「こんにちはカーマ。愛の神に会えるなんて恐縮です」
「……貴女……カズラドロップ、でしたっけ」
「はい。覚えていてくださって嬉しいです!」
黄緑の服を着た少女──カズラドロップは、カーマを見上げて明るく笑顔を咲かせた。サーヴァント以前に、彼女が外見通りの子供でないことをカーマは知っている。BBから切り離された別側面、慈愛のアルターエゴ。とはいえさほどの関心はない。この依代とよく似た顔が、またひとり増えただけだ。
「何してるんです、それ」
「妖精双六だけだとマンネリかなと思いまして。虫空間に狩人を入れて、虫さんたちにかくれんぼと鬼ごっこを同時にやってもらえれば面白いんじゃないかと実験中です」
ちょん、と小さな指先が人形らしきものの頭を押す。オレンジ色の着ぐるみが力強く背筋を正し、武器を手に走り出した。デフォルメされた後ろ姿でも見覚えしかない。
「適度に会話が通じなくて可愛さのある人選にしました。ただ、パターンが独特すぎて模倣しきれなくて。今は水辺なので、狩人らしく銛を持たせてるんです。捕まってもダメ、銛に当たってもダメのルールにしています。……逃げ切れる保証はしてないですけど」
カズラの言葉を後押しするように、バネ仕掛けの銛が発射される。鋭利な先端に腹部を貫通され、コボルトが消滅した。銛を引き戻し、ミニジャガーマンが水飛沫とともに駆ける。実験という言葉通りに、魔力で編んだ仮想の駒を遊ばせていたらしい。
「へぇ、よくできた玩具ですね。特異点でも作るつもりですか?」
「嬉しいです! 頑張りました!」
褒められて喜ぶ子供の無邪気さに、カーマは目を細めた。半分は正解で、半分は不正解だ。大切にしたい想いと、それを許せない嫌悪。相反する苦しみは、理解できないこともない。
「……慈愛のアルターエゴ、でしたっけ。親が子を慈しむような深い感情──つまりは上位から見下ろす庇護の愛。優しく守るものであり、強固に閉じ込めるもの。カズラドロップ、貴女の在り方に相応しいものなんでしょうね。尤も、『それ』が本物かどうかは知りません。私は愛の神ですが、他人の愛に興味はありませんから」
「そうですか……見透かすようなことを言って、無責任なんですね」
カーマが引き攣るように口角を上向けた。やはり子供は形だけだ。意趣返しの目が嗤う。
「ええ、それが神ですから。妖精ほど気まぐれではないんですよ」
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