「珍しく今日は晴れているね。満月が見えるよ。」
端遥先輩の言葉に、咄嗟にある文学小説のフレーズが私の口から出た。
「月が綺麗ですね。」
「月が好きなのかい?月はとても神秘的な星だね。美術品にも月やそれにまつわる作品が数多くあるんだよ。」
どうやら先輩は文学には疎いらしい。気づいてもらえないのが残念だが、今の関係が壊れてしまうかと思うとちょっと怖い。残念だがホッとした。
「そうそう、月で思い出した。今度美術館で月がテーマの展示会があるんだ。ペアチケットがあるんだけど、もし興味があるなら一緒にどうかな。」
「是非、お願いします!」
少なくとももうしばらくは今の関係は続きそうだ。
その後もたくさん日常の些細なことを話した。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。流石に学生の身分で深夜まで外にいるのはまずい。名残惜しいけど仕方ない。帰ろうとする私の手を端遥先輩が掴んだ。
「はぐれるといけないからね。」
私はこくんと頷いた。行きより心臓音が大きく鳴り響いている。落ち着こうと外に意識を向けると虫の鳴き声が聞こえてきた。どうやらもうすぐ秋が来るらしい。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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