせずにはいられない手合いだ。
けれど、ない。侵入を妨げる結界とか入ってきた相手だけ狙った催眠術とか、もっと直接的な使いまでの妨害みたいなものが一切ない。
なのに、ある。ここにはわずかながら神秘をともなっていた気配がうっすらと残っている。もはや外にも届くことはなさそうな、うすく、ちいさく、ささやかな魔術師の残滓が。
「廃墟って雰囲気じゃないね」
「カップもイスも乱雑に扱われた形跡はなし。少し前まで人が生活していた……家主だけが姿を消せばこうなるだろうという様子ですね」
メアリー・セレスト号をなぞるには時間が経ちすぎている、なんて付け加えてメレクは物色を続ける。
私もまた、見たままを見たとおりに分析していく。きっとメレクも私と似たような結論はとっくに出ているだろう。けれど、メレクが「ここまでにしよう」と言わないでくれたのがうれしかった。
時間はかからなかった。>>455
元から小さな空き家。探せる場所も隠せる場所も多くはない。端から端までしらみつぶしに探していってすぐにハズレの中のアタリを見つける。本棚の裏にあった魔力でしか開かない、地下への入り口。
「……行こっか」
「はい」
言葉すくなく階段を降りていく。
一段、二段、と数えてみたけど十を超えることなく降りきってしまった。岩をまるごとキレイに切り抜いたような地下室があった。
魔術師の工房と呼ぶにはあまりにも質素な一室。魔女にお似合いの釜もなければ、ガラス瓶が散乱してもいない。
上にあったのと同じようなイスとテーブル。その上に置かれた一本のペンと一冊の本。それ以外には……わかりきった品ひとつを除いてなにもない。
ほのかに残る魔力の気配からしても間違いない。あれが今回の目的だった"禁書"だろう。先輩いわく読んだら死ぬ本らしいけど、そんな現象が起こせるほどの神秘が宿っているとは思えない。
やはりうすく積もった埃をはらって、かすれながらも表に出てきたタイトルの一部が目に入る。
「『日誌』…………」
「……まぁ、そんなところでしょうね」
ぺらりと"禁書"を開く。そこにあったのはいくつもの筆跡で書かれた、小さいコメントの連続。>>456
○月×日
今日の授業もほとんどカヴンちゃんがからかわれるだけで終わった。
自称お兄ちゃんの存在がうっとうしいのはわかるけど、いちいち反応するから授業が進まないってのに。ねぇわかる? おかげで今こんなこと書いてページ埋めてるんだよ?
△月×日
複数人が連携した召喚儀式は失敗。いや、いちいちこんな風に書かなくったってわかりきってたことだ。
シュギットの奴は文句たれてたけど、どうせこんな教室のメンツじゃ息を合わせるなんて夢のまた夢。むしろおかしな幻想種とか喚ばなかったのは上出来と言っていいんじゃないか。
△月○日
とくになし。
追記:じゃあ未来のことでも書こう。この教室にいたら先はないからさっさと出たい。
×月□日
また同じ内容の授業だった。霊脈の基礎を何度も解説されたってどうしようもない。
何回も指摘してるしこの日誌にだって何度も書かれてるのにそれでも変化ナシ。ありゃもうダメだ。というかちゃんと読んでいるのか?
□月△日
シュギットがアタシより先に教室にいたのはもう気にしてないけど。
でもなんでそれだけでいちいち兄貴面されなきゃいけないのよ。意味わかんないんだけど。>>457
×月○日
タイミングから見ても俺がこの日誌書けるのは最後になるらしい。
非常に残念だ、もっと俺の脚色された日常風景を広げていきたかったがそうもいかないらしい。これまでを振りかえってみよう、そらどうしたことか数多の思い出が浮かんでは消え浮かんでは消え(これ以上の余白はない)
○月○日
ばくはつした。みんないきててよかった。
×月△日
一応書いてはいるけど書く内容はなんでもいいし読む人だっていない。
なんでこれを書かなきゃいけないのかわからないが、無視しようとするとネズミの先輩が髪の毛むしってくるからテキトーに書くしかない。……これでもいいなら全部自分で書けばいいのに。
「……なんだよ」
ページをめくってもめくっても出てくるのはそんな内容ばかり。ろくなもんじゃない。
ありふれたものしかこの中にはない。神秘のハナシなんてただの余白じみたものでしかなかった。>>458
「なにが『読んだら死ぬ本』だよ。先輩が死ぬほどはずかしいってだけじゃん」
「自分で取りに来れば、とは言わないんですか?」
「言わないし、言えない。たぶん先輩はここに来たくなかったんだろうし」
「そうですね、ここまで状況が揃えば疑いようもない。ここにいたOBだった人物はもうおらず、送られてきた手紙とやらは残される人に宛てられたものだったんでしょう」
「魔術師として残すものは誰にも渡せないから先輩に、かな……」
ちらりと目を向ける。切り取った岩をツギハギして作られた棚の上にある写真立てが見えた。
写真の背景は私にとって見覚えがある教室で、でも覚えにないくらい新しさが残ってて、私の知らない男子と女子が肩をくんで笑ってて、そして唯一私の知ってるネズミ姿の先輩がそこにいた。
なんのことはない。ここには元から禁書なんかなくて、代わりになるような神秘もない。自分の足跡を数えるようにして思い出を残す場所だったんだ。
◇ ◇ ◇
わかってしまえば長居する意味もない。
私とメレクは早々に空き家をあとにして、それでも念のためにとあの空き家に住んでいた人のことを近辺の住人に聞いて回ったりした。
聞けた話をまとめると『隠居したような雰囲気のおじいさんが住んでいた』というものになった。……付け加えれば、そのおじいさんとやらがカステルメッツァーノからまた余所に引っ越したという話は聞いていない。
だから、つまりは、そういうことなんだろう。>>459
ゆったりしているような、どこか浮いたような心地がやってきた。そこから先の時間はなんだか長く感じた。
本来の目的だった日誌と、日誌のそばにあったペンだけを持って、私たちはホテルへ戻った。ホテルへ着いたときはまだ夕方にもならないような時間。急いで帰れば日をまたぐくらいにはロンドンに戻れたかもしれないけど、私もメレクもそんな気分にはなれなくて帰るのは明日の朝ということになった。
波乱もないままゆっくりできている。収穫こそなかったけど観光旅行としてみれば悪くない時間だったと思う。
思う、から、私にとっての夜はまだまだ長い。
◇ ◇ ◇
長い夜も、こうして一行もまとめれば短くなって。
◇ ◇ ◇
そんな夜をみつめる誰かがいてくれたら、きっとほんの少しだけ夜は長くなるんだろう。
◇ ◇ ◇
ささいな物音に目を覚ます。
よく整えられたベッドから身体を起こす。>>461
「なにが途中ですか。今回は見事に空振りで、あとは来た道をたどって帰るだけでしょう?」
「そうだけどさー」
「第一、貴女も人のことを言えないでしょう? いつまでも夜更かしをしているつもりですか?」
「もうちょっとだけ。うとうとしてきたら寝るからメレクもさっさと寝ちゃいな?」
だからベッドに戻れとでも言うように手をぷらぷらと振る。言うだけ言って自分はまた視線を夜景に戻した。ゆったりとした、落ちついた様子で。
先の顛末を考えれば、その様子におかしいところはなにもない。
「…………」
けれど、似合わない。
まったくもって腹立たしい。
普段いらないこと余計なことをべらべら喋るクセに自分のこととなるとこれだ。せめて寝たふりでもするなら騙されてやってもいいが、そんな様子を見せられたら「ではおやすみなさい」なんて返したりできない。
「およ?」
がたりと少し音を立てるようにして椅子を窓際にうつす。そうして自分も夜景がよく見える位置に陣取った。>>462
「実にすばらしい景色ですね。いつまでも見ていたくなる」
「……もう寝ようかって流れじゃなかった?」
「貴女が先にベッドに戻るようなら僕もそれに倣いますよ」
「なんで急に子どもっぽいこと言い出してんのさ」
「これでも貴女より年下ですので」
言うだけ言って視線を窓の向こうに戻す。気のない言い方になってしまったがこの夜景の美しさは本物だと思う。
元々が岩山にそうように、そしてなじむように色合いも形状も自然体で合わせてきた村だ。それがより協調性を増したあたたかみで斜面を一色に彩っている。
星の群れが寄り添うような光景は、ここに神秘の気配がないのが信じられないほど幻想的な輝きをもっている。いつまでも見ていたくなる、という言葉はひとつのウソもない。
「それで? この景色が見とれるあまり眠れない、とは言いませんよね?」
「…………あー、えっと、バレてる?」
「前々から違和感はありましたので」
以前から気にかかるポイントではあった。何度か寝食をともにしていれば気づいてしまうこともある。
彼女の極端に短い睡眠時間はその最たるものだった。
それも体質の一言で済ませられるものではない、かといって薬や魔術で無理をしている風でもない。もはや"そういうもの"としか形容できない生活リズム。>>464
何度、そんな夜を明かしてきたのか。
今となっては知るすべもないがきっと一度や二度ではないだろう。つまり自分は、それだけ彼女のことを見過ごしてきたのだ。
愚かしく情けない。こんなザマではなんのために彼女の冒険に同行しているのか。
「……そんなの気にしてたの?」
「するに決まっています」
「なになに、なんかやさしいじゃん」
ああ、やっと彼女と目が合った。
紅に彩られた二つの瞳がものを言う。どこか遠くを見るようにして申し訳なさをかくしている。まったく馬鹿らしいにもほどがある。
「でもメレクもいっしょに夜更かしなんかしてたら明日やばいよ? 今すぐ死んだりしないからもう寝ちゃいなって」
「同じをループさせるような非効率さを僕は嫌います。ですので、一方的に僕の話だけ聞いてください」
「え、なんかヤダ、ちょっとこわいし聞きたくない」
「いいから聞きなさい。今の貴女を放置して安眠できるほど僕の神経を太くない」>>468
元々があてずっぽう&あてずっぽうな旅なので、毎回アタリを引けるわけじゃないよねっていう思惑を込めてのハズレ回でした
そんな男女が同じ寝床でなんて…そんないけませんよそんな…!
そんな…ねぇ?>>470
ハズレ回やりたいなーっていう欲と、最初から最後まで2人きりの冒険やりたいなーっていう欲がガッチャンコしたのが今回の短編です
なので実質デート回と思ってもらってオールオッケーですよーし冒険3巻読了!!!
……クッチーって割とタイプムーンの登場人物なんだな……。
あとサタンの宝具は改修しててよかったー。そそそそ…っと続きを投げまする
「…………で、コレはなに?」
「見たままですが」
ベッドで横になったルナと、すぐそばに置いた椅子にすわる自分という構図。付け加えれば……ベッドからちょこんとはみだしたルナの手をにぎっている。
それだけだ。見たままとしか言いようがない。
「いやわかんないわかんない、なんで私また手にぎられてんの?」
「"寝かしつける"という概念から説明しないといけませんか?」
「いや、いやぁ……そういうんじゃなくてぇ……」
むずがゆそうにルナの手がもぞもぞと動く。
あるいは逃げだそうとしているのかもしれない、そうはさせじと両手でやさしく包んでやった。上下にサンドされたルナの手はまもなく沈黙した。手だけだったが。
「ふかーー……」
「猫みたいにうなっても離しませんよ」
「ゥーー……」>>474
たしなめてやると一旦おとなしくなった。ここで安心するとスキありと見て逃げるので油断ならない。
「まったく……なにが不満なのですか?」
「だってこれ、小さい子がやってもらうやつじゃん」
「今のルナは小さい子そのものですよ」
「どこがさ」
「眠くないからと駄々をこねて夜更かしするところが」
「……うん……いやそうだけど、でも年下にやってもらうこと自体なんかアレだし……」
「そう言われましてもね。正直なところ貴女が年上という感覚もとっくに薄まってきたわけで」
「まって。いやそれまって聞き逃せない」
「流してください。そして寝てください」
もう一度たしなめるが、またもぞもぞと動きはじめた。
顔を見ればどこか視線も忙しない。>>477
「……私、本気で眠れそうにないんだけど」
「では眠れるまでがんばりましょう」
「まじか……まじかぁ」
「…………なんだか逆効果になっていますね」
「ホントだよ、こんなん寝るどころじゃないよ」
「本格的に子守歌でも歌いましょうか」
「というか本当になんで手つないでんの?」
「自分以外の体温や人肌があれば否応なしに落ちつくだろうと思いまして」
「いよいよ子供扱いじゃん……」
「レディとしての扱いがご所望なら、ひとりで眠れるようになってから物申してください」
それだけ言ってから顔をそむけた。とっくにお互いの顔など見えはしないが、そうでもしなければ本当にレディとして扱ってしまいそうだった。
そこで、ふと、ルナの手が動きをゆるめた。
「じゃあ、さ。せめて椅子じゃなくてベッドに座ってよ」>>480
「ほーら、人肌とか体温で眠れるんでしょ? ほらほらどうしたの、ぐっすりすやすや夢の世界にいってみなよぉ?」
イタズラを見事に成功させて、してやったりとほくそ笑んでご満悦になっている。そんなところだろう。
あるいはようやく反撃できたとでも思っているのか。内心はもうなんでもいい。だってこちらといえばそれどころじゃない。背中越しに伝わってくるなにもかもが眠気や思考力をまとめてふきとばしているのだ。
石化でもしたように全身が固まる。指一本でも動かせそうになかった。
「ほーらほら……。…………えーと、メレクおこった……?」
さすがに無反応ぶりを訝しんだか、ルナのはしゃぎようが落ちついていく。
……後の祭りとは思うが。
「……あ、えーと……」
「…………」>>481
ようやくルナも現状を客観的に認識できたらしい。
思いつきに伴う行動力は美徳だと思うが、今このときだけはとんでもない毒でしかなかった。背中越しの接触だったことが不幸中の幸いだろうか。しかしそれでも柔らかさや体温は伝わってしまう、一秒でも早く離れなければならないことには変わりなかった。
魔術を行使するときのように冷静に、不要な熱が入らないよう声を発する。
「とりあえず、離してもらえますか」
「う、うん……」
いつも通りの声が出せたこと、いつも通りの返事が聞けたことに、心の底から安堵する。
どちらか一方でも食い違っていればどうなっていたか。考えたくもない。
「……」
「……」
一時、沈黙が降りる。>>483
元からゼロに近かったそれが言い訳の効かない位置まで密着する。
近ければ当然に伝わるものも増す。五感を狂わせる情報は、少しずつ少しずつ許容できる限界に近づいている。
「……おねがい」
五感を揺らす情報が、また増えた。こちらに向けられた言葉は、聞き逃せない近さでふるえる。
「もうすこしだけ、こうさせて」
はっきりした言葉が出てこなかった。
なにかを言わなければいけない予感に急かされて、なのに喉のそこが見知らぬ人のようにそっぽを向いた。
状況と、常識と、理性と、建前と、行動で。当たり前のことと否定するべきなのに。
なんで言えない。
なにもできない。
なぜか、自分の背中にいる子が、ほうっておけなくて。>>484
「にひ、…………にひひ」
それが良かったのか悪かったのかもわからない。
どうあれ後ろからくっついてきた彼女はごきげんだ。
犬猫のように頭をぐりぐりと押しつけてくるのだからよっぽどだろう。どういう感情の発露か知れたものではないが…………こっちはこっちでそれどころじゃない。
一瞬一秒がやたらと引き延ばされる感覚。
かっと身体が熱くなっていく。否が応でも自覚していく。
ゆっくりゆっくりと延ばされていって、ふわりふわりと浮きあがるようにして、
それといっしょに『我慢』という言葉には明確な限界があることを思い出しそうになる。よくない。これは、よくない。
「……」
いっそ、今、この手をにぎりかえしてしまおうか。そんな言葉が形になりはじめた頃だった。
「……ありがとね」>>485
ちいさな声だった。
こんな夜じゃなければ聞こなかっただろう。白む空にきえていきそうな、声だった。
「いっぱい、いっぱい、ありがとね」
でも、聞こえてしまったから。
あたりまえのことだけを返すことができる。
「……どういたしまして」
自分の声は、平坦に聞こえた。
あるいはそうであってほしいだけかもしれない。
ただ声は出た。いつも通りかわからないけど、人の言葉にできる声はでた。それだけで充分だった。
早回しのように自分らしい感覚が戻ってくる。
鼓動を落ち着ける。熱に浮いた感覚を振りはらう。冷えた頭で次にどうすべきかを考えていく。
どうするか。どうするべきか。考えて、すぐに決めた。>>487
いやいい、結果的には目論見通りではある。ルナを寝かしつけてしかる後に自分もベッドに戻る。そうだ、あとはこの密着状態から脱出するだけでいい。
「……(ぎゅー)」
「…………………………………」
脱出できない。
手、胴、足。それぞれのロックは寝入ってなお継続され、離れる気配がない。
ならば力尽くで引きはがすか。───それでルナが起きてしまったら元も子もないのでは?
いっそこのまま一緒に眠る? ───眠れるものなら眠ってみるがいい、せっかく冷めた熱もぶりかえしてきているが。
自分は何者だ? 魔術を使えば───最悪の選択だ。この距離感で発動した魔術を気づかないほど、彼女の愛情は軽くない。
八方塞がりだ。打つ手無しだ。大胆に踏みこんできたクイーンが勝負を決めた、チェックメイトだ。ふふふふ……あまりの甘さに今飲んでるストレートティーも甘く感じる破壊力……ナイスチェックメイトですわルナちゃん(グビグビ)
ふふ…ふっふっふ…羊さんがいっぱいですよ…
おかしいな、リリスがいない…羊さんに囲まれてリリスがみつからないんですよ…どこだろう、どこかなぁ…ふふふふふ…
で、予約してた男性霊衣枠ができたのでポンと投げます【霊衣】夏休みの麒麟児
活発さでは誤魔化しきれない美形の兆しを垣間見せる男の子。名を鹿介。または山中鹿之介幸盛その人。
身軽さを追求した群青色に輝く足軽鎧を装備し、刀、槍、弓、と何でも扱う。そしてつりざお、むしとりあみ、みずでっぽう、と何でも扱う。果てには三日月宗近まで持ち出す始末。いったいどこから持ってきた。
場合によっては暑さで脱ぐ。草履と短パンと白シャツというシンプル夏休みボーイへと変貌を遂げる。さらに脱いで海パンゴーグルのみになることも。すなわち二段三段構えの夏仕様なり。
【人物像】
少年時代に戻ってしまった山中鹿之介の姿。
やんちゃかつ元気。超超超元気な大人らしい落ち着きをすべて取っ払ったサムライボーイ
誰よりもガンガン前にいくガキ大将スタイルで行動力はピカイチ。勇敢、大胆、無謀、まとめて夏休みの大冒険に挑むガキンチョである。言葉遣いはちょっとだけ背伸びしている。>>495
通常『山中鹿之介』がサーヴァントとして現界した際、根底にある願いおよび行動方針は生前の主への忠義と後悔に基づく。……が、この少年時代では未だそのような主に出会っていない。尼子晴久および尼子義久、そして尼子勝久の名は記憶にあれど自分のものとして呑み込めてはいない状態。
よって行動の原動力はすべて"他"ではなく"己"にある。自分がやりたい、やらねばならないと感じたことを感じるままに実践していく。ある意味では通常よりも素顔に近づいたと言えるかもしれない。
そして、その原動力とは『かっこいい侍への憧れ』である。
刀を振らせて首をはね、槍を握らせて首をつき、弓矢を持たせりゃ百発百中。敵にも死にも恐れることなく馬を駆り、声にあげるのは一番槍の誉れ。
最高にかっこいい。想像するだけで心の臓が早駆けをはじめる。あんな風になれたならどれだけ良いか。
胸を張って誇れる大人になりたい。
多くの首級をあげる侍になりたい。
誰にも負けない、自分になりたい。
そんなザ・男の子な思いを胸に秘めて日々修行に日々精進。燦々たる太陽の下で夏休みを過ごすのだ。
いずれ味わう敗北も、遠からず降りかかる喪失も……三日月への祈った苦難すらも知らぬままに。>>496
【台詞例】
「拙者───山中鹿之介幸盛と申す者! 天下無双の侍となるべく修行中にござる!」
「応ともさ。攻めたてようぞ」
「おぉ……おぉぉぉ! 見よカブトムシだ! ひどくたくましいカブトムシなるぞ! うぉぉぉぉ!!!」
「遊びとは、夏とは、なんとも楽しいものでござるな……!」
「今はまだ主無き身なれば。苦も楽もひとまとめに挑むばかりにござる」
「なんだ行かぬのか術士殿? では一番槍はいただくぞ!!」
「海の底から昇る日を追いかけて、山の頂から沈む月を追いかける。うむ、夏というのはこうでなくてはなぁ!」
「我が身に過ぎたる力……なれど、上等! 修行不足の身にはもってこいでござろうよ!」
「うむ、うむ…………ううむ? 視界すべてぐにゃりと陽炎のように……? これが、ねっ、ちゅう、しょう……?(ばたり)」
「いざ尋常に。待ったなし───だ!」>>502
お盆休み……も相まってか、いつもより人がいないような……
どうしよ〜(´・ω・`)
ひとまず鹿之介の件はそれでよろしくお願いします( ー`дー´)キリッこどもってかわいいからこわい
どうしてあんな橋の上で蛇行運転みたいな歩き方するんですか
子守ってヤバァイ…親ってすごぉい…
>>504
ご安心めされよ、書いてる人もめちゃんこ気持ち悪くなっておりました
最初は見つめあうところからスタートしたので容易にヤバくなりました
> 魔術師としての未来とか使命とか
そこを考えると私はセルフで脳破壊されます。近くはないけど遠くもない未来視に2人は……と考えて苦しみます
でもお家問題はメレ坊のキャラの根っこに引っかかってくるのでね、無視もできないのですよぉ…
無視したい、ぶっ壊したい(本音)
いいもんでしょう
素に近い感じの鹿之介リリィはずっと出したくてですねぇ…というか水着関係なしにぼんやり考えていたネタでもありました
この状態の鹿之介と黒野くんが会ったら呆れ半分に「はいはい今行くよ」みたいな感じで後ろを追いかける感じになると思います
一時的にとはいえ年上になってるので黒野くんは大人らしさを見せようとしていたりすると私がうれしい盆明けなんで生存報告がてら、舞台候補となる設定を投下〜。
オリエンテ・カオティカ
ラ・アルカイデサとサンタ・マルガリータの間へんの沖合にJ.C.バルベルデが造った、敷地全域を巨大な繁華街・歓楽街にした人工島。
懸垂式モノレールが走る鉄道道路併用橋に港、空港もあるのでアクセスは容易。
ラ・アルカイデサとサンタ・マルガリータからは高速艇の定期便が運航され、ヒブラルタル(日本語での発音は『ジブラルタル』)ではそれに加えて駐留軍専用便で空路からもアクセス可能。
水道水用に海水をろ過した際に出てくる塩を超高温で殺菌・消毒後、高圧で固めて作る『人工岩塩V(ウベ)』が定番のお土産。
「二十世紀のおもしろジパング」というコンセプトに則り、日本各地の繁華街・歓楽街を合体させた景観が特徴。
飲食店や風俗店、ホテルにアミューズメント施設も完備。
ちなみに、住宅は全て賃貸だが家賃は設定されていないので誰も払っていない。
半導体等の工場や浄水施設と空港が立ち並ぶ港湾地区にも広島県の港町っぽいレイアウトでそれらは存在している。
学校は初等教育と中等教育の一貫校一つだけで、同じ敷地内に役所と税務署や消防署に警察署と総合病院もある。
職員用地下街には飲食店の他に風俗店まであり、共用仮眠室は個室式の防音仕様に加えて有料で風俗店のキャストを連れ込み可能な始末。
結果、この街の市議会議員含む公務員は軒並み金と色香で懐柔されてなんかもう色々とダメなことになってる。
ソドムとゴモラもビックリな欲望の街だが、『エスパーニャの法律と文化を遵守し、バルベルデに敵対しなければ人種と年齢と性別と性格を問わず、定住を望むなら地域住民として受け入れる』という絶対の不文律により、民度は意外と高く、治安も日本の歌舞伎町よりは良好。
どういう訳か日本から来た住民の中には明らかに脛が傷だらけな人達も多いのだが、J.C.バルベルデ側曰く「おしぼり業者組合とボディーガード組合と運送会社組合の人達ですよ」。
観光客は歓迎するが、犯罪目的の外来者には容赦せず殺人も厭わない攻撃性も住民間で自然と培われるため、人情と暴力の街でもある。
以上。
我ながら滅茶苦茶なの作ったもんだ。レージュさんって頼めばイラスト描いてくれるのでしょうか……。
>>509
確かに。
気をつけます。>>510
えっ
それはつまり宝具からアヴァンギャルドな夏になると…?>>516
(今まで素敵な物語を書いてくださった黒鹿さんの力量なら)どこまでも踏み込んでくださって良かったよォ!
というのはさておき、
「調子に乗った両親が勝手に決めた婚約者がいる」
「最終的に本性と才覚表したメレク、そして鬱憤溜まっていた理仁により、両親は色々と鼻っぷしをぶち折られ、アルマソフィア家はメレクが新当主につく」
って箇所以外、何も考えてないと言いますか……
物語(そう至るまでのルート)は無限だと思っているので、それこそ例えば「冒険旅行記におけるメレクの御家騒動並び新当主誕生は、ルナ・アードゥルとの関係が両親にバレた事がきっかけだった」みたいなパターンでも全然良くってぇ……
本当に何も考えて無くってぇ(知能溶けた顔)>>521
なるほどですわね?
人間関係まわりとか気になるんですが「実はこういう人がいてほしくてぇ…」みたいなのもなく完全に白紙ということでよろしくて?
聖杯大会運営本部【リレー相談・雑談】#235
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