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推進力で突撃する騎士は、投擲したランスに追いつき再び把持する。
両者とも己の得物を手に渾身の一撃を放たんと魔力を最大限に込めた。
「凱歌をあげよ——『冷艶鋸(れいえんきょ)』!」
「我が勝利に唄え——『我が栄光は敗北を知らず(グローリー・オブ・マイ・キャヴァルリー)』!」
一方は刃を、一方は穂先を魔力で輝かせる。
そして——フランス特異点更新します。
マーシャルの槍が俺の鎧を貫き、心臓にまで到達する。
限界を超えた力で放った冷艶鋸を間一髪の所でくぐり抜け、そうなると決まっていたかのように俺を貫いていた。
「ぐうっ……見事……」
身体から力が抜けていく。
限界を超えた力の代償か、霊核を失った途端に消滅が始まっていた。
だが、王国軍にこの場での撤退を判断させれる位には被害を与えれたはずだ。
それならば俺の勝ちだと最期に結論付け、俺は地面に落ちる前に消滅した。以上、関羽消滅でした。
伏神の続編ですよっと
とりあえず話を進めるということで書いたので後で不備があればあとで加筆するかもです>>7
「ほう、思わぬ収穫だ。お前の細かい部分も時には役に立つものだな」
戦場となった公園の広場を陰から覗いながらアヴェンジャーは言う。
公園に戻って敵の情報が少しでも残っていないか調べるという自身のマスターの提案に対してろくな情報は残ってないと主張をしていたが彼であったが敵のサーヴァントの姿を観察できるというこの状況はまさしく相当な有利になりえる情報であろう。だが彼のマスターは彼とは違うところに意識を向けていた。
「え…なんで…どうして?あれはサーヴァント…?なら彼も?でもあの出血じゃ…」
しばらく状況を見守っていた彼らであったがそれは不意に終わりを迎える。自身のマスターを抱えてこの場を離れるランサー。
「救いを拒絶して去るか、まあそれもよかろうよ。だがあれはうかつだな。俺たちを狙った狙撃手の恰好の得物だろうよ。」
「……けて」
「ん?」
「あのケガしたマスターを抱えたサーヴァントを追いかけて!早く止血しないと彼が危ないわ!」
自身のマスターの言葉を聞いたアヴェンジャーは顔をしかめる。>>9ミスったすみません
「お前自分が何を言っているのかわかっているのか?あいつらは敵だ。そもそもお前の言う悪事を行っているものあいつかもしれんのだ。」
「……わかってる。けどほっておけないの!彼は私の知り合いなの、だから…たとえ魔術師でもできることなら生きていてほしいの。もしあなたがやりたくないというならこれを使ってでも追いかけてもらうから!」
そういうと主の体に刻まれた令呪をアヴェンジャーに見せる。
「チッ!こんなことに令呪を切るようなことか阿呆め!分かった追いかけてやる。だがあいつは一度マスターへの支援を拒絶している。仮に追いかけたところで治療をさせてくれるかもわからんし戦闘になるやもしれんぞ。」
「そのときは私がなんとか話をするわ。だからはやく!」
そういうとアヴェンジャーに自身の体を担がせ飛んで行ったイコマ陣営へと追跡を開始した。
パスします
3行でまとめ
公園で作業(アーチャーへの手がかり見つからず)
3体のサーヴァントの姿を視認
イコマ君を追跡フランス特異点『火界咒』を投稿します。
>>11
厩戸皇子はマスターを庇うように立つ。丹の袍と冠をまとい白い細袴は、姿勢良く立つすらりとした均整のとれた肢体を、よりいっそう精悍にひきしめているのがわかる。
狂月棲獣を凛然とした表情で見据える。鼻梁と唇の端麗さは、古代の名工の手になる彫刻を思わせた。しかし生命のない彫刻でありえない証明はその双眼で、黒曜石のような瞳はするどく研磨された剣のような光を放っていた。それとも、凍てついた星の輝き、と呼ぶべきだろうか。無機質的な完璧さを有する彫刻の目でないことはたしかだった。
厩戸皇子は根本印を結び真言を詠唱して火界咒を使う。あらゆる煩悩と魔を炎の憤怒にて消散せしめる闘尊・不動明王の真言である。またの名を大咒、あるいは金剛手最勝根本大陀羅尼とも言われる。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ……」
百舌鳥のはやにえのように大黒槍で刺し貫かれた狂月棲獣は眩い炎に包まれる。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!?」
怨嗟に穢れた絶叫が大気を震わせる。だがすぐに熱気で狂月棲獣の気管が爛れ肺腑が炭化する。禍々しき獣はすぐに声をあげることも叶わず炎熱に悶える。
「センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」
次の瞬間、火柱が狂月棲獣を引き裂き、肉体と精神は球型の巨大な白熱光のなかで四散し、原子に還元した。無限ともいえる極小の時間を構成する粒子は、死にゆく獣の抗議を暗闇の奥深くへ吸い込んでいった。
◇◆◇>>12
「……玉兎は逃げちゃったみたいだね」
「あの狂獣はそのための殿、肉盾だったのだろう」
立香の呟きに厩戸皇子が応じて流し目に天狗面の男を見る。
「助力に感謝するぞ、天狗の武士殿」
「本当にありがとうございました」
「いや、気にするな。俺がやりたくてやったことだ」
寺田が面倒臭げに手を振る。
「助力してやったのは儂もだぞ。むしろ儂のほうが貢献度高くない? おお?」
スカタクが無形の落とし子で作ったニーソックス以外は全裸な姿で立香に喰ってかかってきた。
「勿論ですよ、お姉さん! すごく助かりましたよ。……あと全裸ニーソって大変素晴らしいと思います。ありがとうございました」
「はははは、であろう、であろう。まあ、儂だからだな」
「ええ、まったくです。本当にありがとうございました。俺は藤丸立香。お姉さんは?」
人懐っこく笑い、立香は自己紹介をする。彼とてこの佳人が厩戸皇子などの英霊とも異なる存在だとは感得している。それでもこのような態度を取れる辺り、少年も胆が太かった。
「儂の真名はスカタク。この影の国の女王スカサハの宿体を依代に現界した。クラスはフォーリナーだ」
文字通りに胸を張ってドヤ顔をする佳人は先程から裸形のままだ。
手ぶらジーンズ見てみたいなという主の呟きを、まるきり冗談には聞こえないなと思いつつそれを無視して、厩戸皇子は寺田へ向き直る。暫くフォーリナーへの対応は主に全権委任する。
「先程の鬼功(きこう)、見事であった。そのような魔力が枯渇している状態で果敢にも戦う卿の勇気も気に入った。恐らく卿は私やマスターと同郷かとお見受けするが?」
「おう、日の本生まれよ。お前さんもそうだろう? 尊人(とうとびと)よ」
がらっぱちな喋り方で応じる寺田に、気分を害した様子もなく厩戸皇子は頷く。>>13
「いかにも私は日本国、山背の国の生まれ。真名は厩戸皇子。クラスはセイバーである」
袍の袖で口元を隠して、厩戸皇子は品良く言う。
「ほう! てぇことは聖徳太子か! これは凄い。日の本でも一等な英霊の一人じゃねえか。―――あの剣技、まじないの見事さ、凄絶さも道理だ」
寺田は天狗面を取り、厩戸皇子を見る。笑みを浮かべているがその眼は妖しげな光を発散させていた。
「あの家畜の敵と判断して先刻は協同したが、じきに陽炎の如く消えるならば剣人として、尊人の刃を味わってみるのも……いいかもな」
「えっ!?」
唐突に声を上げたのは立香だ。突然の寺田の発言に面を喰らったのだ。
「は、は、は、は、は。執念という刃が人型を成した奴だな」
おなじみの優雅さで笑い、厩戸皇子は受け流した。
「なあ、天狗面の武士殿よ、卿の鋭気と渇望を満たすならば、我がマスターと契約をしてみないか?」
「この童(わらべ)と契約だと?」
寺田は胡乱げに白皙の貌と少年を見比べる。
そこで立香が寺田に説明をする。厩戸皇子もそれを補完するために時々口を挟む。
「よし、ならばその契約とやらを受けおうではないか」
寺田は立香へ向き直る。彼にとってもまだこのフランスでやり残したことはある。まだ現界を維持できるならば寺田にとっても渡りに船であった。
「真名は寺田宗有。クラスはセイバーだ。よろしく頼むぞ童」
「藤丸立香です。よろしくお願いします」
立香の表情はこわばっている。
厩戸皇子以外のサーヴァントとの契約には多大な負担がかかることはロマンに釘を刺されいるし、厩戸皇子からも注意は受けていた。それでも厩戸皇子が持ちかけるということはそれだけ、寺田を評価して協力関係を得たいということだろう。その力を存分に振るうためにも契約は必須となる。>>14
手の甲に刻まれた令呪を晒して、立香は厳かに唱え上げた。
「告げる。汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら―――我に従え。ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!」
「誓おう。汝の供物を我が血肉と成す。藤丸立香、我がマスターよ」
魔力供給の経路(パス)は滞りなく繋がり、右手の令呪が鈍痛とともに光を宿す。
契約が完了して身体を巡る充足感に寺田は満足する。
「ありがたい。マスターもいないサーヴァントでは魔力供給も受けられないものだから助かるわい」
魔力供給の問題は革命軍に属するサーヴァントたちが抱える問題である。
「戦争でもっとも大切なのは補給と情報だ。このふたつができていなければ、戦闘などできはしない。戦争をあえてひとつの経済活動にたとえれば、補給と情報が生産で、戦闘が消費にあたる。そしてサーヴァントへの魔力供給もまた補給である。それが途絶えているとなると、革命軍の現状はかなり深刻そうだな」
厩戸皇子は悩ましげに嘆息する。前髪をかきあげ、微風に額をさらした。憂愁にしずむ瞳は、水晶の杯に液体化した月光をたたえたようであった。
◇◆◇
「あ、それとセイバー。スカタクも協力してくれるって!」
「ほう、それは重畳である」
「そのとおォりだっ!」
立香の後ろでスカタク―――既に黒いボディスーツを着ている―――が自信満々な表情で厩戸皇子たちを見ている。
「卿のような天津神や国津神とも違う……外つ世界の神たる御身のご助力を賜るとは有り難いことです」
「左様。この格上物(かくうえぶつ)は……生物としての格が違う。味方になるなら喜ばしい」
「ふふーん、そうであろう、そうであろう! まあ儂は旧支配者じゃし? 凄いし? そのグレートでマーベラスなパゥワーで貴様らの手伝いをしてやらんこともないぞ!」>>15
元来の肉体の所有者ならば決してしないだろう表情で自慢げに語るスカタク。その増上慢な在り方にも立香らは特に言及をしなかった。ごく短い時間の付き合いだがこの女性との付き合い方に順応しつつあった。
「はい、よろしくお願いします!」
「わはははは!」
「そうだ、マスターよ。当面、契約は寺田だけに留めておけよ。今の卿ならば三人までは契約もできるだろうが、今の負担になれぬうちに無理はするな」
「はい。わかりました」
厩戸皇子の助言に立香が頷く。実際、こうしている今の立香は鈍痛で苛まれている。
「そうだな、養生しろ。俺も家畜や醜女のように仕留めたい輩がいるから無理はするなよ」
「たしかにあの畜生や、王国軍を称するものらを牛耳る領袖は倒すべき仏敵。故に寺田よ、卿の知るこのフランスの実情を教えてもらいたい」
「そうだな。儂もあのムーンビーストどもは駆逐してやりたい。そのためには色々と知っておかねばな!」
「はい、俺たちに教えてください。……だけど、この人たちはどうしよう。ここに置いておくことなんてできないし」
立香は茫乎として座り込んでいるルブラン一家を見る。自分たちが話題になっているのに反応が鈍い。
「ならばこの近くの革命軍の基地へ案内しよう。そこでならば保護をして今後の身の振り方も決められるだろう」
そう提案したのは寺田である。しかし、革命軍の基地まではラ・シャリテからは距離があり、疲労困憊の立香やルブラン一家を連れて徒歩で移動するのは難しいだろうと寺田は悩む。
「それならばこうすればよい」
スカタクがそう言うと黒いタールのようなものが流動する。すると馬車に蜘蛛のごとき肢が生えたような異形へと変貌した。車体(?)の表層はなながら無数の蚯蚓か怪蛇のごとくうねり、身を震わせている。
「お前らもこの中に入るといい。座りながらのほうが話しやすいだろう」
立香たちは暫く表情の取捨選択に困った。
ルブラン一家はまるで夢遊病者のような足取りで言われるがまま黒塊に乗り込んだ。
「……ありがとうございます」>>16
立香は、ごく短時間ながら宙を遊泳していた心を有重力状態に引き戻した。お礼を言ったが、心持ち音程が高いように自覚した。
以上です。
寺田からの説明パートをよろしくお願いします。九終のマスターシーンを投下します。色々と情報が落ちています。
深夜1:00 九終島 五道孤児院・廊下
「うう……やっぱりこわいなあ……。あかりちゃんおこしてついてきてもらえばよかった……。」
わたしはそのよる、へんな時間に目がさめた。そのせいかは分かんないけど、わたしはトイレにいきたくなった。まわりのみんなはねていて、一番年上のあかりちゃんをおこすのも気が引けたので1人でトイレに行くことにした。ろうかは暗くて今にも何かが出てきそうなふんいきがあった。
「あ…………」
ふと、ろうかのまどからさしこんでいた月の光を見た。目でおってみると、月はきれいな半月をしていた。なんだかその半月から目がはなせなくて……
「あ、れ………?」
なんだかとってもねむくなって、わたしは目をとじた。ふかいふかい水の底にしずんでいくかんかくの中でわたしは知らないだれかのこえをきいた。>>19
同時刻 九終島 九重神社・離れ
部屋のデジタル時計は深夜の1時を表示していた。そろそろ寝なければ明日のバイトに支障が出るのは分かってはいるが、俺はまだ寝付けないでいた。
「いっ、つ………」
つい1週間前にエリザヴェーダというらしい女から受けた傷跡が未だに痛む。ここ最近どうにも傷の治りが遅い。打撲だとか捻挫だとかならまだしも、包丁で薄皮を切った程度の傷でここまで治りが遅いとは思わなかった。前はもうちょい早く治ったのに、こんなに遅いとは……。
「でも、俺なんかより海音さんの方が心配だ……。」
あの後、天莉さんがエリザヴェーダに連れていかれたと海音さんから聞いた。直ぐにでも連れ戻すべきだと俺は言った。あの女は危険だと俺の中のナニカが「連れ戻さなければマズイことになる」と告げていた。けれど海音さんは頑なまでに首を縦には振らなかった。なぜ、と海音さんに問いかけた。けれど俺に答えが返ってくることはなかった。それが俺に言えない、いや、言ってはいけないことだから黙っているというのは嫌でも分かった。なにしろ俺のような得体の知れない男を雇い、ほぼ住み込みに近い形で働かせているのだ。どんな事情があるにせよ、その立場を利用して彼女の心に土足で踏み入るような真似は出来ない。それにここを追い出される方が今の俺にとっては死活問題だ。ここ以外に行く宛てなんてないし、今更就職先を探しても俺のような札付きを雇ってくれるところなんてないだろう。>>21
同時刻 九終島 ウエストサイドエリア・住宅街・倉橋家の一室
もうすぐ深夜1時を回ろうとしている。だというのに私はまだ眠れないでいた。
「明日、学校なのになあ……。」
期末試験も終わり後は夏休みの始まりを待つだけになってはいるものの私は生徒会ということもあり、学校に残って前期終業式に向けての準備だったり備品のチェックや掃除点検箇所の確認なんかをしなくちゃいけない。特に掃除点検箇所なんて山のようにある。元々、今の学校が出来たのが200年くらい前のことらしく、修理や補修が必要な箇所がたくさんある。この島で地震や土砂崩れに洪水といった被害は本州に比べるとかなり少ないものの、それでも何かの拍子に壊れないとも限らない。カノちゃん曰く「学校長に何とか出来ないのか聞いてはいるんだけど、曖昧な返事しか返ってこないのよ」とのこと。でも校長先生が曖昧にしか返さないのも分からなくはない。素人が考えても、200年も保ってきた校舎を1から直すとなるととんでもない額のお金が必要になる。そんな額のお金が上から降りてくるとは考えづらいし、何よりもお金が降りてきたとして校舎を補修する間に生徒達が通う代わりの校舎を見繕わなきゃいけない。どう考えても掛かるお金に対して掛かる手間が多いしリターンも少ない。私が校長先生の立場でも素直にうんとは首を振れないだろう。>>22
「まあ、私よりもカノちゃんの方がずっと忙しいんだけどね……」
神社の経営もそうだけど、たくさんある生徒会の仕事を1人でいくつもこなして、家の家事もこなして……。私なんかじゃとても真似できない。生徒会の仕事だけならまだ私も見よう見まねで出来なくもないけど、それ以外は真似なんて出来っこない。特に料理の腕なんて天と地ほどの差がある。私の腕を仮に料理初心者だとするなら、カノちゃんの腕は旅館の料理人さんに並ぶと言っても過言じゃない。一緒にお昼ご飯を食べる時も私のお弁当が冷凍食品のおかずを少し混ぜてあるお弁当なら、カノちゃんのは1から自分で作ったことが分かるお弁当。本当にいつ寝てるのか不思議に思ってしまうくらいにお弁当の中身は凝っていて、これを毎日自分と天莉ちゃんの分だけ作っているだけでも凄いと思う。
「あーもう……変に考え事するから目が冴えちゃった。」
どうにも眠気がやってこない。私は一度ベッドから起き上がると部屋を出て階段を降りリビングに向かった。台所にある冷蔵庫の中から水のペットボトルを取り出して、ライトブラウンを基調としたソファーに腰かける。>>23
「それにしても、随分と月が綺麗だよねえ……。こんなに綺麗だったの、いつぐらいだったっけ?」
ふと外を見る。優しい月明かりが窓からリビングに差し込み、綺麗な半月が空に浮かんでいた。なぜだかは分からないけど、その半月から目が離せないでいた。
「えーーーーーー?」
ドクン、と心臓が跳ねる。ドクン、ドクン、と心臓が何か良くないことが起ころうとしていることを伝えてくる。
「なに、これ……?なん、なの……?」
強く意識を持つことが出来ない。頭の中をかき混ぜられているように錯覚する。
「あ…っく……。」
苦しくて、苦しくて。辛くて、痛くてたまらないはずなのに、どうして。
「どう、してーーーーーー」
どうして懐かしいなんて感じているんだろう?
やがて。私の意識は途絶えた。深い深い水の底に沈んでいくような感覚の中で私は知らない声を聞いた。>>24
「uuUUUUU……。」
其処は何も無い空間。ただ、ただ、何も無い闇が支配する暗黒の世界。もし何か名前を付けるなら『虚空』という名前が相応しい。何人も此処に立ち入ることは出来ず、また何人も此処から立ち去ることは叶わず。
だが確かに。
白き龍は其処にいた。
その純白の体躯はこの『虚空』に不釣り合いなほどに美しく、そしてそれ以上に異質だった。
「漸く……か……。」
白き龍が呟く。その声には厳か、誰もがその声を聞けば畏怖するほどに恐怖を感じ。けれど、どこか懐かしさを覚える透明で美しい声だった。
「待ち侘びた……。この時を1000年も待っていたぞ……。」
『虚空』に3つの光が射し込む。1つはか弱くも不思議と見てしまう幻想さが。1つは余りにも眩しく『虚空』には溶けることはなく。1つは誰もが求める星の輝きを秘めていた。
「さあ、約定を果たして貰うぞ九重始終よ。」
「貴様が既に死していようと構いはせぬ。貴様の血を引く者どもに貴様が負わせた咎を償わせるのみ。」
「だが。些か時が長過ぎたな。我が再び現に姿を堕とすには幾許かの時が要る。」
「其れまでは浅はかな夢に浸っているがいい。」
「当代が誰であれ、我を縛ることなぞ出来ぬ。我を縛れるのはあの始終(おとこ)のみ。」
「偽りの島で偽りの杯に縋る者などに我は倒せぬのだからな。」
「くく……くくく………。」マスターシーンは以上です。次からは大会1日目になります。
伏神投稿
2日目です>>27
早朝
怒涛の出来事を捌ききったリドリーとエル・シッド。彼らは今凹んでいた。エル・シッドに至っては涙の跡さえある。昨夜の戦闘を思い出して落ち込んでいたのだろうか?
「やっぱ、神ってク.ソだわ」
「一応は虚言宗教(インチキク.ズ)だからな……………だが、あの結末はなあ……………」
いや、二人して台湾産ホラーゲームをプレイし、エンディングのエグさとエモさに精神をやられていただけであった。幸せな家族が宗教によって崩壊する……………ほぼ誰に責任があった訳ではないのに破滅していく。そこに神も仏も存在せず、最後にただただ鋼鉄製ハンマー(現実)で頭を殴られる(突きつけられる)そのストーリーに絶句していた>>28
「台湾って凄いね……………」「こればかりは同意するぜ……………」
彼らは台湾という国に敬意を表する。そしてリドリーの頭にふと昨日の出来事が蘇った
父親への明らかな拒絶。知らなかったとは言え不快な思いをさせた事を改めて反省する
ならばやる事は一つだ。リドリーは手を右ポケットにやる
「スマホ取り出してどうしたク.ソマスター?」「いや、レアちゃん達に謝罪と昨日あった事と思ってね!」
そう言いながら軽やかにタッチパネルを動かすリドリー。指揮者(コンダクター)として美音(クラシック)を奏でるが如く!そして文面を完成させたリドリーは左ポケットにある連絡先のメモを掴み……………石像になった(フリーズした)
「?どうしたク.ソマスター。たかだか電子寒中見舞い(メール)送るのにどれだけ時間かけてるんだよ?」「……………電話番号しか書いてない(メールアドレス書いてない」
メモにはそう!市街地番号しか書いていなかったのだ!メールアドレスなどどこにもなく、折角書いた文面は無意味(塵)となった!
では電話をすればいいのだろうか?
だがリドリーはそこでこれは運命だと感じ取る。即ち直接会って話しをするべきだ!そういう運命である事を!
リドリーはタウンページで調べる。車で十数分の距離。これならいける
リドリーは訪問する為の準備のため繁華街へとその歩みを始めたので会った>>29
終わりです
レアちゃん宅訪問フラグです伏神の二日目投下します
>>31
暗殺者による裂傷で気を失った亥狛が再び目を覚ましたのは午前九時、時間にして凡そ十数時間。
その間記憶が断絶していたことになる。
泥のような微睡みから目覚めて真っ先に目に入ったのは、木製の椅子に座って本を読み耽るシスカの姿だった。
「やあ、ようやっと起きたかい」
「────」
いやに寝心地の悪いベッドから上半身を起こすと、どうやら自分が寝ていたのは寝具ではなくテーブルで、即席に作り上げられた医療寝台であることが判る。
「あれ、シスカさん?ココは…俺は、なんで……」
身体を動かそうとすると、背部に鋭い痛みが走る。
亥狛の苦悶の表情を他所に、シスカは至極冷静な態度で「起きなくて良いよ」と静止を促した。
「君はね、聖杯戦争開始早々に殺されかけたのさ。
自分の足で土地勘を得ようとしたばっかりに暗殺者の英霊の餌食になった。ランサーが付いていたから死は免れたものの、下手すればあの場で脱落もあり得た訳だ」
彼女の声は不出来な息子を諌めるような、どこか怒りと呆れをないまぜにした気色を孕んでいた。
読書を中断して、身体を亥狛の方に向けて
「身体で理解できたろう、コレが聖杯戦争だよ。
君が如何に頑丈で生物学的に異質だとしてもそんな差は英霊の前には紙同然、行動一つ一つが死に直結しかねないと漸く実感できた筈だ……勿論頭では理解してただろうけど。
無意識にどっか舐めてる所あったもん、キミ」>>32
そんな筈はない。
そうすぐさま否定しようとしたが、喉につっかえて言語化してくれない。
思い当たる節があるからこそ、否定が出来ない。
「もし仮に土地勘を得たかったなら、ランサーに見廻りをさせて自分は籠城する方が余程良かった。
なのにそうはせず自分の足で歩き回った。
……その土地に根差す人物であるならいざ知らず、地理に疎い者が選ぶべきでない悪手と言っても過言ではない」
つまるところ、とシスカは言葉を続けて、
「君は人狼である事に胡座をかいて、より良い選択肢を考える手間を惜しんだのさ」
「……うるさい」
腹立たしい程に耳が痛い。
そう思うという事はつまり、図星であるという事だ。
勿論全くの脊髄反射で行動したわけではない。聖杯戦争に勝利するためには環境の把握が必要であると考えた上での行動だった。
然し、彼の思考はそこで停滞していた。
見て回るのは良いが、肝心の手段を熟考しなかったのだ。自身の行動が周囲にどう影響を及ぼし、相手がそれを見てどう動くか、という二手先の思考が欠如していた。
認めたくない、だが認めざるを得ない。>>33
女魔術師の諫言が耳朶を刺す。
「まあ何にせよ生きてたんだ、コレは馬鹿高い授業料だと思うこった。
それに君は傷の治りが異様に早い、普通の人間ならとっくにドクターストップだが君なら今夜にでも動き回る事は出来るだろう。
精々今回の失敗を糧に次に活かすと良い」
そういうとシスカは読書を再開した。分厚い装丁本は日本語とも英語とも異なる言語のタイトルが刻まれていて、それが何の本なのか亥狛には知る由もなかった。
窓ガラスから差し込む光が柔らかい。
ここにきて漸く亥狛は自分が今拠点の一つである空き家に居ることを把握した。
ぐるりと周囲を見回して、居るべきである存在が居ない事に気づく。
「そういえばランサーは」
「ランサーは外で厳戒態勢さ。マスターである君が開始早々に負傷したんだ、昨晩から彼女も内心相当気が張ってたんじゃないかな?」
ずきり、と良心が痛んだ。
自分の浅慮な行動が彼女の心労に繋がったのだと思うと申し訳なさが込み上げてくるようで。
自分の身体の方に目をやると、刺し傷を押さえ込むように医療措置がなされていた。
血が滲んだ包帯は丁寧に幾重にも巻かれており、施した人物の几帳面さが伺える。
「それは、なんというか。悪い事をしたな……アサシンから逃げるだけじゃなく、こんな手当までして貰って…」ランサーには後で直接謝りに行こう、そう思う亥狛の頭に女魔術師の声が割り込んでくる。
「ああ、その手当はランサーがやったんじゃないぞ」
事もなさげにそう発言し、「あと私でもないからな」とすぐに付け加えた。
「君が此処に運び込まれて来た時には既に処置はされてたよ。私も最初彼女がやったものだと思ったけど『処置はして頂きました』とか言ってたから多分彼女ではない別の誰かだろうね」
「…………?」
ランサーでもなく、シスカでもない。
だとしたら一体誰が?
そんな疑問が頭を覆い被さるように広がっていく。
知己の者など殆どいない彼を救う人物などそれこそランサーか目の前の女魔術師しかいない筈、だが彼女らでないとするならば他に候補など思い当たらない。
「誰にやって貰ったかは後でランサーに聞くといい、そこまでは私の与り知るところじゃない。
……ついでに元気な顔を見せてやりなよ、きっと彼女も安心する」>>35
そういうと、シスカはベッドの方へとつかつかと歩み寄り。
兎に角今は養生しなと言わんばかりに亥狛の身体に布団をかけた。
如何に硬く寝心地の悪いベッドであろうと、睡魔は睡眠の最高のスパイスである。
昨夜の襲撃により血を流しすぎた亥狛は言いようのない眠気に襲われていた。
考えなきゃいけない事は多々あり、考えても仕方のない事だって山積みの現状。
しかし今は回復を最優先すべきだ。
正真正銘の前途多難、恐らく今後も彼の受難は続く事となろう。
これから先どうなってしまうのか、そんな言いようのない不安は深い眠りの中で解け溶けていくように霧散した。以上です。
九終投稿します
>>38
朝六時、早朝と言ってもいい時間に喫茶店でため息をつく男とそれに構わずモーニングセットのサンドイッチを頬張る男がいた。ユージーンと人間に変装したバーサーカーである。
ユージーン「はぁ……」
バーサーカー「なーに悩んでんだよ、あぐっ…ん、美味ぇなこれ」
いくつかの種類があるサンドイッチだが特に卵サンドを気に入ったようで追加の注文までしていた。
ユージーン「食うか聞くかどっちかにしろよ。ったく」
まあ友人と駄弁る感覚で何かを食いながら話すのもいいか、とユージーンもまた自分の分のトーストに手を伸ばす。バターが塗られただけのシンプルなものだがそれ故に素材の味が際立つ。
バーサーカー「で?いつ頃出発するんだ?ユージーン」
そう、ユージーンがさっきから頭を悩ませているのはそのことだ。
ユージーン「何時に行くか聞くの忘れた……」
再び沈むユージーンに笑いを堪えきれなくなったバーサーカーは大きく笑いながら届いた追加のサンドイッチを手に取った。>>39
話は昨晩に遡る。
ユージーン「よし、するぞ。電話」
少し緊張しているのか話し方が倒置法になってしまっているユージーン。無理もない。何を隠そうこの男、今までの人生で一度も誰かに電話をかけたことが無いのである。
そもそも電話が苦手な上に初めての自分からの発信。緊張しない筈がなく、実は電話するという宣言もこれで五度目だ。繰り返すつどに五度。
バーサーカー「なあ、そんなことせずに直接乗り込んだ方が早くないか?」
何度も決意と踏み止まるを繰り返すユージーンにいい加減辟易したバーサーカーは面倒だと言うがユージーンはそれを許さない。
ユージーン「馬っ鹿お前そんなことしてみろ、確実に敵だと思われて同盟はおじゃんだ」
ユージーンは是が非でもこの同盟を締結したい。それは単純に自分の目的を達成する確率を上げたいというのもあるが単純に蒼木ルイという人物に興味があるからでもある。
画面越しの映像で見た蒼木ルイ。読心の魔眼は映像でも当時考えていた事は分かる。故にユージーンは彼女が心の奥底に抱える欲求を知った。
近い者では高校の時のクラスの委員長、遠い者では時計塔のロードの娘までとその欲求を持つ者は多い。
そういうしがらみに関係なくギブアンドテイクの関係を望むユージーンだからこそ、“蒼木ルイ”という人物を見ることが出来る。
ユージーン「すぅ…はぁ…やるぞ!」
6度目にしてやっと電話をかけたユージーン。慣れない操作からか間違ってテレビ電話にしてしまっていたのに気付くのはもう少し後となる。>>40
おわりです。
まず、すいません。何時に行くかのアポの為に過去電話を入れるはずだったのにその過去電話で何時かを聞き忘れたとしました。回想シーンが終わったらルイちゃん側の朝のシーンからユージーンに電話をかけていただきたく存じます。
そして次の橘さんのパートでどれだけ進めるかによっては例の口説き文句(なお交流E)をお伝えします。特異点投稿します
今回は全編台詞です
………………あまり説明になってないかもしれませんがどうぞ>>42
いつだったかは儂は憶えてない。ただ召喚されたのはそこそこ前だと感覚的に思う
そう、場所は確かパリ。その中の伏魔殿(ベルサイユ宮殿)に儂が召喚されたって話し。目覚めると百鬼夜行(うぞうむぞう)のサーヴァントが一斉に儂を囲っている訳よ?正直怒り(イライラ)が治らんかったわ。有象無象(どいつもこいつも)干しすぎた柿と同じ甘腐臭(オンナにおねつ)が漂ってて鼻が曲がりそうだったわい。
そしてその元締め(においのもと)が醜女……………マリーアントワネットって呼ばれてた女王(ガキ大将)よ。見るに耐えない腐臭(色気)が漂う醜女(巨乳)。まさしく霊基を歪められて英霊の尊厳を穢す妖怪の所業よ
……………腰布(スカート)に数字が書いてあった気がするのも気のせいじゃあないかもしれんな。ともあれ醜女は儂に色気(イライラの元)垂れ流しながら言ってくんのよ?私の仲間(オモチャ)にならないかとね。そんとき儂は思わず近くの無象(セイバー)座に送って剣持って突撃してやったさ。あんまりにも酷い(キレた)んでね。だがな、その時不思議な事が起きたんじゃ。醜女がその場で足を出してな?そのまま儂に突き出してきたんじゃ。儂はその動きを捉えきれずにそのまま転んだ。……………正の所驚愕(目が飛び出た)!だってよ?武の心得も知らぬ女(ガキ)だぜ?そんな醜女に儂は惑わされた……………途轍もなく歓喜(たのしー!)気分になったわ。だから儂はあの醜女をこの手で斬りたいんだ!儂にもまだまだ伸び代があると教えてくれたからな!まあそんなこんなで有象無象(カ.スども)を振り切って外に出たらびーびーとかいう一般革命兵に誘われてな?儂的にもこれ幸いと革命軍に入ったってわけよ>>43
状況?革命軍(ウチ)の圧倒的不利だな。四面楚歌が可愛く見えるほどのレベルでな。そもそも革命軍(ウチ)に魔力を常時補給できるものがなくてな。宝具撃ったらそのまま消えるとかも多発したんだな。しかし王国軍(ガキども)は
聖杯(金の器)のせいでその縛り無いし、どんなに倒しても日毎に何十人も追加される。長い目で見ても儂らの敗北はほぼ決定的だな。勝ち目がないわけじゃない。リオンという都市にはなにやら強力な奴が封印されているとの噂も聞く。なんとかして開放できればいいのだがぴっかりさん(ルイ)がその土地を護っているせいで全く侵入できないのだよ
……………童、尊人、格上物、あんたらには儂は感謝しかない。あんたらはこの状況をうまく打開出来る可能性が高いからな。このまま王国軍が勝つとこの地は王の生贄となり、時代に綻びが出る。そうなると儂も修行ができないからな。改めて手を貸してくれ!>>44
終わりです>>40の続き、九終を投下します。
1日目、夜。
本命の拠点であるホテルへ向かう途中、わたくしは与えられたミッションを反芻する。
1、アーチャー陣営と敵対せよ
2、バーサーカー陣営と同盟を結べ
3、九重海音の妹を殺.害せよ(手段は問わない)
……これら3つのミッションからまず分かることは、運営側は相当に黒いという事。特に3つ目。
誰かの死が予め組み込まれている催しなど、決して碌なものではありません。このミッション1つだけで、この聖杯大会がおかしいという事は読み取れる。
(荒っぽい催しであるのは承知の上でしたけれど、これではまるで現代に蘇った剣闘ではありませんの)
更に、事前に観ていたインタビュー映像で、九重海音という方がアーチャーを召喚していた事が判明している。つまり、わたくしは九重海音さんの妹を殺.害することで、一気に2つのミッションを達成できる可能性がある。
大会前にアーチャーが召喚されていたと言う特別処置も鑑みて、九重さんは余程のキーパーソンであるらしい。
『何を企んでらっしゃるのかしらね、この大会を企画した方々は』
霊体化しているセイバーへ、念話で尋ねてみる。>>46
『分かりません。しかし、聖杯大会の大元である聖杯戦争は、より魔術的な儀式であったとされています。推測ですが、今回の大会も儀式の側面が強いものかと考えられます』
『だとすれば気になるのは、"何のためにそんな儀式を行うのか"、ですわね。けれど、これ以上は予想に予想を重ねるだけ。この話は、ここまでにしましょう』
話を終えた途端、支給された携帯端末が震えだした。連絡して来たのはーーー
(ユージーン・バックヤード?テレビ通話で、何のご用かしら?)
インタビューにてバーサーカーを召喚すると宣言した青年の名。
警戒しつつ、応答のボタンを押す。
ーーー画面には、何も映らなかった。
否。正確には、人の肌と髪の様なものが、レンズを塞いでいるらしかった。
「ん、繋がったのか、コレ。あー、こちらユージーン・バックヤード。あんたは蒼木ルイで間違いないか?」
「え、ええ。間違いありませんわ」
予想外の出来事に戸惑うも、どうにか取り繕う。しかし頭の中では、思考がハイスピードで進んでいた。
(これはどういう意図なの……!ただの操作ミス?いいえ、この方は読心の魔眼を持っているらしいですし、心に精通した者としての高度な戦略かも知れませんわね。わたくしの動揺を誘うつもりの手だとすれば大した物ですわ。けれど本当にテレビ通話だと気付いていない様な口ぶりでもありましたし、言った方がいいのかしらーーー)
「ちょっと話があって連絡させてもらった。聞いてもらってもいいか?」
ーーー決めましたわ。
「ええ、貴方のお話、とても興味がありますわ。けれどその前に、お顔を見せてくださいませんこと?テレビ通話でお互いの顔が見えないと言うのも、寂しいものですから」
〜〜>>48
いえ、次はユージーン視点で少し書かせてください。そこで例の台詞を言ってまたパスを回します。
しかしそこまで深読みしても実際はただの操作ミスだゾ。>>47の続きを投下します。
ユージーン「えっ?」
間が抜けた声を上げるユージーン。その隣ではバーサーカーが必死に笑いを堪えている。すぐに携帯を離して画面を見ると確かにそこには困惑した表情の蒼木ルイが映っていた。
ユージーン「本当にテレビ電話だ…。あー、その、ミスった。電話をかけるのなんて初めてで…」
当然相手はそう思ってはいない。何かしらの心理戦だと誤解されている。確かにこうしてテレビ電話であれば直接会うのと変わらないように魔眼が使えるのだが故意ではない。まずはそれを解かなければ、と言葉を選ぶ。
ルイ「初めて?貴方は今まで電話を使ったことが無いとでも言いますの?」
事実ではあるが確かに現代においてそれは少数派であろう。故にさらに疑惑を深めてしまう。
ユージーン「違っその…ああ、もう!」
大きく深呼吸し数秒かけて言いたい事をまとめる。
ユージーン「今まで電話を使ったことがない訳では無いけど自分から誰かにかけたことはなくてそれでも俺はあんたに話したい事があって慣れない操作で電話したら間違ってテレビ電話になってしまった。すまん、わざとじゃないんだ。信じてくれ」>>50
一通り言った後目を閉じ頭を下げる。
ルイ「分かりました。そこまで言うのなら信じましょう」
なんとか信じて貰えたようなので本題を切り出す。
ユージーン「ありがとう。それじゃあ話をしたいんだけど…まあ想像してる通り同盟の相談なんだ」
それについては相手も予想はついていたようで続きを促される。ただ同盟を結ぼうと言うのではなくどういった条件かという事が大事なのだ。
ユージーン「まず俺達と同盟を結んで欲しい。条件はインタビューの時に言ったように優勝したら聖杯はそちら、賞金はこっちに渡すというものだ」
もちろんユージーンが掲げる条件はそれだけではない。一呼吸置いてそれを告げる。それはユージーンが本心から望むことでもある。
ユージーン「あと、この同盟において蒼木ルイとユージーン・バックヤードは対等だ。どっちが上だとか立場がどうとかは関係ない。方針はお互い相談して決めるし隠し事は一切しない。どうだろう?」>>51
はい、ここまでです。
速攻魔法発動!『対等宣言』!!立場も何も関係無くフェアな立場であるという宣言。どうでしょうか?交渉の条件として悪くは無いと思います。>>51の続きです。
画面向越しの提案に、少し考え込む。
立場も隠し事も無しという同盟の提案だけれど、正直に言えば困ってしまう。交渉に於いて全ての手札を晒すなど、大抵の場合悪手にしかならないから。その条件を出された時点で本来なら決裂とするところだ。
ーーーが、しかし。"対等"という響きは、悪くありません。
その言葉に、わたくしは弱い。加えて、彼が慣れない端末操作に取り乱しながらも、懸命に意思を伝えようとした姿勢に、少し、心が動いた。
ただ、言うは易し、行うは難し。口だけの対等は何度も聞いてきた。更に彼は心を読む力を持っているのだ。わたくしの内心を読み取り、上辺の言葉で都合よく動かそうとしているかもしれない。
ーーーだから、こうしましょう。
「先に言っておきましょう。わたくしは貴方を警戒しています。貴方はその目でわたくしの事を知れるけれど、わたくしは貴方を知りませんもの」
内心を伝える事で、隠し事をしないと謳う相手に応える。一拍の間を置いて言葉を続けた。
「けれど、同盟は結びたいと考えていますの。その為には、まず貴方の事を知らないといけません。差し当たって明日のランチをご一緒にどうかしら?返答はその時に」
もともと、ミッションを達成する為にも彼と同盟を結ぶつもりはあったのだ。わたくしに必要なのは聖杯を使ったビジネスのチャンスであり、賞金の優先度は低い。対して彼は賞金が必要だと言うから、利害は一致している。後は、彼が信頼できるかの問題だけ。
ユージーンから了承をもらい、明日の13時、○○ホテル近くの喫茶店で落ち合うことになった。>>53を修正したver投稿します。
画面向越しの提案に、少し考え込む。
立場も隠し事も無しという同盟の提案だけれど、正直に言えば困ってしまう。交渉に於いて全ての手札を晒すなど、大抵の場合悪手にしかならないから。その条件を出された時点で本来なら決裂とするところだ。
ーーーが、しかし。"対等"という響きは、悪くありません。
その言葉に、わたくしは弱い。加えて、彼が慣れない端末操作に取り乱しながらも、懸命に意思を伝えようとした姿勢に、少し、心が動いた。
ただ、言うは易し、行うは難し。口だけの対等は何度も聞いてきた。更に彼は心を読む力を持っているのだ。わたくしの内心を読み取り、上辺の言葉で都合よく動かそうとしているかもしれない。
ーーーだから、こうしましょう。
「先に言っておきましょう。わたくしは貴方を警戒しています。貴方はその目でわたくしの事を知れるけれど、わたくしは貴方を知りませんもの」
内心を伝える事で、隠し事をしないと謳う相手に応える。一拍の間を置いて言葉を続けた。
「けれど、同盟は結びたいと考えていますの。その為には、まず貴方の事を知らないといけません。差し当たって明日のランチをご一緒にどうかしら?返答はその時に」
もともと、ミッションを達成する為にも彼と同盟を結ぶつもりはあったのだ。わたくしに必要なのは聖杯を使ったビジネスのチャンスであり、賞金の優先度は低い。対して彼は賞金が必要だと言うから、利害は一致している。後は、彼が信頼できるかの問題だけ。
ユージーンから了承をもらい、通話を終えた。
2日目 朝
ユージーンへと電話を掛ける。
「ごきげんよう、ムッシュ・ユージーン?待ち合わせの場所と時間を決めていませんでしたわね」
こう切り出し、13時にユージーン紹介の喫茶店で食事の約束をした。暫く振りに
【連絡】
リレー企画参加者様へ。企画の円滑な進行の為、1週間以上レスができない状況になる場合は、GMにその旨を報告してくださるようお願いします。その際は、どういう方針・方向で動きたいかを合わせてお伝えください。参加者間での話し合いを行い、どのような描写にするかを議論します。
1ヶ月以上応答がない場合は、応答があるまで他参加者で進行させていただきますことをご了承ください。
・統合スレにて開催中の企画
1.九終聖杯大会
2.トーナメント大会
3.伏神聖杯戦争
4.第1回聖杯大会(スノーフィールド)
5.1.特異点 悪徳歪曲狂国ベルツ・ル・パラディス
・開催予定
1.インフレ聖杯大会(メンバー調整)
2.第◾️回聖杯大会(メンバー調整)
中華スキーさん、お忙しいかと思いますが、九終聖杯大会の進行がありました。つきましては召喚シーンの投稿をお願いできればと思います。また、お伝えしたいこともありますので、予選へレスをお願いします。達は何かしたいことはあるか?」
「特にすることはないけど。まずは工房作りから始めた方が良いんじゃないの?」
キャスターのスキル、陣地作成によりこの部屋を工房として作った方が良いのではないかという質問は尤もなことだ。
「ふーむ……いや、流石に工房を作るには狭すぎる。出来れば場所を移動するなりなんなりしたいところではあるな」
「あ、やっぱり?うーん、後はもう探すしかないけど。ま、そこはいいわ。次の戦略を考えましょう」
そもそも陣営作成を行ったところで彼の作成する工房はあまり防衛に適さないという弱点もあるが、まああった方が良いというのは間違いではない。
「それよりもさ、先ずはここらに偵察でも放っておいた方が良いんじゃない?アーチャー、だっけ。狙撃とかされたら困るだろ?」
「……そう言えば、そうだな。竜胆の言う通り使い魔は配置した方が良いだろうが……おい初梅、何で逃げてるんだお前」
「いやっ……あの……私、強化と治癒ぐらいしか満足な魔術が使えないのよ」
しん……とした空間が広がる。片方(竜胆)は物事を理解しておらず、片方(隠神)は驚愕した顔で沈黙が続く。「っ、そんな顔で見るなぁ!まだ練習中なのよ!家の奴らからも『初梅様は強化と治癒魔術はその年では良い方なのにそれ以外が貧相ですね』って言われるのよ!使い魔さえ作れないの!悪い!?」
「は、はははっ!そうかそうか、すまんすまん。逆鱗に触れてしまったな!許せ初梅。……となると俺の宝具になるか」
八百狸───隠神刑部の生前従えていた800匹の狸を召喚する宝具。数のくせに戦闘力はなく、魔力消費は多いというどちらかと言わずとも使い勝手は良くない宝具。
「あれ魔力消費が大きいのだよなぁ…大丈夫か?あといい加減落ち着かんか」
「オーケー、落ち着いた。話を戻すわ。大丈夫、あなたの宝具を使う方向で行きましょう。魔力は問題ないわ」
「ん、使い魔とかあんま分かんないけど宝具を使う方向に固まったの?じゃあ俺からの案だけどどこに配置するか話そうよー。バラバラに分けるよりは集団行動で情報を確実に持って帰れるようにしよ?」
「配置……私は、ロビーに集中させた方が良いと思う。一般常識を持つ相手ならそこから入ると思うし」
「ならば俺はホテル外側に配置するのも案として提案しよう。俺の愛しい子供達は野外での力を発揮しやすい」
「んーと、それじゃあその二地点とこの部屋の周辺に配置しておけばいいんじゃないかな。窓ガラス突き破って入ってくる人とかいそうだし」「では始めるか」
祝詞の詠唱を数分間続け、宝具の解放を行う。
発動した瞬間に部屋中にモコモコとした茶色の毛玉が現れた後、一斉に隠神刑部の方向にを向く。その全てが彼と最期まで戦い抜いた歴戦の狸達。
「よくぞ集まった我が同胞、我が眷属、我が子供達。再び共に現世で戦えることを俺は嬉しく思う。お前らには今から指定する場の監視を行ってもらおう。では散れ」
ドアと窓を開けた途端に一斉に茶色い塊が飛び出て行く様は可愛いと思える人は思えるだろうしキモいと思える人は思える、そんな光景だった。
「……可愛いなあの光景。初梅はどう思った?」
「んー、狸汁が食べたいなーって思った。」
終わりです『見つけたか?見つけたか?』
『見つけたぞ見つけたぞ。大将が見せてくれた通りの女だ、見目麗しい空色の姫だ』
『如何するか、如何するか。私が殺されにいって力を測るか?』
『報告しよう、報告しよう。誰もあの女達に近づくな。大将に死ぬより酷い罰を科せられるぞ』
『それは嫌だな』『あれは恐ろしい』『死ぬ時の方が楽だった』
『大将大将。女を見つけたぞ。とっても綺麗な空色の姫と武士のように芯のある女だ』
「様子は?」
『特に警戒していたような様子も無い。そのままホテルに向かって歩き続けているぞ』
「御苦労、ではお前らは引き続き警戒を続けろ、間違っても接触はしようと思うな」
はぁ、と溜息をつき目を伏せる。すう──と目を開いたときの隠神の顔は今迄の好青年の顔とは打って変わった冷徹な顔。
「マスター、どうする?奇襲を行うか?」
「いや、やめておきましょう。彼女は今大会でもかなりの強豪よ。どうせ通じないのだから真正面から相手の技を測るとしましょう。撤退の用意もしておいて」
「了解した。……おい竜胆、一体何を考えている?」
「ん、どうやったら効率の良い撤退を出来るかここの地形を元に考えてた。伏兵の可能性も考えて行動しなくちゃだから」
他の二人と比べて俺は頭ぐらいしか使えるとこないからねーなんて呟きながらも纏める。「応、自分なりの力を尽くすのは良いことだ。……では、行くか」
「あ、待って待って!どうせ戦闘するなら姿はバレちゃうけど戦闘開始するまでは幻術で姿を隠しとかないか?」
「む……わかった」
エントランスを蒼木ルイが過ぎ、エレベーターの前に立った時───
「はぁい、蒼木ルイさんとそのサーヴァント。自己紹介は必要かしら?」
隣の非常階段からとん、と竜胆と初梅が現れた。「痛い!ふらふらする!しんどい!」
拠点に変えるなり倒れるように眠った後目を覚ましてもいまだ転がりながら悶えている己が主を冷ややかに見つめるアヴェンジャーの姿がそこにはあった。撤退するサーヴァント主従に追いついたのちに魔術師に対して治療を行ったのであるが
「他人の治療をするために自分の手の甲を敵の槍で突くなぞするからだ。」
「仕方ないでしょ!あの状態で武器なんて出せないし治療のためには血が必要だったんだから!」
反論をするがその声にはいつもほどの元気はなかった。
まず応急処置だけをさせろと敵のサーヴァントに迫った時の魔術師然とした落ち着いた時の話し方からはかけ離れたものだ。この魔術師の娘はどうやら他人の前だと素を隠す傾向があるようだとここ数日の会話で把握をしたがまさかこのような色々とダメな魔術師であると他の陣営も想像してはいないだろうとアヴェンジャーはあきれつつも感じていた。こいつはこの世界に向いていないと数日で断言ができると言い切れてしまうほどに本来の彼女はひどいのである。とはいえあの時の自身のマスターは魔術師としては及第点の働きはしていたということもまた事実であると感じてもいた。>>61
「しかしお前の他者への手当ての手際は随分とよかったのは少し意外であったな。」
「大したことじゃないでしょ?まず血が足りないから私の血が拒絶されないか最低限の適応分析と輸血と傷口の治療をしただけ。あとは包帯を巻くとか魔術が関係なくてもできる人は多いわ。」
「いいや、お前の魔術の腕からすると破格だろうよ。何らかの魔力媒介をもって魔術を補強していたのなら別だがそれもなく傷をふさいでいたからな。」
「それは私の魔術刻印の力によるものね。私の家系の魔術は強化方面でそれも自身以外のものに魔力を通すものだったらしいわ。だから他者への強化や治療には多少の無理がきくということでしょうね。」
他の生命体に魔力を通すことは非常に難易度の高いことで知られている。特に他者を強化するということは一流の魔術師でも難しいといわれていることである。
「ほう、お前にも強みはあったということだな。その治療の腕はそれなりに重宝するだろうな。」
「ほめてるのかけなしてるのか分からないわね…。」
「ほめている。素直に受け取れ。」
(まあ、相手がただの人間ではないということもあり治療がより進んだということもあろうがな)「ん?今何か言った?」
「いいや空耳だろう。だが治療が得意ならばなぜその手の甲の傷は完治させない?」
「言ったでしょう?私は他人に魔力を通すことは無理ができるけど自分の強化は並みなのよ、そりゃあ完治できないことはないけど魔力が無駄だし応急処置程度で止めてるのよ。自然治癒にあとは任せるわ。」
「難儀なやつだなお前も。」
「あきれ顔で言わないでよ。あ、まためまいが…貧血だわ…きゅう…」
再びベットに倒れる。
「寝るのは構わんが今日はどう動く予定だ?」
「…とりあえず貧血がマシになったら家に戻って確認するわ。襲撃とか昨日の時計塔の人から連絡があるかもしれないから。そのあとはしばらく情報収集にしましょう。昨日あったサーヴァントたちの情報もまとめておきたいから。…ゴメンまたしばらく寝るわ。」
そう言って瞳を閉じる玲亜。その姿を見つつ再びため息をついたアヴェンジャーは霊体化をして姿を消した。>>60
突然の登場に内心驚くも、そんな素振りは見せない。余裕ある態度を心がけ、彼女達へ対応する。
「Non、必要ありませんわ。貴女が水籠初梅さん。そしてそちらの方は、氷瀬竜胆さん、でしたわね。お会いできて光栄ですわ」
「あら、ご丁寧にどうも。けれど、そんなに悠長でいいのかしら。この状況で、何の用件か分からないなんて事はないでしょう?」
『どうやら、やる気のようですね。どうしますか、マスター』
身構えていたセイバーが念話で話しかけてくる。
『話し合いをする気は無いようですし、ここは戦いましょう。それに、貴女の力も見ておきたかった所ですもの、ちょうどいいですわ』
「ええ、勿論分かっていましてよ。けれど、ここは人が多過ぎますわ。場所を変えましょう。あなた方も、無用な被害者を出すのは本意では無いとお見受けしますけれど?」
もしホテルでの戦闘を厭わないなら、先程奇襲を掛ければ良い。そうしないのならこれくらいの要求は頷く、そう判断しての提案だった。さて、返答はーーー
〜〜
以上です。『なぁオイ、マスターァ?お前色々とやり過ぎたんじゃねぇの?』
散弾を撃った直後、バーサーカーから念話が届いた。
『いやぁ、バーサーカーには負けるよ。で、何があったの?コッチはコッチで忙しいんだけど』
『ああ?決まってんだろ。ランサーの侍ヤローに襲われたんだよ。で、多分残り全部のサーヴァントからも攻撃されてる。こういうの私怨サッカーって言うんだっけかぁ?』
『四面楚歌でしょ。『そうそれ』まぁ、頑張ってね?正直あんまり援護できそうにないんだよねぇ……。あー、姿消すとかメンドッ!』
(つーか燃えてる。光学情報がどう、とか言ってたし、こちらの感覚を弄るような幻術mと言うよりは蜃気楼とかリアルタイムVR技術として考えればいいのかな?うーわウザそー)
ちょっとした衝撃。どうやら右手になんか当たったようだ。まぁガンドか何かだろう。あるいは光の玉でも撃ち出したのかな?ニュートリノ?みたいな感じで。
(よーし、コレで大まかだけどルーカス君のいる方角は判明。具体的な距離、方角は不明で自前のサーモグラフィーは使用できない、っと。じゃあコッチ)
ワルサーWA2000に装填されていたガンドの魔弾を上空に向けて発射。もちろん地球には重力があるので、すぐに戻ってくる。そしてルーカス君のいる辺りに着弾。そして弾かれようがヒットしてようが(拳銃弾とは威力段違いだし、なんらかのダメージは通してるだろう、多分)音は出るのでより詳細な位置が分かる。なるほどソッチね。はい、続けて散弾を残弾全て発砲。で、リロード。
ヨシッ!今度はしっかり命中したみたいだ。うん、それじゃあ質よりも数量で攻める方が有効っぽいね〜。……ところでルーカス君は散弾にどう対処するのかなー?当たった散弾、しっかり処理しないとスッゴク面倒な事になるからねぇ。ま、治療、しなくは無いけど。
そして炎も消えかけてるので拳銃構えて前進前進、っと。さぁてドンドン行こうか……行けるかは微妙かもしれないけどね!>>65
わたくし達と付かず離れずを保ちながら移動する、少年と少女。歳は2人ともわたくしと同じくらい。サーヴァントらしき姿が見えないけれど、霊体化しているのでしょうか?
クロワは今偵察に飛ばしている。いざという時の伏兵として、呼び戻せるようにしておきましょう。
観察と思索をしながら歩を進め、人気のない、開けた場所へと到着する。
「さて、この辺りで良いのではなくて?」
「そうね、始めましょう」
瞬間、水籠初梅の傍に1人の男性が出現し、マスター達の前へと進み出た。格好は大正浪漫という言葉が似合いそうな、和洋折衷。武器らしき物が見えないのが気にかかる。
「セイバー、勝ちなさい」
「仰せのままに、マスター」
セイバーがわたくしの前に立ち、サーヴァント二騎が向かい合う。
セイバーが腰の鞘から剣を抜き、そのまま構える。たったそれだけの動作だけれど、見惚れそうな程に美しかった。
「セイバー、参ります」
刹那、神速の踏み込みと抉りこむような突きが放たれたーーー
〜〜
以上です。お待たせしてすみません蒼木ルイが口にした『セイバー』───最優のサーヴァントから放たれた突きは一直線に隠神刑部の胸に向かって突き進む。
あと3m、2m、1m、50cm───を通過する前に刀に防がれる。先程までは持っていなかった筈なのに。
「うわ危なかっしい。こんな序盤で死なないでよ。」
「承知承知。ではやろうかセイバー」
また何処からか取り出した拳銃を構え、二回引き金を引くも相手もサーヴァント、二発程度の銃弾ならば容易く躱されてしまう。
剣と弾の軌跡が飛び交う。一撃一撃が速いセイバーの剣筋を筋力と強化した身体能力で弾き返し、銃弾で牽制する。
そのやり取りは惚れ惚れするものではあるがやはり、というべきだろうか。セイバーの方が慣れている。別段、隠神刑部も近接戦が苦手という訳ではないのだが本業ではない故に。(ならばこそ、であろうな)
木に登る、枝ごと切り落とそうとするのでくるりと飛んで突き。
簡単に避けられ、その隙を好機と見たセイバーが返しに一太刀を入れようとする瞬間、懐から葉を三枚投げ込む。距離を取るも遅い。
「天は今再び神威と鳴り(成り)、地は今再び脈動せり」
葉から放電と尖った小石がまき散る。放電を躱そうとも小石がセイバーの頰と二の腕の皮を裂く。
サーヴァントの身であるセイバーに、そんな浅すぎる傷は傷と成り得ない。マスターから供給される魔力によりすぐ様傷は癒えるが問題はそこではない。
“術が通った”のだ。セイバークラスのサーヴァントは魔術の類を減衰、あるいはカットする対魔力スキルを保持している。それでありながら彼の振るう術は傷を与えた。
「俺はお前が今の事象に対してどう感じたかは知らんが……異様である、そうは感じたろう?」
「さあ、どうでしょうか。本当に私が知り得ないとでも?」
「それならそれで構わんよ。ほら、踊れ踊れ」
炎、水、風。様々な術と共に刃と銃弾が襲う。セイバーも対処はしているがいかんせん反撃には転じれない。そのような膠着状態が続き──「ほれ、ちょっとした大技だ。対処出来るだろう?」
先程セイバーが落とした枝に付いていた葉が輝き、大きな風弾を撃ち出す。地面を抉りながら進み、それを纏い固め、岩のような表面となる。
回避行動は取らせない。セイバーの周りにも火と氷を撃つ。威力自体は低いがあの風弾を回避できなくすればいいだけなのだから問題ない。
───まあ、この程度で終わるならば最優のサーヴァントなど名乗れない。何かしら打開策はあるのだろうとは思うが。サーヴァント同士の争いは音速レベル…というのはどうやら本当らしい。凄まじく速いし鋭い。普段から鍛えているからか、辛うじて見えはする。……初梅の方を見ても俺のようには動じてないことからある程度把握はしていたのだろうか。
いや、違う。今はそんな無駄な考えを捨てて、蒼木さんに向き合う。俺には俺の出来ることを。基本は盾で自衛と、可能な状況ならばサポート。つまり戦況の把握が俺の仕事だ。
サーヴァント同士の戦況把握はあの速度では無理だと判断、人間同士に集中する。
───初梅はルイをしっかりと見据える。その年で、その立場でしっかりと戦場に立つことは人として素晴らしいことだと思う。令嬢という立場に甘んじることがないというのは今を生きる人としては良いことだと思う。
一歩、二歩、相手の方に踏み出す。さてさて、あと何歩で範囲内だろうか。そんな事を考えつつ、一工程でエーテルを飛ばす。
大した威力も込められていない一撃は、強化を込めたであろう腕の一振りで簡単に弾かれる。それもそう、だってただのお誘いだから。
ハチェットと鉄扇を携えて、手を差し出す代わりに突き付ける。
「Vous êtes charmante──」
「──Jouons ensemble(踊りましょう、お姫様)」
こんな場で言ったらナンパのようにも、煽りのようにも聞こえるなぁなんて。初梅(相方)の台詞を聴きながら溜息をついた。遅れて申し訳ありません。フランス特異点のSSを投稿します。
>>72
『冒険と冒険の合間の休息(アフターセッション)』
スカタクによって作られた怪異な乗り物が、七人の乗客を乗せてラ・シャリテを出発したのは藤丸立香と厩戸皇子がレイシフトして一日目が終わる夜間であった。
その節足動物のような八つの脚を高速に動かして疾走する巨大なアシダカグモのような乗り物を、王国軍からの襲撃を受けるリスクがあったが乗客たちは意に介していない。
攻めてくるならば迎撃するだけのことだ。
乗り物の内部では寺田の説明を立香や厩戸皇子が暫く黙って聞き、またラ・シャリテを出発前に寺田が受け取った関羽からのメモも吟味していた。
メモは革命軍に所属していたキャスターのヴォワザンが作った礼装であり、そのメモには関羽が消滅する間近までに得た情報や彼が討滅したサーヴァントの真名リスト、怪物に対しての考察等を書かれており血判も捺されていた。
ラ・シャリテを出て西へ六〇〇キロ以上の長距離を移動した。自動車と遜色のない速度で走行できる怪異があったからこそであった。
暗い空を背景に、その城砦は静かにたたずんでいた。革命軍の西部防衛線を支える基地だった。
「ずいぶん昔に捨てられた城砦のようだな」
角のすり減った城砦の縁を、厩戸皇子がかたちのよい指でなぞる。城壁は石を隙間なく積み上げたもので、かなりの厚みを有してはいるが、高さは厩戸皇子の胸元までしかない。
見立てでは魔術的な防衛機能はだいぶ劣化しているようである。恐らくは管理していた魔術師が既にいないのか術を掛け直すことがされておらず、一度起きた綻びが修正されることもなく徐々に歪みとなりそれが大きくなったのであろう。
余裕があれば、城砦のまわりを一周して様子をうかがうところだが、疲労困憊の立香やルブラン一家をこのまま外にいさせるわけにはいかない。
「たしか、この端末にはライト機能があったはず……」
立香が手首に着けた端末を操作するとライト機能が作動する。ルブランたちは驚くがすぐに安堵するように息をつく。暗闇を見通す目を持たない只人には例え珍奇な方法で放たれた光であっても闇よりもよほど安らげるのだ。
蝋燭の火よりも明るい光にルブラン一家は安心感を覚えた。>>73
「おおうい、こっちだ!」
寺田が立香たちを呼びかけて手を振るう。
この基地へ案内した寺田の先導で城壁に沿って歩いていき城砦のすぐそばにある石像のわきを通り抜けて扉をひらく。
石造りの建物に特有の、冷たく湿った空気がまとわりつく。
◇◆◇
この防衛基地の司令官を務める男はこの地を治めていた領主に仕えていた元騎士だった老いた男だった。広い肩幅と、がっしりした体格で、髪も、顎を覆う鬚も灰色で、顔に大きな傷があり潰れた右眼を隠す眼帯をしていた。名前をジョルジュ・オーリックと言った。
「久しいな」
寺田の大雑把な挨拶にもジョルジュは不快そうな様子もなく慇懃な態度で一礼する。
「お久しぶりです寺田さん。避難された一家はこちらで保護します。こちらで暫く養生してもらった後、我々の協力者である領主のもとに預けるつもりです」
ジョルジュにルブラン一家を預けた後、彼と立香たちは情報を共有し合う。関羽の消滅した件について老人は沈痛そうに聞いていた。
ジョルジュからはリヨンにいる王国軍のサーヴァントが統べることで半ば独立管区であるという話を、立香たちは訊いたことで明日からリヨンへ向かうことが決めた。
話し合いの後、空腹の立香はジョルジュの許しを得て彼は厨房を借りて食事の準備を始めた。食材があまり豊かではないこと立香の疲労もかなりのものなので簡単なものしか作れなかった。
立香たちがジョルジュに案内された応接室は、実に質素なものだった。
床には時間が経て傷んだ絨毯が敷かれており、部屋の中央には二つのソファが、小さなテーブルを挟むように置かれていた。
壁の一角には、レンガ造りの暖炉が据えつけられていた。冬ではないので、もちろん火は入っていない。>>74
立香と寺田は向かい合うようにソファに座る。立香の隣には厩戸皇子、寺田の隣はスカタクがそれぞれ腰を降ろした。ジョルジュは司令官としての仕事があり、ルブラン一家は部屋に案内された途端深い眠りについてしまったので、この四人で遅い晩食をすることとなった。
「おう、これはステーキか!」
立香が配膳した料理を見て寺田が声を上げた。彼が言う通りそれはステーキだった。
「そうです。簡単なものしか作れませんでした」
テーブルには人数分のステーキと、チーズを盛った皿、スープ、そして銀杯と葡萄酒(ヴィノー)の瓶が置かれる。立香だけは葡萄酒を少し入れて薄めた水が瓶に入っている。
ステーキは柔らかく斬りやすい、簡単な味付けではあるが肉汁が臓腑に染みいるようで立香は唸る。
「旨い……」
「は、は、は、マスターには空腹という極上の調味料がある分、殊更美味であろうな」
厩戸皇子が典雅な所作で瓶から葡萄酒を銀杯へ注いだ。
「いやいや、尊人よ。パリで食べたもんに比べられんが、野戦料理に比べたらずっとよいわ」
「ガウガウ」
肉を頬張り咀嚼する。スカタクはリスのように頬を膨らませており言語が発することができない。ただ不味いとは思っていないようだ。
「童よ、これはただ焼いただけの肉ではあるまい?」
「そうです。焼く時にビールを使うのがコツです」
そのために立香は厨房にあった麦酒(エール)を使ったのだ。
肉を適当に切り分けて立香は口に運ぶ。現代の食用に家畜化された牛と比べたら肉質はよくない。しかし、厩戸皇子が言ったように空腹な立香には格別美味しく感じる。
「……これは、この焼き方は父さんから教えてもらったんです。父さんからは色々と教えてもらいましたよ。このステーキの焼き方も、釣りや自転車のパンクの修理の仕方。女の子のナンパの仕方も教わりました」
立香は少し笑うが表情は暗い。人理改竄により消失した家族や友人たちを思うと気持ちが暗くなる。休息の時間を得られたことで、過酷な現実と自身に乗せられた重責が無形のハンマーとなって少年をしたたかに打ちつけていた。
「去年のワインの不味さを嘆くよりも、来年のために種の研究をしようではないか」>>75
厩戸皇子が白皙の額にかかる髪を煩わしげにかきあげる。
「儂よりも古い時代に生きておったはずなのに、尊人は随分とはいからな喩えをしなさる」
寺田はからからと笑う。二人とも落ち込んだマスターの気分を変えようと話を切り出した。
「まあ、些末事はお前らに任せるから、あの獣は儂が片付けてやるわ」
「女神どの、溶けたチーズはいかがかな? パンに付けると美味である」
「おお! 食べるぞ食べるぞ!」
厩戸皇子がスカタクの発言を遮る。甘ぁい! スカタクは素っ頓狂に叫んだ。本来の肉体の所有者ならば魂魄も蕩かせて魅了させるだろう美声であったのに……まったく、美声(リソース)の無駄遣いである。
「……寺田の推測が正しければ関羽雲長は王国軍に討たれたのだな。それも王国軍の双璧ともいうべきウィリアム・マーシャルかガヌロンのいずれかを葬ったと?」
「おう。パリには十数人の英霊がおったが、その中でも奴らはまさに万夫不当の大英雄。張飛は長板橋に一丈八尺の蛇矛を横たえ曹操百万の大軍をにらみ返したというが、まさにそれに劣らぬ大英雄ばかりじゃ。……しかし、関羽雲長ほどの武辺者ならば例え包囲されてようと一人も討滅せずに敗れるのはありえん」
寺田はそう言いつつフォークでチーズを突き刺し咀嚼する。
後方勤務と事務処理のエキスパートとして、王国軍の運営面を引き受けていたガヌロンが関羽によって討滅されたことは、このとき彼らは知らなかった。しかし、王国軍の文武の重鎮のいずれか、あるいはその両方が消えることはカルデアや革命軍としてはありがたいことである。
「しばしの間は王国軍の指揮系統の回復に暫し時間を要するであろうな。大規模な戦闘行動はできないだろう。滅したのがマーシャルではなくガヌロンであっても、補給や後方支援もままならぬのであれば例え戦技無双の騎士であっても戦争はできぬよ」>>76
ガヌロンが主から与えられていた任務のひとつには王国軍を、ハードウェアとソフトウェアの両面から管理運用することだった。軍は有機的に活動するために不可欠な数々の機能が、彼の手腕によって支えられていたのだ。
ガヌロンの消滅によって現在の王国軍の執政機関は、膨大な散文的な仕事が一挙に集中して、たんなる前例処理場と化していた。
「軍事だろうが政治だろうが、あの醜女には無理だろうよ。あれは愛でることと壊すことしかできまい」
「そうか。ひとつの組織の中にもうひとつの武力を持った勢力があるという奇妙な状態は、領袖の性格に起因するのかもしれんな」
それが厩戸皇子の王国軍の中にあるリヨンという奇形児への所感であった。厩戸皇子が奇妙に思えるのは当然と言えた。為政者が避けるべく心を砕くことは首都を遠く離れた地域の部隊を司令官が私物化し、軍閥化して中央政府のコントロールを受け付けなくなる、という事態の到来でありそれはいわば為政者にとっての永遠の悪夢であった。
しかしながら、現在フランスを支配する王国軍の主はその軍閥化を許している。尋常ではない統治者であるようだ。それでいて暴君や昏君とも異なる、支配者としての在り方に掴みどころがないようである。
まだ見ぬ王国軍の首魁に立香は言いようのない不気味さを覚える。
「対して、これから赴く先にいるサーヴァントは、リヨンを治めて一応は平穏を維持している。王国軍の領袖と違い統治能力(ガバナビリティ)を持っているのは間違いないな。……わざわざ独立管区を作るのだからもしかしたら、自らの支配領域を得ることで自己を強化うするスキルか宝具を有するかもしれないな」
例えば魔導の雄たるキャスターのサーヴァントは、クラス特典として『陣地作成』の能力が付与される。それによっていかなる地形条件においても最善の効果を発揮する工房を最短期間で形成できるそのスキルがある限り、こと防戦においては七クラス中最高のアドバンテージを誇る。他にもあらかじめ地脈を確保しておくことにより特定の範囲を自らの領土とすることで、領土内の戦闘において戦闘力のボーナスを獲得できる『護国の鬼将』などが支配領域によって自己を強化するすべとして考えられる。
立香はおさまりの悪い黒い髪をかきまわしている。
「リヨンを治めているサーヴァントも倒すことになるんですよね?」>>77
考え方(スタンス)が至ってシンプルな二人に較べると厩戸皇子の瞳はやや憂愁の色が濃い。
「リヨンのサーヴァントを討滅するならばリヨン市民にとっては、あきらかにマイナスだ。強力な指導者を失い、その後は統制を失った王国軍の政治的分裂、悪くすれば、いやほぼ確実に内乱がおきるだろう。そこに革命軍が介入しようとすれば混沌はさらにひどくなる。そして民衆はその犠牲になる。まったくひどい話さ」
「でも、そんな点にまで構ってはいられないでしょう? リヨンのことはリヨンの人々にまかせるしかないと思いますけど」
厩戸皇子は憮然とした。
「立香、戦っている相手国の民草などどうなってもいい、などという考えかただけはしないでくれ」
「……すみません」
「いや。あやまることはない。ただ、国家だの組織だのというサングラスをかけて事象を眺めてみると、視野が狭くなるし遠くも見えなくなる。できるだけ、敵味方にこだわらない考えかたをして欲しいのだよ、卿には」
「はい、そうしたいと思います」
立香は首をふった。彼は傷心と疲労、王国軍の残虐な所業によってささくれた心で思わずきついことを言ってしまったが、この時代に生きる人々が苦しめられるのは立香にとっても喜ばしいことではない。今回、リヨンのサーヴァントと戦い勝利したその結果がフランスの民衆に及ぼす作用を思うと、心の翼を水分が重く湿らせてしまうのだった。
◇◆◇
翌日、再びスカタクの怪異に乗り込んだ立香たちはついにリヨンへ向かう。
迎え出たのは絢爛豪華と称するに相応しい煌びやかな服装の男。大仰な衣装だがソレに着られるようなことはなく、男自身もまた美麗にして頑強な男。
対するは、耽美的な顔立ちをした儚げな、白皙の肌という半神的なまでに美しい青年。黄丹の袍と冠をまとい、白い細袴を身につけている若者。
「諸君らには招待状を送った覚えはないが、しかし歓迎しよう。ようこそ我がリヨンへ。我が真名は太陽王(ロワ・ソレイユ)ルイ=デュードネ。クラスはセイバー。この地の王にして、この舞台の主役を務める者である」
若者はふてぶてしく豪語した。
「ほう、奇遇だな。私もセイバーだ。真名を厩戸皇子。日出処の皇子である」
太陽王と日出処の皇子、陽光のごとき燦然たる英傑が対峙する。>>78
以上です。アリウムさん、次回よろしくお願いします。>>80
(逃げ道を塞がれたのならーーー)
「押し通るッ!」
力の爆発。四肢に込められた魔力が放出され、莫大なエネルギーが私の突きに加わった。
剣先が土塊に触れ、中核たる風の術諸共、土塊を破壊する。
激突したエネルギーによって、破壊の余波として出来た石や土が術者へと飛来する。
「おっと」
術者はたちまち、何重かの鉄壁を出現させ身を守った。
「ははは、勇ましいことだ」
「そちらも、中々に腕のいい術者の様ですね。キャスターとお見受けしますが?」
「さて、どうだろうなぁ?」
「……まあ、些細なことです。小手調べのつもりでしたがーーー」
一拍間を置く。笑みがこぼれているのが分かる。
「ギアを上げます」
先程より一段加速した連撃を放つ。魔力放出を利用し、速く、強く斬りかかる。対する術者は次々と道具を取り出して攻撃をいなす。表情に余裕があるものの、先程のように牽制の攻撃は放てていない、防戦だ。
「はぁっ!せいっ!たぁっ!」
気合いの声を一つあげる毎に、術者の取り出す道具が砕け散るーーー>>81
お相手からの、気取った誘い。本当はマスターと戦うつもりはなかったのだけれど、熱烈にダンスへ誘われて乗らないのも淑女らしくありません。
優雅な笑みと所作で彼女を迎え、一言。
「Oui」
直後に放ったミドルキックが、彼女の胴へ吸い込まれーーー
一瞬の違和感。そして蹴りは難なく弾かれてしまう。
(今のは……?)
訝しむが、彼女の顔からは何も読み取れない。
疑問を振り払い、まずは数手、足技で攻める。
〜〜
以上です。パキン、パキンと砕ける音が辺りに響く。
先程のような剣戟とはうって変わって、防御のために出した刀がへし折られ、またまたへし折られるという事象が起きている。
(拘束解除、第一呪詛(ファーストスペル)……ふむ、解放か。第一(ファースト)ということはまだ奥の手はあるのだろう)
そもそも突如刀が砕けるようになったのは何故なのか、先程と比べて身体能力が向上したことから自らの制限を解いたという考え方も出来るが、それだけではこのような壊れ方をするのだろうか。力により曲がってそのまま砕けるのではなく飴細工のように砕け散るとは恐ろしいことこの上ない。
「───はぁっ!」
思い切った踏み込みによる薙ぎ払いを防壁と刀で耐える。今のセイバーには簡単に壊されてしまうだろうが回避が出来るなら問題ない。
予想通り刀と防壁の砕けた衝撃で、セイバーとの距離は───
───は、やい!?
驚愕に値するレベルの加速で回り込み、脇腹と身体の数箇所に一太刀を入れられてしまう。重傷にはならないよう身体は逸らしたが、これでは影響が出てしまうだろう。
「驚いた驚いた。これは確かに厄介極まりない。賞賛しようセイバー。やはり最優の騎士を測るべきではないな」
「其れはこちらも同じこと。まさか今の一撃で深手を負わせることが出来ないとは」くつくつと笑いながら手元の拳銃を握り潰す。もう必要ないだろう。
「いやぁ、経験は積んであるからだな。良いものを見せて貰った例だ。舐めてかかるのはやめにしよう」
「そうそう、確か俺のマスターはインタビューの時にライダーだのなんだのと言っていたようだな。魔術の類を並みの魔術師以上に扱うことが出来るサーヴァントも世の中には居るとも聞く。お前がどうかは知らぬが、まあ何が言いたいかというと───
息をふっと空気に向かって振りかける。途端にセイバーの後ろから「俺」が現れ蹴りを叩き込む。
それをいなした上で蹴り飛ばす強さは素晴らしいが、その隙で充分。
神通力で刀を飛ばし、それと同時に駆けて掌底。重くは入っていないために追撃は与えず軽く後退する。
刀と葉符を浮かせ儂自身は素手。第二宝具をフルで使う手もあるがあれは詠唱が要らず、魔力次第では大規模なものも出来るがために仕留める時に使いたい。……やはり、人型紛いの動きをとるよりはこの拳と脚、そして妖術で沈めた方がよっぽど速い。
「───律儀に人の話に付き合う者は、簡単に騙されてしまうからのぅ!」胴を真っ直ぐにに狙った蹴りを扇で弾き、次々と飛ぶ蹴りに対処する。
斜め右下、防がれた反作用を生かして左上、そのまま脳天に向けて踵落とし。
その全てを打ち返し、いなし、躱しながらも距離を取る。
あの年でしっかりと確立させた戦闘スタイルなのだな、という驚愕と称賛を送りたい。
私?私は強化と治癒ぐらいしか他にできることがないからそれをやっていったら出来るようになっただけ。彼女の才覚には足下にも及ばないだろう。
……声が聞こえた。少女が見えた。
今の距離は7を越えてギリギリ7.2m。さっきまでは彼女の生き様が見えても今は見えることは出来ない、というわけか。
……一瞬見えた姿と声は、「嗚呼、令嬢の悩みらしいな」という感想を抱けるような声だったような気がするが、さて。
手に持ったライト型の魔術礼装から光の刃を出し、身につけたブーツも易々と斧と打ち合ったことから魔術礼装であると判断。
……ちょっと面倒くさい。観ようとしてもこの距離を保たれたらとてもとても面倒くさい。戦闘中でも普通に観れる故にその記憶や痛み、思考に邪魔されて今私が見る視界が見え辛くなる。
戦闘にそれは有効ではないのか、という問いには人の今の表面的で突発的なこの数秒の思考よりも過去の記憶やその時の感情を読み取ってしまうということを言っておきたい。
「人の心を読み取り救う」ことこそが水籠の目標らしいから詳しいことは大婆様に聞いてほしい。死んだけど。
竜胆の盾に頼る手もあるがあいつは「何故か」強化を扱えるだけの一般人だ。ここぞという時でないとまず死ぬ。……ま、危ない危なくないの戦況把握はアイツがやるだろ、取り敢えず突っ込め突っ込めー。
手斧を肘に向かって一閃
『綺麗なお顔とドレスを長い間完璧に着こなすなんて、流石はルイ様だわ』
鉄扇を開き刃をガード
『蒼木さん?お金持ちのお嬢様ってイメージだなぁ』
そのまま鉄扇の刃で打ち上げ───
もっと、もっと私を、『蒼木ルイ』を──
これ以上は無理。再び中距離戦に移行する。……蒼木家の令嬢という肩書きや自らの美しさ、莫大な資産という要素で見られるような自分ではなく、そんなの関係なしに自分を見て欲しい……
……しっかりと自分を見て欲しいという自己の肯定欲求は他者の理解なくして生きることが難しい人間としては当たり前の欲求。
そして自分の立場や肩書きに縛られる人はそれが顕著なんだなぁとも分かる。だっていっぱい見てきたから。私はその心が汲み取れず理解出来ない。けれどもそういう欲求を複数見てきたらいつのまにか理解出来てしまうというもの。
人に手を差し伸べるのが私の生き様、少しだけ発破かけてみましょうか。
「ねぇ、蒼木さん。貴女って綺麗よね。資産もあるし、魔術の才覚も素晴らしいわ。さぞかし蒼木家の名誉ある娘として、貴女の御父上の後を継ぐ者として大成するでしょうね。……でもそうやって、死ぬまで貴女は在り続けることが出来るの?」
───受け入れて欲しいって、ちゃんと言葉に出せるかな、ロックと少年漫画好きの蒼木ルイちゃん?前に言ってたハイペースで沢山死ぬフランス特異点SSがようやく完成したので投下します。
私、シャルル・ペローは総大将に仕立て上げられました。
フランス王国軍の内、オルレアンを拠点とする部隊の実質的な大将のラ・イルは、自身が総大将でない軍を率いる事で自分を強化する宝具を持っていて、彼の邪魔にならない名目上の総大将が必要だそうで、オルレアンに居た私に白羽の矢が立ったようで、呆れた話です。
ただ、まあ取り繕わないだけ王国軍のほうがマシです。
どうせラ・イルに全て任せて眺めていれば良いだけの仕事です。
更に、多数のサーヴァントも居ますし、革命軍共の醜く足掻く様を嗤って……。
「へっ?」
気付けば目の前の平地には、陸にもかかわらず大艦隊が広がり、砲弾の雨が自陣に降り注ぐ。
対する私は、生き残る術を探す事も死を受け入れる事も出来ず、ただ立ち尽くすだけで……ああ、何だこれは。
他者を嘲笑うだけで自分は何も出来ず……これではまるで、私が獣よりも劣るようではないか。
「ごげ!?」
私の霊基の九割を、一発の砲弾が吹き飛ばしました。ヴォワザン、リントヴルム、アクレピオス、クルティザンヌ……他にもこれまで各地で多くの仲間が倒れてきた。
今回の敵襲も、マドレーヌが最期の力を振り絞って伝えた情報でどうにか迎撃体制を整え、ジャン・バールが消滅覚悟で艦隊を砲台代わりに展開と、犠牲を払いながらの戦いだ。
だが、俺の頭の中を占めるのは、砲弾の雨を潜り抜けてきた佐々木累……俺の弟分達の仇だ。
忘れはしない、奴の居合いで腹を抉られて俊輔の死に様を。
激怒した俺を逃がす為に戦い、首を刺されて死んだシャルロット・コルデーを。
「此処で会ったが百年目という奴だ、
覚悟!」
「おめおめと逃げ帰った奴がよくもまあ……」
佐々木累が魔女の茨を伸ばしてくる。
だが、俺はどうすれば奴を討てるかもう解っている。
一度頭を冷やしてから考えた通りに、俺は宝具を使った。
「それはもう通じねえぞ。『動けば雷の如く』」電撃を纏いながら駆け抜ける。
俺を捕らえようとする茨を全て焼き払い、剣の間合いに到達する……この距離ならば茨は使えない。
四合打ち合い、予想通りだと確信する。
体や技と、心が釣り合ってない……本来は正道を歩むものが振るうであろう剣術を、外道の精神で振るおうとすれば、太刀筋が狂う。
俺は、それによる僅かな姿勢のズレを見逃さず、突きを放った。
「何!?」
無理矢理回避しようとして姿勢を崩す佐々木累。
すかさず斬撃、これは刀で受け止められるが、続く刺突が奴の身体を掠め、更に斬撃が腹部を浅く切り裂く。
「嘗めるな」
奴は傷を負いながらも刀を振るう。
だが、急所を狙うことを重視し過ぎて、太刀筋が読み易過ぎた。「甘いぞ!」
俺は跳躍して躱し、そのまま上段から刀を振り下ろし、奴の頭蓋を叩き割った。
これが、奴の……俊彦達の仇の最期だ。
「仇は討った……しかし、俺も此処までか」
兵士の訓練を中心に活動する事で魔力消費を抑えてたとはいえ、俺は消耗の激しいバーサーカー……しかも宝具を使った以上もう数分程度の命だろう。
今度も、維新の結末を見届ける事は出来ないか……ならば、最期まで戦い、維新の礎となるだけだ。
俺は、降り注ぐ砲弾に混乱する敵陣に乗り込み、そのまま敵部隊の中を駆け抜け、消えるその時まで刀を振るい続けた。「憤怒の具現(ラ・イル)」
私の怒りが光となって敵旗艦を貫き、爆散させる。
敵サーヴァント、ジャン・バールが死に、我が軍に砲弾の雨を降らせていた艦隊そのものが消滅していくが、もう既に私以外のサーヴァントは死に、陣形も崩れてしまっている。
ああ、腹立たしい。
反乱軍共め、全て滅ぼして……。
「暴かれぬ真実はこの世に無し(レ・ド・メル・デ・メ・デ・サインマール)」
光が私を包み、力を奪って行く。
声が聞こえた方に居たのは鉄仮面と呼ばれていたサーヴァント。
即座にそいつの胸板を切り裂く。
しかし、続いて近付く足音……新手か!「ラ・イル、覚悟!」
やって来たのは、ルノー・ド・モントーバン。
これまでの戦いで既に乗騎を失い、最早魔力も殆ど残って無いだろうに、まだフランス王室に刃向かうか!
怒りに任せて斬撃を放つ。
受け止められて反撃の刺突が放たれたが、それを弾き上げる。
そのまま剣を上段から振り下ろすが、再び受け止められる。
兵達では見えない速さの攻防の数々、一合毎に地面がひび割れていく。
鉄仮面の宝具で力を奪われたせいか、奴に押さえ込まれている。
王妃の、我が祖国に殺されようとしていた少女の敵を討てん……だと?
「ふざけるなぁっ!」
自分の不甲斐なさに怒りが沸き上がる。
それに呼応して膨れ上がる力のままに、私は剣を突き出し……奴の腹を貫いた。間に合いませんでした。
私が辿り着いた時には、ルノーはラ・イルに殺されていました。
指揮官として部隊の運営を行っていた私とは違ってルノーは前線で戦い続けており、その消耗は激しいものでした。
それでも戦場に立とうとする彼女を止めなかった私の責任です。
ですが、そうだとしても仇を討たない理由にはなりません。
ましてや、彼には鉄仮面を始め多くの仲間を殺されているのですから。
「憤怒の具現(ラ・イル)」
飛び上がったラ・イルが宝具を使う。
奴の剣に魔力が集中し、それが叩きつけるように放たれる。
だが、私も既に宝具の準備を整えています。
「我が宝剣よ、万軍を貫け(オートクレール・リベルテ)」刀身から放たれる幾つもの光条。
それ等全てを収束し、ラ・イルが放つ破壊の光に正面から叩き込む。
ぶつかり合う光と光。
だが拮抗する事なく、私の光が打ち勝ち、ラ・イルを焼き尽くした。
「さあ、どうします?」
最強の将を失い、呆気にとられる敵兵にそう言い放ちます。
我先にと逃げ帰る敵兵が見えなくなるのを見届け、私は膝を突きました。
宝具を展開し終えた時点で、私は立っているのがやっとの状態でしたが、兵や保護された民が撤退するには、虚勢でも倒れる訳にはいきませんでした。
「後は、頼みましたよ」
最早動く者など居なくなった戦場で、私は消滅しました。以上、カルデア到着前に起きた戦場のSSでした。
これで、僕のフランス特異点SSは終わりになります。テスト
トーナメント投下します。
「(来るよ、バーサーカー……!)」
「(ええ、分かっています。)」
それはまさしく巌の如く。遠目に見た砂塵の中では分からなかったライダーの恐るべき巨躯が眼前に迫り来る。
「ハアッ!!」
「ーーーーーーッ!」
大地を震わせるライダーの咆哮。それと同時にライダーの振るった大剣とバーサーカーの剣が激突する。時間にすれば1秒も満たないだろう刹那の瞬間、建物が倒壊するのではないかと思うほどの衝撃が私の肌を、体を駆け抜ける。
「ようやく相見えたな、バーサーカー!」
「……ええ、そうですねライダー。」
僅かな鍔迫り合い。状況を見るなら私のバーサーカーの方が体格としてもステータスとしても不利と言わざるをえない。
だが、ライダーはすぐに剣を弾き後ろへ後退する。
「……攻めてこないのですか?」
「意外か?」
「貴方ほどの英雄であれば、もっと攻めるくるのが常道だと思っていましたので。」
「は。貴様のその剣とマトモに打ち合えば、此方の剣が先に折れるのが先だろうよバーサーカー。いや……『円卓最強の騎士』"湖のランスロット"と呼ぶべきか?」
湖のランスロットーーーーーーその名に聞き覚えはある。アーサー王伝説において、湖の妖精によって育てられフランスからイギリスに渡りアーサー王の下で仕えたとされ、アーサー王を中心とした円卓の騎士という集団の中で最強と謳われた騎士。かの騎士が女性であった可能性もゼロではないだろう。>>99
「(でも……彼女はそうじゃない気がする)」
けれど、彼女の真名はきっとランスロットではないのだと思った。もし、彼女が本当にランスロットであるのなら彼女はあまりにも優しすぎる。もちろん、何故か記憶の欠落している私に対しての接し方がそうだったのもある。だが、それを差し引いてもあまりにも女性的すぎるのだ。まだ彼女の全てを知ったわけではないし、彼女の人となりを理解したわけではないけれど。それでも彼女は勇んで戦うような人じゃない。武勲や強さを求める騎士が、剣を握って振るうのにあんな苦しそうな顔をして戦うものか。何かに縋るように、何かに乞うように敵に立ち向かったりするものか。
だが、彼女の真名の手掛かりがないわけではない。
「(エクスカリバー……確かに彼女はその名を口にした。)」
エクスカリバー。アーサー王伝説において、アーサー王が湖の乙女より齎されたとされる聖剣。彼女が今その手に握っている剣は間違いなくかの聖剣で間違いないはずだ。
「(ということは、彼女の真名はおそらくーーーーーー)」
「湖のランスロット……ですか。」
バーサーカーの顔が憂慮げに変化する。まるで過去を懐かしむ(噛み殺.す)ように。そんな顔を見て、ライダーは続けるように言葉を放つ。
「ああ。かの円卓最強の騎士が女だった、というのは少しばかり意外ではあるがな。その聖剣もアーサー王の物だったとしても、貴様がランスロットであるならば不自然ではない。」
「………」
一瞬の沈黙。そしてバーサーカーの口から漏れ出たのはーーーーーー
「……ふふ。」
自虐的な笑い声だった。
「何がおかしい?」
「いいえ、いいえ。おかしくなどありません。ただ、貴方ほどの英雄が私のような弱い女を見誤るなど思いもしなかったものですから。」
「……何?」
ライダーの顔色が変わる。それはまるで得体の知れない人間を見るような嫌悪の顔。
「貴様、この私が見誤っただと?馬鹿を言うな。それほどの武装をしている人間が弱い、だと?戯言も大概にしてもらおうか……!」
「武装だけで人は測れませんよ、ライダー。いいえ、ペルシャ叙事詩『シャー・ナーメ』の英雄ロスタム。」>>100
「ーーーーーー!!」
ロスタム。七つの道程、ハフトハーンを乗り越え数々の戦いを乗り越えたペルシャ叙事詩の英雄。それがライダーの真名だと、バーサーカーは言い放った。ライダーの反応を見るに、それは正解なのだろう。
「……我が真名を言い当てるとは。では、もう加減は要らぬようだなッーーーーーー!」
ライダーの巨躯が再度バーサーカーに迫る。
「おおおッ!!」
「ーーーーーーーーーーーー」
ライダーが剣を振り下ろす。しっかり体に力を入れなければ、剣圧だけで私とバーサーカーは吹き飛ばされていただろう。
当の相対しているバーサーカーは、迫りくる剣を真っ向から迎え撃つ。
「ぬぅ……っ!」
「くっ……。」
単純な力では間違いなくライダーが上だ。バーサーカーに勝るものがあるとすれば、それはライダーと比べて小さい体躯とーーーーーー
「はあっーーーーーー!!」
「なにっ……!?」
ライダーの剣をわずかに上げ、バーサーカーは左腰の剣を鞘から振り上げる。本来なら、傷にすらならないだろう一撃。だが、だからこそ。相手に致命傷を負わせるには十分。
「その命、まずは1つーーーーーーいただきました。」以上です。さあ、一気に決着といきましょう。
>>86
〜ヘルヴォル〜
和装の術者が猛攻を繰り出す。
対して剣士は冷静に、しかし大胆に対処した。
術弾は魔力を伴った纏った斬撃で消し去り、浮遊する刀の飛来を軽やかなステップやターンで躱す。
術者が奏でる攻めの旋律に、剣士が舞って応じるーーーそんな美しい戦闘に、剣士は内心で高揚を覚えた。
もう一度この足で土を踏めること、剣が風を切る音を聴けること、そして何より、己の力を存分に振るえる相手と出会えた事に、喜びが溢れ出しそうだった。
ーーーだけど、ここで術者の"騙し"が入る。
何度目かの飛来する刀。それを叩き折ろうと私は剣を振るう。しかしその斬撃は、ただ空を切った。
(幻……!)
気づいた時には遅い。一瞬で現れた術者の分身が、私へと掌底を打ち込んだ。
「くっ……!」
意地で反撃を繰り出し、分身を消失させるも、敵の攻撃は深く入ってしまった。
リズムを乱した私の元へ、いくつもの攻撃が殺到する。しかし、魔力の壁を形成して凌ぐ。
「視界を塞ぐのは、悪手だのう!」
壁を消失させた直後、側面から術者の蹴りが飛んでくる。飛び退って回避する。しかし、相手もすぐに距離を詰め、剣の振るい辛い距離での、格闘乱打戦が展開された。>>103
〜ルイ〜
頭が真っ白になった。次に思ったのは「何故」だった。
少年漫画やロックが好き、わたくしを受け入れてくれる人が欲しいーーーそんなこと、殆ど誰も知らないはずなのに。
その疑問は次第に形を変え、"怒り"になった。
内心をずけずけと暴かれた羞恥による怒り。
そして、彼女の笑みと言葉に、自分が"嘲けられた"と感じてしまった故の怒り。
その二種の怒りがないまぜになって、喉元を焦がすような熱になる。
この熱を吐き出してしまおうかと思ったけれど、すんでの所で堪える。
「……口は慎んだ方が良いと思いましてよ。災いの元になりますわ」
なんとか、それだけ言うに留めた。
一体彼女は、どこでわたくしを知り、何を目的にしているのーーー?
〜〜第一回大会SS投稿します
参加者の皆さんは確認お願いします>>105
移動から十数分足らず。ついに俺とランサーはバーサーカーを捕捉した。
『オラオラオラァ!! こんなもんかよ引きこもり共ォ!?』
というか、捕捉せざるを得なかった。
現在俺たちの位置はバーサーカーよりおよそ数百メートル。流石にこの距離ともなると、肉眼よりも双眼鏡に頼らなきゃならない。
……だというのに、奴の声はこれ以上ない程クリアだ。
間近で叫んでるみたいに、馬鹿でかい咆哮が轟いている。木々も間に挟んでいるのに、一体どうなっているというのか。
「まるで怪獣だな。いや実際、人外に両足突っ込んでるような奴だけども」
「流石にこれより先共に進むのは無謀だな。瓦礫や木片だけで命を落としかねん」
相変わらず何が起こってるかはさっぱりだが、どうやらバーサーカーの奴善戦してるらしい。さっきからワイバーン達が飛び掛っては次々とミンチにされ、肉片も残さず消し飛ばされている。
「それじゃ俺はこの辺で下がっとくよ。後は任せたからな」
「うむ、任された。必ずや彼奴めの首級を挙げ、無事に戻るとしよう」
フラグっぽい事を言い残し、ランサーが奥へ進んでいく。
その姿を見届けると、俺は少しでも安全な場所を目指し森を後にした。
続く>>106
一方、先に進んだランサーは順当にバーサーカーの下へたどり着いていた。
「あぁ? 誰かと思えば、小僧んとこのランサーじゃねえか。何だ、加勢にでも来やがったのか?」
「ふむ、加勢か。当たらずとも遠からずではあるな」
「ん、だと――!?」
俊足の踏み込み。縮地とまではいかずとも、今のランサーの敏捷はA+。バーサーカーのそれを優に上回る速さである。
が、一撃で決着には及ばない。すんでの所でバーサーカーはランサーの一太刀を見切り、軽傷に押し留めた。
「流石は狂戦士、この程度では倒れぬか。どうやら貴様も相当な武人らしい」
「テメェ、どういうつもりだ?」
殺意に溢れた声と形相でバーサーカーが問い詰める。
返答によってはただでは置かない。そんな意志を瞳に込め、バーサーカーなりの『警告』を送る。
――最も。答えがどうあれこの暴君が己を傷つけた者に何をするかなど、神話を紐解けば明らかに過ぎたが。
「見ての通りだとも。同盟はここまで、という事だ。これより我ら槍陣営は貴様らの討伐に回らせてもらう」
「ハ――そうか、そうかよ。いい度胸だ、テメェら。このオレ様を敵に回して、まさか『ただ殺される』程度で済むと思ってはねえよなぁ?」
「無論、済まない……と言いたいところだが。それは約定違反だぞ。某はともかく我が主に手を出して泣きを見るのは貴様らの方だ」
ランサーがすっと目を細める。同時に、ランサーの総身から殺気が放たれ、バーサーカーの殺意と真正面から衝突する。
続く>>107
「裏切り者が約定云々語ってんじゃねえよ。今のテメェらこそ、聖杯目当てに仁義を踏みにじったク.ソ共だろうが」
「生憎だが、我が主は聖杯になぞ執着していない。そして某も、最早聖杯に用はない」
何より、とランサーは己が宝具――石州大太刀を構え直す。
「貴様らのような悪鬼羅刹に加担するなぞ、天地がひっくり返ろうともあり得ぬ話だ。仁義と口にするが、そういう貴様は我らの背を黙って見過ごす気でいたか?」
「――――」
バーサーカーは答えない。
ただ、凄絶な笑みだけを見せつける。
「さぁ、始めようか狂戦士。貴様の大好きな、戦の時間だ」
「ぬかせ侍ヤロー、本物の地獄を見せてやるよ……!」
その言葉を最後に、大地が各々砕け散る。
伝説の暴君と戦国の麒麟児。時代を超えた血戦の火蓋が、今切って落とされた。
これにて区切りです。
次はゲルトさんか、もう一度ルーカスさんないし朽崎陣営さんにパスしますね
順番的に、ゲルトさんが一番いいかな…?短いですが、トーナメントです
>>109
「────ほう、余所見とは舐められたものよ」
洲甘の耳朶に響いたのは、重く低い男の声だった。
結界のルーンで仕切られた向こう側にいる従者の戦況が芳しくない事は、戦いながらでもある程度把握出来ていた。
どうやら相手は武具を介した攻撃を遮断する加護か宝具かを有しているらしく、技術一辺倒のアーチャーは有効打を与えられずにいるらしい。
せめてここから助言なり出来れば。
そう思考をほんの少しだけ彼岸の戦場に割いた、その瞬間を怪僧は見逃しはしなかった。
迫り来る暴力の壁。
視界を白一色に染め上げるソレはキャメロンが得物とする武器である。
聖堂教会由来の聖別武器『白扉』、聖書の形状にカムフラージュされた凶器は本から千切り取ることで本来の形となるようだ。
概念的な防御手段としても使える他、それを投げ飛ばすことで投擲物としても、或いは局部を押し潰すギロチンのようにも使用できる。>>111
眼前に迫る質量の脅威に対して洲甘が取ったのは三節棍の殴打による軌道の変化。
一見すると無謀な一手だ、然しそこに魔術が絡むのならばそれは無謀でなくなる。
三節棍に刻まれた強化のルーンは耐久性を向上させ、タングステンもかくやと言わんばかりの硬度を練り上げる。
渾身の一撃。
洲甘の全身を駆使して放たれた柔の殴打は、軌道内の全てを壊し尽くす剛の一撃を微かに反らす。
そうして出来た人間一人分の矮小な空間に洲甘は滑り込んだ。
身を限界近くまで屈める、その動きは始終しなやかで淀みがない。
ボクシングのダッキングのように敵の攻撃を膝を使って回避した洲甘は、その際に出来た重心の移動を攻撃へと転用させた。
守備からの攻撃、その切り替えの速さは意識の隙間を縫い、洲甘の最も得意とする距離を確保させた。>>113
一応これで、終わりです───ひどい顔だなぁ、娘よ。
多くの残り香(慟哭)が私に刃を突きつける。あの家ではずっとずっと繰り返してきて、生き残った後も何度も何度も襲う牙。
理解が出来ない故に私の心ではなく体に突き立てられる痛み。みんなが感じ取った、肉の痛み。
靴に画鋲を仕込まれたとか、煙草を押し付けられたとか、何度も蹴られながら水に押し込まれたりとか、この現代社会に蔓延る痛み。
事故で腕が無くなったとか、誰かに刺されたとか、銃弾で貫かれるような日常生活では体験しない痛み。
大会に参加する前に、薬はちゃーんと飲んできた筈なのに、出てしまうのは何故なのか。そういうイレギュラーが発生することもまあ無くはないから仕方ないといえばそうだけれど。
痛い。ここまで痛いのは久しぶり。私は気を失うことがないように調整がされている分さらに苦しい。……このタイミングでの痛みによって、あまり身体が動かない。
取り敢えず問題ないという意味で蒼木さんにリアクションを取ったけれど、どう受け取られるかはわからない。お前の目の前の娘、憤っているな。それもそうか、お前の顔は悪辣な笑みにしか見えぬのだから。
……歯と頭蓋骨を麻酔なしで削られる痛みを味わってるんだから、しっかりとした笑みを浮かべられなくて当たり前……なんて言えない。これは私が受けた業なのだからこそ、苦痛を顔に出さないよう私がもっと努力しなきゃいけないことだし。
若い若い。そのような未熟な精神である故に貴様は「傲慢」にすらなれないのだ。空虚さしか残らぬというのはどうだ?どんな気持ちだ?
……他人の悩みではなく、私自身の気持ちであるのならばどうでもいい。きっと「水籠初梅」ならそう返すわ。
視界がクリアになる。まだ視界は正確ではないが目の前の蒼木さんは怒っている、ということはわかる。
「ああ、ごめんなさい。今ここで聞くのは無粋だったわね。今一度話し合う時間をとっても良いけれど、先に誘いをかけたのは私だし…話し合うならまた今度、かしら」
「そうですわね。話し合う時が来たら、ですけれど」
斧を構え直し、扇で受け流す構えを取る。といっても、私が何処までいけるか───一合、二合。そこからはさっきよりも遠い距離に。この距離なら相手は突撃してくるだろう、とふんで構える。
初梅がふらつき、足の感覚が無くなるのと、ルイが光剣を構えたのはほぼ同時。
(しまっ───脚の感覚が持ってかれた?)
まさか、この瞬間に足が無くなる記録が再生されるとは思わなかった。
ルイは初梅が倒れかける姿を見て、一瞬途惑い、走りが遅くなるも直ぐに駆け出す。
───君は、それを許すのか?……アレは“駄目”だ。あの体勢であの速さを初梅一人では絶対に対処出来ない。
りん……ど……あ…たは……しあ、わ…
何度も繰り返し見た、あの地獄。誰も彼もが俺の手から零れ落ちていく。拾おうとすればするほど逃げていく。もう、嫌だ。逃げるのは嫌、何も出来ないのも嫌。
そんな事を考える前に身体は全速力で走っている。間に合わないんじゃなくて間に合わせる。守れないんじゃなくて守る。そのために、あの人から教わったこれだけは昼夜欠かさず研鑽してきた。
あと数メートル。あと数センチ。
3───2───1───届いたっ!
「涙を掬え、双璧…!」
青い壁がルイの攻撃を阻む。激しい音が壁と武器の間に響き、壁が割れる。
満足な魔力も込められておらず、強度も足りなかったため衝撃によって竜胆は後ろの木に叩きつけられてしまったが、ルイもかなり距離を離す形となる。……どういうこと、なの。
驚愕と、理解出来ない思考が駆け巡る。私の協力者は、非現実の中に身を投じ続けているわけでもないのに───
……あの距離を間に合ったという点も、わからない。あの距離は、こいつなら確かに傷つくことへの恐怖や途惑いが一切無く、走り抜ければ間に合うかもしれない。
……でも、そんなの殆ど親密な仲じゃないと有り得ないことなのに。少し前までは普通に話すぐらいのクラスメイトなのに。どうして───
「つぅ……初梅は無事か。良かった、傷とかないか?」
「傷とかないか、じゃないのよ。あんたバカなの?どうして私を庇ったのよ」
初梅の問い掛けに、竜胆は迷い無く、いやむしろ何故そのような問い掛けをするのかという顔を浮かべながら、当然のことであるかのように一言語る。
「どうしてもなにもないだろ。友人を守るのは当たり前のことじゃないか」
終わりです大変遅くなりました。短いですが、フランス特異点を更新します
「なるほど汝もまた、太陽を抱く者ということか……して、其方は……汝がこのフランスに降り立った唯一のマスターか……」
太陽王が視線を厩戸皇子から藤丸立香へと移す。その圧に立香は思わず、唾を飲む。
太陽王(ロワ・ソレイユ)……少し前まで神魔英雄と関わりあいの無かった一般人である立香でさえその名は知っている。
広く知れた名はルイ14世。自身を国家であると口にしたという逸話から王権絶対の時代の象徴とされた世界有数の王の一人。
品定め、と言った様子で暫く立香を凝視してから太陽王は告げる。
「これと言って特徴のない一般市民……悪い意味ではなく、『それらしい』と言ったところか」
太陽王は要領の得ないことを告げる。しかし、不思議とその視線から悪意や敵意は感じられない。
続けて、太陽王は寺田の方を向く。寺田は険しい顔をしてそれを睨み返した。
「汝のことはキノツラユキから聞いているぞ?なんでも我らが王国軍のサーヴァントを何騎か仕留めたらしいな」
途中で出て来た『キノツラユキ』という言葉に立香が首を傾げ、厩戸皇子は考え込むような顔をする。
こちらも太陽王同様に立香でも知っている極東の歌人の名前だが、このフランスとはあまり馴染まないように思える。
すると立香の後ろで控えていたスカタクが立香の袖を引く。
それに気づいて立香が振り返るとスカタクが小声で告げる。
「コイツからちょびっとだが、月棲獣の匂いがする……殺っていいか?」
月棲獣……ムーンビーストという単語が気になるが、ひとまずは歓迎されている以上此方からことを荒立てたくはないので、立香はなんとかスカタクを宥める。
そんな立香の気も知らず、今度は太陽王がスカタクの方を見る。
「なるほど、なるほど……彼女がキノツラユキの告げていた……あの月の獣(ムーンビースト)に引き寄せられしものか……ふむ」
極めて冷静に裸体の女神を眺め、分析する。そして……
「実 に !美 し い ! ! !我(フランス)好みのだ!」
「 は ? ? ?」>>121
先程までの荘厳な態度を崩し、好色な若者のような貌を顕にする。その有り様に寺田と立香、そして先程まで敵意を向けていたスカタクまで呆気に取られている。厩戸皇子ですら少し動揺しているようだった。
「あの醜き化け物共にまさかこのような美姫が現れるとは……思えばキノツラユキも女とも男とも取れぬ美形ではあったが……斯様な美女と巡り会えるのであれば今回の召喚にも意味があったと言えよう。」
そんな一行を置いてきぼりにして、太陽王は一人スカタクの美に酔いしれ、楽しそうに笑っている。
混沌にして悪徳の栄えるフランスにてリヨンという街を極めて平和に統治している王。その印象を打ち壊すような様だった。
遅くなりました、明星さん、リドリーさん、フォーリナーさんよろしくお願いします>>125
呪いとは人の感情に恣意的な指向性を持たせたものである。
この場における呪いとは、『死霊の怨念という感情』を『朽崎遥が指向性を持たせて』一つの『魔術』としている。
『指向性を持たせている朽崎遥』を直接打ち倒すのが『物理的解決法』。
『死霊の怨念という感情』を説き伏せあるべき所に還すのが『聖化的解決法』。
ならば『朽崎遥の持たせている指向性』を捻じ曲げ自らから呪いを逸らすことこそ『魔術的解決法』と言えるだろう。
別段珍しいことでもない。『呪いを逸らす』など覚えのある魔術師ならば3代目程度の新米から一つの学科に覇たる君主まで誰でもやっていることだ。
無論、出来に差が出ることは明白だが。
『死霊の感情をまとめ効果を出す』、『受けた呪いの狙う座標をずらす/あるいは術者に返す』、同じく魔術的行動であるならば結論はお互いの魔術師としての力量に左右されるだろう。
むしろ自らエネルギーを生み出すことなく、死者の怨念に依存して、それをまとめるという作業をのみにて魔術を使うという事実こそ、時計塔を中心とする西欧魔術圏における死霊魔術師蔑視の理由の一つかもしれない。>>127
そこは星々が無数に存在し、しかし手に届くものはいかなるものも存在しない空間。
あるいは宇宙と呼ばれる世界である。
だが、単に今までと同じ幻覚と切り捨てるには大きな違和感も朽崎遥には存在していた。
(視界を上書きされたってだけならさっきまでと変わんないけど、コレ、例えばこの浮遊感だとかはーー)
今度の効果は視界には留まらなかったのである。
抵抗のない水中を漂うような無重力感に、先ほどまでたしかに地につけていた足の裏の感覚の無さ。
一般的にイメージされる『宇宙体験』。
(それでいて呼吸は出来るし声も聞こえるってあたりからして、まさかホントに宇宙空間に放り出されたとかそんなワケないしなー?)
空想具現化(リアリティー・マーブル)と呼ばれる絶大な神秘を用いれば可能かもしれないが、これは人と人の戦いだ。そんな精霊種最高位の大業を成せる者のスケールではない。
つまりこれはーー、
「暗示かなぁ?」
「正解だよ」
それは極めて初歩的な魔術。時計塔に入れば全体基礎科で誰でも学ぶ魔術。
暗示である。>>129
世界中どこでも見られるような、お手手を繋いで歌を歌う子供のように、星の人は'朽崎遥'という人格を解き明かしていく。
【youーーー、ーーreーーー?】
【ーhoーーーーー、ーereーーーー?】
【ーーーーーーーーーー】
口のない人と歌詞のないわらべ歌。
【ーー、ーーーーーatーーーーyーーーー?】
内と外とを分ける認識を。
【whatーーーー】
その外殻は煙の如く。
【ーーーareー】
虚ろな宙へ。
【ーーーーyou?】
溶かす。
【あなたは誰きみは何どこがここ何も無いここは宙きみは虚あなたは虚何がきみあなたをとかすどこへ行くさああなたと誰きみ教えてよわたしはほしいつからあなたどこがあなたは何も何もなにもなにもなにもなにまだーーーーーーーーーーーー】
【あな【た【はだ【【あ【れ?>>122
「して、卿は何故私達を歓迎した?」
脱線した状態を引き戻すようにも、厩戸皇子が告げる。
確かに敵対者であるカルデアの一行をわざわざ自身の領地に歓迎したというのはおかしな話だ。
「なに、他のサーヴァントから少し話を聞いてな。純粋に興味が湧いただけだ。我がリヨンであれば他の王国軍からの横槍は入らんだろう?」
太陽王は先程とはまた違った貌で厩戸皇子の質問に応える。どうやら王国軍のサーヴァントも一枚岩ではないらしい。
「つまり卿は軍、そして奴らの言うところの『女王』の命ではなく己の意志で我々を受け入れたと?」
「まぁ、そういうことになるな。」
その言葉に立香が思わず、口を開く
「なら、俺達が戦う必要はないんじゃ……」
「ふむ、何故そう思う?」
「俺達は王国軍虐殺を止めたい。貴方は自分のリヨンを守りたい。それなら俺達の利害は一致するはずです。だから出来ることなら戦わずに……」
立香はリヨンに入る直前にあった厩戸皇子との会話を思い出していた。極めて平和にリヨンを治めているこの王を討てば、たちまちこの街は混沌に陥る。それは立香達も望むものでは無い。
だからこそ、立香は可能であれば戦闘を避けたいとも考えていた。
「なるほど、筋は通っている……だが、それは出来ない」
しかし、太陽王はそれを拒絶した。先程までとは異なる荘厳な王としての貌で。
「何故か……聞く権利ぐらいは此方にもあるだろうな」
気圧される立香に代わり厩戸皇子が疑問を投げかける。
「まず一つ、我(フランス)はあの娘に召喚されたサーヴァントだ。たとえ領内で自由に振舞おうとも我(フランス)は彼女の従者であることには変わらん」
「一つ、我(フランス)はこの国を長くに渡り治めた王。その我(フランス)が王政の打倒などという目論見に協力する訳にはいかない。」>>131
「そして、我(フランス)一人倒せぬようでは汝らは何れにせよ彼女を倒す事は出来ないだろう」
太陽王もまた他とは行動原理が異なっていても王国軍のサーヴァントであるということか……やはり一筋縄ではいかない。
「そうだな、我と戦うことに気乗りしないのであれば我(フランス)と汝の決闘というのはどうだ?」
立香の様子を見かねた太陽王が一つの案を投げかける。
「決闘……ですか?」
「あぁ、奇しくも我と其方の二騎は揃ってセイバークラスだ。真っ向からの真剣勝負に秀でた英雄であろう。ならばその剣技で持って決着をつける。此方には地の利がある故其方は二騎同時に我(フランス)にあたっても構わん。」
「でも、それじゃあ結局ただ戦うことと何も変わらないんじゃ」
「お互いに譲れないモノがあるのであれば、これ以上話し合ったところで平行線だ。ならば己の信念を決闘を通して相手にぶつけるのも悪くは無いだろう?それに決闘であれば我も汝も戦闘にこのリヨンの民草を巻き込まずに済むであろう。」
「此方には既に三騎のサーヴァントがいる。ならば、そのような面倒な取り決めに従わなくとも、三騎がかりで相手にすることも可能だが……」
わざわざ二騎に限定する相手のルールに従わずともいいと告げる厩戸皇子。
本心というよりも相手の思惑を測るような口調だった。
「我(フランス)としては其方の美姫を傷つけるのは勘弁願いたいものだがな。とはいえ其方がそうくるのであれば我も受けて立とう。しかし、三騎同時に戦闘となれば其方のマスターにかかる負荷も並ではない。それは其方も望まぬだろう?」
確かに既に二騎との契約で負担がかかっている立香がスカタクを相手に更に多重契約をすればその負荷は計り知れない。
しかし、相手の領地内、如何なる強化を得ているか計り知れぬ敵。それを相手に契約無しにスカタクを戦闘に参加させれば、魔力消費による消滅の可能性も有り得る。
カルデアとしては既に王国軍と大きな戦力差がある今の状況で一騎足りとも失いたくはない状況だ。
「此方の条件を呑むというのであれば我もそれなりの対価は払おう。汝らが勝利した場合、こちらから王国軍に所属せぬサーヴァントの情報を渡す。少なくとも彼女……女王に従うタイプではない様子だ。仲間に引き込める可能性も高いだろう。」>>132
そして、告げられる太陽王から勝利報酬。
敵の数は圧倒的、ならば少しでも味方となる存在を押さえておきたいカルデアと革命軍からすれば渡りに船ともいえる内容だった。
問題は太陽王が勝った時にどのような対価を支払うのかだが……。
「我が勝った場合は……そうだな、其方のマドモアゼルをいただきたい」
太陽王の視線がまたしてもスカタクの方へ向けられる。
「スカタクを……貰う?」
「あぁ、女性を掛けての決闘など男であれば一度はやってみたいものだろう?我が勝てば彼女をリヨンで預かる。リヨンの中であれば自由も制限しない。王国軍の相手はともかくムーンビーストとやらの掃討が目的ならばならば我も協力しよう。悪いようにはしないつよりだ。」
太陽王の表情が決闘に燃える好色にして血気盛んな男のものへと変わる。
太陽王……その男はまるで舞台の上で様々な表情を演じる役者の如き掴みどころのなさを見せる。
「さて、藤丸立香……汝はこの決闘を受けてくれるか?」
以上です。返答は明星さんかリドリーさんお願いします術者は、思った以上に強敵でした。格闘戦は鋭く、操る術は掴み所が無い。
正面からの拳を躱したと思えば後ろから火弾。蹴りが見えたと思えばそれは幻影(フェイク)。剣の振るい辛い距離でのラッシュを紙一重で躱し、術を魔力放出と最低限の剣の振りで砕く。
(余裕があるように、見えていればいいですね……!)
地面から現れ手足に巻きつく蔦や縄を、斬撃や力で裂いていく。
『チカラガホシイカ……?』
突如、脳に声が響いた。
地獄から発されるような低く、禍々しい声音。
『アイツヲコロシタクナイカ……?』
剣を振るうと聴こえてくるその声。この剣に施した拘束(ルーン)を解除すると聞こえるようになる、呪いの声だ。が、その声を私は一蹴する。
(アナタも中々暇ですよね。"今"の私は、そんな誘いに乗りはしない!)
一際力を入れて、術者に体当たり。虚を突かれた彼は、大きく後ろへ飛ばされた。
(あと一撃……!)
私の策を成功させるには、"あと一度"斬撃が入れば良い。
相手が吹き飛ばされた隙を利用し、カードを切る。
指を素早く動かし、宙に文字を描く。軌跡が輝き、巨大な光剣が射出された。
ルーン魔術。大神オーディンがその命を一度捧げて悟ったという、文字を媒介にした魔術。これが私の切り札の一つ。
光剣を認識した術者は、すぐさま防御の結界を張り、剣を受け止める。即席にしては凄まじい結界だ。
しかし、少し足が止まってくれればそれで良い。>>134
先程までのお返しとばかりに、発光した宙の文字から火球を連射する。それらを防ぎきった瞬間、術者の背後に回り込んだ私の剣が振るわれる。
「ぐっ……!」
間一髪で彼は深手を回避する。野生動物の如き勘の良さだ。しかし、条件は揃った。
「いや、参った参った。剣士殿も術を使うとは思わなんだわ。だがその術は"知っている"。お前は北欧の出と見たぞ」
「答える気はありません。ただし、この魔術を知っているのであればーーー少し、傷への警戒が足りませんでしたよ」
パチン、と指を鳴らし、小さく呟く。
「『カノ』」
瞬間、術者の腹部から火が発生する。先の一撃で、相手の傷跡が火のルーンとなっていた。
「ぬぅっ……!」
苦悶の声を上げる術者。火はすぐに消えるが、肉体そのものを焼かれたのはなかなかの痛手だろう。
〜〜一旦サーヴァント側を。マスター側はもう少しお待ちください。
>>130
【あな【た【はだ【【あ【れ?
さて、久しぶりの自問自答だ。ーーー朽崎遥とは一体、何者なのか?色々試す間は暇だし、考えてみるとしよう。
ルーカスからの攻撃については……、今は考えなくてもいいだろう。現状、俺は精神干渉系の魔術を受けている。これは確定だ。下手に手を出して突破口とされるのはアチラとしても藪蛇だろうし。まぁだからこの空間を攻略するには、自我を固定すればなんとかなるかもしれないな。魔術やらなんやらで対抗のためににいろいろ試しつつ、思考もする、と。まぁこういう状況でヤるのも悪くないだろu。
Q.オレ、朽崎遥は混じりっ気梨に血も涙も無い悪人である。
Noだ、絶対にない。少なくとも、100%の悪人なら虎春ちゃんの時とかに治療法を渡したりしない。寧ろ最期まで足掻くのを鑑賞するだけだろう。まぁ自分で自分を悪人で無い、というヤツが信用できない、と言われればごもっともだ。だが僕は自分から状況を作った事はない。殺人経験もない。……無い、よな?記憶が妖しい。ハイ次。
Q.私、朽崎遥は誰かの為に善行を無償で働く人間である。
Noだ、ありえない。少なくともボクは自分が嫌いだ。だから無償で誰かの為に、なんて抜かす自分は信じられない上に、垢の他人がどうなっても、そレ自体に興味は薄い。まぁ面白そうだったら興味が湧くし、覗きにもヰくけども。
自傷行為での突破は不可能か。まぁ気付けにはなったが。精神干渉が自分に届くまでの猶予はまだありそうだ。次。>>137
Q.では俺は自分を自覚している人間であるか?
Noだ。あり得ない。『答え』を探している人間が自分の事をを理解している筈がない。理解していればもう少しフラフラしないだろうし。
Q.『答え』とは何だ?
そりゃあ、アレだよ。母さんからのあの時のアレがどういう意味だったか的な……。
周りを回る変なのに攻撃、っちぇ、器用に避けやがる。上手くいかない。
ーージィーリリリリリイリリンーー、リリrン。
なんだ?なにかnのアラームが聞こえてくる…。新しい攻撃か?ん?アレ、死霊鎧套がいつの間にか無くなっている。まさか盗まれたkじゃ?マジかよ、結構気に入ってるレシオうだったのnい。
Q.『アレ』とは?なんだ?『答え」とは?
だからアレだよ、俺がまだーーいまでもクそ餓鬼なんだsがーー、の時にあったあのでき語pと……。あの”今の俺”を作ったといっても過言でないあのヤラカイsにして湯いい乙といってもいいぐらいの公開……。
ーージーリリッリリリリインイリリん。リリrン。リーリリッ、リリッリリリッリン。
うるさいいな、幻聴か?こりゃあマジに急がないとガチでヤバい事に……。そういいや何垢の映画かしょうっ説で見たが、人は意中ろか暗闇ばっかりに部屋のpじゃかに超時間ふいると黄がちじゃってしまうそうだ、つまり、今!俺はまさしく危惧類になっってしまう可能性がしぼkhbらじゃいってコット!陸将っ!
Q.”紅海”、都は?悲しかったのpだろう?その詳細を圧し得て」ホシい。
え?だかsらあの時に「俺gは何kらをい破壊してしまって(たぶん『起源』のせいだな、いや、言い訳jしない。俺がおれでれやったjg報じよくなのだkらs。鎮火───完了。
身体損傷───少し重め。
戦闘───継続困難。
「くふっ、くははははっ!これはこれは、一本取られてしまったわ!剣の軌跡でルーンを刻むとはかなりの使い手よのぉ!……が、しかし、事を急ぎすぎたな?」
ルーンとは、現代魔術社会にも存在している歴史が長い魔術体系の一つである。
だが、現代における『ルーン』と神代における『原初のルーン』では効力、出力、性能、そのどれもが比べ物にならない。例えそれが、原初のルーンの中でも強力でなく、フルパワーにあらずとも。
「真名のヒントを与えすぎだ。……さて、帰ってからゆっくりと考えることとしよう…っか!」
宙の刀は全て壊し、本気の殺気を投げかける。妖魔の王、あの時の同胞を背負うものとして退くことなど出来ようものか。……そんな感じでぶつけてみる。
そして、この拳一つで、あの女に向かって駆け出す……ああ、マスターがあの二人で助かったというべきだろう。『この選択肢』がなければ儂はとっくに負けていたやもしれぬ。
「剣を構えよ、北欧の戦乙女!さあさ、俺は真正面から行くぞ!」水籠さんを狙う一撃は、彼女のパートナーによって防がれた。
(あの距離を、間に合わせましたの⁉︎)
盾を持つ少年ーーー氷瀬竜胆。彼の立ち位置からではほぼ間に合わない状況だった筈。それをどうにかしてみせた事に驚愕し、彼への評価を改める。
(全く……敵ながら天晴れ、ですわ。殆ど一般人だと、侮っていましたわね)
そしてーーー
「傷とかないか、じゃないのよ。あんたバカなの?どうして私を庇ったのよ」
「どうしてもなにもないだろ。友人を守るのは当たり前のことじゃないか」
そんなやり取りをする二人が少しだけ、羨ましかった。
「もし、お二人だけの世界に入らないでくださいまし」>>141
「あら、ごめんなさいね。構ってもらえなくて寂しかったのかしら?」
「……言いますわね。ええ、ムッシュ・リンドウがとても素敵なナイト様だったのですもの。妬けてしまいますわ」
そう言って竜胆さんへ微笑む。
(ふふ、まるで三角関係ですわね)
我ながら呆れ半分、可笑しさ半分だ。売り言葉に買い言葉のやり取りでもあるけれど、他の目的もある。
一つ、偵察に出した"あの子"を呼び戻す時間稼ぎ。
二つ、水籠さんの"能力"へのヒントを探る。
三つ、お二人の関係性への興味。
(さて、お二人はどう反応するのかしら)
〜ヘルヴォル〜
「それでは我が剣技、もう暫しご堪能あれ、名も知らぬ術者よ」
放たれる殺気に怯むことなく、駆けてくる相手を迎え撃つ。寧ろ、この肌にピリピリと来る感覚が、高揚感に似たものを感じさせる。
(さあ、来なさい!)
右の拳、左の掌底、続いて回し蹴り。繰り出される連撃の悉くを捌く。
(動きが先程までより明らかに鈍い……!)
だが、気迫は比にならない。一撃一撃が、こちらを刈り取ろうという意思に満ちている。その気迫が、私の高揚と剣技を更に加速させる。
あの捉えどころのない術者が、なんの策もなく突撃してくるとは思えないがーーー
「貴方の力、ぶつけて来なさい!」以上です。そろそろネタも尽きて来たので、決着で大丈夫です。
>>144
そして時間は少々まき戻る。
◆◆◆
ルーカス・ソーラァイトは思考する。
(なんだ?何かがおかしいぞ?どうなってるんだ?)
暗示を朽崎にかけた。それはいい。あとは次の攻撃の為の準備をしつつ警戒するだけなのだから。だが、その後がおかしい。姿を現し(無駄だと悟ったか?)胡坐になって何事か考え始めた。いや、そこまでも大丈夫なのだ。それからしばらくすると、頭(いや、全身からか?)から煙が出てきたのだ。漫画じゃあないのだ。おかしいとしか言いようが無い。
(一体なんだ?なにが起こってる!?)
「…ウッ!?ゲホ、ガハ、オエェェ……ッ!?」
悪寒と吐き気などによって、膝をつく。
(なん、だ、コレ?毒?いや、それだけじゃない……っ。呪詛が混じってるっ!いや、ともかく解呪wo
「ウゴエェァァッ!?アグ、ゲグオォォ……ッ!」
口から大量に吐血、そして息苦しさを感じ、頭に激痛が走る。
「な、にが…ぁ」
朽崎の方へと顔を向ける。体の間接全部が逆に剃ったような痛みに襲われる。すると朽崎は……>>145
「ジィーリリリリリイリリンーー、リリrン」
呆けたような表情で、ナニカを言っている。その瞳に生物的な光は感じられない。いつの間にか、持っていた武装一式も消失している。そして全身に亀裂が走り、血を噴き出した。
自分にも降りかかる。全身が動かなくなる。視界がボヤけ、多分、歯が何本か抜けた。生爪も剥がれていく。そしてさらに痛みが酷くなる。魔術行使をしようにも集中すらできず、魔術回路を呪いが蝕み、遠慮も無く、容赦も無く犯していく。
「ジーリリッリリリリインイリリん。リリrン。リリッリンッリン」
また、だ。今度はなんだ、何が来る……!?
「カヒュッ!?ヒューッ!ヒューッ……ッ!」
い、きぃがぁ、できない……っ。肌の所々が”ベロリ”と捲れ、腐っていく。そして容赦なく『次』が来る。
「LOCK ON しました」>>146
機械のような肉声の後、外套や武装が消失し、簡素な衣服だけとなった朽崎の全身が膨張し、歪な変形をしながらコチラに向かってきた。そして僕の全身を覆うと同時、破れた肌から数えるのもウンザリする程大量に溢れてきた様々に醜悪な蟲が僕の全身に纏わりつき、噛みつき、肉に潜り込み、暴れだす。意識が飛、び、そう、だ。いや、とっくに痛みの量によって気絶すらできないのだろうか。目が霞む。そして全身に新たな痛みが襲う。動けない。微かに見えたのは朽崎の肉が弾丸となり、自分を床に縫い付けた光景だ。そして、自分を覆う死肉のドームが無くなり、そして
爆発。
ルーカス・ソーラァイトのいた廃ビル(20階建て。全長約75m)は巨大な爆音と同時に跡形も無く吹き飛び、消失する。ルーカス・ソーラァイトは朦朧とした意識で、撒き散らされた爆音、爆炎、絶大な呪詛、凶悪な猛毒と共に、自分が地上に向かってグルグルと、真っ逆様に墜ちていくのを知覚した。「……言いますわね。ええ、ムッシュ・リンドウがとても素敵なナイト様だったのですもの。妬けてしまいますわ」
……その笑みは、一体何を勘違いしたものか。竜胆に向かって嫋やかに微笑む彼女の姿は命を賭した騎士を労る姫のよう。かといって「完全な姫」にはなりきれていないような、まだ少女であるような。
「……俺が騎士(ナイト)?…守れた……守れた……そっか、俺は初梅を守れたのか…っ〜よかったぁぁぁ!!」
ポカン、とした顔を浮かべ、ぶつぶつと「守れた」を繰り返し、最後には満面の笑みで初梅に抱き着く。
「……鬱陶しい、いい加減離れんかいっ!」
鳩尾を肘打ちして床に転がす。持ち前の頑丈さで簡単に起き上がるけど離れたから別にいい。「まあ、酷いんですのね。……でも、微笑ましいわ。お二人共、本当に仲のよろしい事」
「そうでもないわよ。私は別にこいつと特別仲が良かった訳じゃないし。……こいつがこんなに御執心な理由は知らないわ」
これは本心。私とコイツに接点はあまりない。去年までのクラスは違うし、話したことも殆どない。強いて言えば、学校内でトップの頭脳(コイツ)と次席(私)という程度。
一体、何があったというのか──
「───最初から言ってるじゃないか、俺はお前を守るために参加したって」
最初からずっと、俺はその一心しかないよって。ずっと言ってた筈なんだけど。勿論、大事な人達を守る力が欲しい!っていうのもあるけど、そうでなくても参加はしてた。
「だからねぇ……アンタのそれが─」
『お二人さん、話の所悪いが構えよ』
突如後ろからくるキャスターにマスターが二人とも身体を掴まれて連れて行かれる。突然のことでマスターも対応出来ていないのが丸わかりだが知ったことかとギアをあげる。
「そうそう、そこなセイバーのマスターよ。…セイバーの下に駆けつけることをお勧めするぞ」
「──!?あなた、それはいったい」
「さてのぉ?だかそうさな、その事についてはまた会った時にでも話そうではないか!」掌底、踵落とし、肘打ち、その全てが弾かれる。体内を燃やされたこの身体では、それも当然というべきである。そして、その身体で全力が出せる訳がなく。
七合打ち合った後、キャスターの身体の負担が爆発し、大きな隙ができる。そのあまりにも『自然な』隙をセイバーが逃す訳などない。
「隙を見せたな、術者!」
セイバーが踏み込み、全力の突きを繰り出す。その剣はキャスターの身体をゼリーのようにいとも簡単に裂き、キャスターの身体に致命傷を与えた。「がぁっ、ぐひぁっ」
情けない、惨めさを感じさせる断末魔を上げながらキャスターの命の灯火は消える。やはり、最優の騎士に挑んでいいわけがなかったのだ。そう、視聴者は思うことだろう。
───違和感を覚え続けているのは、そのとどめを刺したセイバー本人。そして、気付く。
「っ……この身体は偽物、ですか」
そう、サーヴァントの身体はエーテルだ。死んだのならばその身体は消滅しなければならない。
───なのに、消滅なんてしていない。
「出てきなさい、術者!怖気ついたのですか!?先程までの威勢はどうしたというのか!」
『威勢も何も、俺は最初から逃げる気だぞ?……それと、貴様も一介の戦乙女であろう。警戒は何事にもはらっておけ』
死体と、血に濡れた魔剣から──正確に言えば、血から黒々としたものが漏れ出し───
意識を向けた時には既に遅く、大量の呪がセイバーにまとわりつくのに時間はかからなかった。「おい!ビル崩れたぞ!! カメラはどうなった!」
「ダメだ消え……、いや、残ってるのもあるし他のも来たみたいだ!」
どこかで誰かが見ている。
/
「ひどい……、これガレキの山じゃない」
「あっ! あれ写ってるのライダーのマスターじゃない!?」
「ホントだ、……っ、グロイ…………」
誰かが見ている。
/
「あらルーくん、瀕死じゃないのよ情け無い」
「あぁ……、隠匿……、もうめちゃくちゃだ」
「兄さん、そんなこと言ったってルーくんに参加券を斡旋したの兄さんじゃない」
「そうだそうだ、ウル姉の言う通りだぞロー兄」
「…………まあでも大丈夫だろう。そういえばそうだなギルバート。 オレたちが見ている」
「そうねぇ」
「いだだだだだだだ姉さんごめんってウル姉って呼んだオレが悪かっだだだだだだいいだいいだいだい!!!」
見ている。>>153
見るという行動には意味がある。
この聖杯戦争における最大の急展開を前にして、空を逃すまいと番組運営はカメラを増員し視聴者は画面に食い入って番組を見ている。
ことここに至って彼の真価を知る者は気付くだろう。
「ああ、我が孫ながら情け無い。 だが、そういうことか」
「……ああ、だからテレビなのねソールァイト」
「同じ天体科の人間として君の勝利を信じよう」
「「「なるほど、確かにこの状況であれば彼は万能を超えて全能とまで言えるかもしれない」」」危なかった、と言うべきか。あの瞬間、あの隙は紛れもなく偶然起きたものだ。わざと体勢を崩したものなどではない。
……正しくは『それを待っていた』と言うべきだろうか。
もしあのセイバーに逃げる気だと看破されては面倒くさい。だからこそ、『全力で勝ちに行く自分』を演出した。あの隙も、わざと作っては警戒されてしまう恐れを考えてだ。
そして、思ったようにセイバーはこちらを攻撃してくれた。
一つ、言っておこう。セイバーがキャスターの身体を突き刺したのは事実だ。ただ最後まで刺しきることができなかったというだけ。
完全に刃が通る前に、同位相に自分の幻を作り出したというだけ。
勿論、幻術というものはそんなものは作り出せない。しかも、キャスターはあの花の魔術師や狂気の女魔術師程の幻術は行使できない。
……その奇跡を叶えるのが、彼の生前の権能であり、今の宝具であるのだが。
後はほら、幻術を現実にすると同時に後ろに飛び退けばいい。自分の姿は瞬時に隠蔽したし、セイバーはそれに気付かずその偽物(本物)を刺した。さらに言えば、あれは自分の一部だ。
キャスターの有するスキルである「変化」は何かの物質を別の物質へと変化して見せかけることができる。自分、自分以外、魔力……
あれには自分の肉片の「変化」と幻術を組み合わせ、わざと不完全に変化(現実化)させたものだ。だからこそ、あれは独立した「隠神刑部の肉体」ではなく、「術を組んだ隠神刑部の身体」なだけである。
そもそも、本当に「独立した肉体」であればあの肉体は早々に消滅して然るべきである。そうでないならそういうことに帰結するだろう。
この長い前置きは置いておき、次はセイバーの身に起きた事柄を説明していこう。まず、東洋での呪術のバリエーション、というか主流の一つに「自らの肉体を基に組み替えるプログラム」が存在する。西洋の魔術と違い、己の肉体を基とする術なので対魔力などに阻害はされない。
勿論、そうではないメカニズムの呪詛をかける呪術もあるだろうし似た系統である「黒魔術」だって呪詛をかけるとはいえ西洋魔術だ。
だがキャスターの行使する「妖術」とは神通力、その他様々な神代から伝わり続ける日本特有の呪術を組み込んだもの。そしてそれらは「肉体を基とする呪術」である。
ここまで言えばお分かりいただけただろう。
───彼は自分の肉体であるアレと、剣についた血(自分の肉体)を使い、呪術を引き起こした。
どちらも自分の肉体であることに変わりないし、そもそも自らを傷つけたり自死を行うことで強烈な呪詛を相手にかける呪術なども存在するのだから当然、というべきだろうか?
「かふっ、づっ……代償はあるがな」
1を代償に10を生む等価交換のガン無視。それが儂の力の一端であるが、何事にも限度がある。
犠牲にした肉体が大きい。マスターの供給する魔力が有り得ない規模の魔力であるが故に、この戦争中に二度と治らない訳ではないが完治するまでに其れ相応の時間は必要とする、か。
さて、あちらを迎えに行かねばなぁ。……負けてなど、いられるものか。>>133
フランス特異点更新します。
「どうも、とんでもないことになったようだ」
過不足ない表現だ、と、藤丸立香は思った。
華麗なる太陽王(ロワ・ソレイユ)の気勢に緊張は光の速さで立香の精神回路をみたした。
だからこそ、ルイの決闘の申し込みも咄嗟に言葉が出て来なかった。半拍、固まったあと咄嗟に左右に控える厩戸皇子と寺田宗有を見た。
厩戸皇子は内心を読めなかったが、寺田は不快そうに顔を顰めている。彼にとってルイの芝居がかった一挙手一投足が不快なのだろう。ルイの王者としての威風は権力と権威に高い価値をあたえるタイプの人間ならば、ルイを視界に入れた瞬間、肉体も精神も委縮させてしまうであろう。しかし、寺田がルイから感じたものは、虚喝(こけおどし)の厚化粧であった。それは寺田の体内に生理的な嫌悪感を生み出し、嫌悪感は殺意へと生化学反応を生じて変化したのだった。
太陽王は剣豪の殺意を微風のように受け流し、話を進め出す。
「カルデアのマスターよ、猶予を与えよう。我(フランス)はこれから歌劇(オペラ)を鑑賞するのでそれまでに考えておくがよい。諸君らをもてなすため酒場に準備をさせてある。そこで話し合うとよい。その後に我(フランス)のもとに来て返答を聞かせよ」
ルイは自分がいる場所を告げると立香たちに背を向けて歩き出した。厩戸皇子や寺田ならば一足飛びで斬りつけられる距離であるのに豪胆な態度であった。彼がこれら向かう先はリヨンにある歌劇場。これから鑑賞しようとしているのはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した『ドン・ジョヴァンニ』。>>158
太陽王が去ると身なりの良い格好をした壮年の男が立香たちの前に現れ、酒場に彼らを案内する。
酒場についた立香たちは手頃な円卓を囲み、樽を椅子に腰を下ろした。
女給はエールを配り出す。
「俺は果実をしぼった水があれば、そっちでお願いします」
エール三つ、果実水一つ。立香の注文に女給はにこやかに応じて厨房へ向かっていく。
「あの、妙なことになっちゃったね……」
「まさか、決闘をふっかけた後に歌劇鑑賞のために去ってくるとは思わなかったよ」
厩戸皇子は水晶を彫り込んだような美貌に無機質の微笑をたたえている。
「スカタクはどう思っているんだ?」
「ん? いいじゃないか。楽しそうだ。この美女を巡る決闘(デュエル)! 心が躍るなぁ藤丸ぅぅぅっ!」
芸術神(ミューズ)の息を吹き込んだ黄金の絵具で描かれたような、美貌の女は実に愉しげに笑う。絢爛たる太陽王に見初められ、立香が決闘を申し込まれたこの状況が愉快で仕方がないのだ。
二人の騎士がその身柄を巡って争われる姫君という役割(ロール)に興じるつもりなのだろう。>>159
「二人の意見は?」
「儂はあの橙武者の決闘は受けたいと思うておる」
寺田が言う橙武者とはルイ=デュードネのことであろう。
「あの増上慢は気に喰わん。気に喰わんが、歯応えのありそうな敵手ではある。さればよ、彼奴を斬りたいと思うのは人情であろう。気に喰わんが強力な武人、これを斬ってはならぬ理由など奈辺にもありはせんわ」
寺田の笑いには、高貴な食人虎(ひとくいとら)といった危険な風格と迫力がある。
立香は首筋から背筋にかけて、見えざる手が冷たくはいまわるのを感じた。立香は今まで口を開かない厩戸皇子を見る。
「太子様はどう思いますか? 例えばこの決闘を断ったらどうなるでしょう。……スカタクを奪いに襲ってくるでしょうか?」
「さあて、私もあの短い問答でかの王の人柄を看破したとは言い難いが……かの王にもメンツが懸かっている故に決闘を断られても後でこやつを奪おうと考えるかもしれんな」
「おお、儂奪われてしまうか! 大変だな!」
「奪うって、それじゃあ決闘の意味がないじゃないか」
「言ったであろう、メンツが懸かっていると。陰に潜み盗むのは盗賊。しかし堂々と奪うならばそれは貴族の掠奪だ。結果は同じであっても過程が異なればその結果に付帯する意味は異なる。……卿の時代にはそぐわぬ考えであるかもしれんが、あの太陽王やこのリヨンに生きる者にとっては奪取には正統性があることなのだ」
「じゃあ、俺らがスタコラサッサと逃げても、太陽王に追われながら王国軍とも戦わないといけなくなる可能性もあるってこと?」
「無論、あり得ることだろう。このリヨンとて、王国軍の監視がないとは思えん。我等はアサシンのごとく忍びながらここまで来たわけではない。既に王国軍の耳目は我等がリヨンにいることを捉えているだろう」
厩戸皇子が形のよい指で前髪をかき上げる。>>160
「革命軍の助力を求めるのも今は難しい。マーシャルどもによって活動の中心に使っていた拠点が潰され、司令官たるロベスピエールも潜伏して行方知れず。これでは軍を動かすのも難しい」
寺田が気難しげに腕を組んだ。
「革命軍の軍事顧問をしているライダーならば強力な助けにはなるが、彼も個別で動き活動している上、足取りを掴めないように立ち回っているから連絡をして協同するにしても時間がかかるだろう」
決闘を断れば革命軍やいずれにも属さぬ野良のサーヴァントの助力も受けられないまま、あの絢爛たる太陽王を敵に回しつつ、王国軍の名だたる英霊たちと連戦し、これを連破しなくてはならない。それは尋常ならぬ苦労をしいられることは疑いがなかった。ラ・シャリテで遭遇した怪異なる少女・玉兎やそれよりも強大なる英霊たちが王国軍には所属しており、それらと戦う想像しただけで、いいかげん疲労を感じてしまう立香である。
「できれば強い敵は、なるべく避けて通りたいな。強敵を遭遇してしまえば全体の効率が悪くなる」
立香はそう考えた。彼の精神にはマゾヒズムやナルシシズムの元素が水準以下しか存在していなかったから、“強い敵と戦ってこそ意義と成長がある”などという、戦争とスポーツを混同するような観念に毒されてはいなかった。要するに立香は勝たねばならず、そしてどうせなら効率的―――はっきり言えば、なるべく楽に―――勝ちたかったのである。強大極まる英霊たちと戦うことになれば、たとえ最終的に勝つにせよ、いちじるしくエネルギーと時間を消耗することは明白であった。
「決闘、受けましょう。セイバーも付き合ってくれるよね?」
「ああ、卿がやると言うなら否応もあるまい。出来る範囲で協力しよう」
厩戸皇子がそう言って微笑むと、優美なほど洗練された動作で立ち上がった。
カルデアの意思決定はなされた。これよりルイの待つ歌劇場へ向かう。>>161
「悪かったな、歌劇を途中で抜け出すのは我(フランス)の流儀(スタイル)に反しているのでな」
言葉とは裏腹にまったく悪びれていないルイ。答えを出した立香たちはルイのいる歌劇場に向かえば、彼の従者に通せんぼを喰らったのだった。
寺田は斬り込むかと提案したがそれは立香と厩戸皇子が止めて、歌劇が終わるまで別室で待機させられていた。リヨンに来てからは相手のペースに乗せられてばかりだな、と立香は思う。隣で従者から容易された洋書を読んで寛いている厩戸皇子が羨ましい。いつも悠揚迫らざる物腰を維持できるのは、見ていて頼もしい格好良く見える。こういう在り方に憧れるところがあった。
寺田は葡萄酒(ヴィーノ)を呷りだして、立香はスカタクと雑談をして時間を潰して過ごした。
そして歌劇が終わり、ルイが立香たちのいる部屋へ入って来て、先のような謝罪の言葉を述べたのである。
「それで、カルデアのマスターよ。答えは出たのだな」
「ええ、まあなんとか」
機智に富んだ返答を考えつかなかったので、立香は平凡にそう答えた。
「決闘をお受けします」
立香の答えを訊くとルイの表情は明るくなった。王としてよりも決闘に燃える血気盛んな戦士の笑顔だった。
「そうか。さっそく準備をさせよう」
ルイが従者たちに指示を出し始めたとき、遠くから獣の雄叫びが聞こえてきた。
「なんだ……?」
立香が胡乱そうに呟くと、スカタクが彼の袖を摘まんで引っ張る。
「サーヴァントがこっちに近づいているようだ。それに、月棲獣の気配が近づいてくる。それも幾つもだ! なあおい、藤丸。ちょっと行って軽く皆殺.しにしてきていいか?」
スカタクの紅玉のごとき瞳に超新星(スーパー・ノバ)の閃光をはしらせた。今すぐにでも飛び出して行きたいといった風情だ。
立香としては許諾したいのだが、彼女をリヨンから出ることをルイが許すかわからなかったがルイは鷹揚に頷いた。
「我はお嬢さん(マドモアゼル)を捕える檻は持ってはおらんよ。行ってきなさい」
「えっと、まあ、無理しないでくださいね」第一回SS、投稿します
>>164
何が起こった。
今まさに、遠方で起きた惨状を絶句して見上げる。
ようやく森を抜け、さあここからどうやってゲルト達と合流しようかと考えていた矢先。一キロ程先にあった高層ビルが、突如として爆発した。
これがただの爆発であれば、俺だって驚きこそすれ動揺はしない。
問題はその規模だ。
手榴弾一つ二つ程度の爆発ではない。ビルの屋上、どころかビルそのものが丸ごと吹き飛び崩壊していた。
(サーヴァントの攻撃!? いやでも、ほとんどの英霊はこっちに集中してる筈……!)
衝撃波で転んだまま、起き上がる事も忘れて呆然とする。
他のマスターからすればさぞ狙いやすい状況だっただろうけど、幸いな事に手を出してくる者はいなかった。
だが――。
「冗談、だろ……?」
声が震える。この大会に参加して以来、魔術師やサーヴァントがどれ程規格外で常識外れである事か。理解していたつもりだった。
理解していた、つもりに過ぎなかった。
続く>>165
(無茶苦茶だ……あんなの相手に、どう戦えっていうんだ……)
手に持った弓が軽い。重量の問題ではなく、その頼りなさに今更気づいたから。
あの爆発がサーヴァントの仕業なのか、それとも参加マスターの仕業なのかは分からない。
ただ一つだけ確かなのは、どちらの所業にせよこちらに抗う術は絶無に等しいだろうという事だった。
「――っ!」
両頬を強く引っ叩く。弱気を振り切るように、こみ上げる絶望から目をそらすように。強く、強く叩きつける。
その痛みでようやく冷静さが僅かばかり戻り、立ち上がる事ができた。
(とにかく、まずは移動だ。後の事はまた後で考える。今はゲルトと合流するか、それかどこかに隠れていないと)
状況は混沌の一途を辿り、どうなるかまるで予想もつかない。
それでも、今は立ち止まっていられる状況ではない事だけを理解して――俺は、戦場から離れるように歩いて行った。
とりあえずここまで
この後はゲルト陣営さんやルーカス陣営さんと相談しつつ、進めていきたいと思います投下します。途中から百合描写注意です。
>>157
「呪詛……!」
魔剣から漏れ出した呪が纏わりつき、全身に禍々しい紋様を浮かばせる。途端、全力疾走をした後のような疲労感と高熱に浮かされたような不快さが私を苛み始めた。
「く……あ……」
身体がふらつき、たまらず剣を支えに膝をつく。呼吸が荒くなり、指を動かすことすら億劫になる。全身に重りをつけられたようだ。
更に、
『コロシタイ、コロシタイ』
『アツイ、アツイ』
『チガ、チガホシイ』
脳裏に響いていた魔剣の声が勢いを増していく。
(術者の呪詛と……共鳴した……?)
『ホシイ……ホシイ……!』
『コロシタインダロウ……?』
「そんな……こと……ありません」
響く声に反抗する。この声に身を任せて仕舞えばどうなるかは、身を以て知っている。
しかし直後、疲労だけでなく頭痛もし始めた。頭痛は段々と酷くなり、声と重なり頭が割れそうな苦痛へと変わって行く。
「くぅ……あぁ……」>>168
苦悶の声を抑えられない。僅かでも吐き出していないと、意識が途切れてしまいそうだ。
その時、
『のう、戦乙女。ワシは言ったな。この剣に、お前は耐えられるかと』
地の底から響くような低音の声。
その声の主は知っている。しかし、"今聞こえる筈は無い"。
(これも……共鳴のせい……?)
『そうやも知れぬ。だが、何故ワシが目覚めたのかはどうでも良い。ワシが現れた……それが何を意味するかは忘れておるまい?』
(ええ……覚えて、いますとも……!)
頭痛や不快感、怠さの中、気丈さを忘れず言い返す。すると声はさも可笑しげにク、と喉を鳴らした。
『では、始めるとしようか……どれ、此度はこれにしてやろう……』
そう告げられた後、脳裏に映像が流れ出す。
屈強な男性の背中。その人物は私と同じ魔剣を持ち、全身を血で濡らしていた。
男は野蛮な笑みと高らかな哄笑を挙げながら、ただただ剣を振るう。振るった先にいるのは人間。赤い液体を身体から噴出させて倒れ伏す。
そんな光景が二度、三度、四度、五度ーーー数えるのを止めたくなる程の回数、そんなことが続く。その後に残るのは、赤に塗れた人。人。人人人ーーーそしてその中心の、魔剣の男(さつりくしゃ)。
男へ向けて、誰かが手を伸ばす。しかし、その手は決して届かない。そして"私"は、絶望する。その細く、皺くちゃの、弱々しい腕に。
その、伸ばした腕の持ち主はーーー
【オ『マ「エ(ダ】
〜>>169
謎のサーヴァントからの"報せ"を受け、先程まで彼らが戦闘していたと思しき場所へと駆ける。そして、目的の人物を見つけた。
「セイバー!」
彼女は地に突き刺した剣に身体を預け、膝をついていた。全身には黒い紋様が浮かび、苦しげな呼吸を繰り返している。
「セイバー、何がありましたの!」
彼女の傍に駆け寄り、問いかける。彼女の瞼は閉じ、苦しさのせいか涙を流していた。
その瞼が僅かに開き、虚ろな目でわたくしを見る。
「マ、マスター……?」
それだけを言うので精一杯と思える声。
「いえ、無理に答えなくて大丈夫ですわ」
言いながらセイバーに触れ、深呼吸。
「"我は水。水は浸透し、赤き水流となって其方を巡る"」
解析の魔術を用い、彼女にどんな異常が起きているのかを調べていく。
(この紋様は、東洋呪術を主体にしたものですわね。効果はなかなか大きいけれどーーー解けない物ではない)
ただそれには、セイバーの協力と、わたくし自身のちょっとした覚悟がいる。
『セイバー、念話なら話せますの?』
『すこし、なら……』
『では、聞くだけで良いですわ。今からこの術を解きます。わたくしの右手を触れさせておきますから、その感触に出来るだけ集中してくださいな』
『はい……ですが、気をつけて……。魔剣の呪いが、少し漏れ出ています……』>>170
※以下百合描写あり
『ええ、ご忠告ありがとう。ちょっとびっくりするかも知れないけれど、抵抗はしないで』
右手を触れたまま、立ち位置を少し変える。彼女の顔を正面から見れる位置に。
もう一度深呼吸。集中する為でもあるけれど、自分の中の迷いを払うための物でもある。
(……覚悟はできました。行きますわよ)
そしてわたくしは、彼女にキスをした。
『ます、たー……?』
『深くは聞かないで。わたくしに身を任せてください』
柔らかな唇の感触を数秒確かめ、舌でセイバーの閉じた歯をノックする。意図を汲んでくれたらしいセイバーは、"来て"という風に口を開く。僅かにゆっくりだったのはきっと、身体の不調以外の要因もあるのでしょう。
自分の顔が熱くなっているのが分かる。途轍もなく恥ずかしいけれど、セイバーの苦しげな顔を見てそんな事は言っていられない。
内心で彼女に謝りながら、彼女と舌を絡ませ合う。くちゅ、という音が鳴るたびに動揺しそうになる自分を必死に抑える。>>171
舌と舌が絡む。段々と照れや動揺を忘れ、お互いが一つになるような錯覚を覚える。ふと、わたくしは貴女。貴女はわたくし、という言葉が浮かんだ。
暫く。
彼女と唇を離したわたくしは、息を止めた反動で荒くなった呼吸を整えながら、セイバーに触れた右手に意識を集中させる。
(水が浸透し、流れるイメージ……)
紙に水を垂らし、広がる光景を頭に浮かべる。同時に右手から彼女へ魔力を流す。すると、黒い声が脳裏に響き始めた。
(……!精神的な呪詛もありましたのね……!)
コロシタイ、ホシイ、などと連ねる声に気圧されないよう気を引き締め、彼女を治療する。
絡まった糸を解くように、机にできた汚れを払うように。
ただし手つきは優しく、柔らかく。
そして、どれくらいが経っただろうか。遂に治療が終わる。
「終わりましたわよ、セイバー」
彼女へ優しく話しかける。全身にあった紋様は消え去り、表情も柔らかくなった。途中から閉じていた瞼を開き、活力の戻った綺麗な瞳がわたくしを見つめる。
「マスター、助かりました」
「いいえ、当然のことですわ」
答えるが、ほんの少し気まずさがあった。>>172
「その……ごめんなさいね。いきなりキスなんて」
「気にしませんよ、必要な事だったのですから。それにーーー」
セイバーはそこで言葉を区切り、こう続けた。
「美味しかったですよ、マスターの唇。マスターは情熱的ですね」
同性でもクラっときてしまうような笑顔で爆弾を投げてきた。
「ち、違いますわよ!わたくしは別にき、キスをしたくてしたわけでは……その、そう!人工呼吸をしただけですわよ!」
「それでは、私とのキスは嫌でしたか……?それは少し、傷つきます……」
「い、いいえ!そんな訳でもありませんわ!えーっと、だから……」
そこでセイバーがカラコロと笑った。どうやらからかわれたらしい。
「いえ、こちらこそごめんなさい。マスターは必死に治療してくれたのに、からかってしまって。あまり気にしないでくださいというのを伝えたかったんです。それではーーー」
言って、セイバーは立ち上がり頭を下げた。
「貴女に斯様なことをさせてしまったこの身、いくら恥じても足りませぬ。故にこれよりの働きを持って、せめてもの償いとしたく思います」
態度を真面目な物へと変えてそう語る。
「ええ、よろしくお願いしますわ、セイバー。期待していますわよ」
そうして詳しい話は拠点へ帰ってからと話を纏め、その場を去った。
〜了〜>>163
フランス特異点、リュカオンカチコミパート投稿します。
バーサーカーは疾風の如き勢いで、大地を蹴散らし疾走する。その爪牙で蹂躙すべき者を目掛けて、黒い殺意を渦巻かせながら。
ヴェルサイユ宮殿から駆け出したのは、王国軍に所属するバーサーカー。その姿は灰色の狼であった。ただの狼ではない人狼だ。背中を丸めた前傾姿勢、殺意に染まり炯々と光る瞳など、魔獣にも見える異形であった。
その真名はリュカオン。暴君と伝わるアルカディアの王である。人肉を神へ捧げてそれに怒った神からの神罰によって狼へ姿を変えられた伝承を持つ反英霊である。
彼の人狼の姿も宝具『堕天変生・覇獣犲狼(リュカイオス・ディエスイレ)』によって変じた姿である。人狼伝承の原典という説もある彼だからこその宝具である。
そしてそのリュカオンの後背を追って走る魑魅魍魎たち。堕天のカリスマによって玉兎から支配権を奪取した月棲獣たち、他にも軍馬や何も牽いていない荷馬車だった。それらは鎧甲、衝角、刃で武装していた。「地上を疾走する道具」にバーサーカーをリーダーと崇める従う意思を植え付けて擬似宝具にして、軍勢を指揮してるのだ。
―――臭うぞ、臭う!
―――忌まわしき神気だ!
自分を獣へ変えた神への怒りから、リュカオンはその爪牙で神を八つ裂きにせねば気が済まない。彼奴等の頭蓋を踏みにじり、魂を貶めねばと「神を滅ぼしたい」という渇望によって動き続けている。>>174
「■■■■■■■■■■■■ッ!!」
怨念に穢れた咆哮で大気を震わせた。
自らの渇望に従い、このバーサーカーは忌まわしい気配を持つ者を蹂躙するために、リヨンへ向かうのであった。
そんな百鬼夜行の行手には、多くの死が満ちていた。この王国軍の行軍によって無機物と化した人間の肉体の群だ。このまま時が過ぎれば肉体は朽ち、生物の糧となり生々流転の自然の理に織り込まれることだろう。バーサーカーが屍の傍を過ぎる。
「■■■■■■■■■■■■ッ!!」
狂獣が咆哮した。禍々しいその叫びに応じるかのように、多くの屍が震え、集まり醜悪な怪魔へ変じて蟲の肢のようになった腕を使い走り出す。化生へ変じた屍たちは一〇〇を超えていた。リュカオンが持つ堕天のカリスマは魔性を引き寄せそれを統べる。狂える反英霊に引き寄せられた悪霊どもが屍を依代とした魔物になっているのだ。
―――こいつらは兵だ。使い潰しても変えの利く消耗品だ。
狂気に染まっていても、兵となる有象無象を利用して標的を滅ぼそうと考える狡猾さがバーサーカーにはあった。
リヨンへの距離が一キロを切ったころ、神気の臭いが濃くなることをバーサーカーの鋭敏な嗅覚は感じ取った。>>175
バーサーカーの澱んだ怨念を湛える双眸が、そのとき紅蓮のごとっく凄烈に燃え上がった。
今まさに忌々しき神性を持つ者を八つ裂きにしてくれようと、バーサーカーが猛る瞬間、不意にあらぬ方角から飛来した輝鋼の閃きがバーサーカーを直撃した。
飛来する十三本もの紅槍をバーサーカーは右腕を無造作に振るい鉤爪で槍を弾き振り払う。ただ振るわれるだけで、その右腕は近代銃火器の一斉射撃でも為しえない程の破壊力を有していた。
弾かれ破砕された紅槍が飛散し、空中で紅蓮の大輪に狂い咲かせた。その破片と余波を浴びた化生とバーサーカーの宝具と化した荷馬車や軍馬は為す術もなく吹き飛ばされた。
バーサーカーのもとに現れた女。闇色の長い黒髪が白い卵型の顔の三方を飾っている。紅玉のような瞳、うす蒼い翳を落す睫毛、蝋細工のような鼻、柔らかな花弁を合わせたような唇の美貌の女。身体にまとわりついた夜色の装束を身に纏っている。
「■■■■■■■■■■■■ッ!!」
この女から感じる気配は! 彼が知るものとは異なる。しかし、彼が憎むそれと同質のもの――
「わははは、お待ちかねのスカタクだぞ! バカオロカども!!」
美女は仁王立ちでリュカオンを迎えていた。聖杯ーーーあらゆる願いを叶える願望機。
サーヴァントーーー過去の英雄偉人を"英霊"として現代に召喚し、自らと契約させる。
聖杯戦争ーーー聖杯を手に入れるべく、サーヴァントを最後の一騎になるまで争わせる戦い。
そして今、風変わりな聖杯戦争が"幕を開ける"。
某所に存在する円形の大劇場。
その内部は観客と、彼らの放つ熱を帯びた騒めきで埋め尽くされている。ある者は隣の者と談笑し、ある者は手元のパンフレットを読み耽る。またある者は、手元にある電子端末にご執心だ。
その状態がどれ程の時間続いただろうか。突如、意識の向く先を強制的に変えさせる音が響き渡る。舞台用語で「本ベル」と呼ばれる、開始を知らせるブザーだ。
ブザーと共に明かりが落ち、観客達は中央のステージへと視線を向ける。先ほどの騒めきとは一転し、静寂が会場を支配する。そして何処からか、男性の声が会場に広がる。
『開演のベルが鳴りました。それでは、キャストの入場でございます』
直後、バン、という音と共に一つのスポットライトがステージを照らす。ライトの中心には、2つの人影。
「ーーー流るる雫、溢れる想い。全てを糧に空を目指す。『空色姫』、蒼木ルイ!さあ、共に空を目指しましょう!」
「主が為に剣を振るい、主と共に歩む者!サーヴァント・セイバー!貴女の涙を、私が掬う!」
瞬間、高らかに宣言する2人を、何筋もの青い光が照らす。
そしてライトが消え去り、離れた箇所にまた光が灯る。
「踊り詠ってひらひらり、彼方へ此方へ飛び廻る。勇み進むは剣の道。磨き咲かすは芸の道。橘家六代目、橘亜衣!我が道こそは、花道なり!」
「熱き想いの赤き薔薇、無垢なる想いの白き百合ーーー貴女と咲かすは、夢の花。サーヴァント・ランサー。共に行きます、花々しきイバラ道」
名乗る2人の周りに、大輪の花びらが散る。>>177
『役者は揃い、ベルは鳴った。さあ皆様存分に、言葉を交わし、想いをぶつけーーー競い合いましょう』
男の声が開幕を告げる。途端、高速でぶつかり合う二つの影。
一つは剣士、一つは槍兵。剣士が放つ爆発の如き斬撃に、己の四肢を斬らせていく。しかし次の瞬間には斬られた箇所が修復し、更には己が槍を突き込む。
「セイバー!」
ルイが声を飛ばす。いつのまにか、剣士達の周囲には大きな風船のような泡が展開されていた。剣士はすかさず、近くの泡へ飛び移る。泡の感触は硬く、それを足場にした剣士が加速して敵へ斬りかかる。どうやら加速の魔術が掛かっているようだ。
「あら、シャボン玉ですの?可愛らしい術を使いますのね、貴女のマスターは」
「余計な口を叩いている暇がありますか!」
槍兵は襲い来る連撃を時に躱し、時に身で受ける。
「ええ、だってーーー」
瞬間、漂っていた泡が破裂する。
「アイがなんとかしてくれますもの」
槍兵の視線の先には、刀を振り抜いた女の姿。
「『空波・疾風怒濤』。援護はしましたよ、ランサー」
「ご苦労様ですわ、アイ」
そう言い残して、槍兵は背中から翼を生やして宙に舞う。
「空中戦……!なるほど、吸血鬼というわけですのね。セイバー、わたくし達も行きますわよ」
「はい、マスター。『昇華・戦乙女』ーーーワルキューレ還元率80%」
途端、剣士の背にも光り輝く翼が出現する。そして、凄まじい加速で槍兵を追って空へ。そして空中では、剣士と槍兵による縦横無尽の攻防が繰り広げられる。
対して、地上では。>>178
「はぁっ!」
亜衣による重い踏み込みの一撃が、ルイを襲う。ルイはそれを光剣で防ぎ、どうにか受け流して距離を取る。
「貴女、やりますわね。けれどわたくしも、負けませんわよ!」
突如ルイが手にした光剣を宙に放る。すると、光剣がまるで意思を持ったように、独りでに斬りかかる。
「!」
一瞬戸惑うも、すぐに対応する亜衣。
しかし、
「はぁっ!」
どこから取り出したのか、鈍器の如き剣をルイが振るう。
「『神出鬼没』」
短距離移動の魔術で亜衣が剣の間合いから離れる。
「その華奢なら身体で、随分な得物を使うんですね」
「あら、魔術師に常識は通じませんわよ?それと、一気に決めさせていただきますわ」
ルイが指を鳴らす。
「『音響開始(ムズィーク)』!」
すると、ステージ内のみならず、観客席にまで響き渡る音楽。それは、ルイの纏う淑やかな雰囲気とは趣の異なるーーー
「あら、ロックですわね。この選曲、好きですわよ!」>>179
ルイが、先ほどより数段早い速度で大剣を振り回す。
ドラムやギターが騒がしく響き、ボーカルの熱が心に火を灯す。破壊的でありながら不思議な調和を感じさせるロックンロール。BGMに呼応するように、剣士と槍兵、亜衣とルイの攻防は激化する。
空中では、槍兵の放つ薔薇の棘や花びらが舞い、剣士の放つ術の氷が光を反射する。
地上では、ルイの大剣と亜衣の刀が火花を散らす。
実力伯仲の戦い。
照明と音楽に彩られ、彼女達の戦いは一つの芸術へ昇華されていく。観客達のボルテージも上がり続け、今やうっとりとしたため息を漏らす者もいる。
そして遂にーーー
キィィィン、と金属音が響く。
「負けて、しまいましたわね」
槍兵が負けを認める。
最後は、ルイが飛ばした泡で加速した剣士が競り勝った。
観客は大歓声を上げて結末を迎える。
そう、これが、『舞台型聖杯大会』ーーー通称、GLIT STAGE(煌めきの舞台)
各々が願いのために戦い、各々の想いを抱いて剣を取る。その熱意と神秘が観るものを魅了する、神秘の戦い。>>180
ある日の劇場。
この日も観客で埋め尽くされ、これから起こることを今か今かと待ち受けている。
GLIT STAGE開会式。
この日、第X会目の大会が行われるのだ。
本ベルが鳴る。会場が暗くなり、スポットライトがステージを照らし出した。
そして観客の目に留まる、何人かの人間。彼らは参加者(あなたたち)だ。
参加者達は各々の思いを胸に秘め、一点を見つめる。
突然、見つめられていた場所の床が開き、暗い穴を覗かせる。続いてエレベーターの如く、下から円盤が迫り上がる。
その円盤に乗っていたのはーーー
「レディース、エーンド、ジェントルメーン。ようこそお集まりくださいました。私はこの聖杯大会の主催者でございます。どうか気軽に『メガネさん』とお呼びください」
メガネだった。
メガネ、眼鏡。黒縁で、何の変哲も無い只のメガネ。メガネと言われれば真っ先に思いつきそうな、ザ・メガネ。人の姿はなく、ただそれだけが円盤に乗っていた。>>181
メガネは言葉を続ける。どこから声を出しているのかは分からない。
「此度もこの聖杯大会を開催できたこと、誠に嬉しく思います。ご覧いただく皆様には、今回も素晴らしいひと時を過ごせる事をお約束致します。
参加いただくキャストの皆様に於いては、どうかこの得難い体験を存分にお楽しみいただければと思います」
メガネさんはそこで言葉を切り、少しの間を置いて続ける。
「さて、これは毎度のように言っている事ではありますが、暫し私情の語りにお付き合いください。
私は、物語という物を愛しています。例え虚構であろうとも、そこで得た経験、キャラクター達の心の動き、現実ではなし得ないようなナニカーーーそれらは、決して無駄にはなりません。
そして私が特に愛するもの。それはーーー想いと想いのぶつかり合い!願いと願いのせめぎ合い!己の胸に灯る炎を剣に込め、言葉に込め、全てで相手と競い合う!その姿こそ、私はなによりも愛おしいィ!」
メガネさんが段々とヒートアップし、口調がやや崩れているが、これは最早名物だった。
「参加者の皆さまァ!そしてェ、観客の皆さまァ!この催しが続けられたのも、あなた方が私のこの想いに協力してくださったからに他なりマセェェン!せめてもの感謝の印としてェ、この大会で素晴らしい何かを、感じていただければと思いまァァーす!」
ゼェゼェという音と、直後の咳払いがどこからか聞こえる。そして、冷静さを取り戻したメガネさんが最後の宣誓をする。
「では、これよりGLIT STAGEをーーー開催します!」
〜控え室〜
スカートタイプのスーツに身を包んだ女性が、参加者達を前に話をする。
「開会式、お疲れ様でした。私は蒼木ユノと申します。主催者のメガネさんに代わり、皆さまの相談役として控えさせていただいております。以前はカウンセラーをしておりましたので、何か不安がある際なども、どうぞお伝えください。
さて、現在は13時。これより皆様、明日の上演時間まで自由行動とさせていただきます。お部屋の番号などは、開会式前に係の者がお伝えした通りでございます。それでは、GLIT STAGEをお楽しみください」以上です。
こんな感じで進めますよ、という例と共に開会式です。
ここからは、上演前にやることのある人はそれを済ませてください。対戦相手同士で大丈夫となったら、上演に、移ってください。
ルイvs亜衣は深い意味はありませんので、願いを奪われたりは考えなくて大丈夫です。あと、サーヴァントの召喚が必要な方はこの後召喚してください。
開会式中の事などを書いても大丈夫です。stage 投稿
>>186
だが彼らは驚愕した!ハンチング帽を外した筈の若者は消え、壮年の男が立っていった!おお見よ!服も黒いスーツへと変貌しているでは無いか!
その男は彼らに向かって仰々しくお辞儀をする、そして自己紹介を始めた
『どうも皆様今晩は!私は阪上尚鹿。ニパータちゃんの代理としてやってきました。これから宜しくお願いします!』
大袈裟にハキハキした声が響きつつ、ハンチング帽を拾うと今度は赤い扇情的なドレスを着た白人女性へと変貌する
そして彼女はこう投げかけた
『私たちは競争相手ではありますが、舞台という場である以上共演者とも言えましょう!そこで提案です。親睦を深める為にみんなで宴会を開きませんか?料理を食べてお互いの事をもっと知りませんか?』>>187
終わりです>>184
サーヴァントの召喚について訂正します。召喚のタイミングは任意で構いません。事前に召喚していた事にしても、ここで召喚した事にしても大丈夫です。ー暗闇の中、目の前には円形の大劇場が広がっている。背後にはその大劇場をグルリと囲む形で観客席があり、観客たちは思い思いに開幕の時を待っていた。
私ことヴィヴィアン・ビリジアンは観客から死角となっている舞台袖に控えている。いや、無為に時を伸ばしていると言った方が正しいだろう。
劇場スタッフからは私が壇上に上がったタイミングで開幕ブザーを鳴らすと聞かされいる。………つまり、この足を踏み出さない限り始まらないという事だ。
何を恐れる? 私は曲がりなりにも亜種聖杯戦争を生き残ったマスターだ。
否。本来は敗者として終わる筈が、勝者から栄誉を奪って逃げた簒奪者に過ぎない。
何を恐れる? 敗者だろうが簒奪者だろうが生き残り聖杯を手に入れたのは私だ。
否。その結果は何だ。何を手に入れた。
何を恐れる? この舞台型聖杯大会では命のやり取りは行われない。
否。だとしても傷付く可能性が少しでもあるというのなら……
何を恐れる?
「おぉ、お労しや御主人様。こんなに震えて……私が、私が傍におります」
やめろ。やめろ。そんな声で、そんな言葉で慰めるんじゃあない。
「やめろと言っているんだ!!」
後ろから身体を重ねていたメイドを振り払う。それはあまりにも呆気なく。
ーcont.ー「行くぞ」
「……宜しいのですか?」
「宜しいに決まっている。私は勝つ為に、望みを叶える為にここまで来たのだから」
じゃあ、その望みとは何だ?
何を恐れる?
壇上に一歩踏み出す。目敏いスタッフが開幕のブザーを鳴らす。
『開演のベルが鳴りました。それでは、キャストの入場でございます』
ステージの端から2、3mは進んだだろうか。スポットライトが私たちを照らす。ここは不思議だ。精神に作用する余程強力な術式でもあるのだろうか。気分が高揚し、普段の自分では考えられないような言葉が滔々と流れてしまう。
これがただの聖杯戦争ならばこんな茶番には付き合えないとなるが、これは聖杯大会……下賤の娯楽であることを求められる場。道化となって聖杯が手に入るならば、、構うものか。
「深遠、深淵、深緑の…綠の錬金術師! ヴィヴィアン・ビリジアン! 私が求めるのは、ただ、勝利のみ!!」
「舞台に上がった暗殺者。灯りに照らされ暗殺者。なんたる道化でありましょう? ですがですが、どうかお眼を離さぬように……サーヴァント・アサシン。 命など、刹那もあれば奪えるもの…」
マスターとサーヴァント、主人と従者、男と女、魔術師とホムンクルス、そして……複数の役柄を備えた演者が舞台に上がった。
……何を恐れる?
私は、これから先、私の人生という運命に立ち塞がるすべてを恐れている。ーpassー強烈な閃光!キャメロンは目が見えなくなり、狼狽えたところに飛んでくる三角根!
キャメロンは混乱により態勢を維持できない!>>192
撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!撲る!stage投稿します
神野幸長(かんの ゆきなが)。フリーランスの魔術使いで陸上自衛隊特殊作戦群に所属していた元一等陸尉である。均整の取れた機能性の高い長身、彫りの深い鋭角的な眉目が印象的な男である。かつては結婚をしていたが死別して以降は特定の女性はおらず、世界中を巡っている。
自分の愛する妻を―――生まれてくることがなかった子どもを殺められたことで「悪を根絶したい」という渇望を抱き、そのために力を身に着け復讐を果たし、それでもなお穢れた世を正したい、罪深い者どもを許せない、すべての悪を滅却し、善なる楽園を希う故に復讐者は悪の敵へと姿を変えた。
殴られ、撃たれ、切り刻まれ、殴り、撃って、切り刻む。血を流して血を浴びる。
「善ではない? 正義ではない? よろしい、ならば結構。俺は悪を喰らう悪となる」
生来の精神性、起源「無慙」が覚醒によって自我を鋼鉄にも勝る強固なものへと昇華させていた。恥も悔いもない一切抱かない無慙無愧。神野幸長とはそういう男だった。>>198
「……戦いの前に宴会とは、巫山戯た事を言う奴もいたものだ」
幸長が阪上からの招待を受け苦笑する。幸長の横を歩く男がいる。長身で、貴族的にすら思える美貌の青年で、金髪のさわやかな若者であった。
「宴会か、いいじゃないか。これが殺伐とした聖杯戦争ではなく一種の競技となった聖杯大会。ならばプレイヤー同士、親交を交えるのもいいことだ」
「アーチャー、お前が参加しただけだろう」
「まあ、そうだね。否定はしない」
幸長の視線にやや軽薄さの混じった微笑みで肩をすくめたのはアーチャー。
真名はエドワード黒太子(ブラックプリンス)。
中世イギリス王家が生んだ最高の軍事的天才にして、此度のGLIT STAGEのために幸長が召喚したサーヴァントである。
「手を取り合うつもりはないが、対戦相手の人となりを知るにはちょうど良い機会かもしれんな」
「そうだよ。これは敵を知る機会を得たと思えばいい。私も、このエドワードの武威を示す機会があるのは喜ばしい」>>199
「真名をみだりに明かすなよ? お前ならば真名の発覚が弱点を露呈することはないが……秘匿するに越したことはない」
真名が知られればそれで弱点がバレてしまう場合もある。しかし弱点となるものがなくとも、正体を知られれば行うだろう戦術、保有するであろう宝具やスキルの推量が可能になる。情報を出来るだけ秘匿しておくことは戦術的にも意義はあるのだ。
「は、は、は、は。わかっているさ。ここは尋常ならざるアーチャーがいると示すだけだよ」
荘厳な意匠の漆黒の鎧を纏っていたエドワードは鎧を編んでいた魔力を霧散させ、私服へ着替えていた。白シャツに黒のベスト、タイを締めた、上品ながらも着崩したプレッピースタイル。
これは召喚されて間もなく、幸長に頼んで購入してもらったものである。
幸長も戦闘服ではなく私服に着替えている。紺色のハイネックにブルーグレーのジャケットを着ていた。
「それにしても、真名を明かせないのは残念なことだよ。マスター、あの頃の僕らとフランスの大いくさを百年戦争と呼ぶんだろう? 正直、噂に訊くジャンヌ・ダルク嬢より自分の方があの戦争の大英雄と見なすべきだと思うけどね? フランス代表の大英雄とするにしてもデュ・ゲクランのほうが適任だと、個人的には思うのだがね。才覚や貢献度が天と地ほども違う」
「デュ・ゲクラン……フランス軍の元帥だったな。そういえばアーチャーとは同時代の軍人だったか」
デュ・ゲクラン。フランス軍元帥でエドワード黒太子と同時代を生きた軍人。フランスはブルターニュ生まれの騎士である。当時、エドワード黒太子やその父王を中心とするイギリスとの戦争で、フランスは圧倒的に劣勢だった。そのなかで若き仏王シャルル五世を支えて、ひとり気を吐いていた武将がデュ・ゲクランなのだ。
「ああ、好敵手というほどではなかったが、なかなかのいくさ上手だった。陽動と伏兵に長けていたよ。あれは見習うべき点が多い用兵巧者だ」>>200
エドワードの言葉を受けて、幸長は少し考えたようにして言葉を発する。
「たしかベルトラン・デュ・ゲクランは容姿に恵まれていなかったとか」
「え? ああ……まあ、ぶ男と言ってもよかったかな」
唐突に容姿の話題になり、エドワードは戸惑った。
「かなり太っていたよ。たしか……あだ名も豚だった」
「それならば仕方ない。大衆はそのような人物よりも、悲劇の乙女を愛でるものだろう。物語のなかでは、いくらでも美女だと脚色できるからな」
「マスターの意見は辛辣で、しかも的確だ」
歯に着せぬマスターのコメントに、エドワードは苦笑した。
そのままエドワードは歩調をゆるめ、幸長を先に行かせる。温柔な笑みを浮かべていた笑みを消してエドワードは隠れ嘆息する。
召喚され幾日が経たがマスターである幸長が持つ気配というのは慣れぬものだった。幸長はエドワードに対して横暴であったり、無礼であったりするわけではない。笑みを浮かべて非常に落ち着いた理知的な態度を取り、礼儀を持って彼に遇している。しかし、その笑顔が仮面であることをエドワードはすぐに見抜いた。
生前のエドワード王子が修羅のごとく戦場での経験を積み重ねた結果、自然と身につけた洞察力によってだ。
自分のマスターは、神野幸長は腹を裂けばその中には、どろどろに沸騰しながら黒く脈打つ、猛毒の宇宙が渦巻いていることを伝説の王子は見抜いていた。>>201
エドワードが知る武人には破滅的なところがある者も多かったけれど、幸長はその中でも完全に頭抜けていた。いや、怨念以外は何も持ち合わせていないのだろう。そして今まで怨念を武器に戦い続けたのだろう。
「これはよく誤解されることなのだが、俺は別に戦うことや殺.すことを嗜むわけではない。ただ気に喰わん連中が多すぎる故に、そいつらを潰すのに忙しいだけだ」
大真面目な顔で幸長はエドワードに言ったことがある。悪を滅ぼすこと、屑を滅ぼすこと、それは俺にとって食事や排泄と同等の、生きるうえでの基本にすぎぬことなのだ、と。
一皮剥けば憤怒と怨念が魂にまで根を張っている。
「僕が生きた時代も大概、混沌としていたがよもやあのような怪物が生まれる落ちるとは、この時代も平和とは言い難いのだな」
エドワードの瞳は憂愁の色が濃い。幸長の在り方はかつて抱いた思いを再び思い出させるものがあった。
中世騎士といえば、実は無教養な輩が多かった。
騎士道精神を喧伝したのは、むしろ戦場往来荒くれ者たちに少しでも倫理観を植えつけるためだった。決して、現代の人々思い描くほど優雅な存在ではないのだ。
だが、ここに数少ない例外がある。英国王家の英才教育を受け、宮廷では優美な礼儀作法を身につけた。武芸と戦争術のみならず、ラテン語の読み書きにも長け、ギリシャ・ローマの古典にも造詣を持つ貴公子――エドワード黒太子(ブラックプリンス)その人である。
そのような明晰な男だったからこそ、その時代を生きて、その闇を呼吸した彼が思ったこと、それは……>>202
以上です「んっとぉ、ぺったぺた、とぉ……」
「あの、マスター」
「あー、動かないで。ぺたぺたっと……」
バーサーカー、タロスは困惑していた。何故ならば、彼女の体は今、足元から『塗装』されているのだ。丁寧に筆を操るのは彼女のマスター、カフカス・フォレストである。
聖杯戦争の開会式が迫っていると言うのに、カフカスは唐突に「そうだ!俺やらなきゃいけない事があるんだった!」と言いだし、持ち込んでいたらしい塗料と筆を用意、彼女の体に色をつけ始めたのである。
「マスター」
「んー? あ、ごめん、くすぐったかった? もうちょい我慢してね、今下半身塗り終わるから」
「いえ、そうではなくて」
「ん?」
「私の体を塗る必要があるのでしょうか?」
むっとした顔でカフカスはタロスを見上げる。どうしてそんな事を言うのやら、と言う風に子供の様に頬を膨らませ、
「こんな色じゃ駄目だよ。ステージに立つんだから、華々しい感じにしないとね。すっごい可愛い顔してるんだから」
「可愛いですか。それは聖杯戦争において有利な要素として働くのですか?」
「するする。絶対する」
マスターにそう言われては、サーヴァントとして刃向かう理由はない。タロスは納得した様な、そうでない様な曖昧な表情を取りながらも、頼まれるがままに両腕をあげた。
「いや、正直俺も女性の体ぺたぺた触るなんて男として最低だと思うんだけどもね。俺マスターだからさ、やらないと」
両足、腰、胴、胸、両腕、顔。カフカスの筆がタロスの体を塗り分けていく。そういう道に詳しくはない彼女だが、マスターの言葉通りならば『簡単には剥がれない塗装』らしい。
「あーい、OK! これで全部塗れたよ。ごめんね、時間かけちゃって」
出来た出来た、と歌う様に呟きながら、カフカスは鏡を持ってタロスの眼前に躍り出る。様々な角度から塗りおえた顔を観察し、カフカスは満足げに「うむ」と頷く。
「いや、これ、ホント、自画自賛! 色んなとこで色塗りの仕方教えてもらった甲斐があったってもんだよ。さぁ見て、今までは一色だけだったせいで分かんなかったけど、これが君の顔だよ」>>204
差し出された鏡を覗き込む。そこに映り込んでいるのは、女性の顔だった。タロスには美しいだとか可愛いだとかは分からない。それでも、鏡の女性が『良い』事は理解出来た。
そしてそれが、自らの顔であると気付くのに、数分ほどかかった。
「……これが、私ですか?」
「そうだよ。それが君の、タロスちゃんの顔。ね、言ったでしょ。可愛いって!」
「……」
しばしの沈黙。鏡に映る己を見つめながら、タロスは言葉を失っていた。
言葉にならない感情がわき上がる。今まで、造形でしかなかったモールドに色がつく事で、こうも『顔』として認識出来てしまうのが不思議で不思議で仕方が無い。
―――――ああ、なるほど。これが、私。
「……」
「タロスちゃん?」
「……」
「気に入ってもらえた?」
「……良い、気がします」
ぽつりとバーサーカーの桃色に塗られた唇からそんな言葉が漏れた。
「ホント?」
「はい。少なくとも、現時点で私の障害にはなっていません。マスターが良い、と思うのならば、問題は無いでしょう」
「んー……なんかすっごいすれ違い起きちゃってる気がするけど……まぁこれから時間をかけていけばいっか」>>205
頬をぽりぽりと掻きながらマスターはぼそぼそと何やら呟いているが、タロスには何の事だかさっぱり分からず、ただ頭を悩ませる青年を見つめるに留める。
―――――彼は、変わっている
彼女が今まで仕えてきた魔術師達はいずれも、タロスの事をただ兵器と扱ってきた。だが彼は、カフカスは違う。出会って間もないというのに、彼女に色を塗りたいなどと言い出すのだ。
「よーし。顔も塗れた訳だし、さ、出かけよっか」
「出かける、ですか」
対戦相手についての情報などを調べるつもりなのだろうか、とタロスは浮ついている気持ちを抑え込む。
カフカスの口から、此度の聖杯戦争についてのあらかたの説明は受けた。
敵を破壊するのではなく、敵の持っているペンダントを破壊する。それが勝利条件。
そして秘匿される事が常であったはずの今までとは違い、衆目の下で合法的に行われる争い。
何もかもが彼女にとって初めてだった。初めての戦争、初めての街、そして、初めて出会う変わったマスター……。
「マスター、何処へ行くのですか」
「んー? そりゃ、服買いに行くんだよ?」
「は」
「だって、そんな無骨な鎧だけじゃまずいかなって……」
思わず閉口する。タロスはどう対処すれば良いのか、どう返答すれば良いのかさっぱり思いつかず、ただカフカスの言葉をひたすらに反芻した。>>206
服? 衣服の話か? 彼が着る服? でも無骨と言った。では誰の?
「……私の服ですか?」
「そ、そうです。実の事を言うとさっきから目のやり場に困るのです。今まで意識しなかったけど、律儀に色塗ったおかげで辛いのです。ビキニアーマーなのです」
それで納得した。塗り終わってから急にカフカスがタロスから目線を逸らし始めていたのは、そういう事らしい。
けれど、とタロスは自分の肌色に塗られた体を観察してから、
「私に服は必要なのですか。この鎧だけでは戦力的に不十分と?」
「……あ、そっか。タロスって、そうだった」
俯いていたカフカスの顔が、ゆっくりと持ち上がる。すっとタロスを振り返り、目線を逸らし、そしてもう一度、しっかりとタロスへと向き直って、カフカスはタロスの足元にそっと腰を下ろした。
「マスター、突然なんでしょうか」
「タロスちゃん。ここに座っておくんなまし」
「?」
言われるがままに、カフカスと同じ様に床に腰を下ろす。拳一つ分くらしか間のない距離で顔をつきあわせ、二人はしばらくの間沈黙した。
「……タロスちゃん。君がどんな子だったか、俺に聞かせて」
「はい。私はダイダロスによって作り出された機械人形です。クレタ島を守る防衛機構として稼働していました」
「うん。ごめん、俺その事すっかり忘れてた。タロスちゃんすっごい可愛いかったから、普通に忘れてた。でも今から、タロスちゃんの知らない事を色々教えていく事にする」>>207
「はい」
「まず、タロスちゃんは女の子なのです」
「はい。私は女性の肉体を模して作られています。ですから外見上は女性と分類されるでしょう」
「人間は皆、俺の様に服を着るのです。タロスちゃんも人間なので、服を着るのです」
「?私は人間ではなく、機械です。先程そう言いました」
「でもね、タロスちゃん。機械は、自分の顔を見て喜んだりしないと思うんだ」
その言葉は、タロスの頭にがつんと衝撃を与えた。その衝撃は、部屋への道中にカフカスから伝えられた『エレベーターの重量制限引っかかった時に恥ずかしがっていた』時と全く同じで、恐らく今もその時と同じ様な顔をしてしまっていたに違いない。
「……では、私は人間、なのですか?」
「さぁてね。俺はただタロスちゃんが恥ずかしがったり、喜んだりしているのを見ただけだもん」
「……では、マスター。教えてください」
「ん?」
「鏡を見ていた時、つまり、喜んでいた時……私は、笑っていたのでしょうか?」
「んーとね、それは、見てみれば分かるかな」
カフカスが不敵に微笑みながらさっと取り出したのは、先程の鏡。
そこにはまたタロスの顔が映り込んでいて……とても、とても楽しげな笑みを浮かべていた。最初は彩られた顔で呆気に取られて気付けなかったけれど確かに、笑っていた。
「私は……笑っているんですね」
「うん。笑ってるよ。さっきからずっとね」
「っ……」
「他の誰かは、君を人形だと思うかもしれないけど、俺は違うよ。君は、タロスちゃんは人間だと思う。だって、人形はそんな笑みは浮かべやしないからね」>>208
タロスは、いつかの島の記憶を思い出していた。
確かに記憶こそしているけれど、繰り返された日々の中で少しだけ摩耗してしまった記憶。
雨が降った日、水たまりに映り込んだ己の顔は、青銅の色一色で……それが自分の顔なのだとどうしても認識出来なかった。認めたくなかった、と言っても良い。
けれど今は違う。今、鏡に映る顔は、タロスは違う。あの時と、違う。
―――――私は、人形ではないのは、確かだ。
「マスター」
「うん?」
「女の子、とはどんな事をする生き物なのですか」
「ふふん、では俺に解答できる範囲で」
タロスの口から突いて出たのは、そんな質問。興味が、好奇心が胸の内からあふれ出す気持ちだった。
待ってましたと太股をぴしゃりと叩いて、カフカスはそれに応えようとする。
「女の子は、どんな服を着るのでしょうか」
「うーん、そうだなぁ俺が見てきた中だと一般にはワンピースだとか……ふふふ、それではこれより街に出てみようではないかタロスちゃん。めくるめくショッピングが我々を待っている」
「しょっぴんぐですか」
「しょっぴんぐだ。行くぞ!」
善は急げ。思い立ったが吉日。カフカスはすっくと立ち上がり、にんまりと微笑んだ。
勿論、こうして街に繰り出した結果、二人が開会式に遅刻したのは言うまでも無い事である。以上ですな。夜のテンションだと文が書けないのですな!
九終投下
〜
蒼木ルイは拠点へと帰り着いて早々、シャワーを浴びて身体を清める。
露わになった肌は白くきめ細かく、陶器のよう。その髪は一面に広がる麦畑を思わせる金色。
流れ出た湯が雫となり、整った形の胸から、腰、脚まで伝う光景は、女神の沐浴と形容できそうだ。
湯の感触に身を任せながら、彼女は意識的に深い呼吸をする。彼女なりの瞑想であり、魔術鍛錬の一環だ。
彼女の魔術属性は水であり、特に流体と相性が良い。こうやって湯に打たれている間は、絶好のチューニング時間となる。身体や魔術回路に不調が無いか調べつつ、魔術行使に必要な精神統一の感覚を忘れないようにするのが目的だ。
浴室には、水の音と彼女の息遣いだけが響く。雑音の少ない空間で彼女の感覚は鋭敏になり、身を打つ雫の一つ一つまで知覚できそうだ。
全身に満遍なく意識を向け、徐々に指先や爪先などの先端に集中する。そしてまた全身へーーーそんな作業を何度か繰り返す。充分だと認識したところで、呼吸を平時に戻す。
「……ふぅ。これでいいですわね」
意識が通常に返ると同時、脳裏にある人物の事が浮かぶ。
(氷瀬竜胆さん……わたくしと水籠さんの間に割って入った彼の姿、本当に素敵でしたわね。興味が湧いてしまいましたわ)
ルイの胸中では、彼が最も注目したい人物になっていた。
お風呂から上がり、寝巻きに着替える。今夜の状況を確認しようと、用意していた軽食をいただきながら考えをまとめる。>>211
ふと、ため息が漏れた。
「はぁ……結局ここに戻って来てしいましたわ。本当ならホテルでゆっくり過ごす筈でしたのに、上手く行きませんわね」
当初の予定とズレてしまった部分がなかなか多い。その事に、ほんの少し行先が思いやられてしまった。
「そういうこともありますよ、マスター。前向きに行きましょう、前向きに。無事に帰り着き、相手の情報も得られたんですよ。充分な成果でしょう」
ヘルヴォルがこちらを労ってくれる。……不思議だ。彼女の艶やかな声を聴くと、落ち込みかけた気分が軽くなる。
「そう、ですわね。お気遣いありがとう、ヘルヴォル」
「いいえ、今の私は貴女の騎士であり従者。主人を気にかけるのは当然です」
柔らかにそう返してくれる。すると、窓からコンコン、という音がした。
「ごしゅじーん!クロワちゃんが帰ってきたゼェ!」
「お帰りなさい。収穫はありまして?」
「いーや、めぼしい物は見つからなかったぜ。ただ、この近くには誰もいなさそうだからヨォ、親鳥が飛んでいった時の雛鳥くらい安心してくれよナ!」
「それ、全く安心できませんわよ」
クロワとお約束のようなやり取りをした後、ヘルヴォルを交えて状況を話し合う。
水籠さん、氷瀬さんの戦闘方法。キャスターらしきサーヴァントのこと。そして、ホテルに置いてある物のこと。
「少し話しましたわね。わたくしの魔術は『支配』。特に道具や礼装を自在に操ることに長けていますわ。けれど、肝心の礼装の大部分はホテルに置いたまま。どうにか手に入れなければなりませんわ」
「しかしホテルにはキャスター達がいるはず、と」
「という事は、アイツらに見つからずにホテルに行くカ、バトル覚悟で行くしかねぇって訳だナ」
「その通りですわ。そこで、少し考えがあります。ーーーmonsieur.ユージーンとの同盟、本格的に考えようと思いますわ」>>212
戦力の増強は勿論、彼の能力を用いて索敵をする事もできるかもしれない。リスクとリターンを秤に掛けても、リターンの方が大きいようには思える。
(今のところ、ですけれど)
対等、という彼の言葉……乗ってみても良いかも知れない。
「私は彼と話していません。この場はマスターの決定に従います」
「オレッちも基本は同じヨ。でも、これだけは言っとくゼ。ーーー注意だけはしとけよナ」
「ええ、勿論」
この辺りで話を纏め、わたくしは寝支度をしてベッドに入る。
寝る前に、ヘルヴォルを傍らに呼ぶ。少し話をしたくなったのだ。
「そう言えば、まだ貴女の願いを聞いていませんでしたわね。何かあるのではなくて?」
「私は、貴女と共に戦い抜く事が最上の願い。しかし叶うのならば、この世界を心ゆくまで見てみたいと思います。世界一周とか。……つまらない、でしょうか?」
「いいえ、そんな事ありませんわ。とても素敵だとおもいましてよ」
「ありがたきお言葉です。では、マスターの願いも教えていただけますか?」
「実は、聖杯そのものへの興味は薄いんですの。どちらかと言えば、聖杯をビジネスに利用する事が目的、ですわ。ですから、わたくしの分は叶えなくても良いんですの。成功は自分の手で掴まないと、意味がありませんわ」
そう答えると、ヘルヴォルが少し驚いたような顔をする。
「それは……随分と不思議な使い方をなさるんですね」
「はっきり、現実的だとか、夢が無いだとか言ってもいいんですのよ。自覚は多少ありますもの」
言ってみると、見惚れそうなあの笑顔で否定する。作り笑いでないと言うのは、直感的に分かった。
「ふふ、少し驚いただけですよ。それを言うなら、私の願いはありきたりで面白みがない。今の私は貴女の騎士であり従者。そして元戦乙女。貴女の願いに協力しますとも」>>213
夢を見る。夢の中で蒼木ルイは、ヘルヴォルに語った願いの、その先を想う。
("世界を変える"ーーーなんて言ったら、貴女はどう答えてくれたのかしら)
そう、それこそが彼女の本当の願い。どこか子供っぽく、しかし綺麗な、彼女の本心。その為の道具として莫大な富を手に入れる。
そして、それを己がサーヴァントに打ち明けるには、少しばかり覚悟の時間が必要だった。または、打ち明けてもいい人物かと見極める時間が。
しかし、そうやってヘルヴォルに話せなかった自分を責めるように、ひとりの少女がこちらを見つめている。水籠初梅によく似た少女は、ルイへ向かって言葉を投げる。その声に反発するルイ。
『ねぇ、蒼木さん。貴女って綺麗よね』
ーーーそれは顔の事かしら?
『資産もあるし、魔術の才覚も素晴らしいわ』
ーーーそんなの、わたくしが恵まれた環境に生まれただけ。
『さぞかし蒼木家の名誉ある娘として、貴女の御父上の後を継ぐ者として大成するでしょうね』
ーーー親の敷いたレールの上を、とでも言いたいの?
『でもそうやって、死ぬまで貴女は在り続けることが出来るの?』
ーーー理想の自分になりたいと思って何が悪いんですの?
『───受け入れて欲しいって、ちゃんと言葉に出せるかな』
ーーー言えますわよ、きっと……。>>214
『ロックと少年漫画好きの蒼木ルイちゃん?』
ーーー人の心を、勝手に覗かないで!
嗚呼、駄目だ。夢だとつい悪い方向に捉えてしまう。氷瀬竜胆と気楽なやり取りを交わす彼女は、きっと悪人という訳ではないのに。
そう、これはルイの被害妄想。言った本人の意図を取り違え、勝手に悪い想像をし、勝手に傷ついてしまうと言うだけのこと。
(ダメ、こんなのダメ……こんな事を気にするなんて、わたくしのなりたい自分じゃ、ない……。わたくしの欲しいモノじゃ、ない……)
悪い方向に考えない、涙を見せない、気にしない。笑顔を忘れず、強く優しく美しく。
いつもはきっと気にしない。あの2人の眩しさを見せられて、ほんの少し、センチメンタルになっただけ。そう、目を覚ませばいつも通りの蒼木ルイ。だってそれが、自分の望んだ事だから。
(ええ、そうですわ。でもやっぱりーーー)
誰かが傍に、いて欲しい。glit stage 前日譚投稿
〜
>>191
闇。完全なる黒の視界の中、僕は心臓の逸りを自覚する。
「マスター、ご気分が優れませんか?」
緊張が顔に出ていたのか、僕のサーヴァントが声を掛けてきた。
「ん、大丈夫だよセイバー。このキラめく僕の活躍を、早く観てもらいたくてうずうずしているだけサ☆」
しかし、大一番は慣れた物だと思っていたのに、まだまだ僕も緊張とは無縁でいられないらしい。新しい僕の一面発見☆
「左様ですか。しかし、ご無理はなさらず」
「いいや、無理はしないさ。だって最高のこの僕と、僕の召喚した最高のキミだよ。無理なんてしなくても、負ける筈がないのサ♪」
そう答えると、セイバーがほんの少し笑う。おや、なかなかカッコイイ笑顔じゃないか。
「貴方はいつも変わらない。ええ、そうやって勝ちを信じている間は、私達は決して負けない」
すると、そこで開演を知らせるブザーが鳴る。どうやら、対戦相手が位置に着いたらしい。
「おっと、始まるね」
スポットライトが相手を照らし、相手の叫びが轟く。>>216
「それじゃ、僕らも行こうか。ーーー信じてるよ」
「ええ、お任せください」
短い言葉を交わし、僕らは進む。闇の中を。ただ一つの光を目指して。
(そう、僕らは負けない。いいや、負けられない!)
闇の中で、僕はどんな表情をしていただろうか。いや、本当は分かってる。僕らしからぬ、引き締まった顔だろう。どんな表情でも僕はカッコいいけど。あ、これを機に新路線を開拓するのもアリかな。
(まあ、そういうことは後にしてーーー)
位置に着いた。
ライトが僕らを照らし出す。
そして、僕はとびっきりのワイルドな笑顔で叫ぶ!
「鏡よ鏡よ鏡さん、宇宙(ソラ)の全てを覗いても、僕より輝く星は無し!虚像、鏡像、お構いなく、キラめく道をひた走る!水も滴るいい男!鏡像術師、オズボーン・ファンタジア!視線は全て、僕のもの♪」
「星は輝き陽は照らす。束ねた光、導となりて、道なき道を切り拓け。堅牢堅固のこの守り、破れるならば押し通れ!サーヴァント・セイバー!我が光輝、永久不滅!」
『役者は揃い、ベルは鳴った。さあ皆様存分に、言葉を交わし、想いをぶつけーーー競い合いましょう』>>217
舞台の幕が上がった。
相対するのは騎士とメイド。……メイドという職業が成立したのは何時代だったろうか? 面立ちの整った美青年である騎士と、質素に纏められながらも何処か気品を感じさせる女従者の取り合わせは確かに騎士物語の一幕を思わせるかも知れない……。
この様なカタチでなければ。
剣も構えず、だが視線はコチラから外す事なく正対しながらも立ち尽くしている騎士に向かってメイドが躍り掛かる。
形状は剪定鋏。だがその大きさは枝よりも幹を切る為に設えたと言わんばかりの巨大さだ。それが大上段。無表情のメイドから放たれる。
騎士はそれを軽々と防ぐが、メイドは巨大剪定鋏による攻撃を繰り返す。———いや、待て待て待て! 何だ、あの馬鹿デカいハサミを何で防いだ?!
三度、四度……続く攻撃も尽く防がれるが、まだ奴は、剣すら出していないのではないのか?
((一度距離を取れ! アサシン!))
((畏まりました御主人様……))
ヴィヴィアンは早くも内心焦燥に駆られていた。メイドに憑依したナチョスアミーゴスという名の英霊のクラスはアサシン/暗殺者。この様な形式が定まった大会では不利なクラスであると言うのは周知であり承知の事であった。
だがそれを差し引いても相手はセイバー/剣士。聖杯大会に限らず、聖杯戦争が始まった時代からサーヴァント最優と謳われるクラス。それと正面からやり合わなければならないなんて!
ーpassーGLIT STAGE召喚パートからの流れ投稿します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ! 」
開会式のあと運営が用意した召喚スペースにて参加者の一人、藤沢拓光はサーヴァント召喚の儀式を行っていた。ばちり、ばちりと魔法陣が輝き、強い光が部屋を包む。
その光が収まった時、現れたのは一人の男だった。だがその姿はどこかおかしい。教科書で見る平安の貴族のような姿でありながら、頭には狐の耳、下半身には狐の尾。所々跳ね、結い上げられているその長い髪は夜の帳のように黒く、毛先は桜色。黄金色の切れ長の目の目元には朱が差されており、神秘的な印象を思わせる。
「サーヴァント、キャスター。真名を三条宗近と申します。此度の戦で私をお呼び致したのは、主様でございますか? 」
三条宗近、かの国宝『三日月宗近』の作者である平安の刀工であり、能の一つ『小鍛治』の主人公である人物。かつて仕事で演じたキャラクターを演じる為に調べた情報サイトを読んでいくうちに見つけたページにはそう書かれていた。だが彼は普通の人であるはずだ。何故狐の特徴が所々にあるのだろうと疑問が浮かぶ。
「えっと、あ、まあ、そういう事になる、のかな……?改めて、僕は、藤沢拓光。貴方の、マスターです。よろしく、キャスター」
「よろしくお願いいたします、主様。現代の知識に関して、私は付焼刃程度の事しかわかりませぬ故、主様に色々頼らせて頂くかもしれませぬ、その事で迷惑をお掛けするかもしれませぬので先に謝らせて頂きます」
「いや、こっちも戦闘面では迷惑をかけると思う、あと、こういった『世界』については知り合いに少し聞いた程度だから、たぶんこっちも色々頼らせてもらうと思う、お互いの知らない事を教え合いながら共にこの大会、頑張っていこう」>>219
「はい、主様。それにしても主様、先程から私の顔をまじまじと見て、何処かおかしい所でも? 」
「あ、うん、なんでキャスターには人のはずなのに、狐の耳と尻尾が付いているのかなって……」
「ああ、この耳と尾の事ですか。私はどうやら幻霊と呼ばれるモノに近い存在らしいのです。今回の召喚にあたり、氏神である稲荷大明神の加護やその他諸々の伝承で霊基を補強した影響がこの耳と尾でございます。ああ、でもこの耳と尾はあくまで飾りのようなモノでございます故、普通に玉葱だとか、『ちょこ』という甘味は食べられますぞ」
「なら良かった。これから参加者の一人で、僕が憧れている俳優の一人でもある阪上尚鹿さん主催の親睦会があるんです。料理とかデザートとかでもしかしたら食べられない物が出るんじゃないかなと思っていたけど、これなら大丈夫かなって。服は……そんなに体型も変わらない感じだから僕の替えの服を着ればいいかな、宿泊先に荷物とか置いてあるから一旦戻ってそれから会場へ向かおう」
運営との話を終え宿泊先のホテルへと向かい、部屋で着替えを済ませる。拓光の格好は黒を基調とし、差し色にシャンパンゴールドを取り入れたタキシード、そして彼が替えとして持って来ていた青を基調とし、差し色に白を取り入れたタキシードを纏うのは彼のサーヴァントであるキャスターである。>>220
ホテル前でタクシーを呼び、親睦会会場へと向かう。車内で快適な一時を過ごす中、キャスターが拓光へ問いかけた。
「にしても主様が替えでしかも仕立てが良い衣装を持っていた事にこの三条宗近、大変驚いております。主様は地位の高い方なのですな」
「いや、そうじゃないんだけど……、地位は高くないし、仕事で度々こういう格好で舞台に上がったりする事が多くて、しかも何故か衣装を着た後にスタイリストさんがそれを自腹でくれたりする事が多くて」
「そういえば宿に向かう際もよく声を掛けられていましたな、『サカキ君』と呼ばれてましたが、主様の名前とは違いますが……」
「ああ、それは芸名だよ、俳優としての僕の名前。その名前で舞台に上がって、様々な物語や人物を演じる。それが僕の仕事。だから……」
「この舞台で僕はキャスターと共に『一組の主従』を演じ切り、戦いに勝利し、願いを叶える。それが僕の今回の目的だ」
「それが主様の目的なのですね、ちなみに主様の願いとは……」
「兄さん方、目的地に着きましたよ。代金は……」
「カード払いで」
「あいよ、じゃあ、聖杯大会頑張れよ兄さん方!テレビの前で応援するからな! 」
「ありがとうございます。じゃあ行こうか、キャスター」
「はい、主様」
夜の街を二人の男が歩く。親睦会の会場へと向かって。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあの後急いで逃げて別拠点。……と言っても、適当な宿泊施設にまた泊まっただけなのだけど。
「あ、私はちょっとやることあるから。暫く自分の個室に篭るけど、2人とも自由にしていいからね」
ドアを閉め、ゆっくりと腰を下ろす。自分の周りには呪具を置いて、目の前には私の写真。そして、自らに施された封を解く。
とおりゃんせㅤㅤㅤㅤとおりゃんせ。
ここはどこのㅤㅤㅤㅤほそみちじゃ。
てんじんさまのㅤㅤㅤほそみちじゃ。
心の中、頭の中に孔への道がよく見える。これぞ私。この虚こそ私。
ちっととおしてㅤㅤㅤくだしゃんせ。
ごようのないものㅤㅤとおしゃせぬ。
このこのななつのㅤㅤおいわいに
おふだをおさめにㅤㅤまいります
七つまでは神のうち。幼子とは神と同義。限りなくあちら側(神秘)に近しい、とても価値あるもの。
いきはよいよいㅤㅤㅤかえりはこわい
あなから、多く、とても多くの人がわたしをみている。ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
生気のない、ふわりとした目でこちらをじっと見つめて手を伸ばしてくる。
こわいながらも
その伸ばされた手に、身体を任せ。
とおりゃんせㅤㅤㅤとおりゃんせ
我が身は虚空に溶けていく。
ゆっくりと、だけど確かに。私は水底へと沈んでいく感覚がする。
受け取った重いは想すぎて、水面へと手を伸ばすことすら叶わない。……そもそも、手を伸ばそうとさえ思わないのだけど。
それなのに、身体は酷く焼ける感覚がする。沈んで行くほどに、私を妬く(焼く)想念の焰は強く、激しくなっていく。
どんどん、どんどん。この身を燃やし尽くすように。
ざぱん、と水から出て来れた。でもそれは、浮上したのではなく沈んだ末にあったもの。───ここでは、彼等が私の下に訪れる。
私の受け取った記録の再生。とある少女がただひたすらに自分の手首を切り続ける光景と痛み、そしてその心情が私へと伝わってくる。
何度も、何度も、何度も。動脈を傷つけ血がかなり流れてもそのカッターは止まらない。心が痛いの!私はもう、あんな所になんて行きたくない!何がスクールカーストよ!何が成績(媚び売り)よ!いや、もう痛いのは嫌なの……!
……そう、貴女は未だにその苦しみを。
……そう、そうよ。私のこのぐちゃぐちゃとした心はアンタに受け取って貰えて、現実の私は幸せだけど。……でも、それでもアンタの中の私と、現実で未だに燻っている私の思いは消えないの!
世の中への疲れ、恐怖、絶望感。私は依頼を受けて彼女と話をして、気持ちを受け取って、しっかりと社会に戻れるよう協力したけれど。それでもまだ、その思いは彼女を許してはいないらしい。
……まだ、辛いのね。「ええ。まだ痛くて苦しいの」
……なら、おいで。痛いのなら、苦しいのなら、その全部を受け止めてあげる。せめて、この世界でだけでもいいから、私に全部ぶつけて構わないわ。
彼女がカッターを持ち、私を何度も何度も切りつける。それは、行き場のない感情の表れか。それを、私はずっと受け止め……いえ、いいえ。受け止めることぐらいしか、私には出来ないからというのが正しい理由。
数分くらい、もしくはそれ以上の時間が経った後、彼女は私の中に帰っていく。これが私の日課。私が受け取って来た人たちの未だ燻る感情も、過去の感情も、その全てを受け止めること。それが私の請け負ったこと。
次に来たのは……ああ、そう。私が私(水籠初梅)となり得た理由。
「お久しぶりです、お婆様。死した後、世俗への念はなかったのではありませんか?」
「それがそうもいかなくなってねぇ。私の愛する子が死ぬか死なぬかの舞台にいるのだから、話をしたいとも思うだろう?」水籠の中でも長寿の婆。あの事件が起きるまでは、一族の教育と作り替えを一身に受け、「最大の偉業」を成した女傑。……それがお婆様。
「ええ、そうですね。私はあなた方の願いを背負った星ですもの。死なないとはいえ、昏睡でもしたら一大事ですものね?」
「それもあるにはあるんだがねぇ……本題は違うのさ。邪魔しちゃなんだ、手短に聞こう」
その目は、私の奥を貫くように鋭くて。
「───汝は、人間なりや?」
「当然のこと。我が身既に人へと堕ちた(昇華した)」
「───汝、己が本質を示せよ」
「知れたこと。生まれながらにて我は孔なり」
満足した様子で婆様は消える。この人は何時もそう。悩みなんてないのに、苦しみなんてないのに、此処に現れる。
『ゆめゆめ、忘れるなよ初梅。お前は生まれながらにして出来た孔ではあるが人になったのだと。……そしていつか、孔は塞がるのだということを』
意識が現実へと浮上し、一息つく。そこから少しだけ、目を瞑って。……深呼吸した後に私は後ろを向く。
「おお、終わったか初梅」
「……私、入ってくんなって言ったわよ。キャスター」目の前の老狸は「すまん」と言うがくつくつと反省する気ゼロで笑っている。
……ふと、蒼木さんの目を思い出す。彼女は、私のことをどう思っていたのだろうか?
私のことを、ずけずけと心に入ってくる目障りな人と捉えたのだろうか。それとも、自分が言ったことが正しいと言わんばかりに押し付けてくるような、傲慢な女に見えたのだろうか?
……変ね。普段はこんなこと考えようとすることすら虚ろな私には出来ないのに。蒼木さんと戦ったことを思い出すと自然と頭に浮かんでしまうわ。
───だからだろうか。キャスターに質問をしてしまう。私がずっと抱えている疑問。
「ねぇ、キャスター。こっち見て」
呼びかけに応じ、マスターの顔を見つめる。
───その顔は、あまりにも無感情。無感動。無表情で。
「私って、酷い女に見えるかな」
余りにも、抑揚のない。合成音声で打ち出された方がマシな声。瞳も、呼吸も、顔も、体も。全てに何も変化なく彼女は問いかけてくる。
〝私は、人間に見えますか?〟
「……ああ。人の心を遠慮なく抉るお前は心底嫌な女だよ」
「───そう、良かった。じゃあ、私は寝るから」
嬉しいような、悲しいような顔を浮かべ、マスターは寝室へと向かう。
……あの、世の中に出来た異物のような感覚と。先程見せた人間らしい顔付きが、あまりにも同じ人間だとは思えないけれど。夜は、それでも更けていく。お母さんとお父さんは、俺を二人目のお母さんの所に預けた。
詳しい話なんて覚えてないけど、両親には抱き締められていた。何度も何度も、強く、強く。『ごめんね』とか、『俺達が死んじゃっても気に病むな』とか言われてた。
二人が命をかけている仕事についているのは、子供ながらにわかってたから大泣きするだけ大泣きはしたけど、死んだのかっていうのは何となくだけどわかっていた。
二人目の母さんは、俺に色んな事を教えてくれた。勉強に、スポーツ、他にも色んな楽しみや世の中の道徳を教えてくれていた。
『竜胆、貴方はきっと優しくて誰かを護れる男の子になれるから。私はその、手助けをしたいの』
……でも、今思えば。色々な風景や時には残酷な真実も教えてくれた義母さんだけど、魔術のことだけは、一つも教えようとはしてくれなかったな。
義母さんが、「魔術師」というべき存在だと気付いたのは、6歳の時。確か丁度、何かの魔術を使っている所を見たんだっけ。
その時の義母さんは、酷く驚いて。その後、隠すこともせずに「訊かないで」とだけ言われたから。俺はそれに従って。
それから、それから───
火が、家を包んでいた。熱くて熱くて、義母さんの周りにはナイフを持ったり拳を構えた大人がいっぱいいて───
あ、刃が義母さんを包んで。い、や。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっっ!!
義母さんは俺の手を引いて走って、何処かの匣の中に連れて行って、そのまま、そのまま───!!
『竜胆……ここは、絶対に開けちゃダメよ。良い?貴方が開けようとしない限りは、何があっても此処は開かない。それこそ、現存する宝具でも持ってこない限り──なんて、貴方にはわからない話ね』
いやだ、いやだよ。俺が、義母さんを守るから、だから義母さんは!
『ダメよ、竜胆。貴方はまだ守られる人間。子供らしく、大人の私に任せてなさい』
だって、義母さんは俺が人を護れる強い人になるって言ったじゃんか!なら、なら───
『そう、貴方は強くなる。……でも、今はその時じゃないの。その力、その思いは、他の誰かを守る時にこそ使いなさい。……時間よ。そろそろいくわ』
おねが、い。義母さんまで、俺を置いていかないで──
『───竜胆。貴方はどうか、どうか幸せに』
──匣が、閉じた。目が醒める。気付けば俺は、ベッドの上で空に向かって必死に手を伸ばしていて。
そう、あの時の俺は無力だった。どうしようもなく、何も出来ない無力さ。
あのときの義母さんが、なんで死ななきゃいけないような目にあったのかはわからない。わからないけど、魔術社会ではそういうこともよくあるのだと、初梅は言っていた。つまり、そういうことなのだろう。
『……言いますわね。ええ、ムッシュ・リンドウがとても素敵なナイト様だったのですもの。妬けてしまいますわ』
俺が、騎士。蒼木さんに言われた言葉を、何度も何度も噛みしめる。
俺は、物語でよくみる騎士のように、初梅を守れたのだろうか?少なくとも、周りにはそう映るようには守ることが出来たのだろうか?
───教えてくれ、義母さん。今の俺なら、あなたを守れるかな?
誰も答える者などいない。そもそも、彼の問いを聴く者はいない。
「……もっと強くならないと。もっと、もっともっと。俺がみんなを守れるように───」
「やめておけ。そこから先は地獄だぞ」
後ろを振り返ってみれば。キャスターが、酷く悲しいような目でこちらを見ていて。「待たせたわね、ほら。私を獲りに来たんでしょう?」
執行者達の前に、姿を現わす。これも全て、私の身から出た錆。でも、竜胆だけには危害を加えさせやしない。
協会は私の魔術の一部が埋め込まれた彼をもホルマリン漬けにしようとするだろう。それだけは、絶対に許されない。
武器を取り出す。絶対に、降伏なんてするものか。降伏して、暗示で彼のことを吐いてしまうのだけは避けないと。……だから、戦って死ぬ。
勇ましくといえば聞こえはいいが、結局は自分のミスのせいだ。こんな事になってしまい親友の夫婦と、その息子(竜胆)には返す顔もない。
嗚呼、刃が腹を貫く。炎が腕を焦がす。これで自分という人生は終わりなのだと悟る。
「竜胆……ごめんね。とっても、とっても迷惑かけたよね……」
意識が朦朧としながらも、勝手に言葉が出てしまう。
「本当は、私のこと助けたかったんだよね。わかるよ。……でも、それじゃあダメだから」
地に伏して、手を伸ばそうとして、やめる。
───ねえ、私はさ。二人の代わりに、貴方の親になれたかな?
これが、氷瀬竜胆の人生における地獄の一つ目。>>218
セイバーの一撃を流した直後、メイドが大きく飛び退って距離を取る。
正面からでは分が悪いと判断したかな?とても賢明だ。そして、ああ、やっぱり僕の騎士は素晴らしい。
「どうだい、僕の騎士は最高だろう?」
メイドの主人へと声を掛ける。しかし彼ーーーヴィヴィアンはしかめっ面で無言を通す。おやおや、観客を前に無反応はいただけないな。
「そんな顔しないでさ、楽しもうよ♪セイバー、"追加"を許可しよう」
セイバーが虚空に左手を伸ばす。すると突然、手の中に剣が出現した。彼の宝具ーーー『夜空彩る星の騎士』の一端。特殊な力のない無銘の剣だが、業物には違いない。現れた剣を掴み、アサシンへと投げつける。
「くっ、アサシン!」
ヴィヴィアンが思わずと言った風に叫ぶ。アサシンは声が届くよりも早く、鋏で剣を弾いた。しかし、その一瞬で距離を詰めた騎士が不可視の刃を振るう。振り下ろされた一撃を、メイドは身体を逸らして回避。危機一髪、腕に浅く入っただけに留まる。
次の太刀が来る前に、メイドはまた距離を取った。騎士はそれを追って加速し、不意に取り出した槍で攻撃する。
不可視の刃、無銘の剣と槍ーーー三つの武器で繰り出される連撃を、メイドはのらりくらりと回避する。対して騎士は手を変え品を変え、攻撃の手を緩めない。
相手は致命傷こそ回避できているものの、傷は着実に増え続け、攻撃にも転じられない。どちらが優勢かは、考えるまでも無かった。
さて、彼らの攻防に意識を向けながら、僕はもう1人の対戦相手に言葉を投げる。
「ようやく喋ってくれたね、Mr.ビリジアン。これは君達と僕達のステージだ。思う存分、剣闘士を演じようじゃないか」
言い終えた後、左の指3本に魔力を流す。魔術の準備だ。しかし僕は、今魔術を使うつもりは無い。これはちょっとしたら保険サ☆
(すぐに勝負が決まってしまったらつまらない。いきなり全ての手札を見せるのも、エンターテイメントとしてつまらない。少しずつ魅せていかないとね♪)
〜>>231
セイバーからの攻撃を喰らいつつも、致命傷に至る剣筋だけは確実に回避するアサシン。舞台の上で血を撒き散らしながら剣舞は続く。
先手を取りはしたが、それは全て相手に防がせるための攻撃だ。最初から殺るつもりのない戦型……相手は高名な騎士か、でなければ武勇を誇った王か。だとしても防戦ならばまだ時間は稼げるだろう。
(これ位の傷ならマスターが直ぐに治してくれますしねぇ)
「くっ、アサシン!」
セイバーは虚空から取り出した剣と槍で確実にアサシンを追い詰めていく。……虚空から取り出した事自体はサーヴァントならば自然な事だろう。剣と槍にも特段、何か特別な能力があるようには見えない。つまり真名に繋がる要素は未だ見つけられないと言う事だ。
(あのキザ野郎、アイツを傷付けやがった。)
連続で治癒魔術を発動し、傷付いた傍から修復していく。だがデミ・サーヴァントであるアサシンの肉体の修復は出来ても魔力で構成されていない現実の衣服であるメイド服はそのままだ。
(アイツの肌が、衆目に、晒されて……ッ!!)
ーcont.ー>>232
ビリジアン家はとある錬金術師の家系の分家である。本家共々時計塔、アトラス院やプラハにも属さない独立独歩の血統であった。だがそれ故に流派や派閥に囚われず貪欲に錬金術の秘奥を追い求めもした。……効率的かどうかはさて置き。
その中にはアトラス院の技を模倣したモノもあった。
「ようやく喋ってくれたね、Mr.ビリジアン。これは君達と僕達のステージだ。思う存分、剣闘士を演じようじゃないか」
「貴様ぁ………」
それは分割思考と呼ばれ、自己の思考を仮想的に分裂、並列処理する手法である。これにより極めて高いマルチタスク性を獲得するが……所詮模倣は模倣。この分割思考を行うには条件があり
「錬金武装/アルケミック ア-ムズ起動。剣となれ……Awaken!!」
取り出した長方形の物体。それにもうひと回り小さな長方形を差込み……丁度自動拳銃の弾倉を装填するかの様な動作を挟みながらの詠唱。
長方形の先端から噴き出した流体金属は幅広な剣を形作り……
「後悔させてやるぞ!!!」
剣を構えた錬金術師は猛然と魔術師に飛びかかったのである。
ーcont.ー>>233
(漸くギアが入りましたねぇ…フフッ♪)
そもそもアトラス院の秘奥を、その門戸も叩かずに真似しようと言うのが無理難題なのである。だが彼等は分割思考を諦めはしなかった。解法は分からないが、解答は現に存在するのだからと彼等は彼等なりに長い年月をかけて分割思考を実現せしめたのである。それが特定感情を分離する事で擬似人格を形成する、極めて限定的な分割思考の実現である。
怒りの人格を表面化させ、冷静な人格で内面から俯瞰する。アトラス院から見れば猿真似にも劣ると笑われる様な代物だ。
「おおおぉ!!!」
掛け声を上げながらの突貫。その最中にも念話のやり取りが行われる。
((アサシン! 宝具を開帳し、目の前の敵を張りつけにしろ!! 私の邪魔をさせるな!))
((……畏まりました御主人様。))
3、いや4mは越える大跳躍によるバク転でセイバーから距離を取ったアサシンに観客席から小さな歓声が上がる。
「では、騎士様……少々手品に付き合って頂きます。」
所々裂けたスカートの裾を摘み深々と頭を下げるメイド。それと同時にスカートから零れ落ちたトランプが次第に滝の様に溢れ
「『あからさまなイカサマ』ですが、女の嘘は愛嬌と申します……フフフ」
弾けた。ーpassー九終投稿します
>>235
午後1時、集合場所となっている喫茶店に入ってきた女性、蒼木ルイは店内で軽く手を振っている男性、ユージーン・バックヤードを見つけた。
ルイ「お待たせしてしまったかしら?」
ユージーン「大丈夫だ。今戻ってきたところだ」
ありきたりなやりとりをした後ルイの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
ルイ「戻ってきた?」
ユージーン「何でもない…いや、やっぱり話すよ。とりあえず立ちっぱなしもなんだし座ってくれ」
着席を促すとユージーンは自重するように両手を広げ
ユージーン「集合時間を決めてなかったからさ、俺ってば朝からここに居たんだよ。で、連絡が来て13時からって分かったから店を出てまた戻ってきたって訳だ」
ルイ「それは……」
ユージーン「はっきり言っていいんだぜ?バカだろ?バーサーカーにも散々からかわれたよ」>>236
ユージーンの隣には大柄な男が座って慣れた手つきで店員から料理を受け取っている。
ルイ「隣に座っている方ですわね?」
バーサーカー「おう、よろしくな!」
片手を上げてフランクに挨拶するバーサーカーにルイは笑顔で会釈する。
ユージーン「こいつが色々頼むからあんた達の分の注文もしてると思われてるんだ。欲しかったら持っていっていいぞ」
バーサーカー「あん?鬼から飯を奪うってのか?」
ユージーン「鬼ってお前…角で予想つくとはいえそういうのは言わないようにしろよ…」
バーサーカー「同盟を組むんだろ?だったら隠す必要ないじゃねぇか」
あっけらかんとそう言うバーサーカーに対してユージーンは「いやまだ正式に同盟を結んだわけじゃ…」や「いや対等ならむしろ話すべきか?」等と呟いた後にため息をつく。stage投稿しますぜ
>>241
藤沢は憧れの人の前で緊張していた。だが、それと同時に興奮もしていた。あの『20面相』と評されるこの人に話を聞くことができるのだ!
藤沢はアイドルである。微妙に畑が違うが、同じ業界に勤めている身としてどうしても聞きたいことがたくさんあるのだ
「阪上さん。質問いいですか?」
耳から聞こえる自らの鼓動を必死に沈めながら問う。阪上はそんな様子を見て実に素晴らしいと好感度を上げる
「今は移動中だからね、ここでは一つ聞いてあげるよ。なんだい?」
「阪上さんはどうしてこのレストランを選んだのですか?」
藤沢は緊張故か本当に聞きたい事をすっぽかしてしまった。心の中で後悔している藤沢の様子をじっと見る。そして微笑みながら彼の肩に手を当てながら答えた>>243
阪上のセリフは止まらない
「酢豚にはパイナップルに限らず、フルーツを入れる必要なんてないんだよ。フルーツはデザートに食べるべきだ。私はね、サラダにリンゴとかつけるやつも嫌いなんだよ。フルーツはデザート。それを崩すやつとは仲良く出来ないと思うのさ。……………榊木、いや"藤沢"君。役者としての心構えその一として拘りを絶対に曲げない事。これを肝に命じて起きなさい。どんな役をやったとしても自分だけの拘りを貫く事で自分を見失うことはない。だから幾らでも役に潜り込めるって訳!」
熱く語る中に自分の新年の一つを入れ込む阪上。そしてその言葉を初めて聞き、一文字も忘れようとしない藤沢。この二人の熱量に三条は入ることができなかった>>245
終わりです!革命軍に所属するサーヴァントであるスブタイは革命軍で軍事顧問を務めながらも、ロベスピエールとは別行動を取ることも多かった。彼が持つ宝具の性質上、隊伍を組んだ兵を引き連れた作戦行動を取る必要が必ずしもなかったからである。
スブタイがその街に滞在して数日が経過していた。彼が逗留するのはその街に住む名士の館だった。
「さあて、そろそろかな」
スブタイはそう言ってベッドから起き上がる。その身には何もつけていない。彼の隣で寝ている女性も同じく一糸まとわぬ裸形である。
女性は眠っているが口元は満足そうに微笑み、しかも幸せそうに恍惚としていた。
王国軍のサーヴァントと異なり、魔力供給がないスブタイは各地を巡るなかで出会った女性たちと交合した際に彼女の精気を受け取り魔力供給としていた。
素早く身支度を整えて、戦場へ向かう。そろそろというのは、彼がここ数日で王国軍に対して仕掛けていた策についてであった。
◇◆◇>>247
王国軍の部隊が革命軍のライダーであるスブタイの時間差各個撃破戦法の前に連破されたことは、彼らを統べていた王国軍のランサーである小アイアスの自尊心にするどい一撃を浴びせずにおかなかった。基地を陥落させたれ、輸送部隊が破壊されたことは王国軍の機能にも深刻な影響を与えることだろう。
「まったくこれではガヌロンの奴になんと言われることか……」
そう言って小アイアスは微苦笑を浮かべるが、彼の瞳は体内で荒れ狂う嵐を映し出して鋭すぎると光を放っていた。
小アイアスのいくさぶりは獰猛であった。苛烈さを持つからこそ現状は許しがたい。彼が兵法にも長けていることは、豪傑たちが揃うトロイア戦争でも彼の名が残ることでも知られる。そして彼の獰猛さは、戦争そのものより、戦争のあとでいよいよ発揮された。その掠奪ぶりは羅刹のごとく残忍であった。
物欲ばかりでなく、女に対する欲望も強烈で、変質的だ。
このフランスに現界してからも、数人の侍女と淫戯をほしいままにしながら、ことあれば部下を召して、交合しながら指図していた。傍若無人というより、野卑厚顔で人をくっているといった方が至当であろう。
革命軍のライダー……小アイアスはスブタイの真名は特定できていない……は一戦ごとに部隊集結地と補給地を変え、移動しつつ戦っている。
この意味するところは、革命軍のライダーが特定の根拠地をもたず、むしろそれを積極的な戦略思想として確立しつつあるということだ。
「まいったな、フランス全土それ自体が奴の基地になっているというわけか」
小アイアスが鳶色の瞳に、苦々しさと感歎の思いを溶け合わせて呟いた。これはいわばゲリラ戦であり、王国軍は本拠地を持たぬ敵を追って戦わねばならないのである。その困難さに小アイアスは頭を抱えたくなる。>>248
考えてみれば、多くの英霊たちを配備して守っていた根拠地を、あっさりと放棄してのけた革命軍である。ハードウェアとしての根拠地に執着しないのは予測しえたが、ここまで撤退するとは、そらおそろしいほどであった。
小アイアスが軍靴のかかとで床を蹴りつけた。今の状況で常のように女と淫戯をほしいままにしながら部下に指示を出すとはいかなかった。
「……一個大隊」
低い声に、膨大な量の感情が込められている。賞賛と屈辱、感歎と怒り、それは熱くたぎる感情のスープだった。
「わずか一個大隊で、わが軍を翻弄している! 奴が好きなときに好きな場所に出現することができるにしてもだ」
革命軍の補給基地が八四ヵ所にのぼることは、王国軍の知るところだが、そのいずれが次の根拠地とするか、それは予測しがたいところで、この場合、知識がかえって迷いの原因となるのである。そして、あるいは隠匿された補給基地がありそこを根拠地とするかもしれないという猜疑心も生じて決断はさらに精彩さを欠いていく。
小アイアスが嘆くと、彼の配下である人間の将であるラザール将軍が薄茶色の目を光らせて提案した。
「いっそ八四ヵ所の補給基地ことごとくを占拠ないし破壊すればよろしいのではないでしょうか? そうすれば革命軍は餓えて動けなくなる」
「机上の空論だ」
小アイアスが冷然と突き放す。>>249
「それをするには我が軍だけでは足りない。全軍をあげる必要がある。全軍をあげて動けばパリの我が軍根拠地が空になる。八四ヵ所のことごとくを制しようとしても、それは兵力分散の愚をおかすだけのことだ。現にいままで革命軍のライダーにしてやられたのは、すべて、各個撃破をもってではないか」
「では閣下は、手をこまねいて奴らの蠢動を見過ごすとおっしゃるのか」
ラザールが口調を鋭角的なものにした。アカイアの将帥は落ち着き払って相手の舌鋒をいなした。
「そうは言わぬ。追ったところで奴は逃げるだけという点を指摘しているのだ。いまいたずらに動けば奴にしかける機会を与えるだけだ」
「しかし、悠々と冬眠を決め込むほど、我々の物資は豊かではありません。マーシャル様たち中央からの干渉も受けることになりましょうぞ」
「だから、革命軍のライダーを誘い出す。罠にかけて奴を誘いだし、包囲殲滅する。これしかないだろう。問題は、どのような餌で奴を釣り上げるか、だが」
このとき、小アイアスとその幕僚たちの目が、革命軍の領袖(ロベスピエール)よりスブタイに向けられていたのを、固定観念として斥けることはできないであろう。小アイアス傘下であったサーヴァント率い入る部隊を既に二個部隊を殲滅されている現状では、ロベスピエールよりスブタイの武力こそが、彼らにとっては現実の脅威であった。
「革命軍のライダーの行動にはかならずパターンがあるはすだ」
そう言い出したのは、若く血気と野心に富んだラインバウトという男であった。そのパターンを解析さえすれば、スブタイが次にどの根拠地に現れるかが知れるだろう。
「ばかか、貴様は」
正直すぎる表現を、小アイアスが使った。>>250
「その調子で行動パターンが読み取れるまで待っていたら、何年かかるか知れたものではない。それともすべての補給基地を革命軍のライダーが食い潰すまで待つか」
怒りと不平で顔を赤くしたラインバウトに目もくれず小アイアスは考え、配下の将たちは上司の次の発言を待っている。
「革命軍のライダーがさかりのついた猫のようにうごきまわろうと、そんなものは放っておいて敵の首魁を撃破すればいいのだ。本来ならば……」
小アイアスが懸念しているのは現在のところ首都と前線の距離についてだ。現在のところ小アイアス軍は補給に関して心もとなかった。補給なしに戦えると考えるような愚劣な精神主義者は、小アイアスの陣営にはいなかった。
そうして小アイアスはひとつの結論を出すこととなる。
「我々が出せる一番上等な餌は俺くらいだろうな……」
◇◆◇
「罠にかかった」
スブタイが呟いた。
赤紫色のコートにズボン、革の長靴という軍装に、毛皮の帽子も加えていた。
ライダーのスブタイは草原の民より出でた、大帝国の創始者であるチンギス・カンにゆかりのある英霊である。
スブタイは若年の頃よりチンギス・カンに仕え、子飼いの戦士として鍛えられながらモンゴル統一の内戦を生き抜いた。金国、南宋への侵攻でも活躍し、ついには西へカスピ海を越え、ヨーロッパをも脅かした稀代の名将である。
かつては騎馬で地の果てを目指したスブタイ。今は自分の宝具で作られた力ある幻像の馬を駆って、奇妙な戦場にいる。幻馬の鞍には短い弓を括り付けている。本来は矢筒を持っていないのは英霊となった彼は魔力で矢を具現化すればよいので矢筒に矢を納める必要はなかった。
戦況は白熱していた。
「ようし。兵どもよ、逃げろ、逃げろ。そうだ。そこから広がれ。広がれ……」
幻馬の上から、馬群に声をかけ指示を出す。>>251
それに応え、スブタイの宝具『速不台・勇者(スブタイ・バアトル)』は陣形を完成しつつあった。
少し前、小アイアスが指揮する部隊が急襲してきたのだ。紡錘陣形を組んで、槍を構えながら突撃してきた。
それに押し出される形で、スブタイ指揮下の五〇〇騎は退いた。
一応、抗戦しながらではあるが、陣形を乱してしまい、なんとも惨めな後退であった。
だがしかし―――
スブタイの軍団は後退しながら半円“(”の形に広がっていた。
その真ん中を引き裂くべく、紡錘陣形を組んだ小アイアスの宝具『蟻頭兵団(ミュルミドネス・クラスタ)』が猛進してくる。凄まじい勢いだ。
小アイアスの指揮する部隊は人間の兵士と彼自身の宝具である兵士の混成部隊であった。
宝具『蟻頭兵団(ミュルミドネス・クラスタ)』は、ミュルミドネス人による兵隊を召喚する宝具である。ミュルミドネス人はアイギナ島の少数民族で、ゼウスにより蟻から人間へ生まれ変わった者たちの末裔である。目の間隔の広く鼻がないという蟻のような印象を受ける特徴的な細長い顔立ちの者たちた。彼らは結束力が強く集団戦術を得意として死すら恐れない精兵だ。彼らはアキレウスを王として崇拝するため、トロイア戦争にも彼の近衛兵として従軍していた。小アイアスはアキレウスの死後、彼らの指揮権を得て部隊を指揮していたことによって召喚することができる。
しかし、いかに精兵といえども連戦と高速移動の消耗は隠せない。
紡錘形と化した小アイアス部隊どもの圧力ははっきり落ちていた。もういなせる。
「いいぞ。広がって―――包み込め。食らいつくぞ」
スブタイの軍団が戦場で描いていた灰色の半円。
その弧の両端が伸びて、完全な円“〇”を創り出した。そして、円の中心に小アイアス部隊をぐるりと取り込んでしまったのである。
今までの動きは全て嘘。油断を誘うための欺瞞であった。>>252
「撃て」
スブタイは淡々と命じた。敵小アイアス部隊六五〇騎を円弧で包囲したスブタイ配下、こちらの生き残りは四〇六騎。ついに大攻勢に転じた。
スブタイが持つものと同じ濃い飴色の弓をバアトルたちが持っていた。小振りな弓に青い光をつがえ、射る。すぐに二の矢をつがえ、射る。射る。射る。射る。
三六〇度より矢の雨を降らせ、小アイアス部隊をなぶりものにする。
「西方の騎士どもは……やはりちょろいな」
スブタイはひとりごちた。
仕掛けを成功させるため、いくつも布石を敷いておいた。
度重なる彼の配下への攻撃や補給輸送部隊を襲撃して小アイアスを引き寄せるように仕向けていたのだ。
そして実際に戦うに際にも工夫を加えていた。スブタイが率いているバアトルは同じ軍団召喚宝具である『蟻頭兵団(ミュルミドネス・クラスタ)』と比べれば存在が稀薄である。防御力も低い。しかし魔力の消耗も比較的少ないのだ。
攻撃を受ければ陽炎のように霞む儚ささえもが猪武者の油断を誘う小道具になる。
それにスブタイの指揮による進撃のタイミングも含め、彼は敵将の闘志を煽り続けたのだ。
あとは血気に逸る敵軍を釣り出し、適当なところで包囲すればいい―――
現在、四方八方よりバアトル四〇〇騎は弓を撃ちつつける。百発百中だった。外れる矢はひとつとしてなく、必ず小アイアス部隊の身体を射貫く。それも関節部ばかり―――肩や肘、腰、膝、足首などを貫くのである。
騎士殺しの罠は、申し分なく機能している。>>253
小アイアスは歯痛を堪えるように顔を顰める。
彼の軍勢は、今まさに追い詰められているところであった。
革命軍の兵でもを一気に噛み砕くはずだったが、逆に包囲されてしまった。人間の兵の数は減り、精強なミュルドネス兵も集中砲火を浴びせかけられてダメージが蓄積されている。アキレウスが持つ逸品と比べれば遥かに劣るが鍛冶神(ヘイパイストス)が鍛えた鎧を着るミュルドネス兵であってもダメージは避けられない。
ミュルドネス兵一人を七、八本もの矢が串刺しにしていった。
人間兵は死亡するが精力無比なミュルドネス兵は死亡することはないが、戦力としては無力化されかけている。関節部に矢が突き刺さったことで、その部位が動かなくなったのだ。腕は満足に振れず、腰は回せず、足の屈伸さえもできない。
これでは戦うことはおろか、自分で矢を引き抜くことはできない。
「うろたえるな、兵たちよ! わずかな一騎でも敵将のもとにたどり着き、仕留めればいいことだ!」
小アイアスが戦局の変化を敏感に感じ取り、後方を警戒した。
さっき突破したばかりの革命軍のサーヴァントの宝具による兵の包囲―――これを構成していた敵兵がすみやかに陣形を組みなおしていた。
半円“)”の形で、再び小アイアス部隊を半包囲しにかかっていた。
そして、濃い飴色の弓で斉射がはじまった。後方から降り注ぐ矢の雨も、小アイアス部隊の関節部を次々と射貫き、行動不能に追い込んでいった。
「ちっ! あと少しで彼奴に槍が届くというのに!」
わずか五〇騎の兵に守られた敵将めがけて、小アイアスとその軍団は決死の前進を敢行していた。
もともと三〇〇騎いたミュルドネス兵はもう九七騎しかおらず、人間の兵士も既に三一人しかいない。
だが、それでも小アイアスとともに矢の雨が降り注ぐところで突き進み、ついに敵将まであと七、八〇〇メートルという距離にまで接近していた。
敵将たる革命軍のサーヴァントの姿を視認する。それは大柄な東洋人だった。
威風堂々ではない。なんとも自然な騎乗ぶりだった。脱力しているとも言えた。
そして―――毛皮の帽子をかぶり、膝まである赤紫色のコートをまとう大男は左手に短弓を構えていた。そこに右手で矢をつがえて、撃ち放つ。
「くそっ!」>>254
小アイアスはとっさに右手を前に突き出した。
それは本能の導きだった。いくさ場を駆け抜けた者の勘働き。次の刹那、必殺必中の矢が遥か前方から飛んで来た。
前に突き出していた小アイアスの手を、見事刺し貫く!
鋼鉄の鏃が完全に手のひらから突き出していた。この右手がなければ、矢はおそらく小アイアスの心臓に―――
ぞっとした瞬間だった。なんたる射芸の妙か!
これだけの距離があるうえに、今日は風が強い。にもかかわらず、こうも精確無比な射技。小アイアスたちを目視した視力も驚異的だ。
「なんという弓の神技か!」
戦慄する小アイアスの言葉はそれ以上続かなかった。
大柄な敵将が続けて放つ二矢が飛来する。一本目が小アイアスの手のひらに刺さる矢の筈に突き刺さり、矢ともども小アイアスの腕が破砕する。遮蔽物がなくなったところに、三本目の矢が小アイアスの鎧を突破して胸元に突き刺さる。
「む!?」
激痛が走る。霊核が破損したことを感得する。
小アイアスの視界は真っ暗になる。力が抜け地へどうと倒れる。
なんということだ、身体の自由が効かない、小アイアスは苦虫を嚙み潰したような顔をする。輝かしい武功をあげたかった、もっと多くの美女を抱きだかった、それももう叶わない。
「……これで、おしまいか」
小アイアスは眠りにつく。永遠に目覚めることのない眠りであった。>>255
小アイアスの死後、人間の兵士たちはスブタイが具現化した兵たちに取り囲まれていた。武装も解かれている。
「た、助けてくれ……俺達はあの男(小アイアス)に命令されていただけなんだ!」
「しかしお前たちが街を焼き、民を犯したのは変わらんだろう。襲撃と略奪(ハック・アンド・スラッシュ)は楽しかったんだろう?」
王国軍兵の命乞いに、スブタイは冷淡に応じる。凍土(ツンドラ)に吹きすさぶ寒波よりも冷たいスブタイの言葉に、兵士たちは震える。スブタイの合図で王国軍兵は全員射.殺された。
「今度は貴様らが糧となって俺の役に立つがいい。」
スブタイは容赦なく王国軍兵を魂喰いした。多くの英霊は魂喰いを忌避するものだが、スブタイの特異なところは真性の英霊ながらも、魂喰いを是とするところであった。彼にしてみれば人間と獣は変わらない、ひとつの生命だ。獲った獣の気持ちになっていては食事ができないのではないか。
まあ、ロベスピエール君には言えんがね、とスブタイは肩をすかせて見せる。
血の臭いを落とすために裸形で水浴びをしていたスブタイのもとへ向かう足音がする。サーヴァントの気配ではなく、そしてその歩く足音が既知なものだったので放っておいて水浴びを続ける。
「ライダーさま! まあ!?」
昨日まで寝床をともにしていた娘がやって来た。
「そんな顔をするな。寒さで縮まっているだけだ。いつもはもっと大きい。お前も知っているだろう」
スブタイは涼しい顔をしてそう嘯く。
娘がスブタイを探して彼のもとへ来たのは、スブタイへの伝令が残した密書を渡しに来たのだ。伝令は、彼女へ密書を託した後に死亡した。
「ロベスピエール君は敗走して雲隠れ、デュマ君は死亡したか。……あいつは欧州人でも骨のあるやつだった。残念なことだ」
同朋の不幸に冥福を祈るように暫く瞑目する。そうして再び部下が命を賭して届けた密書を再び読みはじめる。
「カルデアからの稀人……こいつらには会ってみる必要がありそうだな」
その前に、領袖ロベスピエールと合流しなければ、スブタイは出発の準備をすることにした。伏神聖杯戦争二日目、トップバッターいきやす。
二日目。
関西圏きっての港湾都市である伏神の夜は、コンビナートの夜景で眩く彩られる。
産業汚染が問題視されるようになってからは比較的抑えられる様にはなったものの、日本の産業を支える竜骨は深夜遅く迄稼働し続けている。
無造作なようで規則性と必然性を帯びたパイプラインの数々。
無骨な鉄筋コンクリートの迷宮に、目も眩むような監視塔の灯。
コンビナートを構成する凡ゆるモノが異物感を醸し出し、人間の生活圏とはかけ離れたある種の異界として成立していた。>>258
そんな鉄骨のジャングルを、白い鎧は躍ねる。
音も無く、限りなく気配を希釈させながら、ランサーは進む。
彼女の気配が薄まっているのは、自身の固有スキル『隠匿の指輪』の賜物だ。
『隠匿の指輪』は己の存在を偽装し迷彩を施す効果を有している。アサシンのクラススキル『気配遮断』ほどの効果は望むべくもないが、姿を迷彩化させる事で人や一工程(シングルアクション)の感知術式を潜り抜けることくらいなら容易い。
普段騎士道に則って行動するが故に、あまり使う事のないスキル。
彼女にとって「所有こそすれど、進んで出す必要性を感じない手札」に他ならないのだが────今となってはそうも言っていられない。
根底に澱んでいるのは自省の念だ。
自分が不甲斐ないばかりに、マスターを傷付けた。
自分がもっとしっかりしていれば、マスターは深傷に苦しみ床に伏せる羽目にはならなかったはずだ。
自分が、もっと。
陶器の様な手に力が篭る、怒りの向き先は自分自身だ。>>259
鉄塔の頂上まで一息で跳躍し、周囲の景色を一望する。
市街地から少し視線を右にずらすと大きな山にぶつかる、そこは昨日マスターと地形を把握する為に歩き回った場所になる。
市街地と山間部を隔てる様に流れる川には三本の橋が架かっていて、そのどれか一つを渡る以外には移動方法は無さそうだ。
「手段を選ばない人間なら先ず彼処の橋を爆破して、移動手段を限定させるでしょうか?」
(…ぞっとしないな、魔術師同士の戦いなんだからそんな派手な真似はしないと思うが)
「いえ、あり得るかと。何せ初日に市街地内で夜襲を掛ける連中ですから、何を仕掛けて来ても不思議はありません」
念話で語り掛けるマスターの楽観を真っ向から否定しながら、ランサーは言葉を続ける。
「それに大抵の事件や事故は聖杯戦争の運営者が揉み消すか、或いは偽装工作を計る事でしょう。
魔術師は神秘の秘匿を重んじる人種ですので、いつの時代も魔術絡みの悲劇は捻じ曲げられるのが常です」
(…そういうものなのか)
「そういうものなのです」>>260
都会の喧騒を睥睨しながらランサーは外套を口元に寄せた。
深夜に吹き晒した風が頬を打つ。
「聖杯戦争とは本来情け容赦無しの殺し合い、そうシスカさんから聞き及びました。
……ならばイコマの従者(サーヴァント)として、貴方がこれ以上矢面に立ち徒らに傷付くことを容認出来ません」
(─────)
やや気色ばんでいて、固い意思を帯びた発言。
それが打算の帯びた言葉であるならば幾許かの反論が出来ようが、彼女のは心から主人の身を案じる忠言であるが故に、マスターの亥狛は無碍に出来ない。
「……私の視覚が間接的にイコマの目と繋がっているのが分かるでしょうか。
簡単な視覚共有の魔術なのですが、周囲の情報を主観的に観測するだけならこの様な手法でも問題はない筈です」
つまりマスターが態々脚を使って偵察する必要性はない、と。
ランサーは敢えて明言はしなかったが、彼女の言わんとする事を理解出来ない程亥狛は愚かではない。
彼女の意見は尤もだと思うし、単純な理屈で言えば生命線であるマスターは姿を隠して行動するのが定石なのだろうとも思う。>>261
だが本当にそれでいいのだろうか。
理屈では解っても身体が納得出来てない、そう思ってしまう自分がいた。
(サーヴァントに仕事を全部おっ被せて、屋敷にこもって結果だけを待つ……それって本当に『俺が戦った』って言えるんだろうか?)
「安定した魔力を供給し続ける事も立派なマスターの務めです。単純な役割分担だと理解して下さい」
(────そんな、)
それじゃあ置き物と変わらないではないか。
そう言いかけて、喉の奥で言葉を押し殺.す。
仮に明言したところでランサーはどう返答するだろうか?それを聞くのが怖くなった。
それは少なくとも彼自身に思い当たる節があるからに他ならない。
昨日の手痛い失態を恥じ入っているのは何もランサーだけではない。
相手の襲撃という可能性を考慮せずに魔術的な迷彩処理も施さないまま往来を闊歩していた亥狛本人も彼女と同じくらい自身を責め立てていたのだ。
────少なくとも今現時点で自分は何もマスターらしいことを果たせていない。
────不甲斐ない主人だ、ランサーの脚を引っ張ってる。>>262
────コレでは、置き物の方がマシではないか。
胸にぐっと重くのしかかる感覚を覚えた。
(……分かった、偵察は任せる。けれど戦闘の段階になったら俺も戦場に出向いたって良いよな?)
「────ですが、イコマが狙われる危険性も」
(そんなの他の陣営だって同じさ。それに情けない事に俺は使い魔が使えない、だからどうしても戦闘は直接、この目で見ない事には判断が後手後手になってしまいかねない。
そうなると令呪も上手く使えなくなる……ランサーも強いサーヴァントだと思うけど、聖杯戦争を令呪抜きで勝ち抜けるだなんて思ってないだろう?)
────令呪などなくとも勝利を貴方に捧げることは容易い。
────どうか私を信じて、今は自分の身を案じて下さい。
どれだけそう言いたかった事か、ランサーは悔しさで思わず閉口してしまう。
昨日遭遇したサーヴァントの戦闘を見るに彼等は自身と同等、或いはそれ以上の規格の存在だと推測される。
そんな連中と戦う中で令呪は形勢を塗り替える妙手となり得るだろう。
亥狛の言い分は正しく、それ故にランサーの自罰的な側面をより刺激させてしまう。>>263
微かにすれ違う主従の思い。
両者とも自分の実力を恥じ、相手の事を思っての発言なのに、それが何故か空回ってしまう。
やり切れない思いがランサー陣営の間を包み込む。
「承知しました。なら偵察は私に一任して、今は養生なさって下さい。
……恐らく戦いは熾烈を極めるでしょう、それに備えて傷を少しでも癒す事に専念して頂きたい」
(判ったよ、ありがとうランサー……けど気を付けて。
もし敵に遭遇しても、様子見に徹するようにしてくれ。深追いしてランサーが痛手を負うのは出来る限り避けたい)
心得ております、とランサーは応じる。
そうしてマスターとの念話は切断された。
良いマスターに巡り会えたものだ、そうランサーは思う。
戦争という形式である以上、サーヴァントは所詮使い魔の範疇を出ることはない。一般的な魔術師にとって英霊の影法師たる彼等に対して背中を預けれど、それは銃器や戦闘機と同様の信頼感でしかなく。
つまりは所有物としてしか見ていない事が常である。
そんな魔術師達が参戦する非情な殺し合いの場で、斯様に善良な倫理観の持ち主をマスターに出来たのは何よりも嬉しい誤算だったと言えよう。
まさか霊体に過ぎない自身を人として扱い、剰え同じ視点で共に戦おうとしてくれるとは。>>264
良い主人に巡り会えたものだ。
可能ならば、彼を聖杯戦争の勝者にしてあげたい。
万が一それが叶わないとしても、善良な彼には非業な死を迎えて欲しくはない。
そう思うが故に、彼が前線に出る危険性を彼女は中々許容できずにいる。
────出来る限り戦闘行為を有利に運ばせる為にも、偵察は徹底して行おう。
そうすれば令呪を切らずとも、ひいては彼が前線に立たずとも勝利する事ができるかもしれない。
随分遠回りな配慮だな、と乾いた笑いがこみ上げる。
おそらく彼には理解して貰えない。マスターを前線から排除して勝とうとする自身を、マスターは快く思ってくれないかもしれない。
────だがそれでも構わない。
あの善良で無力な青年が死なずに済むのなら、騎士たる私は全霊を以って彼を守護しよう。
あの魔術とは縁遠い彼が無事に日向の道に戻れる為なら、従者である私は全力を尽くして数多の敵を屠り去ろう。
たとえその結末の果てに彼からの拒絶が待ち受けていたとしても。
目を細め、街全体を俯瞰する。
二日目の夜は懇々と過ぎて行く。はい、ここでバトンタッチー
「……隠神。俺の話、聞いてた?」
知らぬ間に自分の真横にすっと立っていた隠神に問う。
「そりゃもうばっちりと、な。……それで、強くなりたい、だったか?」
「ああ。俺は強くならなきゃいけないんだ。……そうじゃないと、誰もこの手で守れない」
義母さんに守られたあの瞬間、あの時から、俺はそうなりたいと決めた。
zz……zgmッ……ジジッ……あれ、本当にそうだったっけ?
「誰かを守りたい、その為には力は惜しまないと?」
「勿論だ。そうでなきゃ、俺がここに居る意味がない。自分の大事な人達の平和を、命を守ることが俺の理想で、やらなきゃいけないことだから」
愛しい人たちの健やかな人生を、守り続けることこそが自分にとっての全てだと。それしか自分にはないのだと彼は語る。それは、それは──『───あなたが女神のまま此方に来ることを拒んで幾星霜。そこから男妖へと化身(意識)を降ろしてまた幾星霜。……ようやく、此方(世界の外)に来たんですねぇ。誰かに殺される形という、特異も特異な形ですが』
『色々あったのさ。──なあ、女狐。儂はな』
何もかもを、自分一人で守り切れると思っていた。その結果が、このざまだ。
「竜胆。人に、自分の価値を預けるな。……他人に、自分の存在意義を見出すな」
それは、何処か遠い何かを思い返すような目で。何かを慈しみ、愛している目で。
「……何故、そんなことがアンタにわかる?」
「わかるとも。儂が解らぬわけがない。
──そうだな、断言しよう。……誰かを守りたい。救いたい。それで力を求めるのはいい。だがな」
殺され尽くした、同胞。かつて神威を奮っていた姿を維持できずに衰え砂となる、怨敵。私の力及ばずに恵みを与えられぬ、人の民草。
だから手を伸ばして。強くなろうって。彼等の証を残そうって。
「───独りで手を伸ばしすぎた末路は、他人に石を投げられ、恨まれ、惨たらしい死を迎えることとなる。儂らが守りたいと思った物は、何一つ残らぬ終幕として、な」
とても虚しそうな、とても愉しそうな、……とても、淋しそうな顔。
どういうこと、と隠神に聞き返せない。だってそれは、あまりにも自分と───「……まあ、斯様なことをした愚か者も居たとだけ、覚えておくと良い。誰かを守るために力を求めること自体は良いことであるのだろうからな」
深く息を吐き、椅子に腰掛ける。……儂も老いた。マスターといえど、人の前でこのような姿を見せることはほぼほぼなかったのに。……それとも、今日の戦闘で些か調子が狂ったか?
「……なあ、隠神。お前、ちょっと様子おかしくないか?どこか、身体を痛めたとか…」
……驚いた。まさか、儂の嘘が出会って僅かのやつに見破られるとは思わなんだ。やはり、かなり耄碌してしまったのかもしれない。……この男が、本質を見抜ける人間ということかもしれないが。
最初に気付いたのは、立ち姿。何処となく脇腹を庇っているような。次に気付いたのは、話す時の声。声を強めず、自分を労わるように喋っていた。
此処までは、俺の目に何となくついた程度。遥か彼方の智慧者ならば、この時点でわかっているのかもしれない。それ程までに隠し通していて見えなかった。
……最後に、隠神が無意識のうちに撫ぜたであろう脇腹。多分、これは本当に無自覚。だって今、本当に驚いてる姿が見えてるから。
「コホン。……そうさなぁ。少し臓腑を焼かれた程度だ。おぬしが気にする必要などないよ」
「……?───いや!?それって深めの損傷じゃんか!?」
さらっと言葉にした「臓腑を焼かれた」という発言。素人でもわかる明らかに重い傷。「なぁに、お前らから供給される魔力が潤沢でな。放っておいたら治る治る。時間はかかるが問題はない」
「いや、でも……なんか、なんか早く治る方法ないの?」
「そうさなぁ……呪術で治すことも出来るが、リソースが……あっ、」
ふと思いついたように声を出し、竜胆を見つめる。……いや、正確には竜胆の首筋を。
血とは、古来より霊的な効力の通貨とされる。血を使う儀式で他者と繋がったり、何かの事象を引き起こす代償としても捧げられる。神秘側の世界でも、血は多くの用途に使われることが多い。それこそ、そのような代償呪術もこの世には存在するのだから。
そして、魔術師ではないにせよ、かなりの魔力を保有する我がマスターの血には魔力が篭っている。
「……なにか、魔力の篭った血を補給出来れば───」
───お前を信じて委ねるものなど誰もいない。
「……何でもない、忘れてくれ。大丈夫だ、霊体化でもして魔力の節約をしていけば充分に治る」
くるり、と反対側を向く。……本当に自分が愚かで仕方がない。
……本当に愚かなのは、それでコイツが折れると思っていたこと。
「じゃあ、俺の血を吸えばいいだろ」
「──は?いやお前、俺の逸話を知らんのか?我、化け狸ぞ?」
「そんなの関係ない。治す方法を自分が持ってるのにやらない選択肢とかないだろ?」
あまりにも真っ直ぐな目で見られるので、少し吃驚する。……こんなに素直な少年と出会ったのは、本当に久し振りだ。
「……本当に、いいのか?」「ああ。やってくれ」軽く、竜胆の痛覚を麻痺させた後、ゆっくりと首筋に歯を当てる。変化の応用でその牙は普通の造形とは変わり、伝承にある吸血鬼のよう。
ずくり、と歯が皮膚を破る痛みがする。そして、流れ出ようとしていた暖かい血液が吸われる感覚。痛いことには痛いが耐えられない程ではない。
「っく、ふ、はぁっ……どう、だ?魔力はちゃんと行ってるか?」
「……ああ。良い感じだ。……まだやって良いのか?」
「明日に支しょ、うが無い程度までならっ…嬉しい、かな」
「御意」
───甘い。とても甘い。
この場合の甘いは、味では無くただの比喩なのだが。それ程までに彼の血は魔力が篭っている。この血を、治癒のリソースに回すために吸いながら呪術を行使する。
───それと同時に、マスターの素直さも伝わってきて。
血を吸われている時の息遣い、筋肉の動き、紡ぐ言葉。その一つ一つが、隠神の判断を信じ切って、委ねている。
───これは、いけない。これはダメだ。このままだと、儂(女神)の本能(欲望)が溢れてしまう。妖魔としての隠神刑部が何度も何度も止めようと、神(消えた女神)の熱は止まらない。
マスターを、騙し(穢し)たくて堪らない──以下、若干の閲覧注意要素&薔薇要素と見受けられる場合がある描写です
「竜胆、口を開けろ。」「えっ…むぐ、」
「そのまま儂の指を吸え。んでもって儂の血を飲め」
言われた通りに隠神の人差し指から流れる血を吸う。鉄の匂い、何とも言えない味、そして───
脳に走る、電撃。
「っは、な、にこれ。頭が、ふわって、身体が、しび、れ」
「すまん。すまんのぅ。だが儂も止められん。嘘と破滅という本能が、どうしようもなく蝕むでな」
吸われる毎に、自分から命が抜け出て行く感覚がする。血が流れる度に、視界がホワイトアウトする。耳鳴りで周囲の音は聞こえなくて、身体も思う通りに動かない。
「や、そろそろ、止めっ……はぐっ、あ、」
それでも止まらない。身体がどんどん熱く、それでいて自分の意志とは別に動く。ふらり、と立っていられなくてベッドと隠神に体を預けてしまう。痛みは既にない。あるのは吸われる感覚だけ。
「はぁ、んっぐ、ごふっ、む…り…」
意識が、消える───
寸前に。ドゴォッ!!という音と共に、吸われる感覚は消え、そのままベッドに倒れ込む。竜胆が意識が消える寸前に見えたのは、口元を赤く染めた隠神と、隠神に容赦なく斧を振り下ろした少女で───「普通に血を吸うのまでは互いの合意の下なら許容してたけど、ここまでしていいわけないでしょう!あともう少しでコイツ、明日動けなくなってたっての!」
まともに強化を加えていないため、神秘の塊であるサーヴァントにはあまり効いていないがそれでいい。取り敢えず、キャスターを竜胆から離すことが先決だ。
「それは……すまん」
「『すまん』ですんだら令呪なんて必要ないのよっ!もう少し遅れてたら本当に令呪を切ってたわ。……目覚ましたら、謝りなさい。許してもらえるかどうかは知らないわ。どっちに転んでもしっかりと受け止めなさいよね」
治癒をかけ、傷を癒す。隠神にも手伝わせて修復を重ねていく。
「応。……意識は既に途切れているだろうが、改めて。本当にすまんのぅ、竜胆。この償いは、儂が此処にいる間に必ず返すから」
終わりですさて、とゲルトが椅子から腰をあげた。
「戦況は上々。朽崎遥は目論見通りルーカス・ソーラァイトと激突、戦力の分断、マスターの撹乱とバーサーカーの孤立に成功……それで、現在進行形でどうなってる、アーチャー?」
屋根の上に立ち、千里眼で遠視して戦場を観察しているアーチャーに問う。
「ランサー陣営が戦闘を開始。白兵戦は流石と言えるでしょうが、やはり決め手に欠ける事に加え、相手が死ぶとい点と超火力を有している点がネックでしょう」
「それもおおよそ通りの見当だ。それで、ライダー陣営は? 翼竜(ワイバーン)を大量生産したのはいいけと、それ以外での動向は?」
「ライダーは翼竜(ワイバーン)を生産した後に隠遁し、現在進行形で宝具の発動を継続していると。マスターの方はバーサーカーのマスターとの交戦を始め、自らの隠し持つ一手一手を出しているようです」
彼は謂わばマスターの代わりとなる目であり、状況を最も詳しく説明する事ができる人材だ。そして何より有難いのが、サーヴァントの目を通して同じものを確認する事ができるところだ。
マスター同士の小競り合いには、執行者所以の好奇心さが出てしまい、神秘の秘匿を絶対とする魔術師にとって大いに不粋極まりない行為だが、今後の仕事で役に立つかもしれない利益もあったので覗き見た。
「ふむふむ……加工した礼装での呪詛と、ルーカス・ソーラァイト直伝の光素魔術の数々。興味は尽きないねぇ」>>274
次に、この作戦の肝となっている『サーヴァント・バーサーカーの討伐』に出向いているランサー陣営の様子を遠視する。
「相変わらずな暴れっぷりは健在、と。でも、ランサーの方も何やら覚悟か宝具かで雰囲気が以前とは違う。気迫……そういうものがこの距離からでも伝わっているようだよ」
「しかし、パラメーターだけでは能力値の差は埋められません。超高速移動からの白兵戦に持ち込むのは強みですが、いつ対策され、戦況が逆転するか……」
当然、ゲルトもそちらの予想も予めしている。
王書(シャー・ナーメ)にて語られる魔の王とは、聖王を陥落させた程に強かであり、狂っているような言動の裏には常に奸計が練られている。
敵に賞賛を送るのは癪だが、相手にすると非常に厄介な存在だと思わざるを得ない。
「という訳でアーチャー、黒野くんたちの援護に向かって」
「……その発言が来ることは予想していたので、質問を質問で返させていただきます──宜しいのですか?」
「いいも何も、これはマスター命令だ。俺の心配をしているなら、期待に添えるように安心していいと言っておこう。この工房の結界は大したものだし、“認識している敵”は交戦中、そして隠遁した同盟者も動く様子はない。で……俺の予想だけど、バーサーカー陣営との決着後、確実に不安要素が動き出す。その時、個人的に同盟を交わした黒野くんを失うのは痛手だと……」
アーチャーは一応納得はした、“一応”は。
長々とそれらしい御託を並べているものの、ゲルトが双介に入れ込んでいるのは、英霊の彼には分かっていた。理由もマスターの過去を垣間見れば予測できる。
だが、彼はあえてそれを口にしない。案外照れ屋なゲルトの事だ、はぐらかして本心を隠そうとするだろう。
「はいはい、それじゃ早く行った行った。他陣営の状況もこちらから報告なりするから」
「了解しました。では、暫しの間、戦場へ向かわせていただきます」──戦には勝利した。
この時、マーシャルの心を支配したのはこの感情だった。
事実、武神関羽との戦いに勝利したのは間違い。間違いないが────それ相応の痛手を負ってしまった。
自軍の兵士は勿論の事だが、何より痛恨の極みだったのがガヌロンの消失。内政やその他諸々の事柄は彼がの殆どを一人で取り仕切っていたのだ。
王国の財務省、兵士士気管理、女王陛下の機嫌取りなどなど、将が戦場に出張っている間、一人でこれらを全て熟し、加えて時には偵察にも出ていた。この損失は余りにも重い。
収穫らしい収穫は、関羽を下した際に宝具の効力によって頂戴した『万人之敵』と『冷艶鋸』の戦利品のみ。
(武器だけ補充しましたが、代わりに有能な人材が損失しては意味がない。事実、ガヌロン卿の代わりになる人材は私を除いて存在しないに等しい。太陽王は我が強く、現状の内政を整えるとは考え難く、月兎殿は政治とは縁がない上に休養中だ。となると、やはり私が代役を務めるしかありません……)
これから先の事を思考しながら馬を王国へと走らせるマーシャル。
背後には疲労した表情を隠そうともしない兵士たちが同じように馬を走らせて後に続いている。>>277
彼らとチラリと一瞥して、別方面の思考を張り巡らせた。
(兵士たちの限界はとうに超えている。このまま立て続けに戦場へ駆り出されば戦以前に過労によって命を落とし兼ねない。彼らには休息が必要ですが、女王陛下がそれを許すかどうか……帰還次第、掛け合ってみるしかありませんか)
直談という名のご機嫌取りが、自らに回ってくるとはと、皮肉げ笑う。
ふと気づけば、馬はいつの間にか城門を潜り抜けていた後だった。
考え事をし過ぎたようだと眉間を指でマッサージし、目の疲れを取る。
これからやる事が山程あるのだから、この程度で疲弊している場合ではないし、生前はこれ以上の業務を熟したのだ。
──さて、先ずは女王陛下ですね。次に、月兎殿の話を聞くとしましょう。
下馬した後、マーシャルは首の関節を鳴らしながら王間へと足を運んだ。>>278
できればクローディアさんとユーさんがパスを受け取ってくれると嬉しい。>>234
「後悔させてやるぞ!!!」
怒声と共に振るわれる刃。それが僕の元へ届く寸前、準備していた魔術を起動。円状の水が彼と僕の間に出現し、剣を防ぐ盾とする。
「おっと、危ないね☆」
「くぅっ……!」
ヴィヴィアンはすかさず盾を回り込もうとする。しかしその先にはもう一枚の盾。更にもう一枚を僕の背後に展開。ーーー三枚の浮遊する盾による防御によって、ヴィヴィアンは数度の攻撃を弾かれる。
「どうだい、僕の鏡は。なかなか硬いだろ♪本当はセイバーの為に使うつもりだったんだけどね」
「舐めるなっ……!」
ヴィヴィアンは怒りの表情を更に強め、正面の鏡を斬りつける。何度か剣を弾かれ、それでもとばかりに攻撃を続けようとするヴィヴィアン。剣を振りかぶり、その片足が地面を踏み込んだ瞬間ーーー
「何⁉︎」
彼は跳躍した。鏡の盾を飛び越えるように。
(フェイント……!)
彼はあたかも鏡を攻撃すると見せかけて、僕の"意識"の虚を突いた。
「はあぁっ!」
空中から落ちつつ放たれる斬撃。それを背後の盾を移動させガード。ヴィヴィアンは地上に落ちたと同時に距離を取る。>>280
「やはりな……オマエのその鏡は、オマエの意思でしか動かない。その鏡自体に、オレの動きを予測するような能力は無いと言う訳だ」
「ふふっ……ご名答♪いやぁ、まさかあれだけの動きで当てられるなんてね。Mr.ビリジアン、君の言った通り、この鏡は僕の意識を割かないと動かせない。だから、何枚も展開すると扱いに困っちゃうんだよネ☆」
「弱点を自ら語るか、余裕だな」
「そうかもネ☆」
「……それともう一つ、オマエの鏡についてだ」
ヴィヴィアンが言葉を切り、直後に高速の突きを放つ。僕は一枚の鏡を彼との間に挟み込む。しかし、鏡が彼の攻撃を受け止めた時ーーーパリン。
高い破砕音が響き、水鏡の盾が割れる。割れた鏡は只の水に戻り、じきに消滅した。
「壊せるなァ、コレ」
今回動かしたのは、彼の攻撃を一番受け止めていた鏡だ。今の一撃に至るまでに、彼は鏡の耐久度を見極めたらしい。その事実を飲み込んだ時、僕は知らず、笑っていた。
「ふふ、はははは!いいねぇ、やる気満々だね♪君の熱に当てられて、僕も昂ぶってしまうヨ☆」
そう、だから。ーーーもう少し本気を出そうかな。
割れた分の鏡を出現させて補充。更に2枚を追加。これで5枚の鏡が辺りに出現した事になる。
展開が終わるか終わらないかの時、ヴィヴィアンが攻撃を再開。鏡で彼の攻撃を妨害するが、彼はその合間を縫い、時に刃で鏡を粉砕する。どうやら破壊するコツを掴んだらしい。
破壊される側から鏡を補充。身体能力を強化し、彼から距離を取り続ける。正直、ほんの少し時間を稼げればいいのサ☆ほんの少し、呪文を口ずさむだけの時間を。
「"並行世界接続、道標起動、自己変化・戦闘ーーー確定"」
鏡の一枚が、僕の左半身から右半身へと移動していく。まるで、水の膜を通り抜けるように。>>281
そして、抜けた部分から僕は変わる。今回は、予め使い勝手の良い自分を選定し、道標(アンカー)を設置した。そうする事で手間が色々減るのさ。
尤も、この魔術の制約も色々あるから万能では無いんだけど。
「さあ、Mr.ビリジアン。お楽しみを再開しようか♪」
右手に水の剣を出現させる。離れているヴィヴィアンへと剣を振るう。すると、剣の刀身が伸び、鞭のように彼へ襲いかかる。
爆音、爆風。メイドの放った爆撃を咄嗟に取り出した盾で防ぐ。
(妙だな……)
威力が"低すぎる"。盾を使わずとも、大したダメージにはならなかっただろう。私に届かない爆弾しか作れない程、あのメイドの能力が低いとは思えなかった。だとすればーーー
(手を抜いている?)
断定はできないが、この爆弾の殺傷力の低さには何かしらの作為を感じる。
(まあ、今の私には関係ないか)
警戒はするが、どのような意図かを考えるのは後だ。今は目の前の敵を倒すことを第一にする。さて、あのメイドはーーー
「そこです」
言葉と共に爆撃。即座に盾を構えて防御。直後に声の方へと不可視の剣を振るう。
「ふふ」
メイドは軽々と回避。間合いはもう測られているらしい。
爆撃を防ぎつつ、攻撃を繰り出す。どちらの攻撃も決定打にならない、拮抗した状態が暫し続く。>>238
九終
「仕方ありません、受けますわ。けれど、少しでも変な術を掛けようとすれば、私自身かサーヴァントからの報復を受けますわよ」
「ああ、分かってる。それじゃあ、始めようか」
そこから、わたくしはユージーンと感覚を共有。わたくしの視界に映る彼自身を、彼の魔眼で視る。
彼と繋がった感覚が、彼の心に嘘がない事を告げる。
(そう……本当に対等な同盟を望んでいますのね)
どうだろうか。ここまで潔白を証明しようとする彼のことを、信じてみほても良いかも知れないーーー
(!)
瞬間、彼の頭をよぎった事柄がわたくしに伝わる。それは、彼のサーヴァント、バーサーカーを召喚した時の事。
地面に転がされた人、血濡れたバーサーカーの姿、そしてーーー参加者に課せられたミッション。
『バーサーカー陣営ミッション2。魂喰いをせよ』
今感覚を共有する人物、ユージーン・バックヤードはこのミッションに従い、人を殺めた。ほとんど躊躇いなく。
「貴方……しましたのね!魂喰いを!」
魔術を扱う者は、時に人の命を路傍の石の様に扱う事がある。わたくしも、魔術を教わっていくらか経った頃に、その心構えは教わった。けれど今のわたくしが目指す道は、それとは対極と言って良い。だから彼の所業を、認めたくはない。
「あー、やっぱりそれ受け入れられないか」
バツが悪そうにユージーンは言う。
「ええ、わたくしは貴方の行いを受け入れたくありません。けれど、魔術師は時に人の命をも道具にする。それが全くわからない訳ではありません。だから、ムッシュ・ユージーン。聞かせてくださいませ。貴方は何故、そこまで大金を求めるのかしら?」
〜>>284
「しかし女王陛下、兵士が即座に潰れるという刹那を愉しみたいというのであれば話は別ですが、継続的に、より長く苦しみ、絶望に濡れてゆく様を拝見しとうありませんか? さすれば、陛下の愉しみもより長続きするというもの……」
言い方は冷徹だが、兵士たちを助ける為の苦肉の策だ。
これは女王陛下に対して意見を申している──つまりは命令に対して逆らっているとも取られ兼ねないものの、兵力は勿論の事だが、これ以上死なせたくはなかったのも本音に入っている。
一か八かの賭け。これで受容されなければそれまでで、最悪の場合はマーシャルにも罰が下される可能性も無きにしも非ずだ。
緊張が高まる中、騎士は女王の御前で膝をつき、彼女から下される決定を只々待った。>>286
「はい、玉兎印の団子餅です。疲労回復と栄養補給用に調合してるので効果は抜群です」
串に刺さったそれを兵士達に配りながら玉兎はマーシャルの元へとやって来た。
「酷い顔です。ガヌロンさんがいなくなって彼の仕事を引き継いで、随分と窶れてるです」
そう言ってマーシャルにも団子を差し出す。琥珀色のたれがかかっていて兵士達に渡した物よりも味を重視した物である。
「そう言うあなたは随分変わりましたね」
既に玉兎の目から狂気は失われており以前のように嬉々として前線でその槍を振るうことはせずこうして後方支援に務めているという。
「これが元々の兎[わたし]です。あ!あからさまに落胆したです!いいです?戦ではこういった後方支援も大事ですし別に兎[わたし]は戦えなくなったわけではなく……」
玉兎がすぅ、と目を細める。マーシャルがその視線の先を見遣るとそこには休息と栄養満点の食事にありつけた安心感からか顔を綻ばせた兵士の姿があった。>>287
「待っ」
口を開いた時には既に遅く、玉兎が槍を投擲し兵士の喉を貫いた。
「こうしてマスターの言い付けに背く者は殺.せますし既に敵と認識してるカルデアとはちゃんと戦えるです」
絶句するマーシャルをよそに玉兎は喉からどくどくと血を流す兵士を担ぎ上げると窓から外へ投げ捨てた。
「ちょうど良かったです。そろそろアイツらに餌をやらないと勝手に平民を虐.殺し始めてしまうところです」
残された兵士達の表情が恐怖一色に染まったのは言うまでもない。stage投稿
>>292
先導するやや後ろの場所で神野とエドワードは阪上の印象を語っていた
「あいつの事、どう思うアーチャー?」
「あー……………」
その軽快さはどこへやら、伝説の王子は言い澱みながらも言葉を紡ぐ
「よくわからないな……………」
「適当な事言ってるわけじゃないよな?」
「そんな訳あるかい!私だってね、あの男をよく見てみたさ!」
「じゃあ何故わからない?何か印象とかもあるだろ?」
「結論を急ぐなマスター。私の印象は彼は"分からない"ということが分かったのさ」
「……………実に奇妙だな」
「ああそうさな。彼の内心は私にはとんと分からない。臆病なように見えて大胆、冷静だが熱血、そして男のようで女にも見える……まるで霧(ミスト)だぜ。掴むところが見つかりゃしない」
「霧(ミスト)ね。だが、奴は人だ。実体がない筈がない。ならば?」
「「私達の敵じゃない」」>>309
取り敢えずここで終わりです
次はドロテーアちゃんを予定しております>>283
「何故、か…。インタビューで言った通り友人と遊ぶためさ。
もっと言うならまた友人と遊べるようになるため、かな」
ユージーンとルイの感覚共有はまだ繋がっている。故にユージーンの話していることに嘘がないことがルイに伝わる。
「俺の友人、日向優人って言うんだけどな。今そいつは事故で半身不随になって病院のベッドの上なんだよ。
トラックに轢かれそうな子供を庇って跳ねられて。本当、馬鹿だよな…」
遠い目をするユージーン。ここではない何処かを眺めるような目線の先には男性客への対応をしている店員の姿があった。そしてユージーンの魔眼でその店員がにこやかな顔の裏で男性の頭頂部の事を蔑んでいるのが見て取れる。
「醜いもんだろ?大体の人間は上っ面だけいい顔して裏じゃ何考えてるんだか分からん。…俺には分かるが」
やれやれと手を広げ首を振る。そして不意に目を開けると真剣な顔でルイを見据える。
「あいつにはそれがない。裏表が無いって言えば聞こえがいいが、要は馬鹿なんだよ。愛すべき馬鹿だ。ずっと人間の汚い所を見続けてきた俺にとって、それがどれだけ得難い事だったか…。
だから俺はどんな手を使っても大金を手に入れて、あいつを治してやりたいんだ。だから頼む!俺達と同盟を結んでくれ」
そう言ってユージーンは机に両手をつき、頭を下げた。「街に出ましょう、ライダー」
昨夜の戦闘から一夜、相変わらずこちらから距離を放すように接するマスターからの申し出にその恐怖心を気遣うように霊体化していたライダーはそのままに問いを返す。
『昨日の今日でかい?確かに、昨夜の戦闘でのダメージは回復して僕は全力で応戦できる。他のサーヴァントを相手にするには市街地よりも拓けた郊外の方が戦車も使えると進言するけど……、あぁ。昨日の彼かい?』
察しの良い道具(サーヴァント)に気を良くしゲルトラウデは鷹揚に頷く。
「ええ、その通り。明確に敵対するまではあの人狼は様子見よ。あのランサーではどの道貴方には勝てないもの。精々同族の情けをかけてあげる」
まぁ最も。私はマスター殺しなどするつもりは端からないのだけれど。脳内でそう独り言ちながら、ゲルトラウデは立ち上がり、支度を済ませていく。
マスター殺し。聖杯戦争を制するにあたっての常套手段であるそれを少女は放棄する。理由は簡単だ。徒にヒトの命を減らしたくはないからだ。人命は尊い――、だから大切にしよう。という理由ではない。
アーレの一族の根源への到達には天束ねる信仰が必要不可欠だ。聖杯を手に入れ信仰を一極化したとしても信仰が足りず神になれなかったなど本末転倒。
魔術師としての一般論としてその手段は認める所であるが、根源を目指す魔術師としては言語道断なのだ。
カジュアルな黒のコートも纏い、同じくエナメル皮の黒のブーツ、顔バレを避ける為にサングラスをかけ、長い髪を後頭部でシニョンのように纏める。
一見若いながらも海外からの金持ちの令嬢といった風貌となったゲルトラウデはライダーを伴い、ランサーのマスターを探すため、下界へと降り立った。>>282
舞台の中央、騎士を中心にして断続的に爆発が起こる。絶えず爆煙が立ち込めその煙の中からセイバーを目掛けてカードが四方八方、あるものは爆弾として、あるものは鎧を切断する程の切れ味をもって襲い掛かる。
だがセイバーは歯牙にもかけない。それでもアサシンは爆煙の中に潜み攻撃を繰り返す。
「少し、昔話をしても宜しいでしょうか?」
「結構だ……と言っても話すのだろう?」
「ふふ、連れないお方」
まるで世間話をする様に言葉を交わしながら、剣戟を繰り出す騎士と躱すメイド。煙の中で攻防は続く
「昔々、ある所に男の子がおりました———
男の子には家族がおりました。厳しい父と優しい母。そして頼りになる兄を、男の子はとても慕っておりました。
とてもとてもふつうの家族のようでしたが、実はこの家族は魔術師の家族だったのです。彼らは日夜「完全なるヒト」を作り出すために研究を続けていました。
そのための完全なカラダを作るために、彼らは人形を作り続けてきたのです。そして男の子も修行に明け暮れました。
ですが出来るのは失敗作ばかり……次第に兄と両親に見限られた彼は傷付き旅に出ます。
そして旅先で「なんでも願いを叶えてくれる聖杯」と出会いました。
男の子は聖杯を求め奪い合う戦いに身を投じますが、立ちはだかるのは名うての魔術師に武勇を誇る英雄の写し身たち……。ふつうに戦っては勝てる筈がありません。
そこで男の子は賭け/バ-サ-カ-に出ました。それは使い捨ての人形を賭けた痛くも痒くも無い賭けの筈でした。
そして———
ーcont.ー>>313
水で出来た剣がその刀身を伸ばし、咄嗟に防ぐべく構えた剣をすり抜け脇腹を抉る。
「さっきまでの威勢はどうしちゃったのかな、Mr.ビリジアン!♪」
「調子に乗るなよ……ッ!」
とは言ったが鞭か……剣と鞭のリーチ差は如何ともし難い。
連続で迫る水の鞭はまるで蛇か竜か……防ぎきれずに身を守る為に後退してしまったが故に、今更剣の間合いに飛び込むのはこれ以上の負傷を計算に入れなければならない。
「チッ……Broken」
錬成を解かれた剣がその場に溶け落ちる。
「おっと☆ 今更武器を捨てて降参なんて興醒めする事は言わないよね♪」
「当然……舐めるなよ」
新しいカートリッジを差し込み次なる武器を錬成する。剣の間合いに入れないなら
「槍となれ……Awaken!!」
ーpassー>>311
頭を下げるムッシュ・ユージーンを前に、頭に浮かんだ言葉を投げかける。
「誰かを犠牲にして助けられても、優人さんは喜ばないと思いますわ」
「それは関係ない。あいつは子供を助けたことを「助けたいと思ったからやった」と言った。人を跳ねたことに変わりは無いトラックの運転手は業務上なんたらでしょっぴかれるのは変わらなかったし助けられた子供の親は優人の入院費の一部を負担するはめになった。まあ何が言いたいのかと言うとだな、「俺が治したいと思ったからやってる」んだ。その結果他人が不幸になっても関係ない。優人に嫌われたら多少凹むが、それは仕方ない」
顔を上げて、固い意志を滲ませて語るユージーンに気圧され、少し返答に迷う。
「少し、考えさせてくださいな。こちらを見ず、感覚共有も切りますわ」
「ああ」
短い返答。その後、向かいに座る彼はこちらから顔を背け、目を閉ざした。
わたくしは内心で自問する。
(どうすればいいんですの……?)
彼の行いを、わたくしは認めたくない。例え自分の中で1、2を争う大事なことの為だとしても、人の命を犠牲にすることを良しとはできない。
何故なら、わたくしが目指すのはーーー全ての人が貧困に悩まず、学を得、芸術が世に溢れるーーーそんな、誰かを"活かす"世界。決して誰かをころす為の世界ではありません。
(わたくしだけで、わたくしの時代だけでできるなんて思わない。けれど、今ここで彼の所業を認めてしまったらーーーわたくしは、大事な何かを喪ってしまう)>>315 しかし同時に、彼の境遇に感じ入るものも、ある。
人の悪意や利己性に嫌気が指していた日々。息苦しく、生き苦しい泥沼の中で得た光。わたくしに取っての"あの絵"、ムッシュ・ユージーンに取っての『日向優人』。
日向優人という名前を出した時、魔眼の力で感じた喜びと悔しさは計り知れなかった。ーーーそれなら。
「ムッシュ・ユージーン。まだ目は開けないで聴いてくださいまし」
彼は軽く頷く。それを確認し、一つ深呼吸して告げる。
「貴方との同盟、受けますわ。そして、一つご提案を。ーーーもし貴方が敗退なさったら、優人さんの手術の費用をわたくしが負担します。その代わり、あなたが犠牲にした方の遺族へ、何かしらの償いをしてください」
「なにかしらって例えば?遺骨を届けて「俺が殺しましたすいません」って言って遺族に刺される、とかそんな感じ?」
「いいえ、違います!」
真剣な提案への反応に、軽薄な響きがあったことに苛立ち、語気が強くなってしまう。いけない、平静に、平静に。淑やかにしなければ。
ユージーンが声に驚いたように、目を開けてこちらを見る。
「そうか。あんたの"ビジネス"に協力しろと」
相手が"ビジネス"を若干強調する。
「……貴方、どこまで読まれました?」
「ああ、実はインタビュー映像を見て、あんたの願いについてはほぼ知ってる。悪い、癖みたいなものだ」
鼓動が早まる。やっぱり、彼は苦手だ。躊躇いも、不安も、秘密も、全部知られてしまう。
ーーー『わたくしの理想に協力してください』。
その言葉を言おうか、迷っていた。わたくしの理想に賛同してくれるかどうか、話してもいい相手かどうか、躊躇った。そんな恥ずかしい内面さえ、彼の目は見透かすのだろう。
ならばせめて、これから先の言葉は真摯に語ろう。
「わたくしは、貴方の行いを決して認めたくありません。けれど、優人さんへの真剣さは伝わりました。だからーーーこれがわたくしの最大限。認めないけれど、お互いの願いが成就するように協力する。貴方はよろしくて?」
彼の目を、突き刺すように見つて告げる。〜〜タクシーから降りた方喰菫は普段付けている仮面を外していた。街中で仮面をしているのは目立つというのもあるが今は聖杯大会運営のコードネーム“トリカブト”ではなく方喰菫個人として参加しているというのもある。そもそもそのコードネームもエンタメ性を重視する為に上司からの指示で名乗っているものである。ならば仕事ではないここではその仮面は必要ない。
『マスター、我も姿を現してもいいだろうか?』
念話で話し掛けてくるのは彼女のサーヴァント『復讐者』のクラス、アヴェンジャーである。現在は霊体化し傍に佇んでいる状態だ。
「ああ、そうだな。他の者達は霊体化していないようだし、この大会ではそこまで肩肘張らなくとも良いだろう」
「ほう、それは何故だ?」
霊体化を解除し姿を見せた大柄の男は疑問符を浮かべる。今まで彼が菫と参加してきた聖杯大会では素顔を隠し冷徹に対戦相手を葬ってきたのだ。そんな彼女の意図が読めないようだ。
「この大会は所謂演劇、ステージだ。なら他の参加者は敵というよりはむしろ共演者のようなものだろう。滅多な事では死なないだろうし、息抜きのつもりで参加するつもりだ。勿論、優勝は狙うつもりだがな」
ふ、と薄く笑顔を見せる菫。彼女は仕事や怨敵の前でなければ少しばかりクールなだけの普通の女性なのだ。
「……本当は?」
「人の金で美味しいものが食べたい!」>>317
「やあやあやあ!待っていたよ」
馬に跨ったウエスタン風の保安官のような男が二人を出迎えた。姿形は違えど阪上尚鹿だと分かる。それは別に名札があるとかではなく、なんとなく。恐らく敢えて分かるように気配などを完璧には変えていないのだろう。
「お招きいただき感謝する。自己紹介は今した方がいいだろうか?」
「いやいや、立ち話もなんだ。中でゆっくりしてくれたまえ」
馬から降りた男は一瞬で背筋の伸びた老紳士に姿を変える。
「そうそう、令呪を拝見してもよろしいでしょうか?何、参加証のようなものです」
「ああ、それくらい問題ない」
そう言い右の袖を捲るとその腕には四角形が鎖のように繋がった痣のようなものがありそのうち三つの四角形が鮮やかに光を放つ。
「仕事柄監督役の真似事をすることがあってね。預託令呪のあった跡だよ。こっちにもある」
そう言ってもう片方も捲るとそこにも同じ跡がある。そちらは右腕とは違い全てが同じ色である。>>319「全く、一時はどうなることかと思ったぞ」
口を開いたのはアヴェンジャー。
「少し前に「人の金で美味しいものが食べたい!」などと言っておいてその相手を威圧するなど何を考えているのやら」
「なっ!?アヴェンジャーッそれは…っ」
アヴェンジャーがそう呟くとあたふたと慌てはじめる。親しいからこそ明かした本音をよりにもよって本人に暴露されたのだ。
「疑った上に驚かせたのだ。マスター、ちゃんと謝れるな?」
「子供扱いしないでくれ…
その…申し訳ない。私は死霊魔術師というものを嫌悪いや憎悪していて、もしかしてと思っただけで過剰に反応してしまった」
ぺこりと頭を下げる菫に坂上は胸を撫で下ろし笑顔を浮かべる。
「いえいえ、お気になさらず。ですがそうですね…差し支えなければあなたの身の上話等も聞きたくなってしまいました。さあさあ、この店の料理はとても美味しいですよ」
「あ、あぁ…」
ばつが悪そうに頭を掻きながら歩いていく菫をアヴェンジャーは温かく見守っていた。「さて、では行こうか」
立香からの承諾をうけ、太陽王は歩き出す。
太陽王を追い歩いたその先にあったのは絢爛豪華なる舞台だった。
周囲には何もなくただソレだけがそこに存在しているだけだと言うのに唯一つで世界の彩りを塗り潰すかのような耀きを放っている。
「ヴェルサイユのモノ程ではないが、なかなかのものだろう?これほど演者が揃っているのだ、相応の舞台が無ければ格好が付かないだろう?」
「ふん、死合を見世物だとでも思っているようだな……気に食わん」
朗らかに笑って見せる太陽王に寺田が毒づく。
「なるほど、リヨンに敵対者との戦闘を見世物として提供することで民草に『護られている』という安堵を与えると同時に支持を得ていると言ったところか」
厩戸皇子はその様子を見て冷静に分析をはじめているようだった。
今や暴虐の限りを尽くす王国軍や自分の都合で動くはぐれのサーヴァント達が跋扈するこのフランスという国において安息の地ほど民が望むものは無い。
かの王がかつてヴェルサイユ宮殿を用いて民衆の心を掴んだ『魅せる』というカリスマ性にサーヴァントとしての武力が合わさったことでその支配基盤は盤石になったのだろう。
そして、カルデアは今、その支配を打ち破ろうとしている。>>321
「ここまで来たのだ。語り合うのは舞台の上で良かろう。さぁ、上がってくるが良い、決闘の舞台へ!」
先んじて太陽王が舞台の上へ上がる。
「ッッ!?」
瞬間、王自身が備えていた魔力……或いは単純な覇気といったものが膨れ上がるのが感じ取れた。
その様子に寺田が僅かに口元を綻ばせる。
「なるほど、いけ好かん輩だと思っておったが……奴にとっての舞台は『我等』にとっての刀と同じということか……!」
日ノ本の国の侍は刀を持った瞬間に敵を斬り捨てる為に最適な体へと切り替わるとされるが、舞台に上がった太陽王にも同様の現象が起きていると言ったところだろう。
「これはますます斬らねばならぬなぁ……」
血気盛んな表情を浮かべ、カルデア側からは真っ先に寺田が舞台の上へ上がる。
「では立香、我々も……」
「あぁ、行こう」
続いて立香と厩戸皇子が上がる。
太陽王はそれを見届けると、上機嫌で告げる。
『ではこれより、開幕だ!!演目は決闘(デュエル)。1人の女と愛する世界(フランス)を掛けて、血で血を洗う争いの始まりである!!』
宣誓と共に太陽王が剣を抜く。輝かしき王の聖剣・ジュワユーズを敵対者へと晒す。
カルデア側の両セイバーもそれぞれの得物に手をかけ、構え、そして……
『では……征くぞ……!』
太陽王が一歩踏み出すと、常人には捉えることさえ困難な速度で二人のセイバーに迫る。
しかし、相対するは剣の英霊二騎、太陽王を視界から逃すことなく、瞬時に己の得物でセイバーの斬撃を受け、そのまま剣閃を持って弾き返す。>>322
「ふむ、流石はあの獣を退けただけはある。この程度では牽制にもならんか……」
「次はこちらからいかせてもらうぞ!!」
続いて寺田が天狗の如き身のこなしで太陽王に迫る。
そのまま、一瞬の内に幾度の剣閃を叩き込むも、太陽王は悠々と聖剣によってそれを受け切る。
「汝のことも聞き及んでいるぞ、寺田宗有。」
「何?」
寺田の攻撃を受けながら、謳うように話し始める太陽王。ここが正に舞台の上であるが故、当たり前だと言わんばかりに。
「悪しき王国軍のサーヴァントを断罪する長鼻の奇怪な男(モンストル)がいるとな。随分と派手に王国(こちら)側の戦力を削ってくれたようだ。」
「貴様らが儂に送り付けた連中が歯応えがなかっただけのことよ!」
「そうだ、確かに汝は人を斬ることに長けた英霊、差し向けた英霊の誰よりも強いのだろう。シラノ・ド・ベルジュラックに勝るとも劣らぬ剣豪であろう。」
高らかに相手を褒め讃える。しかし
「しかし、である故に汝に我(フランス)を断つことは出来んよ。」
次の瞬間、底冷えするような声と共に剣圧と『刀身から発した炎』によって寺田の体を吹き飛ばした。
「貴様、一体どういう如何様をしておる……!?」
咄嗟に受け身を取り、衝突を回避する寺田。しかし、その顔には僅かな動揺が浮かんでいた。
剣士として剣速も技量もこちらが勝っているにも関わらず、攻めきれず、挙句の果てに押し返された。
突如出てきた『魔力の炎』もそうだが、それ以上にこちらの動きを鈍らせるかのような『重圧』を感じ取り、寺田は敵の見方を改める。
「単純なことだ。『朕は国家なり』!如何に人を斬ることに長けていようとも、剣士では『国』を断つことは出来ぬと知れ!!」>>323
フランスという『国』そのものを名乗る王を前に再度気を引き締め直す、二騎と一人。
「さて、まだ幕は上がったばかり、盛り上げていこうではないか!」
そう告げると太陽王は更に刀身に魔力を込め、闘志を燃え上がらせる。
決闘はまだ始まったばかりだ。
フランス特異点更新、遅くなって申し訳ありません
明星さん、リドリーさんよろしくお願いします『それでライダー?』
『なんだい?マスター?』
街を歩いていたゲルトラウデは霊体化したライダーに詰めるように問いかける。
『今朝の傷が治ったというの、アレ嘘でしょう』
『…………』
痛いところを突かれたようにライダーが黙り込むと、呆れえるように少女はため息をつく。
『私が仮眠を取っている間、魔力を供給せずに自分のモノだけでやりくりしていたようだけど。それでも少なからず魔力は流れていくものなのよ』
『……僕なりに気遣ったつもりなのだけれど。逆効果だったかな。自分の失態と背負い込もうとした私が愚かだった。包み隠さず開示しよう。確かに昨夜、あのホテルの屋上で戦闘があった。
――その結果、不滅の光兜鎧は盗まれ、対魔力を補強していた魔石は限界値を迎え崩壊、勇往邁進の剛毅戦車は半壊状態となり、私自身その時のダメージが未だに回復しきっていない。しばらく戦車は使えないだろうな』
「――ハァ!?」
街中だということも念話をしていることも忘れて、ゲルトラウデは驚愕の声を上げる。何を言っている。多少のダメージどころかほぼ壊滅状態ではないか。大衆の視線に気が付いたゲルトラウデは隠れるように路地に入りさらに詰問する。
「それで、どこの陣営が襲ってきたの。セイバー?それともまだ確認していないサーヴァント?」
「……いや、あれはサーヴァントではなかった」
「はぁ?」
サーヴァントは最上級のゴーストライナーだ。それを傷つけるなど、この世界ではサーヴァント以外にあり得ない。それが、サーヴァントでは無かったと?
「あぁ、それほどの強敵だった。あの凄まじき青の戦士は……」
「何よ、それ……」
ゲルトラウデはそう呆然と呟くしかなかった。Stage投稿しまーす。とりあえずは会食前までで。
『どうも皆様今晩は!私は阪上尚鹿。ニパータちゃんの代理でやってきました。これから宜しくお願いします!』
『私たちは競争相手ではありますが、舞台という場である以上共演者とも言えましょう!そこで提案です。親睦を深める為にみんなで宴会を開きませんか?料理を食べてお互いの事をもっと知りませんか?』
運営側の人間である蒼木ユノが控え室を去った後、阪上と名乗る不審者度高めの男がそんな事を言い放った。これから、もしくはこの先で戦うことになる相手と不必要に関わる必要はないはずなのに、気が付けば会食に参加することになっていた。自分でも訳が分からない。何であんな怪しさMAXの男が主催する会食に参加することになったのだ。
「はあ……。というかあんな変な人がいるとは思わなかったわ。そりゃ別に想定していなかったわけじゃないけど、それでもあそこまでの奇人がいるのは流石に想定外だわ。」
ぶつくさと独り言のように愚痴を漏らす。まあ、おおよそ何でこうなったのかの心当たりはあるのだけど。
「イヒヒ、そう言ってる割には律儀に会食に出るんだなマスター?ちゃっかり粧し込んでよ。『これには何か裏があるに違いない!』『怪しすぎる……きっと何か罠が仕掛けられてるに違いない!』とか考えないわけ?ミステリーとかなら殺人の常套手段だろ?俺なら迷わずはっ倒してるとこだぜ!」
私のサーヴァント。キャスター、ハーメルンの笛吹き男はそう言って高笑いする。大会で勝ち抜くのなら、戦闘はおろか魔術でさえマトモに扱えない彼を選択するのは間違いといっても過言ではない。そも、彼は伝承や童話において武勇の話を持つ英霊ではない。彼の話は簡潔にまとめるなら『他人と交わした約束を反故にしてはいけない』という話だ。ある意味では世界中どこでも知られている話、といっても問題ないだろう。
それはそれとして。
「人様に会う以上、それに見合う格好が必要なのは当たり前でしょう。だいたい貴方が私を宝具で操って勝手に取り付けた約束でしょう!?そのせいで出る必要のない会食に出る羽目になってるんだからね!?」「えー、何のことかなー?俺にはマスターが自分から阪上って男に会食に参加するって言ったようにしか見えなかったなー。」
何を隠そう、この笛吹き男の宝具によって勝手に会食の約束を取り付けられていたのだ。確かに多少の隙はあったかもしれないが、まさか口笛も宝具の対象になるとは思わなかった。
そのせいで別段着る必要の無さそうだったアイスグリーンのバルーンタイプのカクテルドレスを着る羽目になってしまった。それ以外にも上から羽織るブラウスも靴も小物も普段使いの物ではなく、それ用の物を引っ張り出すことになった。万が一を想定して持ってきていた自分が恨めしい。こんなことになるなら持ってこなきゃ良かった。
「というか貴方、同じことを召喚した時にもやったわよね?」
「あー、アレは傑作だったなー!いやまさかオレを召喚したマスターが突然ストリップショーを始めるんだから!」
「……やっぱり、令呪で一度行動を縛った方がいいかしら。それとも令呪を使って宝具で自害させる方が困らないかも?」
「おいおい、それは勘弁してくれよー?俺の宝具のこと分かって言ってるんならいいけどよぉ、そうじゃなかったら今からここでーーーーー」
「分かってるわよ、いちいちこんなことで令呪は使わない。令呪は切り札でもあるんだから、使える数は多いに越したことはないわ。でも、今後は私の同意無しで宝具で操るのは無しよ?またやったら、その時は容赦無く令呪を使うからね?」
へーい、と軽い返事が帰ってくる。表情はどことなく嬉しそうだが、それはそれ。召喚した時にしたって、人目のつくところだったら危なかった。
「(ほんと、キャスターはかなりの捻くれ者ね。召喚の時にしたって、人次第じゃ信用を失くしてもおかしくないのに……。)」
回想開始。
時を遡ること開会式前日の深夜。街の郊外に存在する森の奥地で私は聖杯大会に参加するにあたって、サーヴァントの召喚を行った。私にとってある種のホームと呼べる森は私に流れる魔力と相性が良く、人目に付かない場所だから神秘の秘匿を気にする必要はなかったからだ。陣を敷き、触媒を中心に設置。触媒として使ったのは年季が入ったピッコロ。そして英霊を呼び寄せるための詠唱を行う。「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
祖には我が大師プロビデンス。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ満たされる刻を破却する」
森に、地に、大気に満ちる大源(オド)の魔力が陣の中央に収束し満ち始め、実体を伴う霊器(うつわ)を形成していく。
「ーーーー告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者、
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーーーー!」
収束を終えた魔力が暴風となって吹き荒れる。そして陣の中央には1人の男が立っていた。男は中肉中背、髪はダークブラウン、顔立ちはやや彫りの薄い印象を受ける。ライトブラウンのチロリアンハットを被り、ボヘミアン柄のポンチョと白い亜麻のブラウスにヴァーミリオン・イエロー・ターコイズのトリコロールカラーのピエロパンツ、ブルー・グリーン・オレンジ・カーマインのピエロシューズを身に纏っていた。ピエロパンツの腰にはピッファロ・リコーダー・クルムホルン・ツィンク・オーボエが提げられていた。
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じて登場しましたァー!可愛らしいお嬢さん、貴女が私のマスターということでいいのかな?」
笑いの滲む声と大仰な仕草で私に対して名乗りを上げながら礼をするキャスター。格好だけで言えば胡散臭い道化師極まりないが、それでも私のサーヴァントなのだから信用も信頼もしない方が失礼だろう。「ええ、そうよ。私はドロテーア・イルゼ・エンブリック。私のことはマスターでもドロシーでも好きに呼んでもらって構わないわ。短い間だけど、これからよろしくね?」
「毅然とした挨拶、ありがとうございまぁす。しからば、私からは返答と致しまして一曲披露させていただきましょう。何かリクエストなどがあればお聞きしますよー?」
「なら、あれは吹ける?モーツァルトの『オーボエ協奏曲』。貴方の時代より後の楽曲になってしまうけれど……。」
「その点に関しましては御心配には及びません。英霊の座には時間の概念が無いものですから、曲の練習はし放題なのですよォ。というわけで、演奏させて頂きまぁす!」
流れるように腰のホルダーからオーボエを取り出すと、滑らかに『オーボエ協奏曲』を演奏し始めた。
「(なるほど……英霊の座に時間の概念が無いっていうのは本当みたいね。どんな演奏者でもフラットな演奏は難しい。役者と同じで必ず癖が出てくる。数百年前の演奏技術を考えれば、その当時の癖が出てきても不思議じゃない。なのに、それが全く無い。間違いなく彼は演奏者としてーーーーー)」
と、そこまで思案して意識が飛ぶ。いつ思い返して見ても、あの演奏に聴き入っていたのがそもそま間違いだったとしか言いようがない。彼の逸話を考えるのなら、そこは考慮しておくべきことだろうに。それから幾許かの時間が立ち(彼の発言を鑑みるに10分程度?)、彼の演奏が終わった。
「ご清聴頂きありがとうございまァす。しかしマスター?私の演奏中に服を脱ぎ出すのはどうかと思うのですが……。」
「……え?」彼の言葉を聞いて、私は自分の身体を見る。そしてすぐに3つのことを理解した。
1つ、私は服を着ていない。2つ、私の周りには私が着ていた服が落ちている。3つ、つまり今の私はほぼ初対面の男の前で裸になっている痴女である。
「……きゃああああっ!?」
思わずその場にしゃがみこむ。
いやいやいやいやいやいやいやいや!?ありえないありえないありえない!!これが仮に付き合ってる男の人ならまだしも、ほぼ初対面の相手にこれは誰がどう見ても私が痴女にしか思われないじゃない!?え、ええと、まずとりあえずは服を着てーーーーー
「と、まあ。俺の宝具を味わって頂きましたが、ご感想は如何でしょうか?」
「…………宝具?」
「おう。俺の宝具、『我が笛に操れぬ者なし(マインド・オブ・カタストルフ)』は俺の話に基づいた宝具でね。人を操ることに特化した宝具だが、現代(いま)で『笛』と定義出来る物なら何だって宝具として使えるのさ。さすがに対魔力持ちや高魔力持ちには弱いがね。」
…………待った。これはつまり、そういうこと?
「…………ねえ、キャスター。誤魔化さないで答えてね?」
「ん?なんだい、俺に関係あることならなんだっていいぜ?」
「もしかして、さ。私がリクエストした『オーボエ協奏曲』で宝具を使って、私を操って服を脱がせたの?」
「ピンポーン!大正解〜!いやー、さっすが俺のマスターだなあ!一発で絡繰を見抜いちまうなんて、俺が出会った人間の中じゃ、あんたが初めてだよ!」
「こ……」
「ん?」
「こ……こ……この……!」
「おーい、どうしたマスーーーー」
「この、ド変態サーヴァントがーーーー!!」
「うぼらぁ!?」
以上、回想終わり。うん、よくあの最悪な出会いからここまで持ってるわね私。自分で自分を褒めてあげたい。「さあて、マスター。ぼちぼち指定された会食の会場に着くけど?」
キャスターからもうすぐ目的地だと呼びかけられる。
「どうすんの?ここまで来て『やっぱやめた』って言って帰んの?」
「まさか。ここまで来て帰るなんて、戦う前から勝負を諦める負け犬と同じよ?それに、これは言うなれば前哨戦。やる前から気を削いでどうするの?」
「けど、俺はキャスター。魔術師のサーヴァントだ。自分で言うのもなんだが、真っ向勝負なんてとてもじゃないが期待出来ないぜ?」
「何を言ってるの?それを補うのがマスター、つまり私の役目でしょう?穴があるなんて当たり前、弱点の無い人はいないのと同じ。どんな相手だろうと、貴方が勝つための道筋を私が作るわ。だから貴方は、私に勝利を捧げる為に尽力してちょうだい。それが従者(サーヴァント)の役目でしょう?」
「ーーーー了解、契約者(マスター)。俺に出来る範囲でアンタに勝利を捧げて見せるさ。」
「ええ、期待してるわよキャスター。」ここまでです。会食のあたりはリドリーさんにパスします。
Stage投稿
>>334
方喰と土蜘蛛は阪上の後をついていく
阪上はふと方喰に目をやる。彼女の目の奥底には復讐に燃える火を見る
「えーとさっき死霊魔術が憎いって聞いたけど何かあったのかい?」
「家族の仇だ。父を殺し、母の遺体を奪い、にいちゃんを返り討ちにして、ねえちゃんを行方知らずにした」
「それはそれは……………」
成る程、憎むのも頷ける。阪上は袈裟を被った僧侶に姿を変え、死者の冥福を祈る
「成る程、嫌うのも最もだね。……………それで復讐を?」
「ああ、奴らの骨を全て砕いて、畑の肥料にしてやりたいくらいだ!……………貴様もしや『復讐なんて意味がない』とでもいうのか?」
「あー……………そうだね。"君の復讐"に対して言えばYESだ。君の『復讐は不毛だね』」>>343
終わりです>>345
「実に惜しい。惜しかったぞ、女」
洲甘の腹部に鈍痛が走る。
同時に電気が走るような鋭い痛みが脳を刺し、その余りの痛みに一秒が十秒に、十秒が永遠に感じられた。
女伊達ら鍛え上げた腹部の筋繊維がぶちぶち千切れる音が聞こえる。
魔力で強化を施した骨格が無残に砕ける音がする。
臼で胡麻をすり潰した様なゴリゴリ、という音が体の中から響いてくる。
そしてそれらに伴う、どうしようもないくらいの痛み。
「───────ッ、ッッァ───────!!!」
空中に居た事が災いして脱力による衝撃の分散が叶わなかった。その為キャメロンの剛腕から繰り出された一撃を余す事なく華奢な身体で受け止める羽目になってしまったのだ。>>346
禿げ散らかした荒野で悶え捩れる一人の少女。
これが仮想空間である以上景色も質感も全て虚構のモノだが、目の前に屹立する大男が放つ絶望感だけは悲しい程に本物だ。
「視覚、聴覚、嗅覚……生憎その全てを喪失したところで俺の歩みを止める事は不可能。
有象無象の輩なら先程の閃光で勝負は決していた事だろう。その点で貴様は戦上手で、それ故に解り易かったよ」
胃からこみ上げる吐き気に逆らえずに中身をブチまけると、その内容物は悉くが真っ赤に染まっていた。
見るに、胃の壁が破れているのだろう。腹部から刺す様な痛みを感じる。
だが─────ここで負けてしまっては、我が悲願は。私の宿業は潰えてしまう。
その一心で、動かない身体を無理に駆動させる。脳を稼働させる。
「まだ、まだだ。……まだ私は死んじゃいない、勝ちを諦めてはいない」
「内臓損傷、肋骨の多発骨折、他出血も複数箇所。
────無駄だ、この状態からの勝利はあり得んよ」伏神投稿
>>351
エル・シッドは気配感知闇夜に走る一つの車。漆黒の中に溶け込むそれは独特の模様を描くヴェルファイア。賢明な読者のみなさまならもうお分かりになっているだろう。乗車人はリドリーとエル・シッドの二人だ
朝から日が暮れるまで彼らは一体何をしていたのか?近くの道場を金で買い取り、エル・シッドが気配感知を手に入れるために修行をしていたのだ!
近くを歩く人の数を感知させる修行から始まり、放たれたハエを見ずにに箸で掴む、意図的に落とした米粒の数を音だけで当てる、極め付けは蚊の眉毛が落ちる音を聞きどれだけ離れているかを答える
常人には到底理解することが出来ない修行を繰り返す事で、日がちょうど沈んだ頃尋常ならぬ気配感知を会得するに至ったのだった!>>352
「どうだい、何かかんじる?ロドリー」
「目で見るよりも鮮明にわかるぜク.ソマスター。コウモリになった気分だ」
走りながら気配を感知するエル・シッド。今の彼はアスファルトの間に入り込む蟻の数すら逃さない!
そしてその極めて敏感なサーヴァントレーダーは三つの気配を捉えた!
一つ!自分とは程遠い聖なる雰囲気!鎧を着て下手な気配遮断をするそこそこの豊満な気配!
一つ!気持ち悪いくらい生命力の強さを感じる雰囲気!将来的に死徒に堕ちそうな気配!
一つ!悍ましい悪魔の雰囲気。騙されて恋人あたりを殺し、その為に姿が歪んだ気配!だな」
「何でそう、妙に具体的なんだい?」
地の文とエル・シッドの台詞が混ざりながらも捉えた気配についてリドリーは考えた>>354
終わりです「ああ、それでいい」
そう言うとユージーンは肩の力を抜いて深呼吸する。
「それじゃあ改めて自己紹介だ。俺はユージーン・バックヤード。魔眼に特化した魔術師の家系で視覚魔術を使う」
「わたくしは蒼木ルイ。主に使うのは支配魔術。けれど、魔術の対象は大抵道具ですわね」
互いに自己紹介をして握手を酌み交わす。すると隣で食べる手を止めて事態を見ていたバーサーカーもよし、と呟いて胸を叩く。
「俺の真名[な]は酒呑童子。クラスは知っての通りバーサーカーで宝具が「待て待て待てっ!」
ぺらぺらとプロフィールを話し始めたバーサーカーをユージーンが慌てて制止する。
「馬鹿なのかお前は!?こんな白昼堂々と真名や宝具を明かす奴があるか!………ゴホン、という訳でだ。とりあえず場所を変えようと思うんだけど、何処か行きたいところとかあるか?」
「ではわたくしが拠点にしているホテルへ礼装を取りに行きたいですわ」
「オーケー、道中の護衛は任せてくれ」
出発しようと席を立ったユージーンが伝票を見ると目を皿のように丸くし「喫茶店でどうやったらこんな値段になるんだよ…」と呟いた。>>354
対物ライフル『PGMヘカテー2』。
第一次世界大戦で活躍した対戦車ライフルの発展系、その最先端の一翼を担う超火力銃器である。
土嚢の上にひょっこり覗く間抜けな頭を3 km先から楽々撃ち抜けるほどの射撃精度を持ち、威力のほどは、対象が人体なら紙切れのように引きちぎり、数発あれば最新の軽装甲車にも被害を与えられるほどだ。今、その過剰とも思われる火力が一台のワゴンに集中した。
『どうだ?』
魔力パスを通じて頭に流れ込んでくる辛気臭い声。それに、ザミエルは嘲るように答えた。
『いや、全然ダメだね。ひっくり返りはしたものの、目立った損傷はなさそうだ。せっかくの試し撃ちなのに残念だ』
『馬鹿な。神秘のカケラもないあんなものが?これほどの衝撃に耐え切れるのは宝具くらいだが……よもや、形状を偽装する宝具か?』
『前にも言ったよな?オレはただ従うだけ。考えるのはお前だよ、マスター。さあ、靴底のように使い潰されるこの哀れな傭兵に次のご指示を』
一瞬の間。顔は見えずとも、ザミエルにはあのヒトデナシの冷たい笑いがを易々と思い浮かべることができた。
『愚問。サーヴァント2騎を同時に屠れる機会など、そうそうないではないか。令呪を使うぞ。貴様はその間、弾を切り替えて対処しろ。その鈍重な鉄の塊は、奴らの棺桶だ』
『Ich verstehe.(りょーかい)』>>357
とりあえず以上です。
弾丸は初手焼夷弾で車を焼きながら酸素をうばいます。
戦闘になったら徹甲榴弾を使います。>>350
巌のような顔を携えて、キャメロンは二択を提示する。
軍門に下るか、それとも死か。
痛みで鈍る頭で洲甘は思考する。
キャメロンの提案は、彼女にとっては思ってもみない幸運と言えた。
彼女の出自でもある「スアマ」の家は、遺伝的に男性が産まれない一族。
その為外部から優秀な遺伝子を持つ男性を招き入れることで存続と繁栄を繰り返してきた。
さながら強き者を天井の楽園(ヴァルハラ)へと誘う戦乙女のように。
そう言った意味では、この目の前の男は正しく強き者だ。
弛まぬ鍛錬と強靭な精神力、体の髄に刻まれた武術の心得は、洲甘にとっては魅力的に過ぎる。
単純にステータスだけ考えるならば是非とも一族に組み込みたい遺伝子を持っているといえよう。>>359
だが。
洲甘は眼前の男の眼を見る。
正確には眼の更に奥深く、キャメロンの心に宿る「ナニカ」を覗き見る。
戦乙女の末裔として名高い彼女は、その使命の関係上人を見る目だけは一級だと自負している。
勇猛で強靭な勇士は数多くいれど、精神性を考慮せずに楽園へと召上げる事は許されない。
だからこそ彼女達は戦士達の一挙手一投足をつぶさに観察し、数少ない手掛かりの中から彼等の本質を見出さねばならない。
そんな行為を幾度となく繰り返してきた彼女が、目の前の男を睨め付けて、思う。
彼は危険である、と。
信心深い信徒の姿で偽装しながらも、寡黙な口で本質を隠蔽しながらも、彼の眼の奥ではたしかに破壊の衝動が渦巻いていた。
何かを壊そう、何かを殺そう、そしてその命が潰える瞬間を最も身近な場所で独り占めしたい。
そんな歪な欲求が、洲甘には微かに感じられたのだ。>>360
────コイツは、我が血脈に組み込んではならない類の勇士だ。
「提案は有り難いが、貴様と馴れ合うつもりはない。
鶏口牛後とはよく言ったものさ、望まぬ従属は尊厳ある死よりも恐ろしい……そら、とっとと殺.せ」
殺.せるものならな、と減らず口を叩いてみせた。
覚悟は参戦当初から決まっていた。
私は此処を我が死地とすることに迷いなどない。
「スアマ」から戦闘分野の発展が遅延する事実は手痛いが、他の家の者がいずれ再興することだろう。
私は洲甘柳華。個体にして群体の戦乙女、スアマの血を引く者。
共有感覚が途絶える事で私の死は家の人間に即座に伝わる筈だ。
機能の停止は経験にないが、恐怖もない。ただ永久の暗い眠りが待っているだけだという、だから。>>361
「アンタは、それで良いんかよマスター?」
脳内に響く、聞き馴染みの薄い声。
それが今尚戦闘中であるアーチャーの声だとすぐに気付いた。
「いいさ、道半ばとは言えコレも運命だ。強い者に寄り添う戦乙女である以上、こういった結末も織込み済みなのさ、だから」
「違う」
念話の途中で遮られた洲甘は、思わずアーチャーの方へと顔を向ける。
「俺が言いたいのは使命だとか、運命だとか…そんな事を言ってんじゃねぇよ。
ただアンタは……アンタ個人は、それで満足なのかって言ってんだ」
「──────」
洲甘は逡巡する。
思えば考えたこともないアプローチだ、自分個人の欲求を最優先に定めた上で何かを決めるだなんて。
「正直に言えよ……勝ちてぇだろ?負けたくねぇだろ?死にたくねぇよな?
こんな所で終わりだなんて、二十年も生きてねぇガキが、簡単に受け入れられる訳ねぇじゃねえか」>>362
アーチャーの暴力とも言えよう言葉の雪崩が、洲甘の心を揺らす。
「大人になるなよ、素直になれよ。……組んでちょっとしか関わってねぇが、アンタはもっと我を出すべきだ。そうじゃなきゃあ何の為に生きてきたのか、生きてんのかが解らねぇ。
使命がなんだ。運命がなんだ。強さがなんだってんだよ?
今此処で、アンタが口にすべき言葉は、そんな綺麗なもんなんかじゃねーだろうがよ」
「────私、は。」
胸の奥底から込み上げる、熱くてしっとりと濡れた何か。
とめどなく溢れてくる久しい衝動に、洲甘は流されてしまいそうだ。
何時もなら詮無い変動だ、ど堪える筈のモノだが、今は。
「────死にたくない、私は。死にたくないよアーチャー」
「─────なんだ?」
キャメロンの顔が些かばかり歪む。
巌の如き面相にヒビのような皺が刻まれる。
彼の視線の先は、サーヴァント同士の戦場の方に向けられていた。>>363
「アーチャー」
二人の英雄がそこで雌雄を競っている。
片方は神に憤り、無限の憎悪を内に秘めた復讐鬼。その身に纏う革鎧は全ての武具を否定する天然の概念防御だ。
もう片方は神の矢と称され、俗物的な欲望に身を浸す放言の弓兵。
その腕には何も宿しはせず、あるのは磨き上げた弓術だけ。
こと聖杯戦争というものは、相性差が戦闘に如実に反映されるきらいがある。
戦力差は拮抗すれど相性の差によって片方を圧倒する、という展開も往々にして起こり得る。
今回の戦闘の場合、弓兵は復讐鬼に対して酷く不利な相性関係に立たされている。
加護も補正も持ち合わせない、弓の腕自慢だけが取り柄の男は、神代の鎧と身体に為すすべもない。
それが普通。波乱もなく好機もなく、ただ事務処理的に熟される一戦となる筈だった。
しかし────あの光景はなんだ。
「……アーチャー」
弓兵は必死に戦っていた。
必然の死に逆らい、人理を否定する鎧に抗い、敗北を頑として拒んでいた。
刺さらない矢。
進撃する敵に距離を取りながら何度も何度も矢を放つ、それが徒労に終わろうとも諦めない。>>364
そして、
「──────!」
雨垂れ石を穿つとはこの事か。アヴェンジャーはその右腕に今迄感じた事の無かった痛みを覚えた。
右腕には確かに革鎧が、宝具『怒りの獣』が装備されていた。にも関わらず、鏃は深々と復讐鬼の腕に食い込んでいたのだ。
「死にたくない、か。────まぁはじめての自己主張にしちゃあ上出来だな。
その意思、確と受け取ったよマスター」
復讐鬼の猛攻を去なす過程で刻まれた無数の疵。
霊核を傷つけはしないが、それら全てがアーチャーの体力と精神力を消耗させている。
だが弓兵は不敵な笑みを崩さない。
それは一人の少女の望みを崩すまいとする男の強がりだ。
本当は神代の脅威に感服し尽くして、可能ならば早々に逃げ出してしまいたい。
だが、そうはしない。
男を張るなら、此処ではなくいつ張るというのか。
「見てな嬢ちゃん、こっからが本当の『百発百中』だ」>>365
ここで終わりです、バトンタッチです。
一応、此方が挽回する風な書き方してますが…僕としては此方が負ける方に書いていこうと思う所存です。>>314
" "で区切ってある部分は委員会さんに書いていただきました。
"そして——
戦いが始まりました。それはとてもとても激しい戦いでした。
剣と槍が交差し、弓矢と魔法が飛び交う激しい戦いでした。
そこへ男の子は従者と狂戦士を連れて果敢に飛び込んだのです。
ですが……嗚呼、無情にも狂戦士はまともに戦う事すら出来ずに消え去ってしまいました。
男の子の従者の命を道連れにして……"
言葉を紡ぎながら、メイドはカードを投げつける。それはさながら投げナイフの如く。騎士はその連撃を剣や盾で危なげなく弾いて行く。
"その時はじめて男の子は気付きました。
自分を大切にしてくれた存在のことを。
自分が本当に大切にしなくてはならなかった存在のことを。"
メイドは語り続ける。然程声は張っておらず、爆炎に掻き消されて客席までは届かない。本当に、ただ騎士にだけ聞かせているようだ。
女が廻る、廻る、廻る。
くるくると舞い踊り、女の周りにカードが散って行く。
時に直線、時に曲線的にカードが投擲される。カードと爆撃が乱舞を織り成す。
"戦いに敗れた男の子はそれでも聖杯を求めずにはいられませんでした。
それは前よりも強い気持ちで、全てを投げ打つ事になったとしても、男の子は聖杯を求めずにはいられなかったのです。">>367
女の放つ爆撃が、様子を変えて始めた。
これまでは黒々としていた爆煙が、桃、青、白、橙と、カラフルな煙幕へと変貌した。そして、見せびらかす意図があるかのように、騎士の近辺だけが煙幕に埋もれていなかった。
煙の演出と、その中心で殺陣(アクション)を行うサーヴァント。派手な演出に観客が沸く。
"そして、そしてそして正に全てを投げ打ち、男の子は聖杯を奪い取る事に成功したのです!"
メイドが言葉を止めた。煙の狭間から僅か見えた口元は、意味ありげな笑みを浮かべていた。まるで、騎士の反応を待つかの様に。
「それで? 男の子はどうなったんだい」
「ふふ? さあて……どうなったのでしょう?」
「昔話はここで終わりです…では、改めて騎士様。あなたに聖杯を手に入れる"覚悟"はお有りですか?」
メイドが問いかける。その問いに騎士はーーー
「覚悟、覚悟だって?ーーーそんなこと、語るまでも無い」
襲いかかって来る数枚のカードを、剣で打ち返す。正確に、飛んで来た方向へ。
騎士の脳裏には、"あの時"に見た主の顔が。
「私は、我が主の為に聖杯を手に入れる!」
瞬間、騎士が右脚を強く踏み込んだ。地が揺れる。踏み込みと同時に地面へ流された魔力が爆発する。
爆発した力は風となり、騎士の周囲を取り巻いていた煙を払い去る。
「はぁっ!」
煙の晴れた先。遂に捉えたメイドへと、渾身の一撃を叩き込むーーー!>>368
「槍となれ……Awaken!!」
呪文を唱え、先程まで剣だった物が、長柄の武器に変わる。
極東の薙刀、中華の青龍偃月刀……だったかな。槍というよりはそれらに似ている。
「あー、そういう仕組みなんだねソレ☆」
ヴィヴィアンが数歩前に出て突きを繰り出す。強化した敏捷性で躱すも、この槍は少し厄介だ。
(リーチがさっきまでとは比べものにならないナ……。威力より長さそのものに重きを置いている様だし)
更に、彼は鏡を壊すコツを掴んでいる。あの槍の突きは、下手をすれば鏡の防御を貫通して僕に届きかねない。(鞭で直線的な突きを止めるのも至難の技だしネ☆)
ならばーーー君の土俵に乗ってあげよう。
右手の鞭を変形させる。長く、鋭い武器ーーーハルバードに。
「本当は距離を取ったりするべきなんだろうけど……それじゃ楽しくないよネ☆」
ハルバードと槍がぶつかり合う。しかし、どうやら戦闘技能は"今の"僕に分があるらしい。
「くっ……!」>>369
攻撃を受け止めた衝撃で、ヴィヴィアンがよろける。続く攻撃もなんとか凌ぐが、いつまで保つかな?
観客席から歓声が聴こえる。良いオーディエンス達だ。こちらまで高揚してきてしまうヨ☆
そして、僕を高揚させる要因はもう一つ。ーーー攻撃を防ぎ、躱し続けるヴィヴィアンの、怒りの瞳。
「ねえ、Mr.ビリジアン。僕はね、君が好きだよ」
「いきなり、何を言い出す!」
「君の目は淀んでいるけれど、切実に何かを求める熱さとーーー誰かを大切にしている思いが見える。その想いは、僕にとって美しい。僕はそういう目に弱いんだ♪」
槍を繰り出しながら話しかける。紛れも無い本心だけど、ちょっと無神経だったらしい。
「人の心にズケズケと!!!」
苛立ちの最大と言った形相で睨まれ、重い一撃を振るわれる。しかし、それも難なく防御。
槍と槍のぶつかり合いが再び起こる。
ーーーヒヒーン!
唐突に、攻防は中断する。
馬の嘶きが響き、僕等の意識を逸らした。音の方向を見れば、機械仕掛けの馬が猛スピードでこちらへ向かっていた。
「っ!」
お互いに後ろへ飛びすさり、馬との激突を回避。馬は僕等の中間を過ぎ去り、ヴィヴィアンの元へと寄っていった。
「へぇ。どうやらその子、君が気に入ったみたいだね」
〜>>370
繰り返される槍合を阻んだ機械仕掛けの馬が目の前でゆっくりと脚を止める。
(これは、舞台装置の一種か……余計な事を、とは言えないな)
棒高跳びの要領で馬に跳び乗り槍を構え直す。
「卑怯か?」
「まさか☆ でも馬一匹を味方に付けたくらいで勝てるなんて……思ってないよね!♪」
水平方向に駆け出すオズボーンを追撃する。馬上から受ける風が額の汗を流していくのが心地良い……汗もそうだが疲労もダメージも重なり追い込まれているのは自分だ。
未だにこの男を倒す道筋は見えない。
そもそも、この戦い……聖杯大会でマスターを倒す必要などない。だがアサシンがアサシンとして勝つにはこの舞台は相性が悪すぎる。だから敵マスターであるオズボーン・ファンタジアを行動不能に追いやり降参させようとしたのだが……。
馬上から槍を叩き込むがそれはどれも決定打にはならない。ヒットアンドアウェイを繰り返すもきっとこれは下策だ。
有利に立ち回るには恐らくだが観客だけではない……舞台そのものを楽しませる必要がある。ならば単調な攻撃を繰り返すのは良くない。良くないが……。
ーcont.ー>>371
裂帛の気合いと共に放たれた暴風が姿なき砲弾となってアサシンに迫る!
不可視の、その上ここで切られる遠距離攻撃という手札に煙幕の中で笑みを浮かべていたアサシンには回避も防御も間に合わない。痛烈な一撃がメイドの半身に直撃し、右胸から先を吹き飛ばした。
メイドの顔が歪む。観客からは悲鳴嬌声を孕んだ大きな歓声が巻き起こる。
「ふふ、ふふふ……! なるほどなるほど! その高貴なる威風!堂々たる覇気!そして黄金の宝剣!! 」
傷付き片膝を着いたアサシンの前に神秘の風から解き放たれた刃を晒したセイバーが悠然と迫る。
「正に、正にそれこそは伝説に名高き聖剣の中の聖剣! エクスカリバー!! その担い手! アーサー王がお相手とは!! ふふふ、ふふ…」
顔の歪みの理由は痛みではない。大きく大きく歪んだ顔から、どこから出ているのか疑わしくなる様な嘲笑が零れ落ちる。その声音は人の世のモノとは思えない不気味さを潜ませている。
———さあ、マスター…アナタの敵は間違いなくサーヴァントの中でも最強の一角。どう致します?
ーpassー>>276
地下室には血溜まりが広がっている。携帯電話の着信音が鳴り響く中、生者の気配はない。
着信を知らせる画面には外流斗という文字列が示されている。
スノーフィールドの地に潜む影は粛清によって晴らされた。
混沌を望む者の手は、確実に動き出している……。
ーpassー「聖杯大会、インタビュアーのダニエラです。まず、自己紹介をどうぞ」
始まった。
黒髪を纏めたフリーアナウンサーが目の前に居て、これが現実だとよくわかる。
ええと、丁寧語のほうが良いのか?
「齋藤 丈です。時計塔で学生やってます」
普通のテレビならこんな事言えないけどこれはそういう番組。
しかも、番組の外ではフェードアウトして数年経った芸能人程度にしか認識されないらしいから目立ってもその後の生活に問題は無いらしい。
「気になっている参加者は居ますか?」
「自分より強い人が多くて……あえて言えば天音木シルヴァさんが強そうですね」この質問が来たか……。
実際の所、俺は聖杯をこの土地の管理者に渡さなければならない。
勿論、叶えたい願いはあるし、それを言うけど……いや、考えるのはやめよう。
「まあ、家系に伝わる呪いみたいなものを解く事ですね」
「それは大変ですね。どうか頑張って欲しい所ですが、最後に意気込みをどうぞ」
「ええと、精一杯頑張るのでよろしくお願いします」という訳で第■回始めます。
アサシン陣営の拠点は、南部の賃貸マンションの一室です。土地の管理者がこっそり用意しました。
Wikiに書いた来栖市について
北西:小さい山を中心に、最大の霊地である森林地帯となっている。但し、古戦場だった事ももあって悪霊が出ると噂されている。更に……
北:大型ショッピングモールを始め、商業施設が立ち並ぶ。
北東:日本海。地方都市として標準的な規模の港がある。
西:表向きは大学で有名だが、土地の質も良いので管理者(檜葉家)も此処に屋敷を構えている。
中央:駅や役所等がある中心街。聖杯大会でホテルを拠点にするなら此処になりそう。
東:自然を残した開発がされていて、それ故に大病院が建てられた。また、農地も多い。
南西:山地。大きなダムが有り、これが破壊されたら大惨事。
南:新興住宅地。聖杯大会の拠点としてアパート等を借りたりするなら狙い目。
南東:かつて合併した町『桂町』の中心部だった所。再開発に失敗し、治安が悪化している。
魔術的な土地の質
北西>西>中央>南東>北>東>南>南西>北東>>357
「……白昼堂々なのに派手にやるのね」
結界で囲われているのだろうが、魔術師の目を誤魔化すことは出来ず、白煙を上げる先を見てゲルトラウデは三つ編みに編み込んだハーフアップに纏めたやや赤みががかった蜂蜜色の髪を形を崩さないよう気を使いながら弄りながら眉を顰めて嘆息する。
「行くのかい?」
「当たり前。出来る限り損失は抑えたいものだもの」
もはや遭遇したという女剣士に負わされた損失は仕方ない物として受け入れるとして、それでいつまでもかかずらっていては何も始まらない。
ごく当然のように戦場に歩を進める主を見て、その通りだと頷きながら実体化し、その腕にマスターを抱えながら跳躍した。方や純粋に巻き込まれた者たちを守るために。方や自身の利益の為に。───聖杯大会インタビュアーのダニエラです。自己紹介をどうぞ。
「ハリー・ウォーカー。ニューヨークで学生をやってます」
───ウォーカーさんはなぜ日本に?
「えーっと。インターンです。インターン先の候補に日本があって、せっかくだからと思って」
───聖杯大会に参加した理由は?
「聖杯戦争の話は昔から聞いてました。令呪やサーヴァントのことも。街を歩いてたら令呪が浮かび上がって、自分が参加者の資格を得たことに気づきました……こんな風にインタビューされるとは思ってませんでしたけど」
───気になる参加者はいますか?
「ギンガ・カヤリかな。妹みたいな女の子に似てましてね。個人的にはほおっておけないです」
───サーヴァントを召喚することになりますが、狙っているクラスなどはありますか?
「クラスについては特にこだわりはないです。でも……そうですね。アメリカ人、時代的には近現代の人がいいですね。あの、サーヴァントって架空のキャラクターなんかも呼べるんですよね。アイアンマンとかソーとか」
───呼べない、と伺っていますが?
「そっかあ……」
───聖杯に賭ける願いは決まっていますか?
「世界平和、かな。ベタですけどね」
───いえ。結構かと。それでは最後に意気込みをどうぞ。
「はい。こんにちは、ハリー・ウォーカーです。聖杯大会に参加することになりました。僕自身魔術師としてはまだまだなひよっこですけど、正々堂々スポーツマンシップに乗っ取ってお互いにベストを尽くしましょう!」
───ありがとうございます。聖杯大会インタビュー、インタビュアーのダニエラがお送りしました。ウォーカーさん。本日はありがとうございました。「ねえマリア。本当にあれで良かったの?」
『ええ。嘘も方便と申しますし。何もかもを明らかにすることはありません』
「確かに、インターンって言うのは嘘じゃないけどさあ……」
『聖杯大会に参加して、聖杯を回収・あるいは処理する。これが貴方のインターンとしてやるべきことでしょう』
「ヒーローなのになあ……なんか複雑……」
『崇高な意志を持っていても行動が伴わなければ意味はありません。逆もまた然りでしょう。違いますか?』
「……AIなのに皮肉が上手だね。君は」
『私の開発者はロバート・レイヴンですよ?』
「」あー……そうだね。そうだった。取り消すよ。僕が悪かった」
『私は貴方の安全な生活を一任されています。ハリー、貴方に何かがあったらスクラップにされかねません』
「あの人は自分の作ったものを自分で廃棄処分にしたりしないよ。意志を持ってる存在なら尚更だ」
『……これは、一本取られてしまいましたね』
「軽口が似てきたかな?」
『彼と比較するとまだまだかと』
「せいぜい精進するよ」
『ええ。明日も早いです。早めの就寝を』
「オッケー。おやすみ、マリア」
『おやすみなさい。マスター』手を開いて調子を確認。糸を動かして人形操作で腕に鈍りがないかを確認。……よし、これでなんとかなる。
「聖杯大会インタビュアーのダニエラです。自己紹介をどうぞ」
「天音木シルヴァです。由緒正しきベルリーズの当主を務めさせていただいています」
「なぜ聖杯大会に?」
「人形師と庭師としての見識を深めることと私の願いのため、ですね」
「気になる参加者の方はいますか?」
「まだ誰とも会話はしていませんから特に……ですが蒼木ユノさんは仕事上多少の興味がありますね」
「聖杯にかける願いは?」
「───勿論、悲願到達のための一欠片を揃えるために、ですわ。私も魔術師の端くれですので」
「最後に一言」
「この中だと私が最年長、なのかしら。……どうぞ皆様、覚悟なさいませ。私、戦闘となると荒いですわよ?」>>381
『ちょっとお母様!?私が出るって言ったじゃない!なんでお母様が出てるのよ!』
「あなたはロクな戦闘経験だって積んでいないでしょう?外の魔術師と戦ったフィールドは自分の庭(工房)だけ。……それに、私はあなたに魔術師の道は歩んで欲しくないと言ったはずよ」
『何よ、紫音には普通に魔術教えてあげてるくせに。いいわ、お母様が帰って来る前にオートマタ(電脳人形)を作って見せてあげるから!』
『いやー、すまないね姉さん。私にはミリアを抑えられないよ』
「はぁ……サンドラ、あなたもあなたよ。魔術をしっかり教えるなんて頼んでないわ」
『姉さんは魔術師らしくないけど私は純粋な魔術師だからねえ。……ミリアをユミナかバリュエにでも送れば、必ず祭位以上の階位を授かると思うんだが』
「絶対にNOよ。何年も前にこの結論は出したわ。……じゃ、また後でね」
『私たちベルリーズの悲願のために。吉報を待っているよ、姉さん』
……ミリアに、魔術師の業を継がせるわけにはいかない。彼女の人間性がどれだけ魔術師に向いていても、どれだけ才能が鬼才の域にあろうとも。
「……これも親のエゴ、なのかしらね」>>148
地下下水道の中をバーサーカーが戦闘しているであろう廃別荘に向かって走る。劣勢、という程ではないだろうが、多数のサーヴァント(マスターの妨害も?)を相手にしている事は想像に難くない。ただまぁ、彼が苦戦、あるいは窮地に陥る、というのは想像できないが。九相図の方に来たのがルーカス君だけ、という事実はイコールで他のマスターは(おそらく)あの乱戦付近にいる、という事を意味する。
あっ、そうだ。九相図の爆発の結果を確認しよっと!アレがどんな惨状を生み出したのか、やっぱり自分の目で確認しないとなぁー。そうそう、ついでにルーカス君がどれだけダメージを負ったかの確認もしとこ。まぁ至近距離で九相図の爆発をくらったのだし、死亡はしないにしても大会からの脱落はまぁ確定だろう。
走りながら、鷹の死骸使い魔を操り、ルーカス君と九相図の戦闘舞台をなった廃ビル(跡地)へと向かわせる。
前方から使い魔が運んできた死霊鎧套を着込みつつ、鷹の方に意識を集中。ふむふむ……。やりぃ!やっぱしルーカス君は大ダメージを負っている。多分コレで大会は脱落か、しないにしても十全な行動は厳しいだろう。
そうこうしている内に、二日前にセイバーvsアーチャー&ランサーの戦闘跡地が見えてきた。そろそろだな……。
その時、右(使い魔とのパス)が何かを捉えーーーー。「対物ライフルとかふざけてるのかい?!あいつ絶対私達抹殺るつもりだよ!」
運転席にいたリドリーは90度になりながら、文句を言う
「ふざけてやがるぜ!この国は原則銃持ってちゃいけないんだぞ!そんなの許されるなら私ん家の武器庫から持ってくるべきだったわ!」
「それはやめとけク.ソマスター。あんたの家の兵器なんざこの戦争に持ってくるにはちと大袈裟(オーバーキル)にも程がある!」>>385
「何だと〜!だが、そんな事今はどうでもいい!早くこの状況を打開しなくては!態勢は立て直せるかい!」
「余裕だ!だがそのあとどこに逃げるかだ!」
「そんなロドリー君にここで残念なお知らせ!」
「なんだ、気色悪い言い方しやがって!」
「脚折れた。運転できない」
「マザファ○ク!」
「君イスパニア人じゃなかったのか!」
「サミュエルに聞くんだな!……………マジでどうする!俺はアーチャーの場所を感知するので精一杯だ!運転も同時になんてできないぜ!だからアンタに運転任せたんじゃねーか!」
「気配感知やめて君が運転するのは!」
「アリだが、ナシだ!攻撃方向がわかる方がいいだろ!」
「さっき教えてくれなかったじゃないか!」
「すぐ撃ってくるなんてこっちも想定外なんだよ!」ランサーは訳がわからなかった。小動物の様に可愛らしい困惑顔を浮かべながら思う
(この人たち一体何やってるの?)
だがさらに漫才(いいあらそい)はヒートアップする!>>392
手に馴染む。
ランサーが機械仕掛けの馬の手綱を握った時、先ず最初にそう思った。
まるで過去に何処かで握った事のあるような言い知れぬ感覚は、不可思議ではあるが心地良い。
3500ccの排気量から繰り出される四輪駆動はドッシリとした安定感と静かなる加速を両立させている。
そんな精錬としながらも実用性の高いこの鉄の馬を、ランサーは無意識に好ましいと思えた。
だが、これ単体では駄目だ。
と、ランサーの思考はそう結論付ける。
「振り払えませんか」
車体を掠める、一発の弾丸。
不規則的な横滑走行(ドリフト)で間一髪のところで大破しないが、敵の弾丸は確実に、その悉くが車の急所を狙い定めていた。
彼女の雄々しい運転技術に落ち度はない、同様に車体のスペックの所為でもない。
ただ単純に射手の技量の高さ故に、彼女達は窮地を脱せずにいた。>>393
だがだからこそ滾るというもの。
静かに燃ゆる高速の豹(ハイウェイパンサー)は、前方から目を離すことなくセイバーに話し掛ける。
「成り行き上ではありますが、頼られたからには全力で応えましょう。
……どうか酔い止めの呪い(エンチャント)はお忘れなく」
「────ああ、全速前進で頼むぜ」
猛烈に向上する排気量、そしてマフラーから吐き出される爆音。
ランサーの意思に応じる様に車体のスペックを更に特殊仕様に改造させたセイバー。
脚(タイヤ)はより接地面を広く。
身体(ボディ)はより流線型に。
貌(フェイス)は更に野性味を帯びる。
さながら競技用に調整された怪物だ。
気配感知に割かれたリソースを利用して作られたソレはある種の賭けでもある。
回避ではなく完全なる逃避を目的としたその大胆な作戦は、ランサーの運転の技量が一定水準未満か、敵の射撃の技量が規格外か────どちらか一点でも満たしてしまえば忽ちにして瓦解する薄氷のようなものだ。>>394
だがセイバーと、そのマスターであるリドリーは彼女の無言の提案に乗った。
何故ならば膠着した苦難を乗り越える為のアクセントは奇策にこそある、と理解しているからであり。
そしてそれ以上に、彼女の提案が酷く面白かったものだから。
「いやー彼女面白いね。『面白い』ってのは人生の中で唯一で、かつ最高のスパイスさ。そう思わないかい、ロドリーゴ?」
「最悪だ、酷く同意するよ」
急激に加速する車体。
魔力を排気し物理法則を彼方へ置き去っていく。アスファルトで舗装された路を鉄の流星は駆ける、速度超過など何処吹く風だ。
ともすれば空中分解してしまいそうな地球からの制約(重力と言う名の枷)を振り払い、市街地から高速道路へと進む。
「ふ、ふふ。あははは」
不意に微笑いが込み上げる。
この様な感覚は生前の騎馬試合以来だろうか。
途方も無く疾く、雄々しい生物を手繰る感覚はいつの時代も心を震わせるらしい。
聖杯戦争が秘匿下に行われる催し物と理解している為自重はするが、そうでなければ公然と叫び出してしまいそうな解放感。
滾る、血湧く、肉躍る。
どうか御覧ぜよ皆の衆、世界で一番疾く馬を操るは我ぞ─────!>>395
「あは、ははっ!くふふははははははっ!!!」
「……なんて女だ、このGの中で高笑いしてやがるとはとんだ騎士サマだぜ」
「うぷ、厄除けの護符(アミュレット)がなけりゃ重力に内臓が潰れる所だよ。
だけどこの速度と変態機動ならあの銃刀法違反野郎も流石に─────」
そう思った矢先。
敵の凶弾は無慈悲にも車体の僅か数メートル後方を穿った。
硬質なアスファルトが砕け、その破片が車体後方を小突く。
「冗談よしてくれ、この速度でもギリギリってかい?!」
「舌噛むぞ、ク.ソマスター!槍兵、もっと速度を上げれないのか!?」
「これが臨界点ですね、この速度を上回ると貴方のマスターの心臓が重力で破裂しかねません。
私も騎士の端くれですから、同乗者は例え貴婦人であろうと益荒男であろうと等しく優しくエスコートしなくては。
故にこれ以上の加速は許容しかねます」
ですので、とランサーは言葉を置いて
「セイバーよ、残ったリソースで再度気配感知をお願いします。
此処からは技量の勝負といきましょう。私の操舵術と敵の射撃、果たしてどちらが上かの競い合いです」>>396
はいよ、こちらはここで終了。
どなたかにバトンタッチします>>396
「……なっ!?」
悪魔の表情に動揺が走った。
先日戦ったサーヴァントとは全く異なる条件ーー十分に距離があり、こちらからは周囲が一望できる、最良の条件ーーにもかかわらず、狙いを定めることができない。辛うじて振り切られないよう追跡するものの、放った銃弾は車体をかすめるばかりだ。
彼には、どんな素早い獣であろうと撃ち抜くという自負がある。それは魔弾の悪魔としての矜持であり、狩人として積み重ねた技術に対するプライドだ。
それらが「獣の脚を手に入れた人」という強敵の出現によって、心の中に名前をつけられないさざ波を立てた。
馬鹿な、なんで射抜けない!そんなはずはない!悔しい!絶対に負けないぞ!
かつての青年であれば、あるいはそんな感情を抱いたかもしれない。
しかしながら、既にかの悍ましい弾丸は鋳造られ、悪意によって放たれた。ならば。漆黒の帳が降りた今、舞台に立つのは悪魔がひとり。
青年は既に過去のものとなったのだ。
だから彼は全てを嗤うのだ。どんな形であれ世界に不幸が増えれば、悪魔は喜ぶものなのだから。
「おいおい、あのEiserne Jungfrau(カマトトお嬢さん)やるじゃないか!見てるかい、キョージュ。このままだと、あっという間に射程外だぜ」
魔弾は絶対に的を外さない。>>398
『……クッ』
「……」
『クク、ク、クハハハハ!よくやった、アーチャー。タイムリミットだ。到着したぞ、奴らの《鉄の棺桶》が!貴様はそのまま奴らを捕捉し続けろ』
ロワインの念話が届くと同時に、辺りに轟音が響き渡った。空を覆う黒い影。鋼鉄の両翼が、ランサーの操縦する車めがけて天より舞い降りた。
◆◆◆◆◆◆
ロワインが令呪を通して命じたのは、非常にシンプルで些細なことだった。
「令呪をもって命ずる。アーチャー、その眼に映る全てのモノを貴様の弾丸と認識しろ」
令呪が輝き、直後、アーチャーが目にしたのは空を行く大型旅客機だった。
地上で生活している者は気にも止めないだろうがーー日本の空には、日に約2700もの旅客機が飛び交っている。無秩序に飛べば直ぐにぶつかり合って墜落してしまうところを、管制塔が細心の注意を払って交通整理し、毎日無事に飛び立ち着陸する。彼が見たのは、そんな何気ないフライトを迎えるはずだったものの一つだ。
300人を乗せたそれは、魔弾となった。となった以上、運命は一つ。
魔弾は絶対に的を外さない。>>398
最初の投稿の最後一行、間違えです。Stage投稿
これでラスト>>406
終わりです
この後は個人個人で人に話しかけるなどして楽しんでください『聖杯大会インタビューアーのダニエラです。』
「リザ=ハロウィンでーす。よろしくダニエラさん。」
『よろしくお願いしますね、リザさん。では早速ですが質問です。なぜ日本に?』
「NINJAを見たいな~と思って。そのあとふらふらとさ迷ってたらここに。」
『忍者ですか。では召喚したいクラスはアサシンですか?』
「?…自分で選べるんですか?」
『……アサシンとバーサーカーに関しては』
「へー。」
『…聖杯大会に参加した理由は?』
「あー。なんかよくわかってないんですよねー。仕事帰りに変な魔術師が襲いかかってきたんですよー。で、その人を撃退したら、これあげるとかいわれちゃってー(片手をひらひらとふる)。そしたらその日から使い魔やらなんやらに追いかけ回されて気付いたこんな感じになってました。」
『なりゆきということでよろしいですか。』
「はい。」
『わかりました…この大会においては他にも参加者がいらっしゃいます。その方たちはあなたと同じくなりゆきとは限りません。気になる方はいましたか?』
「うーん…あ!銀河さんですかね。子供にはぜひとも頑張って戦って欲しいです。」
『ふむ。では次の質問です。聖杯にかける願いはなんですか?』
「最近仕事がなくって…お金とご飯ですかね。後は便利な魔術礼装でも貰おうかな。」
『では、最後になにか一言お願いします。』
「うーん。みなさん頑張ってください!」>>408
◆
インタビュアーが去り、彼女もまた家路につく。南東の住宅地に彼女の今の拠点はあった。
「ただいまー。」
そんなことを言って一軒家の扉をあける。鍵はかかっていない。そのまま土足でずかずかと踏み込んだ。
「ただいま、おじいちゃん。」
そのまま真っ先に仏壇に向かうとパチパチと拍手をする。ちなみに彼女と仏壇に飾られている写真の人物にはなんの血縁関係もなかった。
部屋のなかに乱雑に散らばる家具をえっちらおっちらと避けたあと、足のないただのおしゃれな板と化しているテーブルの上にぐでりと寝そべった。
天井を見上げれば霧吹き状に広がった黒いシミがこびりついている。一昨日数を数えたのだが、もう忘れてしまった。
「聖杯大会かぁ…」
ぽつりとした呟きには感情が込められていない。その表情もまたマネキンのように虚空を見つめたままだ。
「腕一本ぐらいは欲しいなぁ…」
そういって彼女は瞳を閉じた。なんの迷いもないようなぐっすりとした寝顔であった。テス
夜も更け、薄い藍色の空が広がりつつある。
結局、ウィリーは一睡もしない内に夜を迎えることになった。当然、体への負荷はかかっているが徹夜は慣れている上に魔術でどうとでもなるので支障は無い。
ビルの壁はそこら中に穴が開いていて冬の冷たい風がよく通る。
「さて、どうするか」
あの後公園での監視を続けた結果、予想以上の収穫をウィリーは得た。
セイバー、ライダー、ランサーのサーヴァントとマスター達を見れた事だ。
マスターの特権によりステータスもある程度確認できた上に戦闘のスタイルも見ることができた。
運が良いと思うと同時に、ウィリーは少なくない危機感を覚えた。
ステータスは三人とも水準を遥かに超えていた。その一撃が正しく神話の再現と呼ぶに相応しい彼らを相手取ってアサシンは勝てるのだろうか?
「……無理、だろうな」>>411
アサシンもまだ具体的な詳細が明らかではないスキルや宝具があるがそれを過信するなど論外だ。
なら他の陣営と一時的な同盟を組むべきか?
それも無理だろう。あのアサシンの反英霊じみた性質からして他の英霊と相入れるとは考えにくい。それにあのアサシンと分かり合えるサーヴァントやマスターと組みたいとも思えない。
発生するリスクがあまりにも大きすぎるからだ。
「もう一度偵察に出るか」
裏も表も無い平坦な声で呟くとウィリーは立ち上がった。
パーカーを羽織ると無機質なエレベーターに乗り込む。指定は一階。
何故か電力が通っていてまだ動くエレベーター。
その中に設置された大きな鏡には無愛想な表情の男がこちらを睨んでいた。
「………」>>412
昼間の偵察で得られた情報は、昨晩のものに対して微々たるものだった。
荒らされ無残な姿になった公園に散らばる魔力の残滓はあまりに数が多く、質が濃すぎた。
蒐集の魔術を行使するも統一性の無いそれから導き出せる情報は現時点のウィリーには無かった。
ならば再びサーヴァントとそのマスター達が動き出す今晩、戦場となりうる街に行くべきだろう。
この拠点が襲撃された時の事も既に昨晩のうちに対策済みだ。
そして、監視も兼ねてアサシンを護衛に付かせる。アレでも居ないよりはマシだというのがウィリーの出した判断だった。
「おい、アサシン。姿を見せろ」
エレベーターから出て上の階へと呼びかける。中途半端に建設されたこのビルは吹き抜けになっている。
返事はない。物音一つとせず、風が通る音とウィリーの声だけが反響する。
魔力パスからしてこのビルから出てはいないはずだ。
「聞いてるのか、アサシン」
もう一度呼びかける。次に応じなかったら左手の令呪を見せつけようとした。
────そして、突如としてウィリーの意識は絶たれた。>>413
「油断なんかしちゃあ…ダメだよねぇ。アハハハハハハハハハハハ」
背後からの手刀の一撃で思いのほかあっさりと気絶したマスターを担ぐと入り口から離れた場所に座らせる。
昨晩は一睡もしていなかったようだし起きるまでは相当時間がかかるだろうというのがアサシンの推測だった。
「さーてこれで自由だフリーだギャラクシーだ」
少年の様に無邪気な声。
アサシンの体がぼやけ始めた。紙に滲む水滴の様に広がり、そして収まった。
そこには一人の女性の姿へと変貌を遂げたアサシンが立っていた。
スキル『可能性の闇』によって選び取った可能性の具現化。
変わっていないのは、よく注視しなければすぐに見えなくなってしまいそうなほど黒い女物の服と、顔に付けられているガスマスクだけだった。
アサシンはペタペタと顔を触り、ガスマスクがある事を確認すると今度はエレベーターに乗り込み、屋上へと出る。
そして壊れかけている手摺へと身を乗り出すと、そのまま重力に身を任せて両手両足を広げて街へと向けて飛び降りた。
全身で浴びる風。
線となって流星の様に己の周りを取り囲むビルの光。
堕ちているのに、まるで天に昇る様な気持ちだった。>>415
以上です「気になる参加者の方はいますか?」
「まだ誰とも会話はしていませんから特に……ですが齋藤 丈さんは仕事上多少の興味がありますね」
こんな感じになりました。>>421
よし、大丈夫です。北部にします。
魔術師なのでお金はある。人形師とかいうお金かける魔術系統なら尚更「変なインタビュー。これから死ぬ人に尋ねることなんて無いでしょうに」
丁度、参加者であるアスパシア・テッサロニカという魔術師に対して聖杯大会運営からインタビューが行われたところだった。
なるほどこれが娯楽というのか――と感心はするが、相手が求めるような上手い答えを喋れた訳ではない。
元々アスパシアは起源覚醒者寄りで感情が薄く、何よりも起源は孤独。関係性というのに疎い。疎くなっている。
「いや殺させはしないし!?」
「そうね、守るのだけが取り柄の貴方の存在価値が塵同然になってしまうものね」
「辛辣すぎる!! 唯一の味方も敵なのか!」
召喚したサーヴァントはクラス:ライダー。真名をぺウケスタスと言う。人類史において多少なりとも名を知られているのがA級サーヴァントならば、知る人ぞ知る程度のB級サーヴァント。
「正直言って弱い」
「いきなりどうしたっていうの!!」
「心の声が漏れたかもね」
「なんか酷い云われようなのでは俺」
「それより効率良く小聖杯を得るような拠点を見つけましょうか魔力D」
「せめて名前を、真名でも良いから呼んでいただけませんか!?」
彼女が聖杯戦争に参加したのは”自身の魔術の完成”が、自身の魔術礼装コスモス・アートグラフで星を読んだところ出てきたのだ。星の光という過去を視る(読む)ことで未来を予測する占星術。
勝つつもりもないが――負けるつもりもない。
そういう私。>>423
戦闘による勝利と別軸に、私の勝利条件はある。
結局は成果を得るために負けられないが、勝っても意味がないかもしれない。
「どこに拠点を作るんだ?」
「私、工房っていうのは上手く設置も運用もできないし、魔術的にも意味ないのよ」
「( ,,`・ω・´)ンンン?」
「ぶっ倒すわよ」
「じゃあ魔力供給率が高い小聖杯から狙うのか? セオリー通り?」
「逆から攻めましょう。優先度の低い弱い小聖杯から」
「その心は」
「私には、宙色の天球図(コスモス・アートグラフ)があるから供給量ではなく回路数の方が重要なのよ。つまり小聖杯は令呪のような魔力資源としての+α以外に使い道はあまりない」
「かといってライバルが自分達の処理能力を上回るのは見過ごせない」
「そういうこと」
「敵性サーヴァントに遭遇した場合は?」
「臨機応変」
「了解」以上がインタビューの代わりのさらっとした動機等でした
小聖杯奪取のため北東or東、南、南西の順に移動します。
拠点はアスパシアの所有するアキレウス・コスモスが展開する世界の一部(目に見える形か、盾の内部にあるかは未定)であり、土地柄によって小屋だったり屋敷だったりするんですが都市部だとギリシャ風は浮くんですよね…駆け抜けよう
先入観から各方角に一個ずつ小聖杯がある前提で書いてしまいましたが、実際に小聖杯はどういう場所にあったりするんでしょう>>426
あ、了解です
ssの設定面の齟齬は無視してやってください
死人云々はアスパシアに、あまり生きる気力がないという解釈でお茶を濁します
小聖杯の位置固定でかつ、初日ではその情報は開示されていないと
なら、『強めのサーヴァントがいそうな上質な霊地を避けて、虱潰しに探す』方針で行きます「おいおいおいおい、冗談抜きだぜ全くよ!!」
気配感知を張り巡らせ敵の出方を伺っていたセイバーは、少々大袈裟なリアクションを取る。
しかし彼が感知したのはその大袈裟な反応を遥かに上回る異常事態だ。
「─────飛行機だ。大型旅客機がこっちに突っ込んで来やがる」
「ヒコーキ……」
「ロドリーゴ、世の中には言って良い冗談と悪い冗談がある。そして今のは間違いなく後者だよ。
緊迫したムードを解したい気持ちは痛い程分かる……でもそのギャグは笑えない」
「…冗談じゃねぇって言ってんだろ」
車内に流れる無言の間。
リドリー・フォーサイトは冗談ではと一笑に付したものの、セイバーの真剣な面持ちを見てそれが笑い話でない事を理解したらしい。>>428
「ヒコーキ、ですか。化学燃料を噴射して空中を飛翔する鉄の鳥ですよね。
して、如何されます?迎撃すれば中に居る人の命はありませんが」
ランサーは超高速度で車を手繰らせながら、後部座席の二名に問い掛ける。
思考は至極冷静に、この場で取れる最適解を模索する。
ランサーにとって空から襲い来る鉄の鳥を迎撃する事自体は簡単だ、そしてそれはセイバーも同様だろう。
かの剣の英雄であれば、数十トン程度の質量の塊など如何様にでも出来るというものだ。
しかしそれは迫り来る脅威が只の鉄塊であるならばの話、その鉄塊の中に数百人の命が搭載されているとしたら、事情はガラリと変わってしまう。
ひとたび宝具を振るおうものなら機内にいる乗客の命は絶望的だ。
ならば次策として回避────も考えたが、どうやらその選択も無為であるらしい。
「あの飛行機、照準がピタリと俺達に向けられてやがる。
共謀罪違反野郎(テロリスト)め、聖杯戦争だからってやりたい放題かよ」
「どうやら機内からの制御は一切効いてないようですね」
ランサーの人間離れした視力は点のような大きさの光の陰影を捉える。
機首は常に此方の方に向けられて、如何に速度を上げようが進行方向を変えようが精度に歪みなどない。>>429
次の一手に手が止まる。
無策で受け入れようものなら、待っているのは悲劇しかない。
だが迎撃しようものなら、自らの手で数百人の命を殺めてしまうこととなる。
そしてそれは秩序を慮る二騎の英霊にとって可能な限り避けたい選択だった。
大きな負債か、それより更に大きな負債か。
何方を選択しようが凄惨な結末は必至。そんな死亡遊戯の最中、窓の向こうの空を睨んでいたリドリーは口を開いた。
「止められそうかい、ロドリー?」
「それは愚問ってもんだぜ?…って言いたい所だが、お生憎様成功率は二割も満たないな」
「……まぁ元より成功率云々は気にしちゃいないさ。だって君は歴史に名高き英雄だ、生前からこんな無理難題を乗り越えてきたんだから。
今回も、ただ不可能を可能に変えるだけ。そうだろう?」
「当然だ、全員救ってやるよ、全員だ」
一連の会話は淀みなく進んでいく、夫婦漫才の様にある種の信頼関係有りきの、遠慮ない言葉の応酬だった。
こういった類の会話は往々にして周囲の第三者が介入する余地など残されてはいないもの。
運転席のランサーは二人の会話に必要以上に入る事もなく、己に課された役割を全うしていく。
否、嬉々としてと言うべきか。>>430
「何かしら手はある様に見受けられますね。いいでしょう、貴方の策に乗らせていただきます。
今この場に限って、私は貴方達の良き隣人です」
「オーケー、頼もしいお隣さんだ。
なら先ずは今から指定する場所まで急いでくれ。話はそれからだ」
セイバー陣営とランサーがアーチャーの射撃を掻い潜り、命からがら到着したのは森を平らに切り拓いて出来たゴルフ場だった。
木々を裂き、幹をなぎ倒し、生え揃った芝を踏み荒らしながら、開けた場所まで最短距離で到達する。
半ば放り出される形で着地するセイバーにランサー。同乗していたリドリー・フォーサイトは脚を骨折していた為ランサーに抱きかかえられる形でドリフトする車から脱出していた。
「座標よし、時間も良し、序でに視界も良好。
いいね、迎え討つにはお誂え向きってヤツだ」>>431
暗い空を切り裂く様に滑空する大型旅客機は自由落下を運動エネルギーに変化させながら、セイバーを始めとする三名の元へと突き進む。
先程は点の様にしか見えなかった筈なのに、小指の先程の大きさにまで膨れ上がっている。
これから眼を見張る速度で肥大化したかと思えば、ものの数十秒もしない内にゴルフ場に到達してしまうだろう。
そうなれば三人の命は勿論のこと、機内の人間も軒並みあの世行きは免れない。
そうならないようにセイバーが立てた作戦は至極単純で。
しかし同時に、言い様のない力に満ち満ちていた。
そんなセイバーの計画に全幅の信頼を寄せているのか、リドリーはすんなりとセイバーと距離を置いて事態を静観せんとしている。
隣にはランサーが立ち、彼と同様にセイバーの様子を見届けようとしている。
「────しかし、本当に良かったので?」
「ん?なにがかな」
「セイバーと距離を置いて、本来敵同士である私を貴方のそばに着かせるという行為そのものに対してです。
仮に私が騎士の皮を被った悪党であったとしたらと考えれば、自らの直ぐ傍に私を置いておくのは致命的なのでは?」
勿論、ランサーにそんなつもりはない。騎士道精神を重んじる彼女は例え令呪で強要されたとしてもその様な行為は拒絶するだろう。
だが、そんな清廉潔白な彼女ですら首を傾げたくなる程に彼等は一見して無用心に見えた。>>432
「面白い冗談を言うものだね!そんなつもりなんてこれっぽっちもない事くらい、顔を見れば判るものさ。
どっからどう見ても君は善性の英傑だ、そんな君だからこそ運転を任せたし、昨日ああやって歩み寄ったのさ」
それに、とリドリーは一呼吸置いて。
「仮に君が余程の食わせ者だとして、今此処で私に襲い掛かった所でセイバーには敵わない。そう思うからさ」
いつも通りのコメディーリリーフな語り口は崩れることはない。単なる挑発でも何でもない心の底からの発言だ。
安い挑発に乗る程血気盛んな気質の持ち主ではないが、面と向かってそう言われると心の奥にある止ん事無き闘争心が燻るというもの。
「ほう、それは言ってくれますね」
「気を悪くしたのなら謝るよ、私と彼の信頼関係の裏返しとでも思ってくれ。
……でも、そうだね。彼は強いから」
ざあ、と。
短く切り揃えられた草原が夜風に揺れる。
もうすぐこの場に魔弾が墜ちる。
重さ数トンにも及ぶ特大サイズの鉄砲玉は、着弾すれば一面焼け野原と化すだろう。
相対するは一騎の英傑。>>433
サングラスの奥の眼を決意に光らせて、右腕に握った剣に魔力を通す。
その刃に宿る濃密な魔力は、それが宝具である事は容易に感知できる程に剣呑としている。
だが先程まで競争劇を繰り広げていた自動四輪が実はこの剣が変形したモノだと言った所で、現場を見ていない魔術師の何割が信じようか。
その宝具の名は────無形・失われし鋼鉄(コラーダ)。
剣の形を持てど定まった在り方を持たない虚の刃は、その不定形さ故に凡ゆる無機物に変質する可能性を有している。
セイバーがその構成と機構、形質を把握している限り、その宝具は自由自在に在り方を変える。
それが剣であろうが、槍であろうが、盾であろうが、可能性は無限大。
キチキチと音を立ててその有り様を変化させる剣は、次第に規則的な編み目を形成していく。
鉄条網の要素を取り入れたかのような幾何学は、剣の柄を軸に四方八方へと手を伸ばし、ゴルフ場を覆うように生えた木々や近隣の高層ビルの壁に打ち込まれて。
まるで飛行機を捕縛せんとする弩級の蜘蛛の巣だ。>>434
そして。
即席の蜘蛛の巣の丁度時速八百キロ越えの大鉄塊が直撃する。
「───────、──────────!!」
如何に周囲の建築物や自然に錨を下ろし力を分散させれど、凡そマッハ1に及ぶ剛弾が衝突しようものなら持ち手に加わる負荷は尋常ではない。
剣の柄を両の手で握り、手を離すまいと力を込める。丁度旅客機とセイバーが網を介して互いを引き合うような体勢だ。
ぶつり、ぶつり。
ゴルフ場の至る所で何かが千切れる音がする。それは楔を打ち付けた木が幹から折れる音でもあり、セイバーの筋組織が断裂していく音でもあった。
予断を許さぬ緊迫した雰囲気にランサーは思わず息を呑む。
セイバーの踏み込んだ脚が少しでも浮こうものなら、旅客機の中の人は悉く絶命してしまう。
そんな命の天秤が揺れ動く最中、部の悪い賭けは最悪の方向へと歩を進めつつある。
だがその只中にいる当事者三人のうちで、飛行機の中の命を諦める人間など一人としていなかった。
ランサーはリドリーの傍で護衛に徹しながらセイバーの様子を固唾を飲んで見守り、リドリーは真剣な貌で事態を静観している。
そして現在進行形で飛行機の引力を相殺しているセイバーの姿に一切の諦念は見当たらない。>>435
自身の全力を以て全てを救うのみ。
それこそ己を英雄足らしめる、ただ一つの──────
「──────もう一押しだ、手を貸せ!ク.ソマスター!!」
「……了解。オーディエンスの前だから限定解放だが、この叡智と力を君に捧げよう。
──────禿鷲が臓器を抉り食らう時、我が血は炎剛に成り上がる」
リドリー・フォーサイトの手に仄かに灯りが点る。
ゆらゆらと風に靡く炎は微かながらも消える気配は無く、どこか連綿と燃え続けてきた聖火の様な厳かな雰囲気すら漂わせている。
しかしそれもその筈。
リドリーの手の平の上で躍る火は最早聖火の範疇では収まらない原初の火であるからして。
(……その規格外の神秘の濃度。現代魔術や発火能力(ファイアスターター)の範疇に到底収まらない。
────もしや起源の覚醒?いや、まさか)>>436
やがて揺らめいた炎はリドリーの指先からセイバーの胸当て目掛けて飛び込んで、軽快な破裂音と共に消え失せた。
だがその表現は正確でなく、実際はその炎は未だ煌き続けている。
ただその在処が外界からセイバーの霊核へと移り変わったに過ぎないのだ。伏神SS、取り敢えず此処で一区切り。
結末までキッチリ用意してありますが、一応バトンタッチ出来る箇所で区切らせてもらいました。現時点での第■回のWiki編集が終わったので、ついでにリハビリとして書いた第一回の視聴者SS投下します。
ランサー・アーチャー同盟とライダー・ファラオ同盟の総力戦……その前哨戦はランサーが召喚したらしい忍者とライダーが操るワイバーンのぶつかり合いとなった。
それは、ファラオの放った矢が忍者の最後の一人の顔面に刺さり、そのまま頭を吹っ飛ばして決着となったが驚くのはこれからだ。
何とあのバーサーカーが乱入、このまま漁夫の利を得るかといった所で他の四陣営が示し合わせたかのようにバーサーカーへと矛先を変えたのだ。
何て卑劣な策……だが、所詮は急造のチーム。
自分の消耗を抑えようと駆け引きをする隙を突いて一網打尽にすれば……。
「こらっ、テレビばかり見ない。寄せ鍋が冷めるでしょ」
母さんに注意された……今回のお気に入りだったアサシン陣営がよくわからないままやられたからって……。
「兄ちゃんは推し贔屓が過ぎるんだよ」
ライダー陣営が盤石だからって余裕だな
妹よ。
「まあまあ、みんなそう言わずに」
「「「何時ものように大穴狙いでセイバー陣営に賭けた父さんは黙ってて」」」
と、まあそんな感じで笑い話をしていた時だった。
画面で爆音が発生、急にカメラが切り替わるとビルが崩壊していく映像が映し出され……戦闘は予想出来ない方へと転がっていった。以上です。
向こうでの安価今気づきました。
中央でお願いします。>>443
窓が開けられて回りを見渡せる高いホテルの一室を希望します。テス
>>445
テレビ局のスタジオにて。
京郎は椅子に座りインタビュアーからマイクを受け取った。
照明って当たると眩しくて熱いんだなとかカメラが回るまでそんな事を考えていた。
「えーそれでは和銀京郎さん。何故この大会にされたんですか?」
「参加…えー、あーっとですね。自分、あんまり魔術師として真面目にやってこなかったんですよ。それのツケが回ってきたというか」
「なるほど」
「まーそうですね。…コメントしづらい事言ってすいません」
「いえいえそんな事。立派な理由だと思いますよ」
慌ててフォローに入るインタビュアーに京郎は内心申し訳なく思った。
だがそれが嘘をつく理由も無いので仕方ない。
「では次の質問ですが…この大会において注目している他の参加者の方は誰かいますか?」
「んー…」>>446
京郎は思案する。
事前に確認したリストに載っていた参加者達の顔や経歴を思い出す。
「うーん…一人に絞らないとダメですかね?」
「いえそんな事はありませんよ」
「まぁ全員ですよね。全員。自分は戦う方面の魔術とかは不得意なんで、戦える人は全員注目してるというか。多分皆さん自分より色んな意味で強いですし」
情報戦などと深い事を考えた訳ではなく、素直に思ったままを答えた。
京郎は、そういう人間だ。
「はぁ…。これが最後の質問になりますが、召喚したいクラスやサーヴァントは決まっていますか?」
インタビューをしている相手から面白い事が聞き出せなかったからか若干ぶっきらぼうに質問をするインタビュアー。すると京郎は先程と比べると少し自信ありげな顔で語り始めた。
「はい。クラスは召喚してみないとわかんないですけど、サーヴァントは決まってます。きっと皆さん驚くと思いますよ」
「それは期待が高まりますね。質問は以上です。お疲れ様でした」
「あっはい」
カメラが止まるとスタジオから出て廊下へと向かう。近くに長椅子を見つけると座って携帯端末を取り出した。>>449
「さーて…まさかあの有名な偉人と会えるだなんて凄い事だよなぁ。…仲良く、出来るかな?」
京郎は気負いもなく立ち上がるとそのまま一枚の手鏡を長椅子の下に貼り付ける。そして栗栖市の中央部、あらかじめ予約しておいたそこそこ高級なホテルへと足を向けた。"不運"、言ってしまえばその一言に尽きる
養由基は見事な腕だ。的確に、そして精密に彼はカドモスの鎧の隙間に矢を撃ち込んだからだ
カドモスは驚愕しつつも称賛する
『そうでなくては、復讐相手としては最適だ!』
連続で隙間に撃ち込まれる矢を受けながらも、地面を槍で巻き上げ歩みを止めないカドモス。流れ出る血は戦士の証。必ず葬ってやろう!
そして槍を投げようとしたその瞬間!空から拳大の岩が激突!そして体勢を崩したその刹那!養由基の矢が喉に直撃!刺さりは甘かったが衝撃をうけ流せずそのまま丸太のように転がっていく!壁に激突しバウンド!ビリヤードの玉のように縦横無尽にはねながら最後は落下!頭から落下して衝撃に目から火花が散る!>>453
構えた槍を振り投げる!衝撃波を起こし周りを破壊しながら養由基の腹に激突。そのまま壁に縫い付けられる!地面を叩き割る度に周りは壊れ、その衝撃は会場にも伝わる!
キャメロンは洲甘を連れて離れ、交渉を持ちかける!
「頼む!早く負けを認めてくれないか!?命までは取らないから!」
「信用できないの!そんな目をするような人の言うことを」
「俺はね!たしかに虐殺が好きさ!だが、生きたいと思う善良な魂を虐殺.する程俺は人間腐っちゃないんだよ!」
キャメロンは焦っている!顔から分かるように動揺している!キャメロンは紙をとりだし、書き込む。即興でセルフギアスクロールを作り上げる
汚く、内容も簡潔だがこう書いてあった
『敗北を認める→その傷を回復させる』
「もうこうなったら裏も何もないからよ!頼む!」>>454
トーナメントパスです肉体から力が湧き上がる。暖かい。その火はエル・シッドの中を駆け巡り、彼を一時的に勇気付ける
漲る力!導くは飛行機!その姿はまさに英雄そのもの。見よ!諸君!彼こそはスペイン史上最強と謳われる伝説!そしてその姿こそ、我らが主人(エル・シッド)である!>>463
伏神投稿終わり!
この後ランサー陣営のメンツと話し合いしたいです>>463
「グオオオオオ!?」
闇の中に、獣の唸り声のような悲鳴が響いた。
アーチャーの望遠レンズじみた眼を通して浴びた強烈な光が網膜を焼き切り、燃えるような痛みをロワインへともたらしたのだ。
突然の衝撃に騒々しく騒ぐ内なる獣達を押さえつけながら、ドス黒い感情を露わに怒鳴る。
「撤退するぞ!クッ、何も見えん……アーチャー、私を運べ!」
すると、対照的な涼しげな声が返ってきた。
「行くあてなんてあるのか?」
「教会だ。早くしろ」
「うへえ、教会?キョージュ、あんた、懺悔とかするタイプだったっけ?」
「笑わせるな。監督役とやらに報告するぞ。奴らは大勢の前にサーヴァントを晒した上にその超常たる能力を披露し、地際からの航空機の復帰というありえないことをやらかした」>>465
アーチャーはそれを聞き、喉の奥で押し殺したような笑い声をあげる。
「いいじゃないか、最高の喜劇だ。『絶望的状況に天使が舞い降りた!乗客添乗員奇跡の生還!』俺はそういう事も世界にあっていいと思うぜ」
「最悪だな。そのまま落下したなら単なる事故で済んだだろうがーー飛び立ってしまった以上、いくら魔術協会といえども神秘の秘匿は果てしなく難しくなった。早急な対応と、先ほどの陣営に対するペナルティを要請する」
「意外だな。あんたがそういうの気にするなんて」
「どういう意味だ」
返答は無かった。黒い影がロワインを攫った。
教会に入るなんて出来やしない。どの辺りでこの荷物(マスター)を放り込もうか。
そんなことを考えながら、アーチャーは山に向けて大きく跳躍した。>>466
投稿ありがとうございました。
とりあえずこちら側の方針です。
リドリーさんからの返答があり次第、今回の戦いで弓陣営が得た情報の描写をちょこっとだけします。>>466
「と、先ほどの陣営に対するペナルティ」←この部分、消し忘れです。
読む際、まとめる際は無しでお願いします。
まあどちらにしろ、ロワインは(彼なりの尺度で)怒っているので、教会に直訴する際にはペナルティを与える云々は言うとは思います。>>469
特にないです>>469
特にないですよー>>374
馬上の敵と並走し、槍を交わす。しかし槍と槍がぶつかるごとに、先程までの心地よい高揚が失せていく。代わりに湧き上がってくるのはーーー
(不快だネ)
ヴィヴィアンから繰り出される槍は、鋭さを失っていた。いや、勢いは落ちていない。しかし、こちらを打ち破ろうとする熱い鋭さ、己の全力でぶつかる気概ーーー僕が心地よいと感じていた物が抜け落ちている。
今彼の槍に感じるものは、恐怖。ぶつかるのではなく、逃げる為の攻撃。
逃げるのが悪いとは言わないが、彼は今恐怖に呑まれている。それが凄く、不快だ。
「何をしてるんだい、キミはぁ!」
突き込まれた槍を、強く払い上げる。態勢を崩したヴィヴィアンの隙を逃さず、素早く突き。
辛うじて躱す彼だが、踏ん張りきれずに落馬。
受け身を取って転がる彼を、僕は冷たく見下ろしていた。
『マスター、ご無事でしょうか?』
セイバーからの念話が届く。
『ああ、特になんともないよ。キミはどうだい?』
『こちらは、敵サーヴァントに有効打を与えた所です。このまま留めを指しますか?』
『いや、少し待ってくれ。Mr.ビリジアンに言いたいことがある。前振り、よろしく☆』
『前振り、ですか。承りました』>>472
◆
念話を切って、意識を敵へと向け直す。目の前には、気味の悪い嘲笑を上げ続ける女。
ふと、その声が途切れた。
「騎士王様、貴方はどうやら、ご自身のマスターに随分とご執心の様子。どうでしょう、先程の昔話への対価として、あのお方のお話をしていただけないでしょうか?」
歪んだ口元をそのままに、女は囁いた。その姿は、どことなく悪魔のようだった。
「貴女に話すことはない。しかしーーー」
言葉を区切る。一拍の間を置いて、声を張り上げる。
「サーヴァント・アサシン!我が主たるオズボーン・ファンタジアの命により、汝との決着を一時預ける。まずは、これより紡がれる主の言葉を、その身に刻みつけるがいい!」
観客全てに轟くかす、大仰な台詞。前振りとは、このような物で如何か。
◆
(バッチリだヨ♪)
スポットライトが僕を照らす。嗚呼、良い演出だ。
セイバーからのパスを受けて、僕の口が動く。
「Mr.ビリジアン、キミは何をしている!キミの槍からは覇気が失われた!熱も、気迫も、執念も感じない。何も篭っていない空っぽの突きだ!さっきまでのキミは輝いていた。僕に及ばずとも、迫る程の美しさがあった!
それが今はどうだ。熱のカケラもなく、その身は恐怖という冷気に震えている!」
堂々と、高らかに叫ぶ。糾弾する。
ーーーヴィヴィアンが恐怖した原因はきっと、セイバーの真名。
ならば、"そんなこと"で願いを手放そうとする彼が許せない。
「キミの願いは、簡単に諦めのつくものだったのかい?僕には願いがある。一族の繁栄を守り抜くという、諦められない願いが!」>>473
ーーー"第二魔法の劣化品"。
それがかつて下された、ファンタジア家への評価だった。正当な評価だと思う。なにせ、できることと言えば並行世界の観測と、別の自分への一時的な接続だけ。しかも観測は時間を超えることができないとなれば、第二魔法と比べるのも烏滸がましい。
ただし、劣化品のままでなるものかと、ファンタジア家は研鑽を重ねた。内部での権力闘争もあったようだけど、丸く収まっている。理由はきっと、第二魔法に追いつく、もしくは超えると言う意識が、一族の根底に共通していたからだろう。その意識を繋ぎ続け、研鑽を怠らなかった一族を、僕は誇りに思う。
(そして、僕も一族に恥じぬようになろうと研究していたんだ。ーーーなのに!)
「僕はあるとき未来を見た!未来では、ファンタジア家は没落の坂を真っ逆さまに落ちていた!しかもそれは一通りじゃない、百通りだ!」
そう、ある日魔術の制御を失敗して、本来できないはずの未来視を体験した。だが、その時見た数々の未来は暗く、苦しいものしかなかった。僕が原因で没落したと思しき未来も多数あった。
「さらに言おう。今ここに居る僕は、並行世界の中で、"最も可能性に満ちていた"僕だ!そんな僕が見た未来が、暗いものしか無かった。その絶望が分かるかい?ーーーそれでも、いや、だからこそ。僕は僕の願いを諦める訳に行かない。未来を否定するために」>>474
◆
照明が落ち、主を照らすスポットライトだけが光源。そんな空間で、彼は訴え続ける。
普段見せる、余裕のある態度など投げ捨てて、必死に。ただ必死に叫ぶ。
「その為には、ただ勝つだけじゃきっと足りない。最高の僕にならないとダメなんだ。キミは、僕を輝かせてくれる人だと確信している」
ああ、この台詞。召喚された時のことを思い出す。あの時主は、今のように身の上話をしてくれた後、こう言ったんだ。
『僕は、キミと輝きたい。そして、最高の僕達になるのさ☆それができたらきっと、滅びの未来なんて訪れないヨ☆』
ブリテンを守れなかった私は、あの滅びを回避できるのかをずっと自問していた。そんな私にとって、同じように抗う彼の姿は北極星のような導となった。
『キミの力を、貸して欲しい』
泣き笑いの表情で差し出された手を取って、私は決意した。ーーー彼の騎士になろうと。
もう一つ、スポットライトが点灯する。照らす先は、ヴィヴィアン・ビリジアン。そして、彼に向けた言葉が紡がれる。
「もう一度言おう。キミは何をしているんだい♪」stage以上です。
第■回キャスター陣営、インタビューを投下いたします。
>>478
栗栖市南西部、市営キャンプ場。
パチパチと音を立てて燃える焚き火に鍋を吊りかけ、数度かき混ぜて味を見る。
「……うん!これで良し!」
鍋に入ったモツ味噌煮込みを焚き火から外し、入れ替わるようにホイルに包んだ『何か』を投入する。
「んっ……はぁーーー……暖まるぅ……!」
顔を綻ばせつつ、銀河は鍋を食べ進めていく。
モツ、人参、大根、モツ、ゴボウ、モツ、椎茸、こんにゃく、モツ――――――と味噌と醤油の味がよく染みた食材を口に運んでいく。
「――――――っと、そろそろかな?」
徐にトングを手に持ち、ホイル包みを取り出し中を開ける。塩コショウで味付けされ、色よく焼けた豚ヒレ肉のブロックがホイルの隙間から顔を出した。
「おっ!焼けてるじゃ~ん♪」
ホイルをはがし、豪快にかぶりつく。
「んまァ~いッ!塩コショウで引き立った肉の旨味が広がり、ご飯が進むネこりゃあ!」
雑な食レポをしつつ銀河はモツ煮と焼豚、飯ごうで炊いたご飯に舌鼓を打った。>>479
「――――――はぁ……旨かったぁ……」
テントの中で横になり、満腹になった腹をさする。
しかし、たった一人で聖杯大会という戦場に飛び込んだ不安が、偶然に切符を手にした自分が参加しても良いのかという苦悩が、彼女の心を再び突き刺す。
「(―――――でも)」
最終的に参加する決意をしたのは自分だ、ならば戦い抜くまで。相手が百戦錬磨、万夫不当であっても気合いで負ける訳にはいかない!
「良し!就寝!!おやすみ!!!」
寝袋に身を包み、目を閉じた。
《キャスター陣営現在地……南西部の栗栖市市営キャンプ場》フランス特異点を投稿します
寺田は飛び退ったが、剣先の鋭さは、つい先ほどまでの比ではなかった。蛇の鎌首が躍るように、白刃は伸びて寺田を追い詰めた。流石の寺田が歩調を崩し、よろめいた。
ルイは必殺の一閃を叩き込もうとして、にわかにその方向をかえ、横あいから薙ぎこまれてきた刀身を、かろうじてはじきかえした。ルイの視線の先に、セイバーの厩戸皇子がたたずんでいる。
「次は汝が我の相手か?」
「二人を同時に相手してみるのはどうだ?」
「すまんな、尊人よ。暫し、この橙武者めの相手を任せる!」
「おい」
厩戸皇子の返答を聴く前に、寺田は納刀して後退する。立香の傍まで下がると胡坐をして瞑目してしまった。
「て、寺田さん? 何を……?」
「―――」
マスターの声にも応えず寺田は黙して座るだけである。
戦友の意外な行動に厩戸皇子は微苦笑を浮かべる。あの男は、武術や闘争のなかでしか己を解放できないのだろう。そんな男は先程までの闘争に彼は思うところがあったのかもしれない。
巧妙というよりも流麗な動作で厩戸皇子は斬りかかる。わきおこった刃音は激烈だった。飛び違い、最初の刃を撃ちかわすと、厩戸皇子は立て続けに攻勢に出たが、相手の身体にかすることもできない。
寺田が感じ取った身を縛るような重圧感が厩戸皇子にもかかっていた。彼は戦法をきりかえた。攻撃をやめ、半歩退いて守勢に転じてみせたのだ。>>482
ルイは鋭く踏み込み、苛烈な斬撃を立て続けに浴びせたが、つい先ほどの厩戸皇子と同じく、不可視な抵抗に加えて完璧な防御に直面しただけであった。
―――我(フランス)の“重さ”が利いていない?
しかし、すぐにルイはその考えを打ち消す。自分の重圧(デバフ)が失効しているのではない、別の要因であると推量する。
彼の知らぬことであったがその推量は的中していた。ルイが持つ宝剣『王威を示せ、遍く世を照らす陽光の剣(ジュワユーズ・グラン・シエクル)』は、太陽神を演じたという逸話、そして自身を国そのものと称した逸話に基づいて彼にAランク相当の神性を付与する。
対する厩戸皇子はスキル聖徳太子によって神性への特防を持つので、ルイに負わされる重圧は寺田と比すれば軽減されており、またルイの攻撃も鈍くなっている。
互いの力によって、さながら水中で棒振りをするかのように動きが重くなるのを自覚する。
縦横に斬りむすび、剣光の残影を宙に閃かせ、白刃と白刃が強烈な勢いでかみ合い、宙に停止した。両者の顔が至近の距離に迫り、互いの呼吸音が重なり合って聴覚を満たす。
「見事な技倆(うで)だ、セイバー。それほどの剣ならば自らの運命を託すに能い強さだ。この歌劇に相応しい勇士よ!」
太陽王の賞賛に、日出処の皇子は冷笑で答える。>>483
「運命? 運命などに私の人生を左右されてたまるものかよ。私は私の長所によって事を成して、自分の短所によって滅びるだろう。全て、私の器量の範囲内だ」
かみあっていた白刃が離れた一瞬、厩戸皇子の長剣が宙にうなった。その迅速さと激しさは、ルイの予測を超えていた。防ごうと動いた剣は、むなしく空を泳いで、ルイは厩戸皇子の斬撃を顔に受けた。
しかし―――
刃がルイを通り過ぎた!
「!? ……陽炎か!」
「察しがいいな」
魔力放出(炎)が作り出した陽炎が厩戸皇子の目測を誤らせたのだと看破したのだ。太子の明察を賞賛したのは後退して体勢を立て直したルイである。呼吸も鼓動も、完全に制御しおえたその姿を見て、厩戸皇子は勝機が去ったことを悟らざるを得なかった。これで勝負は仕切り直された。
魔力放出(炎)が作り出す熱によって光へ干渉することで姿が現れ、消えるルイが攻めに転じて厩戸皇子へ剣を振るい続ける。
「またか!」
直前に現れた太陽王の剣戟を紙一重で見切りでかわし、攻撃者の方を見ようとした。しかし、すでに太陽王はいなかった。
厩戸皇子は残心のまま、くるりとターン。
確信と共に背後を見れば、やはり太陽王はそこにいた。
後方へ跳びすさり、一〇メートル近くも彼から距離を取った。>>484
「これは面白い手妻を持っているな。よいものを見せてもらった。返礼に私も手遊び程度の芸だがお見せしよう」
太陽王は呵々と大笑した。
「日本国の皇子の芸か。よかろう、我(フランス)が曇りなき眼(まなこ)で見定めてしんぜよう!」
「はは、やってみ給えよ」
ルイが一足跳びで疾風のごとく接近して剣が白い光となって振り下ろされる刹那、厩戸皇子は―――八つに分身した。
厩戸皇子の残像は八重に重なって、本物の見極めがつかない。厩戸皇子と相対した者には見える状態となったのである!
音速を超越した斬撃は、残像はひとつに振り下ろされた。
「なんと!?」
「最近会得した技だ。面白いだろう」
ルイは愕然とし、厩戸皇子は立ち止まって分身状態を終えた。
八重にぶれることもなく、ただひとりきりでフランスの歌劇の舞台に立っている。
「どうだ太陽王、もう一度試してみよ」
「よかろう。そのめくらましの出来映え、試してくれる!」
白刃が振り下ろされ、厩戸皇子はまたしても八分身。残像のひとつが犠牲になった。
輝くルイの顔から笑みが消えた。真顔で賞賛する。
「見事だ、セイバー。そのような動きができるとは思ってもみなかった」
「理屈は極めてシンプルなのだがね」
要はフェイントを行っているだけなのだ。
それだけだった。小刻みに右へステップ、左へステップ、ななめ前、ななめ後方、前後左右にステップし、どこへ跳ぶか悟らせないようにする。その小刻みなアクションを超越者たる英霊が行うことで―――何重にも分身ができる。>>485
カルデアで召喚されて立香が眠っている間に、データベースを読み取った後に彼が読み漁ったライブラリの中にあったボクシングを参考にして考案したテクニックだ。跳んでもどる、跳んでもどる。アウトボクサーの軽やかなフットワークを元にして、厩戸皇子は『分身』という新境地に達したのだ。
そして今―――
ルイの姿が消失し、白刃が飛来する。
厩戸皇子も小さくステップを踏みはじめる。とんとんとんとんととと―――神速のフェイントが生み出す八分身。残像のひとつを斬り裂かれた瞬間。
分身をやめて刀身が激突する。火花が両者の顔にかかった。第二撃の応酬は、鍔どうしの衝突をうんだ。第三撃は、足場の石畳が砕けたため、互いに空を斬り、第四撃の刃と刃がかみあって、またも火花が散らす。
一〇合、二〇合、三〇合。剛剣どうしの激突は、しばし、どちらが劣るともみえなかった。暴風のごとき激突から、互いが弾き飛ばされ、距離が開かれる。
「我が焔が起こした煙は天まで届き、我が姫への捧げものになる。ゆえに!」
ルイは宝剣を地に突き立てる。
一面に焔が噴き出し、天を焦がさんばかりに燃え上がる。
「聖なる火焔で殺められし、汝は聖餐である!」
地面から上がってきた爆炎に、厩戸皇子は呑み込まれていった。
魔力放出(炎)によって魔力はアポロンの聖なる火焔のごとく変じて厩戸皇子を襲う。太陽王の火焔は戦場となった舞台を丸ごと呑み込み、鉄を蒸発させ、天をも焦がす勢いで高々と燃え上がっている。
―――八卦炉に突っ込まれたような気分だ!
厩戸皇子が足場とする舞台、なんと真っ赤に赤熱していた。
このままでは熔岩となって流れ出すことだろう。だが、その紅く灼熱した石畳に―――聖徳の皇太子は健在だった。
彼の衣服も、素肌も、まだ燃えはじめていない。あちこち服が焦げだしてはいいるものの、彼自身も汗だくではあるものの。本人はあくまでも涼しげな風情を崩さない。
「流石だ日出処の皇子、必滅の大火をよくしのいでいる。まったくお前は大したものだ……しかし」
美しき王者の目がわずかに鋭くなった。
「汝は我が歌劇の英雄。そしてそなたを討ち私が得る勝利こそは愛しき姫へ贈る首飾り」>>486
宝剣に渦巻く火焔が、さならが猛る火竜の咆哮の如く、轟然と迸る。超高圧に凝縮されていた火焔が熾烈な一撃として敵に叩きつけると、万軍を焼き払い灰燼に帰する火焔の破砕槌となる。
「故に、奮えよ。姫をより輝かせるために!」
厩戸皇子は一心に祈念していた。
「若し是の観世音菩薩の御名を持する者あらば、設い大火に入るとも火も焼くこと能わず。念彼観音力、火坑も変じて池とならん!」
火よりの護身を願う経文であった。
厩戸皇子から立ち上る呪が四天王たちの幻像(ヴィジョン)となる。毘沙門天・持国天・広目天・増長天が傍に立つ。彼が持つ宝具の四天王とは異なる呪が化身したそれらは、この火焔から立香を守るために厩戸皇子は主を守れと命ずる。
「念彼観音力、火坑変成池(かきょうへんじょうち)!」
厩戸皇子による火除けの祈禱。それのおかげで、まるで見えざる巨人の手が薙ぎ払ったかのように一直線に道を拓く。火焔が裂け、気圧が吹き抜けた穴が貫通した。
「なぁ―――ぁっ!?」
ルイが驚愕の声を漏らしたのは、致死の一撃となるだろう爆炎を穿たれたことだけに留まらなかったからである。
火よりの護身を願い、そのおかげでどうにかルイの炎に焼かれないまま持ち堪えていた厩戸皇子が、炎があった空間に生じた気流の直中へと躊躇うことなく飛び込んだからである。
炎のトンネルを一足跳びのうちに奔り抜けた厩戸皇子の飛翔は、まさに飛燕の勢いであった。そして彼の足先が再び石畳に触れたとき、ルイとの間合いは肉薄しており、その間を阻む障壁は皆無であった。
このとき、厩戸皇子の斬撃はまさしく天下る稲妻であった。
「ぐはぁっ!?」
たたらを踏んで後退る太陽王が咄嗟に刃の前に翳した左腕が切断され、聖徳の皇太子の白刃は鎖骨を断ち胸部を斬り裂いた。
遮二無二になって魔力放出による推進力を利用した後退で距離を取ったルイへ、厩戸皇子が不敵に笑ってみせる。
「これは困った。一流の歌劇が完成を見るには一流の脚本と一流の俳優が必要だそうだが、卿の演技はいささか見え透いていて興がそがれるな」>>487
以上です。アリウムさん、リドリーさんよろしくお願いします。「以上が今回の参加者でございます」
先程まで各参加者のインタビューが映し出されたであろう世界中の画面は、今はこの私、アンジェリーナ・コスタを移している。
「さて、今回の特別ルールといえば小聖杯。今回のものは、マスターがアクセサリーの形状を思い浮かべながら触れる事で、そのイメージと同じ形状になり、瞬時に身につけられます。
勿論、これはアクセサリー化した聖杯も同じ性質を持っており……そうやって奪い合って貰いますので、アクセサリー化した聖杯は外したり服等で隠したりしている間は効果が無くなりますし、サーヴァントが消滅したら止めを刺した陣営に小聖杯が渡されます」
といったように、一通りルールを説明していく。
「さて、その小聖杯の位置ですが……参加者の皆様に渡した地図は、この来栖市を九つのエリアに分けていますよね。ええ、その内北西部を除いた八つのエリアの内の一つ……そこの一番良い霊地にあります。つまり、最初に小聖杯を手に入れたければ霊地を見定める所から始めて下さいませ」
最も、小聖杯を保管している管理者がやらかして下さってますけど……その程度の障害、参加者の皆様方ならどうとでもなるでしょう……と心の中で付け加え。
「それでは、Fate/TV SHOW 第■回聖杯大会。開始でございます」撮影が終わり、聖杯大会が始まる。
とはいえ、不確定要素が多いのが気がかりですね。
封印指定寸前の魔術師アスパシア・テッサロニカに、詳細不明の能力を持つ少女 茅理銀河。
バーサーカー陣営のマスターは、本来は鎌鼬を起こす魔術師ナタリヤ・ライツでしたのが最終的にリザ・ハロウィンへと令呪が渡る。
極めつけは、アーチャーの代わりに召喚されたフォーリナーという未知のクラス。
「最悪の場合は聖杯の破壊も視野に……ええ、これに頼るかもしれませんわね」
そう呟いた私は、厳重に保管した聖遺物……ムスペルヘイムの残骸へと一度だけ視線を移し、次の仕事へと戻った。「いよいよですか、待ちわびましたよ」
聖杯大会が、私こと檜葉靖彦が全てを手に入れる戦いが始まった。
かつて我がハルピア家が株分けした齋藤家を参加者として送り込んだのはカムフラージュに過ぎない。
運営より借り受けた預託令呪の改造……声が届く範囲にいるサーヴァントへの令呪での命令機能及び、完成した聖杯を手にする機能。
後は、小聖杯を求めてやってきた参加者を令呪を以て全て制すれば私の勝ち……それを確信して私は昼食のキャロットスープをスプーンで掬った。というわけで、7陣営のインタビューが揃ったので、第■回、一日目開始します。
北西を除く各エリアの最大の霊地
北:大型ショッピングモール
北東:港
西:管理者(檜葉家)の屋敷
中央:市役所
東:大病院
南西:ダム
南:公園
南東:商店街>>475
天から注ぐ光に真っ直ぐ照らされた男が自らの非業の運命を語る……。コイツと俺は何も変わらなかった。何も変わらなかったのだ。
いや、未来を暗闇に閉ざされたと恐怖に竦んだ自分と、未来を照らしそこに絶望の道程しか残されていないと知ったのでは比べるのも烏滸がましい。
もう一条の光が自分を照らす。
暗闇から一転、照らし出された男の姿に彼は何を見ただろう。観客は何を見ただろう。怒りを、恐れを分割し高速で回転する思考回路とは別に表情筋は3つの思考によって歪む。
いったいどこからそんな勇気が出てくるんだ。
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
右眼からは大粒の涙が零れ落ちて行く。小さな声で槍の錬成を解除する。足元にはそのカタチを保つことを放棄した合金が溶け落ちた。
「先程までの非礼を詫びよう。オズボーン…オズボーン・ファンタジア」
「そして答えよう! 確かに先程までの私は余りにも大きな敵を恐れ、臆病風に吹かれていた」
「きっと私は貴方には勝てないだろう。アサシンでは、きっとセイバーには勝てないだろう」
「だが!勝利だけは! 渡しはしない!!」
「オズボーン・ファンタジア! 今度は私が問おう!」
「 お ま え は だ れ だ 」
ーcont.ー>>493
馬上、手綱から手を離しジャケットの内ポケットからおもむろに取り出したのは2つめの銃自在剣フリ-ハンド。取り替え式の液体合金に方向性を与える事であらゆる形状を再現するもの。
それは剣であり、槍であり、斧であり盾であり弓であり鎧であり…だがジャケットに仕込んだもう一つのこれは、拳銃で例えるならロングマガジンが予め装着されたソレで錬成するのは武器ではない。防具でもない。それは
「鏡となれ!Awaken!!」
オズボーンに向けてサイドスローで投げ入れたソレは液体合金を噴出しながら鏡の壁を構成していく。二人を隔てる壁を。
これは時間稼ぎだ。私の魔術に幻惑や催眠の効果などない。だが一瞬、一緒でいい。
手綱を握り直し馬を反転させる。
着いてこれるものなら来るがいい……! 勝利を得るために、全てを捨て去る覚悟をした私に追い付けるというのなら!
反転の目的は逃走ではない。向かう先は未だ闇に閉ざされた舞台の中央。アサシンとセイバーが対決していたその中央!
予想外の動きに一瞬、スポットライトが照らすべき者を見失った。槍の錬成を解かれたフリーハンドに新たなカートリッジを装填し呟く。その言葉を搔き消すように、全ての観客に届くようにと声を上げる。
「音楽を! 決戦に相応しい音楽を!!」
言葉と共にヴァイオリンの音が、トランペットが、オーボエが……管弦楽が響き始める。
耳ではなく身体そのものを震わせる音を浴びながら、スポットライトが馬上の魔術師に追い付くの待つ。
いや、魔術師ではない。
スポットライトが照らす、その姿は——>>494
そこには全身を鎧兜で身を包んだ騎士が居た。
「貴婦人を手にかけるとは、乱心したか!! アーサー王!!」
スポットライトが照らす半径を広げる先、そこには片腕を失ったメイドと名高き騎士王の姿があった。
「キミは……」
あぁ、そうだ。セイバー。アーサー王の名を持つサーヴァントよ。お前はサーヴァントというシステムに置いては最強の一角だろう。
だがサーヴァントが抱える重大な欠陥をこの舞台が、お前の主人が、お前自身が教えてくれた。
「分からぬか……分からぬだろう。掲げる騎士道に惑い、女性を手にかけた貴方には!」
フルフェイスヘルメットに顔を隠したまま声を響かせる。
「我は円卓の騎士が1人にしてモルゴースの子! 王位の簒奪者! 叛逆の騎士!」
舞台には演劇を。演劇には役者を。 役者には、役名を。
「我が名はモルドレッド!! 貴方を倒し、このブリテンを導く者也!!」
ーpassーテスト
伏神投稿します
>>497
音も無く、アサシンは着地する。
とある民家を囲む垣根に。
生前では番犬を毒を含ませたハンカチで殺したりなどという面倒な作業をする必要もあったが、今はそうではない。
このエーテル体で構成された体を阻めるモノなど、そうそうないのだから。
だがやる事は一つ。自身が存在する理由の証明。為すべきことは体が覚えている。
ひとっ飛びで民家の二階のベランダへと着地ーーー
「おっとっと」
ギリギリ届かないと思ったがそうでもない。ベランダの柵を右手で掴み身体を持ち上げて侵入する。
そして窓を開け、カーテンも少しだけ開ける。
アサシンは一瞬驚いた。
窓のすぐ側に家の住民が寝ていたからだ。
だがアサシンが驚いた要因はそれではなかった。
寝ていた住民、恐らく高校生らしき女の子が布団も敷かずに学生服のまま床に直で寝ていたからだ。
その状況に対して疑問が浮かぶ前に、アサシンの薄汚れたガラスの双眸にはある物が目に入った。
二の腕や足についた沢山の傷の跡。ちらりと見える腹にはついた小さな火傷も沢山。
だけどそこ以外はまるで何もなくて綺麗で。>>500
短いけど以上です>>356
喫茶店を後にし、ホテルへ向かう。その途中、隣を歩くセイバーに話しかける。口を開かず、念話で。
『ねえ、セイバー。ムッシュ・ユージーンとの同盟、貴方はどう思いまして?』
こんな質問をした理由は、不安があったからでしょう。決断を行なった心に現れる、本当にこれで良かったのかという靄のような不安。
『率直に言えば、あまり近づかない方が良い相手だと思っていました。マスターとサーヴァント、どちらも警戒するべき相手です。間近で接して分かりましたが、特にバーサーカーからは危険な気配を感じています。しかし、マスターが彼との同盟を悩んだ事は、あの時の顔で伝わりました。その上で決断したのであれば、私はそれを尊重したい』
『そう。けれど、もしわたくしの判断が間違っていて、彼から不意打ちを受けたりしたら?』
『そうですね……もしそうなったとしたらーーー』
ふと、セイバーが歩みを緩め、わたくしの背後に立つ。そしてそっと、肩に手を置いた。直後、耳朶を震わす音が紡がれる。
「私がお守りします」
肉声だ。耳元に掛けられる低い美声は、身体をぞく、という快感と、不思議な幸福感で満たした。
「あ、えっと、セイバー?その、ありが、とう……」
不慣れな感覚に戸惑い、しどろもどろになってしまった。しっかりしなさい、わたくし!>>502
「ふふ。可愛らしい反応、こちらこそありがとうございました、マスター」
見れば、セイバーは上品に笑っていた。そこでふと、一つの可能性に思い当たる。
「か、からかいましたのね!」
「ええ、少し。ごめんなさい。けれどーーーやっと顔が晴れましたね。先程までの苦しそうな影がなくなりました」
「ーーー今のは、わたくしが吹っ切れるように?」
「そこはご想像にお任せします。私がたんにマスターをからかいたかっただけかも知れませんよ」
楽しそうにはぐらかすセイバー。ただ恐らく、今のは彼女なりの気遣いだったのだろう。
『ですが、私が貴女を守るというのは真実です。昨日のような醜態は晒しません。マスターはご自身の決断を、ただ信じてください。その結果不利益が生じたとしたら、私が取り除きます』
再び念話に切り替わったその言葉は、わたくしの胸にじんわりと染み込んだ。先程までの動揺も収まり、ようやくいつものわたくしとして答えられる。
『ええ、頼りにしていますわ』
そこで、前を歩いていたユージーンが声を掛けてきた。
「おーい、何かあったかー?」
「いいえ、大した事ではありませんわ。けれど、レディの歩調に合わせるのも紳士ですわよ」>>503
◆
ホテルに辿り着いた。入口前でそれぞれ立ち止まり、ユージーンが口を開く。
「よし、まずは俺とバーサーカーが中に入る。安全が確認できたら手招きで合図する。それまでは入らないでくれ。その後、従業員の心を読んで、キャスター達の情報を得る。そこまで済んだら、キャスター達に警戒しながらあんたの部屋を目指す。と、こんな感じか。これで大丈夫か?」
「ええ、異存はありませんわ」
◆
ホテル内への侵入は上手くいった。というよりも、いっそ拍子抜けだ。どうやらキャスター達は、わたくし達と交戦した後にホテルをチェックアウトしたらしい。つまり、ここにはもういない。
「手の早いことで。いっそ感心するね」
ユージーンが呆れたように言う。
「幸運だったと思いましょう。キャスターは厄介な術を使うと聞いています。そのホームとなれば、何をしてくるか未知数でしたもの」
そんな事を言い合っているうちに、わたくしの部屋に着く。
念の為罠などの形跡がない事を調べ、遂に中へ入る。目的のものは、すぐに見つかった。
「キャリーケース?」
それを見たユージーンが声を上げる。
「ええ、この中に色々と礼装が入っていますわ。嵩張るものもありますから、このケースそのものも特別製ですわ」
ウッドテイストのキャリーケース。この中に、わたくしが主力とする礼装が多く入っている。紆余曲折あったけれど、どうにか手に入れられた。
「そうか。まあ、何はともあれミッション完了、だな」
〜トーナメントSSも忘れないでねということで、幕間的に、グレコロールがどうなったのかという話を。
訓練用の木人が、相対するマスターに殴りかかる。
大抵のサーヴァントからすれば遅過ぎる一撃だけど、現代の魔術師相手なら十分通用する速度。
けど、私のマスターが姿勢を低くしたことでそれは空を切り、それと同時に木人の脇腹へとマスターの掌打が叩き込まれた。
「まあ、こんなものかしら」
倒れ伏す木人から離れるマスター。
身体と精神の疲労感のズレを修正する程度とは聞いてたけど、見事な動きだった。
神秘が浅いから単純な身体能力は低いけど、それを精密な動きで補っている。
これが戦闘技術の進歩……と、そこまで考えていた所で、自己修復を終えた木人が立ち上がった。「……次は、私の番……」
訓練場に来たもう一つの理由を取り出す。
グレコロールと名付けられた銃……起源というものを込めた弾丸を放つ魔術礼装。
私もマスターも銃なんて使った事無いけど、私なら直感である程度はどうにか出来る。
「……うん、問題無い……」
放たれたのは炎の弾丸。
グレコロールの耐熱性を強化してなかったら一発で壊れてた……そう思える程に高温の炎を纏った弾丸は、一直線に木人へと。
着弾と同時に爆炎……そして燃え広がる炎。
訓練場の機能で火が消えた頃には、木人は既に炭と化していた。「凄い……というか、サーヴァントの武装と遜色ないわね」
驚きを隠せないマスター……うん、私も少し驚いてる。
私の起源が「焼却」あたりなのもあると思うけど……魔術礼装とは思えない威力。
魔力放出を加えれば、更に威力は上がる。
けど、流石に良い事ばかりじゃなかった。
「……やっぱり……多用出来ない……」
グレコロールはまだ熱を持っていた。
耐熱性を強化しても尚、私の炎は、起源を込めた炎弾は、この銃に負荷をかけているみたい。
魔力放出の度合い次第では、ランクの低い宝具級の攻撃と引き換えに、銃自体も壊れるかもしれない。
使い所は、見極めないと。以上です。
時系列としては一回戦が全試合終わった所。ロワイン「よくノコノコと顔を出せたものだ。懺悔は不要だ。貴様の行いは、私が既に審判の秤へ乗せた。それとも何か申し開きがあるというのか?セイバーのマスターよ」
リドリー「『それとも何か申し開きがあるというのか?』だぁ?おいおいこいつは三流だな共謀罪違反野郎(テロリスト)がよお。お前の身体の幼稚園がまだ存続していたいんならさっさと私に軍配渡して海の向こうで大人しく「」にでもいたれや」>>514
リドリーさん、質問を予選スレに投稿しました。ご確認おねがいします。>>521
すみませんが予選スレに質問しました。おねがいします。>>531
「動画?なんだそれは。証拠があるというなら是非とも知りたいものだな」>>533
なんなら迎え撃つつもりでしたので、ザミエルの近くにもいませんでした。>>535
「まあ、心配になるのはわかるが企業秘密だ。まあ安心しろって身体に害は加えないぜ」>>543
映像は本物、でそっからカマかけてます>>550
あ…そうだった…
ふうむ…個人的な目線ですが、流石に若干のメタ視点的証拠集なのではないか、感があります。すぐ教会に来てるでしょうのにほぼほぼ根拠があるんはちょいと待ったかけたい。
>>549
よっしゃ、じゃあ教会訪問は教授の後にリドリー、セイバー+ランサーにして良さげですねー。え、というかこのままの流れで続けていいんです?
私も楽しくなって続けちゃいましたが、以前話していた感じに監督者預かりっていうことにしてもいいですよ。部外者だけど、まあ流石に動画は無理があるよね。
>>559
あら、なかったです?そしたらその名前の下りはナシにしてもらって大丈夫です…!>>561
ですねえ…
そんな人いたらSNの士郎みたいにすぐにハートを射抜かれますよねあと現状でも「敵襲してきたサーヴァント(銃使い、アーチャー?)のマスターは教授である」という申告には証拠全くないですしねー。
飛行機の墜落動画はまだしも、ザミエルくんの動画は流れや状況的には入手できないでしょうし。てか手に入れられたら都合良すぎだと思います。>>562
正規ルートから軌道がそれて、街から外れる方向にわずかに上下しながら滑空した後、急に高度を上げて飛び去ったくらいの情報でしょうし、残しておいたら神秘秘匿情報操作の意味が薄れますし、そもそも弓陣営につながる情報じゃないですよね?>>569
ネットとか知識でしか知らないし……正直弓陣営に糾弾し返すよりも、自身の潔白を証明する流れの方がより良い気がする。
その方が話の組み立てがしやすそうですし、飛行機が常に自分達目掛けてたって事さえ証明出来れば魔術的な干渉があった事実は明白ですし
そっから「糾弾すべきはそれを仕掛けた相手なんじゃね?」と自身の罪を有耶無耶に出来そうですし。>>573
じゃあそうしますか
ドライブレコーダーって後ろについてましたっけ?>>575
あれ仕組みさえわかればそのまま再現できるから再現した際の付録にドライブレコードを搭載していたとかダメ?>>578
飛行機動画はまぁSNSやらに転がってる可能性は十分あると思います(短時間で入手できるかは不明でしょうが……)
では。ふざけんな!正直言って、監督役がこんなに大変だとは思っていなかった。いやまぁ、ハルの奴が意外にも結構真面目に事前準備やらをしてたらしいので多少の面倒事ではあるんだろうなぁ……、とかは思ってたりしたが、まさかこれほどとは……。なんだって初日に飛行機が落ちてくるんだ!なんかガス騒ぎで負傷者が多いだのとハルから報告を受けていからどうしたモンかと思案していたらイキナリ大惨事の不自然な回避の隠蔽をしろという流れになるとは……まぁガス被害の方はガス会社に汚名を被ってもらうとして、さて旅客機墜落未遂をどう処理するか……。まぁ諸々と交渉して”旅客機の駆動系の故障”という風にするのが一番良さそうかねぇ……
「おいハル!」
返事は無い。あぁそういやさっきハルのヤツが旅客機墜落に興奮してうるさかったからストレス解消も兼でぶん殴って裏に寝かせといたんだっけ。一応神秘隠匿の指示はあらかた出し終わってたから大丈夫そうだったが、そろそろ起こさねぇと。>>580
ギギギギィィィ……。
するとその時、教会の扉が開いた。こんな忙しい時に客かよ
「懺悔やら説教がほしいなら今日はもう店仕舞いだ。ヨソ当たってくRe……
と扉の方を向いたが誰も居ない。
ん?」
風で空いたかねぇ?んなヤワい造りじゃあねぇ筈だが……
「違うな、監督役の小僧。
シュルシュル、と足元まで来た漆黒の蛇が口を開く。なんだコイツ。ハル関係?
私が望むのはセイバー陣営ともう一騎のサーヴァントの連合、考え無しの阿呆共へのペナルティを請求する事だ」
あー、戦争関係者か。ってぇ事はコイツマスターなのか?蛇が?
「じゃあ話を聞くだけ聞こうか。名目やらはなんだ?」
「決まっている。先ほどの飛行機墜落への対応だ。いくら”事故”が起きてそれを救助しようとしたとしても、アレは過度にすぎる。神秘の隠匿について全く配慮していない。ひいてはこの聖杯戦争、さらに言えば魔術界そのももを危険にさらす行為だ、全くもって許し難い。故に彼らに何らかの制限を課すか、愚行の代償を支払ってもらいたい」
「あー、とりあえず申し出は了解した。事後処理の仕事が終わらせたら通達ぐらいはやってやるが、通るか通らんかは知らん。それでいいか?あー、金の要求は押し通すかもな?やってみなきゃわからん」
少なくともハルの奴と東雲の嬢ちゃんに諸々(土地被害の補填費、神秘漏えいがどのレベルで起きたか、隠蔽にかかった費用その他)の確認やらは聞かなきゃならん。あーメンドクせぇーーっ!
「多少の不服あるが、まぁいい。了解した、では吉報を待っている」
で、黒蛇ヤローが教会を出よう動き始めたぐらいで、大音響で扉が開いた。忙しい夜だなぁ、オイ。
「やぁやぁ昨日ぶりだね神主さん。ちょっと物申したい事があるんだけど今時間大丈夫かな!?とあるマスターに連絡できるかい!?」
まぁたうるせぇ&ウザってぇのが……増えてるし。あーっと?変人とそのサーヴァントに、追加で一騎のサーヴァント共闘でもしてたのかね?さて、この状況。一体全体どうなる事やら。
最悪ハルの奴を引っ張りだすか?こういう面倒そうな交渉のまとめ進行役は向いてるだろ、多分。第■回、一日目アサシン陣営の行動です。
どうにか工房の作成が終わった。
使い魔避けの結界と、土地から魔力補給する機能に、侵入者の気力を減退させる術式。
更に、強度と引き換えに起動するまで透明化する鎖型魔術礼装のトラップも仕掛けた……これなら、逃げる時間を稼ぐ事は出来るはず。
「昼飯はホットドッグにでもしよう……あっ、ウインナー買い忘れた……疲れたし具は冷蔵庫にあるレタスとタマネギとトマトで良いか」
さてと、アサシンは管理者の屋敷に偵察か……。来栖市の管理者にしてマスターを利用して聖杯を得ようと企む魔術師、檜葉靖彦の屋敷への侵入は成功した。
厨房や裏口等、使用人がよく使うエリアは魔術による警備も薄く、本職の暗殺者等でない俺程度でも楽に侵入出来た。
しっかし、窓から一度だけ顔を見れた檜葉という奴は、もっと下らん企みを抱いたろくでもねえ奴にしか見えんぞ。
戦士としての力量や才能は低いが、何か切り札を持ってそうだし……何より卑劣な目つきが気に入らねえ。
とはいえ、土地の管理者は運営に協力する事になっているのもあるが、それ以上に何等かの切り札を持って待ち構える奴に見つかるのは危険だ。
これまでの観察結果からして此処に小聖杯があるのは間違い無いだろうが、警備の濃いエリアを探索すれば見つかるのは避けられそうにない。
と、此処で俺はあるものに目を付けた。
『マスター、眠り薬だ。それか、殺さず
に動きを封じれる毒とか無いか?』
目を付けたのは、紅茶とかいう飲み物と付け合わせの菓子……聖杯によるとマロングラッセと言うのか。
まあいい、大事なのはそれがこの屋敷の主に出される飲食物だという事……これに一服盛れば屋敷の探索は楽勝、小聖杯を最初に手に入れるのは俺達だ。
という訳で、俺はマスターからの返事を待っていたが……。
『えっ、ごめん。そういうのは持ってない』
そうそう美味い話は無かった。以上です。
アサシンは夕方に拠点へと帰る予定。
初心者の方へ、こんな感じでSS投稿して下さい。
ただ、他陣営が絡むSSの場合、予選スレで相談したほうが良いかと思います。
現状特に書く事が無い場合、パスを宣言して下さい。よくてよss始めます!
>>586
「マスター起きろ。もうそろそろ着くぞ」
虚数の海に慣れてしまい、うつらうつら夢の海を漕ぐカルデアのマスター『藤丸立夏』の肩を叩くセイバー『白雪姫』。白く透き通った肌を見ながら伸びをする
「ありがとう白雪姫」
「全く…………でもこんな環境で寝られるなんて貴女はある意味大物ですね」
「ごめんごめん、なんか慣れちゃってさ」
魂を抜ける感覚を慣れたと言い切ったこの子に図太いのかそれとも器が大きいのか。白雪姫は少しだけため息をつくが、揺れが大きくなっていくのを感じ、身体を整える
シャドウ・ボーダーはこうして異聞帯の一つにへと浮上したのだった
Lost belt 異聞深度A+
A.D.1925 不滅人生堕落論 ニューヨーク
〜見よ!アメリカ大陸は動き歩く!〜>>591
『黒幕』の言葉に反応を示したのは鎌のような槍を持つ男だ。虎模様の皮を被った若武者と言った出で立ち。そして赤字で書かれた文字がある旗を持っている
「拙者、この世界で 退屈せず毎日を楽しーく過ごしているのだ。何処の馬の骨も分からない奴に壊されたくはなーいね」
「ふむ『弾丸』さん。貴方が意見するとは珍しいねぇ」
『弾丸』と呼ばれた男は小刻みに震えて笑う
「拙者だって口を出したい時はあーるのさ。ただまー。久々に血が燃えていーるからな」
身体を動かし、準備を整える『弾丸』。そして彼は『肝心』に聞いた
「それじゃーあ、行ってきてもいいか?」
「フフ、いいでしょう。貴方の狩り楽しみにしてますよ!」
その言葉を合図に『弾丸』はその姿が消え……………次の瞬間彼は映し出されていた映像に現れていた!>>603
そして遠くからその姿を見るものあり。「まずいな。カルデアを助けなくては……………」弾けるような、短い音がした。
それはライダーの舌打ちに他ならない。
「大口を叩く金髪と、相性が悪いのは変わらんか」
彼は自分を信じていない。
より正確に言うならば、自らした決断を信じはしない。
それはヘレスポントス海峡を跳び越えてきたとある王子を迎え入れたことに始まり、アルゴーの船で荒波を乗り越えてきた王子を即座に叩きださなかったことへ続く。
・・・・・
裏目に出るのだ。確実に。
戦術単位で正解を出しても、戦略単位でその運命が滅ぼしにやってくるのだ。
だからその王様は、自らを呼び出した青年に任せていた。
事あるごとに「どうするね?」と訪ねて、マスターに選択肢を選ばせていた。
王様はお伺いをたてる従者のように振舞っていた。
その結末がコレだ。くだらない。>>605
その迅速は獅子すら奮わすと言えるほどのランサーと暴虐の王たるバーサーカーが撃ち合っている。
日輪の力を匂わすアーチャーはランサーを援護し、飛ぶ駄竜はバーサーカーの選択肢を奪うための立ち回りをしている。
それでもなお破壊者は止まらない。
咆哮で雑竜が弾け飛び、拳で矢を撲り飛ばし、ランサーの機動に対応している。
王様は、素直に、いいなぁと思った。
うらやましいなぁと思った。
力を持っていて、そう行動したから魔女と呼ばれた姉とも、
力を持っていて、何もしなかったから魔獣の母と成り果てた姉とも違う。
太陽神の子である我が身の力の無さよ。
生前ならば、アレスの加護と槍がある。少しはマシだろう。
だがそれは所詮は後付けだ。
忌ま忌ましい諸悪の根源たる羊の皮など言うまでもない。>>607
自らに通じる魔力の流れは、王様の主人にあたる魔術師と繋がっている。
「生きているなら仕事をしろ」
念話ではなく、届かない口頭で責める。
「やると言ったらやれ」
息子では無いので、使い潰してもまあいいやと。
「死ん.でも殺.せ」
ーー既に、大会規定は頭にない。
「出来ないなら死.ね」
ーーサーヴァントとマスターの関係も意識の外に。
破滅が見えて地金が出るのは変わらない。
あるいは、この辺りが他人『しか』使えない王様の限界なのか。
それとも、もともとただの父親としてはここまで良くやったのか。
どのみち、聡い彼には行く末は見え始めている。
彼の、父親としての、聖杯への欲が、それをくらませてはいるが。あー、チクショウ、死ぬかと思った。いやまぁ常人ならたぶん死.んでるな。ルーカス君のヤローを確認したと思ったら”なんか”来た。いやぁ全く見えなかった。たぶん実際は認識できてたとは思うけど知覚ができなかったみたいな……、まぁいいや。しっかし対魔力で多少のレジストはできたとはいえヤベーわーアレ。貴族のボンボン的道楽かなー、とか思って油断してたとは言わないけども。
さて、こっからどうするか。まぁまずは現状の確認だよねー。とりあえず令呪のある右手右腕は守れてる。左腕のひじ部分から下が蒸発、右足は、っと。ズボンのポケットから先が切断されてソコラに転がり、左足は骨折。剥離じゃなさそう。完全にイってるな、痛い。
とりあえず鎮痛剤やら応急処置やらをして(一応とは言え医者の息子ですもの)なんとか生きてるが……大会続行は無理かなぁ。戦闘は勿論、歩行もおぼつかない訳だし。まぁもうちょい頑張ってみますかぁ!
まずは移動する。残った右腕と腰を使って這うように。さしあたって落ち着いた体勢になるか、地上まで行って病院でもいかないと。保険の適応できるかな?(右足は使い魔に運んでもらおう)
全身を使って地上まで出て、バーサーカーに念話で話しかける。>>609
『やっほーバーサーカー。元気?コッチは大分やばい状況だよー、痛い』
『コッチはコッチで忙しいんだがなぁ、オイ。楽しくはあるけどな!てかお前がヤバいってだけが用件なら態々連絡しなくてもいいだろうが!』
『いやぁ、実は俺はもう大会の継続をあきらめかけてる訳なんだけど……、君は違うよねぇ?』
『あったりまえだ!こんな楽しくなってんのに取り上げられてたまるかよ!』
『だろうね、安心したよ。俺が降参しても君の足かせになるのは抵抗、あるんだよねぇ……。と、いうわけで」
少なくとも、友人に自害も命じる、なんざまっぴらごめんだ。だから
「我が友、バーサーカーに全ての令呪をもって依頼する!」
「第一に!”君が創る『破壊』を見せてくれ”。第二に!”君が思う『最悪』を見せてくれ”。第三に、”君の『暴君』を見せてくれ”。抽象的でアレだけどさ!見せてくれよ!」
『ひひっ、ひゃはははははぁ!了解了解だマスター!じゃあ余(オレ)の全身全霊の全力を、魅せてやる』
『くふふ。楽しみにしてるよ。じゃあ、さよならかな?』
『ああ。………じゃあな。まぁ、退屈はしなかっt……あーっ、っと楽しかったぜ』
うん、俺も、楽しかったよ。ザッハーク。
じゃあ、友達のカッコいいトコを特等席で見るためにも、っと。
prprpr……。
「あ、もしもし運営ですかぁ?バーサーカーのマスター朽崎遥。降参しま~す。怪我の治療とかしたいので適当な病院まで移動させてくれません?あ、どーもどーも。受諾ありがとうございます」
さて、コレで治療の目処は立った、と。義手義足のアテはあるし、俺の聖杯大会は、コレで終わりかなぁ。うん、楽しかった!北米異聞帯を更新します。
虎狩りのケイトーと名乗るサーヴァントの宣告にボーダー車内には緊張が光の速さで全員の精神回路をみたした。
「で、どうする?」
沈黙を破ったのはバーサーカー大嶽丸である。彼はマスターである少女に問いかける。その顔には笑みが浮かべている。
この上なく楽しそうに。この上なく凶暴そうに。彼は笑っていた。
彼の精神に影響されて外界の天候が乱れはじめた。彼のこの笑みを見ると、大嶽丸を召喚したときを思い出す。押し潰されそうな鬼気迫る威風、舌を噛みきり解放されたいと思うほどの恐怖。数多く出会ったサーヴァントたちの中でも異質な存在なのだと思い知らされる。
「どぉーした!? 出てこんのかぁ? 今までも幾度と死線を潜ったときくカルデア諸君は、いつから臆病者の死霊に憑りつかれたのだぁ!?」
槍を持つ和装の男の嘲弄混じりな挑発に、大嶽丸は不快げに口笛の音を立てながらマスターの意見を訊いた。
「出てこいとのおおせだが、どうする?」
「逃げましょう。かなり強いんだよね? あのサーヴァントは」>>611
セイバー白雪姫が沈痛そうに頷いた。
「ええ、あのサーヴァントの強大さは私たちが感じた異常さが関わっているのでしょうが、それがわからぬ今、対策のしようがない。戦うのは危険です」
信頼する白き女騎士の言葉に立香は頷く。
「わかった逃げましょう! みんなにも伝えなくっちゃ!」
「ええ、今しがた念話で皆さんに伝えました」
立香に応じたのはキャスターのモーシェ・デ・レオン。
「ま、そうするか。俺は命令するのは好きだが、命令されるのは嫌いでね」
「いい性格をしておいでだ」
大嶽丸に飽きれたように白雪姫は言う。
シャドウボーダーへの宣戦布告を無視された虎狩りのケイトーが剣呑な目で走り去るシャドウボーダーを見ること数拍。雄叫びをあげながら走り出して肉迫してきた。
立香一行はハイウェイに入り、車の間を縫うように走り続ける。虎狩りのケイトーから逃亡するために大嶽丸は自身の鬼種の魔を使って豪雨を降らす。見通しが悪く視界を阻害するほどの雨量である。しかし、豪雨はシャドウボーダーとそれが走る路面を避けるように雨が降っている。>>612
「性格はあれなのに術が巧いって妙な魔物ですね」
呟くように微妙に失礼なことを言ったのはアーチャーのアルベルト・アインシュタイ。彼女はボーダーの計器を調整しながら走行のサポートをしていた。
悠然と席についていた大嶽丸がモニターを覗き込むと無音の口笛を鳴らし、うんざりしたように首を振る。
「なあ、マスター、物事ってやつは、最初のうちはなかなか上手くは運ばないものでな……」
「時間が経つと?」
「だいたいは、もっと酷くなる」
大嶽丸が指さしたのは、豪雨をものともせずにシャドウボーダーを追って走ってくる虎狩りのケイトーであった。
モニターに向けた立香の視線が凍結した。彼は上半身を微動だにせず、槍を担いで咆哮しながら疾走していた。豪雨によって顔に髪が張りつき、びしょ濡れで醜悪な面相であった。
シャドウボーダーの内部は罵声や悲鳴があがる。>>613
「―――」
「―――」
白雪姫とアインシュタイは人間サイズの不快害虫を見るような目で、モニターに映る虎狩りのケイトーを見つつそれぞれが武器の準備をし始めていた。他の男たちの反応も概ね変わらないものであった。
疾走するケイトーは器用にも上半身だけで槍を投げる構えを取る。立香の背中を、氷塊が滑りおりた。数多の特異点や異聞帯を旅して命の危険は多かったが、ケイトーの槍は本能的な恐怖の思いを呼び起こした。
「おっと、こいつは不味い」
大嶽丸がそう言うやすぐにケイトーめがけて雷撃を落とす。ハイウェイの路面を砕き、濡れた路面に電気が伝播する。
「!?」
さしものケイトーも直撃を避けれても体勢を崩してしまう。その不安定な体勢から槍が投擲される。火箭のごとき光が走り、轟音が大気を揺らした。つい先ほどまでシャドウボーダーがあった道路に大穴が空き、異聞帯の住人が乗った車が黄金色の炎の塊となって路上を数回回転した。
車体は大きく揺れ、立香の胸郭のなかで、心臓が三段跳びを演じた。座席のベルトをしていなかった立香とアインシュタイは吹っ飛ばされるが大嶽丸が器用に受け止めた。
「あ、ありがとう」
「ありがとうございます」
気にするなとばかり肩をすくませる大嶽丸が、立香とアインシュタイのみずみずしい肢体を観賞しているとモーシェが血相を変えて、大嶽丸に呼びかける。
「バーサーカー! 私が術で追跡を阻みます。貴方はサポートをお願いしたい」
「諒解諒解。では、霧を使うか」>>614
大嶽丸がシャドウボーダーの上体部にあるハッチを開けて身を乗り出し、呪術で霧を作り出す。伝説の鬼が作り出す霧は重かった。雨風でゆらぐだけで、ハイウェイから立ち去ろうとしない。
豪雨に続いて霧のヴェールがケイトーの視覚を阻害する。
モーシェが宝具の核たる本を開き、魔導の雄たる大魔術師の指揮のもと、水面を揺らす波紋のように空間が歪み、虚空から収蔵されている魔導書が出現する。魔書からは尋常ならざる魔力を感じさせる。これらは一冊がキャスタークラスのサーヴァント一騎に相当する逸品である。
「蔵書第一群三、四、五より開架。第三四群五、六、七より開架、第一〇〇群二、四、八より開架、第二〇三群八より開架。―――術式起動、大嵐は神の御体を覆い隠す(コンシール・ストーム)!!」
モーシェの声が朗々とシャドウボーダーの車内に響かせた。>>615
以上です伏神聖杯戦争続き投下します
>>617
ランサーとセイバー陣営が向かった教会にはどうやら先客がいたらしい。
ぎぎぎ、と古めかしい音を鳴らして開いた扉の向こうにはカソックを着た神父が一人と、黒く艶かしくくねる蛇が一匹。
招かれざる客である三人はその蛇が魔術師の使い魔である事を即座に理解した。
中性的な顔立ちをした若い神父は苛立たしげに頭を掻きながら。
「や、神父な?神主と神父の違い位基督教圏の人間なら理解してくれな。
そんでもって今は取り込み中だ。俺は聖徳太子じゃねえから会話は一つずつ熟さなきゃならねんだわ」
「…オーケイ、だが私達の要件は半分終わったようだよミスター」
ミスターこと獅童蒼は要領を得ないのか首を傾げているが、もう一方の先客はどうやらその意味を理解している風であった。
何故ならばその蛇が教会に訪れた理由は、その急な来客を糾弾する為だったのだから。>>618
瞼の無い爬虫類独特の視線は二騎の英霊と一人の魔術師を相手取ってなお焦りの色を見せない。
それどころか一切の感情も乗っていないようにすら見えてしまう。
だが使い魔の向こう側の本体は、内心穏やかでない。
「ふん、下卑た顔をぶら下げてからに。良くいけしゃあしゃあと此処に来られたものだな。
……貴様、自分が何を仕出かしたか解っていような?」
「下卑たツラって発言は大いに同意するが、後半はお前にそっくりそのままお返ししてやるよ」
ずい、と前に出たのはセイバーだった。
軽口を叩く余裕が見て取れるが、声色は酷く荒れている。
「────お前、厭に教会に来るのが早いんだな。アリバイ作りは捗ってるか?オイ」
「何のことやら?出任せに物を騙るのは二流のすることだぞ、使い魔風情が」
その瞬間空気が数度程冷めた気がした。だがそれは心理的脅威が生み出した錯覚だ。
セイバーの纏う雰囲気が眼を見張る速度で怒張する。そしてそれに伴うように膨張する魔力。
端的に言えば、その蛇の発言はセイバーの怒髪天を衝くに足る的確な挑発だった。>>619
「ロドリー」
「止めるな、コイツは痛い目見せなきゃ気がすまねぇ」
「彼は使い魔だ、殺した所で向こう側の魔術師に何ら影響はないんだ」
「だが恐怖は植え付けられるだろう?燃やして裂いて、自分が犯した罪の重さを教えてやるよ」
掌の上に突如として現れた剣は、彼の怒りを表しているかの様に剣呑としている。
「おい、一応ココは中立を謳った不可侵領域だぞ。
それ以上の戦闘意思は聖杯戦争の規則違反と見做し、相応の処罰を下すが良いのか?」
そう言いつつ獅童は両腕に意識を逸らす。彼の両腕には夥しい画数の令呪が刻まれている。
もしセイバーが右手の剣を振るえば、聖杯戦争参加者の大半は彼等を規則違反と捉え敵対するだろう。
ランサー陣営を除く全陣営が敵に回る事態は彼等にとってすれば致命的な展開と言えよう。
だが知った事か、とセイバーは進む。
大義は己にあらんと、数百人の命を摘み取ろうとした諸悪の根源を討たんと、正義の剣に力を込めて。>>620
「────そこでストップです」
突如としてセイバーの前を遮った腕はランサーのものであった。
不意に視界を横切った白い籠手に面食らったセイバーは、訝しげにランサーの顔を覗き見る。
「我々は私闘をする為に此処に来たのではありません。
それに彼が事故を引き起こしたという確たる証拠が無い以上、現時点で犯人と決め付けるのは早計に過ぎます。
……私達の立ち位置は被疑者で、かつ不利な形勢の中だという事実を理解して下さい」
冷静に、落ち着き払った声がセイバーの耳朶を通り抜ける。
「…そんなもの、確証なぞ得られようがないだろう。
魔術は言ってしまえば『何でもアリ』の世界だ。時間的齟齬は使い魔が解決し、密室殺人すら呪いで片手間に行える。現実的な観点からの推理を根底から覆す事も容易な世界でどうやって証拠を突き付けると言うんだ」
苛立ったセイバーの顔を見据えて尚ランサーに動揺の色はない。
平静を保ち、「いいえ」と論点を根底から否定する。
「第一に提示すべき証拠は『彼が犯人か否か』ではなく、『私達の行動に正当性があるか否か』に関してです。
────ですよね、名も知らぬマスターと神父様」
「…………」
「ま、そうだな。先ずはテメェの身の潔白を示せ。飛行機ジャックの魔術的関与、ひいては黒幕に有無は二の次だ」>>623
セイバーのマスターを教会に残してどれくらいの時間が経過しただろうか。
ランサーとセイバーは教会の扉を隔てた向こう側に立ち、リドリー・フォーサイトの帰還を待ち続けている。
自身のマスターの処遇が気になるのか、セイバーは一見物静かな振る舞いをしているが細かな挙措に焦りが見えた。
「あのバカは口が回るから、心配しちゃいないさ」
と先刻そう言い放ってはいたが、やはり心配していないことは無かったらしい。
一方でランサーはここに至るまでの経緯を思い返していた。索敵目的で市街を探索しようとしていたらセイバー陣営に拉致され、あれよあれよという内に教会に顔を出していた。
其処に自分のマスターの姿はない。
二度目の生とは言えこうも奇異な出来事の連続に遭遇するとは…そうシミジミと思索に耽るばかりだ。>>624
ランサーは思う。
自身のマスターは彼等と交わる、同盟を組む可能性はあるのだろうかと。
セイバー陣営の仔細については亥狛は把握していない。
セイバー陣営は善き人物達であることをランサー自身が認識していようと、亥狛にとっては所詮敵陣営の一組に過ぎないのだ。
そんな主従間の認識の齟齬が悲劇を生む────そんな未来は避けたいものだ、そう一人夢想しながら。
各々複雑な心中を抱えながら待機しているうちに、教会の扉が重い軋みを上げて開かれた。
中から出てきたのは最早見慣れたセイバーのマスターだった。
リドリー・フォーサイトはやや憔悴した面持ちで、然し乍らそれ程悪い結果では無かったのか。二騎のサーヴァントの姿を見るや溜め息と笑顔をこぼした。
「お待たせ。何とか話は終わったよ」
「随分とグッタリされてますね、弁解はそれ程困難を極めたと?」
「ああ…あのエデンの徘徊者(ヘビヤロウ)がやけに食い下がってね。最終的にフライトレコーダーと管制塔の音声記録を後日調べて貰う事で一先ず保留となったよ。
で、今後の処遇については大した罰則は無かったよ。令呪の剥奪、討伐指令、共にナシだ」>>625
取り敢えず目下の危険がないことを知り、二騎のサーヴァントは胸をなで下ろす。
「だが魔術を衆目に晒した罪はキッチリ償わなきゃらしい。
具体的には機内の人間に対する記憶処理や事後処理などの費用の全面的負担…だそうだ」
「…具体的には、幾らになるんだ」
「両手の指じゃあ足りるかどうかって桁かな」
さらりとセイバーのマスターは語ったが、それはつまり数十億規模の罰金が生じたという事実に他ならない。
大した罰則は無かった、と彼は言ったがそのような金を用意する手立てはあるのだろうか。
ランサーはひい、ふう、みい、と指を折り曲げその額を確認した後に密かに驚愕していた。
「実家の力を使う訳だな、こりゃ全面的にデカい戦争になるかもしれんな」
「それについてなんだが、フォーサイト家は資金を援助するだけ…っていう条件も提示された。
家が勝手に介入すれば下手すると東雲とも不和が生じる羽目になる、だからコレも甘んじて飲む事にしたよ」>>626
罰則なだけあって、こちらの都合が良くなる抜け道はことごとく排除されてる印象をランサーは受けた。
実家の金は搾り取る、だけど介入は一切許さない。
いかにも教会の事情が透けて見える罰則だが、運営側が提示する以上それに従う他はないだろう。
「…所々納得いかない点はあれど、まぁ許容範囲さ。
他にも『次はないぞ』って厳重注意はされたけど、真っ当に聖杯戦争をする分には問題ないんだから良い落とし所なんじゃないかな?」
リドリーは明るい口調でそう語るが、彼のサーヴァントは納得がいっていない風であった。
「良い落とし所もク.ソもあるかよ、コッチは完全にやられ損じゃねえか……このままオシマイで納得してんじゃねーだろうなク.ソマスター?」
「まさか」
リドリーは不敵に微笑みながら。
「受けた痛みは百億万倍にして返してやるさ、誰とも知らない黒幕野郎にね。
私はファッキンクライストじゃないもんでね、人間らしく根に持たせて貰うよ」>>627
「……さ!帰ろうか」
そう言って二騎のサーヴァントを促すセイバーのマスター。その顔に先ほど浮かべた不敵な雰囲気はカケラもない。
彼の後ろをついて歩く様にセイバーとランサーは追従する。
しかし前の男は何か不服そうな様子を全力で醸し出す。
「ヘイヘイヘイッ、何してるの?違う違う、全然なってないよ!」
彼の発言の意図する所を把握しかねているサーヴァント二騎。
まごついている彼等に業を煮やしたのか、リドリーはぶんぶんと腕を前後させながら。
「言っただろう?大手を振って、帰るんだよ。さあもっと腕を大きく振って、ワンモア!」終わりです
>>495
ヴィヴィアン・ビリジアンの取った行動。その意味を観客が悟った時、会場には割れんばかりの歓声と拍手が轟いた。
そしてーーー観客席と舞台を隔てる壁の中。映写室を思わせる空間で響く、喜びを露わにする声。
「素晴らしい!素晴らしい機転ですミスター!そこは舞台の上、この世で最も自由な場所!その上では、"面白さ"が何よりも優先される!想像力の及ぶ限り、ただの石ころを宝石にする事だってできる!その可否はただ、観客が、何より舞台自身が面白いと認めるかどうかのみ!そして、嗚呼、確かに今、私の心は昂ぶった。君達を見つめる観客の大多数も同じ意見でしょう!」
用意された椅子の上、ちょこんと乗せられたメガネが叫びを挙げている。どこから声を出しているのかはまるで謎だ。
そしてもう1人。メガネの隣で品良く腰掛ける女性。彼女は柔らかい微笑みを浮かべていた。その微笑みは可憐で、悪魔のように美しかった。女性ーーー蒼木ユノはメガネの方へ声を掛ける。
「ふふ。随分とご機嫌ですわね、『メガネさん』?」
「ええ、それはもう!アーサー王とモルドレッドの対決など、見てみたいと思わない訳がありません!」
「ええ、確かに。思わず息を呑んでしまいましたわ。けれど彼の行動は、伏線や仕込みのない、言わばアドリブ。この舞台を味方につけるには、相応の表現力も求められます」>>630
「その通り!舞台の上は自由であるが故に厳しくもある!しかし、私はこの状況を楽しんでいますよ。見てください、あの鎧を、立ち姿を!先程までなら恐怖で震えていてもおかしくないというのに、それでも彼は背筋を伸ばし、伝説の騎士王へと相対している!彼の行動を、滑稽だ、無謀だと笑う者もいるでしょう。けれども、私は彼の事を応援しますよ。あの勇気は、私の心を揺さぶるに足ります!」
「貴方がそこまで仰るのなら、私も楽しみましょう。ただ、彼らの作り出す流れに身を任せて」
ユノはそう言って視線をステージへと戻した。
やや平静を取り戻したメガネが語る。
「そこは舞台の上。この世で最も自由な場所。木の棒が剣となり、小石が宝石になる。そんな事が許される場所です。そして、全く別の人間になる事も、また然り。ですが、何かを偽ることだけが、舞台ではありません。己の情熱、隠した想い、密かな願望ーーーそう言ったものを何の気兼ねもなく、叩きつける事だってできるのです。"役"という言い訳を使って、ね。ですからその場所を全力で、全身で楽しんでください」
◆
「我が名はモルドレッド!! 貴方を倒し、このブリテンを導く者也!!」
鎧の騎士が高らかに叫ぶ。モルドレッドーーー"僕"と共に戦った騎士にして、僕と最後に戦った者の名を。
少しの間、我を忘れた。その名を聞くことになるとは、思いもしなかったからだ。だが、いつまでも呆然としてはいられない。観客の注目が私へ集まっているのが伝わる。
「なるほど。今の私達は役者。役者がそう主張するのなら、キミは確かにモルドレッドなのだろう」
ならば、
「我が騎士、モルドレッド。そこを退きなさい」
その名と、その勇気を認めよう。
「いいえ、退きません!ここから退かせたいのなら私を倒すがいい、アーサー!」
決死。そう形容する他ない気迫だ。
そしてその気迫に、自身の心が揺らいでいる事を自覚する。
(これは……喜び?)
ああ、そうだ。私の心は、喜びに震えている。その自覚と共に、一つの考えが思い浮かぶ。
「おーっと!僕のことを忘れないでよネ☆」>>631
突如、声が響く。声の主は、我がマスター。鎧の騎士が乗るのと同じ、機械の馬で私達の近くまで駆けつけて来た。
「やあ、セイバー。待たせたね、僕も手を貸すヨ☆」
そう言って馬を降りる彼へ、鎧の騎士が話しかける。
「オズボーン、早かったな」
「ああ、あれぐらいの壁は、高圧の水で砕いて来たよ。鏡の魔術師に鏡で勝負なんて、やってくれるネ☆"モルドレッド卿"?」
冗談めかして言うマスター。ーーーそんな彼に、私は一つの頼みをしなければならない。
「マスター」
嗚呼、我が主。我が道標。貴方とならば、私はきっと答えを見つけられる。あの滅びは、回避できるものだったと信じられる。
しかし、
「マスター。この戦い、手出し無用でお願いしたい」
マスターが驚きの表情をする。当然だ。彼はきっと、私と共に勝利を掴もうとしていた筈だ。その想いを、私は裏切る。
「私は"あの騎士(モルドレッド)"と、一対一の勝負をしたい。ーーー身勝手である事は分かっています。しかし、相手のサーヴァントは満足に戦えぬ状況。騎士道に則り、正々堂々とした勝負を望みます」
主の前に跪き、その願いを口にした。
しばしの沈黙。そして主が、優しい笑顔で問いを投げかけた。
「それは、君が本当にしたい事なんだね?」
「はい。私は真っ向から、己の過去と対決する。それがこの不忠の騎士の、望みでございます」
「ーーー分かった。それなら僕を信じて、これからする事を受け入れて欲しい」
「なんなりと」>>632
すると主が片膝をつき、私の肩に右手を置いた。
「それじゃあーーー我が騎士、アーサー・ペンドラゴンに命を下す。ーーー"殺さず、全力で戦え"」
彼の右手が発光する。そして、手の甲に浮かぶ痣ーーー令呪の一画が消失した。
「これが、僕からの命令だ。守っておくれよ」
その命令はとても難しくーーーとても優しい物だった。
身体に力が溢れてくる。心に暖かいものが湧いてくる。どんな命令だとしても、上手くいくと思えた。
「御意に」
それだけを主に告げ、立ち上がる。
そして、鎧の騎士へ向けて宣誓する。
「我が名はアーサー!アーサー・ペンドラゴン!我が騎士モルドレッド、いや、モードレッドよ!汝に一対一の勝負を申し込む!」
「我が王、アーサー!その決闘、受け入れる!」
鎧の騎士が馬を降り、地面に突き刺さった得物ーーーアサシンの大鋏に手を掛け、引き抜く。
お互いに歩み寄り、剣を構える。
「さあ、来るがいいアーサー。お前の死を運ぶ者が此処にいる!」
「素顔を隠し、名を偽っての試合か。ランスロットやガレスの事を思い出す。ーーー行くぞ、モードレッドォォォォー!」
足から魔力を放出し、全力の踏み込みで斬りに行く。
さあ、伝承の続きと行こうかーーー!>>633
◆
セイバーの攻撃は、正に伝説上の産物だった。
踏み込みが地面に穴を開け、砲弾の如きエネルギーでモードレッドへ剣を振り下ろす。
大鋏と剣がぶつかり、轟音を放った。
セイバーが更に、一太刀、二太刀と攻撃を続ける。攻撃は次第に速度を上げ、爆発音のようなゴォン!ゴォン!と言う音が連鎖する。
剣が振るわれる度に風が暴れ、余波だげで地面に亀裂が走る。
流れている音楽が激しさを増した。高らかなトランペット、流麗で情熱的なヴァイオリンーーー楽器達が織りなすハーモニーへ、次第に調和していく戦闘音。
踏み込みというタップダンスが交わされる。
剣と鋏がぶつかり、低く!重く!ビートを刻む。刻む度に力が風を巻き起こす。
ーーーそこには、嵐という音楽が顕現していた。
「セイバー、やっぱりキミは凄いよ。キミとギリギリとは言え渡り合っている彼も凄い」
僕は彼らの攻防を見ながら、1人呟く。
突然、全身に痛みが走る。
「……っ!はは、流石に"僕"だけでは足りなくなっちゃったか」
セイバーは間違いなく最上レベルのサーヴァントだ。しかし、その強大な力を引き出すには、相応の魔力が必要になる。今まではセイバーが抑えてくれていたようだけど、もうそんな事は気にしていないらしい。
「ふふ、全力を出せって言った手前、僕も頑張らないとネ☆」
そして、僕は魔術の準備を始める。
「君達の戦いに手は出さないヨ。でも……サーヴァントに全力を出させる為の手は、無粋にならないよネ☆」
〜「誰かしら、さっきから後をつけてるのは」
ランサー主従との正式な会話は明日にしよう、と思いつつ、気が進まないながらも市街地を通り、わりと優先順位が高い事柄を済ませる為に先ほど飲料水を飲んだ際の口苦さを抑えながらも後ろを振り向く。
面倒なファン……、ではあるまい。自分が聖杯戦争に向けて不本意ながらも意図的に起こしたものを除けば自分のファンは他人に迷惑を変える程意識が低いものではない。……はず。
大通りから外れる路地。その影がズルリと蠢いた――。第一回続き、投稿します
参加者の方は確認よろしくお願いします>>636
時は、バーサーカーのマスターが令呪を切る少し前まで遡る。
疾風怒濤。
現状を評するなら、まさにその一言に尽きた。
「――――っ!」
ランサーが奔る。風のように駆け、稲妻のように切り裂く。
跳躍と織り交ぜたその動きは、常人の目に到底捉えられるものではなく。高性能なカメラをもってしても追いつかない。
敏捷A+まで高まった彼の動きは、さながら戦場を貫く弾丸のようですらあった。
だが、それ程の機動力であっても。
「ガァアアア!!」
狂戦士は止まらない。飽くなき闘争心と執念により駆動する肉体はそれ自体が一種の脅威であり、同時に「それ」が持つ最大級の強みでもあった。
先程からの猛攻で多少の手傷は負わせているが、どれも致命傷には至らない。一見乱暴なだけに見えて、その実狂戦士は大きな損傷を絶妙に避けていた。
――と、何十発めかの光条(レーザー)が降り注ぐ。
アーチャー――后羿からの支援射撃。神域にまで達した業は、絶妙にランサーだけを避けてバーサーカーへ迫りくる。
さらに示し合わせたように、上空の飛竜たちも襲い掛かる。一頭一頭は弱くとも、群れを成せばサーヴァントすら脅かし得る怪物たち。
その連携攻撃を。
続く>>637
「ウザってぇんだよ! さっきからァ!」
ただの一声で、バーサーカーは吹き飛ばした。
否、それは最早「一声」どころではない。神秘を帯びた雄叫びには破壊力が込められており、生半な存在がまともに浴びれば失神もしかねない。
まして神話に名高い狂王ザッハークのものともなれば――それは、下手な兵器よりも凶悪な効果を発揮する。
射程外にいたランサーもまた、その迫力を前に突撃を止めざるを得なかった。
「……まったく。こうも凶暴だと始末に負えんな」
愚痴る間も、ランサーは足を止めない。この強敵相手には下手な停滞こそ致命的だと、理屈ではなく本能で理解していた。
『ですが着実にダメージは重なっています。このまま地道に攻め続け、勝機を見出す事が最善かと』
アーチャーからの念話に、ランサーは苦笑する。
「気安く言ってくれる。此方が何度死地を感じたと思っている?」
『それは申し訳ない。ですが、現状貴方しかこの狂獣に前衛を張れる戦士はいないものでして。恨み言ならば終わってから好きなだけ聞きましょう』
「結構だ。どの道、これが終わってしまえば――っと!」
吹き飛ばされてきた飛竜を間一髪回避する。哀れな亡骸は木々をへし折り、そのまま魔力の粒と化して消滅していった。
「ウザってぇ……マジで、ウザってぇ……! チマチマチマチマチマチマと、てめぇら真面目に戦う気はありやがんのか! あぁ!?」
「さてな。此方としては真剣にやり合っているつもりだが、な!」
すれ違いざま大太刀を振るう。胴を狙った斬撃は狙い違わず切り裂いたものの、両断には遠く及ばない。
頑強な筋肉は多少刃を通したものの、中の骨や臓器にまで届かせず防ぎきっていた。
続く>>638
「硬い身体だ。いったい何を食えばそのように育つものか、教えていただきたくすらある」
「ハッ、やなこった。だがまあ、教えてやった所でてめぇらにゃ真似できねえだろうよ!」
バーサーカーが大地を蹴る。その勢いのまま、お返しとばかりにランサーの腹部めがけて右ストレートを叩き込もうとする。
が、その刹那。どこからか飛んできた光条がバーサーカーを穿ち、容赦なく吹き飛ばした。
「感謝する、弓兵。今のは危うかった」
『いえいえ。この程度どうという事もありません。それより――』
「ああ」
アーチャーに促され、吹き飛ばされた方角を見やる。
そこには平然とバーサーカーが立っていた。
全く損傷がない訳ではなく、腹部や肩口から血を流してこそいた。だが、それすらもたちどころに塞がり、何事もなかったかのように血が止まる。
「これはいよいよ、埒があかんと見るべきか……!?」
ふと、予想外の方向から攻撃が飛んできた。
先程までのような光条ではない。純粋な衝撃波と風圧を感じさせる、暴風の一撃。
続く>>639
「別荘方の弓兵か!」
『ええ、間違いないでしょう。飛竜だけでは不足と見て、支援に撃ち込んできたか。いずれにせよ途方もない威力です』
まともに浴びたバーサーカーは、怯みこそすれ先程のように吹き飛ばされてはいない。用心していたからか、それとも何がしかのスキルか。
だが動きは止まった。ランサー達からすれば紛れもない好機。
間髪入れず切り込もうとして――直後、全身に怖気が奔った。
そして。時は追いつく。
「我が友、バーサーカーに全ての令呪をもって依頼する!」
「第一に!”君が創る『破壊』を見せてくれ”。第二に!”君が思う『最悪』を見せてくれ”。第三に、”君の『暴君』を見せてくれ”。抽象的でアレだけどさ!見せてくれよ!」
「…………ひひ」
笑い声。ランサーの、アーチャーの、まして別荘方のサーヴァントや飛竜たちのものでもない声。
「ひひ、ひひひっ、ひゃーはっはははァッ! きたぜ、きたぜ、きたぜぇ!! ああ了解だ、了解だともマスターァ!! お前の望みどおり、最っ高の『最悪』を見せてやるよ!!」
続く>>640
先程までの痛痒も忘れ、狂ったように笑い続けるバーサーカー。
実際、彼は狂っていたのだろう。だがその笑い方は異質に過ぎた。
まるで、火事場に油を放り込んだような――。
(よもや宝具か? いや違うな、それらしき力の脈動は感じぬ)
代わりに、外側から注ぎ足されたような禍々しさを感じる。となれば、令呪か何かの支援か――だが、それで「こうなる」ようなものだろうか?
バーサーカーの目がランサーを捉える。
ランサーも、そして後方のアーチャーもまた備えるが――次の瞬間、バーサーカーは予想だにしない行動を選択した。
『っ!?』
「な――」
「心底ムカつくが、てめぇらの相手は後回しだ。まずは、ふざけた一発かましてきやがった野郎に地獄をくれてやるよ!」
バーサーカーの姿が消えた。
否、消えたのではない。すさまじい勢いでその場から跳躍したのだ。
そしてその矛先は。
続く>>641
『っ、まずい! あの男、別荘へと向かっています!』
「何だと!」
先程の攻撃、その相手を狙いに向かったバーサーカー。
バーサーカーが持つ何かが、目の前の二人以上に脅威である事を認識させてしまったのか。あるいは、単純に飛竜の波状攻撃にうんざりしていたのか。
いずれにせよ、考えている暇はない。
「急ぎ追うぞ! あ奴が別荘にたどり着けば、どれ程の惨劇を生み出すか分からぬ!」
マスターの指示を求める余裕はない。
元より黒野からは一任された身。ならば、自分が思う最適最善を選択する。
その意思のまま、ランサーは消えたバーサーカーを追って駆け出した。
ここでいったんパスします
次は委員長さんか、もしくは監獄長さんにでもアメリカ異聞帯の投稿です
>>651
終わりです!>>635
「まずは腹ごしらえと思ったが・・・・・・一夜にしてこれだけの参加者と行き当たるとは。期待以上だ。フム、運命(Fate)か。特に脆弱な類の人の子が縋るまやかしかと思っていたが、存外馬鹿に出来ぬものやもしれん」
滲み出した影は絡み合いながら天に向かって伸び、異形の大男を象った。
カメレオンのように飛び出し左右独立して動く目、死人のように灰色でひび割れた顔面へこびりつくようについている鼻・・・・・・常人であれば思わず目をそらしてしまうような醜貌だ。
男は続ける。
「ちょうどいい。貴様も聖杯を目指す者であれば、取引しようではないか。対価は私が得た3陣営の情報と、とある『達成報酬』。条件は・・・・・・『セイバー陣営撃破までの共同戦線』だ」>>653
以上です。
ゲルトラウデさん、お願いします。得たいのしれない店舗がやたらと突っ込まれた雑居ビルの立ち並ぶ通り。その裏の奥まったところでぷすぷす、ぷすぷすと音を建てて木と枯れ葉が燃えていた。もはや日常で見かけることはほとんどない焚き火というヤツである。それの側に若い女が一人しゃがみこみ、何やら串に刺した丸っこいものを火に当てていた。
「うーん。こんなもんかな?」
焼き芋であった。ほくほくと湯気をたてて若干焦げたそれをすがめた後、満足気にあーんと大きく口を開け、それにかぶりついた。が、口を閉じてもぐもぐと咀嚼するとやおら顔が曇りだす。そして、ごくりとそれを飲み込むと不満げな顔つきで口を開いた。
「美味しくなかったです…バーサーカー。」
ゆらり。彼女の声に反応して炎がゆらいだ。風もないのにゆらぐそれはまるで意思を持っているかのように妖しげだ。そのゆらいだ炎はまるで人の顔のようにも見える奇妙な形を形作っている。
「あったりめぇだろ!俺の炎がただの火だと思ってんじゃねぇよ、女。」
ごうっと音をたてて、火が割れ、そんな声が彼女の耳へと届けられた。異様なそれに彼女は特に驚くでもなく相変わらず不満げなままで言葉を返す。
「なんでも日本には地獄焼きなるものがあるそうなのでうまく行くかな~と。」
「んなわけあるかぁ!そんなことに使われたら地獄の悪魔も仰天もんだぞ。」
「え!?地獄の悪魔さんはしないんですか地獄焼き!?」
「焼くかもしれねぇけど、少なくとも調理には使わねぇよ!」
「あなたが地獄焼きのようなものですし?」
「お前、俺を食うつもりなのか!?」
「カボチャの地獄焼き~さ迷える魂を添えて~」
「フレンチ風にされた…アイルランドなのに…」>>655
ギャーギャーとやかましく火と女が話すその光景は他所から見れば痛い目で見られること間違いなしだが、彼女を見るものは誰もいない。いや、いたとしてもここでは恐らく誰も通報すらしないし、気にかけもしないだろう。通報されれば自分がお縄間違いなしの真っ黒な者達ばかりなのだから。
栗栖市南東地区。かつて合併前の市の中心地が、再開発に失敗し空白化。最近治安の悪化が甚だしい地区であった。
そんな所で呑気にしゃべる炎を相手に焚き火をしているこの女もまた、ただ者ではない。串を呑気に持つ反対側の手には先程から常に拳銃が握られているのだから。
「とりあえずこの芋はあげますよ。」
「おごっ!?」
炎の口らしき所に串ごと芋を突っ込み、女はうーんと伸びをする。
「そろそろ仕事の続きをしなきゃね!」
遠くから聞こえてくる消防署のサイレンの音が路地裏にほのかに届いていた。>>656
以上です。「───ちょっとストップ。あなたって赤ゑいが核なの?」
「ええ。私は赤ゑいを核として構成されたサーヴァントですけれど……どうされました?」
───いや、まあ、確かに。ファスティトカロンを召喚しようとする際に色々と調べて、赤ゑいなる日本の怪異も目には入ったのだが。まさかそっちが核となるとは。
「とは言っても、私は赤ゑいであってファスティトカロンという存在ですし、そこに区別なんてありませんよ?どちらも生き物でしかありませんからね」
元より人ならざる身、元より価値観が人とはかけ離れているであろう彼女は何事もないから安心しろと言う。
……それに、能力値自体は変わらないのだからそれで良いだろう。全ては些事。そうやってミリアがやってたゲームのキャラも言っていた。
「そうね……というか化け物ステータスしてるわね。怪物だから?」
「そうですねぇ……あ、でもクラーケンさんも同じようなステータスですよ。それでいてあの方は暴食の権化ですから」
クラーケンとも知り合いらしい。聖杯戦争に呼ばれるサーヴァントの基準というのは、案外多いものなのだなぁなどと思ったりしながらも、彼女は次の案を練る。
「取り敢えず、魔力ガリガリ持ってかれるのは覚悟して……宝具を使うなら、少し私も用意をしなくちゃいけないわね。よし、それじゃあここで作戦会議は終わり。何かしたいことある?」
「そう、ですね……あ、そうですわ。私、人の文化というものに興味がありますの。ですので、文化に関する何かをしてみたいです」
「文化、文化ねぇ……よし、わかったわ。じゃ、私について来なさいな。……服も選ばないとね?」終わりです。短すぎワロタァ
赤ゑいさんは化け物レベルのステと対城宝具とかいうヤベーイな宝具を抱えている恐らく中の上〜強鯖に加えられていい鯖ですがシルヴァの魔力関係上全力を出させるならそれ相応の準備をする必要があることを宣言しときます聖杯大会。
万能の願望器・聖杯を「殺し合い無し」で奪い合う魔術師同士の闘い。
誰かは「素晴らしい。これこそ21世紀の聖杯戦争のあるべき姿だ」と言った。
また誰かは「ふざけるな。魔術師同士の神聖な決闘を汚す行為だ」と言った。
第■大会。これは幾度となく繰り広げられた聖杯大会のうちのひとつに過ぎない。
この物語が一体どこに向かうのか。
それはまだ誰にもわからない。
「いい街だね……ニューヨークには劣るけど」
「ええ。私もそう思います」
パーカーの上からジャケットを羽織ったシンプルな格好に身を包む少年・ハリーの声に応えるのは黒いスーツに身を包んだ美女。
一見姉のようにしか見えないこの女性、彼女こそがこの聖杯大会に召喚されたセイバーのサーヴァントだった。
「セイバーもニューヨークを知ってるの?」
「ええ。私の生まれはニューヨークですから」
「そうなんだ。出身は?」
「ブルックリン」
「……まいったね。クイーンズだよ」
ニューヨーカーにしかわからない軽口を叩き合う2人は楽しげだ。
温和で誠実なハリー。怜悧で理知的だが従者としてあろうとするセイバー。
金髪の少年と黒髪の女性という外見以上に2人は好相性だった。「そういえば、マスターはホテルの最上階に拠点を構えていましたね。あれはなにか意図が?」
ふいに気になったセイバーがハリーに尋ねる。
なにかしらの理由があってああいう動きづらい場所に陣取ったのか。
それとも日本に遊びに来た学生として未だに浮かれているのか。
後者ならなにかしらのフォローを考えなければいけない。
セイバーは従者として彼を立てつつどうやって状況を打開すべきか。
そういう思考を巡らせていたのだが。
彼が自身のサーヴァントに示したのは、思っても見ない理由だった。
「……そうだね。ちょっとこっちに来てくれる?」
ハリーが示したのは人の気配がない路地裏。周囲は完全に視覚になっており派手な音を立てない限り誰かに目撃されることはないだろう。
神妙な顔を浮かべるハリーに訝しんだ表情を浮かべるセイバー。
彼女の整った面持ちは、すぐに崩されることになった。
「じゃあ行くよ……Twip!(飛べ!)」
言葉と同時に左手を振るうハリー、その腕から白く発光する『線』が伸び――それに巻き上げられるような形でハリーの身体は宙を駆けていた。同時に巻き起こる疾風にセイバーの身体を身じろぎさせる。
魔力による上昇気流の生成か。セイバーはすぐに結論を導き出す。
これがハリー・ウォーカーの魔術『エアロライナー(風の辿り着く場所)』
風の属性を有する魔法陣、その生成と操作である。「こんな感じにね。高い場所にいればいるほど、周りに建物があればあるほどそれが僕の行動範囲になるんだ」
電灯の上に着地したハリーが笑いながらセイバーに語る。
セイバーは思う。この少年はいったいどれほどまでの修行を自身に課してきたのだろう。
スキルの一部とは言え、彼女にも最低限の魔術の心得はある。ゆえに、ハリーが実演したそれがどうしようもなく曲芸じみていることは理解していた。
人一人を浮かすほどの風の生成、それの制御、英霊の自分ですら足元がおぼつかなくなるほどの風の中でその姿勢制御はぶれることがない。
彼が本気になれば、街中を彼の足場として使うことができるだろう。
「なるほど。あの場所を選ぶわけだ」
「あそこならかなり自由に動けると思ったってわけさ。Twip!」
セイバーの横の壁に伸びる魔法陣。その上を滑り降りるハリー。巻き起こる暴風にTシャツの裾がめくれ上がる。
セイバーは見てしまった。その華奢な身体に刻まれた無数の傷跡を。
それはどれも痛々しく、彼の年齢の少年がもって言っていいような傷ではなかった。
「(マスター……あなたがその力を使って街を守ってきたのは知ってる……でも、あなたは一体どんな相手と戦ったていうの……?
いえ。それは過去の話。少なくとも今この時は、私が貴方をお守りします。マスター)」
決意をあらたに自身のマスターと向き合う剣の騎士。その事実を当のマスター本人は知るよしもない。
風と剣の主従は街を行く。
この聖杯大会を勝ち抜くために。剣陣営は一旦これで終了です。
二人は中央をうろうろしてますのでコンタクトするのであれば自由にどうぞ!stageの続き投下します
>>634
舞台の上で伝説の剣戟が繰り広げられる。
二人の騎士の間で刃と刃が打つかり合い火花が散る。立ち位置を幾度となく変えながら一進一退の攻防に勇壮な音楽が彩りを加える。
スポットライトに照らされながらヴィヴィアンは高揚感に包まれていた。サーヴァントと言えど伝説のアーサー王と互角の勝負を展開しているのだ。一撃一撃は重い、重いが返せない訳ではない。そして高揚感と共に心は確信に満たされていく。
(やれる! やれるぞ!! 俺は、勝てる……!)
オズボーンが追い付いてくるのは予想できていたが、それは思ったよりも早過ぎた。だが奴は後ろに控える事を選んだ。伝説の戦いの再現…それを阻止する機会をむざむざ捨てたのだ。
サーヴァントの感傷に付き合ったのがお前の敗因だ! 聖杯は俺が頂く! そして——
ーcont.ー>>665
火花を散らす剣戟を遠巻きに、片腕を失ったアサシンは何をするでもなく眺めていた。
既に肉体的、体力的に限界を迎えているのだろう。打ち合う度に血煙が鎧の隙間から漏れ出ている事をアサシンは見逃さなかった。
だが何も言わない。
舞台演出によりスポットライトを浴びたヴィヴィアンは今、サーヴァントが受ける筈のバックアップを受けている。
そして彼が気付かない程の少量ずつ、供給を受けるサーヴァントの方から魔力を逆流させマスターを強化している。
その量を少しずつ少しずつ、決して気付かれないように増やしていく。
ヴィヴィアンの動きはより激しさを増し、限界を迎えた身体はその事実も忘れ死の舞踏を続ける。
この舞台に記された大アルカナは「戦車」。援軍を成したヴィヴィアンは正しく正位置を勝ち取ったに見える。
だが、だが本当にそうだろうか。今の彼は不注意で、自分勝手で、そして暴走しているのではないだろうか。
クルクル回る「戦車」の位置は正しいのか、逆さまなのか。誰が知るのだろうか。
ーpassー第一回の続きを代筆します
>>642
時は再び、バーサーカーのマスターが令呪を切る少し前に遡る、
翼竜が、黒尽くめの異人たちが屠られていく。
その両肩から竜を生やした男がまるで稲妻や砂嵐のように、力そのものであるかのように哄笑する。怒号を飛ばす。
(なんだアレは……。まるで子どもではないか。)
ランサーも健闘しているが相性が悪過ぎる…。
遠距離攻撃を繰り返すバーサーカー……ザッハーク相手に東洋の戦士、シカノスケの槍は余りに間合いが短過ぎる。
そのスピードで翻弄してはいるが決定打を与えられないのでは意味がない。
スピードにはいつか慣れる。慣れればいつか捉えられてしまう。
「シズカ。シズカ」
((どうしたのアメン))
「童女を連れて逃げろ。もしかしたら、もしかするぞ」
((それってどういう…))
ーcont.ー>>670
そして時は追い付く。
バーサーカーが迫る。暴力の化身、暴風と化した理性なき王が。
ならば——
手に黄金のマスクを現出させる。それはツタンカーメンが埋葬される時に捧げられた品。
「貴様は誰かを愛したことがあるか? 愛された覚えはないのか? 」
「愛亡き力の化身よ、貴様にくれてやるものなど、何もないぞ!! 『王の紋章』!!!」
黄金の少年王は今、神たる竜巻へと姿を変じる。
ーpassーラ・シャリテでの激闘が始まる数日前。ヴェルサイユ宮殿を歩く和装の男―――山田浅右衛門は今日の”勤め”を果たし、日課の情報収集を行おうとしていた。
彼がこの、本来の歴史とは違うフランスへと召喚されてからしばらく経ち、周辺の状況も掴めてきた。処刑を前に突如として人知を超えた力を得た王妃、彼女の従える兵士(サーヴァント)達、王妃らがフランスを享楽のために使いつぶそうとしていること、それを阻止すべく動いている革命軍のこと―――。現在の戦況についても知ることができたが、革命軍は大幅な劣勢を強いられているようだった。
革命軍はサーヴァントの数も少なく、彼らを現界させ続けるための魔力リソースも補給困難であるらしい。それに対して王国軍は、圧倒的な兵力と聖杯を有することによる莫大な魔力で優位に立っている。革命軍側は、軍勢を召喚する宝具を持つ者や一部の精鋭が奮戦しているが、それもいつまで保つか、というのが現状らしい。
(さて。拙者の方からも動くべきか、そろそろ決めねばならぬ時かも知れぬな)
しかしその前に、確かめておきたいことがある。さて、誰に聞いたものか。
「そうさな、彼らに聞くとしようか」
そう呟いて、歩を進める。向かう先は宮殿に設けられているサロンだ。
サーヴァント達は、作戦行動時以外をどう過ごすかは各自に委ねられている。あるものは酒場、あるものは他のサーヴァントと腕試し、談笑や舞踊に勤しむものもいる。女漁りや男漁りをしている者もいる。
このサロンには、比較的理知的な面々が集まる。目的の人物の一人―――ウィリアム・マーシャルも時折ここに出入りしている。
「おや、アサエモン殿。奇遇ですね」
「ああ、マーシャル殿。ここにおられましたか。少々聴きたいことがあり、探しておりました」>>672
「そうでしたか。ではそちらにおかけください」
座り心地のいい長椅子を勧められ、腰かける。
「何度来ても、極東文化に慣れた拙者には落ち着きませんな、どうも。しかし、この絢爛さと優美さは好ましく思います」
「アサエモン殿は、確か芸術にもご興味がおありでしたな」
当たり障りのない話題をしばらく話したところで、マーシャルが本題について聞いた。
「それで、私に聴きたいこととは何でしょうか」
「そうですな。率直に言いまして、拙者は仕えるべき主についてあまり知りませぬ。仕えてそれなりに経つというのに、このままでは礼を欠きかねません。そこで、陛下の側近たる貴方から助言などいただければと」
「なるほど、そういうことでしたか。ではアサエモン殿は、どう言ったことからお聞きになりたいのでしょうか?」
「風の噂で聞いたのですが、女王陛下は以前、処刑を待つ身であらせられたとのこと。学の浅い質問で申し訳ないが、果たしてどのような悲劇があって、斯様なことになってしまったのか、お聞かせくださいませ」
~「……過去、ですか」
寡黙で多くの事を語ろうとせず、心の内を読ませないような処刑人が、今更ながら彼の女王に興味を持つなど俄かには信じ難い。
マーシャルは、浅右衛門が処刑人として職務を任された日から彼を信用した事はない。
別に元々はぐれのサーヴァントであったからとか、処刑人故に胡乱だからとかではなく、マーシャルが生前においてよく経験したものが見えていたからだ。
────目だ。目は口程にも語ると、浅右衛門の目は忠誠までとは言わないものの、使える者の目をしていなかった。
いくら雰囲気や殺気を隠そうとも、目というものは誤魔化せないものだ。
これは政治を経験し、数多くの曲者を相手にしてきた経験則から来ている。
だが、分からないのが何故『過去について知りたいか』だ。女王について何も知らない、礼を欠き兼ねないと述べるが、本当にそれだけかも怪しい。何か裏があるかもしれない──
────いけませんね。裏の裏まで読もうとするのは悪い癖です。もしかすれば、純粋に話を聞きたいだけかもしれませんし。>>674
「そうですね、余り長々と話をするのも退屈してしまうでしょうし、要所要所私の知る女王陛下の過去──革命の犠牲となった人柱の話をしましょう」
────それは曰く、民衆を愛していた王妃であったと。
────それは曰く、国を愛していた女性であったと。
────それは曰く、人々に愛されていた偶像であったと。
しかし、王国の革命を良しとし、王権を失墜を良しとし、民主主義を絶対のものとする為にフランスを愛していた王妃を処刑台へと繋げ、ギロチンでその首を晒した。
そしてその革命の被害は子息であるルイ17世にまで及び、見るに耐えない仕打ちを受けたとされている。
こうして愛していた民に裏切られ、全てを奪われた王妃は、民衆の望んだ『全てを喰い潰す暴君』として舞い戻り、王政とも呼べない暴政を敷いている。
「私の主観が入っているかもしれませんが、私が語れる事はこれくらいですね」stageいきますね!
カフカスの目の前には今、同じテーブルを囲むマスターが二人、座っている。
神野幸長、方喰菫。さまざまな修羅場をくぐってきたカフカスだが、この二人は今まで見てきた中でもトップクラスに「雰囲気」が違う。
(……うむ、と言うか普通に「殺し」系だものこの人達)
カフカスとて、何の情報も得ずに方々で道化師をしている訳ではない。既に死ぬ程の体験もしている。相手を事前に調べるくらいは当然の事だ。
そして調べた結果、双方共に「魔術師殺し」などと言う物騒な二つ名を持っていると言うのだから恐ろしい。
神野、彼からは良い噂を聞かない。魔術師をただ殺戮する男、それがカフカスが聞かされている人物評だ。
だが彼は、沈黙を貫く神野の面持ちに既視感を覚えていた。かつて参加した聖杯戦争、そこで出会い、そして戦った男に神野は似ている。決して己を曲げず、己の行く道を信じ続ける、そういうタイプだ。
方喰、彼女(女性であろうという事はなんとなくほっそりとした体型から察せられる)もまた、神野と同様に魔術師殺しとしての名はよく通っている。だがカフカスには未だ、彼女の仮面の奥に潜むものを見通せずにいた。
(マスター)
(うん?)
念話を用いて、傍らのバーサーカーがカフカスへと問いかけてくる。カフカスは口を閉ざして空気を凝結させていく二人の殺し屋を見つめながら、念話へと意識を傾けた。
(どうかした?)
(あの、何故私を霊体化させないのですか?姿を見せては、警戒されます。というか、間違いなく彼らは私に警戒しています)
(あ、原因それか。でも今のタロスちゃんはものすごく綺麗だよ?なら、俺だけじゃなく他の人にも見せなきゃ)>>677
(貴方は、本当に話が、通じませんね)
しかし警戒されている、と言うのはカフカスとしては悲しい。こうして食事の席についているのだ。和気藹々と会話するべきであろう。
(神野さんはこちらの出方を窺っている。となれば、こっちから動いてみるっきゃない)
その為のアイテムは勿論用意している。弁舌だけで人と分かり合えるほどの力はカフカスにはないが、様々なアイテムを活用すれば、相手の心を開かせる事は可能だ。
「あのー、方喰さん」
意を決して、カフカスは懐に手を入れる。方喰の片腕がピクリと動く。武器の類と疑われているらしい。
「そんなに肩肘張らないでください。ワタクシ、貴方に贈り物があるんです」
そっと取り出したのは小さな袋。中には黒と白のクッキーが詰められていた。
「お近づきの印にワタクシお手製、カフカスクッキーいかがです?」
傍らのバーサーカーが能面の様に顔を凍りつかせるのであった。
stage投稿します
>>679
カフカスが懐に手を入れたことでやや警戒していた菫だったが取り出したのがクッキーだと分かると緊張を緩めふ、と一息つく。
「(全く、肩肘張らなくともいいと言ったのは私だろうに)ありがとう、遠慮なく貰お「その前に、我が一つ頂こう」
受け取ろうと席を立った菫とクッキーを差し出すカフカスの間にアヴェンジャーが割り込む。
「アヴェンジャー、そんなに警戒する必要無いだろう」
「ああ、そうだろうな。だが、念の為だ」
「しかしだな…」
「方喰さん、ワタクシの事は大丈夫ですので。どうぞ、アヴェンジャーさん」
アヴェンジャーは渡された袋を開封し白と黒のクッキーを一つずつ口へ運ぶ。
「うむ…毒等の異物は無いな。味は…今の我ではよく分からん。…疑ってすまなかった」
アヴェンジャーはそっと袋の封を閉じカフカスへと返す。
「だがこういった飲食店で食物を持ち込むのは些かマナー違反となる。以後気を付けるといい」
「あ、はい…」>>680
指摘されて縮こまってしまったカフカスを見かねて菫はカフカスの手からクッキーの袋を摘みあげた。
「まあ、この会食が終わった後帰りにいただくよ」
カフカスはぱあっと顔を明るくした。
その様子を見てアヴェンジャーはうんうんと頷いている。そしてすっと振り向くと一連の流れを見ていたバーサーカーを見る。
「我のような復讐者が思いの外まともなようで驚いたか?青銅の乙女よ」
ここまでです。
ちなみに今回の土蜘蛛さんの言葉足らずで伝わらなかった意図は
「ああ、そうだろうな。だが、念の為だ」→「戦いなら兎も角我がついていながら毒を喰らったとあってはあの女(カナディア)に何をされるか分からん」
「だがこういった飲食店で食物を持ち込むのは些かマナー違反となる。以後気を付けるといい」→「今回は我が食ったからマナー違反の糾弾は我が引き受けよう。さあ、改めて渡すといい」
です。「ん、んむ、っ、はぁ……もう、朝?」
ぼんやりとした視界のままで体を起こす。何故か身体が重くて熱い。……変だな、と自分でも思う程に。
それに、自分は朝はしっかりと起きれる体質なのに、ここまで目覚めが悪いのも解せない。いったい、どうして───
『もう、やめっ、むりだって……!』
───そう、そうだった。確か隠神に俺の血を吸わせてて、そのまま気絶したんだった。
洗面の鏡で確認すると、鮮やかなピンク色をした痣が首元にしっかりと。そう、それはまるでキスマ──
「いや、違うから。これただの魔力供給だから。顔洗って目覚ませよ俺!」
初めての体験だったしなんか術もかけられたから頭が混乱してるんだろう。頭を冷やそう。だからほら、今からはいつもの氷瀬竜胆に───
「お早う、竜胆。調子はどうだ?」───その当人たる、隠神刑部がいつの間にか自分の真横に居て。
「……お、おはよ、う。もう、傷は大丈夫なのか?」
誓いは秒で破られた。その陥落速度はまるで捕えられた姫騎士のよう。
「ん?ああ。大丈夫だ。戦闘には何ら支障もない。……お前の方は大丈夫か?」
「ん、大丈夫。身体も普通に動かせる範疇だし、別段どうということはないかな」
「そう、か……あ、少し待て」
次に隠神がとった行動は、すっと竜胆についた咬み痕へと顔を寄せ……その唇を、優しく咬み痕に触れさせる。
ぴくっ、と身体が震える。痛くはないが、昨日の今日で少し敏感になっているのだから、唇が触れるだけでも少しこそばゆい。
唇が離れる頃には、傷痕はすっかりと消えていて。それどころか、先程までの身体の重みと熱っぽさが嘘のように消えている。
「これで良し、と。……じゃ、俺は今から初梅の方に行くから、外に出る準備をしておけよ。……すまんかったな、竜胆」
……………
「……なんだ、何もなかったな。取り敢えずは、色々用意をしてっと───」
顔が紅いのは、きっと気の所為。悠々と、霊体化で乙女の部屋に入ってきた隠神刑部。別にやましいことはないけど、そういう分別とかないのだろうか。
隠神は、ぴょーん、とベッドの上に寝っ転がって、ぐぐーっと背を伸ばしてから───
「も゛〜やらかしたー!初日でマスターに嫌われるとか相当なんじゃけどー!?くっそ、ホンマ!ホンマに儂の本能(女神)のバカヤロー!天津神嫌い!あの女狐はもっぺん殺生石になれ!」
「……災難ね」「思っとらんじゃろ!?」
人のベッドで容赦なくシーツを乱すような奴を心配しないのは当たり前じゃない、と思いながら用意を進める。別段、気にすることでもないのだからそんな感想しか出てこないだろう。
「己が本能を抑え切れない辺りがもう妖怪よねぇ。それに、あなたそこまで重く捉えてないんでしょう?」
「是非もなし。あの時の竜胆の純朴さは騙したくて(喰らいたくて)堪らなかったし、何より愉しかったのは紛れも無いのだからな。嘘をつかずにそこは答えよう」
化生の性か……と思いつつも、身支度を終えた初梅はドアノブに手をかけたところで、ふと思い出したかのように───
「私が、あなたをどう思ってるとか、そういうのは気にしないのね?……馬鹿」
そう言い残し、ガチャリ。と己がマスターがドアの向こうに消えた後に、狸は一人硬直する。
───まさか儂、両方ともに嫌われておる?「なあ、初梅。こっからどうするんだ?」
「どうするも何もないわ。昨日のように偵察と干渉よ。……と言っても、今回は前回の経験を踏まえて、ホテルじゃなくて家丸ごと借りたわ。周囲も森だし、キャスターの陣地作成が映えるでしょ」
なんて言いながら街中を歩いていると───
「あ……」
耳(心)に届いた、バーサーカーと呼ぶ男の声。その声は、何処かで、つい最近聴いたもの。
「……どうした?」
「───ユージーン。ユージーン・バックヤードが、近くにいるわ」>>685
蒼木ルイとセイバーの二人と別れ別行動中のバーサーカー陣営。彼らは街中をぶらぶらと散策していた。
「なあ、ユージーン」
「どうした?」
「俺をずっと実体化させ続けていいのか?別に無理にこうして街を練り歩く必要は無いんだぜ?」
ユージーンは今朝からずっとバーサーカーを実体化させ続け時折店に立ち寄って飲み食いしたりさせていた。それにはある理由がある。
「バーサーカー、お前あれだろ。あんまり鬼らしいことやり続けると暴走するだろ」
「なんだ、そんなことまで分かるのかお前の眼は」
「正確には俺のではないけどな」
バーサーカーには致命的な難点があった。それは“鬼らしい振る舞いをし続けると鬼の本能を抑えきれず暴走する”というものだ。そしてユージーンは先祖の魔眼を受け継ぎその眼の力を行使することが出来るのだがその中の未来視で暴走したバーサーカーに殺.害される未来を視たのである。>>686
「ふぅん、未来視ねぇ」
「まあこうして人と交流してれば暴走する未来は見えなくなったしこれで安心して未来視を他に向けられるってもんだ」
「だがよユージーン。俺は人と馴れ合い続けても暴走するぞ?」
「はぁぁっ!?」
バーサーカーが放った爆弾発言にユージーンが絶叫する。バーサーカーが言うには人と馴れ合い続けると今度は本能が“人間と馴れ合うな”と暴れ出すというのだ。
「嘘だろおい…」
つまりユージーンは常に未来視をバーサーカーに向けて人と鬼のどちらにも振り切れないよう気を配らなければならないということであった。
「はぁぁあ…」
「まあその、適度に戦闘出来ればそれで発散できるから。な?」
そう都合よく戦う相手が出来ると思うなよとぼやきながら歩いていると物陰から二人の人間が現れた。
「あ…」
「はじめまして、ユージーン・バックヤード」
現れたのは氷瀬竜胆と水籠初梅だった。>>687
ここまでです。エンカウントしたのがどんな場所かは山星さんにお任せします。>>653
……三陣営の情報。
なるほど。それは確かに魅力的である。セイバーのサーヴァントも鎧を喪った今となっては難敵以上の難敵だ。状況だけ見たら聖杯戦争の手とすれば有りがちなものだ。
だが、それで二つ返事が出来る程ゲルトラウデは軽率な女ではなかった。
「判断材料が足りないわね。まずは貴方のサーヴァントを見せなさい。まさか、そちらから提案しておいて手の内は首を縦に振らなきゃ話さない、なんてことはないでしょう?」
それに、気になる事もある。この男は開口一番に腹ごしらえをするつもりであったと言った。これがただ夜食を取るつもりであったと言うのなら思い過ごしであったのだろうが、聖杯戦争に近して増加した行方不明事件の件もある。先ほどのスカイジャックも頭を痛めている要因の一つだ。
標的であったセイバー・ライダー陣営、この街の管理者である東雲を除外すればこの爬虫類染みた男も容疑者の一人になるのだから。アメリカ異聞帯投下します。
「7人とかなんとか言ってなかった? あんなのが他にもいるってこと?」
立香がふいに口にした言葉に、サーヴァント達は戦慄した。
濃霧と豪雨が降りしきる中その体勢を微動だにせず疾走していた男。
誰もが満場一致で「危険人物」と認識した輩のようなものがあと六人も構えているということは、彼らにとって脅威でしかなかった。
「言ってたなそんなこと。ったく、傾奇者は絵巻の中だけにいてほしいぜ」
「はぁ……困りましたね……」
「あ、アインシュタイン様……お気を確かに……」
「異聞帯……クリプター……それにどう考えても敵対者にしか思えない英霊(へんたい)……どうしたものかな。これは」
大嶽丸が、アインシュタインが、リンドヴルムが、モーシェが。
いずれも歴戦の武勇功名を持つ英雄達が、一人の変態によって苦しめられていた。
そして各々が各々の方法で警戒レベルを上げる中……一早く、異常事態に気づいた者がいる。
「これは……なんだ。なにか、何かが来ている!」ハッチを開けシャドウボーダーの外へと飛び出したのは純白の戦装束に身を包んだ女騎士。
生前培った無数の戦場での経験が、彼女に警鐘を鳴らしていた。
そして……その予感は、現実のものとなる。
「■■■■■■■■■■ー!!!!」
女騎士・白雪姫の視界に、けたたましい咆哮を上げる巨大な虎の姿が飛び込んだ。
コンクリートに亀裂を入れながら猛スピードでこちらへと近づいてくる猛獣。
それも一匹や二匹じゃ済まない数がシャドウボーダーに今にも追いつこうとしていた。
大慌てでボーダーの車内に戻る白雪姫。普段は沈着な彼女が見せる慌てた振る舞いを訝しんだモーシェとアインシュタインがハッチのすぐそばまでやってくる。
「モーシェ、アインシュタイン、虎だ。虎が後ろから近づいてくる。私はマスター達にこのことを知らせてくる。2人は外に出て迎撃を頼みたい。出来るか?」
「任せたまえ」
「はいっ、わかりました!」
白雪姫と入れ替わりでハッチの外へ出るモーシェとアインシュタイン。
そして彼女はマスターの周りに陣取るリンドヴルムと大嶽丸に告げた。「敵襲だ。追いかけてきたのは虎。私は詳しく知らないがキヨマサというものは虎にまつわる逸話でもあるのだろう。リンドヴルム公、貴公にはマスターの警護を頼みたい。私はアインシュタインとモーシェと共に迎撃に努めよう」
「承りました。マルガレータ姫」
首肯と同時、薔薇の甘い香りがボーダーの車内に広がっていく。
マスター以外には領主、あるいは指揮官として振る舞う彼女が唯一貴公と呼ぶのがリンドヴルムで、本名のマルガレータという呼称を唯一使っているのもまたリンドヴルムであった。
リンドヴルムと白雪姫。
互いに生まれも育ちも違うがこの2人においては他の3人どこか違う関係があった。「よう白雪。俺はどうすりゃいい? 指示するなら全員に指示するのが筋ってやつじゃないのかい?」
大嶽丸の不遜な言葉。あの変態を前にしての不敵な態度に白雪姫は苦笑する。
「ああ。そうだな……あそこを走る女の子が見えるか? このままだとあの子も虎の餌食だろう。貴方にはあの子を助けて欲しい」
「助ける? おいおい、いいのかよお姫さん。俺は鬼だぜ? 我慢しきれずに食っちまうかもよ?」
舌を出して笑う大嶽丸。これは彼なりの誇示であり宣言だ。
この身は鬼、そちらは人。鬼が人の道理で動くことは無い。やるなら上手くやれという彼なりの警告だろう。
「はっ。いいだろう。改めて頼もうか。大嶽丸。あそこの人間が見えるな? あの子をここに『攫ってきてくれ』」ニヤリ、とその端正な顔に似つかわしくない獰猛な笑みを浮かべ告げる白雪姫。
彼女の解答に、鬼神と呼ばれた男は哄笑で応えた。
「はははははっ! いいねえ。そう来なくっちゃなあ。ああいい。実にいい。あんたは『使い方』ってやつをわきまえてる。そうだな。人間にそこまで言わせちゃあ俺も立つ瀬がねえってもんだ。いっちょ鬼らしく、『人攫い』に行くとするか!」
「ああ。そうしてくれると助かるよ。そちらは任せたぞ、大嶽丸」
外へと飛び出そうとする大嶽丸の背中越しに白雪姫の言葉が刺さる。
これ以上顔を突き合わせることは無粋がすぎる。
そう感じた大嶽丸は彼女を見向きもせず。
「ああ。そっちも頼んだぜ。白雪の姫さん」
彼にしては珍しい、人を信ずる言葉をもって返したのであった。終わりです。
───ほとほと呆れる、とはこの事であろう。初梅はそのような事を考えながら、悠々と、何事も無さそうにユージーンの下へと歩み寄り、挨拶をした。
……彼女としては、逃げるつもりだったのだ。相手は暴力の権化たるバーサーカーというサーヴァント。狙って呼ぶのだからそれなりに強く、全力を出させることが出来る想定でなければ行使など出来よう筈もない。
それでいて、バックヤード家とは魔眼についての研究を数千年に渡り続けていると噂される程の魔眼の大家だという。本来であれば魔眼とは偶然に生じるものであり、人工的に作るのであれば大した能力の創造は決して出来る訳がない、というのが魔眼に対しての一般常識であろう。
───だが、彼等の一族は生まれた時から必ず天然物の魔眼を有するのだと言う。それはつまり、数千年に渡る研鑽の結果であり、遥か昔の先祖の身も凍るような人体の改造を繰り返した産物でもあるのだろうが。
はっきり言って、彼女は彼等とは戦いたくはなかったのだ。いやむしろ、顔を出すことさえしたくなかったと言って良い。関わるなら関わるで、同盟だの停戦協定だのと言った非戦闘的方面での話し合いがしたかったのだと、彼女はずっと思っている。
ならば何故、この場所に居るのかと言われれば仲間である隠神刑部の提案に他ならない。自分の隣の狸が、干渉してみようとさえ言わなければ、実際にそのまま帰っていた筈なのだ。
『俺にも自責の念はある。昨日の戦闘での損傷は我が身の不徳故に起きたことよ。なればこそ、今度こそこの身を以って償いを行わねばなるまい』
それを止めることは叶わぬのだろう、と判断したマスターである二人は、こうしてユージーン達の前に姿を現すことを決めた。「おう、御機嫌よう。で、何の用なんだ?」
「ん……私としては、普通に貴方達と会ってみたかっただけだから。戦闘をしようとか、話し合いをしよう、なんてことは、今からの状況の変化によって決めることかしら?」
竜胆は一人、全体を俯瞰して眺めていた。この場で相手のマスターであるユージーン・バックヤードを警戒するのは同じ魔術の世界に身を置く水籠初梅であり、霊体化を解いているバーサーカーと思わしき人物を警戒しているのは同じく、サーヴァントという人智を越えた存在である隠神刑部だ。
ならば、自分が出来ることはその全てを眺めることである。眺めて、相手の一挙手一投足がどんな意味を持つのか、自分達はどう行動をすれば良いのかを観察し、俯瞰し、判断する。
───すると、ふわりと突如隠神刑部が幻術を解き。
「……天が淵の、神蛇か?久しいわね。巫女として訪れた以来かしら?」
すっ、と。バーサーカーの頰に手を伸ばす。
「───なんだ、四国の化け狸じゃねぇか」
その言葉に、隠神刑部は虚を突かれたような態度をとった。目はまん丸に開き、口はぽかりと開ききって。
「───そう、貴方は、違うのね。……そう、か。そうじゃった。お前は、お前も酒呑童子じゃったな」>>666
「なかなかやるじゃないか、モードレッド!」
「ハハッ、そうさ騎士王!俺はモルドレッド、貴様を倒す叛逆者だ!」
打ち合いが続く中、叛逆の騎士が恍惚とした叫びを挙げる。騎士王が剣を振るい、叛逆の騎士がそれを弾き、躱す。
斬撃の余波が風の打撃を生み出し、叛逆の騎士へ襲い掛かる。しかし叛逆者は、よろめきながらも膝を突かず、どころか連撃の合間を縫って反撃を見舞う。そして、反撃の頻度は徐々に増している。
「どうしたアーサー王、貴様の全力とはそんなものかぁ!」
モルドレッドが返しの太刀を放ち、騎士王が避ける。その後はまた騎士王が攻め立て、叛逆者が耐え凌ぐ。暴風の如き攻撃を、ただひたすらに。
「お前もオズボーンも、惜しい選択をしたな!お前に致命傷を与えた騎士を前に、マスターからの援護という優位を自ら捨てた!」
瞬間、騎士王が上段から剣を振り下ろす。叛逆者はそれを受け止め、渾身の力で上へと跳ね飛ばす。
「―――!」
剣を持つ右腕を上に跳ねられ、体勢を崩す騎士王。その隙を見逃さず、叛逆の騎士は斬撃する。
「これで終わりだ、アァァァーサァァァァァー!!!!」
狙いは首元。そこに下がっているペンダントを落とせば勝利となる。
剣を構え直す時間はなく、防御は間に合わない。耐え忍んだ末に放たれた斬撃は、絶対の急所たるペンダントへ吸い込まれた―――。
「それはどうかな」
―――筈だった。首元を通ろうとした斬撃は、騎士王の左腕によって掴まれていた。よく見ればわかるが、力を入れている指は”親指と人差し指の二本のみ”だけだ。
そのことに気づいた瞬間、叛逆の騎士は兜の下で絶望の表情を浮かべた。
「…………!」
「どうやら、間に合ったみたいだネ☆」>>702
◆
「”道標解除。並行世界再接続、魔術回路統合。励起開始!”」
戦闘技能の代わりに、幻術や鏡の扱い方を犠牲にする戦闘形態を解除し、いつもの僕に戻る。そして僕の周囲に展開された六枚の鏡。その一枚一枚が並行世界の僕とつながり、その魔力を行使できるようになった。セイバーの全力を維持するには、七人分程度の僕の魔力が必要だ。
鏡からは、青い糸のようなものが僕へと伸び、そこから魔力を仲介。セイバーにも供給が開始される。
その直後、モルドレッドがセイバーを討たんと剣を放つ。しかし、魔力を得たセイバーに受け止められた。
「どうやら、間に合ったみたいだネ☆」
そこで僕は、先ほど漏れ聞いたものを思い出す。
「一つ誤解を解こう。僕がセイバーの要望を聞いたのは―――信じてるからサ☆僕が手を出さなくても、セイバーは負けないって」
「っ!」
モルドレッドを名乗った彼が掴まれた剣を動かそうとするも、ピクリとも動かない。しかし突如、セイバーが掴んだ剣ごと相手を放り投げた。投げられた騎士は百メートルは優に飛び、背面から地面に激突した。
◆
「ぐはっ!」
苦悶の声を漏らす叛逆の騎士。剣を杖代わりにしてよろよろと立ち上がり、辛うじて剣を正眼に構える。
―――直後、騎士の正面に死神(アーサー王)が現れた。
「―――『不壊なる青剣(アロンダイト)』」
呟き、騎士王は剣を振るった。青き光を纏った一閃は、鋏の剣を中ほどから容易く両断する。
騎士王は尚も手を緩めない。左腕で相手の頭部をつかみ、そのまま強引に地面へ叩き付ける。モルドレッドが何をする暇もない速度だった。
―――そして、死神は無慈悲に告げる。倒れ伏した相手に剣を突き付けて。
「終わりだ。貴方は、私に届かない」~>>675 「なるほど、そのようなことが。御労しいことでございます。……拙者、革命には少々思うところがありましてな。この国で起こった革命がどのようなものか知っておきたかった部分もございます。ご教授、感謝いたします」
「いいえこの程度、礼を受ける程の事ではありません」
その後も、浅右衛門がマーシャルへといくつか質問をする。その間、マーシャルは浅右衛門に対して一つの問いをどう投げかけようかと思案していた。
下手に聞けぬ類の問いであるため、どうしても言いあぐねてしまう。
言い出すための機を待っていると突然、別の声が口を挟んだ。
「あなたは"どちら側"です?」
声の主は玉兎。サロンの端にいたが、二人の話を聞きつけたようだ。
(流石はウサギの長耳、と言ったところですかな)
浅右衛門は、内心で感心と呆れの混じった感想を浮かべた。そして不自然にならない程度の間で、質問への回答を頭でまとめる。
「―――拙者はただの処刑人。御上に仕えるのは必定で御座いますれば」
「そうですか。疑ってすいませんです」
そう言って、玉兎はサロンを出て行った。その様子を眺め、やや冗談めかしてぼやく。、
「全く、ウサギのように忙しないですな、玉兎殿は」
「そうですね。それにしても―――」
苦笑で同意したマーシャルが、そこでためを作る。
「―――テーブルの向こう側で、顔合わせはしたくありませんね」
その発言の裏に、敵対する関係でないようにしたいという意思を浅右衛門は感じた。
(なるほど。翻意を気取られぬように振舞ったはずだが……なかなかの慧眼を持っておられる御仁らしい)
内心でヒヤリとしたものを感じつつも、さらなる尻尾を出す愚は犯さない。相手は恐らく、まだ確信を持っている段階ではない。釘刺しや鎌かけのようなものだろう。
「ええ、仰る通りでございます。―――ところで。これは純粋な興味でありますが、マーシャル殿は何故、女王陛下に忠義を尽くしておられるのですかな?」 ~>>701
「Bitte gib mir dein Leben(あなたの命をくださいな。)。Weil es einsam und schon ist(それは瑞々しく麗しいのですから)」
二節の魔術行使。その歌が広がると共に、女の前にその肢体を喰いちぎらんとした黒い獣達はピタリと動きを止め、塵となってこの世から消滅する。
「貴様……!」
フォアブロ・ロイワンを構成しているのはかつて取り込んだ666の生命であり、転じて混沌となったモノである。普通に倒されれば混沌へと還るだけのものである。そう、“普通に倒されれば”。
「あら。案外美味しいのね。元の素材は現代(ワースト)だけれど、熟成を重ねていることで私達(神代)のモノに近くなってる。まぁ、食べ続けてれば落ちてくるから飽きてくるかもだけど――」
そう、完成されているものが何をしても完全であるが、満ち足りたものであれば引けるものはある。倒すのではなく、喰らう―。
命喰いの怪物は一人ではなく。目の前にいるのは遥か時を超えて現代に甦った神代の怪物(セイレーン)。神秘はより古き神秘に敗北する。セイレーンの語源とは、縛るもの、干上がるもの、であるが故に。
何故食らったのかと言えば怪物としての性(本能)が山麓の天然水といった誤魔化しではなく久方ぶりの美食を察したことであるが、ともあれ。
女はマスクを剥ぎ取り、神秘の消失に伴い息苦しいと疎んじていた現代の空気が入ってくることも構わずに口を横に裂かせ爛々と目の前の男(餌)を見入る。
どうせ最期まで手を付ける訳でもなし、少しくらい今、ここで食べてしまってもいいのでは――?>>705
「クハハハハ!なるほど、貴様『そういうこと』か!俄然興味が湧いた。面白い、貴様と私の食欲、どちらが上か確かめてやろう」
自らが喰われると言う未知の経験を経てなお、黒衣の魔術師は嗤った。
裏付けるのは絶対的な自信。
「轢き潰れろーー『混沌解放・巨大鯨』」
男の体が突如として膨れ上がり、地を影が覆った。
漆黒の塔が吐き出され、空を覆い隠す……
否、塔では無い。
かつてはその圧倒的な力と存在感で海神として祀られ、現在でも地球上に於いて最強最大の名を欲しいがままにする海洋生物、鯨の尾びれだ。
強靭な筋肉に覆われたそれが大きくしなり、振るわれた。
大海の怒りが、圧倒的な質量を伴ってゲルトラウデを襲うーー>>706
「チッ……、ライダー!」
流石に大きすぎるし、避け切れないと判断したゲルトラウデは己が従僕に命令を下す。あくまでセイレーンは人間相手かそれより小さいものを相手にする怪物であり、動く超巨大生物相手は想定していない。
ザンッ!という音と共にその大剣によって一斬したライダーは『Bustur』とデカデカとプリントされたTシャツとジーンズのまま地面に剣を突き刺し、端正な顔は目の前の魔術師に向けた声をかける。
「今夜は会ってから見ないぐらいにご機嫌だね。マスター」
切られた鯨の半身を食らっていくも普段慣れていないモノを急いで食べたことで胃もたれを起こしたのか青い顔をしながら腹を抑えるゲルトラウデはぶつぶつと返す。
「だって、久しぶりに美味しかったんだから……、うぷ。体重計……」
それを横目に見ながら、ライダーは目の前の魔術師、そして姿を見せないサーヴァントに警戒心を向ける。
マスターは人を害することはないと確信してもいい。それは人情ではなく実利的側面で、だ。怪物であってもその点は信用が置ける。が、この男は違う。紛れもなく嗅ぎ取れる血の匂い。ここで放置していては罪のない民に被害がでる。見逃すことは出来ない。しかし、どこから攻めるべきか――。第■回を投下します。
>>708
「ここら辺でいいかな……?」
(《人払いは張ってある。何時でもいけるぞ、マスター》)
人の滅多に寄り付かない森の奥。
開けた場所に、少女が1人。傍らには、霊体化した英霊が一体。
「っし」
軽くストレッチを行い、懐から大きめのチェスピースのような何かを取り出しスライドスイッチをピースの頭部側へと操作する。
「【GUNCERESS!】」
チェスピースが展開、魔女のような絵柄が出現した瞬間。少女の腰に、滲み出すかのようにベルトが現れる。
バックルへと変形したそれを装填、なぞるように右腕を動かし、流れるようにベルト横のハンドルを展開。アクセルを捻る。
バイクのエンジン音のような爆音を響かせながら、銀河の周囲に装甲が成形されていく。
金型のような『何か』が地面からせりあがり――――――――――。>>709
「変身(トランス・オン)!」
――――――――詠唱(せんげん)と共に装甲が取り付き、金型がトラバサミの如く勢い良く少女を挟み込む。
蒸気状になった余剰エネルギーが放出され、中から魔女を模した装甲に身を包んだ妙齢の女が姿を表した。
「魔法少女、参上!」
(《魔法。少…………女…………?》)
「……………………中身は少女だから。うん」
ばつの悪そうな表情で、銀河は手にもっていた箒型のライフル……らしき何かを手の中でくるり、と一回転させる。
「…………ってか、これなに?」
(《どうやら、そのアーマー特有の『武器』のようだな。メイスやライフルのように扱ったり、乗って空を飛ぶことも出来るようだ》)
「ますます魔女じみてるネ。とりあえず、飛行練習かな…………どうやるんだっけ?キャスター」
(《先ず―――――――――――――》)
数分後。
「だいたいわかった」
(《………………》)
自身の相方が『本当に理解しているのかコイツ』と言いたげな沈黙と視線を銀河(マスター)に向ける。>>710
「大丈夫だよ!アタシ、意外と出来る子だし!」
(《大丈夫なのだろうか……》)
箒型ユニットを変形させ、宙に浮くそれに飛び乗る。
サーファーのようにバランスを取りながら徐々に高度と飛行速度を上げていき、慣れてきたのか、曲技飛行めいた動きをするようになってきた。
「よっ、ほっ、よいしょぉ!」
「《あまりスピードを出しすぎるのは良くないと思うのだが……?》」
「へーきへーき!…………これも試してみようかな?」
曲芸じみた機動を維持しながら、懐から手のひらサイズのデバイスを取り出しバックルの空いた部分に装着。アクセルを捻り―――――――――。
「《ッ!待て、マス――――――――――》」
「へ?」
―――――――――腰にマントが装着された瞬間、流動力によるジェット噴射が停止。銀河が悲鳴を上げる暇もなく、勢い良くダム湖のど真ん中へと突っ込む。
凪だった水面に、大きく水柱が上がった。>>711
「さ゛む゛い゛ぃ゛…………」
栗栖市営キャンプ場、コスプレじみた露出強な格好をした美女が鼻水を垂らして焚き火に当たっていた。
着水時の衝撃等は、全て装甲にレジストされ無傷ではあった。
だがしかし、温度差だけは如何ともし難く、しかも今は冬場……当然、こうなるのは自明の理である。
「《だから待てといったのだ……あのモジュールを装着すると、外部干渉の類いは一切機能しなくなる。当然、箒を飛ばしていた流動力も停止するんだ》」
「ごめん、キャスター……」
「《…………私も、止めるのが遅かったと思っている……謝ることじゃない。それに、傷一つなく無事だったなら何よりだ》」
「…………うん」
キャスター陣営:訓練中に墜落、栗栖市営キャンプ場に逆戻り。>>712
時間的に昼間ですかね?
そっちに向かってもいいですか?テスト
>>715
「こんな感じで…いいかな?」
京郎はホテルの部屋でサーヴァントである英霊を召喚する為の召喚陣を敷いた。
説明書を参考にしながら行っていたため時間はかかったが悪くは無い出来だと思う。
「準備出来ましたよー」
カーテンを開き窓の鍵を解除する。
外には数台のドローンが待機していた。
カメラに向かって手を振るとドローンの緑のライトがチカチカと光る。
きちんと撮影は開始されているらしい。
「荷物ごちゃごちゃしてるんで気をつけてくださいね」
積み上げられたダンボールの山を交わしてスイスイと器用に移動するドローン達。
京郎は早速触媒である赤い小さな布切れを設置する。
今の時間帯は魔力が満ちるわけでは無いが関係なかった。
ダンボールの中から京郎は六枚の鏡を置く。それらを向かい合わせに召喚陣を囲むように置く。
これにより彼に混じる魔力を増幅させる事が可能となる。故に京郎は召喚の際に消費される魔力を気にする必要は無かった。>>716
「えー…それでは。素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
言葉の深い意味はわからないが事前になんとか覚えてきた詠唱を読み始める。
令呪の刻まれた手を翳し、細工をしたとはいえそれでも全身の魔力を持っていかれるという脱力感と疲労感に耐えながらも読み進めて行く。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
召喚陣に白い光が灯始める。
激しい魔力の風が周囲に起こり始め、彼の全身を揺らした。
彼は光に眩む目を擦りながらも、光を形にしつつある己の召喚したサーヴァントを見ようと立ち続けた。
自分の魔力回路が熱を持ち始めた。
サーヴァントと契約のパスが繋がった証だ。>>718
そこはホテルの一室などではなく。
深い深い海の底のように思えた。
突然の自体に困惑しながらも京郎は周囲を見渡す。
あるのは暗緑色の壁。それと絶対的な静寂。
とてもとても狂気的で広い空間だった。
足元を見れば自分は地面に足を着けているのではなく、浮いてるのがわかった。物理法則などここでは彩の一つにもならぬ。
この彼の常識の範疇などとうに凌駕した異常事態。
だが不思議と落ち着いていられた。
暗いはずなのに光がある。
目を凝らすと、いつからだろうか。目の前には何か巨大なものがあった。
オブジェクトかと思われたそれはこちらを見ていた。
見ていた?いや見ているのか?
わからなかった。
ただただそれはこちらに恐れと謎を与えるのみ。そこにある事が当然であり森羅万象の道理のようなそれ。それは動かなかったのに。
この尋常ならざる空間は宇宙か。はたまた死後の世界か。安寧と混沌が一つへと調和した現実とも夢ともとれる世界は彼が結論を出すより早く、再び白へ染まっていった。>>720
目の前の人間は一方的に喋るとすぐに背を向けて病室を出ようとする。
京郎は呆気に取られながらも我に返り呼びかけた。
「いや、ちょっと待って!あなた誰ですか!?」
「…私の名を聞くのか?変わった奴だな。普通はこの状況を聞くだろう?」
「いや質問に質問で返さないでほしいというか…そうじゃなくて。まずあなたは誰ですか?」
自分より些か身長の低いその人は黙って振り返らずにその場で立ち止まる。
「誰も何も。お前の召喚したサーヴァントだが」
中性的な顔立ちを崩さず、サーヴァントと名乗る目の前の人物。威圧的な態度に京郎は気圧される。
ここでようやく彼は自身の魔術回路が熱く反応している事に気付いた。そして近世の将軍らしき超然とした身なりと、腰に備えられた年代物のサーベルも証明材料の一つになっている。>>721
「サーヴァント…呼べてたんだ」
「まぁな。呼ばれた時、何故かお前は寝ていたが。そこから番組スタッフと名乗る連中に無理やり車にお前ごと押し込まれ…あぁ腹立たしい。私の地位などこの時代の法には関係ないかもしれんが、それでもあの態度は腹立たしい。それに病室から抜け出そうとすれば消滅するぞと脅されるし…奴らはロシア人か?」
「おーい。ちょっと戻ってきてくださいよ」
一人でそっぽを向き愚痴り始める。京郎の事など目に入ってないかの様に振る舞うサーヴァント。
どうやらこの病院にいる理由はわかったがもっと聞きたい事はある。
「…何だ?双方にとって価値のある質問だろうな?」
「んーそれは正直微妙かも」
「えらく馴れ馴れしいなお前…」
「あなたのクラスは何ですか?ほら、いつまでもあなた呼びは嫌でしょう?」>>722
京郎の質問に一瞬だけ、サーヴァントは身を固くした。二角帽の下でその蒼いサファイアの瞳が揺れた事に、彼は気付いてない。
「ーーーアーチャーだ」
「アーチャー?あぁ、ならあなたはやっぱり」
「それ以上喋るな。誰が聞いてるのかわからないのだぞ?ともかく私のことはアーチャーと呼べ」
心なしか自慢気な顔でそう宣言するアーチャー。
まだ誰もこの言葉の裏の真意に気づけるものはいない。
「自己紹介も済んだし早く外へ行くぞ。お前、戦において重要なものは何かわかるか?」
「速さと情報、それと人員…ですよね?」
「有能な仲間が足りないな。平民と何一つ変わらぬ見た目の割には詳しい方だが。とにかく今の私達にはそれら全てが不足している。なら手に入れるだけだ」
「スタッフへの連絡は…まぁいいかな?」
窓の外に浮いている一機のドローンを京郎は見る。そして視点を戻すとそこにはもうアーチャーはいなかった。
廊下から革靴が鳴る音が聞こえる。
「はぁ…。でも思ったよりは付き合いやすいかも」王都近郊にある村に着いた俺は、村唯一の酒場に入る。
此処は革命軍王都部隊との定期連絡用に設けられた革命軍アジト。
いや、正確にはこの村自体に革命軍の息が掛かってるんだったな。
「連れが一人遅れてくるから、二人分の料理と酒を頼む。ああ、安酒で構わない」
前にデュマが言っていた通り、一番奥のテーブルでこう注文するという合言葉を使う。
良い酒は王都に持ってかれて大半の地域には安酒しか残ってないのは周知の事実なのにわざわざ確認するのが合図だそうだ。
そう心の中で確認している内に酒と、野菜のシチューと、肉団子が運ばれてくる。
此処は王都に食糧を供給する為の村の一つ……故に、王国軍も簡単には滅ぼせない。
だからこそ、小さいとはいえ肉料理を出す余裕はある。
と、ここで扉が開いた。
「来たか、寺田」というわけで、予選スレで言っていたフランス特異点回想シーン投下しました。
>>729
以上です。
ロワインは念話で「サーヴァントを狙う」よう命令を出しました。
この後ザミエルは銃を無限召喚しながら無数の弾丸を打ち込みます。
よろしくお願いします。教会から離れて400m弱。リドリーはランサーに対して切り出す
「一旦ここで別れよう。まだ正式に同盟結んだわけじゃないしね」
「ええ、そうですね。今日は色々とお世話になりました」
「礼と詫びをしなければならないのはこちらだよ。いやすまなかったね、勝手に拉致して」
「確かに面食らいましたが……………それ程気にしてませんよ」
奇妙な一体感が流れる。今夜は本当に長かったのだ。色々なことがあったからだ。霊体とはいえ疲れるものは疲れる。早く休もう。そんな空気が流れ、自動的に解散しようとする
その時だった
「あっ、ちょっと待て野性の嬢さん」
セイバーがランサーを呼び止める。何の用だろうか?そんな疑問を目に浮かべるランサー。その目を横目にランサーはバックの中から白い箱を取り出す。ケーキが入るくらいの大きさだ。赤いリボンがついたそれをランサーに渡す
「すまんな、本来ならもう少し小さくなるつもりだったんだが……………味見はしてないが毒は入れてない。今夜の迷惑かけた謝罪だ。受け取ってくれ」
そう言い終わるとリドリーとセイバーは闇の中へと光の軌道を残しつつ消えていった……………>>732
よっしゃこれでイコマさんにパスするぜ!
エル・シッドはかなりこのパイに自信がありますし、本気で可愛いと思ってます>>728
了解です。
一日目夜にアサシンが戦闘しつつ集まったサーヴァントに小聖杯や管理者について知ってる情報流すので、それに参加するなら開始前になるかと。投稿します
>>735
救急車のサイレンが腹に響く。
パトカーのランプがガスマスクを赤く照らす。
静謐な雰囲気はとうに失せ人々の間に混乱が広がる。
果たして、誰がこの状況を巻き起こしたのか?
「一体誰だろうねぇ?こんな酷い事したの?」
アサシンは坂の上にある、とある民家の屋根から寝転がって街を見下ろしていた。
あぁ、しかし素晴らしい。両手で数えきれなくなった辺りで一度襲撃を中断したのだが、ここまで波紋が広がるとは。
「アハハハハハハハ、ウフフフフ、ケケケケケ!!」
ガスマスクの下から男、女、子供の笑い声が続けて漏れた。自己の安定が崩れつつあるが今の何とも言えぬ満足感は心を埋める。
「さーて…メインディッシュはこいつ、かな?」
アサシンは床代わりにしていた屋根をポンポンと叩く。
この家はとても広い屋敷だ。生前の町長のそれを思い出させる。こんなに広い家に住んでる人間はきっと、日々の生活に何の不安も抱いていないのだろう。
ならそんな彼らが蘇った正体不明の怪人に襲われたら?>>736
「善は急げ、だ」
屋根から飛び降りると中庭へと音を立てずに着地する。そしてそこからほんの少しの出っ張りを足場に窓へと登ってゆく。
そして、慎重かつ大胆にカーテンを開けた。窓の大きさからしてここは寝室かそれに準ずるところだ。その先にはきっとーーー
「あらら?」
誰もいなかった。もぬけの殻という言葉はこの為にあるだと思わせるようだった。
そもそも人の気配がまるでしない。
「あのさぁ…萎えるんだよねぇ…」
アサシンは窓を開けるとそのまま侵入した。いつもより乱暴な手つきだった。
ベッドに腰掛けるとはぁと溜息をつく。
予想外の展開ならこの聖杯戦争で既に何度か経験しているが、楽しみを奪われるのはとても応えた。フラフラと生気の無い歩みで部屋の中を歩き始める。
「…?」>>737
その時、一つの写真が目についた。
家族写真らしく三人の親子が仲睦まじそうに写っている。そこそこ昔の年代が端に刻まれているが、大事に保管されているらしく枠組みには埃一つ着いてなかった。
だがアサシンの目を奪ったのはそこでは無かった。
真ん中に写る少女だ。アサシンは黙って食い入るように黙って写真を見ていた。
「…可愛いなぁ。この子」
アサシンの口から出たのは率直な感想だった。しかしただの外見の可愛さだけでは無かった。
アサシンは少女の瞳、そして奥に隠された幼いながらの健気さを感じ取ってしまった。それは見た目とのアンバランスさを引き立たせる。その背中には何を背負うというだろうのか?
怪人の胸に仄暗い火が灯った。
「なんだ、神様は私を見捨ててなかったんだね。今度適当に拝んどくよ」
アサシンは写真を元の場所に置いて部屋を出る。
その手にはナイフが握られていた。>>739
この日はおしまいです
ウィリーはまだ寝てます「狂戦士の思考は、これだから読めませんね……!」
暴威を晒していたバーサーカーが突如として標的を変え、攻撃するルートを変更した。
嵐となって凄まじい攻撃を遠距離から繰り出すサーヴァント──この大会におけるもう一人のアーチャー。
宝具を解放し、夥しい大気を爆発させている神の如き威容は、遠くからでもヒシヒシと感じさせる程に漂わせている。
神気に当てられたせいか、それとも言動通り遠距離攻撃を当てられた事に腹を立てたのか不明だが、どちらにせよ蓮見とアーチャーの元へ向かっている事は確かだ。
「ランサー、私は一足早く封じに向かいます」
「承知した」
現在の敏捷性で言えば、まだゲルトのアーチャーの方が高く、仕留める事はできないものの高速移動しながらの追撃が可能だろう。
体力だけを削り、ランサーと再度コンビネーションを組む事によって勝利をより確かなものとする。アーチャーはその算段があった。
加えて、大弓の英霊には一つ懸念があった。
────こと宝具だけに限れば彼のファラオはバーサーカーと互角。しかし、土台の差は圧倒的な開きがある。
仮に宝具の撃ち合いで決着が付かなければ、それ以外の要素で押し負けてしまう恐れがある。それ程までにファラオと暴君のステータスには差があるのだ。
嵐の軸となって猛威を振るっているファラオは、勝利を収める要の一つとなり得る。故に、ここで一騎打ちとなって消えさせる訳にはいかなかった。>>741
アーチャーが駆ける。
木々の中を掻い潜り、枝と枝へと足を踏みしめ、縦横無尽に空間を駆け巡る。
前方には凶王が呪いを撒き散らしながら障害物を物ともせずに突き進んでいる。さながら生きたトラクターのようだ。
威嚇射撃として三発程射ったものの、意にも介さずいる。
勢いを止める気がないのなら、停止せざるを得ない状況に追い込むまで。
──翠色の光線が何十にも射出され、お互いの射線上でぶつかり反射しながら軌道を変え、包囲網を作るかのように対象に迫る。
「クッソがぁっ!」
ようやく意に介し、囲い矢を相殺.するべく魔術を放つ。
この一撃だけで全ての矢が落とされ、そのまま勢いの残った魔力の奔流がアーチャーに襲いかかった。
だが、この結果を予想していたのか、上空高く飛躍し、空中を前進しながら真下にてアーチャーを睨むバーサーカーに連続射撃する。
「頭上注意なんぞ既にできてるってんだよ!」
バーサーカーの上に展開された障壁により、次の攻撃も防がれた。>>742
「さすがですね。狂気に満ちていようとも恐ろしい程に理知的だ」
事実、凶王は猪突猛進に跳んでいるのではなく、追撃に来たアーチャーをいなしつつ、前方で嵐の攻撃を放っているファラオにも対処しているのだ。
伊達に千年もの間、イランを恐怖で支配していないのだと実感させられる。
「ですが、これ以上は行かせません!」
ファラオ一行が潜伏している屋敷までの距離が、刻一刻と縮まっている。
これ以上の侵攻を阻止すべく、アーチャーは再び大弓の弦を力強く引いた。「なにあれ」
アスパシアの礼装、アキレウスの盾の“世界”という概念を利用し、神造宝具という最高峰の呪体として加工した天球図がアサシンを察知した。
実体化したり、気配遮断を解けばその突然現れる・英霊の強大な魔力密度からすぐに感知できる。もっとも仮にも世界概念を収める礼装だ。明確な歪みが発生するためにピンポイントを指定すれば良いにしても一都市に焦点を合わせるのは集中力を必要とする。
拠点でしか使えない仕様だと考えていい。
「これが英霊……? 想定よりも内包魔力量が高くないかしら」
「確かに俺を基準とするなら、正面衝突なんてあり得ない数値だ。神代……いいや神話体系の英雄か」
征服王イスカンダルの護衛官としてすぐそばで見てきたぺウケスタスもあまりの差に神妙となる。
「こんな化け物が後、5騎もいるの……?」
「……」
「ライダー、これからの作戦を伝えるわ」
「ああ。何か良くない予感がするけどね!?」
「自分たちが強者だと思っていたから日和見する予定だったけど、そうも言ってられない。聖杯の居場所が分かり次第狙うけど、最高の形なのは乱戦状態で掠めとる事。それが出来るのは――」
「最速のアキレウス……!」
『勇者としての義務を果たせ。仮にもアキレウスを担うならな』
最速の英雄の言葉が重く圧し掛かる。
(勇者としての義務か……!)>>744
というわけで時系列的にはこの後に聖杯の位置の情報提供があり
聖杯を奪取できる距離(西地区)まで移動
天球図で確認できるサーヴァントが聖杯に近づいたら同時に行動する予定です(魔力ジャミングや気配遮断等で行動された場合は出し抜かれる)さてと、stage投稿しますね。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
私は今、サーヴァントを召喚しようとしてる。
『WASP』でも話題になっていた『Fate/Glit stage』……その参加者の一人に、私が選ばれた。
『WASP』の皆で試しに送ってみようってなって、せっかくだからと私も出してみて、そしたら何故か私が選ばれちゃった。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
魔法陣に魔力が流れ込んでいく。
実験で治癒魔術に偏ってしまった魔術回路でも、問題無いみたい。
それとも、私が参加するのを知ったお姉ちゃんが調合した、この魔法陣を書くのに使った霊薬のお陰かも。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
触媒はビーハイブの一室に保管されてたものの一つ。
神羅さんに好きな触媒持ってって良いって言われて、選んだのはこの綺麗な貝殻。
神代のものなのは良くても、どの英雄が召喚されるのか解ってないらしいけど、一目見て気に入ったからこれにした。「誓いを此処ここに。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷しく者。」
恥ずかしいから神羅さんにだけ話した願いは『WASP』が、皆から実験の影響を取り除けるだけの技術を得ること。
いきなり能力が消えたりしたら皆困っちゃうし、皆を治すにはこれが一番良いよね。
本当にそこまで出来るのか解んないけど、やってみないと始まらない。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
魔法陣がより強く光を放つ。
眩しい光と、強い風のように流れる魔力で目を開けてられない。
ただ、凄い力を持った存在が現れたのが解った。
「サーヴァント、アサシン……スキュレーよ。私みたいなのを召喚したのは貴女?」
目を開けると、腰まで金髪を伸ばした美人なお姉さんが居た。
しかも、お胸が大きくて、スタイルが良くて……というか、その……服が……。
ビキニみたいなの着てて、その上から白い上着を羽織ってるけど、シャツのボタンを途中までしか止めてないかのような切れ込みがあって、おへそやお腹が見えてて、というかそもそも上着が透けてて……。
「あ、あわわわ、ふ、服買わなきゃ!?」このまま通り歩いたら大変な事になっちゃう位、その、セクシーというか……。
私、女の子だけど、こうしてる間も見とれてるし……いや、お姉ちゃんやマグダレーナさんみたいに女の子同士なのもあるけど、今は関係なくて。
そう混乱してると、私のサーヴァント、アサシンの笑い声に止められた。
「まさか私を召喚して、そんな反応するなんてね」
そ、そういえばアサシンが名乗ってたスキュレーって、悪い魔女に嫉妬されて怪物にされたニンフで……あれ、怒らせちゃった?
アサシンほったらかしにして見とれてたし、変な事口走っちゃったし……あ、謝らなきゃ。
「いや、マスターが子供だなんて思わなくてうっかり魅了効果を切り忘れてた私が悪いんだけど……お陰で安心出来たわ」
あれ、怒ってない?
何時の間にか、アサシンから目を放せるようになってるし……えっと、どういう事?
「宜しくね。可愛らしいマスターさん」これが、私とアサシンの出会い。
考えてた自己紹介は全部忘れちゃったし、そもそも初対面からぐだぐだだったし、結局アサシンの服を買ったらお財布(子供なので給料の殆どは無駄遣いしないように管理されてる)が寂しくなっちゃったけど……仲良くやってけそうだから大丈夫。
うん、私達ならきっと出来る。「ミッションと言えば……」
ふと思い立って、バッグから大会用の端末を取り出す。そこには『ミッション達成』のメッセージが届いていた。
ユージーン達と同盟を結べたからでしょう。
「お、ミッション達成か。ーーーなんだ、俺達との同盟が条件だったのか」
背筋が跳ねる。ミッションの内容までは話していないのに。
「し、心臓に悪いので勝手に心を読まないでくださいまし!淑女の秘め事を盗み見るなんて、本来なら決して許しませんのよ!」
「あー、悪い悪い。勝手に読まないように善処するよ」
「……そうしてください。それと、一度ここで解散したいのだけどよろしくて?」
「ん?まあアンタがお望みならそうしてもいいけど、どうしてだ?」
「それこそーーーひ・み・つ、ですわよ」
◆>>751
ユージーン達が帰ってしばらく。セイバーと共に街へと繰り出す。人通りが多く、活気のある街だった。
「賑わっていますね。ところでマスター。街へ出て何をなさるおつもりですか?」
「ふふ、特には決めていませんわ。昨日から色々ありましたから、少し気分を変えたくなっただけですわ。ねえセイバー。貴女はどこか行きたいところはありまして?」
「そうですね、それならーーー服、でしょうか」
「あら、服に興味がありますの?」
そう聞くと、セイバーがパッと顔を輝かせた。
「ええ、現代のファッションにはとても心惹かれていました」
「でしたら行きましょう!ふふ、わたくしも楽しみになってきましたわ」
◆
「あの、マスター。一体、何をなさるおつもりでしょうか?」
セイバーが躊躇いがちに問う。わたくしと彼女は今、街の服屋に立ち寄っていた。そしてセイバーの持つ買い物カゴには、何着もの服が積まれている。
わたくしはと言うとーーー
「これとこれと、これも似合いそうですわね。あ、これも良さそうですわ」
お店の中で、セイバーに着せる服をひたすら探し回っていた。
「うふふふふふふ……貴女を始めて見た時から、インスピレーションが溢れて止まらなかったのですわ!貴女とても綺麗なんですもの、着飾らせたくなるのはしょうがないことですわよねー」
「ありがとうございます。しかしマスター。少し怖く感じますよ、マスター?」
「あら、そんなことありませんわよぉ?」
一通り店内を駆け回り、目ぼしいものを発掘し終えた。後はお待ちかね……
「試着タイムですわ!さあセイバー、絶対に似合いますから、着替えてくださいまし」>>752
「マスターがそう仰るなら……」
試着室にセイバーを案内(れんこう)し、選んだ服を着させる。
赤、青、ピンク、パープル、ベージュ、白に黒。シャツにブラウス、パンツルックにスカート、ワンピースーーーカーテンが閉まり、開く度に千変万化する彼女を見ていると、まるで四季折々の花を愛でているように感じる。
細く、しかし活力を纏う彼女の手脚。綺麗なくびれを持つ腰つき。どれも一級品で、こちらも服の選び甲斐があるというもの。
(いいですわね……。お姉様も、「女の子は幾つになっても、着せ替え遊びが好きなのよ」と言っていましたけれど、本当ですわね)
途中からはセイバーもノって来たのか、ポージングなどもしてくれるようになった。
ーーー思えば、この時のわたくしは浮かれていたのでしょう。
選んだ服も打ち止めになるという頃、セイバーが困ったような声を出した。
「ん……これは……」
「セイバー?どうかなさいまして?」
「背中のファスナーが、上がら、なくて。……手伝ってもらえないでしょうか?」
「あら、それは大変ですわね。ええ、今行きますわ」
カーテンを少し開いて試着室に入る。中はやや広く、2人が入ってようやく手狭に感じる程度だった。
そして姿見の前、ワンピースを纏ったセイバーが、背中を向けて待っていた。透き通る様な肌が無防備に晒され、思わず目を奪われる。
「では、申し訳ないですが、お願いします」
「え、ええ。それでは失礼」
セイバーの声で我に帰り、一言断ってファスナーに手を掛ける。しかしーーー
「あら、サイズが、合っていないの、かしら」>>753
わたくしが手伝っても中々上手くいかない。しばらくファスナーと格闘し、ついに諦めるしかないと結論した。
「残念だけれど、それは着れませんわね……」
「仕方ないですね。気に入っていたのですが」
そう言って、着ていたワンピースを脱ぎ始めるセイバー。そしてーーー
「貴女……着痩せするタイプでしたのね」
北欧の雪の様な白肌と、服の上からは想像できなかった膨らみ。たゆん、という擬音が聞こえそうな柔い胸に、同性のわたくしまでクラリと来てしまう。
「ふふ……見惚れてしまったのですか、マスター?」
「へ!?」
耳元から聞こえた美声に、思わず素っ頓狂な声を出してしまう。……淑女にあるまじき行いですわ。
「いいんですよ、マスター。貴女の目を奪えたことを私は……そうですね、嬉しいと感じます」
彼女は微笑んでそう言った。その微笑みに当てられて、カチリ、とわたくしの何かがONになった。高揚や何やらで冷静ではないわたくしの頭が何を導き出したのか、深くは言わないでおきましょう。わたくしと、彼女の名誉の為に。
「正直、妬けてしまいますわ。わたくしだって、自分の身体には自信があったのだけれど、上には上がいるものね」
「そこまでお褒めいただけるなんて……少し気恥ずかしくなってしまいますね」
「本音ですわよ。ええ、本音ですから……その美しさ、少しわたくしに分けてくださらない?」
「え、あ、ふふ。くすぐったいですよ、マスター。あ、やめーーー」
ここからしばらく、2つの笑い声が響いたことだけは言っておきましょう。
◆
「ごめんなさいね、セイバー。さっきはその、何かが変になっていましたわ」>>754
所変わって喫茶店。わたくしは顔を赤くしながら、前に座るセイバーに謝っている。
「いえ、気にしないでください。私は色々な服が着れて楽しかったです。それにーーーこれを買ってもらいましたし」
彼女が今着ているのは黒のワンピース。シンプルなデザインだが、彼女の白肌と見事にコントラストを描いている。そして、彼女の持つ凛々しさと華やかさを見事に引き立てている。
セイバーが、目の前のケーキを口に運ぶ。口に含んだ直後、満ち足りたような表情を浮かべるのが微笑ましい。
その顔を見ていて、ふと疑問に思った事を聞く。
「貴女、とても美味しそうに食べますわね。いえ、今だけではありませんわ。色々な事を楽しんでいるように見えますわ。何か理由があるのかしら?」
ふっと、セイバーが何かを思い出すような、遠い何処かを思うような顔をする。
「ええ。私は人間が好きなんです。ワルキューレは元々、オーディンによって創り出されたもの。人間とは似ていますが違う存在。ですが私にとって、人間はとても心惹かれ、憧れる存在でした。その人間に、少しでも近づきたい、彼ら彼女らの作り出すものをもっと見たいーーーそう思っていたんです。だから、私にとって現代(ここ)は、素晴らしい場所です。街を歩く人々の嬉しそうな顔、多種多様で色とりどりの服、美味しいケーキーーーこの世界が、私は好きです」
感慨深げに語るセイバーは、美しく、眩く、わたくしの目に焼き付いた。そして、この世界が好きだと語る彼女を見て、もう少し、彼女に近づきたいと思った。
「ねえ、セイバー。これから2人の時は、"ヴォル"って呼んでもいいかしら?」
「ヴォル?」
「ええ。ヘルヴォルを縮めてヴォル。可愛らしいと思ったのだけれど」
「ーーー是非」
その後しばらく、ゆったりとした時間が過ぎて行った。>>750
以上です。
マスターがああだったので、思わず(元々そんなにない)毒気が抜けたスキュレーでした。>>755
以上です。ルキウスさん、大変お待たせしました。アサシンとは、この喫茶店の帰りに遭遇する感じで。時間は午後4時くらいのイメージです。市街地から帰ったランサーは何処かやりきった様子で箱を抱えていた。
赤いリボンで飾りつけられた白い箱からは香ばしい匂いが漂っている。
なんでもコレはセイバーから贈られたものらしく、この友好の証を得るまでに紆余曲折があったのだと言うではないか。
ならばやる事はただ一つ。
箱には魔術の香りも毒の刺激臭もしない、純粋に善意を以ての贈り物だと判断できる。
自分が床に伏していた間に何があったのか、箱の中身を摘みながら聞くのも悪くない。
「…成る程、自分が休んでいる間にそんな事が」
情報収集に行ってくると見送ったまでは把握していたが、まさか数時間もの間にこれ程までに事態が動いているとは。>>758
「偶然遭遇したセイバーと協力して、魔術による飛行機事故を未然に防いだ。
その後直ぐに教会に駆け込んで……んで同盟を……」
色々と事態を反芻するも中々思考が定まらない。
考えがまとまらないついでに、手元のパイを口に運んで味わう事にする。
中に入ってたのはイワシのパイだった。イワシが丸々パイに包まれた斬新かつ温もりのある外見は、見る者に強烈なインパクトを与える。
さて肝心な味の方だが────悪くない。いや寧ろコレは美味の分類に入るのではないだろうか。
パイ生地のサクサクの中にしっかり熱を通ったイワシのホクホクがハーモニーを奏で非常にbene(良し)である。
また丁度いいさじ加減の塩味が食欲を増進させる、あまりに塩辛い食べ物は得手ではないがこの位なら好ましいと思える。
やばい、これは癖になるヤツだ。
「────で、肝心の同盟の方ですが……イコマ?」>>759
ランサーが怪訝な顔で見つめてくる。
「あ、ああ悪い。セイバー陣営に同盟を持ち掛けられたんだよな。
……ランサーとしては信頼できる連中だと思えるか?」
「私が接する限りでは、邪気は感じられませんでした。彼等はマスター、サーヴァント共に強力ですが気質は直線的…権謀術数の類は好まない性格だと思います」
ランサーは数時間前、セイバー陣営と同行した際抱いた印象を思い出すように語っていく。
ランサーの言葉を介してでしかセイバー陣営のイメージを知る事が出来ないが、少なくとも嫌な連中でないことは窺えた。
セイバー、聖杯戦争に於いて最優の位とされる剣士の英霊。
彼等と同盟を結べば、汚い話大きな戦力増強が期待出来そうではあるが、果たしてどうしたものか。
「まぁじっくり考えれば良いさ、何もこの場で即決しろという話でもないんだからね」
今の今まで無言を貫いていたシスカ・マトイス・オルバウスが口を開く。
「考え抜いて、悩み抜いて…これだ!と思う答えに進むといい。それが君が信じる、君だけの道になるのだから────汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならんってね」>>760
「………そう、だよな」
シスカの言う話は迂遠で理解に時間が掛かる事も多いが、今の発言は要するに「思ったようにしたら?」って意味合いなのだろう。
果たして自分はセイバー陣営と同盟を組みたいのか否か、それをじっくりと自分の頭で考えることにしよう。
誰かの意見を参考にするのは楽なんだろうが、それでは後悔を生んでしまう。
これは自分の為の戦い、なれば後悔は可能な限り削ぎ落とすのが最良のように思えた。
─────もし俺が人間だったのなら、こういうときどう考えて、どう悩むんだろう?
そんな、考えても仕方ない事をぼんやり考えながら。
「────あ、シスカもコレ食べる?」
「……いや、遠慮しとくよ。こう見た目にクルものがあってね」
「………?見た目なんて、腹の中に入れば同じだろう。シスカは可笑しなことを言うな」伏神ランサー陣営はこれにてひと段落。
九終投稿します
>>763
「知り合いか?」
「まあな。でも今の反応を見るに俺の会ったやつとは違う世界の隠神刑部らしい」
違う世界、所謂平行世界というもので同じ真名のサーヴァントでも成り立ちが異なり中には性別まで違う者もいるらしい。だが
「そうでもないらしいぞ」
ユージーンがキャスターをチラ見する。
「ほう…お主、儂の内面を見透かしたか」
ピリッと空気が痺れる感覚が周囲に広がる。許可なく内心を覗かれたことに不快感を露にしたキャスターの殺気にも似た威圧である。
ユージーンはそれに一瞬顔を顰めるがすぐに平静を取り戻す。
「ああいや、そんな深くまですぐ読める訳じゃない。ただ「そうでもないんじゃがのう」って思ったのが見えただけだ。流石にそれも嫌と言われたら悪いけど対策のしようがない」
「……ふん、まあよい」
そう言ってキャスターは放っていた威圧を収めた。>>764
「はっ!なんだよつまらねぇな。仕掛けてきたら狸汁にして喰ってやろうと思ったのによ」
「その難儀な性質は相変わらずのようじゃな」
そんなやり取りをしているサーヴァントを他所にユージーンは初海の方へ目を向ける。
「そう言えばあんたも心を読めるんだってな」
「心を読む…そうね、他人からはそう見えるかしらね」
「あーなるほど、そういうやつか」
ふむふむ、と初海を見続けるユージーン。互いに文字通りの腹の読み合いをしているため話がスムーズに進む。
「あのさ、俺自分と同じような能力持ってるやつと会ったらやりたい事があったんだけどさ。表層意識をリアルタイムで観る事って出来る?」
「出来なくはないわね」
「ならさ、『こうして言葉を出さずに会話とかしてみないか?』
「ふふ、なにそれ。でも『いいわよ、乗ってあげるわ』>>765
『それにしても何でこんな事を?他の人に聞かれたら不味い話でもするの?』
初海がそう思いつつ黙って首を傾げる。
『いやー、こうやって黙ってても以心伝心って何かカッコよくね?』
「はい?」
思わず声が出る。それほど素っ頓狂なことを口走ったのだ。
『いやな、俺だって魔術師然とした側面を除けば普通の大学生なんだぜ?それなりに傾きたいもんなんだよ』
『はあ…』
呆れ半分といった感じで初海が首を振る。対するユージーンはずっとやりたかったことが出来て感無量といった様子である。
『さて、それはさておきだ。あんたならもう読めてるんだろ?俺が参加する理由』
ここまでで一旦パスします。九終イグゾー
>>767
宗美樹は職員室にて、一人小テストの採点をしていた。
今日は彼の教える教科のテストで、生徒達の点数はまあまあというところである。樹と生徒達の関係はお世辞にも良好とは言い難いところではあるが、教えた分きっちりと彼らの成績に反映されている点は、樹がほかの教師陣から一目置かれている。
「宗美先生、お一人ですか?」
不意に声をかけられ、誰だろうかと相手の顔を見上げた。
にんまりと微笑む細身の教師。学校内でも年若く、生徒達の間でも親しみやすさからか高い人気を誇る七星誠だ。
「七星先生……僕に何か?」
「いえ、少し気になって。小テストですか?」
「はい。皆、よく出来ています。良い子達ですよ」
はにかむ樹ではあるが、対応する誠の表情は優れない。
樹と生徒の会話を何度か目にした身からすれば、樹が「良い子」などという言葉をよく言えるな、と思ってしまう。
「手伝いましょうか?」
「そんな、良いですよ。僕のクラスの仕事ですし、何より僕自身が納得できる形でないと」
「そう、ですか……。でもほら、大会もあるでしょう?少しは休んでも……」
樹はまたはにかみ、
「マスターだからとか、そんな理由で仕事を放棄する訳にはいきません。本業は教師です。それをほっぽり出すなんて……」
聖杯大会、九終島を舞台に繰り広げられる戦いに樹が参加する事が発表された時、学校の人々は大いに慌てた。
生徒会長の九重海音に続いて、教師である樹……一つの場所からマスターが二人排出されれば、慌てもする。
けれどやはりと言うべきか、周囲の関心事は海音の方であり、樹はあまり話題に出る事も無かった。むしろ今までよりも周囲との溝を確かに感じられた。
結局のところ、宗美樹と言う男の人生は現時点で打ち止めという事なのだ。>>768
今朝は生徒達に黒板消しを叩きつけられたし、黒板にもたくさん落書きをされた。童貞などと揶揄もされたし、採点する小テストにも悪口に近い落書きもある。
それでも樹としては特に構わなかった。自分の事など誰よりも理解している。揶揄されるのも仕方ないと思えるほどに自分は地味で、童貞で、地味なのだ。
「……よし、終わり。七星先生、僕はもう帰ります。やるべき事は大体やっておきましたので」
「あ、はい……お疲れ様です」
誠に見送られながら、樹は職員室を後にする。階段を降りていると、バレー部の女子生徒があがってくる。すれ違いざまに生徒の手が樹の手とぶつかり、カバンが階段を転がって床に叩きつけられてしまった。
「あ」
「そ、宗美先生すみません!」
慌てて女子生徒はカバンを拾い上げて、樹へと突き出す。その顔をよく見てみると、樹のクラスの生徒だった。
「君は……」
「私、これで!」
ごめん、と言おうとするよりも早く、女子生徒はさっさと階段を駆け上がり見えなくなった。なんだったのか、と首を傾げながら樹は昇降口へと降り、学校を後にした。
「さっきの女、ありゃオマエに惚れてたぜ」
「何の根拠があってそう言える」
「ああ?目だよ目、オマエを見る目だ。オレ様には分かる。人間っつーのはなんでも目と顔に出るんだぜ?」
「興味深い話をどうもありがとう」
学校を後にする樹の傍らには見慣れない異邦人の姿があった。赤い瞳、ブロンドの髪を豪快にオールバックにした青年、アサシンは犬歯を覗かせて、カカカと笑う。
「テンション低いじゃねぇかよぉマスターよぉ。あのガキに言われた事にイラついてんのか?」
樹はアサシンを一瞥し、苦虫を噛み潰した様な顔をして顔を背ける。彼は霊体化を嫌がり、実体化している方が良いと言って聞かなかった。樹を守る為、などと御託を並べていたが、樹にとってはアサシンの全てが警戒するに値するのだから。>>769
「アサシン、彼女が僕に言った言葉に間違いはない。僕らは敵だ。仲良しこよし、なんて事はあり得ない」
「……ぷっ、ふふふ」
何がおかしいと言うのか、アサシンは笑いをこらえきれずに噴き出した。
「ふ、ふふふ……ひひひ」
「何がおかしい?」
「オマエ、あのガキの言いたい事全然わかってないのな。あの女はな、オマエの事なんざほぼ眼中にねぇぜ」
ぴくり、と樹は思わず肩を震わせ、アサシンへと顔を向ける。言葉の意味を問いただそうと、その反応自体が自分を晒け出していると思わずに。
「……何が言いたい」
「あの女は、オマエを敵になんて思ってやしねぇさ。むしろ、『いてもいなくても大して変わらない』とか見下してるんだろうさ」
それを胸を張って否定する事が、樹は出来ない。そんな事など無い、と否定する事など、出来ない。
……きっと自分は、九重海音にとって……。
「……アサシン、二度と僕の前で彼女の話をするな。彼女は敵だ。敵なんだ」
樹は声を震わせながら、アサシンに必死に言い返す。情けないくらい弱々しい声で、自分に語りかける様に。ここはフランスのとある町、革命軍の隠れ家の1つである塀に囲まれた集落
戦場の音は聞こえないほどの遠く。穏やかな昼下がり、門の前に立つ2人の衛兵の片割れが大きな欠伸をしたところだった。
「暇だな」
「ああ、この辺だと王国軍も来ないだろうしな」
戦場からも遠く、王国軍の目も届いていないこの場所では、衛兵という仕事はあまりにも暇だ。
小太りの男と少し痩せた男の2人組の衛兵は、朝からずっと続く警備の仕事に少し疲れていたところだった。
何か適当な話題を見つけようとしたののか、片割れがボソリと呟く。
「なあ」
「どうした」
「この戦争っていつまで続くんだろうな」>>771
太った男の問いに対し、痩せた男は気だるそうに返す。
「さあねえ、英霊って奴らがぞろぞろ湧いて出てるんだろう?奴らそろって戦きちがいだと聞くぜ、暴れられればいつまでも暴れるんじゃねえか?」
「ばか、さっきライダー様が帰って来られたんだ。もし聞かれてでもしたら、俺たち明日は獣の餌だ」
冗談にすら聞こえない冗談を叩く様子に小太りの男は焦ってそれをたしなめる、その様子が面白く思えたのか、痩せた男はさらに続ける。
「もしくは最前線の槍衾だ。お前は肉が柔いから重宝されるぜ」
「おっかねえ事言うなよ、…俺たちも、そのうち地獄みてえな戦場に駆り出されるのかねえ」
「の方じゃカエルの化け物が出たんだろ?こんなところで暇を潰せて俺たち幸せもんだぜ」
そう嘯きながら衛兵はため息をつく。>>772
軽口を叩いているものの、それで戦場への恐怖がなくなるわけではない。
本音を言えば今すぐフランスを出てどこかに逃げ帰りたい。そんな彼らを繋ぎ止めているのは彼らのリーダーの存在であった。
「まあでも、大将がこっから動けねえんじゃなぁ」
「あの人は真面目ぎるんだ。トップに立つなら清濁併せ持つくらいの度量がねえと」
「ああ、まあそんな人だからついていこうってなるんだがな」
「ちげえねえや」
ははは、と顔を揃えて笑う。
「なあ、この後酒でも飲みに行こうや。不味い酒でもないよりはマシだ」
「ああ、そうだな。日頃の憂さ晴らしだ」
『いいですねえ!わたくしも御同伴に預かっても?』
「あん?」「ん?」
突如、二人の会話に割り込んだ大声に、衛兵らは振り向く。
そこに立っていたのは、夜空を切り取ったような藍色をしたローブに身を包んだ、ボサボサの髪の男だった。>>773
「なんだおっさん。ここに何の用だ」
「酔っ払いか?こんなところにいないで、さっさと家に帰った方がいいぞ」
怪訝な顔をしながら追い返そうとする衛兵をさっと避け、男は一礼をする。
「おや、申し遅れましたかな。わたくしはカリオストロ。ただのしがない術師でございます」
術師を名乗る男の発言に、衛兵はさらに怪訝な顔を深める。
「カリオストロだぁ…?バカ言え、「首飾り事件」のカリオストロはとっくに捕まったって評判だぜ。すぐバレる冗談を言うもんじゃねえ」
「なんと!いやはや捕まってしまったとは。なんたる不運!なんたる不幸!ああ悲劇なるやもう1人のわたくし(カリオストロ)!
おおカリオストロよ!捕まってしまうとは情けない。仕方ない。ではわたくしがその役目を引き継ぎましょう!
…というわけでわたくしが今から真・カリオストロです」
という術師に、衛兵は呆気にとられる
「…はあ」
「…どうやらこのおっさん、本気で頭がいかれちまったらしい。奥に行って水樽で持ってこい、ぶっかけてやれば目も覚めるだろ」
「おう、大将に報告は?」
「言わなくていいだろうさ『よくわからん浮浪者が来ました』なんて、いちいち報告していられるか」
「いやいや報告しましょう!『真・カリオストロが革命軍の長、ロベスピエールに謁見しに参ったぞ!と!』」>>774
「な…!?」
突如割り込んだ術師の口から出たその名前は、この場所にいる革命軍以外のものは決して知るはずのない名前。
動揺した衛兵の顔を見回し、真・カリオストロはうんうんと満足げに頷く。
「その顔を見るとどうやら大当たり、ロベスピエール殿はここにおられるようですな。日暮れ前に見つけられて良かった、夜になったら北風が寒いですからなぁ」
呑気そうな男に二人の衛兵は即座に銃を向ける。
「テメエ…まさか王国軍の間者か!」
「動くなよおっさん、手を組んで頭の後ろへ!」
しかし男は銃に臆する事なく、むしろ馬鹿にしてるとさえ思えるほどに悠々と話し続ける。
「おや、これは歓迎されてはいない様子。もしやわたしはピンチなのですかな?またしても獄に繋がれる予感?ううむ、それはいけません、いけませんとも。あの時もわたくしは無実でございました。しかし疑いを向けられては否応にも時間を食われてしまうもの。
…というわけで、正面突破と参りましょう☆」>>775
術師は掲げていた手を握りこみ、ぱっと開く。
開いた手にいつのまにか入っていたのは、親指大のルビーとエメラルドの宝石。男はそれを手首のスナップで上空へと投げ上げた。
「うお!?」「なんだ!」
男に警戒を強めていた彼らは、上空へと飛び上がったソレを咄嗟に目で追ってしまい…上を向いた衛兵の瞳を赤と緑に煌めく光が捉える。
「あ…」
上を向いた衛兵の目から光は消え、銃がするり手から落ちる。
ぱん、と術師が手を叩く音と共に、2人の男は糸の切れた人形のようにその場に座り込んだ。
その様子を見て術師は満足そうな顔を浮かべる。
「安心してください、簡単な暗示なので一刻程で覚めるでしょう。しかしなんの罪もない人々を手にかけてハイさよならとなればわたくしも忍びない…というわけで、これは観覧料として一つ」
衛兵達が眠りこけた様子を確認した術師はそう言って男は先ほど投げ上げた宝石を兵士達の足元に置き。その代わりとばかりにベルトにかかった鍵束を外す>>776
「さて、私はこれから用事がありますので…さようなら、働き者の門番達。」
そうして守る者のいなくなった扉を開け、カリオストロは鍵束を指先で回しながら悠々と革命軍本部への侵入を果たしたのであった。アメリカ異聞帯投稿します!
全長7メートルはあるであろう虎。それが六匹。その存在感と内に秘めた神秘がこの虎の脅威と恐ろしさを引き立てる
英霊の顔を認知すると彼らは襲いかかった!
二匹の虎が白雪姫に襲いかかる。だがその牙が届く前に、一匹は首を斬られ、もう一匹は返す刃で心臓を凍らされた
二匹の虎がアインシュタインに襲いかかる。だがその牙が届く前に、彼女の輪郭がブレ、瞬く間に二匹の虎は穴だらけになりその場に倒れた
二匹の虎がモーシェに襲いかかる。だがその牙が届く前に、彼が取り出した魔術書達が煌めき、一瞬の光とともに虎は二匹とも焼け落ちた
あっという間に虎は制圧される。しかし倒した彼らの顔はあまり優れない>>779
『手応えがなさすぎる』
あまりに見掛け倒しだったのだ。神秘と力が釣り合っていないような……………
改めて倒れた虎達を見る。しかしピクリとも動かない。杞憂だったのか?白雪姫らは警戒をとき、シャドウ・ボーダーに入る
ちょうどその時大嶽丸が戻ってきた。米俵のように少女を担いでいる
「もっと丁重に扱えないのか?」
「そうは言ってもよ学者殿。この嬢さんまじで足速くてよ?俺も本気を出さなきゃならなかったんだよ」
その言葉を聞き驚く藤丸。大嶽丸の敏捷はAランク。その彼が追うのに苦労するとは……………
少女は椅子の上に寝かせられた
いつ目覚めるか分からないが、目覚める前の間、彼女に聞くべきことを相談するカルデアであった>>780
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……………ヴェハハハハハハハハハ!そーこにいたのか、カルデーア」
ウエスト・サイド・ステップを刻みながらカルデアの姿を捕捉した虎狩りのケイトー。彼の視線は虎と一体化しているのだ
カルデアの姿を捉え、『着弾』しようとする……………が、その時一匹の蚊が飛んできた。同じ傷持七豪集の「黒幕の4人目」が放った使い魔だ。虎狩りのケイトーはその蚊を潰す。バラバラになった破片が四辺(スクリーン)となり、他の同僚を映し出す!
「うーん、どうしーたんだ、『黒幕』殿。これーから拙者ーが撃ち取ろうーというのに」
「すまないねぇ、『虎狩り』さん。傷面(スカーフェイス)様がパニックを見たいって言うもんですからねぇ。貴方の虎、そのまま襲わせることできませんかねぇ?」
この命令は「お前が出ると主人が楽しめない」と言っているようなものだ。だが虎狩りのケイトーは不平にこそ思うが逆らう事はない。それが彼(ケイトーノニンゲンセイ)だからだ
「……………了ーー解。なーらば、虎は合体しーたほうがーいいね。拙者ーはそっちに帰るーこととするよ」
そう言うと虎狩りのケイトーは画面を注視。そして光の速さで画面内の施設に『着弾』したのだった>>781
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
眩しい、意識を覚醒させながら思う少女。金髪をポニーテールにして白縁メガネをかけている彼女は目をしばしばさせた
目の前には先程目があった少女がいる。オレンジ色の髪の毛をまとめ、赤縁メガネをかけている。そしてその胸と尻はウォーターメロンやパンプキンを彷彿とさせるくらい丸々と大きく育っており、プリンやゼリーのような柔らかさがありそうだ
ぼうっと少女は考えていたが声を掛けられる
「貴方、名前は?」
攫っておいて聞くのか?(まあ自分に非はあるが)と思う少女だったが、豊満な少女がかけているネックレス……………そのマークを見て目を丸める
(この人たち"カルデア"なの!?)
まさか"自分の探していた人たち"が目の前にいるなんて思わなかった。彼女は衝撃のあまり口を噤んでしまう。そして冷や汗がダラダラと垂れてきたのだ
(ちくせう、せっかく良さげな装甲車あったからマーキングしてたのに、まさかカルデアだったなんて!)
もしかしたら"協力"してくれないかもしれない。そう思うと心の底からゾッとしてくる>>784
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
爪が届く寸前、なんとか方向転換するシャドウ・ボーダー。全速力で走るが城はまだ追ってきている。周りを破壊しながらも追ってくる城。それはパニック映画にも匹敵する恐ろしさと一種の滑稽さがある
……………無論カルデア側は死に物狂いだ。追いつかれたら餌になるだけなのだ
呪術や魔術、氷なども飛んでいくのだが、城の質量に対しては微々たるもの。幻覚も全く通用しない
「あー、畜生。俺は食べるのは良いが、食べられるのはノーセンキューだぜ!」
「嘆いているならさっさと雨振らせろ!」
「ママーッ!!助けて!(錯乱)」
「マスター落ち着け!私はママじゃない!ええい、抱きついてくるんじゃない!」
「諸行無常とはこの事か………」
「いやそれは違うと思いますがね!」>>788
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アメリカには地下世界が広がっている。これは虚構ではなく真実だ。かの有名なアメリカ陸軍人のジョン・クリーブス・シムズもそう言っていた
「しかしこんな広い空間があるなんて知らなかった」
アインシュタインは驚嘆の声を漏らす。当然だ。彼女も生前行ったことがある由緒正しい博物館の下が"武器庫"になっているなんざ思いもよらない事だろう
他のカルデアメンバーも感嘆や驚嘆の声を出す。そしてあらかた見た後竜王 リンドヴルムが尋ねた
「さて……………色々と聞きたいことがあるからな。質問いいか?」
「ええ、構いませんわ」
そういうのは幼女だ。彼女のお陰で助かったが彼女の正体は何も分かっていない。彼女は火薬箱の上に座ると自己紹介を始めた
「はじめましてカルデアの皆さん。私は"リオナ"。ここ"モールド・オブ・メトロポリタンの管理者で叛逆者(レジスタンス)のリーダーだわ」>>789
その言葉に騒めく。藤丸は質問を切り出した
「何故私達がカルデアだって知ってるの?」
「そのペンダントがカルデアの物だからっていうのはダメですかわ?」
「いやそもそもこのマークを何故知ってるのよ?」
「リドリーさんから教わったんですわ」
そう言いながらリオナは酒タバコ(紙に酒を浸し丸めて火をつけるタバコ)に火をつける
「流石に早いんじゃないか、嬢さん?」
「お気遣いありがとう。でも111年の人生じゃ楽しみもこれくらいしかないのよ」
混乱は山積みだ。彼女はレジスタンスを名乗っている。1人しかいないが。クリプターの1人リドリー・フォーサイトと恐らく面識がある。そして彼女の年が本当だとすると明らかにおかしい。一つずつ消化するべきだろう
モーシェはまず一つ聞いた
「そのリドリーはリドリー・フォーサイトの事で間違いないか!」
「ええ、そうよ」
「何故君と面識がある!」
「私たちと協力して打倒スカーフェイスを目指していたからよ」
「ならば何故この場にいない!」>>792
終わりです!『───あら、言っていいの?遠慮ないわよ、私』
自分のことは、自分の価値観は人とかけ離れていることを理解している。その上で、色々と世渡りをしてきた分、そういうことはわかっている。
『大丈夫だ。むしろ俺は隠し事をする奴が嫌いだからな』
数秒、言葉を発さずにずっと彼を見つめる。
生まれた時からセカイはひどく息苦しかった。
何もかもが白色で、誰もが自分の心だけは黒く塗り潰していた。嘘ばかりで塗り固められた真実を尊ぶ世界。どうしようもなく、どうしようもない世界。
───それでも良かったのに。ずっと、そんな鳥籠で生きていくしかないのなら、そうであれと思えたのに。
『そう。じゃ、遠慮なく。親友のため、お金が欲しい、本当にそんな願いのために参加したのね』
『ああ。そうだ。───だから、別に俺はその為に何をしたって構わない。何だってしてやろう』───他人をいくら消費しようが構わない、と?
───当たり前だろ。ま、今は約束でしてないけどな。
───彼が、あなたにとって何よりも眩しいから?
───ああ。あいつは、あいつだけが俺の世界でくすんでいなかった。
真っ直ぐにこちらを見る目。友人を何よりも深く、何よりも大事に想っている顔。
『そう。……なら、彼が歩むのは茨の道だってこともわかってる?』
『だろうな。嘘をつけない、自分の気持ちを偽れない、なんていうのはこの現代社会では致命的なんてもんじゃない』
気持ちを偽る気がない、偽ろうとしても偽れない。どちらにせよ、それは生きていく上で必ず生き難くなるものだ。本音と建前を使い分け、嫌なことも物申したいことも場によっては笑顔で呑み込まねばいけない世界なのだから。
『───大事にしなさい、守ってあげなさいよ、その人』
『わかってるよ。……なんか、意外だな』
『そこまで人は辞めてないつもりよ?』竜胆は、未だ一人で状況全体を俯瞰──といっても、対して苦労をするようなことではなく、何か怪しい動きや対峙している場から別の場所の変化に常に同時進行で目を配るだけの簡単な動きではあるが、まあ兎にも角にも全体を警戒しながら眺めていた。
場面その1.
ユージーン・バックヤードと水籠初梅
二人は見つめ合っているだけ。会話を挟むことも、動きによる非言語コミュニケーションを取ることもなく、ただただお互いの目をしっかりとした体勢で眺め続けているだけ。
さて、この場面をどう取るか否か。と言ってもそれ自体は直ぐに思いついた。初梅の能力は「孔」だ。人の想いをただただ受け取り続ける孔。そして、これは応用によっては簡単な会話を繰り広げられることにもなる。実際、昨日のセイバー達との争いでもその応用を扱っていたのだから。
(───瞳孔の変化や身体の動き、異常な硬直、手や足の動かし方も異常なし。恐らく会話を繰り広げているだけ。次だな)
場面その2.
バーサーカーと隠神刑部
こちらの二人はマスターの二人と違い、会話はしているし、其れ相応の身体を動かした反応もとっている。些細な癖と思わしき動きも少し判別出来るようになってきた。
「……改めて、狸。久し振りじゃねぇか」
「千数百年ぶりか。あの神秘殺し達の手でくたばったと聞いたが」
「……おう。お前はそのあとおっ死んだんだろ」
「守り続けていた民達に殺されてまったな。恩を仇で返されるとは、俺も老いたものだな!」
「はっ、違いねぇ!お前の醜悪さが露呈したんだろ!」
カラカラと笑うキャスターと豪快に笑うバーサーカー。だが、その言葉の一つ一つとは裏腹に両者とも足の運びや呼吸、目に宿った警戒心は消えていない。互いが互いに、己の言葉の裏に隠したいことを載せながら。───さて、此処からが俺の頑張りどころだ。
全力を賭してこの場面を夢想していこう。この場面を誰よりも速く読み切ろう。誰よりも速く書いていこう。超常な存在が跋扈するこの舞台で、頭しか回らない、身体しか動かせない俺が出来ることはそれだけだ。「ふふ、浅右衛門殿はおかしな事を訊く。騎士として、王に仕えるのは道理でしょう。有能であれ、凡庸であれ、無能であれ、国の礎として座につくのが王であり、それをサポートするのが家臣の役目です。
私は数多くの王に仕え、その全てに尽力致しました。故に、此度現界した第二の生においても自らの役目を全うするのみ」
──あくまで騎士としての領分を語るか。
目の前の騎士が本心であっても、“己の本心”を語っていないのは浅右衛門の眼力から見て明白だった。
しかし、言わないのであれば、こちらから何も言う事はない。彼の口から出た騎士の役割は決して、人の業が紡ぐ悪言ではないのだと感じ取ったからだ。トーナメント投稿します。
>>800
ライダーの戦槌が唸りを上げ、バーサーカーの剣と打ち合わす。
体格、経験が共に勝るライダーが優位を保つが、バーサーカーが手に取る湖光の剣(アロンダイト)に対し、ライダーの戦槌は彼の腕力に耐え得るだけの、年季の入った戦槌でしかなかった。
20合程度打ち合うと木っ端微塵に砕け散り、一瞬の隙が生じた。
その間にバーサーカーはライダーの懐に飛び込み、さらにもう一撃仕掛ける。
だが、同じ様な失敗を冒すライダーではない。
剣の腹を拳で抑え、剣の刃先を急所からそらして致命傷を避け、残る片腕に力を込め、バーサーカーの腹部に拳を叩き込む。
拳により周囲の砂の巻き起こし、それが周り一帯の視界を遮る。
砂煙の向こうにいるバーサーカーにライダーは呼びかける。
「次の一撃で決着を付けようでは無いか、バーサーカーよ!」
ライダーは両手にメイスと大剣を持ち出し砂煙煙の中に飛び込んでいった。
『双・七道征し波濤』すなわち、ライダーのいま持ちうる奥義を手に。なんとなくお腹に肉がついてきたような気がするのでふて寝します……おやすみなさい。
親睦会なんて……幾らこれが殺し合いじゃないとはいえ、酔狂なマスターも居たものね。
流石に、これは罠とは考えづらいし……。
酔狂と言えば私のマスターもだけど……自分からサーヴァントの為に服を買おうだなんて。
いや、現代の街を歩くには過激な格好なのは解ってきたわよ。
けど、子供には高い買い物なのにそうするんだもの……私が試着したのを見た店員が自ら値引きしてなかったら魅了を使ってたわ。
「その服、やっぱり似合ってる。うん、店員さんがオマケしてくれただけあるよね」
財布を心配していた彼女は何処へやら、明るい笑顔が戻ったマスター。
感情表現が豊かで、明るい笑顔を振りまいて、それでいて仲間の為に戦う強さを持ってて……短い時間だけど、マスターが良い子だって事は解る。
少し幼いけど、私の友達だったニンフ達にこういう子が居て……私が遠ざけてしまった彼女達は幸せに暮らせてたのなら良いのだけれど……。「アサシン、何か考え事?」
考え事に捕らわれ過ぎたわね。
ええ、今はマスターの事が優先よ。
「大した事じゃ無いわ。それより、親睦会楽しみね。何が食べれるのかしら」
「えへへ、けど少し緊張。こういうの初めてだし」
とはいっても、マスターは気合い入ってる。
毛先の方を結んだおさげはそのままに、お洒落なスカート姿へと着替えているし。
精一杯のお洒落をしようとする様子も含めて可愛らしい。
「私も、人の暮らしに紛れて生きた事なんてないもの。けど、そんな事より……店が見えて来たわよ」
さてと、ひとまず大会は置いといて……今は楽しむわよ、マスター。と、stage親睦会前の会話です。
ちなみに、徒歩で移動してます。無数に飛来する、弾丸。それを切り払い、着実に、かつ一歩ずつ前に進んでいくライダーは戦いの中で一つの事実を感じ取る。
(この弾丸、まさしきサーヴァント由来の魔力から生成されるもの。銃使いということは比較的近代の英霊か。それに伴い、クラスも絞れてくる。遠距離手段を使うとなればアーチャーかアサシンだが、気配が感じ取れないわけではない。よって相手のクラスはアーチャーだろう。
それからもう一つ)
生前から慣れ親しんだこの身体が感じる感覚。数多の幻想種を討伐してきたライダーのスキル。神秘殺しが告げるのであれば相手は何らかの異形の神秘を内包した存在だろう。
マスター同士の戦いに英霊の介入は無用。なるほど。その通り。戦うものには当人達の誇りがあり、そこに横やりを入れるのは無粋でしかない。何より、アーチャーを放置しておける理由もない。
防御の合間を縫った弾丸が頬に一筋の傷をつける。
「往くぞ、アーチャー。その弾幕だけで私を打ち取れると思わないことだ!」
「Ihr Korper sinkt auf den Grund des Meeres(あなたの体が海の底へと沈んでいく)、Beim Sinken, beim Greifen das Licht, das nicht erreicht werden kann(沈みながら、届かぬ光を握りしめながら)。
深く(Tief)、深く(Tief)、深く(Tief)―――」
その一方、ロワインと戦いを再開したゲルトラウデも新たに歌を紡ぎ、相手への拘束とする。>>806
(誰が馬鹿正直に戦ってあげるものかしら)
魔術師は研究者だ。魔術師が正面切って戦う必要はどこにもない。向こうはなにやら乗り気のようだが、こちらとしてはこの魔術師とやりあうのは避けたい。
だがしかし。
ズルリ、ズルリと這い出るかのように生物が増えるのを苦々しく思いながらより声量を上げ、より広範囲に魔術が行き渡るようにする。やはり、自分とは相性が悪い。
スタミナはただの人間より自信があるほどに高いと自負しているが、それにも限界というものがある。まだ余力は十分残しているが、動きを止めるないし喰うほどに度に増援されるのでは堪ったものではない。
先ほどの鯨で200ほど減ったと言っていたが、なるほど。先ほど試しにと一体食べてみれば驚くほどに旨味が落ちていた。その意味でももはや目の前の魔術師(餌ですら無くなった人間)に用はない。
モチベーション的な意味でも好きで魔術行使もなく歌っているライブとは話は違うのである。
早急に撤退しておきたいものだが――。>>807
亜人種の歌が重ねられた瞬間、ロワインは体に大きな負荷を覚えた。体ではなく心を束縛する呪いの歌が、彼を内部から捉えたのだ。
渦巻く生命が次から次へと動きを鈍化させていき、それによって構成される自分の身すら満足に動かさなくなっていく。
鬱陶しい!
「グオオォ!!」
振り払うように体勢を開く。すると、弱った左腕が重力に耐えきれず、千切れて地面へと落ちた。
ロワインは、足元から体へと戻っていくそれを信じられないものを見るように眺め……裂けんばかりに口角を釣り上げた。
素晴らしいな。
衝動を凪いでくる魔術に苛立ちを覚えながらも、生物の研究家としての彼は熱い衝動をたぎらせた。
ここまで強力な力を発揮する生物など、いつぶりだろう。混血といえど、どういうわけか下手な魔獣よりも神代のそれに近いではないか。
是非もなく、我がコレクションの一部にしなくては。
「歌による精神の支配か。貴様の正体、大枠ではあるが絞れたぞ。なかなか粘るようだが、では、このようなものはどうだ?」
男の全身が泡立ち、ごぶり、と吐き出されたのは、三頭を持つ巨大な鮫だ。>>808
『混沌解放・剣牙魚』
複数の鮫の生命を混ぜ合わせた、ホオジロザメの混合生命体。
数ある内からそれを選んだ理由は、(サーヴァントで攻撃を防いだことから恐らく苦手としているのだろうとロワインは踏んだ)巨躯であることのみではない。
一つ目は、鮫自体が大きな神秘を内包した生物であることだ。
太古より姿を変えずに生き延びてきた彼らは、抜け落ちた牙からですら守護のアミュレットが作られるほどに強力な魔力を内包している。
並大抵の魔術では止めることなどできないだろう。
そして二つ目はーー純粋に、呪歌の効果が薄いからだ。
水中に生きる魚類は、元々聴覚を有していない。加えて、地上の生物の如き自我も有していない。彼らは獲物を探して彷徨い、喰らいつく、衝動の化身だ。
身の丈の7倍以上はあろうかというそれは宙を舞い、矢のような速さでゲルトラウデへと飛来する!「やってくれたな、セイバー……この我(フランス)の腕を……」
厩戸皇子を憎々しげに睨み付けたかと思うと……
自身の身体に魔力を込め、切断された左腕を覆う形で赤熱した魔力の腕が形成されていく。
同時に太陽王の表情から怒りは抜けていき、普段の尊大な態度へと変化していく。
「うむ、完全とはいかぬまでも、即興にしてはなかなか上手くいった方だな。文字通り、一本取られたぞ日出処の皇子よ!」
厩戸皇子はその急激な態度の変化を警戒し、追撃を行う。
「では、もう一本も頂こうか……此度は卿の命脈を!」
流麗な剣筋が太陽王の首を正確に斬り落とさんと振るわれる
「なるほど、確かに汝は強者だ。英霊としての格も本来は我(フランス)などでは遠く及ばぬのであろう」
即座に体勢を立て直し、セイバーの刃を凌ぐ太陽王。
先程は宝具の火炎の間を抜けるという神業じみた技巧によって手傷を負わせることが出来たが、依然としてセイバーの身体には重圧がかかっている。それ故に先程までと同様に攻めあぐねていた。
「汝は“我(ワタシ)”を倒し得る英雄なのだろう。だが、強者であるが故に、汝では今の“仏蘭西”を革命するモノとしては役不足であり、同時に役者不足である。」
「容量を得ないな……卿の芝居に長々と付き合うつもりは無い!」
既に十合以上を打ち合い、振るわれた剣閃は二十を越すが、互いの能力によって決定打が生まれぬ状況に冷静沈着な厩戸皇子と言えど少なからず焦りを感じていた。
長引けば、それだけ魔力が消費される。そうなれば、立香にかかる負担も大きくなるからだ。
カルデアにとってこの戦いは通過点に過ぎない。決闘に余力を使い果たせば特異点の修正は不可能だ。
そんな膠着状態の中で先に動きを見せたのは太陽王の方であった。>>811
「強き者が強き者を討つのはただの首のすげ替えに過ぎぬということだ……」
太陽王の王剣が輝きを増す。それは周囲を焦がすほどの激しい陽光。
「ところで、皇子よ……汝は我(フランス)より強いと言ったが、それはあくまで“本来であれば”という話だ。この仏蘭西(ワタシ)において我(フランス)は易々と討たれはしないぞ?」
二度目の宝具解放。潤沢な魔力を有する太陽王の太陽王に対する絶対的な優位性(アドバンテージ)。
「クッッ!!」
先の一撃ですら決死の術により防いだというのに、間髪を入れぬ殺意の炎が厩戸皇子を喰らわんと畝ねる。
「民の歓び、国家の歩み──今、連なりて太陽となる。可能性の光は今、我に収斂する『王威を示せ、遍く世を照らす陽光の剣(ジュワユーズ・グラン・シエクル)』!」
加えて三度目の真名解放。
宝具の高速にして連続的な解放、対軍規模の破壊を一個人に叩き込むという暴挙。
それはもはや却炎によって生み出された大火の檻。
如何に才人たる厩戸皇子であっても先程のように潜り抜ける隙さえ与えぬ圧倒的な大火力。
「例え死なずとも、脱出さえ容易では無かろう……汝が脱出する前に我(フランス)が全て終わらせよう。」
自身が引き起こした業火に背を向け、太陽王はある1人に向けて、弾丸のように駆け出した。>>812
ただ見ていることさえ困難だった。
藤丸立香は太陽王とセイバーの戦いを見ながらそんな感想しか抱けなかった。
最優の名を縦にするセイバー同士の対決はこの特異点で見たどの戦闘からもあまりに隔絶していた。
苛烈な炎天の如く、全てを焼き尽くす太陽王の宝具。それを防ぐセイバーの法術。
どれも“ただの人間”に過ぎぬ自身では及ぶわけもない代物だ。
そんな超常をただ眺めていることしか出来ない自身の無力さを噛み締める。
ただ見ているだけなのに……己は間違いなく消耗していた。
対軍クラスの宝具を防ぐ強力な法術の連続使用、それもマスターである立香を守りながらとなれば、相応の魔力消費は避けられない。
その負担が、立香の肉体を蝕んでいる。
手足は震え、頭が痛む。更には鼻からはツーッと血が流れてきた。
己の情けなさを呪う。戦っているのはセイバー達だと言うのに……。
己ではなくもっと優秀な魔術師がマスターであったのなら……。
そんな思考が痛む脳裏を占めていると、気付かぬ間に弾丸のような速さで男が迫ってきていた。自身の決闘相手である太陽王である。>>813「これはあくまで汝と我(フランス)の決闘である。故に我はこれより汝の命を貰い受けよう。」
そう、セイバーはあくまで藤丸立香にとっての“剣”。決闘を受けたのは立香なのだから、太陽王がマスターである立香を狙ったところで卑怯とは言えないだろう。
──刃が迫る。己の死が迫る。
それを感じ取った立香は太陽王を睨み付けた。そして、震える手を必死に動かして、舞台から飛ばされてきた瓦礫の一部を投げ付ける。サーヴァントが拵えた舞台であれば、多少なりとも魔力が残っているはずだ。まだ余熱によって手が焼けるほど熱いが、だからと言ってやめる訳にはいかない。
藤丸立香は英雄ではない。ただの人間だ。
しかし、ただの人間にだって矜持はある。
己を信じてくれたサーヴァント達がいる。太陽王がどれほど強大であっても、それを裏切ることなど、諦めることなど出来るわけがない。
せめて、セイバーが駆けつけるまでこの命脈を絶やすわけにはいかないのだ!
立香の決意の表情を太陽王は先程まで見せていたどれとも違う表情で笑って返した。
それは嘲笑ではない。紛れもなく賛辞と敬意が込められた笑みであった。
「良い眼だ……やはり汝は人に残された可能性の光。我が敵に相応しい。」
しかし、太陽王は手を緩めはしない。あくまでも対等な宿敵として立香の首を狙う。
輝かしい王剣が立香の首を掠めかけた──その瞬間
「立香よ、よくぞ覚悟を見せた。その覚悟に私も応えねばなるまい!」
撃ち放たれた弾丸を横から新たなる弾丸が弾き飛ばした。そう形容するに相応しい攻防が立香の前で起こった。
業火の檻を抜け、駆けつけたセイバーが太陽王ごと立香に迫る刃を全力の一振りで押し返したのだ。
見れば先程とは装束も身体も焼けている。しかし、致命傷は負っておらず、未だ藤丸立香の“剣”として彼は健在であった。
「汝には詫びねばならぬな、セイバーよ……。汝もまた仏蘭西を救う藤丸立香を支えるに相応しい役者だ。」
太陽王は再び目の前に現れた敵を見据える。
「見せてみるがいい、汝らの力!汝らの可能性を!!」「おーおーおー、大きなキンキラもやりおるが……あの太陽人類擬きもなかなかやりおるなぁ、そうは思わんか?毛むくじゃら」
指で輪を作り、望遠鏡で覗き見るかのようにリヨンの方角を向きながらスカタクが鷹揚に言う。
「■■■■■……!」
―――――――許さぬ、と王(けもの)は唸る。
「■■■■■!」
―――――――赦さぬ、と狼(おう)が吼える。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
―――――――神よ、疾く死すべし。
人狼が残像を残し、地を抉り飛ばしながら駆けていく。
王に率いられ、軍勢が殺到する。
歪み捩くれた槍が、豪雨の如く降り注ぐ。
―――――――目標、神擬き(スカタク)。>>815
「…………………………………………………………」
スカタクのため息と同時に、咄嗟に飛び退いた人狼王を除き、異形の軍勢のことごとくが地面から飛び出した結晶槍に刺し貫かれ、降り注ぐ槍は転移のルーンによって全て投げ返された。
「――――――――――無視するな、傷つくじゃろが」
美しく整った顔立ちを、拗ねた子供のように歪ませ言い放つ。
「(しかし)」
面倒だ、と内心で降臨者が独りごちる。
異界のルーンによる砲撃は寸前で避けられ、落とし子で構成された槍は弾かれ月棲獣などを刺し貫く。
だが、本丸であるリュカオンには届いておらず
開戦から何度もそういった状況を繰り返しており、辺りには夥しい程の肉片と馬車の残骸が散らばっていた。
「これではジリ貧か―――――――――なぁッ!!」
ルーンによって空間転移し、直上から剣に形を変えた落とし子を月棲獣の一体に深々と突き刺し、内蔵をかき混ぜるように動かす。>>817
周囲には、狂える狼王を除いて残骸のみ。
「■■■■■■■■■……」
しかし『何を勘違いしている?』とばかりに嘲笑するリュカオン。
それが異神のカンに障ったのか、笑みを深め、リュカオンの周囲を無数の結晶槍で包囲し、指揮者の如く手を上げる。
「逝ね、獣擬き―――――――――……ッ!!」
突如として結晶槍の全てが砕かれ、その煽りを食らってスカタク自身が地面ごと吹き飛ばされる。
「むぎゅ!!!………………ぶえッ!ペッ、ペッ……土食べちゃった……」
顔面から大地に激突したものの、プライドが傷ついた以外は奇跡的に無傷な降臨者が狂狼のいた方を見る。
そこにいたのは、殺.し尽くされた筈の月棲獣の軍勢。しかし、その姿は荷馬車のパーツ・鎧甲・衝角・刃が歪に融合した生物とも器物ともつかぬモノだった。>>820
以上です。>>810
アーチャーの所在を高層ビルだと定めたライダーはさらに全身せんと速度を上げる。
勇往邁進の剛毅戦車(ウーヴァーテェーン・シュトライトヴァーゲン)は使えこそするものの、一度無理にでも使用すれば崩壊して消滅してしまうだろう。故にマスターであるゲルトラウデの許可なく無断で使用できない。
ビルの僅かな凹凸に足先をかけるようにして駆け上る。無論、屋上からの弾幕は途絶えていない。まるでその様は天に輝く数多の星々が降り注いでいるかのような光景であり、それに逆らい昇ってゆくライダーは天の理から脱し蒼生たる銀河へと歩を進めんとする親類の英知の結晶、ロケットのごとしである。
いかな大剣、いかな英雄といえど鎧も無しにこの鉛の雨を全て受け流す、などということは出来ず、その経験からくる戦術眼から致命傷になるモノ、戦闘に支障をきたすであろう部位へのものを重点的に防ぎ、その身体から血を流しながら踏み込みと同時に弾丸のように下がるアーチャーの展開する銃軍を横なぎに一閃する。
「その姿、しかとこの目に映したぞアーチャー。さぁ、騎士に連なる者同士、戦いを始めよう」
狭い屋上にて大剣を突き出し、傷だらけの身体で戦意を灯すライダーにアーチャーはオレは正面戦闘は柄じゃないんだけどな、とボヤキながら構える。
(まぁ……、ここまでは想定内だ)
狙撃手はその位置が割れ、距離を喪った時点で意味はなくなる。弓兵として基本中の基本。アーチャーはそれを分かっていながらあえて屋上に留まった。
自分自身で理解している。自身とこのサーヴァントでは相性が悪いのだろう。それはサーヴァントとして以前で、根本の種族性から。魔性の悪魔と幻想を討ち続けた者。だが、あえてこの場に限定すればそれは覆る可能性のあるものだ。
拳銃を二丁握りしめ、ガンカタの姿勢を取りながらアーチャーはライダーの剣戟をギリギリの所で避け続ける。やはり、この身にはその一斬はあまりに重すぎる。並みの英霊でなければまともに打ち合えばその膂力から擂り潰すように切り刻まれていたであろう。事実、ライダーが一歩踏み込み剣を振るうごとに屋上はひび割れ砕けていく。>>822
――スキル、狩人の心得。
生前アーチャーがマタギの猟師として積み上げた経験や知恵を示すスキル。狩りには獲物の動きを先読みする力が必要だ。むやみやたらに撃っていれば獲れる獲物も獲れない。山の獣は生き延びる為に殺意に敏感故に次にどう動くのか、その挙動を視る技量が必須であった。その観察眼が今、アーチャーの命を繋いでいた。
(何を狙っている?)
先ほどから撤退もせずに避け続けているアーチャーにライダーは訝しむ。第一の印象からすればこの男、一対一の戦いを好むような人間ではない。決め手にかかるべきかと考えたところでふとアーチャーが瓦礫に足を取られ隙を晒す。
「おっと――」
(ここだ!)
生じた隙を喪わせぬために一段と強く足を踏み込み、狭い屋上故に一足で距離を詰め、大剣を振りかぶるライダー。その瞬間、アーチャーと目が合った。
――ほい、一丁上がり~。
目線だけで真意を語ったアーチャーが逆に自分から踏み込み、片腕の肘でライダーの腕を弾き、もう一方の腕、その手に持つ拳銃をライダーの霊核――、心臓へと突きつける。
――人口の星が瞬く摩天楼にパァン、と銃声が鳴り響いた。>>823
超常の英雄たちの戦いが勃発していた頃、地上においてはゲルトラウデが汗をかきながら鮫の乱喰歯から逃げていた。
「はぁ、はぁ……、ああもう……!」
確かにゲルトラウデはセイレーンの血が濃く発現している先祖返りをした混血であり、ただの人間や魔術師よりもスタミナがあると自負している。
が、あくまでそれは歌を歌う際や、水の中といった得意分野に限った話である。つまり、陸の上を走って逃げるなどといったことに関してはただの同年代の女性と大差がなかった。むしろ魔術があることで長く生き延びている方だろう。
そして、限界も訪れる。
「あ、ぐぅう――っ」
逃げきれなかった左腕が鮫に喰われ、ゲルトラウデは腕から血を流しながら壁を背に、ロワインを睨みつける――。九終投稿します
>>825
「はー、満足満足。楽しかったよ、ありがとう」
そう言って通信終了の意を込めて目を閉じる。すると何となく感じていた“見透かされている感覚”がちょっとだけ変わる。多分観るのを止めたのだろう。いや、止めたと言うよりは表層心理から本来の深層心理を感受する方向へ切り替えたのだろうか。…まあいい。目を開けると案の定だった。なんだか自分の内面を読まれるってむず痒いな。さてと、次だ。
目をもう一人、氷瀬竜胆へと向ける。一目見たときから不可解だった、まるで『電子ロックが掛かったような不可読領域』。はっ、面白ぇ。俺の起源は『暴く』だ、こんないかにもなものを見たら暴かずにはいられないよな。直ぐにとはいかずともものの数分で詳らかに…
「何視てんのよ」
「うんっ?」
水籠初梅の方を向くとこちらの表層心理を読む方にシフトしていた。こいつ、一旦読むのをやめて、俺が目を離したらまた読み始めやがったのか。
「はっ、とんだ食わせ者だな、あんた」
「どっちがよ」
「まあいいさ。それより気になることが出来た」
「気になること?」
俺は氷瀬竜胆を指差し
「そいつ、あんたにとって何なんだ?付き合ってるとか?」>>826
はい、短いですよね。1レスに収まっちゃいましたものね。でもユージーンの内面描写をガチ目にやると自分の思考と相手を読んだ思考とそれらを処理してってのが無駄に長ったらしくなるんです。
あと“見透かされている感覚”についてはユージーンが何となくそんな感じがするってだけで別に初海ちゃんの能力にそんな効果は無いよってのでも大丈夫です。九終投稿します
聖杯大会2日目。午前6時30分。まだ少し残っている生徒会の仕事を片付けるために、私は学校に向かおうとしていた。
「では、私は学校に行ってきますから留守をお願いしますね賢司さん。」
「了解です……ふわああ……」
いつものように賢司さんに言うが、どうにも賢司さんはまだ夢現つなようで口に手を当ててあくびをしている。
「賢司さん?」
「あ……。すみません、ちょっと昨日変な風に寝ちゃったもんで……なのになーんか目が覚めるのが早かったんですよね。」
「大丈夫なんですか?体に疲れでも溜まっているかもしれませんし、なんでしたら今日は表の掃除はせずに家屋の中の掃除だけでも構いませんから。」
「いや、それが不思議なんですけど何か疲れがないんですよね。むしろ動き回りたいくらいっていうか、今なら境内の賽銭箱とか動かせるんじゃないかなーとか思ってたりします。」
「……まあ、何でもないのならいいのですけど。でも余り無理はなさらないでくださいね。」
「出来るだけ善処はします。それより早く行かなくていいんですか?」
「そうですね、では改めて行ってきます。何かありましたら五道さんか八雲さんに連絡してください。」
「うっす。じゃあ、お気をつけて。」
神社を出てバスに乗り、学校近くのバス停で降りる。周りに誰もいないことを確認しアーチャーを呼び出す。
「アーチャーいるわね?」
「はい、ここにいます。」
アーチャーは霊体化を解くと私の右隣に現れた。
「賢司さんのアレ、どう思う?」
「アレ、って睡眠についての話のことですか?」
「ええ、そのことよ。サーヴァントの貴方なら何か分かるかもと思ってね。」
「うーん……僕には何か大きな変化があったようには見えませんでしたね。」>>829
アーチャーは特に変化したことは無かったという。だけどそんなはずはない。私は少しでも情報を得るためにアーチャーに追求する。
「どんなことでもいいわ、貴方が気にかかったことがあるなら話してほしいの。」
「そうですね……強いて言うなら、ですが。昨日と比べて魔力が澄んだような気がします。」
「魔力が?」
「はい。ですが本当に些細な差でしかないです。例えるなら昨日会った女性の髪艶が違う、程度の差です。注意深く見れば気付くかもしれませんが、逆に言えば強く意識しなければ認識できないということでもあります。」
「そう……」
「何か気になることでも?」
「いえ、大丈夫よ。少し気になっただけだから……ほら、誰かに見つかるとまずいし今のうちに霊体化しておきなさい。」
「……分かりました。また何かあれば呼んでください。」
そういうとアーチャーは霊体化し消える。きっとまた私の側にいるのだろう。
「さて……そろそろ行きましょうか。」
足を再び学校に向け歩き出す。
「(魔力が澄んでいる、か……)」
アーチャーの言っていたことを頭の中で反芻する。
「(この島で魔力が澄むなんてありえない。いえ、この島で生まれ育った人間であるのなら魔力が澄むはずがない。)」
賢司さんは紛れもない九終島出身であり、この九終島で育った人間だ。それは私自身が八雲さんから確認している。東京の大学に進学していたとしても九終で育った以上、それが変質することはない。
「(ではなぜ?アーチャーが嘘を言うとは考えづらいし、となると考えられる可能性はーーーーーー)」
「なあ、昨日のアレ見たか?」「見た見た!あれだろ?聖杯大会ってやつ!」
普段使う通学路でそんな会話を耳にした。少しだけ顔を向けると制服の色合いからして話をしていたのは私と同じ高校の生徒だろうか。片方は四角面で黒髪のスポーツ刈り、もう片方は軽薄そうな少し長いダークブラウンの髪。さすがに同学年でないと顔や名前の片方は知っていても、もう片方が分からないということが多々あるから『どこの誰』とは断言出来ないが、声の軽さ的に一年生くらいだろう。>>830
「風の噂で聞いたことはあったけど、まさかこの島で開かれるなんて思いもしなかったよなー。」
「まあでも、いいんじゃね?不便とは言わないけどさ、この島ってなんつーか息が詰まるっつーかさ……。」
「なんか分かる気がするなー………あっ。」
たまたまこちらを向いたダークブラウンの髪の生徒と目が合った。スポーツ刈りの生徒も気がついたのか、「おい、行くぞ!」と言ってそそくさと走り去ってしまった。
「はあ、別に怒ったりはしないのだけど……。そんなに怖い目つきでもしていたかしら?」
こちらにそんな自覚が無いだけかもしれないが、しかし少し年上とはいえ男の子が女子に少し見られていた程度で走り去ってしまうのはどうなのだろうか。
「というか、聖杯大会はこっちとしても目の上のたんこぶなのだけど……。神秘の秘匿にしたって流石に全部のフォローはしきれーーーーーーーー」
「海音さん、少しいいですか?」
「うひゃっぅ!?」
突然聞こえた声にびっくりして振り返ると、そこには誠さんが立っていた。
「……誠さん?学校ならともかく、こういう場では気配を消さずに来てくださいと何度言えば分かるんですか?」
「あ、ははは……。いやあでも海音さんって、びっくりすると案外可愛い声がーーーーーー」
「呪戒(じゅかい)!!」
「出るんですね、ってぎゃあああ!?」
呪術の1つ『呪戒(じゅかい)』を使って誠さんの身体を縛り上げると、そこら辺の木に投げ飛ばして括り付ける。
「それで?一体どうかしたんですか?」
手短に、かつ出来るだけ恐怖心を煽るように声に圧をかけて誠さんに話しかける。
「あー、その……兄貴を含めた当主の皆さん方が海音さんと会議がしたいそうで……。」
「いつ行いたいと仰っていましたか?」>>831
「いつ行いたいと仰っていましたか?」
「海音さんの都合がいいお昼休みに行いたいと……。」
「分かりました。では九終高校の生徒会室に人除けの結界を張っておきますので、そこに使い魔を飛ばしていただくように伝えてください。」
会議、ということは恐らく聖杯大会についてのことだろう。私としても色々と話しておきたいことや提案しておきたいことがある。
「あのー……」
「はい、何でしょう誠さん?」
「いやあ、その、いつになったら解放されるのかなと……。」
「うふふ。再三に渡って諫言しているにも関わらず、人の言葉を無視するような人には厳しい罰が必要だとは思いませんか?」
「……もしかしてこのまま放置プレイなんです?」
「では、私は学校に行きますので自力で脱出なさってくださいね♪」
私は何事も無かったように通学路に戻り、学校へ向けて歩き出す。後ろから様々な罵詈雑言が聞こえるが、まあ完全に彼の自業自得なので無視を決め込む。
「(マスター、あんなことしちゃって平気ですか?あの人は一応マスターの味方なんですよね?)」
アーチャーが話しかけてくる。確かに彼の目からすれば味方にああいうことをするのは奇妙に映るのかもしれない。あまり誤解されても困るのできちんと話しておこう。
「(聞いていたでしょうアーチャー、罰だって。それにあの人は昔からあんな調子だから、むしろあれでもまだ優しい方よ?毎回本気を出して罰していたら、それはこちらの頭目としての器の底を晒すことと同じ。自らの器の狭量を晒すよりも自らの器の寛容を晒す方が相手は恐怖するものです。)」
「(なるほど。確かに母様も叔母様もメイヴ様も無闇に手を出して痛めつけるのではなく、必要な時にしか手は出していませんでした。上に立つ人間というのは器をどう見せるか、というのも求められる才能というわけですね!)」
何となくキラキラとした目で見られているような気がするけど、ケルト神話の価値観で私を計られているとするならスカサハとオイフェという2人の女王と比べられているのは身が引けるというか、私のやってることがその2人と同じレベルということにも取れる。いやもちろん彼としては良い意味で言ってるつもりなのだろうけど、明らかに血の匂いがしそうなケルトの女王達と比べられているのは現代人としては遠慮したいものがある。というかそこまでバイオレンスなことはしてはいない!>>832
「(さすがにケルトの女王と比べられるのは身が引けるけど……でも必ずしも必要な才能というわけではないわよ?もちろん、ある程度の厳格さは必要だけれどそれはあくまで軍隊や戦時中の国家ならの話。そうでないなら特段必要な才能ではないのよ。)」
「(むむ……なるほど。まだまだ僕は修行が足りないようです。)」
「(ふふ、これから学べばいいのよ。サーヴァントは成長することは無いというけれど、それでも座には蓄積されていくんでしょう?なら、現世(いま)にいる間に学べることをたくさん学んで、学んだことを座に返ってから繰り返せばいいわ。あなたにとってはそれが一番でしょうしね。)」
「(はい!マスターから色々と勉強させてもらいます!)」
アーチャーは本当の子供のように返事をする。
……改めて考えてみてもアーチャーが英霊だということが実感出来ない。魔術的な感覚としても人間的な感覚としても、私にはアーチャーがただ好奇心旺盛な子供にしか見えない。もちろんサーヴァントとして召喚される以上は召喚された姿が全盛期であるのは理解しているし、アーチャーの短すぎる人生を考えれば子供の姿なのは当然だ。
だとしても、だ。
アーチャーという存在はあまりにも私にとっては眩しすぎる。光も過ぎれば毒になるように、純粋過ぎる光は何よりも強い毒物になる。……今の私にとってアーチャーがどちらなのかは言う必要はないだろうけど。
「あ、カノちゃんおはよう!」
生徒会室に着くと零華が元気良くあいさつしてくる。手元を見ると夏休み期間に行われる行事関係の書類の作業をしていた。
「おはよう、レイ。行事関係の書類をまとめてくれてたの?」
「うん、この辺は早めに片付けた方がみんなもカノちゃんも楽できるでしょ?だからさっさとやっちゃおうかなあって……」
「ふふ、ありがとうレイ。それにしても珍しいわねレイがこんなに早く学校にいるなんて……いつもはもう少し遅くなかったかしら?」
「それがねぇー……なんかねえ昨日の夜ね、変に寝付けなかったんだけど、夜中を少し過ぎたらすとーんって寝ちゃったんだよねえ。」>>833
「ーーーーーーーーーー」
それは今朝、賢司さんから聞いた話と同じだった。そんな、まさか。確かに決して起きえないとは言い切れはしない。だがだとしても、私の近くの人間に同じことがほぼ同時に起きるなんてことがあるだろうか?ありえないありえないありえない!そんなことはありえない!絶対にだ!でなければーーーーーー
「それで朝お母さんに起こされてさー。『リビングなんかで寝ないでよ、風邪ひくわよー』なんて言われちゃったよ……て、カノちゃん?どうかしたの?」
ハッ、とレイの言葉で我に帰る。相当に顔色が悪かったか険しい表情をしていたのかは分からないが、少なくともレイの反応を見る限りは両方だと考えておこう。
「あ……い、いえなんでもないわ。ただ、似たような話を今朝も住み込みのバイトの人から聞いたから驚いただけ。」
「本当に?なんかすっごい顔してたよ?」
「本当に大丈夫よ、レイは心配性ね。」
話題を切るために本当に大丈夫だとアピールする。レイは少し不満そうな顔をしながらも一応は納得してくれたらしい。
「ならいいけど……。何かあったら言ってね、私手伝うから!」
「……ええ。もし何かあれば声をかけるわ、その時はお願いね?」
「まっかせてー!聖杯大会……だっけ?それにカノちゃんが勝つためなら私はなんだってやってみせるよー!」
「ありがとう、レイ。その時は頼りにさせてもらうわ……。」
ひとまず会話を終え書類に目を通していく。8月のお盆に行われる九終島内でのインターンシップ活動、九終島南部のビーチでのボランティア活動、他校との交流キャンプなど一夏の間に行われるイベントは多い。前2つは参加希望者のみで行われるイベントではあるが時期的に多くの観光客が予想されることを考えれば生徒会も出ることになるだろう。幸い希望者は一学年で1/6ほどいるそうだから、一橋さんや三森さんや瀬斗さんに上手い具合に人数をあてがってもらえるように依頼しておかないと。キャンプは四谷さんと六辻さんに場所を聞けばいい、キャンプ出来る場所がないわけではないだろうし無いなら無いで五道さんに頼ればいい。まあ書類に必要なのは生徒会長としての私の承認印くらいなもので、残りはプランの提案を学校側にするくらいだろう。>>834
「……あら、そろそろ時間ね。レイ、戸締りは私がしていくから先に行っていいわよ?」
「あ、じゃあカノちゃんのカバン、教室に持っていっておくよ!」
「ええ、お願い。」
レイが自分のカバンと私のカバンを持って出ていく。
「(『揺震動(ようしんとう)』ーーーーーー)」
レイが出ていくのとほぼ同時に耳に呪い(まじない)を介した強化を施す。レイの軽い「たったったっ」という音が響き階段を登っていく。少なくとも戻ってくることはないだろう。アーチャーに霊体化を解くよう言おうとしたが、アーチャーはすでに霊体化を解いていた。だから私がやることはアーチャーに顔を向けることだけ。
「アーチャー。」
「先ほどと同じ質問……ですよね?」
「ええ、貴方から見て彼女はどう見えた?」
アーチャーの顔がわずかに歪み、それから少し間をおいて
「彼女からは神気のようなものを感じました。」
アーチャーは答えた。分かりきっていた答えではあるが、だとしたらーーーーーー
「……それはどういうものかしら?」
「そう、ですね。先程の男性……賢司さんでしたか?そちらと比べると魔力の濃度が桁違いに濃いです。清濁の問題ではなく純粋な密度として、彼女の持つ魔力はとてもではないですが人が持っていいものではないことは確かです。形容するならーーーーーーーーーー」>>836
キーンコーンカーンコーン、とお昼休みのチャイムが鳴る。あれから生徒会室に人除けの結界を貼り鍵を返しに職員室に向かったが教師達から質問攻めに遭い、何とかそれをかわして教室に入ると今度は同級生達から質問攻めに遭った。小休みもほとんど質問攻めに時間を費やされてしまい、挙句には授業の最中でさえ質問された。もうこうなると簡単に生徒会室には行けなさそうだしどうしようか……。
「九重さんいつ参加するって決めたの!?」
「ねえねえサーヴァント見せてよー!」
「な、なあ!俺らに何か出来ることないかな!?なんだったら宗美の奴倒しにいってやろうか!?」
「え、えーと……」
私の机の周りには大勢の生徒で賑わっている……というよりは群がっている。どうにかして切り抜けたいところではあるけど、しかし衆目の前で魔術を使うのもアーチャーに呼びかけて出てきてもらうのも躊躇われる。さて、どうしたものか。
「うわ、こりゃすごいな……。おーい、九重さーん!」
「!」
生徒達が一斉に声の方向を向く。まあ、だいたい察しはつく。私はこれ幸いとカバンから弁当を2つ右手に持って誠さんの方へ人の群れをかきわけて進む。
「七星先生、どうかしましたか?」
「あ、ああ。校長が今回限りの特別室を設けたみたいでね……」
そう言いながら誠さんは1枚のメモ用紙を渡してくる。私は天眼通を使用しメモの内容を読み取りながら受け取った。
内容はこうだ。
『全当主の使い魔既に待ちたり。急いで向かうことを推奨せり』
『1階の多目的室が当面の間、特別室として扱うことになりました。しばらくはそちらを利用してください。』>>837
前者は一体いつの時代の言葉を使っているのだろうか?今回に限っては見逃すけれど、次やってきたらお腹を殴るくらいはしようと心に誓う。そしてもう1つは普通の伝達事項のメモ書き。まあこれはいいだろう、今は必要なことじゃないが利用するにはうってつけの場所を手に入れられたと考えられる。
「ありがとうございます。七星先生もお忙しいのにわざわざ来てくださって……」
「あはは、これも仕事のうちですから。」
「それでその……お礼といってはなんですが……」
私はメモを自分が食べる用のお弁当箱の包みに挟み込みながら、もう一方のお弁当箱を誠さんに手渡す。
「…………えっと、これは?」
「私の手作りのお弁当です、お口に合えばいいんですけど……」
サーッと誠さんの顔から血の気が引いていく。生徒達からもどよめきが起こる。それはそうだろう。特段自分で気にしたこともないが、私は学校一の美人ということで通っているらしい。なら今このタイミングで使わない理由はない。早い話がスケープゴートもしくは生贄。尊い犠牲ということで誠さんには犠牲になってもらおう。
「じゃあ私はこれで。良ければお弁当の感想とか教えてくださいね♪」
そう言って私はササっとその場を離れる。多分だけど今の私はとてもいい笑顔をしてると思う。後ろから色々と声が聞こえてくるが全て無視する。
「はあ……もう、人の気も知らないで。群がるのは勝手だけど、もう少し程度を考えてほしいわね……。」
なんとか生徒会室にたどり着いた。メモに書いてあった通り、すでに生徒会室には各家の当主が送ってきた使い魔が揃っていた。>>838
「皆さんお揃いのようですね。すみません、お待たせしてしまって……」
『全くね。こちらの貴重な時間を割いて来ているのに遅れるとはどういうつもりかしら?いくらまだ若い頭目だからとて許されると思って?』
『同感ですね。我々とて暇ではないんです。時間に遅れる人間ほど嫌われるものではありませんよ?』
カエルの使い魔とトカゲの使い魔が私を糾弾する。声から察するに三森家当主の真希奈さんと誠さんの兄で七星家次期当主の瀬斗さんだろう。だがそんな声をたしなめるように亀の使い魔と蛇の使い魔が声を上げる。
『いやあ、こればっかりは仕方ないでしょ。こんなことになったら嫌でも皆から注目されるのは当然だよ。』
『ケケ、同意だナ。良くも悪くもここまで大きく喧伝されちゃあ避けられるもんも避けられないサ。むしろ少しの遅れで済んだことを褒めるべきじゃないカ?』
どこか胡散臭い感じがある四谷家当主の凋落さんにフォローされるととてもではないが信用を得れなさそうなので自分でも弁解はしておこう。
「確かにここまでとは私も予想していませんでした。ただ誠さんの協力があったので……私一人では切り抜けられなかったかもしれません。」
『へえ……七星の出来損ないがか。まあ何かあれば肉壁くらいにはなる奴が無い頭を使ったのは評価に値するかねえ?』
『泡葉さん、滅多なことを言うものではありませんよ?一応、瀬斗君に何かあれば彼が七星の当主になるんですから。』
『おっと、そういやそうだったな。いやー瀬斗君が優秀だからつい忘れてたぜ!』
『…………』
誠さんが協力をしたことに噛み付いたのは仁川家当主でコウモリの使い魔の泡葉さん、それを半笑いでたしなめたのは兎の使い魔の一橋家当主の浄果さんだ。瀬斗さんは弟の誠さんが嗤われているのを静かに聞いている。>>839
だが痺れを切らしたのか柴犬の使い魔の六辻家当主の囚狗さんが今回集まった目的を切り出す。
『もうそんくらいでいいだろうよ雑談はよ!それより俺らが集まったのは今行われてる聖杯大会とかいうわけ分からんもんのことについて話し合うためだろうがよ、違うか?』
『『『…………』』』
『チッ、全員だんまりかよ。おい、そもそも俺らにこの話を持ち出して来たのはアンタだろ八雲の旦那!まずアンタから話すのが道理ってもんだろうがよ?』
囚狗さんは鴉の使い魔の八雲さんに向かって吠える。八雲さんも来るのは分かっていたかのように返答する。
『今回の事態は我々にとって由々しき問題だ。外部からの介入を許し、あまつさえこの島の願望機を大っぴらに晒すなどという事態になった。これを醜態と呼ばず何と言えようか。』
八雲さんが私を見据えるように事実を突きつけてくる。分かっている。私がしっかりしていればこんなふざけた大会が行われることもなく、天莉も拐われることは無かったはずだ。
「申し訳ありません。私が未熟なばかりに皆さんを巻き込む形になってしまって……」
『いやいや頭目が謝る必要はないっしょ。だいたいさ、一橋のとこがちゃんと見破ってりゃこんなことにならなかったんじゃねえの?責任追及するならそっちのが筋ってもんでしょ。』
『あら、私が悪いと言いたいのかしら泡葉君は?それを言ったら魔術師の往来を管理している八雲さんに責任があると思うけれど?私が管理しているのはあくまでも交通系統の管理。いつ、何人、どんな人間が入ったかまでは分かっても魔術師かどうかなんて一般人に紛れ込まれれば見抜けないわよ。それとも何かしら、客の職業まで一々覚えてろってわけ?』
『一橋さんと同意見ね。七星君も同じじゃなくて?』
『ええ、僕らは人との関わりが多いですからね。大事な取引先の相手ならともかく、そうではない人間などつぶさに覚えてはいません。まあ仁川さんは人とあまり関わらない仕事なのですから仕方ありませんが。』
『ケケ、確かに泡葉さんは引き篭もりのコウモリさんだからねエ。関わる人間が少なけりゃそりゃ覚えられるでしょうヨ?』
『アァ!?喧嘩売ってんのかテメエら!』>>840
『はいはい皆落ち着いてねー。ヒートアップするのはいいけど、まずはこの先どうするかを決める方が先決でしょ?差し当たっては僕から1つ報告したいことがあるんだけどいいかい?』
明久さんが全体のピリピリとした雰囲気を抑え込みながら話を切る。こういうところは年長者としての余裕……ということだろうか?それはともかく話を聞かねば。
「報告とは何ですか明久さん?」
『うん、海音ちゃんとこに住み込みで働いてるアルバイト君から連絡があってね。バーサーカーのマスター……ユージーン・バックヤードが君に会いに来たそうだ。』
「!」
『恐らくは同盟目的だろうね。彼個人の目的はなんにせよ、こちらにとっては都合がいいとも言える。』
「何か手紙などは受け取っているんですか?」
『お察しの通り、手紙を預かっているそうだ。学校が終わったらすぐに受け取るといい。』
これは思わぬ収穫だ。こちらの与えられたミッションの1つは[バーサーカー陣営と同盟を結べ]というものだ。それを達成さえしてしまえば天莉を取り戻すことが出来る。
『さて、僕からの報告は以上だよ。何か質問とかはあるかな?』
『罠だという可能性は考えないのか?』
『あはは、それはないよ囚狗君。もし倒すつもりで来たのなら手紙なんて置いていかないし、海音ちゃん以外の住人がいたのなら人質にでもして優位に事を運べるように出来たはずだ。それをしなかったのなら、彼には何か別の目的があったと考える方が自然だよ。手紙に呪いか何かが掛かっている可能性はあるかもしれないけどね。』
和やかな口調で言ってはいるが恐ろしいことをしれっと言ってくれる。自分ならブラフでも罠を掛ける、と言っているのだ。油断ならないというか、この人もやはり魔術師なのだと改めて思う。
だがまだ肝心なことが決まっていない。それを分かっているのか泡葉さんが話を切り出す。>>841
『それよりよぉ、肝心なことがまだ決まってねえんじゃねえか?』
『ええ、そうね。ねえ八雲さん?私達はどうすべきかしら?海音ちゃんに協力するべき?それともーーーーーーーーーー』
そう。彼らが私に協力する義務は無い。私達はあくまでも九終の守護者であり管理者だ。頭目である私がいなくなったところで八雲さんなり明久さんなりに頭目を挿げ替えればいいだけなのだから。だが八雲さんの答えは私にとっても彼らにとっても意外なものだった。
『無論、我々は海音に協力するべきだろう。この島を守るためには少しでも早くこの大会をおわらせるべきなのだからな。』
『は、はあ!?ちょっとそれ本気!?』
『協力するのは構わないが……。しかし本当にいいのか八雲?』
『そうだぜ!何でこんな小娘なんかのためにーーーーーーーーーー』
『何か意見でもあるのか?』
『『『…………』』』
使い魔越しとはいえそれでも八雲さんの剣呑な雰囲気が伝わってくる。そんな雰囲気に呑まれたのか、もしくは「私に協力したくはない」何かがあるのか。どちらにしても泡葉さん、真希奈さん、囚狗さんにはそれぞれ何かしらの思惑があったようだが八雲さんの一声で不承不承ながら了承はすることにしたようだ。
『決まりだな。ではこれで解散としよう。』
「すみません、八雲さん。私がやらなければならないところをやっていただいて……」
『……構いはしない。海音、お前はまだ若すぎるのだ。この島を守るにしても、奴らに言うことを聞かせるにしても、まだ格というものが足りていない。』
「……はい。理解しています。私はまだ未熟で自分の妹さえ守れない愚か者です。そしてまだ皆さんが納得するような頭目としての力も備えてはいない。自らの至らなさ、不甲斐なさを悔やみます。」
『分かっているのならいい。この大会中でも精進するのだな。見たところ昼餉もまだなのだろう?我々は疾く失せるゆえ、さっさと食べてしまうがいい。』
重く、渋く、低く。自分の心の奥底に八雲さんの言葉が響く。それからそれぞれの使い魔が霧散していく。この生徒会室には私以外の人間はいなくなった。>>842
だが。
「廊下で盗み聞きとは頂けませんね。仮にも教師の貴方がそのようなことをしていいのですか、宗美先生?」
私は外……廊下で今の会話を盗み聞いていた同じ参加者の1人、宗美樹に声をかける。宗美先生はドアを引いて生徒会室に入ってくる。
「よ、よく気付いたね九重さん……。で、でも勘違いしないでほしいんだ。僕はただ、君と協力出来ればと思って……」
「言い訳は結構です。何よりも私が貴方と協力するメリットがありません。」
「メ、メリットならあるじゃないか……僕達は同じ島を守りたいという思いを持つ同士だ!」
……これは呆れた。さっきまでの会話を聞いておきながら、よくもまあそんな発想が出てくるものだ。
彼のサーヴァントはアサシン。やろうと思えばここで私を倒すことも可能だったはずだ。
それをしなかった。全くもって腹が立つ。いや当然といえば当然か。彼はこの戦いの意味を何1つとして理解してはいない。彼にあるのは恐らく一種の自己顕示欲。自分を認めてほしい、ただその一点のみ。私に協力を持ちかけてきたのも、恐らく私が彼に他の人と変わらずに接していたからだろう。
だとすれば勘違いもいいところだ。私が誰に対しても平等なのは大きな波風を立てないためだ。どんな人間であれ、この島に根差す者だというのならそれを守るのが私達九家の役割の1つだからだ。だがそれは決して使命でもなければ私達九家の誰もがそんな思いを持っているなんて微塵もありはしない。私達とって九終島を守るというのは即ち私達の魔術が至った秘奥を守り抜くことに他ならない。
ならば彼をどうするべきかなど決まっている。>>843
「確かに貴方も私もこの島を守りたいという目的は同じなのでしょう。ですが貴方の『守りたいもの』と私の『守りたいもの』は決定的に違います。貴方が目的のために私をどうしたいと思うのかは勝手ですが、貴方が私の目的ための障害になるのなら、私は貴方を殺.してでも目的を果たすだけです。」
「え……?う、嘘だよね?僕をおどかしいているだけなんだろう?」
「それと今後、気安く話しかけないでくださいね。貴方は私の味方でもなければ同盟相手でもありません。私たちの間にあるのは互いに『敵』だという関係のみです。」
「ーーーーーーーーーー」
宗美先生の目が絶望の色に変わっていく。勝手に信用していた相手に現実を突きつけられたというだけなのにそれだけでそうも変わるのか。
だが同情などしない。事実、私にとって彼はどうでもいい存在なのだから。彼に抱くものがあるとすれば、それは『アサシンのマスターである』という認識だけだ。
「警告はしました。次、同じようなことをしてきたのなら……私は貴方を敵として始末します。それを忘れないでくださいね?」
それを聞くと宗美先生は膝から崩れ落ちそうになりながらも生徒会室を出て行った。嗚咽が聞こえた気もするが、それに言葉をかけるだけ時間の無駄だ。
「いいんですかマスター?アサシンのマスター泣いていましたけど……」
「いいのよアーチャー。それよりお昼にしましょう?貴方の分もあるわよ?」
包みを開けると2つの大きなお弁当箱が姿を現わす。アーチャーは驚きながらも少しだけ目の奥がキラキラしていた。
「いただいていいんですか?」
「そのために作ったのだもの。食べてくれなきゃ困るわ。」
「では、いただきます!」
アーチャーがお弁当の蓋を開けモグモグと食べていく。
さて、私も早く食べてしまわないと。────なに、か。竜胆が私にとってなんなのか、ときたか。
────理解出来ない、というのは昨日の一件で思ったのは事実。あんな行動、死の恐れを持つ人間ならば能力がない限り絶対に出来ない行為であるのに。
……でも、そう。敢えて今、それを抜きにするのなら。
「……私の可愛い可愛い協力者。それで十分でしょ?……あら、どうしたのリンドー君?」
「よく言うなぁ。お前が魔術師だって知った瞬間、問答無用で聖杯大会に引き込んだんだろ?」
「本当は暗示で済ませるつもりだったのよ?でもほら、あなたには『並』じゃ無理じゃない?」
「……そう、らしいな。てかほら、バックヤードさんの方に集中しないと」
「それもそっか。
────私にとって彼は協力者。ちょっと予想外な行動ばかりとる危なっかしいとっても大事なオトモダチ、よ?」
────その言葉に嘘偽りはない。嘘偽りがないだけだが。>>846
「まずは、お前からだ!」
ユージーンが眼を向けたのは竜胆だった。ユージーンは自分の眼と礼装内の一族の魔眼をリンクさせ一族の魔眼の効果を得る事が可能である。今発動したのは視た者の筋肉を強ばらせ硬直させる『硬直の魔眼』である。
「ぐっ!?」
竜胆が一瞬体をびくんと跳ねさせる。しかしそれだけだった。竜胆は自分の体に起きた違和感を確認するように手を開いたり閉じたりする。
「はぁっ!?」
ユージーンが驚愕するのも無理はない。この魔眼はかなりの強制力を持ち手練の魔術師ならレジスト出来るであろうが少なくともろくに魔術師として鍛えていない者が不意討ちで食らったものをレジスト出来るはずが無いのだ。
「チッ!やっぱあれちゃんと読み解いてから仕掛けるべきだったかっ」
「隙あり!」
初海が鉄扇で殴り掛かるのを寸での所でバックステップして躱す。そしてそのまま距離を取ると大きく息を吸い
「好きに暴れていいぞ!バーサーカー!!」>>847
マスター同士が交戦しているのを見てキャスターと軽く打ち合っていたバーサーカーはその指示を聞き歯を見せて笑う。
「はっ!そりゃあいい」
バーサーカーはキャスターが振るっていた刀の腹を横から殴りつけ弾くとキャスターが銃を構えているのも意に介さず腕を振り上げる。
「仕切り直しだ。悪く思うな!」
「っ!伏せろ二人とも!」
「もう遅い!!」
バーサーカーが拳を振り下ろし地面を強く殴りつけた。その威力は暴力と呼ぶのに相応しく人外の怪力によって齎される衝撃が地面を揺らした。
「うわっとと」
「ほら、ちゃんとなさい」
急な地震に足を取られ倒れそうになる竜胆を初海が支える。その隙にユージーンも揺れに耐えながら初海の能力の範囲外へと退避する。
「さあこれで心置き無く1対1だ。ガチンコ勝負といこうじゃねぇか」
「阿呆か、俺がお前と殴り合って勝てる訳がないだろうに」>>792
――ふむ。
顎に手を当て思案したモーシェは身体を屈め、リオナと目線を合わせるように問答を始める。
「親御さんはどうしたのですか?貴女のような身体で遠くまで来るのに歩いて来るのにはそう時間がかからない、というものではなかったでしょうに」
「そんなの、もう死んじゃったわよ。スカーフェイスの奴にやられてね」
「スカーフェイス、とは」
なにやらきな臭いものを感じ取り、眉を顰めるモーシェは会話の中で出てきた個人名の詳細を迫る。
「今の神酒の制作者よ。元々は私の両親が作っていたものなのだけど、ソイツに奪われのよ。で、神酒は衣食住全て賄ってくれる優れものでね。これ一つあれば老いもない。死もない。より上位のソンザイになれる。それで皆が皆それを巡って殺し合いになったってワケ」
「……なるほど」
瞳を閉じ、内心の怒りを包み隠し、結論をまとめる。
つまり、この異聞帯の人間は薬物による耽溺、人間的文化的生活に崩壊によって滅んだ、という訳だ。
生前聞き及んでいた東の国で宗教団体――、現在のカルデアで召喚されている山の翁(ハサン)達の好んでいた麻薬(ハシッシ)のようなものだろう。>>849
聞けば、今の神酒は高い依存性を持ち、定期接種しなければ精神に異常をきたし、怪物に変貌するという。
どこまでが本来の想定であったのかは定かではないが、少なくとも、神々の領域に手が届いたその魔術師、神域の天才と見える。それを模倣したスカーフェイスも。
とはいえ、もはや故人でしかない為、その思惑を推し量ることしかできないが、その一部に同意出来る部分もある。自分とは道は相いれないが。
「貴女は――、何のために戦っているのですか?」
「復讐よ。パパもママを殺して神酒を奪ったアイツを殺.してやるのよ」
「そうですか」
それはいけない――、等とは言えない。勿論、止めるべきだとは思う。手を汚すことはこの先の人生に深く影響を与えることだ。それが例え悪人だったとしても。
「ありがとうございました。そして、辛いことを思い出させてしまってすいません。
それと――」
モーシェは立ち上がる寸前に微笑みながらリオナが吸っていた酒タバコ、そしてタバコを漬けていた酒を取り上げる。
「これは身体に良くありませんよ。まだ子供に、いえ大人であっても害のあるものです。これは没収とします」>>850
「ちょっと!アンタ人の話を聞いてなかったの!?私はもう子供なんて歳じゃないって――」
奪い返そうとジャンプをするリオナをハハハとフラフラと避けながらその言葉を遮るように告げる。
「いいえ、貴女は子供ですよ。どれだけ年月が経っても身体が成長しないように、貴女は子供のままです。ですから……」
一旦言葉を切り、何というべきか選びながら
「ですから、難しいことは大人(私達)が片づけます」
そう言って、頬を膨らませているリオナの頭を優しく撫でると、このメトロポリタン美術館を拠点に神殿の作成をしてきますね、と言い、蔵書から取り出した一冊の魔道書のページのいくつかを使い魔にし、その場を去っていく。
その後ろ姿を見ながら立花は既視感を覚え、すぐに何かを思い出す。
(……あ、そうだ。この異聞帯に来る前、ダヴィンチちゃんと言い争っていた時と似ているんだ)
あの時はすれ違っても大丈夫なように振舞っていたが、彼は大丈夫だろうか。「あゝ無慈悲。なんと残酷たる爪か。天よ、なぜ我にこの様な試練をお与えなさるのか!」
バーサーカーの繰り出す重すぎる爪を何度も何度も剣で受け流しながら芝居掛かった大仰な動きと声を上げるキャスター。実は筋力と耐久が高いせ生前も色々あったので白兵戦も割と得意な狸であった。
「何言ってんだお前。ボケたんならとっとと脳漿ブチまけてくたばれよ」
「もーっひっどーい!狸はストレスに弱いんだぞぉ〜?そんな事言うとー、滅ッ、だよ?」
呪符を取り出し、刀に貼り付け業火一閃。炎華は真っ直ぐにバーサーカーの首元に駆け───
「舐めんなよ老害狸」
拳の一つで簡単に打ち払われる。そして、その勢いのままバーサーカーはキャスターの元へ到着し、受け流そうとした刀ごとキャスターの左腕をぐちゃぐちゃにへし折る。
「───いったーい!死んじゃうじゃんかー!……はいお返し」
流れた血を利用し大きめの呪詛をぶちかます。毒を孕んだ氷牙は待ってましたとばかりにバーサーカーに食らいつくが、蹴りの一つで簡単にへし砕かれてしまう。
「……この程度かよ?面白みがねぇなぁ!」
「面白みとかないからね、俺。いつからいつだってフルスロットル大はしゃぎ。いつだって夢はパーリナイ。でもリアリストだから」
腕を治しながらとんとんとバックステップを取るキャスター。そこを勝機と取ったバーサーカーは思いっきり追いかけ───「……!小細工ばかり使いやがって……なぁ!」
バーサーカーの腕の肉が腐り、風の刃によってズタズタに切り落とされる。それもそのはず、キャスターが指の一振りだけで仕込んだ風と冷気の刃を腕で受けてしまったためだ。
「勘が良いというか、目が良いというか。疎ましや疎ましや。
〝声は今高らかに。我の手は抱き潰す〟」
キャスターの腕の一振りでもう片方の腕を潰す程の気圧を加えた風弾と、顔半分を消し飛ばせるであろう熱線がバーサーカーを襲う。
「……漸く力を見せたじゃねぇか!そうだ!それで良いんだよ!」
顔は避け、腕も手を犠牲にはしたが風弾を飛び越えてそのまま肘でバーサーカーがキャスターの右肩を砕き貫く。
「……痛い、そんなポンポンと身体を壊されては堪ったものではない。乙女は優しく扱わないとなんだぞ〜?」
「お前が乙女なわけあるか。本当に乙女なら囲ってるわ。てかお前の術で俺の体もボロボロだわこんちくしょう。だからお互い様だよ……なっ!」
バーサーカーの全力の頭突きを神通力を利用した空間圧縮と最大限強化した頭突きの合わせ技で対処するキャスター。
───二匹の大妖怪の顔は、どちらも荒々しく、それでいて美しくて。「───はっ、楽しいなぁ、隠神刑部!骨砕き肉を裂く!それでこそ、それでこそだ!」
「儂に闘争を喜ぶ心などない。生きるか死ぬかだ。───まあ、楽しくないかといえば、否だな」
神通力による速度増加で空間転移とは言わずとも、速い動きで後ろに下がった狸は、また術式を展開する。規模に限界はまだ訪れない。
「〝夢は遠く、されど確かに。私の破滅は凡ゆる総てに届く。世界を騙す幻灯は、私と貴方を騙す〟
───闘いたいならさ。こっちの方が、好きだろ?」
十、二十……その数を軽く越える光の線が傷を修復したバーサーカーを襲う。一つ一つに程度は低いとはいえ呪詛まで込められた一品だ。>>824
「思いのほか粘ったが、終いだ。我が同胞達の命、その身で償うが良い」
巨大な尾鰭でアスファルトを薄氷のように抉り撒き散らしながら、幾重にも重なった闇色の牙が混血の魔術師へ迫る。
今や隻腕で息も絶え絶えの彼女に活路はないように思われる危機的状況の中、ゲルトラウデのとった行動は意外なものだった。厳しく釣り上げていた目尻を緩め、不敵に笑ってみせたのだ。
「『思いのほか粘った』……?そうね、私も同感。アーチャークラスのサーヴァント相手にまさかここまで時間がかかるなんて。いくら弱体化しているとはいえ、気が緩んでいるのではないかしら、"ライダー"?」
一閃。
獲物を頭から呑み込もうと飛び上がった海の怪物が、真っ二つに裂けて地に転がった。
飛び散る血肉の中、軽やかに着地した白銀の騎士は、その衝撃を利用して爆発的に跳躍。身の丈を超える大剣を軽々と振るい、返す刀でロワインの首を切り落とす。
「なんだとっ……!?」
激しい衝撃に晒された体は水風船のように破裂し、地面へと吸い込まれるようにして消えていった。>>855
◆◆◆◆◆◆
英霊同士の超常的な戦いに決着の転機が訪れたのは一瞬の出来事だった。
一丁上がりー。
ライダーの懐に潜り込んだアーチャーが、霊核に小銃を押し付け引き金を引いた。
空気を切り裂き銃声が響き渡る。
しかしながら、膝をついたのは狩人の方だった。
銃弾が放たれる直前、ライダーは鋭い洞察力でそれを察知し、跳ねあげられた大剣の重心をあえて遠くへ伸ばすことで無理やり体を捻ったのだ。
銃弾が体を大きく抉る。しかし、致命ではない。必殺の一撃を放ち隙だらけのアーチャーへ、ライダーは大剣を振り下ろした。
特攻効果により、大した抵抗もなくアーチャーの胸元が深々と切り裂く。
「はああぁあ!」
ぐらりと傾くアーチャーに向かい、トドメの二撃目を放とうと大剣を引く。だが、そんなライダーを迎えたのは大量の銃弾だった。
至近距離からのそれを捌ききった後には、既に弓兵の姿は消え去っていた。>>856
◆◆◆◆◆◆
「遅くなり申し訳ありません、マスター」
満身創痍で礼を尽くすライダーに対し、冷血の女主人は剣呑だった。
「私の主義を知っているでしょう」
「殺めてはいません。マスターの『食事』によって、かえってスキルが上手く発動しなかったようです」
「アーチャーは?」
「……戦闘不能へ追いやったものの、取り逃がしました」
「もう、やられ損じゃない」
ゲルトラウデは空を仰ぎ見て深いため息をついた。それから、自分も大きな負傷を負っていることを思い出した。魔術で痛覚を遮断しているが、流血が止まったわけではない。放っておけば命に関わる可能性がある。
「とりあえず工房へ戻るわよ。流石に正面から行くと面倒なことになるから、ライダー、私を運びなさい」
開始早々、サーヴァントのもつ多くの武装が剥奪される。それだけでも頭の痛くなる話だというのに。様々な不安要素が渦巻く聖杯戦争。思惑通りいかないと今更ながらに思い知り、とっても不幸な気分になった。>>857
以上です。
弓陣営は一時戦闘不能状態で3日目を迎えます。
よろしくお願いします。>>857
支援「───あら、マスター。私にこのような服を着せて頂いて。宜しいのですか?」
ランサーが、洋服に着替えながらもマスターに問いかける。あくまで自分は使い魔。使い魔に服を支給するような主人はあまり聞いたことがない。
「勿論。貴女は現世を楽しみたい、そして私は貴女の雇い主としてそれを叶えてあげる責務がある。……でもほら、現代じゃ着物姿で歩き回る美女なんて中々いないもの。だから、服は我慢してね?」
「……ええ。この衣を、慎んで受け賜わりますわ、マスター」
────広場
「楽しい?おゑい」
「───ええ。とっても」
人が歩いている風景、それを見るだけでもランサーは楽しそうだ。
「人の文化の多様性というのは、ただ歩いているだけでも感じられるものですね。理知的なもの、少し粗暴なもの、無垢なもの、愛らしいもの。……ケモノのように、近しい存在というのが少ない感覚です」
「───そう。喜んでもらえていると受け取っておくわ」
映画を見て、食事をして、人が作りあげた芸術品を見る。それだけでも赤ゑいにとっては今回の現界で収穫があった。だから今、彼女は楽しんでいる。
「……そうね、明日からは動くことになるもの。じゃあ私からも、人の文化を見せてあげる」
「マスターが……ですか?」「ええ。こっちよ」少し歩いて、辿り着いたのは日本では少し珍しい美しい噴水の吹き乱れる広場。シルヴァは、そこにスーツ姿で待機している男性の下に近づいて───
「御無沙汰しております、天音木です。打ち合わせの時刻に参りました」
「おお、此れは此れは。用意は出来ております。そちらの用意はどれほどで?」
「大してかかりませんよ。……では、早速用意を始めてしまいましょう」
そしてマスターは、手馴れた手つきで鞄から人形と糸を取り出し、準備をし始める。かちゃかちゃと操作性を確認したり、自分の声のチューニングをしていたり。
「……ねぇあれ!天音木さんじゃない!?ほら、ウィンスタのあれ!」
「あ、知ってる知ってるー!あれだよね、テレビでも最近出てた人!」
「なんでこんなとこいんのかな……もしかして劇するの!?」
……そう言えば、歩いていた時もそういう声が聞こえていたような。道行く人たちのコソコソとした声を聞きながら、赤ゑいはふと聞いてみる。
「マスター、あなたってもしかして、世間一般で言うところの有名人だったりします?」
「んー……まあ、そうね。元から外国では人形や花の方では有名な方だったんだけど、動画配信サイトで人形劇の動画投稿したり、SNSで色々自分の花とか人形の紹介してたら、俗に言うバズる?っていう奴、アレになったみたいで。テレビにも最近よく出るし。だからまあ、有名人かしらね?」
「……おおー」
試しに赤ゑいがマスターから貰ったスマホで『天音木シルヴァ』と検索してみれば、出るわ出るわの我がマスター画像。本当に有名人らしい。
「……さて、この話はここまででいいでしょう。準備が出来たから、私は舞台で最終調整をしてくるわ。……おゑいは、観客席にでも待機していて?」「さあさ皆様!今回のこのイベント、飛び入り参加で今話題の人形師、天音木シルヴァさんに来ていただいております!」
「はーい、皆さんこんにちは。天音木シルヴァです。……年甲斐もなく、シークレット枠として来ちゃいましたけど、お手柔らかにお願いしますねー?」
ニコニコと、美しい笑顔を浮かべながら観客に一礼をするシルヴァ。
───そして、人形劇が始まった。
ストーリーはこうだ。人の天命のままに命を奪う死神が、とある薄命の少女との出会いを機に『命を奪いたくない』と始めて思うという話。
……何処かを探せば、きっとある話。それでも、彼女の魅せ方は凄かったのだ。
『────死神さん、私ってもうすぐ死ぬのよね?』
『……うん。そうだよ』
『死神さんが、私を連れて行くんだよね?』
『────あ、ああ。うん。そうだね』
『────どうして、泣いているの?』その一つ一つの躍動感は、溜息が出るほど美しい。人形の精巧さのみではない。彼女がこの劇にどれほどの力を入れているのか、どれほど感情を込めているのか。
────どれほど、愛があるのか。
『僕は、君を絶対に離さないよ。……その為なら、死神なんて辞めてもいい。一緒に逃げよう』
『……私のために、死神さんの人生を棒に振るなんてダメよ。お願い、大人しく私を殺して。わかるでしょう?』
────物語の結末は、ハッピーエンドだったのだと、思う。愛の果て、苦悩の果てに二人は手を繋ぎあって、追手が消えるまで何十年、何百年も眠って、希望に満ちた朝の光を浴びて目を覚ます、というもの。
「────以上、『蒼白姫と赤黒さん』でした。御清聴、有難う御座いました」
大きな拍手が巻き起こり、中には凄かったよ!なんて声をかける人もいる。人々の全てが、その劇を見て楽しんでいたことがわかる笑顔で。
『───私ね。人の笑顔が大好きなの!その為に、世界中を旅するぐらいにね!』
マスターの言いたかったことが、少しわかった気がした。九終投稿します
>>864
「あ"ー…」
数えるのも億劫になる程の光線。それら全てがバーサーカーを射抜かんと遅い来る中バーサーカーはどう対処するか考えるが頭を振る。
「しゃらくせぇ、ユージーン!」
「分かってる、よっ!」
ユージーンが手にしたトランクを弄る。それとほぼ同じくしてバーサーカーの手や足元から水が湧き上がる。バーサーカーのスキル鬼種の魔に複合されているスキル魔力放出(水)である。
「ぅらぁぁっ!!」
バーサーカーが力任せに腕を振り抜くと同時に大量の水が波のように立ち上り光線を打ち消したり軌道を変える。何本かは波を貫通してバーサーカーを貫くがその程度では止まらない。傷口から血が流れ出るのも気にせず爛爛とした目を見開く。
「はっはぁ!魔力放出解禁の第二形態ってな!全速力でいくから精々気張るか黙って死.ねや」
「自分は微塵も死ぬ気がないなんて片腹大激痛だZO☆酒呑君ったらだっいたーん!!
────お前が俺についてくんだよ。わかってるか?」>>865
バーサーカーとキャスターの戦いは熾烈を極めた。魔力放出で加速するバーサーカーの猛攻に追い付かんとキャスターもまた神通力と妖術の数を増やす。
「はっ!やるじゃねぇか。正直お前が近接でここまでやるとは思わなかったぜ!だが、ちまちま剣や炎飛ばしてるだけじゃ勝てねぇぞ!」
「んー、これでも精一杯やってるんだけどナー。こんな風に」
キャスターが指を鳴らすと炎を防ぐためにバーサーカーが纏った水の渦が忽ち凍り付いた。勝負あったかに思えたが氷塊に亀裂が走る。
「だらぁあっ!!今のは危なかった、危なかったぞ、コラ!」
氷塊を蹴り破り腕に着いた氷を振り払う。
「やぁだ氷漬けにしても動くとか反則じゃんよ。変温動物のくせに」
「誰が変温動物だ誰が」
「ふん、その身に纏う神気に聞いてみい」>>866
「神気…神気ねぇ…最初の時もそんな感じだったが、どうやらお前は俺を“そういうもの”として見てるらしい。なら…」
バーサーカーが左手を顔を覆うように広げ、そして牙を見せて笑う。すると周囲に黒い瘴気が漂い始める。
「見せてやるよ。お前が言う神気、その大元をな!」
「伊吹…」『止めろバーサーカー』
ユージーンが念話で制止する。
「あん?どういう事だ」
『流石にここで宝具を使うのはまずい。島の住人に被害が出かねないからな』
「………チッ、しゃーねぇ。お前がそう言うなら止めといてやるよ」
バーサーカーが左手を顔から離すと周囲の瘴気が霧散する。
「へいへーい鬼さんビビってるー?」
「っ、なあやっぱ宝具で」「駄目だ」「駄目かー」
そんな気の抜けそうなやり取りをしつつこの場の誰も油断はしていない。一瞬でも隙を晒せばそこから喰い殺されると全員が分かっているのである。深い森林に響く鉄と鉄のぶつかり合う音。
およそ森に自然と発生する音ではない。
人間がいるという証拠であろう。
この森にいる動物たちは凶暴だ。
剣劇の音など恐れはしない。ただ獲物の位置を知らせるだけにしかこの森の生物たちにおいてはならない。
だがことこの音の発生源においては話が違う。
音が聞こえると一目散に逃げだした。
音が怖いのではない。その出しているものをこそ獣は恐れている。
剣劇の発生元には二人の影。一人はまだ幼い子供だ。整った顔立ちで女の子かとも思ったが年に似つかわしくなく傷つき、鍛えられた体から彼が少年なのだと分かる。それだけではなく目を引いたのはその剣技だ。流派と言えるほどの華麗さはまだない。だがその一太刀一挙動が歴戦の戦士のように研ぎ澄まされている。少年を見るに獣たちが恐れるのも理解はできた。だが獣たちが真に恐れていたのは少年ではない。少年には分かっていた。およそ自分ではこの森で生きてはいけぬと。>>868
少年は今組手を行っている。これは彼にとっての日課でありこの森に来てから毎日やっていることだ。この森へきて日々を数えることもずいぶんと前にやめた。だがいまだに少年は相手に一撃も攻撃を当てていない。少年はいつも本気である。今では一振りで石を砕き薪も大木から作ることもわずかな時間でできるようになったほどだ。だがそれでもなお相手にははるかに届いていない。
目の前の男を見る。眼光は鋭く森の獣をどことなく思わせるがたとえ獣であってもその目で射抜かれたときには怯えで動けなくなるようである。髪は白髪で無精ひげも生えているがどこか育ちの良さを感じ正装をすれば美丈夫になると感じた。だがそれ以上に彼がかとう空気からは戦士のこいオーラのようなものを感じた。組手中に男は少年の攻撃を主に受けている。少年の全力の一撃であっても難なく受け止める。そして少年が出した隙を的確に鋭くつき攻撃をする。少年が剣を横に振るとそれをよけたうえで空いた腹に攻撃をする。振り下ろせば受け止めたうえで距離を詰めた上で剣による突きを放つなどである。少年の剣技が無骨ながらも経験の詰んだような動きであることは間違いない。だがそれでさえまだ圧倒的な差を生んでいた。男の剣技は静寂である、だがこと攻撃の際には少年の数倍の苛烈な一撃に変わっている変幻自在の剣技であった。
少年の一撃は石を砕くが男の一撃は岩を両断するのだ。一切の無駄がない剣技。それが男のつかう剣である。
少年はこの男から剣技はもちろん様々なことを学んでいる。座学に体術、サバイバル知識に薬学などである。厳しい毎日ではあったが少年にとっては苦痛ではなかった。
それは生まれて初めて敬愛していた人物からの教えであったからだ。どこまでもついていきたいと彼は思っていた。
そして彼と■■の望みのためであるならどんな苦行だろうと超えることができると彼は信じていた。
今にして思えば
彼にとって一番幸福だったのはいわばこの時であったのか―――>>869
朝の穏やかな空気と日差しが差し込む小屋の中で不機嫌そうに玲亜は座っていた。
「なにをふてくされている。今日は学園へと行くのであろう?はやく準備をした方がいいのではないか?」
「どうして起こしてくれなかったの?」
朝から椅子に座りテレビを見ている自身のサーヴァントに対して不満を述べる。1日目の夜につかれたあまりしばらく寝ると宣言したあと目が覚めたら今日の朝であったためである。つまり丸一日以上寝ていたということである。
「起こせと言われていないからな。」
「少し寝るって言ったんだから明らかに寝すぎだってわかるでしょう!」
「知らんな。それに睡眠自体は悪いものではない。お前は俺を召喚した後にサーヴァントと遭遇、さらに言えば俺を呼ぶ前から色々と消耗をしていたのであろうよ。ならば特になにもない休養をとれるときに取っておくことは有益であろうさ。」
「むう…」
簡単にやりこめられたことに納得がいかない部分はあるがついでの言葉が浮かばない以上は押し黙るしかない玲亜である。
この数日会話をしたことで多少はこのサーヴァントの特徴が分かってきたように思う。ことこのサーヴァントは必要なことはやるが不要なことはやらない。ようするに必要最低限以外のことは言わないとやらない。気遣いの部分とかそういうことは一切ないのだ。だが多少安心した部分はあった。アヴェンジャー。復讐者のサーヴァントである以上バーサーカー以上に制御が不可能であると思われたがそうではなく意外と義理堅い印象は感じていた。とはいえいまだ彼の真名は分かっていないのだが、せっかくの機会だし気遣いなどを考えない相手にはこちらも無遠慮に聞いてみることにした。>>870
「ねえアヴェンジャー?」
「なんだ?」
「あなたの真名ってそういえば聞いてなかったけど何なの?」
「俺の名など聞いても意味はない。お前たちがあこがれる英雄と呼ぶものとは違うからな。」
そういうと話すことはないというように視線をテレビに戻した。これ以上の会話の余地はないのだろう。
(唐突すぎたかしら…うーんいつか聞けたらいいけどどこの英霊もそんな感じで真名は隠すものなのかな?あれ?監督役から留守電?)
そう思いながらふと携帯に目を向けると留守電メッセージが入っていたことに気づいた玲亜。メッセージを聞くと…
「え…ええ?はあ?うそでしょおおお!!!」
「やかましいなんだお前は百面相か?」
「ニュース!みせて!」
チャンネルを変えるとニュース画面に映る昨夜の出来事の考察と状況説明。専門家の意見から街の声など様々であった。わなわなと震える玲亜。
「ああ、昨日感じた巨大な魔力の件か。」
「アヴェンジャー!あなた昨日なにもないって言ってたわよね!起きてるじゃないの!とんでもない事態が起きてるじゃないの!なにしてんのあんたは!」
「なにもこちらを狙っての攻撃ではなかったのでな。関係ないとスルーしたまでだ。」
「んな!」
こともなげにあっさりと語るアヴェンジャーに衝撃を受けるとともに怒る玲亜。
「関係あるでしょ!あれはどう見ても魔術師の仕業なら私たちが対処しなくちゃダメでしょう!」
「……行ってお前に何ができた?」>>871
え?
アヴェンジャーの口からトーンの低い声が聞こえて思わず間の抜けた声が出た玲亜。
「あの事態に駆け付けたとするがお前になにかできることがあったか?少なくともあの規模を穏便に解決できる手段を俺は持っていない。お前にはできたか?」
「あ…そ…それは…」
言い淀む。
「他人に優しいのはお前の勝手だ、お前が好きにすればいい。だができないことに手を伸ばせるほど俺にもお前にも余裕がない。俺はこの戦いに勝つために呼ばれたサーヴァントだ。それ以外のできもしないことをするつもりはない。」
「…だからと言って見捨てていいというの?」
「そんな言葉は自分が優秀な魔術師になってから言うのだな。行って目の前で悲劇を見て自分の無力さを噛みしめるという結果しか出ぬだけだ。そんな無駄なことをするぐらいなら魔力の回復に努めていた方がよほど有用だ。」
「………」
玲亜には反論はできない。アヴェンジャーは必要なことしかしない。彼の言葉には配慮がないが逆に言えば事実しか言っていないのだ。彼の言葉は彼女自身が分かっていてそれでも目をどこか背けていた事実に過ぎない。その言葉は重い。……だが…それでも…
「……今後もあなたは気づいていても私の力量を超えたことは伝えないの?」
「当然だな。無駄なことはしない。この戦いに勝つためにな。」
「そう…わかった…なら私もやりたくないことをするわ。」
「何を…?お前まさか!」
そういうと玲亜は右腕を前に出し、>>872
「令呪をもって命じる!アヴェンジャー、今後私に魔術師がらみで完治したことを隠さず報告をしなさい!あなたも所感も含めて!」
令呪が輝きその命令が行使される。それと同時に一画が失われた。
「チッ!この愚か者が!貴重な令呪をこんな無駄なことで使うとは!」
「ええ、でも必要なことよ。あなたにやりたくないことをさせるんだから私だってそうするわ。これは私のただのエゴ。でもそうじゃないとダメなの。そんなエゴを通すためにこの戦いに私は参加したの。そうしないと意味がない。」
はっきりと自分の我儘であると肯定した上でアヴェンジャーを見据える。
「………ああ分かったよこのお人よしのダメマスター。好きにしろ。」
そういうとアヴェンジャーは霊体化し姿を消した。
(ひとまず納得はしてくれたってこと…よね?)
玲亜は一画の消えた令呪を見つつ街を守るという決意を改めて強く誓った。>>874
悪態をつきながら霊体化したアヴェンジャーは指示を仰ぐ。
「どうするもなにも戦いなんだから倒すわよ当然ね。」
「そうか、ならすぐにでも終わらせてやろう。今でも構わんぞ」
「待ちなさいな。こんな人が多いところで戦いなんてできるわけないでしょう?」
「人気のないところに行ったときにやれば一瞬で終わる。」
「いやあなたでも難しいでしょう。相手のサーヴァントは少し見ただけだけどなかなか強敵そうだったわ。」
「ああ、だからこそ今ならできる。サーヴァントがいないからな」
「ええサーヴァントがいな……んん?」
反応を返しながら何かがおかしいことに気づいた玲亜はアヴェンジャーに尋ねる。
「……ね…ねえアヴェンジャー?もう一回いってくれる?」
「は?いまならサーヴァントを霊体化して近くにいないから一瞬で行けるといったんだが?」
その言葉が聞き間違いでないことを確認した玲亜
「ふ…ふふふふふ…そう…数日前に…あんな目にあっておいて?いま無防備でここにきてるんだあ…ふふふふふふ」
不気味な笑いを浮かべながら玲亜はすたすたと歩くと。
「ねえそこのあなた、ちょっとお話いいかしら?」
亥狛に話しかけた。────さて、この場でやれることは全て終わった。相手は宝具を見せる気はなく、かといってあれ程までに力を持ったコンビがそう簡単に自分達から退くとは思えないし、その状況に持ち込むのも困難を極める。……故に。
『────隠神、聞こえるな?』
『……応とも。なんだ』
『撤退する。俺がいう手筈通りに術を使ってくれ。……勿論、相手に気付かれないように、だ。出来るか?』
『お前、俺をなんだと思ってるんだ?稀代の詐欺師、四国の妖を統べる長だぞ?────出来ないわけがない』
『じゃあ、今から言う通りに。初梅には通さないでくれ』
続いて竜胆は、作戦をキャスターに伝えながら自分をユージーンの視線から遮る位置に佇む初梅に呼びかける。
「初梅、お前は今からユージーンさんに突撃かけてくれ。何があっても止まるな。強化と体術は得意なんだろ?」
「……まあ、出来ないこともないけどアンタは?私のガード外すの?」
「勿論。────やってくれるか?」
「学年主席様の思うままに。……じゃ、行ってくるわ」
常人を超えた速度で斧を構えて駆け抜ける初梅。それと同時に、派手に響く爆発音と大閃光。……さあ、ここからが己の勝負所だ。
「……でも確か、あいつは次席だよな」「よお狸!この程度で俺を止められると思ってんのか!?」
「……んな訳ないだろ。でもないよりはマシ」
練り上げた呪による大閃光。現代のフラッシュバン二倍に相当する目くらましはサーヴァントや魔術師などの超常の存在でない限りは、容易く視界を数刻と奪う。その両者であっても、完全なカットは難しいだろう。
「────殺意0の瓦礫を撃っても当たって砕けるとかさてはオメー理不尽の塊だな?」
「ったりめぇだろ!鬼が人の不条理をどこまでも覆す不条理な存在でなくてなんとする!」
「……これだから鬼は嫌なんだ。策を練って此方を嵌め殺そうとする輩(にんげん)よりもタチが悪い。手駒にすることも出来ず首を飾るしか出来ないからな」
呪詛と水の応酬が続く。砕いて呪って裂いて喰らう。互いが互いを嘲り、殴り、転がし、へし折る。損傷と回復、破壊と再生、生と死を繰り返し続ける妖魔二人。
───竜胆は、一人ユージーンと睨み合っていた。彼の魔眼を微塵も恐れることなく、真正面から覗き込む。「……“水籠初梅は何処に消えた”、か?ああ、別に俺は心が読めるわけじゃない。お前がわかりやすいほどわかりやすかっただけだ」
「あっそ。……で?あんたはお守りが居なくて大丈夫なのか?」
「勿論。────お前の魔眼程度じゃ、俺の考えなんて暴けねぇよ、偏屈野郎」
その程度か、バックヤードという存在は。歴史は。そうとっても構わないというような口ぶり。
「はっ、大きくでたな。俺(バックヤード)を侮辱するたぁいい度胸だ。……お望み通り、言いたいこと隠したいこと苦しいこと。全部暴き倒してやるよ、引きこもり」
手始めに、ユージーンが読み取ろうとしたのは初梅の所在だ。初梅は何処にいるのか、何をしようとしているのか、そして彼等の企みは何か。
………だが、その心の壁は余りにも厚く、厚い。
「俺、嘘をつくのが苦手でな。どうしてもボロが出るんだ。……だから、嘘はつかないし、絶対にそのことについては喋らねーし明かす気も毛頭ない。ほら、暴いてみろよ」
カチリ、という音と共に竜の盾を起動、防壁を構築して真正面から挑む。相手もしっかりと此方を見据える。たとえサーヴァント同士の激突で砂埃が舞おうと関係ない。ただ純粋に、相対する。
────なんて訳もなく。「────!」
背後から走ってくる一人の少女。少女は斧を真っ直ぐ構えて、跳躍。思いっきりユージーンの肩を叩き割ろうとする。……だが、ユージーンの動きに動揺は見えず。簡単に初梅の攻撃を避ける。
右、左、ど真ん中。その全てを見えるが故に躱し続ける。
「ま、姿が消えたら背後から来るのは常識だよな。それで?」
硬直の魔眼が跳躍した初梅の行動を留める。その場から一切動けなくなった初梅に向かって悠々と次の対処をしようとするユージーン。
「────おい、お前は何を勘違いしてるんだ?」
はらり、と水に溶ける薄紙のようになる初梅の身体。それと同時に、初梅だったものの真下をスレスレで潜り抜けて鉄扇を振りかぶる初梅。狙うはトランクだが、そこはやはりバックヤードの悲願。全力でそれを回避するユージーン。「知ってる。だけど一発は貰っていくわ」
思いっきり、とまでは崩れたフォームではいかないが、それなりの力でユージーンを蹴り上げる。
「───おいおい、俺のマスターがエライことになってんな。お前か?狸」
「さあ?御主のマスターのことなど俺が預り知らぬ所だし……おお痛い痛い。骨を容易く砕かんでもらいたい」
「惚けんなよ。……一瞬、お前の動きが鈍った所で思いっきり仕掛けたがまさかその隙は術の仕込みだとはな。……見事にやられた。どうせ今も既に仕込んでるんだろ?」
「あ、バレた?そうそう。そろそろ逃げたいと思ってたから、逃げる用意してるんじゃよね。こんな風に」
呪符から絶え間なく溢れ出す風の波と砂が視界を容易く奪い、砕かれた骨から発生する呪詛がキャスターの霊基を隠匿する。
「ではな、『伊吹童子』殿。次はそう、もう出逢うことがないことを祈る」
がしっという人を掴む音と共に、キャスター陣営は消える。「……マスター、あいつら逃げたぞ。てかなんで蹴りとか喰らったんだよ」
「あ゛〜……あれだ、多分幻像の水籠と本物の水籠の動きをシンクロさせてやがったんだな。だから思考は読めた。恐らく本物も途中で気付いてそれに対応した動きにしたんだろう。恐らく、あっちには自分の攻撃が届く前に回避行動を取るように見えたんじゃないか?」
「途中で気付いたんならそれも思考に出るだろうよ。対処は?」
「……俺にそんな格闘スキルを要求するなよ」>>882
しかし自分に用とは一体なんだろうか。
皆目見当が付かないまま会話に応じることにした。
「それもそうか。それで、俺に何か用でもあるのか?
運動部の助っ人はもう金輪際受けないつもりだから、その件だったら残念だけど……」
「あ〜〜〜…のね、ちょっと。貴方本気?」
気丈に腕を組んだ彼女は、やや引きつった笑顔を浮かべている。
額には青筋。
だが亥狛には彼女が怒る理由について思い当たる節はなかった。
玲亜は一つ大きな溜め息を吐くと、右手の甲をちらりと見せる。
「──────!」
隠蔽術式が施されているのか、廊下を歩く生徒達に奇異の目で見られている様子はない。
だが彼女の右手には赤い墨が刻まれているのを亥狛は確かに認めた。
赤い刺青の様な紋章、画数にして二画。
三画目にあたる場所は消失して、その痕跡が微かに残っているだけだった。
「お前それ、令じゅっ────!」
「……ちょーっと、別の場所でお話しましょうか?」
令呪というワードを口にしようとした途端、玲亜は慌てて彼の発言を阻止した。>>883
気付けば青筋は一つから二つに倍増している、余程腹に据えかねる事でもあるらしい。
こういう時は大人しく従う方が良いぞ、女とは嵐の様なものだから。
女魔術師であるシスカ・マトイス・オルバウスがそんなことを言っていたのを思い出す。
人として生きる為に培った理性と、獣として生きたが故に育んだ直感が同じ結論を導き出す。
─────ここは大人しく付いていくのが吉だぞ、と。
昨今の教育機関に於いては珍しく、この学園は屋上を一般開放している。
と言っても屋上にはぐるりと高いフェンスが張り巡らされ、自殺防止は万全な上での開放なのだが。
モスグリーンの床に味気のない鉄製の柵はまるで空の抜けた檻のようで、今一つ人気がないのか閑散としている。
だが人の気配がないのは何も人気のなさだけに拠るものではない。
今学園の屋上はごく簡易的な人払いの魔術が施されている。
恐らくはOpila(オセル)のルーンを利用したものだろう、と亥狛は推測を立てていた。
何しろルーンは北欧ではポピュラーな魔術ゆえ、北欧の森を出身とする人狼からすればある種の懐かしさすら感じる匂いだからだ。>>884
そんな魔術を屋上の四方に刻み、一仕事終えた玲亜は改めて亥狛に向き直る。
「びっくりした、あんな公然と『令呪』って口にしようだなんて」
「よく分からんが、悪いことをしたんだろうか?」
玲亜はあり得ない、と言わんばかりの表情を浮かべている。
「悪いも何も─────聖杯戦争は基本的に秘匿下で行われるって大前提の話よ、魔術師なら弁えてて当然じゃない」
「そうだったのか、それは教えてもらわなかったな。
……不勉強なもので申し訳ない」
「教えてもらわなかった、って…」
頭痛を堪えるように眉間を揉む玲亜は、どこから説明すれば良いか問いあぐねているようだ。
だが魔術師の常識などこれまで習った事もなければ触れる機会も無かったのだから、亥狛にしてみれば寝耳に水も良いところだ。>>885
「それに、そう。そうよ、サーヴァントだって……聖杯戦争中にマスター単独で日常を送るだなんて自殺行為も良いところよ。
何を考えているんだか知らないけど、そりゃ思わず物申したくもなるわ」
「…や、聖杯戦争は夜に開催されるって話じゃなかったのか?
昼は大きな争いも起こさないから、てっきり日中は休戦期間なのかと」
「それは暗黙の了解、って奴ね。
日中は人目に晒される機会が増えるから自然と避けられるってだけで、明確に規定されている訳ではない。
だから人目の付かない路地裏なり何なりで、今も聖杯戦争は絶賛継続中よ」
暗黙の了解と言うことはつまり、強制力はないということ。
魔術師の倫理観や常識から敢えて行われていないだけであって、それを反故にする人間もゼロではないだろう。
もしそんな類の陣営に襲われたら、と思うと。
ぞくり、と背中を寒さが馳ける。
「……呆れた、それじゃあ貴方のサーヴァントは今どこにいるの?」
「今は他の陣営の根城を探索する目的で、市街地を散策中だ。
急を要する場合は令呪を切って呼び出せば問題ないと思っていたけど……そうか、戦争は昼もまだ続いてるんだな」
失念していた、と自らの失敗を恥じる亥狛。
良く良く思い返せば、シスカから聖杯戦争の概要と参加手順は聞かされてはいたが、暗黙の了解や魔術師の思考などといった「より生きた知識」は一切与えられてない事に気づく。>>886
あの魔術師は放任主義と謳ってはいたが、今となってはその放任っぷりが憎らしい。
「もしかして、貴方魔術師じゃない?」
「…魔術師どころか、魔術なんかちっとも使えないよ。
聖杯戦争に参加してるのは事実だけど、魔術師の常識だとか聖杯戦争のイロハだなんて全く知らない」
人狼という生物上、魔術師とは何度か争った事はあるが。
そう言いかけて喉の奥で圧し殺.す。
「嘘は言っていないみたいね」
「ああ、参戦権を御三家から譲って貰った只の素人だ」
「そう、御三家から────ってちょっと!今御三家って言った!?」
今この場でこう思うのは酷く不誠実に思えたが、彼女の反応は一々大きいものだから面白いなぁと思う亥狛であった。
「ああ、御三家。俺の知人がその家の血族の者らしくって、聖杯戦争には関与しないからと枠を譲ってくれたんだ」
「……関与しない、って事は十中八九『オルバウス家』ね。
オルバウス。もう聖杯には関わってこないものと思ってたけど、まさかここに来て一般人を寄越すだなんてね」とりあえずここで終わりです
>>888
そうなのかと言って初耳という感じの目の前の参加者を前にしてさらに大きくなる頭痛を感じながら玲亜は思案する。
おそらく関与しないから参戦権を譲ったということは事実だろう。そうだとすれば関与しないと明言した以上彼を派遣したのはオルバウスだ。オルバウスとは過去この土地の有力な魔術師としてこの土地を治めていた3家のうちの1家だ。だが詳細は知らないが土地が合わなかったのか現在はこの土地から立ち去っていたはずだった。そのため近代においては一切の干渉もなかったためこの戦いにも関与はしないと思っていたが今になって関わる以上はやはり万能の願望器の存在を惜しいと思っているのだろうか?
(いえ…そもそもの前提から違うのかもしれない)
一度初めの前提から思考を考え直してみる。彼が枠を譲り受けたのは動かぬ事実であるが、譲り渡した人物がだれなのかはまだ何の確信も持てないはずだ。御三家というとこの地にはもう1家存在している。それは朽崎家といい現在は若い男性が当主である。しかし家族は住んでいるが本人はこの地にはほとんど戻っていないと記憶している。当然この戦いの前にも使い魔で調べたものの当主がいる様子はなかった。現在の当主に変わった際にオルバウスが去った後2分で治めていたこの地の自分の土地分の管理をこちらに任せに来た際に一度だけ当主の顔は見た覚えはあるが…あまり思い出したくもない思い出ではある。
この当主が渡した可能性も十分にある。また御三家じゃない外来の魔術師でも御三家の名を騙り譲るということで接触をした可能性もあるだろう。先ほどの際のオルバウスと違い願望器に対してのこだわりにおいては彼らは深いはずだが魔術師の世界に詳しくない者を騙すのはわけもないだろう。
(現状その部分は白紙。でも揺るがぬ事実としては)>>891
すぐに亥狛からの返事が返ってきた。ある程度予想はしていたがやはりかと思いどう説得するかを考えていると、
「まだるっこしい」
その声と共に姿を現したアヴェンジャーが亥狛に自身の武器を突き付ける。その距離はほぼ0に近く英霊からするとまさに一瞬のうちに攻撃が完了するであろう。
「!?何してるの!武器を下げなさい!」
「少し黙れ小娘、今はこの小僧と俺は話をしたい。おっと、小僧令呪を使おうとはするな。もし使おうとしたときは使う前にこちらは対処ができる状況だ。」
アヴェンジャーは亥狛に対して言葉を続ける。
「小僧、今まさにお前の命は俺の手の上だ。戦いから降りるのなら当然生きて返してやるが降りないのならお前は敵だ。敵として対処をしなければならん。分かるな?この状況であってもお前は降りぬというのか?自分の命以上に価値のあるものがお前にはあるというのか?」
アヴェンジャーは降りろとマスターと同じことを言うがそれと同時に問う。>>894
「……降りない。俺には俺の悲願がある。だからここで引く訳にはいかないし、この場で死ぬ訳にもいかない。
仮に此処で殺し合うとしても、可能性が薄かろうが、アンタがどれだけ強かろうが、生き延びる為に全力で足掻くつもりだ」
喉に突き付けられた刃の、その先端を左手で握り込む。
当然手のひらの皮膚は裂け、裂傷からぷつぷつと赤い血が滲み始めた。
平時では耐え難い筈の痛みだが駆け巡るドーパミンが痛みを騙してくれている。
鼓動の音が聞こえる。
明確な命の脈動。
選択によっては失われるかもしれない風前の灯火、その煌めきが明確に自覚出来る。
それらの身体的変化を具に感じ取り、総合的に鑑みて改めて。
嗚呼、自分は今瀬戸際にいるんだな。
そう客観的に分析する。
今の答えを聞いた上で目の前の男がどう判断するか、亥狛の集中の全ては男の第一声に傾けられて。短いですが、再度パスします。
>>895
「……一日で2度その目を見るか…」
小声でそうつぶやいたアヴェンジャーは武器を降ろして亥狛から距離を置く。
「やれやれ、この手のやつは何を言ってもきかんぞレアよ。」
「あなたねえ!これじゃ宣戦布告みたいじゃないの!」
「事実そうであろう?こいつはマスターをやめないといったのなら敵だ。だがお前は敵として見てはいない様子だからとりあえず武器は降ろしたがな。」
「私の考えが分かってるくせにあんなことしたの!?」
クツクツと意地の悪い笑いをする自身のサーヴァントに対して憤慨をする玲亜。だが今やることはこの悪趣味なサーヴァントを責めることではないと思いなおす。
目の前の亥狛は自身に向けられていた武器から解放されてひとまず落ち着いた様子ではあるがいまだにこちらを警戒している様子である。>>897
「ごめんなさい。こいつはこういう無神経なやつなの。私はセカンドオーナーとして無関係の人間を巻き込むわけにはいかない。あなたがただ巻き込まれただけなら守らなければいけないと思った。でもそうじゃないのなら話は別になる。…でもね、私は何も知らないあなたをこのままこの戦いに放り出すことはしたくないと思っているわ。だからもし互いの利害が一致したのなら同盟を前提とした停戦をこの場でしたいと思っている。」
「利害の一致か、つまりお前から俺に対しての要求があるということか?」
亥狛の言葉にうなづく玲亜。
「私のあなたに求めることは二つ。一つ目はあなたに参戦権を渡したという魔術師と話をさせてもらうこと。理想はあなたと私とその魔術師と顔を突き合わせての話がしたいわ。もう一つはあなたの願いのことを今この場で聞かせてもらうことよ。詳しくは聞かないけどその方向性だけは答えて、あなたの悲願は多くの人を不幸にする願いではないと信じていいのかしら?もしこの提案を受けないのなら黙って屋上から去っても構わないわ。少なくとも今日一日はあなたに攻撃はしないと誓うから。」
問いかけて返事を待つ。>>898
再再度パスです>>898
一先ずの危機は去ったのだろうか。
極度の緊張から解放された反動か、肺に一気に酸素が雪崩れ込む。
束の間の生を掴み取る実感は確かにある、然し油断はならないだろう。
何故ならば依然として相手が優位なことに変わりはないからだ。
マスターの采配によってサーヴァントは矛を収めた、だがまた再び武器を手に取り首を跳ねる事だって容易い筈だ。
目に見える死は避けられたが、目に見えない危機は今も変わらず亥狛の周囲に漂っている。
「…………」
改めて、彼女の要求を反芻する。
自身を聖杯戦争に招き入れた魔術師との交渉の場を設けること。
そして、自分の願望を彼女に打ち明ける事。
それら二つが、東雲玲亜と名乗った女学生が提示した条件。
そしてそれらを呑んだ暁に得られるのはこの場における停戦、そして彼女との同盟だ。>>900
条件としては悪くない、というよりも寧ろ。
「…こう言っちゃなんだけど、そっちにあんまり旨味がなくないか?
同盟って言えば聞こえは良いけど、知識不足の素人と共同戦線なんて足手纏いも良いところだと思うんだが」
「俺のマスターが腹芸をしているとでも?」
彼女のサーヴァントからの横槍に、全力で否定する。
「まさか。ただ純粋に気になっただけだ、ホントにそれで良いのかなって」
湧き上がる感覚は疑念ではなく、疑問。
俺なんかで、本当に良いのか?と不思議に思わずにはいられなかった。
聞くに彼女は伏神の土地を管理する由緒ある家柄の魔術師だと言う。
であれば、こんな魔術のマの字も知らない男と共同戦線を張らずとも引く手は数多に違いない。>>901
だと言うのに、玲亜は自分に手を差し伸べようとしている。
それが理解出来なかった。理屈では説明できぬ判断だと思った。
だからこそ、純粋に気になった。
玲亜はそれもそうね、と言った後に口に手を当てて暫し考え。
「……いや、利ならそうね。私にとってのメリットは無駄な死がひとつ防げるかも知れないって所かしら?
同じ学校の貴方が聖杯戦争で死んじゃったら寝覚めが悪いじゃない。私の精神の安寧の為にも、貴方には死ん.で欲しくないの」
「─────」
今の気持ちを言い表すならば。
開いた口が塞がらない、と言うべきなのだろうか。
呆然としているがそこに落胆はなく、それどころか感嘆が心を覆う。
そして同時に理解が及んだ。
目の前の彼女は、自分自身に近寄ってきたその瞬間から打算の類は一切抱いていない。
純粋に自分の身を案じて彼女は同盟を持ち掛けてくれたのだと、そう確信する。>>902
今感じているこの感覚に、亥狛は確かに覚えがあった。
だが思い出に浸る時間はない、玲亜とそのサーヴァントは今なお亥狛の返答を待っている。
「分かった。俺を招いた魔術師と会う機会は近いうちに必ず取り付ける。
後は俺の願いの方だけど────『別人に生まれ変わりたい』、とだけに今は留めておきたい」
「えらくざっくりとした願望ね、それだけだと正直何とも言えないわ」
至極尤もな指摘だ、誰だってこんな言葉だけでは納得しない。
だがこちらとしても濁すだけの理由は、ある。
確かに玲亜は好人物なのかもしれない。
だがだからといって明かして良い人間かどうかは別の話。
寧ろ好ましい人物だからこそ明かせないし、明かしたらどうなるか知るのも怖い。
錫久里亥狛の抱える願い、それに根差す苦悩はそういった類のものなのである。>>904
ここでパス回します!>>904
「…そう…よかった。」
ほう…とひとつ大きな息を吐くと玲亜は言葉を続けた。
「ええ今はそれで構わないわ。腹の内をあっさりと相手に明かすなんてこと魔術師からすればあり得ないことだしそれを求めるほど傲慢でもないわ。」
「できもしない成果を求めることは傲慢ではないとでも?」
「ええいうるさい!今はこっちが重要でしょうが!ってそうじゃなくて…」
自身のサーヴァントの軽口に対して他人の前にもかかわらず思わず素で反応を返してしまったことに軽く気恥ずかしさを覚えた玲亜であるがオホンと声を上げて仕切りなおす。
「あなたの誠意は十分わかったわ。同盟を前提とした停戦をここに結びましょう。でもごめんなさい一つ私はあなたに嘘をついていたわ。同盟の条件としてあなたに権利を渡した魔術師と会話をするといったけどここでの会話次第ではもしかしたら同盟はなかったことにしてしまうかもしれない。その場で何が起きるか分からない以上は私も断言はできないわ。それでもいいかしら?」>>906
短いですがパスです!>>906
「ああ、それで構わないよ」
亥狛は二つ返事で了承する。
彼を招いた魔術師、シスカ・マトイス・オルバウスが東雲玲亜に対してどう接するかは未知数だ。
彼女は聖杯戦争には基本的に関与しない姿勢を貫いている。
だから玲亜が話し合いの場を設けた所でのらりくらりと真実をひた隠す可能性も高い。
だがそうなったらそうなった、だ。
その時改めて考えれば良いだけの話であって、此処で延々と悩んでも答えなどないのは明白。
玲亜は少し安堵したような顔で。
「それじゃあ改めて、よろしくね」
と亥狛の方に右手を前に差し出した。
俗に言う握手、というものだと亥狛は即座に理解できた。
「……あ、ちょっと待っててくれ。間合いを今調整するから」
しかし彼の対応は余りにも奇異に映るものだった。半端なとこですが、ここでバトンタッチ!
>>910
(百人力ね…)
その言葉に胸が痛む。御三家の肩書だけの自分にはそんな実力などない。ましては喜んでもらうだけの価値など自分にはない。ここにいるのはただの表面で虚勢を見せているだけのただの小娘でしかないのだから。だからこそアイツだって私を…
「っ痛…!忘れてたそういえば左手が…」
その声で我に返る。見ると亥狛の手から血が出ている。
「あ、そういえば左手をケガさせてしまっていたわね。左手を出して。」
「これでいいか?」
差し出された手を両手で包むように持つ。
「回路制御、UNLOCK。穢れを払いここに安らぎを。」
詠唱と共に魔術を発動する。この程度なら問題なく治療ができるはずだ。
「はい、終わったわ。でも傷はふさがっても外に出た血とかは戻らないからちゃんと栄養の着くもので補給しておいてね。それじゃあこれからの相談としましょうか?」
そう言い手を放す。手が離れた亥狛の左手の傷はきれいさっぱりとなくなっていた。>>912
刻みますがパスです!
相談内容とか提案してくださればそれに合わせていきます。カフェを出れば、街は夕焼けに染まりつつあった。
世界を仄かに赤く彩る日の光。
空を漂う雲は金色。
ーーー島が、優しく燃えていた。
人々の活気を象徴するかのように。
「素敵な空……。この島は有名らしいけれど、この景色を見たら確かに納得ですわね」
「ええ……とても」
ヴォルへ言葉を投げかけ、彼女がそれに返す。それだけのことなのに、妙に心が踊った。
(きっと、この夕陽に浮かれてしまっているのね)
2人揃って感動に浸っていると、やがてヴォルが口を開いた。
「マスター。もう少し、歩いてもいいですか?」
彼女の声はどこか、昔を懐かしむようなーーー何かを思い返しているような、深い色を帯びていた。
その色の意味は分からないけれど、反対する理由なんて、わたくしには無かった。>>914 夕焼け空の下、ヴォルと散歩を続ける。
気ままに足を進めているとーーー
「マスター、もしかしてここは"学校"でしょうか?」
「ええ、そのようですわね」
そう、学校の校門前へと辿り着いていた。
「やっぱり!ここで日々、少年少女達が事件に巻き込まれたり、不思議な力に目覚めたり、"壁ドン"なるものをされたり、恋をしたり、恋をしたりするんですね!」
「例えが少し偏っていませんこと?」
「そうですか?聖杯から与えられた知識では、現代の学校とはそのようなものだと」
聖杯はどんな基準で知識を与えているのでしょう……?
「それはともかく。この聖杯大会には、この学校の関係者も参加していましたわね。遊びは程々にして、本題も進めましょうか」
そう言った時、突如としてセイバーが駆けた。
刹那の間をおいて、金属音が響く。音の出所はセイバーの出現させた魔剣とーーー地面に落ちたナイフだった。
「何者だ。姿を出しなさい」
セイバーが低く告げる。声の向かう先は、学校を取り囲む森の奥。
「く……くけけけけはハハハハ!いやぁ、楽しそうな気配がしたから来てみれば、思ったより上玉に巡り会えたみたいだぜ」
狂ったような笑い声を上げながら、木々の中に人の姿が現れる。その全貌は木影に隠れてはっきりしないが、やや長身で細身。声からして恐らく男性。
何より特筆すべきなのは、獣のようなその眼光と、彼の纏う"圧"だ。
「サーヴァント……!」
精神を非常時の物に切り替える。相手は影から出ないまま、有り余る殺意をこちらに向けている。先程は間一髪で助かったが、次に気を抜いたらただでは済まないと直感できた。
「おーっと。そっちのお嬢ちゃんも結構やり手みたいだねぇ。ま、さっきまでメッチャ油断してたけどな、ハハハ!そんなに余裕だってんなら相手してくれよ、ネエチャン達。そろそろ暴れたくてしょうがなかったんだ!」トロリと濃厚なコーンスープに、少し歪だけれどもふっくら仕上がった手作りパン。そこにベリージャムをたっぷり乗せてーー
齧り付く寸前、瞼を貫く強い光に私は意識を浮上させました。
見慣れた自室とは違う風景。それが近所の公園だと気がつくまでに、しばらくの時間が要りました。
普段であればここでびっくりするところの状況です。しかし、霞がかかった頭で最初に考えたのは、先ほどの夢についてでした。
とにかく残念です……ご馳走とまでは行かないとはいえ、一口頬張ったなら、いっぱいの満足感に満たされていたのですから。
体は鉛のように重く、立ち上がるだけでも一苦労です。
服の埃を払った私は、そのまま学校へ向かってふらふらと歩き始めました。自分でも不思議ですが、そうするのが正解だと頭のどこかでピーンと閃いたんですよ。
頭がぐわんぐわんします。照りつける陽の光を疎ましく思うなんて、生まれてはじめてのことでした。
ああ、それにしても。
突っ張る脇腹を抑えながら私は思います。
とにかくお腹が減りました。>>917
以上です。弓陣営3日目冒頭です。お待たせ致しました。stage、ヴィヴィアン対オズボーン戦の続きを投下します
>>703
ガラス細工のような瞳が一対、二人の騎士の決闘の行く末を言葉もなく見守っていた。
否、見守っていたと云うのは語弊があるだろう。
それは観察———よくて二流の魔術師がサーヴァント相手に何をするつもりなのか、何が出来るつもりなのか
それは傍観———どのように踊り、歌い、私を愉しませてくれるのか
だが何度目かの戟合の果てに剣を断たれた騎士はその勢いのまま組み敷かれてしまった。
「終わりだ。貴方は、私には届かない」
片腕を喪失したデミ・サーヴァント。今は見る影もない程ズタズタに切り裂かれたメイド服を身に纏ったホムンクルスは言葉もなく、表情にも出さず心の中で嘆息した。
(発想自体はイイ線行ってたんですけどねぇ…)
チェックメイトという奴だ。サーヴァントと人間では純粋にチカラの次元が違う。
マウントを取られてしまってはどうも出来ないだろう。
ーcont.ー>>920
「カ カハッ!!」
兜の中で血とも胃酸とも付かない飛沫が逃げ場もなくブチ巻かれる。
「アロンダイト、だと? それはランスゴハッ! …お前、アーサー王じゃなかったのか?」
「無理はしない方が良い。既に貴方の命運は我が切っ尖にある。降参しなさい」
「質問に…答えろよ……ッ」
言外にやれやれという態度を滲ませながら主人の方に視線を送ったセイバー。そして一拍を置き言葉を紡ぐ。
「私はブリテン王。アーサー・ペンドラゴン。そこに嘘も偽りもない」
「じゃあなぜ」
「我が宝具『夜空彩る星の騎士/ナイト オブ ラウンド』は我が盟友である円卓の騎士たちの力の一端を映し出す。これはランスロット卿が力を貸してくれただけのこと」
「臣下/オマエのモノは王様/オレのモノってか」
「言葉に気を付けなさい下郎。命が惜しくはないのか」
宝剣は錬金術で精製された兜を緩やかな動きに関わらず容易く切り裂き薄皮一枚だけを裂いて威嚇とする。
ーcont.ー>>921
勝負はついた。力量の差は歴然。誰もが終わった。呆気ない幕切れだとさえ思った中、ただひとり。自身の従者にさえ見棄てられた男の眼にはまだ闘志が宿っていた。
その眼に騎士王はかつて刃を交えた多くの敵を想起したが、そこから先に起こった事は生前の経験にはないものだった。
「Broken」
この戦いの中で何度か紡がれた言葉。その言葉を合図にそのカタチを保つことを辞めた騎士甲冑は流体金属となり……兜にアームロックを決めたセイバーの手が瞬間、掴むものを失った。
その隙を、その好機をヴィヴィアンは逃さない。
自身の下でカタチを失った流体金属に魔力を流す。それは錬成ではなく、魔術の基礎である流体操作。解けた金属中に流れを作り出しセイバーの股下を潜って勢いよく飛び出し距離を取る。
「これしきで勝負が決したなど、モルドレッド/私を倒したなどとは思わぬことだ!アーサー!!!」
「まだ演るつもりですか…」
もはや鎧も剣も失い、それでも尚啖呵をきるヴィヴィアンに冷めた目線を送るセイバー。掌中には依然アロンダイトが握られている。
意外な展開に当初は沸いた観客たちもセイバー陣営の圧倒的な優位が欠片も揺らいでない事に気付き嘆息を露わにした。
そう、例え一瞬の隙を突いて死地から抜け出したとして手札に変化がないのなら同じ事の繰り返しだ。
それでは敗北の瞬間を遅らせただけの足掻きに過ぎない。
ーcont.ー>>922
「セイバー、アーサー!お前は言ったな? 貴様の宝具は、円卓の騎士の力を借りるモノだと! ならば!!」
男は右手を掲げる。目や鼻からは血が流れ、満身創痍の身体はよく見れば震えてさえいる。だがその眼はひたすら真っ直ぐに
「まさか……!?」
「我が名はモルドレッド! 叛逆の騎士!! ならば!!
我が手に来たれ———
クラレント
幕を引きし洛陽の剣
ーpassー>>798
「左様ですか。その忠義、感服致します。ーーーでは、これにて拙者からの質問は終わり申した。お忙しい中付き合っていただき、感謝致しまする」
マーシャルとの話を話を終わらせ、極東の処刑人はサロンを後にした。
処刑人は廊下を進む。窓から覗く午後の日差しは爽やかで、この国で起こる血生臭い争いを忘れてしまいそうだった。
(世が世ならば、この国も外の陽気の様に美しかったのであろうか)
ふと、今は届かぬ仏蘭西の光景を浮かべる。
足が止まる。目の前には扉があり、爽やかな陽射しに不相応な、どこか陰気な気配を醸し出していた。この部屋に目的の人物が居る筈だが。
コンコンコン、と扉をノックをする。
「誰だ?」
「山田浅右衛門で御座います。ガヌロン殿に少しばかりお話をしたく参り申した」
「……入れ」
部屋の中に入る。奥にて部屋の主であるガヌロンが腰掛けていた。
「……女王の機嫌取り、いつもご苦労だ。だが私も暇ではない。手短に済ませろ」
「ええ、そのつもりで御座います。ーーーガヌロン殿は、革命軍について、どう思われておりますかな?」>>924
あ、以上です。ガヌロンからの返答、投稿します
>>926
「それを儂に聞いて何とする」
返ってきた言葉は、どこまでも冷淡だった。
仮にもフランスの騎士として仕えていた男とは思えない程、無感情で酷薄な態度。その姿に浅右衛門は若干鼻白むものの、すぐ気を取り直しは言葉を返す。
「何と、と申されましても。ご存じの通り拙者は遠き極東の侍、この国については聖杯からの知識以上の事を存じませぬ。故に、時代は異なれど仏蘭西の出身たるガヌロン殿に意見を伺いたく願っただけに御座いまする」
流れるような弁舌に、しかしガヌロンは左程反応を示さない。
一応耳を傾けてこそいるものの、その視線はあくまで机上の書類に向けられていた。
「成る程、筋の通った言い分だ。――そして癪に障る程、愚かな物言いでもある。そこまで状況を理解しておきながら、未だ己が立場を弁えぬとはな」
「と、おっしゃると?」
「軽率な問答は慎め、と言っている。この国において女王の存在は絶対だ。その女王に仇名す叛徒共の所見なぞ、迂闊に述べただけで万死に値する。そう、いかなる身分のものであろうともな」
その言葉に、浅右衛門の背中に冷たいものが流れる。
女王の絶対性と異常性、それらを同時に告げられた事と自身の甘さに舌を噛んでいた。>>927
「申し訳ございませぬ。軽率で御座った」
「ふん。素直で結構な事だ、それもサムライの美徳とやらか? あの女王が見ればさぞお気に召す事だろうな」
ペンを動かす指を止めないまま、ガヌロンは嫌味と皮肉を返す。
――だが。何かがそこで彼の態度に明確な変化が生じた。
「……故にこそ、連中への意見なぞ決まりきっている。先程の貴様以上の大馬鹿共だとな」
「女王の恐ろしさを知らぬが故だと?」
「無論だ。だがそれ以前の問題でもある」
「それ以前……?」
書類を書く手を一瞬だけ止め、ガヌロンは短く返した。
「情熱と狂騒のまま振る舞い、理想こそが世界を動かすと思い上がり、その末に原形も留めぬ残骸だけを齎した。この国の革命軍とはそういう連中だ」
そこで言葉を切り、ガヌロンは書類仕事を再開する。
もうこれ以上話すことはない。言葉ではなく、態度が明確に示していた。>>928
これで以上です。
革命軍の返答に関しては、こちらからはこれだけという事で
革命軍以外の話題に関しては回答していくつもりです「それじゃあ、あなたにはこの区画で戦場に出てもらうわ。アサシン。まぁ、好きにして頂戴な。貴方程度、どう動いたところで大した影響はないのだから」
「では、そのように」
そういって戦場へと向かっていくはぐれサーヴァントを見やる。
「――ふぅ」
ふとため息をつく。
嫌な予感。そう嫌な予感である。あの暗殺者のサーヴァントを拾ってから絶えない思い。何故かはわからない。
山田浅右衛門。知らない男だ(・・・・・)。
東の島国の人間などマリーは知らなかった。それが未来の人間なら猶更だ。
ただ、ステータスを透し見ても大したものではなかったし、サーヴァントとしての神秘を見てもとてもあるものとも見えなかったので何も聞かなかったし、捨て置いた。
――大丈夫なはずだ。この国に処刑人は、シャルル・アンリ・サンソンはもういない。自分がこうなってから真っ先に排除した。サンソンの家系は郎党死に追いやった。サーヴァントとして召喚されないよう細工も施した。自らを脅かす者はもういない。
それでも。それでも。女王の予感は止まなかった。>>912
掌に深々と刻まれていた裂傷は立ち所に完治していた。
彼女の詠唱からして魔術を施してくれたのだろう。今迄魔術師と何度か相対したことはあったが、実際自身の身に魔術を施す機会は殆ど無かった。
なので、目の前の神秘の発露に素直に驚く。
やはり魔術というのは便利なものだ。
「これからの相談、と言ってもウチは未だこの街の情報収集に徹してる段階だからなぁ……
強いて言うならアサシンと思われるサーヴァントを探しているから、その情報があったら教えて欲しい位かな」
そう言いながら、夜襲を受けた時の記憶を思い巡らす。
あの時の傷はもう既に塞がっているが、痛みの記憶は未だ鮮明だ。
痛い、と熱い、の二重責めの様な感覚だったのを覚えている。
ナイフなどの刺し傷は熱感を伴うものだと曾ての経験から知ってはいたが、あれ程までの痛みは未だかつてなかった。>>932
伏神ランサー陣営、レアさんにパスします。
遅くなって申し訳ないです…!>>932
「申し訳ないけれど私もそんなサーヴァントには覚えはないわね。」
真剣に聞いてくる亥狛に対して断言することも気が引けたがはっきりと言いきる。
先日のできごとからはっきりと姿を見ているサーヴァントはアヴェンジャーを含めての4体、姿を見てはいないスナイパーのサーヴァントが1体の合計5体のサーヴァントについては存在を認識している。しかし先の亥狛の傷をつけるサーヴァントに関してはこの5体のどれでもないような気がしていた。スナイパーのサーヴァントがアサシンである可能性もあり得るが狙撃ができるならそのまま狙撃をしてしまえば済むだけだ。わざわざ自らの姿を見られる危険を冒す必要があるとは思えない。ましては先日優位の状況でありながら居場所の検討を付けられたとみるやすぐに撤退をした慎重な相手だ。そのような軽率な行動はしないはずだ。
「私が知っているサーヴァントは私の連れてるこいつとあなたのサーヴァントを含めて5体。そのうち姿をはっきりと見ていないサーヴァントが1体いるけれどどれもあなたの言うサーヴァントとは違うように感じるわ。」
「東雲でも分からないか。」>>934
がっかりとしていることが目に見えてわかりいたたまれなくなる玲亜である。何とか別の話題で空気を換えようと考えていたが、
「……ってアレ?東雲は俺のサーヴァントを知っているのか?」
「え…あ!」
自身が口を滑らせていたことにようやく気付く。
「と…当然よ。だって先日あなたとサーヴァントが一緒にいるところを見たからあなたをマスターだと分かったんだものおかしなことではないでしょう?そんなことよりも私が見たサーヴァントの数は言ったけどあなたの見たサーヴァントは何体ほどなのかしら?互いに情報交換をして少しでも勘違いを減らそうじゃない!」
こういう時は強引に勢いで話題を変えるに限ると思った。>>935
細かいですがパスします!伏神聖杯戦争
今後の方針です>>939「サーヴァントは……………」
「消去法で行けばアヴェンジャーだろうな」
【サーヴァントはアヴェンジャー】
「毛皮みたいなのもってたよね?」
「あと剣もあったよな」
【毛皮と剣を持っている】
「東雲レア。18歳。この土地を管理する御三家の現当主。音楽の才能があり、コンクールの優勝経験も持つ。可愛い」
「最後事情入ってるぞク.ソマスター」
【可愛い!】
「いやだって、君も見たろ?あの子。綺麗な髪、いいプロポーション、怖い筈なのに勇気を出して参加している心意気……………何をとっても最高じゃないか!」
「やっぱり事情入っているじゃないか(呆れ)。ただまあ……………魔術師としては善良なのは確かだな。……………なんで魔術師やってるんだ?明らかに合わないだろ?」
「まあそこは事情があるかもしれないよね」
【善良さナンバーワン!】
「あと正義感というか責任感が強いのもあるよね」
「よく人のできた女だったよな。アンタとは大違いだ。その点考えれば彼女は信頼できる人間ってわけだな」
【責任感が強い!(信頼もできる!)】>>942
「なんで彼女アイドルやってるんだろう……………?」
「趣味じゃないのか?」
「いやアイドル活動は魔術師としての研究を並行してやれるほど楽なもんじゃあない。しかも彼女は純正魔術師。合理的に考える筈だ」
「じゃあアイドルやっているのにも理由があるのか」
【アイドルに合理性?】
「アイドルといえば何だろうね?」
「歌、ダンス、グラビア、バライティー、ドラマ。何でも思いつくが……………ゲルトラウデというアイドルの特徴から考えるとやはり歌じゃないのか?」
「やっぱりそうなるよね」
【歌がファクター?】
「彼女は呪詛科。そう考えれば歌が魔術だったりしてもしっくりくるよね」
「確かにそうだ。……………彼女の家って確かギリシャだよな?」
「うん、確かにそうだけどそれが?」
「いや、さっきゲルトラウデは幻想種だろ?そして歌とギリシャって聴いてな。……………もしかしたら彼女はセイレーンだったりしてな」
「十分あり得る話だけどギリシャだからセイレーンは早計すぎる。ただ声に関係する奴の可能性は大いにあるね」
【声の幻想種(セイレーンかバンシーか?)】>>943
「まあざっとこんなもんかな……………しかし、ククフ」
「どうしたんだい、ロドリー?全く笑う要素があるとは思えないけど」
「いやな、ク.ソマスター。アイドルって言葉の意味が1000年弱経てばこうも変わるのかと思って感慨深くなってな」
「まあ、偶像って意味はある意味変わってないしそんな外れている訳じゃないと思うよ。……………"偶像"?」
「……………?」
「……………そうか、そうか、そうか、そうか!」
リドリーはペンを使いホワイトボードに書き込んでいく!
「彼女がアイドルである!彼女は声を使う!彼女は幻想種である!これら全ての要素を考えれば彼女の目的が見えてくる!」
【偶像(アイドル)崇拝による根源到達】
「ク.ソマスター、アンタ本気で言っているのか?」
「本気だ。だって考えてみろよ?貴重な時間を大幅に引き裂かれるアイドルなんかある種の研究職である魔術師とは相性が悪い。目的が根源の到達と考えれば自然と浮かび上がる」
「ただこれはあくまで仮説だぜ?物的証拠は何もない」
「確かにそうだ。だけどね?"辻褄が合う"それに勝る真実は中々ないものだ」
「……………まあいい。この情報は使えるか未知数だが、取り敢えず掘り下げる要素はこれくらいだな」>>946
「あとは飛行機」
「多分だが、あれはサーヴァントの能力だと思うぞ。宝具かどうかわからないが」
「何でそう思った?」
「今の神秘でそもそも飛行機を追尾弾にする事が出来るのか?」
「……………もちろん難しいね」
【視界に収めた物を弾丸にする能力?】
「最後はアサシンだが……………」
「殆ど情報がないね……………雲隠れしているみたいだ」
「"殆ど"?」
「多分だけどランサーのマスターはアサシン陣営に襲われたと思っているんだ」
「どうしてだ?」
「消去法で。私たちはまず襲ってないし、レアちゃんたちは私たちとあっている、そもそもあの傷はナイフによる刺し傷でアーチャーと合わない、ライダーはマッチポンプするにはそもそも装備が向いてない、となると残るはアサシンだけだよ」
【ランサーのマスターを襲撃】>>947
「まあこんなところだね」
「未確定情報が多すぎて泣けてくるぜ……………で今後はどうする?」
その言葉を聞き、ニヤリと不気味に微笑む。リドリーは芸者の帯を解く様にホワイトボードを回転させて裏に作戦名を書き込んでいった!
【偽りの名(コードネーム) 鳥籠(スクエア)】
「……………まあこの際痛い名前は置いておくとしてだ。具体的にこれどういうことだ?」
「私を含めて4人の同盟連合を作る」
「ふむ」
「アーチャーとアサシンを籠の中の鳥にする」
「ふむ」
「そして袋叩きにして脱落させる」
「ふむ」
「二陣営の脱落を確認したあと、後日何処かの場所に集合して乱闘を行いそこで勝者を決める」
「成る程な……………出来るのか?そんな絵空事」
「絵に描いた餅だって色紙が海苔なら喰えるよな?つまりできるできないじゃなくてやるんだよ」
エル・シッドは悟った(。だめだこりゃ。考え曲げさせることはできんな)
心中で白旗を掲げて諦める。リドリーがこういう以上やるしかないのだから>>948
「それにね、この作戦にはあまよくば出来たらよしなもう一つ狙いがある」
「はぁ〜どんなだ?」
「もしこの同盟が上手くいきこの事を知ったらどうなるか?明らかに不利になるよな?」
「確かにな」
「これを良しとしない"第七の陣営"がくるかもしれない」
「流石にそれはおかしくないか」
「あくまで可能性の話さ。そもそも七陣営目がいるのかどうかも怪しいものだけどね。ただ私はこの伏神の地で行われたとされている聖杯戦争においては確実に七騎だったと聞いている」
「それが引っかかっているんだよな?」
「まあね。亜種聖杯戦争が沢山行われてこそいるけど前回も七騎だったのなら今回だって気づかぬうちにそうなっている可能性だってあるさ」>>949
リドリーはそう言い切りペンに蓋をする。そうして机の上に地図を出した
「さて私たちは同盟を結ぶためにどうしたらいいかな?」
「ならばク.ソマスター。出待ちするのはどうだ?」
「出待ち?」
エル・シッドはコラーダを指示棒の形にしてある地図記号を指す。それは文に似た記号。教育機関を表すものだ
「この近くにあるのはここ一つ。そしてこの学園に入っていないやつはこの街にいない」
「人口少ないのかな?」
「広いが定住者が少ない街みたいだしな。俺たちの家だって買い取ったものだし」
「よしここにいって誰か顔見知りがいたら声をかけるでいいかな?」
「あまり怪しく見えない様にな?今すぐ行くか?」
「いや、まだいい。試したいこともある」
「何の実験をするんだ?」
「自分の限界を確かめるのさ」
リドリーは智慧の炎の限界実験を始めた。危険だからこそ実際どれだけのことをやれるのか?確かめる事をしようとしたのだ。それは猿に核ミサイル発射ボタンを渡す様なもの。実験は芳しい結果を出せず、唯一わかったことは智慧の炎で料理されたものは神代のものと化すくらいだ
両足の指の融解と脹脛の火傷に対する代償には余りに釣り合わなかった
結局彼らが学園前に来たのは放課後直前であった……………>>950
終わりですね伏神の追加と修正です
>>954
「あとこの銃弾。明らかに宝具じゃないな」
「うん、ただの実弾だよ。この弾は12.7x99mm NATO弾だね」
「よくわかるな?」
「銃社会舐めるちゃいけないよ。しかもうちは金持ち、世界長者番付に第3位につけているんだよ?金で買えるものは大体ある」
「……………これはあくまで興味本位だがお前の家の総資産は?」
「うーん、公のものは大体940億ドル(約10兆円)くらいかな」
「……………まあこれ以上は追求しないでおく。話を戻そう、12.7x99mm NATO弾だっけか?これ使う銃を特定できないのか?」
「まあまず無理な話だ。バレットM82、マクミランM87R、アキュラシーインターナショナル AW50、PGM ヘカートII 、ゲパードetc……………大体対物ライフルだけど種類が多い。この弾だけで特定は難しいね」
「入手経路を特定は?」
「時間がかかる。魔術師だからね。割と融通が効くし」
【対物ライフル所持(種類、経路は不明)】
「あとは飛行機」
「多分だが、あれはサーヴァントの能力だと思うぞ。宝具かどうかわからないが」
「何でそう思った?」
「今の神秘でそもそも飛行機を追尾弾にする事が出来るのか?」
「……………もちろん難しいね」
「それに飛行機全体に魔力が纏っていたように見えた。この事からパイロットに魅了をかけたとかじゃあないと考えている俺はね?」
【視界に収めた物を弾丸にする能力?】>>935
腑に落ちない点はあれど、深く追求する程でもなかったのか亥狛は玲亜の話題に乗ることにした。
「俺が遭遇したサーヴァントは、今のところアサシンだけだな。
ランサーはセイバー陣営とも接触したらしいけど……今ランサーは居ないから、俺が知ってるセイバーの情報なんてあってない様なもんだよ」
そう言いつつ未だ見ぬセイバー陣営の面々の事を想像する。
ランサーが言うには気風の良い連中だそうだが、実際会ってみないことには為人なんて知りようがない。
「アサシンね……因みに、そのアサシンは具体的にどんな姿だったか覚えてるかしら?」
特徴的な格好でも話し方の癖でも何でも良いわ、と付け加えて。
「そうだな───────あれ」
アサシンのことに関する記憶を呼び起そうとした、その瞬間。
亥狛の思考に違和感が過ぎる。>>956
あの日の夜、突如として受けた凶刃の記憶は鮮明に覚えている。
傷はとうに癒えたが、その感覚質は痛烈なまでに脳裏に焼き付いて離れない。
だというのに、それを実行したアサシンの顔が思い出せない。
決してあり得ない話ではない。
刺された数分後、ランサーとアサシンが交戦している最中に亥狛の意識は途絶した。なのでアサシンの顔や姿が不明瞭となるのは致し方のない話かもしれない。
だが、この記憶の途絶は異質に過ぎる。
不明瞭に辺縁がボヤけるのではなく、其処にあった筈の記憶が切り取られたかのように。
アサシンの姿形に関する記憶のみが綺麗さっぱり抜け落ちていたのだ。
「…記憶が、消えてる」
愕然とした表情の亥狛に、玲亜は心配そうに声を掛ける。
「消えたって。忘れた、じゃなくって?」
「ああ、消えた。アサシンに襲われた経緯はハッキリ覚えてるんだけど…アサシンの顔や格好の記憶だけが綺麗に消えてる」
信じられない、といった様子だ。
無理もない。
自身を襲った天敵の顔を真近で見たにも関わらず思い出せないだなんて、果たしてあり得るのか。
だが事実として記憶は霧散し、元に戻る事はなかった。>>957
「単純に記憶の劣化の可能性は否定出来ないけど…それがアサシンの能力の線もあり得るわね」
「襲撃した相手の記憶を消す能力、って事なのか?」
あくまで推測だけどね、と玲亜は前置きして。
「記憶を操作するなんて魔術の世界じゃ別段珍しくもなんともないわ。死霊魔術師なんかは死体の脳から記憶を抽出したりするんだから、脳内の防衛機構なんて案外脆いものなのよね」
思考を巡らせながら、屋上をあてもなく歩き回る。
脳科学の観点から見て思考処理能力を上げる為に軽い運動を交えるのは理にかなっているのだという。
玲亜の脳は加速度的に回転していた。
「────でもその為には対象との直接的かつ長時間の接触は必須。
……少なくともナイフを刺して撤退する僅かな時間で正確な記憶捏造の術式を施すなんて一流の魔術師でも不可能だと思うの」
「ええと、つまり魔術師の仕業じゃないって事なのか?」
指をぴん、と立てて眉間を軽く押さえる。
「あくまで『そう考えられる』ってトコかしら。
私はこの事態はアサシンの宝具、或いはスキルに拠る記憶喪失…と推測してるのだけれど」
僅かな手掛かりから推測を立てていく様は名探偵のようにも見える。
亥狛は素直に感心して彼女の名推理を拝聴しているのであった。>>958
「でもそうね。アサシンの姿形が思い出せない以上、此方としても如何ともしがたいわね。
一先ずアサシンに関しては現状対処は保留という事で良いかしら?」
「それで構わないよ、答えの出ない相手について深く考えたって“建設的”じゃないものな」
心なしか、彼女と話してると頭が良くなったような気がする亥狛なのであった。
理路整然と筋道を立てる彼女との会話が円滑に運ぶのは当然の成り行きと言えるだろう。
そのスムーズさを何処かで心地よく思う。
「そ。……なら次は私が知ってる各サーヴァントの特徴について話すわね」
如何に不確かな情報と言えど彼はアサシンに関する手持ちの情報を開示してくれた。
ならば今度は自分が開示するのが筋ではないか。
そう思ったが故の、自分の情報の提供。
半ば公平な様で、その情報の質は不公平極まりない程であるのだが────彼女の生まれ持った人の良さは凡ゆる不平等を容認しない。
それがたとえ、己が不利となる取引になろうとも。>>959
ここで、パスを回します。
次は玲亜ちゃん陣営が知っているサーヴァントの情報を説明でしたね。
お待ちしてます!>>959
「まず私と錫久里君のサーヴァントに関してはここで話すことはしないということでいいかしら?今後どうなるかはわからないけれど戦うことになるかもしれないわけだからお互いに秘密にしておきたいこともあるでしょう?」
まず提案したことは互いのサーヴァント情報の互いの不干渉だった。個人の感情では敵対をしたくないという相手であったとしてもこれは戦いなのだ。状況にとっては戦わなければならないことが避けられなくなることもあるだろう。その時のために互いの予防線だ。
「ああ、それで構わない。」
亥狛の返答と確認し自身の見た情報と所感を踏まえて語る。
「まず錫久里君があったというセイバーだけどおそらくは私も知っているサーヴァントだと思う…のだけれどどっちのことかなのかははっきり分からないわ。」
「セイバーがどっちか分からない?7騎の別のクラスが召喚されるわけではないのか?」
「ええ本来ならそうよ。でもこれは本来の儀式の亜種にあたるもの。いろんなところで起きてはいるけれど何が起きるのか想定しきれない部分も多いわ。…とはいっても今の私がいったどっちか分からないというのはそういう意味とは違ってね。セイバーのように見えるサーヴァントが2体ほど見ているのよ。」
「セイバーのように見えるサーヴァント?戦っているところを見たのか?」
「遠目でうっすらとだけだけね。とりあえずセイバー①とセイバー②って仮につけて呼ぶようにするけどいいかしら?」
「ああいいけどその、そう番号を付けて呼んで解説を受けてるとなんだか授業みたいだな。」
「授業なんていうほどしっかりしたものじゃないわよ?時間があればもっと分かりやすく言えたのかもしれないけど今はこれで我慢してね。まあとりあえずセイバー①からの説明ね。」>>961
セイバー①(仮称)の姿を記憶から呼び覚ます。
「あのサーヴァントはそうね…はっきり言うと自分でも自身がなくなってくるけれど私は戦いたくないと感じたほどの圧倒的な存在感があったわ。見た目は男性で背も高くて恰好からして剣士のような見た目だったからセイバーかと私は思ったわ。」
「戦いたくない?それはどういう意味でだ?」
「本能的なものかしら?これと戦ったら絶対に勝てないと思うような蛇ににらまれたカエル状態と言えばいいのかしらね。」
自身が優秀な魔術師とは全く思っていない。しかし自身のサーヴァントや敵のサーヴァント、そしてあの時計塔のマスターの連れた強力なサーヴァントを見ており多少のサーヴァントへの耐性はできてきたと思っている。それでもあのサーヴァントを前にした時に自分は本能的に勝てないと恐怖を感じてしまった。時計塔のあのサーヴァントがあのサーヴァントと違い戦闘をする気がなかったからかもしれないと思いもするが剣士のようなサーヴァントの闘気のようなものはそう断じるに足るほど圧倒的であったのだ。
(そう…例えるならあの夢に出てきたの少年の師のような…)
「東雲?」
「あ、ごめんなさい。そうねどういっていいかは分からないけれどあのサーヴァントは英霊の中でも上位の方に行くのではないかと思うほどの実力者であることは間違いないわ。もしあなたが戦うとしても私は単独での戦闘はおすすめしないわね。」
「そこまでなのか…。何かそれ以外の真名につながるような特徴はなかったのか?」
真名。それはサーヴァントの正体のことでありサーヴァントにとって最大の弱点でもある。かつての英雄と呼ばれた者たちには著名な逸話が存在していることがほとんどだ。そしてその逸話には武勇伝以外にもその英雄の最期も含まれていることが多い。そのためそれが分かれば撃破に大きく近づけることだってあり得るのだ。>>963
「セイバー②についてだけどその姿は男性で見た目は西洋の騎士のイメージの恰好だったわね。実力としてはさっきのセイバー①と単騎で戦えるほどの実力者ね。」
「西洋の騎士…か。それでセイバーと思ったのはなぜだ?」
「騎士の恰好をして剣を持っていたってことが大きいわね。それも複数持っていたわ。…あと…そのセイバー②のマスターに直接セイバーと聞いたということもあるの。」
「え?マスターに会って聞いたのか?それならセイバーで確定なんじゃないのか?」
「甘いわよ。情報が武器になる状況で相手にあえて嘘を教えて混乱させるなんてことは十分にあり得るもの。それにあのマスターは時計塔にいた魔術師だからね。そういう情報戦なんて日常茶飯事だもの。」
「ほう。ならお前のこの情報もさきほどの小僧の情報も信用できないということになるがこの情報交換に意味などないのではないか?」
背後から先ほどまで黙っていたアヴェンジャーの言葉が投げかけられる。
「魔術師の情報など信用できないのならお前の言葉も当然軽くなる。そんな無駄なことなど早く辞めたらどうだ?」
「ちょ…あなたいきなりしゃべったと思ったら何言って…」
「二人で顔を合わせて何やらこうたら言っているが大して役に立たないという話なのでな。さっさと済ませてもらおうと思っただけのことよ。」
アヴェンジャーの言葉は真実だ。魔術師の言葉は信用できないと確かに先ほど言った。なら自分の言葉も信用などできないではないかという指摘は正しい。合理的なアヴェンジャーらしい言葉であるが先ほどからの茶々などらしくないことが多数あったことから違和感を感じていた。>>965
「え、えーとそうセイバー②の特徴の続きね。現状セイバーに関しての情報はこれ以上はないわ。でも今のところその陣営と私は色々と事情はあるけど停戦状態にあるの。だから私とそのセイバー②の間で戦うことは今のところはないから詳しくは分かりそうにないわね。」
「そうか、これも真名は分かりそうにないか。」
「とりあえず西洋の騎士関連の人物から洗ってみることがいいかもしれないわね。それで最後の情報としてはこれは私も姿を見てはいないのだけどスナイパーのサーヴァントがいるわ。」
「スナイパー?」
「そう二日前のことになるけど公園で狙撃をされたの。それも正確にね。私のサーヴァント曰く追尾弾ではないかと言っていたわ。それで正体を見ようと接近したのだけれどあっという間に引いていったわ。非常に慎重な相手だといえるわね。このサーヴァントに関しても真名につながるような情報は申し訳ないけど全く持っていないわ。でも神隠しについては知っているかしら?」
「最近話題になってる都市伝説か?たしかあとはごるごるさんとかは聞いたことがあるような。」
「そう。この神隠しの調査に行ってこのスナイパーのサーヴァントに狙撃されたことからもしかしたらだけど神隠しに関連しているのかもしれないわ。私が分かるのはこれだけよ。何かほかに質問はあるかしtら?」
自身の持っている情報をすべて話し終えて質問をする。>>966
イコマさんにパスもどします!きゅ、九終いきますぞー
(……へへへ)
「どうかしたのか」
霊体化しているアサシンが唐突に笑い声を漏らす。楽しげで、獲物を見つけた獣を連想させる不気味な声色だ。
(サーヴァントだ、サーヴァントがいやがる。さっきまでお前がいた学校だぜ)
「学校……?」
坂道の真ん中で樹は足を止め、背後を振り返る。学校までそう距離はない。つまり敵と入れ違いになったと言う事だ。
まさか、と考え樹はかぶりを振る。九重海音では無い、彼女は優秀だ。自分のサーヴァントの気配を他人に悟らせる様な人間とは思えない。つまり、今学校にいるサーヴァントは別の誰か、と言う事になる。
海音のサーヴァントはアーチャー、樹のサーヴァントはアサシン。
残るマスターは五人。その内の誰か。
脳裏には運営から課せられたミッションがよぎっていた。『アーチャー陣営との敵対』『バーサーカー陣営との敵対』『セイバー陣営との同盟』。一つ目はもう学校で済んでしまっている、残るは二つのミッション。
敵はバーサーカーか、セイバーか。
「……で? どうするよマスター。ヤっちまって良いのかよ。それともまた仲良くやろうね、なんておしゃべりするか?」
実体化したアサシンの双眸が樹へと向けられる。宝石の様に赤く沼の様に底が見えないその瞳に、樹は負けじと正面から睨み返し、
「僕はお前を戦わせる。お前は好きにする。そういう契約だ。存分に戦ってくれ殺人鬼」
ぎひり、とアサシンが微笑む。周囲の大気がその笑みに威圧されたかの様に凝結する。まるで車のキーを回した様に、アサシンという人のカタチをした怪物は動き出す。
「ひ、ひひひひひぃひひひひ……待ってたぜ待ちくたびれたぜ。首輪が邪魔で仕方無かったぜぇ!!!」
地面を蹴ったアサシンは一瞬で森に隠れると、そのまま学校まで抜けるべく怒濤の勢いで突き進んでいく。やはりその姿は人と言うより獣で、更に言うならば怪物という表現が一番正しいと言えた。
呆然とその姿を見つめ続けていた事に気付き、樹は慌ててその後を追って走り出す。アサシンの脚力ならば数分もしない内に学校に辿り着き、敵サーヴァントと刃を交えている事だろう。>>970
「―――――僕は、弱くない」
九重海音、彼女は言った。『我々は敵同士だ』と。その瞳には少しの感情も籠められてはいなかった。
分かっている。分かっているとも。宗美樹は間違っても海音に脅威と認識される男ではない。魔術の才能など底が知れているし人間だってよく出来てはいない。後ろ向きな考えばかりしてしまうしうだつはあがらない、はっきり言って冴えない男だ。それでも、
「―――――僕はマスターだ」
自然と足が速くなる。息を切らしながら、必死にアサシンを追う。
宗美樹はマスターだ。その証拠にこの手に刻まれた令呪がある。
「僕は、マスターだ」
夕焼けを背に、樹は走る。その胸にたとえようもないほど純粋な何かをため込んで、ただただ走る。
自分は魔術師だ、マスターだ。彼女と同じだ、彼女と肩を並べる、同じ……!
「僕
は
君
と
同
じ
な
ん
だ
!」トーナメント投稿します
「か、はっ……!」
ライダー・ロスタムの一撃を喰らい私のところまでバーサーカーが吹き飛ぶ。それはさながら空気の抜けた風船のように、しかしロスタムとの圧倒的な体格差を考えれば当然とも言える結果だった。空中で何とか体勢を立て直し膝をつきながらもバーサーカーは着地する。
「バーサーカー……!」
「だい、じょう……ぶですマスター……まだ戦えます!」
私の声に息も絶え絶えにバーサーカーが返答する。
バーサーカーが疲弊しているのは明らかだが、幸いにも霊基は損傷こそしているもののまだ致命傷ではないことにひとまず安堵の息を漏らす。だがロスタムの拳圧によって巻き起された砂嵐によって視界は完全に遮られてしまった。
「次の一撃で決着をつけようではないか、バーサーカーよ!」
ロスタムの声が砂嵐の向こう側から響き聞こえる。鬨の声、咆哮、あるいは恐怖を与えるためかロスタムの声には『必ず次で仕留められる』という絶対の自信に満ちていた。
実際、かなり手詰まりの状況だ。
疲弊や消耗だけならいざ知らず視界不良も合わさればこちらが負けうる状況は多分にある。
「魔眼、起動(セットアップ)……!!」
視界の確保、とまではいかないがロスタムの位置を把握するために魔眼を再び励起させる。
「見つけた、けど……!!」
ロスタムは砂嵐の中央を突き進んでいる。もっと言えばバーサーカーが飛ばされた場所へ。だがこれだけでは情報不足もいいところだ。
「視界、増幅(ブースト)……!」
魔眼に強化と修験道の1つ他心通を応用し重ね、さらにロスタムの情報を手繰り寄せる。
ロスタムの右手には大剣が、左手には戦斧(メイス)が握られていた。そして何よりも高まっていくロスタムの魔力。これが意味するところはつまり。
「……っ!この感じ、宝具を使うつもりね!?」
いよいよ以って大詰めだ。自分に残されている魔力を考えれば湖光(アロンダイト)か聖剣(エクスカリバー)のどちらかしか宝具は使用できない。
加えて問題なのはロスタムの武装だ。仮に宝具を放ったとして片方の武装を犠牲にすればロスタムはバーサーカーに致命的な一撃を与えることが出来る。かといって宝具を使わなければバーサーカーはミンチもかくやな肉塊に成り果てる。>>973
「(……方法は無いわけじゃない。)」
自分の右手に目を落とす。
令呪。
僅か三画しかないサーヴァントへの絶対命令権。
これを使えば勝機は見える。だが、ここで令呪を使うということはこの先の戦いで起こりえるだろう重要な局面で使える手札を1つ減らすということに他ならない。
目の前の勝利を取るか、先の勝利を取るか。
「マスター」
「!」
「令呪を使ってください、今ここで勝つためにはそれしか道はありません。」
「確かにロスタムはすぐそこまで迫ってきてるわ。でも、ここで令呪を使うってことはこの先の戦いでーーーーーーー」
「カノン」
バーサーカーが真っ直ぐな目で私を見つめる。
「確かに目の前の戦いよりも後の戦いに目を向けることは悪いことではありません。
ですが、それは目の前の戦いに勝利を確信して行うべきこと。目の前の戦いから目を逸らし、後の戦いを見据えるのは愚者の行動です。今この戦いに勝てなければ後の戦いに繋がることはないのですから。」
「バーサーカー……」
声音は優しく、子供を窘める母親のような口調で話してはいるがバーサーカーの表情はどこか苦々しいものだった。
でもバーサーカーの言う通りだろう。目の前の勝利なくして後の勝利無し。であればやれることは最大限に、不可能を可能に変えてみせるのがマスターの責務だ。
「……分かったわ、バーサーカー。でもロスタムを倒すためにはバーサーカーの宝具1つでは足りないわ。」
「ええ、それは理解しています。ではどうなさるのですか?」>>974
「私の魔力はあと一度だけ貴女の宝具に充てることがことが出来る、それに令呪を加えるのなら……」
「!為さんとすることは分かりました、ですが失敗すれば……」
「バーサーカー、貴女が自分で言ったじゃない。目の前の戦いに勝てなければ後の戦いには繋がらないって。
当たって砕けろ……ではないけれど、今できることをやらなければ勝利なんて訪れないわ。」
右手の令呪をバーサーカーにかざす。言葉は告げず、ただ私の一念を思念することでバーサーカーへの命とする。
「(令呪を以って命ずるーーーーーーー)」
「(“その二振りの宝具を以ってロスタムを打倒せよ”!!)」
令呪が真紅に輝きバーサーカーの身体に煌々と魔力が溢れていく。
「王よ、どうか私に力をお与えください……。」バーサーカーは右腰の鞘から聖剣を引き抜く。
右には青白き湖光の光が、左には鈍色の星の輝きが満ちていく。
その場限りの合わせ技。令呪が無ければ私でも2回と出来ない芸当だ。だけど私は私の為すべきことを為すために、でもそれ以上にバーサーカーの信頼に応えるために、そしてバーサーカーを信じているからこそ。
「満ちたりよ、星の輝き達よーーーーーーー」
「『湖光の憧憬湛える勝利の剣(アロンダイト・ディスペアー&エクスカリバー・リグレット)』!!」
放たれた湖光と鈍色の星は混ざり合うのではなく共に並び進むかのように。それはさながらかつての盟友が再び同じ場所で剣を振るうが如く。
砂上の戦いは大きな局面を迎えようとしている。
その地に最後に立つは英雄(戦士)か王妃(凡人)か。
戦いの行方はただ砂塵の嵐の中に在りて。>>975
ここまで。高纏さんにパスします>>977
冗談でしょ?と言わんばかりの玲亜の表情に。
亥狛といえば、はてな?と今ひとつ要領を得ていない風である。
彼の出自からすれば携帯電話を所持している方が奇異な訳なのだが、それはそれとして。
彼は今人として振舞っている、であれば彼自身が奇妙に映るのは仕方のないことだろう。
「……何回も言うけど、世間知らずだからな。これから社会勉強する予定なんだ」
「ああいや、別に卑下してる訳じゃないの。
少し驚いただけ─────そうね、なら学校で声を掛けてくれれば良いわ」
かくして。
仮初とは言え聖杯戦争に一つの同盟の芽が生まれた。
後は亥狛の後見人でもある魔術師との会談を経て、正式な同盟締結と相成っていく手筈である。
屋上から校内へと続く扉に手を掛けてから亥狛は玲亜の方へと振り返ると。
「ありがとうな、東雲」
「……なによ唐突に?」>>978
亥狛は別段照れる訳でもなく、真っ直ぐな視線が玲亜を射抜く。
その嘘偽りのない表情は見られた玲亜の方が照れ臭くなるほどであった。
「や、未だ決まった訳じゃないけど同盟を俺と結ぼうと考えてくれて。本当に感謝しかない」
「別に感謝される謂れはないわ。
同盟を提案したのは貴方が見てらんないって理由もあるけど、戦力補強って意味合いもあるんだから。
─────魔術師って基本的に打算的よ、信用し過ぎない方が身の為だと思うけど?」
「だとしても、話を持ち掛けてくれた厚意そのものに俺は感謝したいんだ。
死と隣り合わせな戦いなのは身をもって理解してる。
だからこそ思惑はどうあれ、一緒に戦おうって提案は嬉しかった」
「─────」
返答はない、と言うより呆気に取られて返す言葉が見つからないといった感じだ。
魑魅魍魎蔓延る殺し合いだと言うのに、目の前の男の発言は純朴に過ぎるものだから。
思わず毒気が抜かれてしまいそうになる。
「それが言いたかっただけだ。じゃあな東雲、また今度」
そう言って。
背後で東雲玲亜がどんな表情を浮かべているか確認もしないまま、早々と屋上を後にする亥狛であった。はい、ここまでです。
レアさんにパスしますね!>>979
後姿を見送りながら最後の言葉を反芻する。
嬉しかった――嬉しかった――
(ああもう調子が狂う!)
嬉しかったといったのは本心からだとわざわざ魔術を使わなくともわかる。
その純粋さは美徳だと玲亜は思う。だがこと魔術師にとってそれは致命的だ。魔術師に対して本心を見せるなかれ、心を許すなかれ、同情をするなかれ、弱みを見せるなかれ。彼女の魔術師としての人生はそうやって生きてきたのだ。この戦いにおいても周りはすべて敵だという気持ちでいた。
だというのにこの身はどうしてこうも彼に感情を動かされているのだろうか。
彼の無知さに腹が立ったこともある。彼をこの戦いに出した魔術師に対しての憤りも当然ある。そして彼に対しての同情もある。だがそれだけなのだろうか。
(彼と話してる時はうまく自分が作れないな…)
魔術師として生きていくために作り出した東雲家当主としての人物の仮面をつけてあの日以来生きてきた。その仮面を外すときは母といるときだけだったがだんだんとどれが本当の自分か分からなくなってきたことを思い出す。今いる私は果たして本当の私なのか当主としての私としての姿なのかが曖昧になって
いる自分を俯瞰的に見るが考えるのも億劫だった。本当の自分では耐えられるほど強くはないのだからならそのままで生きていけばいいとそう思ったのだ。いつしか自然と自分を偽るようになりそのことが普通に変わっていた。自分を作ることで外から身を守る臆病者。その癖に一人は嫌だから嫌われないように外面だけはよくしている。それが玲亜という人物だ。周りには自分を見せているようにふるまうがその実見せてはいない、いや見せるのが怖いのだ本当の自分なんて人を失望しかさせないのだから。
だがなぜ本心を見せる彼に対しては隠せないのだろうか?その根底にあるのは、モールド・オブ・メトロポリタン!アメリカの地下世界の中で最大級の大きさを誇る土地であり今は2人しかいないレジスタンスが本拠地としている
そして広場にてカルデアとレジスタンスの1人『無形のエル・シッド』は巨大なスクリーンを見ていた。教鞭をとるのはレジスタンスのリーダー『雌獅子リオナ・ロゼワイン』
スクリーンにはアメリカ大陸が表示されている。全員の視線が集まるのをみるとリオナは声を張り上げて説明を始めた>>983
〜〜〜〜〜〜〜〜
はい、お初にお目にかかる人もいるので改めて自己紹介させてもらう
私の名前はリオナ・ロゼワイン。レジスタンスのリーダーをやっているものだ
今回は軽く話してたけど改めてこのアメリカがどうなっているのか説明しようと思う
事の発端は私の母が作った神酒をスカーフェイス……………『アル・カポネ』が奪った事に起因するんだ。あいつは如何やったのか知らんが神酒の粗悪量産に成功した。そのおかげでまずはアメリカ全土がアル中だらけになって、その酒が世界中に散らばって、殆どのみんながアル中になっちまったってわけなのよ。もちろん私みたいに抵抗した奴らや国も存在したわけ?ドイツとかイギリスとかも。でも彼らも不老不死の兵士には敵わなかった。しかも神酒を加工して合金だのエネルギーだのも無尽蔵に生み出せるからね。抵抗者はどんどん消えていったのよ>>989
終わりです!「なるほどな…大体わかった」
「よく理解できましたね…まぁ視聴者達からすれば娯楽といっても、願いが叶うのは本当ですから自分も本気でやりますけどね」
「当然だ。勝てる戦は確実に勝たせてもらう」
来栖市で行われる聖杯大会のマニュアルをペラペラとめくるアーチャーを横目に見る。
一通り読み終えて満足したらしく京郎に向けてポイと放り投げる。
「それで、どうしますか?魔力供給は今のところ大丈夫だけど小聖杯とかは…」
「今は拠点を固めるほうが先だ。お前はどこを拠点としているんだ?」
「ホテル」
「今は捨てろ」
そうばっさりと言い切る彼女に流石に京郎はぽかんと口を開ける。
そんな己の主に目もくれずアーチャーは解説していく。
「とりあえず情報はこの本で手に入った。人員は今は望めない。有能な仲間はどうだろうな」
「ええとそれはひとまず置いといて、残るは速さですよね。あ、という事はもう拠点を移すんです?」>>991
アーチャーは首肯した。そして街の地図を広げると北西の山を指差した。
「私はアーチャーだ。武器を最大限に活かすなら上を取るべきだし、霊地なら戦闘にも支障は出にくいだろう」
「そういやアーチャーの初陣って山の上からの狙い撃ちでしたね」
「ははは、まだ青臭かった頃の武勇すら後世に残っているとはな。流石は私だ」
ドヤっという効果音が付きそうな表情を自慢げに浮かべるアーチャー。基本は無愛想だがどうやら人間らしい一面も持ち合わせているらしい。
改めて真名通りの英霊らしい。
「でも、山なら南西の方がいいんじゃ?」
「確かに山だが広い事だけが良いとは限らない。その分伏兵が潜んでいる可能性も高くなる。弾が届く範囲で今は十分だ」
「なるほど…」
指揮官としての観察眼だと漠然と京郎は思った。歴史に名を轟かすだけあってこの常識が通じない聖杯大会においても考えは的確だ。>>992
「ならさっさと行くぞ。他のサーヴァントに陣取られる前にな」
「はーい。じゃあタクシー捕まえるんで待って下さいねー」
道路に向かって歩いていく京郎。
しかし一つの違和感が胸をよぎった。
「聖杯から大会の知識とか貰わなかったのかなぁ…?」
聖杯からはサーヴァント達は、円滑に殺し合いをする為に基本的に召喚された時代の知識を付与される。
その量や質に多少の強弱はあれど、今回のような大会ならばその大会の知識が与えられるはずである。
だがアーチャーはスタッフ用のマニュアルを読み度々質問を投げかけてきた。まるで無知だった。
「…まぁいいか」
真っ当に召喚できたわけでもないし何かしらの齟齬でも発生したのだろう。
まるで自分の携帯端末が不具合を起こした時と変わらぬ気楽さで彼はこの事態を受け止めた。>>996
とりあえずガイさんにパスです>>998
了解です。
となると、森林全体が工房化してるのを見て撤退する感じでしょうか?
あと、一日目夜のほうはどうしますか?1000で大変身
聖杯大会本戦統合スレNo.2
1000
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