食堂はきらびやかだった。様々な飾りに彩られ、普段は目にしない置物や菓子があちこちに用意されている。季節の変化がわかりにくいカルデアにおいて、所々で開かれる催しは時期の移り変わりを実感させてくれる。何よりも、沖田オルタにとっては初めて知ることばかりで、あちらこちらに目移りしてしまうのも已む無しといったところだった。
「あ、いたいた。こっちこっち」
「マスター? 何だかどこもかしこもきらきらしているな」
手招きされるままに駆け寄る沖田オルタに、マスターは笑って椅子を示し、切り分けたケーキを差し出した。雪のように白いクリームがたっぷりと、艶々の苺がまるまる一粒載っている。目を瞬かせる沖田オルタに、マスターはケーキに添えられたチョコレートの文字を指差した。
「メリークリスマス。クリスマスは良い子がプレゼントを貰える日だしね。プレゼントがケーキだけなんてクリスマスらしくないけど、みんなで一緒にわいわいできたらなって」
言われて見回す。広い食堂は続々と席が埋まり、各々にケーキや料理を食べ始めている。和気藹々とした空気は、カルデアに召喚されなければ永劫知らないものであったに違いなかった。騒がしいのに心地良い、不思議な感情が沖田オルタの表情を緩ませる。
「……ありがとう、マスター。まじんさんは嬉しいぞ。でも、良い子がプレゼントを貰えるならマスターも貰わないと嘘だろう。マシュも子供たちもみんな良い子ばかりだが、一番頑張っているのはマスターだ」
「……そうかな。ありがとう」
はにかむマスターの様子に、沖田オルタの胸がなぜかざわついた。理由はわからない。少なくとも不快な感覚ではなかった。
「マスターからは貰ってばかりだから、私からも何かプレゼントしたい。……そうだ、マスター、口を開けてくれ。茶々様がたまにしてくれるんだ。どうしてかもっと美味しくなって嬉しくなる」
「それは……」
マスターが言葉を選んで口を噤む。沖田オルタは目を逸らさない。金色の眸の純粋さに、断るのも気が引けた。やがて観念したマスターが、大人しく口を開く。そこへケーキが差し込まれ、沖田オルタは自身の口にもケーキを放り込んだ。霊基に染み渡るほどに甘く軽やかで、幸せが満ちる。
「クリスマスはいい日だな、うれしみ。せっかくだから煉獄もおしゃれをしよう。……こうか?」
「主は結び方も知らないんだからやめてね?」
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