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船に慣れてくると愛馬は足もとの甲板をトントンと前足で軽く叩いた。その後首を伸ばして鼻を甲板に近づけてくんくんの匂いを嗅いだ。甲板に耳を近づけてもみたが波の音しか聞こえなかった。何も反応がないので愛馬は首を傾げた。
「どうしたんだい?」
騎士の問いかけに愛馬はコツコツとゆっくり前足で甲板を叩いた。
「おや、私の船が気になるのかい?興味を持ってくれて嬉しいよ。船で一番わかりやすいのはマストだよ。」
そう言って海賊はマストを指さした。愛馬が指に先を見ると大きなマストがはためいていた。
「マストが膨らんでピンと張っているだろう。こういう時は船は元気がいいんだ。最も元気が良すぎても困るんだけどね。」
愛馬は首を傾げた。元気がいいことがダメな理由が分からなかったからだ。
「お前が走りすぎた時、私は手綱を引くだろう。船にも手綱を引いてあげる必要があるんだよ。」
主人の言葉に納得した愛馬はヒヒンと声を上げた。
「ああ、捕捉助かるよ。ちなみに船が元気がない時はマストが垂れ下がっているんだ。こうなると船がちっとも進まない。困ったものだね。」
愛馬はマストをじっと見た。風を受けたマストはパタパタはためいていてとても元気そうだった。
ふと愛馬は鼻にツンとする匂いを感じた。匂いの元を辿っていくと黒い大きな筒がいくつも並んでいた。興味を持った愛馬が黒い筒に近づこうとすると騎士がその前に立ち塞がった。
「そっちは危ないから行ってはいけないよ。」
そう言われても気になるものは気になる。愛馬は主人に遮られたまま鼻をヒクヒクさせた。
「硝煙の匂いが気になったのかな?それは大砲と言ってこの船の武器だよ。お願いだから大砲には近づかないで欲しいな。君が怪我をすると君の主人だけじゃなくて私も私の船も悲しい。」
その言葉に納得した愛馬は、くるりと大砲に背を向けた。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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