>>656
パーシヴァルの手から光が消え、ナポレオンの体から手を離した。
「これで大丈夫でしょう。ただ激しい運動は精密検査を行ってからの方がいいでしょう。私は医療の専門家ではないので治しきれていないところがあるかも知れませんので。」
包帯を外してみると、ナポレオンの体についていた外傷はすっかり消えていた。
「こいつは凄いな。ありがとうな。」
「いえ、傷を癒したのはロンギヌスの槍です。私はあくまで仲介しただけですから。」
パーシヴァルは謙遜して答えたが、ナポレオンとしては少し不満だった。
「そういや、あんたは生前じゃいつから聖槍を持ってたんだ?」
「そうですね、私の前の持ち主がとある邪悪な魔術師なのですが、かの者に打ち勝って以来私の手元にあります。」
「聖槍が邪悪な魔術師をえらんだのか?」
にわかには信じられずナポレオンは聞き返した。
「厳密な話をすればその魔術師の手にあった時、ロンギヌスの槍は魔槍でした。私の手に渡って聖槍に戻ったのです。」
「聖遺物を魔に染めるとは恐ろしい魔術師だな。」
そういってナポレオンはパーシヴァルを見た。何か言いたげな表情だったが、口を開くべきか逡巡しているようだった。ナポレオンが何も言わず黙って待っているとパーシヴァルが口を開いた。
「これは私の個人的な感想のようなものであって、何か根拠や証拠があるわけではないのですが…」
「おう、構わねえぜ。」
「この聖槍ロンギヌスを最初に握った時、とても手に馴染んでしっくりきたのを覚えています。まるで私のために作られたような錯覚するほどでした。」
パーシヴァルはそこで一度口をつぐんだ。ナポレオンは何も言わずパーシヴァルの言葉を待った。
怪 文 書 ス レッ ド 3
659
レス投稿