ブラッシングが終わると騎士は、ブラシを置いてリンゴを持ってきた。
「これはモデルのお礼に貰ったリンゴだよ。4つ貰ったんだけど今食べるかい?」
愛馬は思わぬプレゼントに喜びこくこくと頷いた。
騎士が差し出したリンゴを愛馬は器用に自分の口に放り込んだ。モグモグと咀嚼するとリンゴの果汁が口に広がり、甘い味が口の中を占領した。愛馬がリンゴを食べ終わったタイミングで、騎士は2つ目、3つ目とリンゴを差し出した。どちらのリンゴも愛馬は喜んで食べたが、4つ目を差し出された時に思った、『ご主人の分のリンゴがない』と。
愛馬は差し出された4つ目のリンゴは口に入れずに頭でぐっと騎士の方に押した。予期しない反応に騎士は驚いた。
「おや、いつもはもっと食べていたけど今日はもういいのかい?お腹がいっぱいになったのならこのリンゴは今度にしようか。」
慌てて愛馬は首を横に振った。不思議がる騎士に対し、愛馬は主人の手元のリンゴを再度頭で押して主人の胸元まで持って行った。
「私にくれるのかい?」
愛馬は今度は首を縦に振って頷いた。リンゴは申し分がないほど美味しかったのだが、だからこそ主人にも食べて欲しかった。
騎士は愛馬の好意を素直に受け止めた。
「ありがとう、それじゃあ頂くよ。」
騎士はそのままリンゴを齧った。しゃりしゃりと咀嚼してごくりと飲み込む。
「うん、美味しいリンゴだね。本当に良かったのかい?」
愛馬はもちろんという意思を伝えるべく首を縦に振った。騎士は満面の笑みを浮かべてリンゴをまた齧った。愛馬はそのリンゴの咀嚼音を愛心地よく聞いていた。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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