>>663
ふと疑問に思ってガレスは尋ねた。
「そう言えばランスロット卿は売り場にはいらっしゃらないのですか?」
「ああ、ランスロット卿は別の用事があるそうでね。私としてもこれ以上頼るのは心苦しいし…もしかしてランスロット卿に用事かい?」
「いえ、ちょっと気になっただけです。」
あわよくば話そうと思ったとは言えずガレスは誤魔化した。
「しかしランスロット卿…あんなにお世話になったのに『お礼なら完成した本一冊でいい』と言われてね。私としてはもう少しお礼をしたいんだが受け取ってもらえなくて困ったよ。」
ふとガレスは先ほどの本の内容を思い出した。この本に出てくるギャラハッドはランスロットの息子であった。もしかしたらランスロットは単にパーシヴァルの手助けをしたいだけではなくて、息子ギャラハッドの様子を知りたかったのかも知れない。なんとなくガレスはそう思った。別に普通に聞けばパーシヴァルは教えてくれるだろうが、変なところで不器用なのがランスロットである。
「そうですね。でもお礼ならその本で充分だと思いますよ。案外ランスロット卿も本作りが楽しかったのかも知れませんね。」
そう言ってガレスはにっこり笑った。つられてパーシヴァルも笑った。
「そういうことなら納得だ。しかし言ってくれれば無理にお礼を押し付けたりしなかったのに…」
少し残念そうにパーシヴァルは目を細めた。まるで遠くのランスロットを見ているようだとガレスは思った。
「そうだ、パーシヴァル卿、この本一冊で買いますよ!」
「ガレス、顔見知りだからと言って無理することはないんだよ。」
「いいえ、そうじゃありません。読んでみていい話だと思ったからこそ買いたいんです!」
「そう言ってもらえると嬉しい。じゃあ1冊お買い上げありがとうございます。」
パーシヴァルは笑顔で答えた。
怪 文 書 ス レッ ド 3
667
レス投稿