>>649
「雪が気になるのかい?」
そう言って騎士は愛馬の上に積もっていた雪を払い除けた。満足そうな笑顔の騎士に『違うそうじゃない』という意思表明のため、愛馬は主人の胸に軽く何度か頭突きで抗議した。頭突きの衝撃で騎士の頭から雪が一欠片落ちた。そこで初めて騎士は自分が雪が積もっていることに気がついた。
「もしかして私に雪が積もっていることを知らせたかったのかい?」
自分の意図が伝わったので愛馬は頭突きをやめた。騎士が自分に積もっている雪を払い落としたのを見て、愛馬は満足気に尻尾を振った。
「今日はここまでにしようか。できればもっと強い雪にも慣れておきたいね。聞いた話によると激しい雪の日はほんの数cm先も見えなくなるそうだ。ホワイトアウトというらしいよ。」
それを聞いた愛馬は急いで騎士に近づき体をくっつけた。大切な主人を見失っては大変だと思ったからだ。
「ああ、今日はシュミレーター設定でホワイトアウトは起きないようにしているから大丈夫だよ。とても危険だからね。」
愛馬の体をゆっくりと撫でながら騎士が言った。愛馬はしばらくソワソワと周りを見渡していたが、どうやら主人の言った通り今は大丈夫だと納得した。
愛馬が落ち着いたのを確認すると騎士は歩き出した。愛馬もその後に続き軽い足取りで着いてきた。後には一人と一匹の足跡だけが残っていた。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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