ここは現代日本。魔術師達が裏で何をしていようと社会は表側の人間が主流となって回している。
そんな表の社会でも時に魔法のような奇跡が起きることがある。これはささやかな奇跡のお話である。
今日も散々な日だった。運良く希望の会社に就職できたまでは良かったが、新人研修が終わり本格的に業務を任されるようになると一気に負担が増えた。特に自分は鈍臭い。まだまだ新人の自分には教育係の女性の先輩がいたのだが「仕事が遅い」「報告はまだなの」と怒られるのはしょっちゅうだった。今日は特に提出物の締め切りがギリギリだったのでキツく怒られた。
毎日毎日こんな日が続くのかと思うと気が重かった。自分はなんとために社会に出て仕事をしているのか価値を感じられず、明日の出社が億劫に感じた。
「ただいまー。」
自宅について挨拶しても返事はない。それもそのはず私は一人暮らしだった。それでもあえて挨拶するにには理由があった。寝室にある勉強机の上にちょこんと座っている、それは手のひらサイズのぬいぐるみのパーシヴァル卿だった。普段この手のグッズは買わないのだが、このぬいぐるみだけは別だった。デフォルメされたフェルト生地のパーシヴァル卿は一目見て即決で購入したものだ。勉強机の上に載っているぬいぐるみに声をかける。
「お留守番ご苦労様。いつもありがとうね。」
適当にあるもので夕食を済ませた後はいつものように試験勉強を進めた。参考書とノートを開きボールペンを握った。…までは良かったが昼間のことが頭をぐるぐると駆け巡り勉強に集中できなかった。
「あー、今日はもうダメだなこれ。」
そう呟くとベッドに潜り込んだ。参考書やノートを片付ける気力はなかった。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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