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さて、まずは何から始めます?
ドロテーアさんの導入とか、ですか?これから九終のプロローグを投下します。視点はエリザヴェーダです。
「さて、と………」
ひとまず出来うるだけのことは準備は全てやった。全部で7人……キャスター陣営は例外として2人になったがさして問題ではないだろう。そもそも魔力くらいなら、こちらから幾らかは供給出来る。………まあ、今のところ申請は特に無いから参加者達は全員魔力に自信があるのだろうと推測するが。
「にしてもあいつの趣味が分かるっていうかなんていうか………。九終の聖杯のことを知っててこの人選なら、完全に嫌がらせそのものね。」
大企業の娘、蒼木ルイ。九重海音にぶつける相手としてはこれ以上ないくらいだろう。
今回の優勝候補の一角、代行者のヴィルヘルム・ヴァンシュタイン。間違いなく戦闘能力だけなら、このメンバーの中では一番だろう。
それに対抗出来るとするなら魔眼棺桶(イヴィル・コフィン)、ユージーン・バックヤード。魔眼の使い方次第ではヴィルヘルムを上回る可能性は否定出来ない。
祖先に竜がいるらしい照文音意。彼女は優勝候補というよりはダークホース寄りだろう。竜の血が覚醒していなければ、さほど強さはないだろう。それに竜の血でなくてもそうだが、そういったものは代を重ねるごとに薄まっていくものだ。幾つかの例外はあるにせよ、それは神秘が薄い現代においてはアドバンテージにはならない。
唯一、例外として2人参加のキャスター陣営はどちらも戦闘力が皆無だ。万が一、ルールが無くなった場合は真っ先に脱落するだろう。
宗美樹は良くも悪くも参加者の中では平凡すぎる。ある意味では一番の見世物となるのは彼だろう。これを見る連中にとってはこれ以上ないくらい愉快な玩具になる。
「そんで、九重海音か…………。」
今回の聖杯大会における主役料理(メイン)。魔術師でありながら、魔術師ならざるもの。私は彼女に対して思うことがないわけではないが、それを語るのはもう少し後にしておこう。
「なんにしたって、彼らがどうなるのかは見てのお楽しみかしらね。あの島の聖杯はどうにも一筋縄ではいかないってことは分かったし。」
すると、部屋に設置してあるFAXから1枚の紙が出てきた。恐らくはクルーゼが送ってきたものだろう。あいつは魔術協会の人間と違って、必要に応じて現代機器を使うことを是としている。送られてきた紙を手に取る。そこにはこの聖杯大会(見世物)で試運転されるミッションについての概要と各陣営のミッションが記されていた。>>5
「うわ………ほんとに悪趣味ねクルーゼの奴………。けど、これはこれで有りかしらね?」
ミッションの内容そのものはそう難しいものは無い。むしろある程度の盛り上がりは期待出来るだろうし、視聴者側にしてみてもこれが望ましいだろう。
「あとは、始まるのを待つだけね。」
そんなことを言いながら、私は自分の工房に足を伸ばす。工房にはこれまで私が仕事で手に入れた報酬(死体)が数多く飾られている。他人に言わせれば悪趣味だろうが、私はこの空間が何よりもやすらぎの空間なのだ。そして、その部屋に唯一ガラスに囲われ緑色の液体が入れられた装置に入っている1組の男女の前で足を止める。もはや生気は無いに等しいが、それでもなお緑色の液体を抜けば動き出しそうなリアルさがある。
「さあ、もうすぐよ?そこでじっくり見ているといいわ。島の行く末を涙を流すことも出来ないまま傍観しなさい。そして、全てが終わったら解放してあげる。もう二度とこちらに戻ってこれないようにね……。」
男女の反応はない。それで構わない。彼らには目一杯絶望してもらわなければ。
「さあ、物語の幕を開けましょう(Otkroyte zanaves)!!」あの…その…実は、ですね?初梅は近接は出来るし魔力を攻撃として飛ばすぐらいは出来るんですよ。
出来たところで近接とかまず心見られるのがいやで距離取られるのがオチだろうし殆ど無用になりそうですが。ふええユージーンにカッコイイ二つ名付いてるよぉ。嬉しいです。
てか私達のチームは優勝候補ですらない……仕方ないね。スペック自体は異常中の異常な気がするんだけどなぁ!これは思う存分やっても良いのかなぁ!
てかこれ参加者は他の参加者のこと知ってるのでしょうか?どうなんです?ドロテーアさん。インタビューの件なんですがユージーンが他陣営に同盟を持ちかける関係上トップバッターを務めたいのですがよろしいでしょうか?
>>10
とりあえず他の方を待ってからで。時系列は多少前後しても問題はないでしょうし。>>11
ふむふむ。あと少し聖杯器候補でお話が。と言っても簡単な話ですが。うちの初梅ちゃん常時心と記憶受け取り展開じゃないですか。なので器の子達は軽ーい心理干渉妨害貼ってる設定とかにして頂けません?そうでないと触れなくても勝手に読み取っちゃうので。別に無差別に見ても良いなら構いませんが…うちはどの段階でもいいですよ。
私もインタビューはいつでも。なんなら今日中に書き上がりそうですし。その前にキャラ&性能把握用に初梅ちゃんの過去でもいいか。
とりあえずユージーンのインタビューを貼っておこうと思うのですがいいでしょうか?
>>16
どうぞー。リポーター「それではユージーン・バックヤードさんのインタビューを開始したいと思います」
ユージーン「はい」
『心を読まれるから余計なことを考えないようにしよう』か…。考えないようにしてる時点で考えてるんだよ。
リポーター「ではまず今回の大会に出場した動機を教えてください」
ユージーン「友人と遊ぶ金が目当てです。手っ取り早く大金を手に入れるのによさそうだったので」
リポーター「なるほど。では聖杯はどうするおつもりですか?」
ユージーン「要りません。なので召喚するサーヴァントにあげようかと」
リポーター「バックヤード家は古くから続く魔術師の家系とのことですが、聖杯を研究に使わないのですか?」
ユージーン「必要ありません。うちに必要なのは魔力ではなく世代[時間]なので」
リポーター「では最後にこの聖杯大会への意気込みを聞かせてください」ユージーン「では…」
そう言ってリポーターからマイクを受け取って立ち上がる。
ユージーン「俺は、バーサーカーを召喚します」
スタジオ中がどよめく。想像通りだ。普通自分が召喚するサーヴァントの情報を明かすやつはいない。
『何を考えてる』だって?今から説明してやるよ。
ユージーン「狂化で話せなくても俺なら意思を読み取れる。それにさっきも言ったように俺に聖杯は必要ない。だから賞金を譲ってくれるなら聖杯は同盟相手に譲ってもいい」
八百長?違うね。これは他の参加者全員に向けての同盟の提案だ。
聖杯大会はTV番組だ。視聴者の前で提示した同盟の条件を破ることはしにくいだろう?
ユージーン「同盟を結べば俺の読心の魔眼とバーサーカーの破壊力が味方になる。悪い話じゃないと思う」
ユージーン「同盟を組むって人は俺に直接会って話をしてしい。以上です」という訳でインタビューでこんな風に他陣営に同盟を持ちかけます。
これに対して他参加者がどう思うかは皆さんにお任せします。そういや九終の要たるミッションを張ってなかった。これからミッション内容を張りますね。ミッションの内容を展開に組み込むも良し、そんなもんいらねえ!と我が道を行くのも良しです。
>>25
あらそうですの(ニッコリ)
戦闘能力皆無は竜胆君だけじゃからな…そこを頑張りたいですな!まあ精神攻撃と外道戦法で頑張ろう。>>27
ククク……だが安心してほしい。やろうと思えばどれも達成出来る範囲には落とし込んだつもりだ。
シークレットは誰かが達成したら解放するからヨロシクゥ!あ、アーチャー陣営が簡単なのは運営サイドが無駄に忖度した結果です。それに、ほら。彼女はこの大会で一番苦しんでもらわなければね……。
ちょっと質問です。
1、このミッションはどのタイミングで出ますか?
2、多分大丈夫ですけど他の陣営にバラすのもありですか?
3、この文面通りにミッションは来ますか?
4、禁則事項等はありますか?
返答次第でユージーンがかっとビングします。>>33
いやほら、身を守る術は竜胆君あるけど攻撃方法はないもの…鯖同士の対決ならぶっちゃけあんま心配はしてないし。
うちの狸ステ高いし宝具反則級だから。まあ魔力は余りあるからバンバン使うんですが。あと明日にインタビュー投稿しますね。>>36
シドニーでは不湯花ちゃんが正統派主人公気質な分こちらで無慈悲戦法を発揮していこうかと!(爽やか笑顔)
うちの子のプロフィールはちゃんと読み込んだ方が良いですよーとだけ。戦闘しない(戦闘出来ないとは言ってない)な面子ですからねー。>>41
どうしてあの時、私が爆笑したのかご理解いただけましたか?(愉悦スマイル)あ、ここらで初梅ちゃんの能力についてしっかり説明をば。聞いておいて損はないかと。
水籠の秘術。感受性が強い者に直接刻む術なので魔術の才能が無くとも感受性が高ければ大丈夫。色んな所から感受性が高い人を貰って秘技を刻む。そしてこれで生者、死者(幽霊のような残留思念)問わず人々の辛い感情や記憶を受け取り、人々を救うことを信条としてきた一族が水籠です。
受け取りすぎると受け取ってきた記憶と感情に耐えられずに発狂するのですが発狂した人は土地に生き埋めにして封じることでその貰ってきた感情ごと抑えています。
人の思い、記憶、感情を「全て受け取る」ことが出来ます。受け取るには7mまで近づいて対象を見るか触れる必要があります。見る場合は4秒で全部見れます。触る場合は一発で一気にいけます。どれだけ魔術的抵抗があろうが範囲内では対処不可能です。頑張って範囲から逃げて下さい。受け取り間は不快感があり受け取り後は妙にすっきりするので気付いて逃げることは可能です。魔術師なので4秒あったらなんとかなるでしょう。
初梅に何かしらの物理以外の干渉(精神や記憶干渉、呪術、黒魔術、魔眼干渉等)を仕掛けた場合は範囲外でも逆干渉で記憶やら感情やらを見れます。
また、初梅は今まで自分の中に納めてきた感情を範囲内の相手に送ることが出来ます。例えば死ぬ時の記憶を頭に叩き込んだりできるわけですね。
初梅は土地に封じられた百数十年分の大量の人々の感情や記憶も一族の他の人の中に納めてあった感情や記憶も大事故で生き残りが彼女だけになった時に全部入っているので総量がどえらいことになってます。初梅はなんともなっていませんが。
余談ですが今も彼女だけで予約を受け、気持ちを受け取る仕事はこなしているとか。>>46
いやほら、うちの主人公に見せかけた異常者系男子君「ルールに忠実」じゃないですか。神秘の秘匿って大事ですよね。そういうことです。>>48
うちもどんな魔術抵抗も不可能って書いたんじゃが……そうだ、第三者が超強固なプロテクトをかけたら見えなくなることにしよう。そうしよう。黄金クラスの読心の魔眼で見れないほどの大魔術ならこれで通せるわ!>>54
なるほどです。逆に私に質問等はありませんか?
ユージーンの魔眼についてや酒呑について等。答えられる範囲で答えますよ。
ちなみに102の魔眼の効果は未定です。>>61
・アタッシュケースの魔眼を使わないと魔力供給が追いつかないから戦闘中急には使えない。
・長時間使えない(これはユージーン側の魔眼起動のデメリットの為)
この二つですね。
複数の魔眼起動のデメリットは『眼に負担がかかる』です。魔眼で根源を目指してるユージーンにとってあんまり使い過ぎて視力が落ちてしまっては大変です。
まあ私はそれをミッション報酬で踏み倒そうとしてるんですけどね☆回りくどい言い方して言質取ろうとするのも卑怯なのではっきり言います。
私は撮影スタッフで魂喰いをキメようとしてました。
最初の召喚の時とかには居るってことにして頂けませんか?>>69
死にたくはないでしょうね。ミッションかぁ…クリア出来そうなのが一つとあととても頑張ったらクリア出来そうなのが一つだけなんじゃが!じゃが!絶対クリア出来そうにないものが一つある!とりあえずドロテーアさんの許可も貰えたのでバーサーカー召喚シーン書いていってます。
おかしい、ユージーンは最初こんなやつじゃなかったのに…。>>72
とりあえずインタビューは出来た人からって感じでいいのではないでしょうか。
私のように拘りというか先がいいって人は後からでも時系列的には先とすればいいと思います。>>72
私は最後の方、というか展開の仕方的に私の手番はかなり後ろの方にしておきたいのですのよね。
まあ「時系列はこの辺のタイミングで!」って言っていただけると編集もしやすいので助かります。「ちょ、ちょっと初梅。こんなに人が多いなんて俺聞いてないよ!?」「お黙り。あんたみたいな完璧超人、今まででインタビューとか星の数ほど受けてきたでしょうが。」「まあ10を超えてから数えてないけど……てかそれ初梅もじゃん!」「お黙り駄犬。始まるわよ。基本私が受け答えするから。」「了解でーす。」
カメラマンが私の範囲内に来る。キーンと耳鳴りがなる。『そして、再生が始まった』
幼い頃事故にあった。弟と、兄が目の前で死んだ。脚が潰れる感覚、指が車体にぐちゃぐちゃに潰されている感覚。そこからの辛すぎる日々。その地獄の日々得て、俺は今ここに───
───久しぶりに強い記憶を見た。正面のカメラマンの記憶と感情らしい。リポーターの記憶と感情も見えたが特に印象に残るものではない。>>75
──リポートを開始します!まずはお名前を!それと召喚予定のサーヴァントを!
「俺が氷瀬竜胆です。」「水籠初梅です。召喚予定は……キャスターかライダー、でしたね。」
───キャスターかライダー、ですか。これはピーキーな戦い方をして下さるでしょう!続いて動機は!?
「応募したら受かったので。竜胆君は協力してくれる、と言ってくれたので一緒に。」(お前は魔術的価値が高いから魔術師の手から守るため保護で云々〜みたいに強制的に連れてこられたんだけどなぁ…)
───成る程!聖杯への願いは決まっておられるのですか?
「我が秘術の冴えを高めるために利用出来れば良いかな、と。竜胆君はどうなんですか?」「(猫被り上手だなぁ)強くなりたい、ですかね。」
───シンプルながらも王道ですね!では最後に意気込みを!
「しっかりと全力を出して、戦っていきたいでね!出来れば同盟なんかも視野に入れています。」「ルール厳守で!民間の方々に被害を出さずに頑張っていきます!」
舞台裏
「で、初梅が俺誘った本当の理由は?」「あんたが魔力タンクとして有能だからよ。大人しく私の奴隷(可愛いペット)として働きなさいな。」「そんなことだろうと思ったー…」>>80
ユージーンは自分を含め友人と両親以外の全ての人間が嫌いでしょうからね。そりゃあ抵抗ありませんよね。
ユージーンの初手の問題行動をどう受け取るかでキャスター陣営との対応が変わりそうですね。
ユージーンは拗らせてそうで拗らせてるちょっと複雑な拗らせ異常者ですね。「それでは、蒼木ルイさんのインタビューを開始致します!」
リポーターの言葉を合図に、意識のスイッチが"わたくし"から、"大企業令嬢蒼木ルイ"の物へと切り替わる。
「ええ、よろしくお願い致しますわ」
声はゆっくりと、聴衆全員に染み渡るイメージで。
口元には、花も恥じらう可憐な笑みを。
極め付けに、美麗で優雅なカーツィを。
ーーーこれで、見る者達にはわたくしの姿が焼きついた。わたくしの目的の為には、少しでも観客の興味を引いておきませんとね。
『いい、ルイ。私達にとってはね、服は鎧で、身体は剣。それを忘れないで』
昔言われた言葉が蘇る。
(分かっていますわ。お姉様)
「それでは、大会に出場した動機をお願いします」
「わたくしが魔術礼装のテスターを請け負っていることは、ご存知の方も多いと思います。今回は実働テストと、礼装の宣伝を兼ねて参加しましたわ。また、わたくしはいずれ自分でビジネスを始めるつもりですの。その為の資金作りも目的ですわね」
「では、聖杯の使い道は決めていらっしゃいますか?」
「明確には決めていません。富を願うのも手だとは思いますが、それでは少々味気ないでしょう?ですので、どなたかへ研究資料として提供することも考えていますわ」「な、なるほど……。しかし失礼ですが、ルイさん自身の成功を願う、という使い方もあると思いますが、それは考えなかったんでしょうか?」
質問の答え。それはわたくしの中では決まっている。
「ええ。ーーー成功は、自分の手で掴み、自分の足で立たなければ意味がありませんもの」
「そうですか……。大変失礼致しました。それでは最後に、意気込みをお願いします!」
「主な目的は宣伝です。けれど、伝説に名前の残る人物達との出会いという、得難い経験をできる機会でもあります。これを一生の財産にできるよう、努めたいですわ。
最後に、他の参加者の皆様。宜しければわたくしの事は、"シエル・ドゥ・プランセス"、もしくは"空色姫"とお呼びくださいな」
「……で、ではありがとうございました」
舞台裏
「最後の一言、軽いパフォーマンスのつもりだったのだけれど、やり過ぎてしまったかしら……」>>84
お嬢様キター!!空色姫様ー!あ、山星です。九終はこっちで行きます。「えー、それでは、宗美樹さん、よろしくお願いします」
リポーターに樹は微笑みを返した。初めて公共の電波に乗ると知った時はあわてふためき何度も練習したものだが、いざ本番になってみると自信の様なものが胸の中でぽっと火を灯された。
「宗美樹と言います。九終島にずっと昔に移り住んだ魔術師の末裔、とでも言いましょうか。実力は高くありませんが、それなりに血は続いています」
「普段は、島内で高校の教師をなさっているとか。教え子さん達からは、質問責めに遭うんじゃないでしょうか?」
リポーターの問いかけに、樹は口をつぐんだ。クラスの教え子達もきっとこの放送を見ている事だろう。そして、普段自分達が馬鹿にしていた担任が魔術師であり、マスターであると知った時、果たしてどんな反応が返ってくるのだろうか。
「どうでしょう。まだ生徒達とは心を通じ合わせる事は出来ていませんから、ひょっとしたらスルーされちゃうかもしれません」
「ええー?でも、人当たりのよさそうな先生ですけどねぇ?」
「いやぁ、どんくさくて、口下手なんです僕。こうして話すのも、ドキドキしてます」
「ははは、その様子だと随分緊張なさっている様で。では次に、大会への参加理由を」>>86
その質問を、樹は一番心待ちにしていた。他の参加者達にも、島民の人々に最も伝えたい事を言う時が。
深呼吸をして、舌を噛まない様にゆっくりと、語りかける。
「僕はこの島を愛しています。人、山、空、海すべてを愛しています。そんな九終島で、争いが起きると聞いて、僕はいてもたってもいられませんでした。ここは先祖が生きた島であり、僕の愛する人々の生きる島です。だから僕はこの島を守る為に戦います。……聖杯もこの島の未来に向けて使うつもりです」
しん、とスタジオが静まり返る。きぃん、と耳鳴りが響く。
「お、おお……アツい、アツいです!宗美樹さん、温厚な見た目に似合わぬ激情家!つまり貴方は、聖杯の為ではなく九終島の為に戦うと言うのですね!」
「はい。何処まで僕の力で辿り着けるかは分かりませんが」
「これまでの参加者とは一味違う、アツい参加者の参戦!その名は宗美樹、九終島の守護神かぁ!?」
舞台裏
「始まる……僕の戦いが……」>>87
空と海かぁ。ルイと話が合いそうです殆どマルチですまない……Fate/TV SHOW、第一回聖杯大会への誘導を
開催地:米合衆国ネバダ州スノーフィールド
残存クラス
弓 ゲルト・リスコファス&后羿
槍 黒野双介&山中鹿之介
騎 ルーカス・ソーラァイト&アイエーテス
狂 朽崎遥&ザッハーク
乱 蓮見静香&ツタンカーメン
(忍 ジェームズ・ヘンダーソン&影の軍団)
現在四日目に突入し黒野ゲルトの二人が夢で各々のサーヴァントの過去に触れ目覚めた時点まで進みました。
前スレ315の「次の手番は黒野、朽崎、蓮見の三人の内の誰か」という提案がされた所から再開になります
第一回参加者、そして提案に該当された三名の方々、統合スレでも宜しくお願いしますはいはい了解ですよっと
乱っていうありえない表記ともそろそろお別れかと思うとさみしいですががんばります>>92
ここに月星戦争があるじゃろ?そこに橘さんがおるじゃろ?それをこうして(検閲事項)こうじゃ!(修正済み)>>92
……何故でしょう。そのお話を聞くと(隠れてない)暗と(陣地に籠らない)術な私が不甲斐ない……
空色姫と巫女姫(初梅ちゃんの異名的な)の対決が楽しみです!>>98
あいあいさー>>98
了解です
こちらもそれでおkです>>106
傭兵稼業で家を開けがちな撫海んに代わって当主代行的な?
そして以前の話からして両親はそこまで屑ではないそうなので普通にいい家族しそうですね。分家?挨拶兼お礼参り不可避。
女性しか引き継いでませんね。本来は静華ネキも継いでる筈だったのですが…。やはり愛と聖杯の力で撫静の体を治すしかねぇ!
ヒェッ……なんとなくそんな気はしてましたが、そういうことですか…第一回聖杯大会の続きを投下します。
5、6回に分けての連投になると思うので宜しくお願いします聖杯大会、その開催の四日目を迎えたネバダ州スノーフィールドは曜日で言えば火曜日。
降水確率は10%で完全に晴れ。但し翌日の水曜日は打って変わって雨模様になると予報が出ていた。
そんなニュース番組を対策室に用意されたモニターの1つから流し聞きながらキャロライン・ブロックは一人落ち着きなく部屋の中をウロウロしていた。
こんな落ち着きのない彼女を見るのは他の運営メンバーも始めてで、心配から声をかける人間ももうすぐ二桁になりそうな勢いだった。
その中にニコラス・マイカルの名前はない。そして……対策室にその姿もなかった。
ーcont.ーアメリカ合衆国 ネバダ州 スノーフィールド 某所。ニコラス・マイカルはパイプ椅子に縛られている手が痺れていることに気付いて意識を覚醒させた。
四肢を拘束されているが猿轡や目隠しをされていない事に気付き、これが身代金目当ての犯行ではないと考えながら周囲を見回す。
だが辺りは一様に薄暗く、腐った水の匂いが充満していること以外に分かることは少なかった。
「お目覚めかな、ボス?」
言葉の端々に愉快で堪らないと言いたげな空気を滲ませながら声が響いた。声の主が何処にいるかは分からない。分からないが
「おい、冗談ならタチが悪いぞ」
渇いた足音を共に目の前に人影が浮かび、次第にその姿を露わにしていく。
「魔術師」
対策室で右往左往してるハズのキャロライン・ブロックがそこに居た。
ーcont.ージェームズ・ヘンダーソンは持ち込んだ忍者装束、その中でも森林迷彩用に調達したダークグリーンの物に身を包みながら携帯電話を見つめて居た。
先程から既に何度もニコラスに電話を掛けているのだが通じないのだ。
(もう作戦は始まるというのに、何をしているで御座るか)
連絡要員として彼に付けていた忍者を今回の作戦のために抜いたのは失策であった。あの会議で別れて以降、ニコラスがいったいどんな足取りを辿ったのかすら分からない。
「どうします? 作戦を中止するならばまだ間に合いますが…」
「否、確かに予想外の事態ではあるがここでバーサーカーを討つ機会を逃す訳には行かない。監視を続行し作戦開始に備えるで御座る」
「ハッ」
ーcont.ー某所、恐らく地下に拘束されているニコラスに相対したキャロライン・ブロックが口を開く。
「いやぁ、何か面白いことやってるなぁとは思ってたけどちょっとやり過ぎたよねぇボス?」
言葉の端々から笑いが溢れ、こんな特殊な状況でなければ魅力的にすら映ったかも知れない。
「イレギュラーを招くのは全然構わないんだ。貴重なデータだからね? でもさぁ、これって興行なわけ。それにあの悪い王様が大暴れするのを見たいってスポンサーが多いんだよね」
「それで? ルール違反してる奴を野放しにして市民が犠牲になるのを黙って見てろって言うのか?」
「ハハ、君は良い人だ。 誰だこの役職に推薦した奴は」
笑顔を崩さずにニコラスの顔に拳を叩き込むキャロライン。それはとても女性のものとは思えない重い拳だった。
「なぁ、いい加減その顔で喋るのをやめろよ……」
口に溜まった血を吐き出すニコラス。自由を奪われた身であれど眼光だけは反抗の意思を湛えていた。
それに応えるようにキャロラインの姿が蜃気楼に歪む様にボヤけ、次第に全く別の像を結んでいく。
オールバックの金髪、猛禽の様に鋭い碧眼、彫りの深さに加え二つに割れた顎。そして正に逆三角形の筋骨隆々な肉体を上物のスーツで包んだ———
アラン・アーミテージ。このスノーフィールドで行われる聖杯大会を取り仕切る、実質的トップに君臨する男である。ーcont.ー「で、俺を拉致してどうするんだ? こんなことをしても作戦は止められないだろう」
「確かに。確かにその通りだ」
パイプ椅子に拘束されたニコラスの周りをぐるぐる廻るアラン。
「まぁ市民を巻き込んだ大暴れを望んでいたV.I.P.がいるのは本当なんだが、サーヴァント同士の派手な闘いを見たいって人の方が大半でね。今回は君の思惑を邪魔しようってんじゃないんだ」
「じゃあいったい——
どうして拉致なんて、と言いかけた彼の目の前にTV中継用の大型カメラが一人でに現れた。
「それでも裏でゲームをコントロールしようとした悪い運営にはオシオキが必要だ。って事になってね? あぁ!勘違いしないでくれよ?これは俺の本意じゃあないんだ」
まったく、この仕事に着いたら少しはマシになると思った俺がバカだったよ。
自分の知っている拷問なんてチャチな物じゃないんだろうなと内心覚悟を決めながらニコラスは吐き捨てる様に言った。
「Fxxk」
ーoverーやっとジェームズを引き込んだ時点で確定してたシーンに進めたのでホッとしましたん
これで『』を外していいのかな?
続きの相談の方、第一回参加者の方々お願いしますというわけでこちらにもペタリ
アメリカ編の戦端ですが、もうこれ以上他の方に投稿したいSSとかがなければうちが切りましょうか?
サーヴァントの都合上ゲルトさんの所に攻撃してもらうか、あるいは向こう側から仕掛けてくるかのどちらかになると思いますが、それでよろしければまた明日以降SS投稿させていただきます
あるいは他に戦端切りたい方がいればそちらにお譲り&お任せします
ご確認およびご返答お願いします>>116
うちはもういつでも動ける状態です
委員会さんのSSも投稿されましたし、戦端を切る方が他にいなければこちらの視点で開戦SSも投稿できるかと
もちろん他に開戦の火蓋を切りたい方がおられればそちらにお譲りします>>116
こちらの現在の状況は
ジェームズ…作戦に向け待機(みなさんの作戦内容に合わせて動きます
ニコラス…拉致られ
アラン…拉致る>>122
アーチャー!アーチャーですのであの人!
ハリケーンとかランチャーとかファラオみたいなエクストラクラスじゃないのでね!?建前の戦況を整理すると
遠距離攻撃手段のある后羿で初手レーザー攻撃が常道(だと思う
レーザーで場を撹乱しながら鹿之助が本命を狩る
が弓槍同盟の戦略としては鉄板よね。
これに対して迎え撃つ騎乱同盟は護竜で防御しながらファラオで反撃……
これだけでも絵面ハリウッドぞあと今更だけど忍者を監視で付けてるから狙撃するって全然分かるわコレ
>>127
各同盟内でやってた宝具の情報開示ってカタチが取れればスムーズなんですけどねー
まぁロバートさんの懸念と談合戦に忍者を使うかどうかはまた別の話だから絶対条件ではないのですが
朽崎陣営さんの「ある程度被害が」な趣旨の発言からしたら「宝具の忍者軍団が消滅した?ふーん」で済むレベルな気もするしねちょっと今までのおさらいお願いしてもいいですか?少し頭がこんがらがってしまって。
あと物語の展開前にペラペラ喋るのも…と思うけど忍者軍団はどんな動きをしてもこの乱戦で退場する予定です。そのための布石は打ちました
この動きをするためにも監視役で1人はバーサーカー陣営に付けておきたいです待ったぞ待ったぞ、さあお仕事の時間だ
>>132
うちから出す希望……というかうちの確定行動が、
・ルーカス君本人は家には居ない
→クチサキの捜索、発見次第即交戦
・ライダーは家にてバーサーカーの迎撃及び「閉じ込め」
この二つ。あとできればお願いしたいのが
・ゲルトさんに家の敷地内での戦闘指揮の一任
・ハスミにクローディア嬢の護衛(可能ならば)(理由はバーサーカーの受肉関連を建前に)
(どうしても不可能なら最悪、天体魔術を基盤にした惑星軌道型の結界を張って出ますがサーヴァント相手には10秒〜1分で割られるでしょう)
以上二点です。
こっちの行動のメインはあくまでもマスター対決です。邪魔要素は一つずつ潰していきます。>>142
起源関連でお嬢が人前でなんかやらかした感を感じますね……>>136
おおむねいいですよ
ただし蓮見とファラオはおそらくですがタイミング見て退場させますけどえーっと僭越ながらここまでの提案をまとめさせてもらいますと
うち(黒野陣営)
・現状は特に要望なし。強いて挙げるなら戦端切るか否か
・ニンジャ軍団をランサー宝具に見せかける工作が必要?(朽崎と情報交換、ジェームズと打ち合わせなど)
ゲルト陣営さん
・特になし
蓮見陣営さん
・戦端切る役立候補?
朽崎陣営さん
・情報交換は可能。ただし「王を夢見る一万馬」のみ隠匿したい開幕宝具ブッパ……いえ、なんでもありません。
>>145
ルーカス陣営さん
基本方針はマスター対決
希望、もしくは確定行動
・ルーカス君本人は家には居ない→クチサキの捜索、発見次第即交戦
・ライダーは家にてバーサーカーの迎撃及び「閉じ込め」
お願い
・ゲルトさんに家の敷地内での戦闘指揮の一任
・ハスミにクローディア嬢の護衛(可能ならば)(理由はバーサーカーの受肉関連を建前に)
(どうしても不可能なら最悪、天体魔術を基盤にした惑星軌道型の結界を張って出るがサーヴァント相手には10秒〜1分で割られる)
訂正:蓮見陣営さん
・蓮見とファラオはタイミング次第で退場予定
大体こんな所でしょうか
申し訳ありませんが、そろそろ寝ます。最近は疲れが溜まりがちなもので
勝手に取りまとめてすいませんでした狂>………『脳漿貪る暴帝の蛇(ドルグワント)』、起動。貪り食うがいい。『王を夢見る一万馬(ペイヴァルアスプ)』を50ほど消費。直後に腕が霞の様に消える。が、即座に再生。
術>「…腕ごと虚無に葬り去っても再生すンのか」
これは前提が甘かった。逸話では蛇を切っても再生するのだから腕ごと虚無の穴に引きづり込めばと思ったが奴さんの再生能力を甘く見た。
騎>「"マスター、どうやらキャスターが加勢してくれていたようだがね、どうするかい?」
>>148
騎術vs狂から一部抜粋。キャスターの援護を知覚出来るなら戦闘中に何が起こったかもライダーは把握してそうだけど果たして…?
>回数制限ありの魔力補給とか戦闘続行なんで、← そうだね
>ライダー陣営に見られててはねーすよ ←? 何か文章抜けてない?
そして一万の内50消費で残り9,950はまぁ回数制限と言えば回数制限だけどどう使い切らせれば……そもそも宝具情報に価値を見出すのは物語の中の朽崎遥、ザッハークの2人だからあんまり深く考えることでもなかった…?
なんかゴメンね>>154
自分は以前言ったようにどちらでも
蓮見陣営さんが切りたいのであればそちらにお譲りします
他の方にこだわりや問題がなさそうであればこちらが切りますが昼食を用意しながら、テレビを見る。
今日の放送を見逃したくないので、メニューは昨日の残りのチキンスープ(醤油味)とご飯になめ茸で簡単に済ませる。
なんたって、今大会初の大規模戦闘が今日ついに始まるからな。
今大会は、同盟を組む陣営が多くて戦闘が少なく、戦闘自体も小競り合い程度のものが多かった。
敗退した陣営が出た戦闘も、片方は主に戦ってたセイバーとランサーの弱さもあって地味な絵面が殆どでイマイチ盛り上がらず、もう片方に至ってはカメラが壊れて撮影が中断した始末。
あの状況でキャスターを倒したアサシンの活躍は様々な想像が飛び交ってるし、結果を見たかった。
だからこそ、今度の戦闘には期待している。
残りの全陣営が集う大乱戦、最後に笑うのは誰だ?ふと思いついたので、ageついでに視聴者目線のSSを投下してみた。
せっかくの大規模戦闘なので、それっぽい雰囲気が出来たらと。第一回大会四日目、戦端SS投下します
参加者の皆様ご確認下さいませ>>158
スノーフィールド郊外の別荘地。この一帯はスノーフィールドという土地の中でも一際異色といえる地域だった。
砂漠と山に囲まれた乾燥地帯にあって、貴重な緑の風景が残る土地柄。森林のカーテンは荒野の灼熱を程よく遮り、かつねぐらとする者達には充分な熱量を約束する。
普段ならば森林浴や散策にさぞうってつけな景色だったことだろう。事実そうでもない限り、いくら都市部に近いとはいえこんな半端な場所に別荘地など誰が考えるというのか。
――そう。争いも何も関係ない、ただの日常として見ていたならば。
「どう思う? ランサー」
「壮観、という程でもないが成る程。中々の森林だなこれは」
織り成す木々を見渡し、ランサーがさっと所見を述べる。
「路地と植生の境目がはっきりしているが故、其処から外れたものとそうでない側の差が激しい。軽く手前をぶらつく程度には困らぬが、迂闊に踏み入れればたちまち方角を見失い彷徨いかねぬ」
加えて、とさらに続ける。
「この木々の配置。恐らく拙者ら側に動きづらく、しかして向こう側にはある程度視界が開けるよう為されておるのだろう。つくづくよく考えたものよ」
「つまり?」
「下手に進んだが最後、向こうからたやすく捕捉され狙撃されかねぬという事だ。そうでなくとも、警戒度はぐんと高まるであろうな」
続く>>159
うげ、と思わずため息が零れる。要するにこちらにとっては進軍しづらく、向こうにとっては防ぎやすい地形という事になる。まさしく攻めるに難く、守るに易しと言うべきか。
「曲がりなりにも別荘地、という訳だ。そりゃ侵入者にも気を遣わなきゃだよねえ」
「それに、向こう側がただ黙って進ませるとも思えません。この植物に紛れ何らかの罠を仕込んでいる可能性もあるかと」
ゲルトとアーチャーも、各々の感想や意見を口にする。軽瓢と真剣。表情はそれぞれ対照的だが、その言葉には確かな重みが感じられた。
「となると――やっぱりさっき決めた通りに行くしかないか?」
「まあそれが確実だろうね。問題は朽崎がどこにいるかなんだけど……」
周囲に目をやる。辺りはどこもかしこも植物だらけで、俺たち以外の人間の姿はまるで見つからない。というか、これだけ緑が濃いとちょっとした偽装だけであっさり溶け込んでしまいそうだった。
「少なくとも目に見える範囲の場所にはいないでしょ。あちらさんだってその辺の対応には気をつけてる筈だし。今頃はどっか適当な狙撃ポジションについてるかもねぇ」
続く>>160
狙撃、と言われて背中に冷たいものが走る。
一応マスター殺しが禁止となってるこの大会では、狙撃によって命を落とす危険は低い。が、それはあくまで『誰かを死なせる』事を禁止しているだけであり、そういった武器の使用まで禁じている訳ではないのだ。
例えば膝や足の甲といった致命傷になりにくく、しかし確実に制圧を見込める箇所への攻撃。あるいは麻酔弾やゴム弾など無力化を重点に置いた弾丸による狙撃。
こういった攻撃の類はセーフと見做されてしまうのだ。
「……防弾ベストも買っとけばよかったかな」
いやもう軍資金カツカツだから出来ない相談なんだけども。ああでも、せめてヘルメットだけは買っておくべきだったか?
あれこれ悔やんでいると、不意に頭の上から暖かい感触が伝わってきた。
「ランサー?」
「安心せよ黒野。何があろうとお主には手傷一つ付けさせん。まして、あの凶徒どもの攻撃とあらば尚更よ」
そこにはいつもの笑顔を浮かべたランサーがいた。麒麟児と呼ぶにふさわしい、快活さと自信に溢れた表情。
心がわずかに疼く。ランサー……鹿之介は紛れもなく英雄だ。例え本人がそう呼ばれることを望まずとも、一般人の俺からすればその在り様は限りなく輝かしい。
対して自分はどうだろうか? たかだか創作物程度で非日常を知った気になり、あまつさえ家族の気持ちを慮る事さえなく危険地帯へノコノコ飛び込んでいく考えなし。
これでどうしてマスターなどと誇れるというのか。それこそ、漫画やラノベのかませ役と何が違う?
続く>>161
――だが。ランサーはどこまでも俺と対照的だった。
「黒野よ。実を言うとだな、某はお主に感謝している」
「え?」
「最早記憶もおぼろげだが……あの日、あの地で息絶えた時、某は己の運命を呪いに呪った。それこそ天に唾する程の勢いでな」
遠い光景を振り返るように、ランサーは天を仰ぐ。いや、実際彼は振り返っているのだろう。英霊になる前、人間だった頃の生涯を。
「我に七難八苦を与えたまえ。そう望んだ事を悔やんだ訳ではない。若気の至りと言い逃れることも出来ようが、それでもあの日某は確固たる決意の元誓いの言葉を口にした。必然訪れるであろう運命も承知の上で、だ」
しかし、とランサーは続ける。
「あの瞬間、某は無様を知りながら呪いを吐いた。過去の誓いを悔やんでではない、想像を超えた運命というものの非常さに思わず呪いを吐いたのだ」
「――――」
「愚かな話だ。自ら苦難を望んでおきながら、その苦難が如何程苛烈過酷であるか、あの瞬間まで某は考えもせなんだ。そればかりか、『如何な苦難であろうと己に超えられぬものはない』と大いに慢心さえしていた始末よ」
それは――その、話は。
「後の顛末は承知の通りよ。愚かな若武者は道半ばで果て、忠義を誓った主君は敵の手にかかった。かかって、しまったのだ」
砕かんばかりに、ランサーは己の拳を握り締める。ぎりぎりと聞こえる歯軋りに込められたものが何か、部外者の俺でさえ容易に察しが付いた。
続く>>162
「だからこそ、此度の召喚は僥倖以外の何物でもなかった。本来一度きりの生を、仮初とはいえこうしてまた与えられたのだからな。だが」
そこでふと、ランサーはこちらを見つめてくる。その姿はどこか悟ったように穏やかで、先程までの激情が嘘と思えるほどだった。
「『俺』が真に望んでいたものは、違っていたのやもしれん」
「――――え?」
「この数日、お主に召喚され、語らい、共に戦う事でかすかだがそれを掴めた。感謝するぞ――黒野双介」
「ランサー、お前……?」
「語らいはここまでだ。そろそろどの陣営も、いい加減待ちかねてるであろうからな」
ちら、とランサーがゲルトたちへ視線をやる。いつの間にかゲルト達は木陰に身を隠しており、こちらの反応に軽く手を振って返していた。
……あるいは、空気を読んでくれたのだろうか。
「では黒野。準備はいいな?」
「あっ……ああ。俺はいつでも大丈夫だ」
「うむ。ではアーチャー殿! 手筈どおりに頼む!」
「――心得ました。では」
アーチャーが木陰から半身を晒し、天空に向け矢を番える。やがて限界まで引き絞ると、勢いよく一矢を射ち放った。
吸い込まれるように天空へ消えていく矢。それ自体には何の破壊も威力もない。明後日の方向へ飛んだ矢は、必然ただの軌跡だけを残して去っていく。
――午後の明るさでもはっきり見える光芒と、盛大な風切り音という軌跡をもって。
続く>>163
周囲の木々が立て続けにざわめいた。一見突風が吹きぬけたとしか思えぬそれは、しかし確かな気配を漂わせて森の奥へ――すなわち、別荘地の方向に進んでいく。
その正体は運営側のサーヴァント。ジェームズが使役する通称ニンジャーたちだ。
本来隠密行動を旨とする彼らにとって、その否定とも言うべき軍団移動。だが今回に限っては話が別だ。何しろこれは強襲であり――同時に、全体への通告なのだから。
「それじゃ俺たちも動くとしようか。お互い、やられないようにね」
「ああ。そっちも気をつけてな…………って、余計なお世話か」
「ハハッ、どうかなっと」
目指すは森を抜けた先。ライダーのマスター、ルーカス・ソーラァイトが陣取る別荘地。そして、今大会の乱入者が待ち受ける地でもある。
背後に潜んでいるだろう本命への関心を潜めつつ、俺たちは虎口へと踏み込んでいった。
これにて一旦終了です
次はジェームズや朽崎との打ち合わせを描いた回想SSを挟ませてもらおうかと。その後は他の方にパスするか、あるいは反応に応じて何かしら追加しますいいですねぇ。皆んな主人公っぽくて目立ってます。
とうとう動き出して私、ワクワクしますよ!
>>167
※開戦よりしばらく前。スノーフィールド某所。
「……と、まあ。こんな感じで開戦の火蓋は切らせてもらうって事で大丈夫か?」
『うんうん、問題ないよー。こっちとしても、温存できるに越したことはないしね』
朽崎からの承諾を得、俺はさりげなくゲルトにサムズアップする。
ゲルトも大体予想していたのか、こちらには軽くウインクするだけで何も言わなかった。
『でもさ、ほんとに宝具の事まで教えてくれるとは思わなかったよ。てっきり君のことだから、あれこれ理屈をこねくり回して誤魔化すだろうと思ってたのに』
「俺を何だと思ってるんだ……まあそりゃ、この手の情報の重要性は理解してるけどさ」
『ま、君の言う通り知られても困らない内容だったしねー。実際、君だってもうちょいランサーの宝具が強ければゲルトさんに頼らなかったでしょ」
電話口の放言をしっかり捉えたのか、ランサーからあからさまに不機嫌なオーラが漂ってくる。
……けどまあ、正直俺ももうちょい何とかならなかったのかなーと思ってたりする。三騎士クラスは安全牌と聞いてたのにこれじゃぶっちゃけいえ何でもございません。
続く>>168
「と、とにかく。こいつはこいつで頼りになるサーヴァントなんだ。あまりこき下ろさないでやってくれ」
『分かってるって。それじゃ、ゲルトさん達にもよろしく伝えといてねー』
ブツリ、と。言うだけ言って電話が切れる。
スマホを軽くいじり、完全に向こうとのやり取りが途切れた事を確認する。それから俺はゲルトの方へ――――より正確には、ゲルトが持ってる携帯電話へと声をかけた。
「……終わったぞ。これでよかったんだよな?」
『うむ。万事上々にて御座る』
画面に映った名前はジェームズ・ヘンダーソン。あの衝撃的な高速退場を果たしたエ、もとい自称忍者である。
先程までの朽崎とのやり取り、それはゲルトのケータイを通じてジェームズの側にも伝わっていた。といっても電話口のやり取りである為そう細かくは伝わらなかっただろうが……まあ、やらないよりはマシだったろう。
「けど本当にいいのか? いくら偽装戦闘といっても、向こうだってある程度は本気で応戦してくるだろ。下手すると、最初の攻撃で全滅なんて事にもなりかねないぞ」
『……それはつまり、拙者のニンジャーたちへの侮辱と受け取って構わんで御座るか?』
電話口の声がやや厳しくなる。実際、今の言葉だけならそう受け取られても仕方ない言い分だ。
しかしニンジャー……ニンジャーっておい。そんなクラスないだろ絶対。もっとシーカーとかそれらしい英単語あっただろうに。それでいいのか外国人。
「あーいや、言い方が悪かった。俺が言いたいのはだ、大会への参加資格を完全に失う事になるかもしれないって事だ。あんた、それでもいいのか? 聖杯への道が完全に閉ざされる事になりかねないんだぞ?」
続く>>169
これはこれで最低な言い分だが、実際思わずにいられなかった。
召喚完了、直後自害しかけて退場なんて聞いた時は正気を疑ったが、こうして話してみると(共感できるかはさておき)中々思う所のある人物だった事が良く分かる。
それだけに、問わずにいられなかったのだ。同じ大会に参加している者の一人として――あるいは、互いに戦っていたかもしれない立場の人間として。
そんな問いかけに対し、返ってきた答えはどこまでも真っ直ぐだった。
『愚問に御座るな。拙者は大会参加者である以前に合衆国の人間。で、あれば。まず何より優先すべきは同じ国民の安寧と平和に他ならぬ』
それに、とジェームズは続ける。
『貴殿とて、この街の人々を思ったからこそあ奴らとの共闘を拒んだのでは御座らぬか?』
いや、ほぼ100%自己保身です。危うくそう言いかけ、ぐっと我慢する。
俺は聖人君子や善人の類じゃない。そりゃ一日目こそ朽崎の巻き添えで被害にあった運転手やらの救助に手を貸したりもしたが、あれもあくまで聖杯『大会』というものの本質を理解しきれてなかったからこそだ。
賭けてもいいが、次同じ事が起これば俺は速攻で逃亡する。今思い出しても身震いする危うさだった。
「別にそんな大それた理由じゃない。あいつを放置しておけば俺たちにとっても害になる。……本当に、それだけだよ」
『構わんで御座る。お互いの利害が一致し、その上でこの共闘に至った。それ以上他に言う事があるで御座るか?』
相変わらず時代がかった口調で、ジェームズは俺に呼びかける。つくづくこの大会には一癖も二癖もある奴らばっかりだ。
続く>>170
『では、拙者はこれにて。後の事はよろしく頼むで御座る、クロノ殿、ゲルト殿』
「あいよ。任された」
「……ああ。出来る限りな」
ジェームズとの通話が途絶える。これでいよいよ、後は現地に向かうだけとなった。
ふと、ゲルトと視線が合う。
「卑下することもないと思うけどね。自分の身を第一に考えるのは、人間の基本みたいなものだし」
「それでもあるだろ。割り切れないものって奴が」
「ごもっとも。けど、それは君がどうにかするべき問題だ。俺から言える事は、何をするにもまず生きていればこそってだけさ」
「それは経験則か何かか?」
「まあね。じゃ、いこっか」
ゲルトとアーチャーが歩き出す。俺も、その後を黙って付いていった。
ここで一旦完結です
次の手番は騎乱陣営のいずれかに回そうかと。多分もう交戦シーンから始めて大丈夫じゃないですかねじぇ、ジェームズがカッコイイよう!?(親バカ
あと魔術世界に疎いジェームズやニコラスには万能の願望器って自体が信用に足らないってのもあるかなぁ(模造聖杯の性能は考えないものとするうむぅ、ニンジャーのサーヴァント…該当者が多そうなのがなんとも。
そしてジェームズはかっこいい。ニンジャにドハマりしても合衆国民としての誇りを持ってるところとかただのエ…自称忍者に留まらない。>>171
続き書けたよー。
誰もいない道路に、誰にも見えない誰かが潜伏している。
「1、2、6体までは検知。誤差(ラグ)から逆演算開始。……約10体かな?」
木々の隙間を抜けていく黒いのを確認しているルーカスは、現在その別荘から木々を挟んだ反対側にいる。
「ライダーが宝具を起動。被召喚20体、交戦開始」
離れていてもたしかに繋がるパスから向こうの情報を読み取りつつ、自らの標的に対しての推測を開始。
(あの半端者のメインの攻撃手段は大方遠距離狙撃による支援だ。つまりは射角を確保できる、最低でも5階建て以上の建造物に潜伏している可能性が高い)
魔術的支援で射角を捻じ曲げるというのも不可能ではないだろうが、それで立ち位置を変えることが出来るかと言われれば少なくとも彼には不可能だろう。
ごく当然の話なのだ。科学と魔術を混ぜるということは、いいとこ取りと言えば聞こえは良いが、つまりは、『科学だけでは戦えませんし魔術だけでも戦えません』という事なのだから。
「やるなら、徹底的に」
ローブの中から取り出したのは年季の入ったポラロイドカメラだ。>>174
ルーカスは自らの姿を隠す光幕を挟んで街道の写真を撮っては印刷させていく。
写し出される写真には、なんの変哲も無い街の様子の上に光の残像のような揺らめくラインが重なっている。
光の残像とはマナの動き。ラインとはマナの吸収を行った魔術師のいる方向だ。普段の街道ならばここまでの効果は発揮されないが、運営による人払いが済んでいるためにラインの先は限られるのだ。
(見えないものを見えるようにするのも、僕の役目の一つだからね)
恐らくはランサーとアーチャーに続いているラインが二本。アーチャーのラインは安定しているが、ランサーのラインは……
(切れている? いや、あのランサーのマスターを中継して別の場所から供給されているのか)
そう言えば大会運営の要項には一般人への魔力供給支援についても存在したな、と思い返す。つまり、あの話を持ちかけてきた彼は素人だという事なのだろう。
(まあ何でもいいか。本当に素人なら、警戒するまでもなく立ち会えばそれで終わりだ)
ルーカスは意識をこの作戦の標的に戻すと、透明化を維持したまま、写真のラインをたどっていく。
見上げると太陽が強めに照っている。
都合がいい。影が濃いほど、僕の魔術は鮮明になるのだから。
ここまでで一度切りです。
戦場サイド視点はハスミさんにお願いしたい所存です。乙です。
ルーカス君、敗北フラグ立ってない?
読んでて黒野君どころか朽崎君に負けそうな気がしてきたけど大丈夫?>>176
狙撃じゃないかという推測だからいいのでは?
遠距離から攻撃してくる手段としては可能性として真っ先にあがるものだと思いますよ漁夫の利を狙いに来る前提の想定だから、バーサーカーのマスターの動きとしては態々発見されるような動きはしないだろう、それでも隠れるだけじゃなく援護するなら狙撃だろう…って推測は成り立つ、かな?
光狙撃した時にルーカスなりに人物評は出てるし(それでも誘導弾を使うなんて事は分からないし>>176
あー、えーっと、要するに連想ゲームなんですよ。
朽崎君がバーサーカーと来る。→
メイン戦地はワイバーンで埋まってる。→
こちらの宝具が割れている。→
この三つから、
朽崎君はバーサーカーとは離れざるを得ない。若しくは竜の巣に突貫なんてしたがらない。→
でも、
これまでの様子から頭はしっかり回っているから、何かしらの戦闘支援の準備はあるはず。→
と来て、身近な攻撃手段としてふに落ちるのがライフルって流れですよ。
じゃあライフルなら……でさらに深読みを重ねていってる感じです。迂闊ですね、実に迂闊。
>>177
いいじゃないですか敗北フラグ!
もともと負ければそれまでですしね。
でも俺これでもかと負けフラグ立ててたやつが全折して勝つ様も割と嫌いではないんですよね。
さあどうなるんでしょうか。浮上させておきましょう。
とりあえず今日中にアーチャー陣営を出せれば……いいなあ……(願望)第一回の提案です
中々諦めが悪いようでアレだけどやはり心情的にランチャーさんを少しでも待ちたい気持ちがあります。でもいい加減進めないと厳しいのも事実……なので、積極的に脱落はさせずに話を進行させたいと個人的には思います
蓮見はツタンカーメンを受肉させることが願いになったのだとして進行、ライダー陣営さんの要求通り作戦時は陣地、クローディアの防衛を
描写は誰か個人が担当するのではなく、それぞれが自身の文章に絡める形で、蓮見ツタンカーメンの主観描写はなるべく避ける
脱落の可能性自体はクローディア防衛のオーダーを考えればそこまで高くないし、運が良ければ戻ってきた時にバトンを返せるかなと>>183
進行はそれで大丈夫です。ただ、自分は委員会さんに書いてほしい所ですね
理由は単純で、現状の黒野の立場だとニンジャ達がどんなふうに戦ってるのか確認できない&追い切れないからです。描写できないこともないですが、多分訳も分からない内に血風と戦闘音が響き渡るって感じになるかと
ランチャー陣営さんに関してはここで無理に脱落させなくても大丈夫かと
どの道今のまま復帰しないようであれば結局はこちらでいつでも自動退場にはできますし、少なくとも本人が戻って来ない限り優勝なんて事にはならないでしょう
少なくともゲルト陣営が健在な限りランチャー陣営には勝ち目限りなく低めですしね(太陽の英霊×太陽を撃ち落とした英霊で相性最悪、英霊としてのスペック差etc)>>183
バーサーカーが乗るかどうかまで行くなら、忍者が何人かやられるところまで書いたほうが良いかなとは。
両陣営無傷だと乱入しにくいとは言われてましたし。>>188
はい。回避に令呪を使うのならば多分『マスターを連れて安全な場所へ転移せよ』で解決だと思うので令呪を切ってくれるならそんな感じで。
宝具については神性特効の分で相殺も了解です。強化版については令呪前提なので打ち勝てるくらいにしてくれないと理不尽バランスになってしまうくらいなのでむしろこちらからお願いします。
いやぁね、ちょっとやりたいことがありまして。開幕で宝具をぶっぱしようと思うんですよ。先手必勝!って感じで。
令呪切るか宝具撃つか敗退かを迫るようで申し訳ないですがシステム的にエルシュタインなら初手宝具で速攻を選ぶと思うのでやりたいです。
>>187
あとレアさんに質問追加させてください。令呪ってどんな感じなのでしょうか?多分回復は無しというのはあると思いますが全部使い切っても大丈夫でしょうか?>>189
了解、その分こちらも炎巨人モードの描写を自重せずに行きます。さて、色々と行き詰まっているけど、結局ランチャー陣営の扱い、そして今後の方針はどうすればいいのやら私にも分かりません。
>>194
大丈夫ですよ、問題ありません。あなたの思うようにこそ動かしてあげてくださいね。「こんにちは。本日はこの聖杯戦争に賭ける意気込みを伺いに参りました。まずはあなたのお名前と、簡単な自己紹介をお願いできますか?」
聖杯大会の独特の気に当てられて興奮するリポーターやスタッフが多い中で、彼女はベテランらしく冷静だ。これぞプロ、ならば彼女に敬意を評し、淑やかな巫女としての振る舞いで応えようか。
竜の末裔はにこりと笑みをつくってみせた。
「こんにちは。そして皆様初めまして、照文音意です。名前の漢字は照らす文、音の意と書きます。この九終聖杯戦争には、行方不明の姉を探すために参加いたしました」
「行方不明のお姉様、と言いますと……?」
「双子の姉、音意のことでございます。とは言っても、とても幼い時期に私の目の前から消えて以来、周囲も口を噤んでしまって……まるで神隠しのようで、こうして公共の電波に呼びかけて、何か手がかりが見つかると良いのですが」
「それは、大変でしたね……」「ええ。しかし聖杯を手に入れられれば姉に辿り着く標になるやもと思いました。もっとも、悪因は悪果を生みますから、姉に顔向けできないようなことをするつもりはございませんが」
「なるほど……正々堂々と戦う宣言でしょうか」
「あくまで姉に顔向けできないような業を背負いたくないだけですので。そこまでは?」
「わかりました。この聖杯大会、ルールに則った行動をお願いします」
「それは承知の上でございます。その上で民間の方々にはご迷惑をおかけしないよう心がけます」「では最後に一言、意気込みなどを」
「意音、例え皆が忘れても、私いつまでもあなたの帰りを待っているからね。帰れないなら私があなたの元へ行って引きずってでも連れ戻す。……だから、その時までどうか生きていて」
これだけは飾らない言葉で。悲痛な涙を堪えてむしろ明るく。
「……ありがとうございました」
「こちらこそ。どうか大会の取材、気をつけてくださいませ」
密かに加護の文言を呟くと、懐で武者震いをする竜の仔の上にそっと掌を当てて、音意は後ろへ下がった。
舞台裏
「皆死なせたくは無いのだけれど。どうか悪意を持つものがありませんように」
照文の性として人の感情には敏感だ。口にした願いは叶えられないかもしれないという、寒気のような予感があった。>>200
伝説の竜たちを幻想もとい妄想の産物であるニンジャがそんな大損害与えられる訳ないしね…修正しなくてよさそうです
明日には投稿するつもりなのでお待ちくださいー第一回聖杯大会の続きを行きますー
超短いけど俺から大きく動かしようがなかったので、そこは許して欲しいんよ…TVモニターに映るそれはB級ハリウッド映画もかくやという有様であった。
かつて高級別荘があった破壊の跡地で繰り広げられる戦闘、バーサーカー陣営を誘き出すことを目的とした戦い、聖杯大会四日目の戦端が開かれていた。
黒尽くめの忍者たちが渦巻く竜の群れに対してその白刃を閃かせている。
人間離れした跳躍で空を舞う護竜に組み付いた忍者たちがその首に日本刀を突き立てる。
落下するより早く、絶命した竜を足場に跳躍した忍者が別の竜の顎に食い千切られていく。
竜の群れを抜け、奥へ奥へと疾駆する別の忍者は高速で飛来した矢に射抜かれ散っていく。
二騎目のアーチャー、ツタンカーメンによる狙撃だ。彼は周辺を隈なく見渡せる位置に陣取り矢をつがえている。
別荘跡に陣取るライダーアイエーテスとアーチャーツタンカーメンの同盟に対して忍者軍団が猛攻を仕掛けている形だ。ランサー鹿之助とアーチャー后羿の二陣営は姿はまだ見えない。
忍者たち、影の軍団のマスターであるジェームス・ヘンダーソンは別荘跡とは然程離れていない高層ビルの屋上から連絡役の忍者を従えて周囲を見渡している。
ニコラスと連絡が付かないという想定外のイレギュラーを抱えたまま第一回聖杯大会、後の展開を大きく左右するであろう決戦は始まりを告げた。
ーoverートーナメント:蒼木ルイ
「どうぞ、マドモアゼル」
「merci」
お礼を言い、テーブルにそっと置かれた紅茶へ手を伸ばす。
香りを楽しみ、一口。
「ええ、及第点。期待しないでと言った割には見事なお点前ですわ」
「それは良かった。この手に演奏以外の使い道ができて何よりだ」
そう言って微笑む詩人。しかし、その言葉の端には卑屈さのような影があった。
「怒りませんの?名だたる英雄に使用人の様な真似をさせて」
「なんだ、自覚はあったのかい。ーーーまあね。英霊と言っても、僕には大した功績も武勲もありはしない。英霊としての格にギリギリ引っかかっているような、しがない詩人さ。大層な扱いは元から期待していないよ」
「……」
少し、自分を恥じた。こんなつまらない方法で彼を試そうだなんて思った自分を。
(駄目ね、わたくしは。本当に未熟……)
彼へ謝罪しようと口を開いた、その時。
「そう、俺はクリストファー・C・クライ! クリストファー・シェフ・クライ!料理人泣かせの男だ……ッ!」
(そこそこ大きな)独り言を交え、食堂のドアを開ける男性。
その姿を見て、わたくしは淑女としての顔を繕う。しかし内心は、
(最悪のタイミングですわ……)
はしたなくテーブルに突っ伏したい気分でした。先輩のレベル上げしたいのに槍ばかり落ちまする…
>>205
了解です。もうちょっと続くのじゃあと第一回の続きは、うん……正直バーサーカーが乗ってこないと話は進まないのよね
>>204
「ん、んんっ!」
人が居るとは予想外のことだった。思わず咳払いをしてしまうが…いや、なんて事はない。何せ俺は料理人泣かせの男なのだから。ここで取り乱すことこそ…
「美味しそうなお食事ですわね。もしかして、貴方も参加者でいらっしゃるの?
その言葉は更に予想の外であった。金髪碧眼の少女。品のある面立ちと仕草からきっと良いとこの御嬢様なのだろう。
「つまり君も……サーヴァントを従えるマスターだと?」
ターキーをテーブルに乗せながら少女には目もくれず白人青年を見やる。
(コイツがサーヴァント、なのか…?)
「えぇ、私は蒼木ルイ。よろしくお願いいたしますわ、クリストファー……シェフ・クライさん?」
クリスの不躾な視線を知ってか知らずか少女は椅子から立ち上がり握手を求めてくる。だがその手を取りはしない。
「折角だ。一人で食べきれる量じゃないと困っていたんだ。良かったらスープとサラダもいかがかな?」
返答も聞かず足早にキッチンに戻る。
彼が、クリストファー・クライが蒼木ルイを軽視するのには理由があったそれも酷く偏見に満ちた。
それは、彼女が女性である。その一点に尽きるのである。
彼の生きる世界、そして価値観に置いて女性とは不純物と形容すべきものであった。闘いにおける身体能力の優劣、映画に出てきては時間の無駄とも言えるラブシーンや主人公の足手纏いになるばかりの存在。
つまり女性に対してそういう狭い価値観の持ち主であるということがクリストファー・クライの本質の一部であった。>>209
いやいや。寧ろ自分では「シェフ・クライ」の言い回しは思いつきませんでした。
よしよし、ではクリストファー・クライ様。貴方に淑女の嗜み(物理)と言うものを教えて差し上げますわ!えーっと、では戦闘に入って大丈夫ですか?レアさんからの宣言は無いって言ってましたし。
私はクライさんがキッチンに立った後をちょっと描写して、そのままフィールドに強制テレポートでもさせようかと思ってますが。>>215
りょーかいです
ではゲルト陣営さんのSSを待ってこちらは投稿しようかと思いますさてと、こちらのほうは初手宝具なら、ユージーンさんが先に書いたほうが良いのかな?
「ふん、失礼しちゃうわ」
クリストファーがキッチンに消えた後、そんな事を呟く。こちらの挨拶にも握手にも殆ど取り合おうとしなかった。それだけなら独り言を聞かれた気まずさ故とも思えますが、彼の眼差しがその考えを否定した。あの目に宿っていたのは嫌悪。理由は定かではありませんが、彼にとってわたくしは良い存在では無いようです。
「あれが君以外のマスター……なかなか手強そうな御仁だね。それに、どうやら嫌われてしまったらしい」
「そうね。料理を作りに行ったのが、あの方なりの好意だと願うばかりよ」
「おォー、それはキボウ的観測ってもんじゃないかァいご主人?」
突然、けたたましい声が背後から響く。驚いて振り向けば、ツギハギ だらけの鳥が背後のテーブルに留まっていた。
「クロワ!あなたも居ましたのね!」
「おうよ、オレがいなくて寂しかったかァい?カァー、それにしてもなんだよさっきの奴は!オレっちのご主人になんて態度だ。この嘴ドリルで目玉を抉り出してやろうかァ?そんでキッチンのフライパンでこんがり焼くのさ。これがホントの目玉焼きってナ!ハハッ、ゾンビジョーク!」>>219
「……その軽口も相変わらずね。けれど、今は頼もしいわ。またよろしくね」
「おうよ、大船に乗った気でいな!つってもオレはお魚ちゃんに食われるけどヨ!」
「…………変わった交友関係だね」
キャスターの一言で我に返り、咳払いをして気を取り直す。……やはり先程の方も、ただ気まずかっただけだったりしないかしら。
「キャスター、紹介しますわ。この子はクロワ。わたくしが扱う礼装の中でも古株の子で、今では良いお友達よ」
「そしてご主人の相棒さァ!よろしくな新入り!気軽にクロワちゃんって呼んでくれても良いのヨ?」
「いや、クロワと呼ばせて貰うよ」
そこまで言った時、学校のチャイムを思わせる音が鳴る。直後、一時間後に最初の戦いが始まるとのアナウンス。
本当に、どこか学校行事をこなしているような気楽さを感じる。
(まるで、この全ては余興とでも言いたげですわね)
何もかも不確かななかではあるが、それでもわたくしには野望が、キャスターには願いがある。それを果たすという決意を内心で新たにした。>>221
ここまでです。今回は銃器が相手ということで盾にも使えそうな炉剣をチョイス。
どの企画かわかりやすくって言うの忘れてました。次からは何か目印付けます長い廊下に四つの足音が谺する。エルシュタインとマグダレーナ、そして二人のサーヴァントは対戦する会場である宿舎の外と向かっている。
最初に口を開いたのはマグダレーナだった。
マグダレーナ「黙って歩くのもなんですし軽く自己紹介なんかしませんか?私はマグダレーナ・グロース。魔術使いをやってます」
エルシュタイン「そうですね…私はエルシュタイン。同じく魔術使いに分類される職に就いていました。何故この戦いに、というのはこの際お互い聞かないようにしましょう」
互いが名乗った後、二人は違和感に気付く。サーヴァント達が一言も発しないのだ。
マグ&エル「どうしたの(ですか)?バーサーカー(セイバー)」
バーサーカーとセイバーは互いをじっと見ていたのだがそれぞれのマスターの声に反応してふっと正気に戻ったように振り向く。
セイバー「何でもありませんよ。少し知り合いと似ていた様な気がしただけです」
バーサーカー「大丈夫……気のせいだった…」
エルシュタイン「そうですか」
それからまた四人は歩き始める。初回のバトルフィールドは岩場だ。遮蔽物が多くそれぞれの陣営は離れた位置へと転送された。
エルシュタイン「運のいいことにお互いが視覚範囲内ですね。ではセイバー、プランAでいきましょう」
エルシュタインの言う通り偶然にも遮蔽物の合間からお互いの姿が見える距離であった。
プランAとの指示を聞いたセイバーは了解、と頷くと武装を展開する。右手には三叉槍を持ち、左肩の辺りには小さな塔のような物が浮遊している。そして何より目を引くのが背後の八本の刀だ。
セイバー「『オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ』…」
左肩の塔がセイバーの前へと移動し、八本の刀がそれを中心に前を向く。さながら大きな砲口のように展開された武装と共にセイバーは槍を構える。
セイバー「軍神よ、敵を打ち砕け!!」
セイバーの突きを合図に塔のような物、毘沙門天の宝塔から巨大なビームが発射される。
これこそがセイバー上杉謙信の宝具『龍虎の瞋恚・軍神の剣[オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ]』。軍神刀八毘沙門天の“軍神の剣”である。>>220
スープとサラダを取り分けようとキッチンに戻った矢先、チャイムが鳴った。
一時間後に初戦が行われるという内容の放送が流れ、それを聞いたクリストファー・クライは思案する。
(ディナーという訳にもいかなくなったか……ふむ……)
バゲットに切り込みを入れ、その内側にマヨネーズとマスタードを塗り大皿から抜いたサラダを挟み、その作業を繰り返す………。
平皿に並べたバゲットを片手に再びドアを勢い良く開け放つ。
「失礼、これから夕食という訳にもいかなくなってしまったがサンドイッチくらいは食べるだろう? スープは向こうの鍋にミネストローネを用意してあるから…」
言葉を続けながらターキーをスライスし用意したバゲットに挟み込んでいく。
「オイテメエ! さっきはよくも俺の相棒に無礼な真似をしてくれたなァ!アァー!?」
鷹、だろうか…?ゾンビ化してよく分からないが感情を湛えた瞳を持った猛禽類が喋っている。……喋っている。まぁそういうこともあるだろう。>>233
「無礼……? よく分からないが君も食べるかい?」
「カァー! 誰が七面鳥なんて食うカァーボケァ!」
「ちょ、ちょっとクロワ!」
蒼木嬢がゾンビ鳥の嘴を両手で抑えつける。
「この子、その、口が悪くて」
「いや、気にはしないさ。それより食べながらでいいんだが……」
提案しようとした矢先———
「クリス! 全然戻ってこないと思ったらこんな所で油売って!!」
「兄さん!」
「お兄さん??!?」
食堂の入り口に現れた黒猫(アルヴァン・クライ)の姿に驚きが伝播する中、黒猫が毛を逆立てて飛び上がった。
「な、なんで鳥がこんな所にいるんだー!!??!!」
「彼は今お腹空いてないから大丈夫だよ兄さんー!」
一目散に逃げていく猫の後ろ姿を追ってクリスも食堂から出て行ってしまう。
「一体全体、なんだったんですの……」即ワープじゃないならこんな一幕があったかなって
次はエンカウントまで書くのでー>>221
「まったく! 人(猫)が心配して探しにきてみれば敵と会っていたなんてまったく!!」
「悪かったって兄さん」
緊張感ガー作戦ガーとニャアニャア言う兄を尻目に自室でキャスターと向かい合う。
「作戦は……分かっているんだろう?」
「あぁ。」
単純にこのキャスター、ゲティに直接戦闘能力はない。間接的な戦闘能力もだ。故に——
全長1m半に迫る長大なライフル、米国バレット社製M82対物狙撃銃。これを併用し知覚外からマスターを暗殺_するしか明確な勝ち筋はない。
敵サーヴァントを交えた乱戦ではマスターを狙うことなど先ず無理だろう。
「大丈夫!兄ちゃんがスポッターやるし、全力でサポートするからな!」
「いやいやいや…」
肩に乗った兄(猫)を降ろし拳銃をホルスターに、マガジンをベルトに差し込んでいく。
「兄さんはここで待っていてくれ。じゃないと安心して戦えない」
「まぁ確かに。猫を守りながらなんて戦えんよ「く、ぐぬぬぬ」
「じゃあ行こうかキャスター」
「おうさ」
一歩踏み出し、無機質な部屋から一転する。背後に遠去かる声を聴きながら
「く、クリスー!! ライフル忘れてるーーー!!!」>>236
「なぁ……ワザと置いていっただろう」
部屋から出た先は一面の荒野だった。先程潜り抜けたドアはいつの間にか無くなっている。
「………その通りだ」
「作戦は、いやこの戦いのことは分かっているんだろう? 私では他の英霊に太刀打ちできない。だから相手のマスターを…」
「もしそれで」
「うん?」
「もしそれで勝って、勝ち続けて、聖杯を手に入れて何が嬉しいだろうか。何が誇らしいだろうか」
「俺は勝ちに来たんだじゃない。闘うために、ここに居るんだ。そう、俺はクリストファー・ウォー・クライ!美し過ぎる戦場音楽と呼ばれた男!」
クリスの背後にいるゲティには表情を読み取ることは出来ない。だがきっとあの時と同じ顔をしているのだろう。
(また変なポーズしてるし)
それで十分な気がした。もっと言えばこういう馬鹿を馬鹿にして、人生を楽しむことをしていなかったと思ってしまう。
(なら、あぁ、このひとときくらいは馬鹿になっても良いか)
装備
・白国FN社製P90短機関銃 二丁
・米国コルト社製M1911自動拳銃 二丁
・同 改造弾倉 八ヶ
・米国レミントン社製M95小型拳銃 二丁
・米国ウィンチェスター社製M1887散弾銃 一丁
・同 予備弾 十五発鷹の目より先に見つけてエンカウントするネタが思い付かなくてすまない…
喋れる暇があったら
「そうか、これも運命……なのだろうな」
「ならば改めて名乗ろう!俺の名はクリストファー・D・クライ! クリストファー†ダークコーリング†クライ! 暗黒の闇の雷の貴公子の名で恐れられた男だ!!」
とか言いますトーナメント、アーチャー陣営の幕間を投下します。
>>240
「実力を測るって話じゃねんですかい」
「そうだな」
「そうだな、ってお嬢…嗚呼そう言う事かよ」
溜息を吐きながら、アーチャーの聡い頭は柳華の思う所を汲み取る。
屹とこの女は───不利な場面でどう動くか、どう動けるかが知りたいのだ。
宝具も持たない、ステータスも控えめ、唯一の取り柄は弓の腕一つ。
そんなピーキー極まりない彼を十全に運用させる為には、彼が得手とする状況だけ知るのは危険である。
人類史に刻まれた英霊が強いなんて“当たり前”。
知りたいのは、生死を分ける場面で、追い詰められた状況で何が出来るか。
何が出来て何が出来ないか、何を得意とし、動きにどんなクセが出るか。
そういった細かな情報を、一片も余す所なく把握したいのだろう。
────少々突貫作業な感は否めないが。
それはまあ、時間がない事を鑑みれば致し方ないだろう。
────良いよお嬢、良いよ。アンタ戦いのイロハってもんを解ってる。>>241
柳華の指定した条件に応じる様に、真っさらな電脳空間は異形していく。
無機質なモンタージュも斯くや、といった風景は次第に決まった表情へと収束し。
「ふーん、確かにここなら“弓兵”はきっと苦い顔するわよね」
ふん、と鼻を鳴らす。
定まった景色は、荒れ果てた平野。
遮蔽物は皆無。土地の起伏も絶無。
ただ一対一を成すには絶好の空間であり、逆に言うならば不意打ちの余地は望むべくもなさそうだ。
アーチャーは愉快げに目を細める。
なんとやり辛い環境か。
此れでは弓兵の利点など発揮しようがないではないか。
────それに、目の前に顕現した擬似英霊も不得手の部類だな。
視線の先に構成された霊基は揺らめいて、その詳細は把握し切れぬが、右手に握る得物から近接戦闘を好む輩に見える。
得物から放たれる吐き気を催す程に濃密な魔力は、それが宝具であるのだと傲岸に主張しているかのようで。
「近接専門の武闘派英霊に決闘向きの状況、か。
ふむ、流石にやり過ぎたか。どうするアーチャー『もう少し優しくして』と言えば考えてやらん事も無いぞ」
「アホ抜かせ────この程度、一撃で済ませてやるよ」>>243
「───この石頭が、どんだけかってぇ骨してやがんだ」
黒く揺らめく擬似英霊は、頭蓋に矢が突き刺さりながらも、猛烈な速度で此方に進撃してくるではないか。
アーチャーが不機嫌そうに舌打ちすると、柳華は愉快そうに微笑みかける。
「どうやら並外れた耐久力が自慢らしいな。これまたつくづくお前の苦手分野だ。
だが悪く思うなアーチャー、これも私達の映えある勝利の為。愛故の鞭だと思ってくれ。
あー心苦しい、敢えてスパルタを課すのは胸が痛むなーーーっ」
「ぜんっっっぜん、気持ちがこもってねぇじゃねーかっ!!
やっぱアンタ超絶ドSだな畜生!!?」
そうこういう内に敵の攻撃圏内に入ったらしく、影の英霊は右手の鉄剣を力強く、縦に振り降ろす。
その一撃は強力無比。
ひらりと跳躍して躱すアーチャーが見たのは、彼の一振りで生まれたクレーター。
隕石の落下地点を思わせるそれは彼の宝具の威力を燦然と見せ付けるようで、思わず息を呑んでしまいそうだ。>>244
アーチャーに抱え上げられる形で移動する柳華は影の英霊の一撃を見て愉しげに嗤う。
「嗚呼凄いなアレは、アレが宝具と言うヤツか。
しかもあの状態で真名解放してないときた。コレは不味いぞアーチャー、絶体絶命だな」
「言葉の中身と口振りがまるで違うんだが、もしかしなくてもお嬢って戦闘狂?」
「何を言う、私は戦乙女の末裔だぞ?
強い奴を見て胸がときめくのは必然だろうに。
───敵だろうが味方だろうが、強い奴は大好物だ」
そら、次弾が飛んで来るぞ。
そう言う柳華の言葉通り、跳躍したアーチャーに追撃を加えんと影の英霊が飛び掛かって来る。
振り回される暴風、それを寸での所で去なしていく。
近距離は彼の不得手とする所だ。距離を取ろうと後ろへ飛び退るも、それをさせんと直ぐに距離を詰める敵。
せめて遮蔽物や障害物でもあれば、上手く距離も取れそうなものだが、真っ平らな地平で敵の視線を縫うことは困難であった。>>245
何度か矢を放ち、敵の身体を突くもその悉くが致命傷足り得ない。
化け物じみた耐久力が自慢の英霊か、はたまた身体自体が宝具と化しているのか、それは定かでないが。
兎に角、戦況はこのままでは此方が消耗していくばかりだ。
柳華はやや退屈げに、
「苦戦しているところ申し訳ないが、そろそろ打開して欲しいものだが。
まさか何の打つ手も無い、だなんて情け無い事は言うなよ?」
と語ったが、平野を縦横無尽に駆け巡るアーチャーは其れを聞くと。
「……心配すんなお嬢、大船に乗っとけって言ったろ?
ちょいと堅牢過ぎて面喰らったが────コイツで終わりだ」
そう言って、直進してくる猪武者に対して数矢、同時に放つ。
数本の光の帯と化した矢は、神々しい軌跡を残して────影の英霊の強固な身体を撃ち抜いた。
やった事は先程と同様、ただ矢を放っただけ。
威力も、内包する神秘も何ら変わりはない。
強いて違いを挙げるとするならば、撃つ場所を限定した、と言うべきか。>>248
濛々とした黒煙を吐き出しながら朽ち果てていく影の英霊。
それを数十歩離れた位置で睥睨する弓兵の眼に感情の色は見られない。
自らの絶技を当然と言わんばかりに、己の弓術を誇る事も、勝ち取った生に安堵する事もない。
その姿に先程迄の軽薄さはなく、故に柳華は理解する。
この男はこと人を殺.す段階では何処までも冷徹に、且つ実直になる性質なのだろうと。
その目は鉄の如く、肌は鉛の如く。
唯臓を撃ち抜き、敵兵を殺.す事に特化した殺戮機構なのだと。
「ふぅー、終わった終わった。一瞬負けるかもって焦っちまったぜ。
────よう、どうだお嬢。やっぱ俺は『大船』だったろ?」
「嗚呼そうだな、此れならば安心した。
と、同時に貴様の弱い点も露わになった。兎も角これで戦略が立てられるというものだな」>>249
戦闘が終了したと電脳空間は把握したのか、また目まぐるしく世界が変転していく。
もうじきにまた元の真っさらな白へと戻っていくのだろう。
そんな様子を他所に、柳華は話を続ける。
「お疲れ様だアーチャー、シミュレーションはもう十分だ。
……どうだ、休憩がてら宿舎を見て回ろうと思うんだが一緒に来るか?」
「モチのロンだ。序でに敵さんの顔でも拝んで無聊の慰めとしようか」
「あーあ、カジノとか賭博場とかねぇもんかな。闘鶏とか暇潰しににもってこいなんだが…」
「やってるワケないだろ馬鹿野郎」
ちょっと前の感心を返せ、と言いたくなる柳華であった。終わりでっす。
他の人の描写の参考になれればと戦闘シーン書いて見ましたー。なんとなく、そんな予感がしていた。
敵が初手で宝具を撃ってくる……それも多分、最大の攻撃を……。
けど、その可能性は二人で考えていたし、その対策も幾つか用意していた。
『……いけるよ』
そう、念話で合図する。
転移する前に、マスターから念話で敵の真名が上杉謙信だと伝えられた。
服装等から確信したけど、その装備から毘沙門天という神の力を振るう可能性が高いとも言ってたし、高まっていく魔力からしてきっと正解。
「命は燃やさない」
だからこそ、決まった。
私の宝具で迎撃する。
相手が神の力を振るうなら、私は神殺しの炎を振るう。
「その文明を焼却する」
先に放たれる光の砲撃。
けど、丁度良かった。
これなら、真名を言う私の声をかき消してくれる。
「紅炎の剣(レーヴァテイン)」
私の剣が、巨大な炎の刃となって光と衝突、そのまま拮抗する。
後は、マスターが砲撃の届かない岩陰に隠れるのを待つだけ。
『良いわ』
その合図を聞いた私は宝具を止め、近くの岩陰に飛び込んだ。以上です。
要するに、レーヴァテインぶつけて攻撃範囲から逃れる時間稼ぎ。
スルトちゃんが岩陰に飛び込んだ後、光がさっきまでスルトちゃんが立っていた場所を飲み込んでそのままステージの端まで……といった所。>>246
ガン=カタ使いに不意打ちは通用しない(暴論)
一騎打ちを求めはするけど、今回それはオルフェウスに対してになります。クリスの価値観として女性と闘うこと自体ナシなので
「食堂では言い損ねたが、女子供を傷付けるのは本意ではない。まして女で子供な君とは闘えない。流れ弾が当たらない場所に隠れていたまえ」
とか
「あくまでその気なら……顔以外の傷は覚悟して貰うッ!」
言ってフェミニストではないので応戦するまでのハードルは低いです。でも女性と発覚したら先手は打ちません。いっそ願いを代わりに叶えてやるから棄権しろまで言うナチュラル勝ち確思考と男尊女卑感
あと両手のP90以外は隠し持っています。腰のホルスターに、デリンジャーは袖口に(飛び出すアレ)、ショットガンは背中に
注文の多いry 眠くて眠くて投稿した文章に反映出来なかったんですよぅ…>>255
炎の剣は解って大丈夫です。幕間です
データアーカイブの前に二人の影有り。一人はカソックコート、もう一人は獅子の全身皮鎧を着ており不気味である
彼らはキャメロンフォーサイトとランサーである。彼らは室外では声に出して会話しない。ランサーをバーサーカーにミスリードさせるためだ。真名に近づく事を容易にさせない為の作戦である
((とはいえランサーはバレても弱点は無いから大丈夫な方だけどな))
((一体誰に向かって言ってるんだマスタァ?))
((細かな事は気にしても無駄だぜ?しかし念話って実に便利だ))
((誰にも内容を聞かれずに会話できるからなァ………まぁそれよりもだ、さっさと"アタリ"つけようぜェマスタァ………))
何も用がなくアーカイブの前に座らない。彼らは対戦相手の真名を解き明かそうとしているのだ。ランサーは獅子を象徴化したフルフェイスヘルムを通して画面を見る
((しかしキーワードはどうするかな?見た目からすれば東洋………………それも中華系だが))
((あと弓持ってたぜマスタァ。個人的にはアーチャーじゃねえェかとおもうが))
((もしくはエクストラクラスか……………どちらにせよ遠距離攻撃が主体に違いない))
((あとなァマスタァ…アイツの中から"奴等"の気配がしたぞォ……))
((じゃあ神に連なる者なのか?))
((いやァ……………あれは"奴等"の系譜じゃあねェ、本人は至って常人さ。多分だがアルケイデスみたいな技術が神域に達しているタイプじゃねェかなぁ。座は割といい加減だからヨォ〜))>>258
((成る程、弓の達人って事だな。ならばその線で調べてみよう))
キャメロンは「中華」「弓」「達人」で検索する
((…………………かなり候補がいるな))
((…………………中華は人材豊富ダナァ))
そこには数百件の英雄がリストアップされている。中華の歴史の長さを実感し、途方にくれる
((……………一個ずつ当たるしか無いな。……………この岳飛はどうだ?))
((……………いやァ…………見る限り他の武器にも精通している。しかし奴の身体つきは完全に射手そのものだ。それに喋る様子を見る限り、ここの記載とあっては無い気がするぞォ))
((じゃあハズレか………………この羿ってのは?))
((アイツの弓が宝具そのものとは正直思えん。そもそもアイツ自身はただの常人だぜェ……………))
((これもハズレ…………黄忠はどうだろう?))
((……………老人には見えんな))
((それもそうだな。じゃあこの黄て((そこまでの威厳は皆無ゥ))デスヨネー))
名前順に並んだ弓の達人から探すのは困難を極めた。そもそもキャメロンはアメリカ人、ランサーは古代ギリシア人なのである。馴染みの無い国の英雄を探すのは途方も無く大変な作業なのだ>>259
だが数時間が経過し粗方見たあと、その時は遂にくる
((……………次はこいつだな養由基))
((……………いいんじゃないかァ?今までの条件全てに当てはまる))
((弓に特別名前がある感じじゃあない、弓の腕前は神域に達している、空気が読めるんだか読めないんだか分からない性格……………もうこれはANSWERだろ?))
((俺ェもそう思う……………それに説明に乗ってる時代の鎧を見ろよォ……………アイツが着ていたのにそっくりだァ))
キャメロンとランサーはようやく本命らしき英雄を見つけ安堵した。だがその安らぎを一瞬のうちに終え、作戦会議を念話で行う
そして彼らは一つの結論へと至ったのだった
TO BE CONTINUE……………(奇しくもクリスマスにトーナメントしてる私たちもサンタを決めるための戦いを強いられているんだ…?!)
>>261
(偶然ってすごいなぁ)なお雷上動という、頼政が鵺退治した際利用した化け物弓がありますが。
ルーツを辿れば頼光さん、更に起源を辿ると養由基の持ち物だったりします。
…ただ自作のアーチャーは怪異殺.しの弓は魂レベルで放棄してます。
理由は単純に「あんなもん無くても化け物なんぞ殺.せる」って感じです。エルシュタイン『かわされましたね』
相手の出方を伺っていた私はセイバーの宝具を凌ぎ切られたのを確認して念話で呟く。
セイバー『ええ。それも私の宝具の音を利用して真名を秘匿したままで』
エルシュタイン『炎の剣を振るったのは見えています。そこから推測しましょう』
即宝具を撃ち返してくる可能性は低い。セイバーの宝具と互角の宝具を撃ったのだからそれなりのインターバルを挟む筈だ。
ならば相手が隠れたであろう周囲の岩場に注視しておけば敵の行方は掴める。サーヴァントが霊体化して奇襲の可能性もあるが霊体化したならばそれこそ私のカモだ。
エルシュタイン『炎の剣、となれば真っ先に思い浮かぶのはレーヴァテインですね。実際に剣かどうかは諸説ありますが。であればレーヴァテインの所有者と言えば製作者のロキか保管者のシンモラか振るったと言われるスルト…ですか』
セイバー『ちょっと待ってください、スルトは男性の筈では』
エルシュタイン『貴女がそれを言いますか』
セイバー「うっ…」エルシュタイン『ともかく、私はシンモラであると考えます』
謙信のようにスルトの性別が女性だったという可能性もあるが炎の巨人である筈のスルトにしては体躯が小さ過ぎる。
それにクラスがバーサーカーであるというなら戦いの逸話の無いシンモラを狂化で戦えるように強化したと考えることも出来る。
セイバー『概ね同意見です』
セイバー「(しかしだとしたらあの時感じたセファールの気配は一体…?)」
エルシュタイン『宝具の連続使用は魔力的に厳しいので作戦を変えましょう。プランTです』
セイバー『T?そんな作戦は決めていなかったような』
エルシュタイン『突撃のTーー!』
セイバー「ええーっ!?」
エルシュタイン『大丈夫、近接戦闘なら貴女に分があります。第一宝具なら使って構いませんのでスペックで押しましょう。GO!』
セイバー「(急に雑になったなぁ…)ええい、ままよ!」はい、という訳で戦闘シーンはお任せします。
ここで説明はしていませんがエルシュタインの考えでは謙信がバーサーカーを抑えている間に自分がマグダレーナと戦いに行くつもりでいます。
スルトちゃんの真名予想についてはサーモンありなん。炎の巨人の正体が女性はともかく人並みの大きさとか予想つきませぬ故。トーナメント:蒼木ルイ
「あの方は……!」
クロワの捉えた姿に驚愕する。クリストファー・C・クライーーー食堂で出会った彼が対戦者ということらしい。(両手に持っているのは……銃?軍人なのかしら)
幸い、こちらの偵察には気づかれていない様子。今のうちに考察を進めておきましょう。
次は傍に居る男性。恐らくサーヴァントなのでしょうが、英雄偉人と呼ぶにはあまりに普通で、とてもそうは見えなかった。けれど身に纏うスーツや装飾品はどれも一級品。それに……
(あのお顔……どこかで見覚えがあるような……)
得た情報をキャスターに共有し、所感を聞く。曰く、
「サーヴァントの方は恐らく近代の出身だろう。政治家、実業家、富豪……そう言った者もサーヴァントとして呼ばれる事がある。かなり珍しくはあるけどね。近代の英霊は大概、肉体や魔術こそ大したことは無いが、クセのある力を持たされていることが多い。銃が得物のマスターと言い、気づかれないうちに仕留めるのが得策だよ」
「そう……そうですわね」
分かっている。こんな好機を逃す手はないと、分かってはいる。しかし、わたくしに嫌悪を向けながらも料理を振る舞ったクリストファー・クライ。そして、彼と共にいる富豪の英霊ーーー何も語らずに戦うのは、あまりに惜しいと思った。>>267
「……キャスター、貴方の言い分はもっともですわ。けれど、主として命じます。ーーーこの場で不意打ちは致しません。彼らとは、正面から言葉と刃を交わしますわ」
意を決してそう告げる。折角のチャンスを投げ捨てるような決断に、キャスターはーーー
「君には、とても海が似合いそうだ」
「はい?」
急に告げられた言葉に面食らう。そんなわたくしを前に、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、キャスターは言葉を紡ぐ。
「君は言ったね、"言葉と刃を交わす"と。それはきっと、彼らから何かを学べるのではないか、という姿勢の表れ。そんな可能性を手放さない心の広さは、見渡す限りの澄んだ海。その金髪は皆を照らす太陽。大きな夢を掴もうとする姿は海原へ旅立つ船人で、その青い瞳は海に眠る至宝ーーー。尤も、僕が船人なら、一番手に入れたい財宝は……君の心だね」
声が出せなかった。顔が赤くなっていることが自分でも分かる。大抵の口説き文句や褒め言葉なんて聞き飽きるほど聞いてきたが、彼の言葉(うた)は別物だった。
「おっと、やり過ぎたかな。久しぶりに心が湧き立ったからつい。と言っても、まだまだ満足いかない出来なんだ。他も聞かないかい?」>>268
淑女のプライドで澄まし顔を保って言い返す。……キャスターの目を直視できなかったのが情けないけれど。
「クロワ、落として」
命じた直後、飛行するクロワがある物を落とす。ーーー石だ。
石はある程度の所で弾け、音と破片を撒き散らす。音に釣られて、"彼ら"が目線を上げる。大岩の上に立つ、わたくしの高さまで。
「ご機嫌ようムッシュ。お会いできて嬉しいわ」
「なんと……。君が相手か」
「ええ、不思議な縁ですわね」
「……あの青年は何処だ。俺は君ではなく彼と戦うつもりなんだが?」
「お生憎様、あの方は戦士ではなく芸術家ですの。わたくしと貴方のダンスの為に、控えて貰っていますわ」
「……食堂では言い損ねたが、女子供を傷付けるのは本意ではない。まして女で子供な君とは闘えない。流れ弾が当たらない場所に隠れていたまえ」
その言葉と目に、わたくしは怒りを覚える。「女だから」「子供だから」……ああ、あの目だ。侮り、蔑み、軽んじる嫌な"男"の目。わたくしの言葉や考えなど歯牙にも掛けない癖に、道具としてのわたくしには執着する"彼ら"の目。そのものではありませんが、近しい色を、彼は持っていました。
(貴方も、そちらの方?……いいえ、今は耐えなさい、ルイ。そうでないかも知れない可能性を、確かめに来たのだから)>>269
あくまで穏やかな調子で、こう告げる。
「あまり侮らないでくださいませ。これでも、荒事の経験はありますのよ?それに、紳士が淑女の誘いを断りますの?」
するとクリストファーは軽くため息を吐き、どこか子供をあやすような雰囲気を滲ませて言葉を返す。
「……なあ君。実を言うと俺には確たる願いは無い。だがその様子だと、君にはあるんだろう?そこで一つ提案なんだが、俺が代わりに君の願いを叶える。だからこの場は棄権してもらえないだろうか?」
ーーーわたくしの中の何かが切れた。
「…………………………ふざけないで」
「何?」
「ふざけないでと言ったんですのよ!わたくしを侮るだけに飽き足らず、あまつさえ代わりに願いを叶える?お断りですわ!わたくしは相応の覚悟を持ってここに居る!他の誰でも無い、"蒼木ルイ"として望みを掴む為にここに居る!ーーー貴方に叶えて貰うものなんて、硬貨1枚分だってありません!」
言葉の弾丸を叩きつける。淑女の仮面も体裁も、今この時ばかりはかなぐり捨てる。礼装のブーツを起動し、ブライジラフを敵に突きつける。
「かかって来なさい、ムッシュ。淑女の嗜みを刻んであげます」
「……そうか。あくまでその気なら……顔以外の傷は覚悟して貰うッ!」
「あらお優しいわね。吐き気がしますわ」
そうして、わたくしと彼の対決は始まった。
〜〜
オルフェウスは離れた岩陰で待機してます。危なくなったら念話で伝えて援護する感じです。
ルイの近くにはいくつかの防壁、小石爆弾が多数。クロワが周囲を飛んで、炉剣は少し離れた場所に突き立ててます。炉剣と同じあたりには落とし穴なんかの罠が張ってあり、ここに誘き出すのが一応の作戦です。委員会さん、お願いします。
ルイは今、"クリストファー・C・クライ"と認識してるので、名前遊びで「クリストファー・Cクライではありませんでしたの?」とかさせたい(させて欲しい)ですね。
オルフェウスの詩は……描写に似合ったできかどうかは自信ありませんが、こういう事をしたかったです。>>272
いえいえ、展開的に何ら変化は無い豆知識ですので大丈夫です。>>270
どうやら怒らせてしまったらしい。感情的になった相手には実力を持って当たるしかない。
(オイ、女だからって甘く見てると…)
(平気だ。軽くいなして終わりにするから下がっていてくれ)
キャスターの念話も取り合わず銃把を握り直し腕を交差させる。
「君が戦士としてこの場に立つと言うのなら改めて名乗ろう…俺の名はクリストファー・D・クライ! クリストファー†ダークコーリング†クライ! 暗黒の闇の雷の貴公子の名で恐れられた男だ!!」
「………」
「………」
「貴方のお名前、クリストファー・C・クライではありませんでしたの…?」
「フッ…強い男は多くの名前で呼ばれるものさ」
「まぁ、なんとなく貴方のことが分かってきましたわ……」
疾る———獣装戦靴・駿狼型(トライブ-ツ ランナ-モ-ド)による超高速移動。相手の得物が銃であると分かっている以上、真正面に立ち続ける愚はおかせない。高速移動で左右に振り、奴に照準を定めさせはしない。
(そして、あわよくば"あそこ"まで誘導する!)>>279
大口を叩くだけあって戦い慣れている。光り輝く特性上、正確な間合いを測るのは難しい銃刀輝臨(ブライジラフ)による高速斬撃を二度もギリギリの距離で避けた。
(けど、三度目はありませんわ)
柄を握り直すと同時に魔力を込め直す。今度こそ確実に斬り伏せると不遜な男に狙いを定めると声がした。
「果てなく果てなく風よ地に吹け、翼よ空を裂け…
(詠唱…? 何唱節あるか知りませんが好きには…)
どこまでもどこまでも、自由であるという責任を果たせ! "連なる縛鎖の呪い(チェ-ン ガンド)"!」
短銃身のオモチャの様な銃から連続で弾が吐き出されるのと同時に無数のガンドが放出される。それも腕を振りながら———即ち、"銃弾による斬撃"と等しい攻撃が迫る。>>280
キャスター、ジャン・P・ゲティはサーヴァントを置き去りに戦い始めてしまったマスターを遠目に見ながら嘆息をつく。
(やれやれ、分かってはいたがどうにも困ったマスターだ。あんな物言いをすれば怒るのは当たり前だろうに)
クリスが食堂に行ってしまった後、兄(猫)のアルヴァンとの会話を思い出す。
『きっと……弟に明確な願いはない』
『そんなことはないだろう? あのツルガとかいう男の話通りなら…』
『そう、あの男の言う通りなのだとしたら、ここに集められたマスターは誰一人として生前、その願いを叶えた者はいない筈だ』
今思えば猫が沈痛な面持ちで話すのを真剣に聞く、というのも中々シュールな図だ。
『だけど弟に、クリストファーにそんな切なる願いがあったとは思えない……いや、思いたくはない。ここに選ばれる程の無念を抱えて弟がしんだなどと』
『………』
『だから、きっと君のマスターになるべきは本来私だったんだよ!』
『………うん?』
『でも見た通り私にマスターとしての性能を満たせる力はない。だからその代わりとして弟は巻き込まれてしまったんだよ!』
『あ、あぁ、そう……? でもそれじゃあ君の願いは』
『うーん……それは秘密です。 だけどキャスター、どうか弟を守ってやって欲しい。この通りだ』
猫に頭を下げられる、貴重な経験をしたものだ。秘密と言いながら、その願いを少しも隠せてない言葉と姿を思い浮かべつつ、サーヴァントの気配に向かって歩みを進める。クリスは詠唱を必要としないから気分でやってます。銃弾と呪弾の連弾でブライジラフを弾くのが目的の攻撃になります(弾弾弾うっせーな感
ゲティはオルフェウスと接触し、なんとか宝具を奪えないか画策します
「君がいつの時代の英霊かは知らないが、装い的に結構古い時代の人なのだろう? 座の知識で悪いが古代人は冷たいラガーに大層と喜ぶのがセオリーと聞いたのだがね」
とか言って缶のバドワイザーを渡したりして友好的な感じを装いつつつーかルイちゃんとクリスの人物設定の相性がな、メッチャ悪いからそこやらないとマッチメイクされた意味ないんじゃね!?って…すまない、ルイちゃんすまない
どうにか、初手は防げた。
あんな手を使うなんて、余程自信があるか只の馬鹿か……と言いたいけれど、残念ながら前者ね。
特に魔術を行使してるように見えない状態でさえ、魔眼ではっきりと魔力が見えるなんて時計塔のロード級の魔力量……その上で魔術使いを名乗る以上、実力は考えるまでもない。
そこまで考えて、前に友達から貰った魔力補給の霊薬を飲み干す。
回復量自体はさほどでもないけど、頭は冷えた。
相手は高い自信とそれに見合った実力を兼ね備えた魔術使い……なら、この状況で次の一手は恐らくマスター同士の戦いに持ち込む事。
それなら、この魔眼や、格闘術で学んだ気配の読み方や隠し方、探検家として身につけた生存本能とさえ言える直感等……これらを駆使し、スルトちゃんを信じて生き延びる。
勿論、相手のほうが圧倒的に強い……だけど、サーヴァントを、スルトちゃんを信じる一点においては、絶対に負けないもの。
第一、笑顔にしたい相手を信じられなくて何を信じるというのよ。宝具で更地になったエリアもあり、敵はすぐに見つかった。
でも、敵は思ったよりも冷静……二手に別れて私達を探すつもり。
これ以上私が隠れてもマスターが危険なだけ。
それに、この位置ならセイバーまで「一歩」で届く。
『……マスター……仕掛けるよ』
剣に炎を纏わせ、身体に刻まれた紋章に魔力を通し、跳躍。
魔力放出によるジェット噴射で低空飛行。
セイバー目掛けて、私は突き進む。
優しいマスター、私は絶対負けないよ。以上です。
編成:正常 質:A+ 量:Aとか、属性:アベレージ・ワンとか、魔術:特殊な術式を除く全ての魔術とか泣きたくなる。>>287
マスター男女比1:1でお互い拗らせない可能性も十分にあったのにこの組み合わせですからね。追い風が吹いている…!
あと描写不足で分かり難かったと思いますが落とし穴がある場所までジリジリと誘導されてます。闘いの形式上罠を張る時間はないだろうとタカをくくってるのでこのまま策にハマったら落ちます。凄く落ちますトーナメント:蒼木ルイ
「シルヴプレ?」
一言唱えれば地面がせり上がり、弾丸を防ぐ壁を作り出す。しかし魔力で補強している筈の壁は、ガリガリと削られていく。
(これが……ガンド?フィンの一撃、それ以上の何かではなくて⁉︎)
壁が破壊される前にブーツを『フライト』モードへ変更し、大きく跳躍。しかし、
「ーーー貰った」
狙い澄ました一弾が手元に命中。ブライジラフを取り落としてしまう。
「くっ!」
そちらに気を取られた刹那の隙。それを見逃す相手では無かった。
「王手(チェック)だ」
そう呟き、片手に構えた機関銃のトリガーをーーー引けなかった。
ポロン、とたった一音が空に拡がる。しかし、その一音は聴く者全ての心を惹きつける響きだった。続けられる旋律は切なく、哀しく、美しい。それはいっそ暴力的なまでに、心を悲しみに塗り替えた。
「ぐっ……」
ふらりとよろける銃士。わたくしもきっと、手加減されていなければああなった事でしょう。そして脳裏に聞こえる彼の声。>>291
『まったく、危なっかしいな君は』
『キャスター。その、ありがとう……』
『例には及ばない。それで、このまま続けるかい?』
『いいえ、充分ですわ。その時が来たら、またお願いします』
念話が途絶え、音楽が止む。よろめいていたクリストファーの呪縛も解かれたようだが、まだ心が引き摺られているようだ。今度は、わたくしがその隙を突く!地面に着地し、ブーツを『ランナー』に切り替える。そして、
「クロワ!」
「あいよォ、合・体!」
クロワを腕に装着し、魔力砲を放つ。だが敵もさるもの。着弾の直前で転がるように避ける。
「やってくれる……!だが良いだろう、俺の心が火を噴く時だ。俺はクリストファー・B・クライ!クリストファー・バーニング・クライ!お前を焼き尽くす、紅蓮の業火だ!」
「そう、熱い殿方は嫌いではなくてよ。けれど残念、わたくしは空色姫(シエル・ドゥ・プランセス)。貴方を鎮める雨を降らせてあげますわ」
先程までよりも一段早く、こちらに追いすがる銃士。しかし、遂にその場所へと誘い出した。>>292
「"落ちなさい"!」
突如、クリストファー・クライの足元に穴が開き、彼を落下させる。そこまで深く無い穴だが、この隙はあまりに大きい。
「オルボワール(ご機嫌よう)、ムッシュ」
大岩の上に立ち、穴の中の彼へ砲撃を叩き込む。
「やぁ、君が彼女のサーヴァントかい?」
演奏を終えたオルフェウスの前に、一人の男が現れる。
「そうだけど?」
「ああ、そう警戒しないでくれ。君がいつの時代の英霊かは知らないが、装い的に結構古い時代の人なのだろう? 座の知識で悪いが古代人は冷たいラガーに大層と喜ぶのがセオリーと聞いたのだがね」
そう言って彼はビールの缶を差し出す。
「残念ながら、僕は敵に物を貰う程不用心じゃない。演奏へのチップは、君の気持ちだけ受け取っておこう」
〜〜
こんな感じ。名前ネタ返しはやりたかったこと。>>290
第二宝具のビームの時は浮いてて普段は手持ちでお願いします。
普通のビームの時は宝塔を掲げてホームズ等が出してる光線みたいなのが出る感じです。宝塔はしまって槍を両手で振るうことも出来るという感じでお願いします。>>296
いやぁ、乗るかどうか迷ったんですが、流石に毒の可能性や裏を疑うかなと。一応戦いの場ですし……。
まあ、女性の頼み事を断ったことが死因になってるので、敵じゃないよアピールをもう少し続ければ飲むかも知れません。この後の展開に必要ならどうぞ。槍を持つ腕とは反対側の側面から奇襲する。
やっぱり、流石に気付かれる。
槍を動かすセイバーだけど、ほんの少し遅い。
でも、それは私の剣が身体を狙えば防御が間に合う程度の時間差。
だからもっと『早く』剣を振るう。
本来の間合いより遠くからの一撃。
この距離ではセイバーに当たらないけど、それでいい。
私の剣の先端部は、セイバーが左手に持つ宝具に叩き込まれた。短いけど、戦闘開始まで。
宝塔の破壊あるいは吹き飛ばしを狙った一撃だけど、果たしてどうなることやら。>>293
うおおおうぅ!?!!!?!
落ちる落ちる堕ちる。いったい何が起きたのか俄かには信じ難かったが、どうやら罠に嵌まったらしい。
状況は最悪だ。この後の展開、俺ならば———
「au revoir、monsieur」
声のする頭上を確認するまでもない。追撃がくる。言葉を作る余裕もない。P90を捨ててここ一番全力の疾走で落とし穴の外縁に手を掛ける。
(フラッシュエア……ッ!!)
置換魔術…数多く存在する魔術系統の中でも下位に位置付けられる基礎的な魔術だ。
原理上、劣化交換しか行えないと多くの魔術師に見放されたそれを魔術使いはこの絶体絶命の局面で選択する。
同質同量の等価交換が不可能ならば、その損失こそをこの魔術の本質と捉えればいい……つまりこの今で言えば壁の土を別種の土に劣化交換を繰り返し、穴を掘り背後を塞いで行く。
轟音が即席で生まれた土壁の向こうから響いた。この段階でオルフェウスが宝具使うとは予想していなかったので、もう会って直ぐ強奪狙えるのでは?ムーブで
いやどう口先三寸で宝具見せて貰おうと思っていたので
クリスはせっせと穴を掘り進めて地上を目指してます>>306
バーニングはですねぇ……。「C、Dと来たしここはBかEでアルファベット順にしよう!」→「ルイに空と雨は言わせたいから炎関係を名乗らせよう!」→「Eで炎が思いつかない。B……バーニング!」の順ですね。火薬とかマズルフラッシュに近づければもっと良かったんですが。>>305
なるほど。こちらはバーサーカーはシンモラだと思っていてなおかつ狂化で思考力が落ちてると考えているのでそこまでの駆け引きをされたら食らいますね。
という訳で書いてみます。そういや相手にパスする時にセリフ指定というかサンプル置いて貰うのってメッチャやりすいねんな!!って思ったのに自分で流れを切ってしまった
穴掘り続けて地上に飛び出したクリスは「俺の! 名前は!! クリストファー・バーニング・クライ改め!クリストファー・フェニックス・クライ!!」ルイちゃんが周りにいるとか背後を取るとかは地上を感知する手段や余裕がないので運で
そして考えたらゲティはオルフェウスが答る内容に関わらず「そう…『此の世に価値の無い物は無い』」ってオルフェウスの足元に札束投げ込むくらいしか方向がなかった戦闘前のやり取りです
>>310
観戦ルーム
マグダレーナ・グロース&スルトVSエルシュタイン・ラジアナ・カヴァセルリ&上杉謙信
の戦いが繰り広げられる中、こちらでも一触即発の雰囲気が漂っていた
ソファに腰掛けるのは洲甘柳華とキャメロン・フォーサイトの2名である。彼らの後ろにはそれぞれのサーヴァントが立っている
「では改めて、キャメロン・フォーサイトと申します。こちらは"バーサーカー"。折角なのでお近きの印としてどうぞ」
キャメロンは保冷バッグから七色に輝くペパーミントアイスクリームを二つ置いた。柳花はその鮮やかに輝くアイスを取り敢えず一個アーチャーに渡し、もう一つは自分の側に置いた
「どーも、ありがとうございます…………要件はなんだ?アイス渡すために私達に会った訳じゃないだろ?」
男勝りの口調でキャメロンの真意を尋ねる。彼女はこの男から強者と血の匂いを嗅ぎ取っていた。そんな男が対戦相手である私に何の話をするのか?戦乙女の血が騒ぐと同時に興味が湧いてくる
「ああ、すまない。会うに当たって何か渡した方がいいんじゃあないかなと思ってね、まあいい。単刀直入に言うとね洲甘さん。取引がしたいんだ」
「取引?ふーん、これから殺しあう相手に貴殿は何を望むんだ?武器か?サーヴァントの交換か?もしくは情報か?」
「いやそのどれでもない。私はね"安全"が欲しいんだ」>>311
"安全"
強者が求める物がこれなのか?洲甘の血の滾りは徐々に収まっていき、疑問と弱冠の嫌悪感が湧いてくる
「……………興ざめした。闘う相手に"安全"を求める奴がいるとはな……………つまらん男だ。そこまで命が惜しいのか?」
「あー、いやそういう訳じゃあないんだが……………不快にさせてしまったのなら申し訳ない。正確に言うとな"一騎打ちでの安全"が欲しいのさ。私は」
「…………?どう言う事だ」
「君のサーヴァントはアーチャーだろ?ということはだ、もしかしたら君と私が戦っている最中に君のアーチャーによって撃ち殺.されてしまう可能性がある。洲甘さんはそんな事しない人間に見えるが、生憎私たちは始めて会ったからね。確証が欲しいのさ」
キャメロンは右ポケットから一枚の紙を取り出す
「……………自己強制証明(セルフギアス・スクロール)か。だが貴殿は教会の人間だろ?こんな物使っていいのか?」
「今の私はキャメロン・フォーサイトであってそうではない。よって別に使っても問題はない」
物は言いようである。洲甘はキャメロンと"バーサーカー"を見る。キャメロンは笑顔こそ浮かべているが片眼鏡の奥には殺意が滲み出ている。対して"バーサーカー"は獅子の様な兜で顔こそ見えないがその奥にうっすらと見える赤い目からは怒りが読み取れた。洲甘は彼らに対して違和感を感じつつも内容を見る>>312
対象:
キャメロン・フォーサイト
フォーサイトの刻印が命ず
各条件の成就を前提とし、制約は戒律となりて、例外無く対象を縛るものなり
制約:
フォーサイト家長男、ヒッチコックの息子たるキャメロン・フォーサイトのサーヴァントに対し、
洲甘柳華を対象とした殺.害・傷害の意図、及び行為を永久に禁則とする
条件:
洲甘柳華のサーヴァントに対し、
キャメロン・フォーサイトを対象とした殺.害・傷害の意図、及び行為を永久に禁則とする
「読んでくれたかい?私は一対一の闘いを所望しているんだ。私と貴方、私の"バーサーカー"と君のアーチャー。真剣勝負だ。返事はすぐにして欲しい。いつ勝負が出来るか分からないからね一枚の」
さあ 君の答えを 聞かせてくれ>>313
終わりです>>302
「……まあね。だけど、これは僕しか弾きこなせない。貴方には無価値な代物だと思いますよ」
「ほう、無価値。しかし私にはそう思えないな。その装飾だけでも美術品として値がつくだろう。そしてまた、君の演奏も素晴らしかった。あれだけの音色だ、君の過去はさぞ辛いものだったのだろう?」
「ーーー何故そう思う?」
「一言で言えば、勘、かな。だが私も伊達に歳をとっていない。おまけに色んな人間を見てきたからね。君の表情、話し方、そしてあの演奏に込められた哀しみ。これらを総合すれば、それぐらいの察しはつくさ」
「そうか。僕の顔は、それ程分かりやすいか」
「ーーー打ちのめされた目をしている。自分の行いを酷く悔いているような、ね」
「……侮れないな。当たりだよ。僕は自分の行いのせいで、大切なモノを喪った」
「ああ、私にも色々あった。英霊なんぞ、後悔と悲しみをいくつも抱えた者しかならんのかも知れんな。そんな私達に出来ることは、"彼ら"の助けになってやる事くらいかもしれん」
「ああ、そうだね。……だけど、僕には音楽しかない。愛した人一人助けられなかった、こんな腕しか……僕には無いんだ」
そう言って目線を落とし、自分の腕を見る。虚しい音を奏でるしかできない、この腕。だから、"彼女"の願いを聞いて、この腕を取ってもらえた時、嬉しかった。この空っぽの腕でも、無価値な男でも、何かができるんじゃ無いかと思えた。だからせめて、この腕で奏でられる音楽をーーー待て、何故僕はこんな事を話している?目の前の男は敵じゃないか。竪琴と後悔、そしてこれまでの話が合わされば僕の名に行き着くことも……。>>315
「いやそれは違うよ、君。君の腕も竪琴も、とても素晴らしい物だ。君はさっきチップは要らないと言ったが、こちらから払わせてくれと願いたいくらいだ。世間ではケチだなんだと言われた私がだよ?」
「そう……かい?」
彼の言葉に、どうしても反応してしまう自分が居た。
「ああ、だからこれを受け取って貰えないだろうか?」
そう言って男がこちらに投げたのは、大量の札束。
「?これは……」
「君はこうも言ったね。その竪琴は、私には無価値な代物だと。だが、それも違う。そう……『此の世に価値の無い物は無い』、だ」
そう唱えられた瞬間、僕の手から竪琴が消え去った。
(どうですの⁉︎)
砲撃を放ち、様子を伺う。当たっていれば無事では済まないでしょうが……。>>316
「ご主人、穴の中にアイツの姿が見えねェ。どっかに逃れたと見るべきだと思うぜ」
「そのようですわね……。だとしたら、何処へーーー」
その瞬間、事は起こる。
「俺の! 名前は!! クリストファー・バーニング・クライ!」
叫びと共に地中から飛び出る一つの影。影は空中で銃撃姿勢を取り、
「改め!クリストファー・フェニックス・クラァァァーイ!!」
夥しい数の銃弾とガンドを放つ。
「くっ!"爆ぜて"!」
ブーツの加速力を最大にしながら、近くの小石達を爆破する。爆破は土煙を上げ、彼の視界からこちらを隠す。
「そのような小細工、今の俺には通用しない!何度でも舞い戻り、お前を追い詰める!」
そして再度襲い来る弾丸の嵐。しかしーーー
「そう、ではわたくしも、とっておきを見せてあげますわ」
土煙の中から、わたくしは現れる。傍に、巨大な剣を引き摺って。
「ここからは、乱打戦と行きましょう!」
言って、ブーツと剣の推進で瞬く間にクリストファーへ肉薄する。
〜〜
ゲティさんがこんな感じでいいのかが不安ですが、オルフェウスの脆さを描くにはちょうど良かったかなと。先日話していたメタ目線でのうちの鱒2人から見た他の参加者というの初梅だけ書いてみました。他の方々の内面が見えてくると変わるかもです。
ユージーン・バックヤード
「心が読めるから人が嫌い……いや、そんな人いっぱい見てきたし。特に思う場面はないかな。てか、そういう人達は人の善性に目を逸らさないできちっと向けばいいのに。そこまで卑屈になることないじゃん?」
ヴィルヘルム・ヴァンシュタイン
「コイツに勝てとかバカじゃないの!?ワルキューレと上位代行者とかマジ勘弁なんだけど!」
蒼木ルイ
「令嬢じゃない、本当の自分を見て欲しい……なら、今の自分の立場を捨てるしかないのにねぇ。逃げられないのか敢えて逃げないのか。難民を救いたいっていうのも自分から何かしたいっていう気持ちの表れじゃない?」
照文音意
「ふーん……頑張ってね。大会後に何か協力を求めるなら手伝うこともあるかも。」
宗美 樹
「何度も見てきた手合いだわ。最初は自分がなんとかしようと足掻いて足掻いて、苦しめられると責任転嫁。……靭くない者が、争いに参加した結果ね。」
九重海音
「妹が人質っていうのは確かに災難ね。本質も良い人だし……手伝ってって言われたら手伝うかな。聖杯も、あまり干渉はやめようかな?」続いて竜胆
ユージーン
「家族と親友を愛してる魔術師さんかー。人を殺しちゃうのは悪いことではあるよなぁ。でも、それも魔術界のルールでならセーフなのかな?スタッフさん達も命の危険は承認済みだろうし。」
ヴィルヘルム
「勝つ未来が全く見えない!どうすんだこれ!」
蒼木ルイ
「すっごい綺麗だし人のために頑張ってるんだなぁって思うな。大丈夫、貴女と共に歩んでくれる人は絶対居る。俺はそう思ってる。」
照文音意
「お姉さんを探すため……うーん、お姉さんが何処いったとかそもそも存在するのかとか疑問はあるけど、その思いは間違ってないと思うな。」
宗美樹
「……願わくばそのまま正義の道を進んで欲しかったとは思うけど。人を殺しちゃうのを止められなかったらアウトだよ。ルールはやぶってないけどスレスレだよね。」
九重海音
「妹さんが誘拐されて……ってこれ、そんな形で始まった大会なの!?そもそもの正当な所有権は九重さんのだし、ある意味ルールに反……いや、そこらも大会中によく考えよう。」>>319
修正。ルイちゃんには「すっごい綺麗な理想を持った人だし」ですね。蒼木ルイ
ユージーン「是非同盟を組みたいね。正直向こうから同盟持ち掛けてこなかったらこっちから行こうと思ってるくらいだ」
バーサーカー「それはこいつが金持ちだからか?」
ユージーン「いやいや、それは地雷だ。人の嫌がることをしちゃいけませんって習わなかったか?」
バーサーカー「鬼が誰に習うんだよってかお前が言うな!」
九重海音
ユージーン「いろんなもの背負って苦労してるな」
バーサーカー「なんだよ、えらく反応が温いじゃねぇか」
ユージーン「魔眼持ってるからな!」
バーサーカー「人としてその判断基準はどうかと思う」ヴィルヘルム・ヴァンシュタイン
ユージーン「聖堂教会の代行者、しかも死徒嫌いと来たか。バーサーカーを敵視する可能性も高くて同盟は見込めないな。サーヴァントによっては令呪を切ることも考えて行動しないといけないな…」
バーサーカー「急に真面目になるのやめろ。ビビるから」
バーサーカー「ちなみに俺としてはこの男を高く評価している。人という種でありながら信仰と鍛錬でここまでの力をつけたことにはある種の尊敬の意を(略)」
照文音意
ユージーン「お姉さんが見つかるといいな。以上!」
バーサーカー「いや短すぎだろ!」
ユージーン「だってあんまり深く読んじまうとネタバレになっちまうだろう?」
バーサーカー「メタァ……」宗美 樹
ユージーン「こういう一般人枠ってのは他の参加者との差を埋めようとバーサーカーを召喚する可能性が高い。バーサーカーを召喚すると公言してる以上先を越されないよう気を付けないとな」
バーサーカー「もう召喚してるし誰が何を召喚するかは事前に決まってるだろ」
ユージーン「おっとメタ返し」
氷瀬竜胆&水籠初梅
ユージーン「同じ心を読める者同士何かしら起こりそうだよなぁ。読むと受信するの違いはあるが」
バーサーカー「もう一人の方はどうなんだ?」
ユージーン「うーん、一人くらいこんなやつが居ても良くね?」
バーサーカー「軽いな」
ユージーン「だって『ルールは絶対』であって『嘘をつかない』じゃねーんだもんよー。それなら他の人間と大して変わらないし強さも代行者や竜の因子持ち見た後だと見劣りするしー」で、狸がこう
剣陣営
「北欧のワルキューレとか怖くないかの?おーやだやだ。罠張ってなんとかするしか…」
槍陣営
「ま た ワ ル キ ュ ー レ か」
狂陣営
「儂がしっとる酒呑ではないな……儂自身、他の隠神刑部とは違うんじゃが。え?他の儂?どっかの犬神憑きの少女んとこいそうじゃの。」
暗陣営
「うーん。コイツ、ほっとくかマスター引っかけるだけで多分沈むの。それが難しいんじゃけども。」
騎陣営
「勝海舟か……船は地表にも出せるのかの?出せるならこわいなー。」
弓陣営
「コンラ……え?かのクーフーリンとも争ったあのコンラ?……怖くない?」>>323
竜胆「ねぇねぇこの反応どう思う?」
初梅「普通じゃない?私達ならこれぐらいが妥当でしょ。アンタどうなのよ?毛ほどの意識も向けられてないわよ?」
竜胆「そういう人ほど足下を掬われやすいよね、とだけ。嘘ついただけでその反応とかよっぽど人嫌いなんだねぇ。」とりあえずトーナメントのスタートが出来たので投下します。
>>317
以前より更に速い。爆発的なまでの加速を見せ付けた彼女に肉薄を許す。
反射的に両手のコルトガバメント、その45口径という大口径弾とそれに比例して強大となったガンドを放つ。だが蒼木ルイの携えた巨大な何かに阻まれた。
「盾か!」
「剣よ!!」
その衝撃を回転の起点にした大振りの横薙ぎが迫る。
……ところでガン=カタとは何か、あなたはご存知だろうか? 監督カート・ウィマー、主演クリスチャン・ベールで2002年に公開されたアクション映画「リベリオン」に登場した架空の近接格闘術の名称である。
設定としては過去の膨大な戦闘データから統計による合理的な動きを突き詰めた結果、飛躍的に戦闘力を向上させるというトンデモなのだが、これに啓蒙されたクリスは独学でこれを習得する。
傭兵として凡ゆる戦場に身を投じ、この独自のガン=カタを昇華させたクリスの本領は一対多の闘いであった。故に一対一の闘いに置いて———
「速さでは俺に届かないとぉ、言った……ッ!」
上体を大きく反らせて大剣を躱しながらマガジンを排出するのと連続して拳銃を上空に投げ、そしてコートの裏に閉まった新しいマガジンを放り投げる。落下する拳銃をキャッチしながら空中でそのまま再装填を行う。無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きが高速で斬り抜けた蒼木ルイの背後で行われた。
M1911残弾…7×2発、残マガジン…6ケ>>327
『此の世に価値の無い物は無い』。キャスター、ジャン・ポール・ゲティが持つ唯一の宝具。他者の所有物、それが実体を持つ物であれば宝具であろうと買い取る能力は正しく発揮された。
「君が相手で良かった。それこそ君の盟友、ヘラクレスのような豪傑であったなら私は為す術もなく殴り殺されていただろう」
敵サーヴァントの視線が刺さる。
「そう睨むなよ、君が"あの"オルフェウスならば、もう手はないのだろう?」
乾き艶を失った老人の手に納まった竪琴の弦に指を掛ける。
「この私に対する不遜な態度は特別に許そう……我が名はプブリウス・アエリウス・トラヤヌス・ハドリアヌス、、第14代ローマ皇帝である!!」
皇帝特権(偽)。サーヴァントであるゲティに与えられたスキル。生前ハドリアヌス帝の生まれ変わりと豪語した故に獲得した能は、自身の主張する才をゲティに与える。
そして奏でられる旋律は……第一回戦、第四試合前。私は与えられた部屋のベッドに仰向けでいた。その隣にはバーサーカーというらしい女性が寄り添うように腰掛けている。まだちゃんと真名は教えてもらってないけれど、その姿が様になっているあたり、恐らく英霊になる前はそれなりの身分の人だったのだろう。けれどーーーーー
「……ねえ、バーサーカー。」
「どうかしましたか、カノン?」
「その……さ。私の記憶って戻ると思う?」
私には記憶が無い。より正確に言うのなら、九重海音の生まれてから約18年間の記憶だけが無い。
一応、私はかつての九重海音の再現体らしいが、だとしても奇妙な話ではある。運営に報告してはみたが「こちらのデータ上では異常は見つかりませんでした。もしかしたら、何かのデータと勘違いなされたのでは?」と、冷たく返されてしまった。
それがついさっきの話。だからというわけではないけれど、私の胸の奥では一抹の不安がどうにも拭いきれないでいた。幸いなのは側にバーサーカーと名乗る女性がいた事。同性で尚且つ私より年上と思しき彼女の存在は僅かではあるけれど、私に安らぎを与えてくれる。
「運営側が『データ上に問題はない』と言い切られた以上、こちらに出来ることは何も無いと考えていいと思います。」
「うぅ、やっぱり、そうだよねぇ……。」
「ですが考え様によっては時間が経てば元に戻る可能性が高い、ということでもあります。ですので、一先ずは目の前の戦いに集中するべきかと。」
「戦いーーーー」
そう。サーヴァントとマスターが揃っている以上、覇を競い合うために戦うのは当然の流れと言える。でなければ一体何の為の再現体だというのか。
私は部屋に設置されているテレビモニターを見る。そこに映されているのは恐らく20代くらいの男性。名を、エルドレッド・ローゼンバーグ。彼のおおよその素性や経歴、それに加えてサーヴァントのクラスなど、全てテレビモニターに表示されている。
まず簡潔に彼の事を言い表すならば、「悲劇の後継者」といったところだろうか。そして肝心のサーヴァントはというと、騎乗兵、すなわちライダーのクラスであることは分かった。ライダーのクラスというのはおおよそ多くの宝具を保有し、高い騎乗スキルを持っているのが特徴だろう。バーサーカーの手の内を私は全く教えてもらっていないが、それは恐らく勝算があるからこそ。でも問題があるとすれば恐らくーーーー>>329
「真名が何なのか、ですね。カノン。」
「ええ、そうなのよね……。」
そう、サーヴァントの正体たる真名。大体は武具か名乗りなどから推察すべきだろうが、今回はクラスとサーヴァントの姿以外はてんで分からない。顔立ちもアジア圏のようで、アフリカのような気もするあたり、真名を絞り込むのは難しいだろう。ヒントがあるとすれば、それはライダーの服装。アラビア風というべきなのか、エスニック系というべきなのか、ともかく中東を思わせる服装であることは確かだ。となれば、真名の候補を中東圏に絞り込めばいい。ついでに言うなら、近代や"山の翁"も候補から除外。でもーーーーーーーーーー
「ここまで、かなあ。」
流石にこれ以上、推理するのは難しい。如何せんこれ以上の情報を得ようと思うと、本人に接触するほかない。
「バーサーカー、準備は出来てる?」
「ええ、いつでも。」
「……それじゃ、いこうか。」
部屋を出て、闘技場(アリーナ)へと足を向ける。
フィールドマップは荒野。あえて予想するのならウエスタン、よくあるアウトローの街がイメージしやすい。
「…………。」
「カノン?」
すー、はー、と深呼吸をして息を整える。最後にバーサーカーと向かい合って、
「ーーーーーーーーーー勝とう、バーサーカー。」
「……もちろんです、マスター。」
バーサーカーと共にアリーナへ足を踏み入れた。トーナメントは一旦ここまでです。九終のインタビューは頑張って今日中にあげます。
リロードしてなくて気付かなくてスミマセン、これで橘さんにパスします
ゲティは何かカッコイイこと喋ってるし「フェニックス・クラァァーイ!」とかもう凄いイイ…
決着が近付くと内容が短くなるのは仕方ないよね……よね?
あとランナーブーツ的にその場で足を止めて連続攻撃するのは機動力をころすから…と思うのでこんな闘い方をルイちゃんにさせてすまない…
あと炉剣で防御するって聞いたのであのセリフを使いたかったんですよそれとですね、皇帝特権偽なんでハープは不発だろうなって
真名解放も出来ないしね>>332
そうだった、この人皇帝自称してるんだった!すっかり忘れてました……。
演奏の成否と効果はどうします?竪琴は基本オルフェウスが弾かないと力は出ませんが、演奏系のスキルを取ったのであれば少しの悪戯はできそうです。こちらには最悪歌とかケルベロスがいますから。
竪琴の無い歌は大した力はありませんが、それでも神々に認められた物ですからね、精神を少し乱すくらいはできます。オルフェウスは短剣を一本持っていることにして斬りかかるか……
ルイのスタイルは全然大丈夫です。寧ろ炉剣はこういう豪快な使い方したかったですから。>>328
ビョーン…………
そんな、情けない響きだった。
「………………」
「………………」
無言の時間が過ぎる。
「…………いや、待て!これは、何かの間違いだ」
富豪の男は言い、もう一度試す。
ピューン…………
思わず気の抜けるような音だ。この竪琴が相手の精神を乱す事に長けているとすれば、ある意味では成功しているかも知れない。僕は溜息を吐き、彼へ言葉を投げる。
「だから言っただろう?君には無価値な代物だって」
「嘘だ!私は、皇帝だぞ!こんな竪琴一つ、易々と弾けるに決まっているだろう!」
先程まで纏っていた、抗いがたい雰囲気は何処へやら。そこに居るのは、ただ喚き散らすだけの老人だった。
「残念だったね。それとーーー」
瞬間、僕は懐に隠していた短剣を抜きはなち、老人に一撃を加える。悲鳴を上げて倒れこむ老人。僕は彼に、低く言い放つ。
「アルゴナウタイを侮るな。友の足元に及ばずとも、僕も彼の船の一員。最低限の戦い方くらい、心得ている」
「くぅっ……!」
「僕を軽んじたければ好きにしろ。だが、友を引き合いに出されてまで黙っているつもりは無い」
僕個人は大したことはないかも知れない。それは身にしみている。しかし僕が原因で、彼らが軽んじられるような事はあってはならない。彼らとの旅の記憶は、大切なモノを喪った僕に残された、数少ない宝物なのだから。
「こうなったら……『仕切り直し』だ!」>>338
「さて、こうなったら"彼"を頼ろうか」
(ーーー後ろから来る!)
『ランナー』モードの恩恵の一つ、野生の直感で銃士の攻撃を悟る。発動するかはまちまちだが、した時は大抵的中するのがこの恩恵だ。
(それなら……)
自己支配で姿勢を制御し、炉剣の推進力で強引に振り向く。姿勢制御は一歩間違えば転倒や脱臼の恐れがある。精密な脳内作業を一瞬で行い、どうにか安定した姿勢で剣を振り抜く。同時、放たれていた弾丸を叩き返す。
「なんと……」
驚愕の声を上げる銃士。
「呆けている暇はありませんわよ!」
すぐさま斬りかかり、再度の対決。今回は小刻みなステップで、踊る様な連撃を見舞う。しかし相手は、アクション映画さながらの身軽さで回避する。
そして、その攻防の中、わたくしは自身の疲労を自覚する。>>339
(攻めきれない……!)
開始早々の準備、身体強化、礼装の酷使……もう、あまり余裕は残っていなかった。
(この辺りが勝負所ですわね……)
最後に一振りを送り、わたくしは距離を取る。
「そろそろ終わりに致しましょう。盛大に盛り上げてあげますわ!」
そう宣言し、上着を脱ぎ捨てる。
「な、いきなり何をする!そういう趣味でもあるのか君は!」
「わたくしも好きでやっているわけではありませんわよ!」
服を脱ぎ捨てた事で、肌に伝わる感覚が変わる。そして、大気の流れ、とりわけその中の水分が、わたくしの力を従者達に届けていく。
「さあ、奏でましょう。『アンサンブル』‼︎」
弾かれたブライジラフ、小石や石壁、そしてクロワ……。彼らが僅かな意思を持ち、銃士へと攻撃を開始するーーー
〜〜そういや露の者であった…上着を脱ぎ捨てるとあるけど彼女どんな衣装格好なんです?
>>343
いやとくにはないですね。ギルvs士郎みたいな撃ち合いができればそれで>>340
石が、岩が、光る刃が、まるで意思を持った様に踊り出す。否、彼女の言からすればこれは歌い出したのだ。風切り音で奏でられた無機物による合唱が前後左右御構い無しにクリストファー・クライを襲う。
ガン=カタの本領発揮と言わんばかりに両の手の拳銃を縦横無尽に操りその1つ1つを迎撃していく。いくが
(叩き落としても戻ってくるのか!?)
次第に迎撃から回避へと動きの比重が変わっていく。空中リロードするために投げたマガジンが飛来する礫による軌道を変えられ再装填を阻まれる。迫る壁が退路を塞ぐ。鳥が人の無様を嗤っている。
(まさか女1人にここまで追い込まれるとは思わなかったさ。だが、まだ負けた訳じゃあ……)
空中での再装填を諦め一丁は腰のホルスターに戻し、空いた手ずからマガジンを挿れ直す。
(そう言えば、昔こんな……そう、正に鉄のような女と闘ったことがあったような……)
不意に湧いた思考を振り払い眼前の少女に向けて駆け出す。岩石はある程度の大きさを失うと操作出来なくなるらしいが問題はライトセイバ○だ。上物の魔術礼装なのだろう、もう三度は弾いているのに原型を留めたまま帰ってくる。
(追ってくるならば来るがいい。この技の致命的な欠陥に、そして最大の死角に、、俺はもう気付いている……!!)
飛び込む先には肌を露わにした少女が居る。サングラス越しに視線と視線が絡み合う。もう何度目か、高速で迫る彼女の携えた大剣の切っ先に銃弾を叩き込む。支点から最も離れた位置に加わった衝撃に彼女は———
M1911…残弾2発、残マガジン3ヶこれで炉剣を落とせたらいいかなぁ、って
でもこうやって互いの出来る範囲で潰しあって動かすのってチェスみたいな感じでワクワクしますね! クリス優位に書き過ぎ? 人生の喜びを捨てて厨二に走った27歳児の戦闘スキルが極まってるということでここは…ちなみに当事者達でない私ですが私の考えた炉剣がここまで活躍するとテンション上がります。
>>345
はて、死角……。魔力と弾の消費が激しいのしか浮かばない……。怖いなぁ、何を思いついたんですか。
>>346
楽しいですよね、こうやって攻防するの。こういうせめぎ合いが好きなので、キャラクターには、威力を犠牲にしても多彩さや汎用性に長けた能力を持たせることが多かったり。
>>350
そっか、プレイしてないんですよね。私はブーストハンマーの爆発力が頭の中にあったから「これ躱すクラス凄いなぁ!」ってちょっと思ってました。別に面白いのでありなんですけど。もともと炉剣は殺意高いけどクラスならなんとかするでしょ!って気持ちもあったので。
そして私は最悪な事を発見しました。
>>339
ここのオルフェウス側、ちょっと抜けてる文が……。
言って、倒れ込んだ男はこちらに砂を投げつける。酷く古典的だが、この時ばかりは有効だった。視界を遮られ、老人を見失ってしまう。竪琴は持ち去られてしまったようだ。
「さて、こうなったら"彼"を頼ろうか」
と、こう繋がる予定でした。>>351
単純に懐ですねー 「これで○○は使えまい!!」(ノースリーブグラサン並感
えっ、負けフラグなセリフですって?キャメロンの提案に対する反応、投下します。
>>353
洲甘柳華はソファから前に乗り出すと、物憂げに書面を眺めている。
古びた羊皮紙にはキャメロンの魔力が込められており、書面に洲甘の魔術刻印と正式な署名を刻む事で作動する仕組みだ。
死後の魂すら縛り付ける強力な呪術契約具を、この男は軽々と差し出してきた。
この呪術具の恐ろしさを知らぬ訳ではなかろうに、そう考えると彼女の中で疑念は尽きない。
書面に書き記された内容を一言一句熟読した。解釈の違いによる抜け道が無いか、また契約自体が正当でかつ公平であるかを確認するためだ。
そうして暫し、熟考した後に、
柳華は呪術具に己の名前と、正式に書面の内容を認める為に魔術刻印に縛りを刻む。
「これで構わないな」
羊皮紙をぴらりとキャメロンに差し出すと、彼は契約書にサインが書かれている事を確認した後に小さく頷く。>>354
「ああ、これで完了した。
今此処に契約は為された、今回の戦いにおいて私のサーヴァントは君を傷付けない───そして君のサーヴァントも同様だ」
彼女よりも頭二つほど大きい男は、その恵まれた体躯を前に乗り出して、
「君の英断に感謝する、どうやら『戦乙女の末裔』という名は伊達ではなかったらしい」
「勘違いするな、私の目的と偶々合致しただけに過ぎない。
……そもそも最初からマスターを狙うつもりなど無かったのだから、この契約は私にとっては無意味に等しい」
そう憮然に返答する柳華の姿を、「えっ、マジで?」と言わんばかりの顔で見つめる男が一人。
柳華の丁度真後ろで直立するアーチャー、その人である。
「そう言ってくれるな。日本の諺でも石橋を何とやら、と言うだろう?」
キャメロンは徐ろに右手を差し出す。
どうやら握手の意図を以っての行為に、洲甘柳華は無言でそれに応じる。
こうして正々堂々、真剣勝負の下地は完成した。
英霊同士、或いはマスター同士の一騎打ちとなる事はこの瞬間に確定したのだ。
キャメロンは巌の様な貌に微かに笑みの色を見せて、
「悔いの無い決闘をしよう」>>355
場所は変わり、通路にて。
洲甘柳華とアーチャーは相手との契約を終え、再度施設を見て回る為に闊歩している。
アーチャーは柳華の数歩後を歩きながら、ぶつくさと不満を垂れていた。
どうやら先程の契約締結が不服であったらしい。
「お嬢も解ってんでしょうに。奴さんに勝つにはあの契約は絶対にナシだったって!
俺の数少ない利点を鑑みれば、マスター狙いの選択肢は捨てるべきじゃなかった」
百発百中。
それがアーチャーである養由基の、唯一にして一番の強みだ。
宝具を持たずステータスも決して高くない彼が格上を出し抜くには、格上と真正面から戦うよりも、比較的非力で脆弱なマスターを狙う方が断然効率的なのである。
このトーナメントにおいてマスターを狙ってはいけない決まりは無い。
故に彼自身は如何に敵のマスターを射抜くかが勝負の分かれ目だと。
そう、思っていたのだ。
然し彼のマスターは其れを善しとはしなかった。>>356
「契約したものは仕方がないっ!」
堂々とそう言ってのける自身のマスターには、危機感というものが無いのだろうか。
と、一瞬疑ってしまいたくなる。
しかし彼は理解している。
────自分のマスターは考えもなしに安易に行動するような輩ではない、という事を。
「───悪く思わないでくれアーチャー、此れは自分の願望の為でもあるんだ」
「そういや、お嬢の願いって聞いてなかったな。
……全く想像すらつかねぇが、お婿さん探しとか?」
一瞬、時が止まったかのような沈黙が流れる。
主観的な感覚では数十秒にも感じられた刹那。その時間の本当の長さは彼らの影のみぞ知る。
柳華は虚をつかれたような顔でアーチャーを見つめて、
「……すごいな、まさか当てられるとは。
その通りだ、私は、私の配偶者に相応しい男を選定する為に、此処に来たんだ」>>357
本日二度目の「えっ、マジで?」の表情。
冗談で語った一言が的を射るとは、流石は百発百中といったところか。
そんな似合わないジョークを柳華は考えながら、
「嘘なんか吐くものか。私は、私の最強の配偶者を引き連れた上で、正統な洲甘家の後継者を産む。
それが代々英傑の血を取り入れて来た洲甘家の通過儀礼でもあり、私に課せられた試練だ。
……その為にも相手の実力を測れぬまま片を付ける訳にはいかないんだよ」
つまりは、こう言いたいのだ。
相対する敵が異性であれば、その度に実力を測り、強き男か否かを選定したい。
と、なると。
アーチャーの弓術は過剰な戦力と言えるだろう。
何せ一発放てば事が終わってしまうのだから。そのままでは敵の実力の測りようが無い。
「……ってぇと、お嬢自身があのデカブツとカチ合うのも承知済みって事かい。
言っちゃあなんだがお嬢、体格差ってのは戦闘じゃ圧倒的な差になる。
あんなのと真っ向からぶつかり合うなんざ正気の沙汰とは思えねぇな」
「無論だ、だが忘れてはないか?私は戦乙女の末裔にして、魔術師。
……知恵者は起点と工夫で戦闘力の差を容易に覆す。女だてらに戦術には一家言ありだ」
そういうと柳華は不敵に微笑んでみせた。
「心配するな。お前のマスターは見た目以上に強いぞ?」終わりです
一回戦第四試合前、
データベースにて二人の男の影があった。
一人は赤いスーツを着た紳士然した若い男、もう一人は鎧兜で武装した偉丈夫であった。
彼らはエルドレッド・ローゼンバーグとライダーであり、対戦相手の真名を探っていたのだ!
((これも外れか…一体何処の英霊なのか?))
((我が主よ、俺から提案がある。あのバーサーカーは史実では男として語られていたが、実は女だったという可能性がある存在なのでは?))
可能性は十分あり得る。何せ冬木の聖杯戦争のセイバー、アーサー・ペンドラゴンは女だったと聞いている。対戦相手のバーサーカーもその部類だろうか?
そうであれば真名がなかなか見つからない事も説明付く。
((鎧の種類を見るに円卓の騎士みたいだな…))
((おい、我が主よ此奴じゃないか?!))
((ランスロット卿…鎧の形状も瓜二つ、なおかつバーサーカーの適性がある…))
((ビンゴだな!我が主。))
((いや、バーサーカーは剣を2本携えている。仮に一つがアロンダイドとしても後一つがよくわからない。))
((コイツに形状がよく似ているな。だが、戦ってみねえとわからねえ。))
ライダーは自身の剣をさすりながら言った>>360
第四試合の開始10分前を告げる放送が流れた。
「ライダーそろそろ時間だ、行こう。」
((ライダー、出来ればラクシュは温存して欲しい。相手に此方の真名を看破されるのを防ぎたい。))
((任せろ、相手が即宝具をぶっ放すなら此方も宝具で応じ、ぶっ放してこないなら矢を数発もって応じるつもりだ。))
闘技場(アリーナ)に足を運びながら作戦を練った。
フィールドマップは荒野、西部劇の舞台といったほうが分かりやすいだろう。
「ライダー、全力を尽くすぞ。」
「我が武勇をもって我が主に勝利を捧げよう。」
やがて始まる戦場に入っていった
装備
「偽・光輝剣(クラウソラウス)」
多変形バッグパック型魔力炉心『フォトン』終わりです。
クラウソラウスとフォトンの詳細はWikiに乗せます>>363
先にお願いします。振り始めた剣の軌道は、放たれた弾丸によって大きく乱れた。銃士は大剣を掻い潜るような滑り込みで懐に入り、自慢気な笑みを浮かべながら発砲する。咄嗟の判断でブーツと剣の推進力の加速を用い、体を回転させて急所を外す。しかし凶弾は脇腹を貫き、鮮血を奔らせた。
足を狙った滑り込みから逃れ、銃士とわたくしはすれ違う。間髪入れず、次の行動へ。全く同じタイミングで振り向き、刹那だけ視線が交差する。わたくしは片目だけ見えるように大剣を構え、相手は片膝立ちの銃撃姿勢を取った。しかし、銃士の眼前には銃口を向けたブライジラフが浮遊している。
「ーーーまさか君がここまでやるとは予想外だ」
「淑女を甘く見ないでくださいな。ダンスの最中に足を踏まれても、即座に立て直すのは当然ですもの」
精一杯の強がり。痛いし辛いし、泣きたい気持ちも、少しある。けれど、目の前の相手にそんな事は気取らせない。
「さて、今度はこちらが。ーーーチェックですわ、ムッシュ」
「なんだ、なんだアレはぁー!」
走る老紳士。それを追うのは、老人の倍はありそうな巨躯と、三つの首を持つ黒犬。背に乗る青年は謳う。
「僕の友人さ!そしてハデスからの賜り物でもある。彼の神には感謝してもし足りない」
追うものと追われるものは徐々に距離を縮める。しかし、彼らのマスターの元へも、また近い。
〜〜>>365
お待たせです。短いですが。風邪多いっすねぇ……かく言う私も夏風邪拗らせましたが。
>>365
このっ! この!この私が! こんな筈では!!
魔獣の爪が牙が、顎門が迫る。逃げ切れない。咄嗟に振り返り竪琴を放り投げる。
持てる魔力を限界まで込めた竪琴はその内奥から光を発し———
「ッ!? 避けるんだ!!」
後ろで何が起こったか、確認する時間も惜しい。壊れた幻想と呼ばれる宝具を使い捨てにする禁が巻き起こした爆発がどれ程の効果を示したのか。今は少しでも距離を稼がなければ……
ドンッ! とも バシッ! とも言い難い様な音が右半身に叩きつけられ老体が無惨に吹き飛ばされる。霊核の損傷は免れたが、どうやら足をやられたらしい。もう一歩も動くことは出来ない。
霞む視界の先にマスターがいる。いつのまにか、こんな所まで来てしまっていたのか……
こんな筈じゃあ……なかったのに……>>371
「まだだぞマドモアゼル……ッ!」
立ち上がり足を前に出す。飛び込んでくる猛禽に発砲、その隙を狙う光弾に無理矢理体勢を崩し回避を試みるが右の肩口を貫かれ、その衝撃で拳銃を取り落としてしまうが——支配魔術起動、右腕強制動作開始。痛覚遅延同時展開——駆け出す足は止まらない。
大剣による突きが迫る。だが遅い、既に大剣の間合いではない。
肉薄し無理矢理そのか細い腕を裏拳で弾く。まるでそれはダンスを踊る男女のように
「君の覚悟は、十分見せて貰った」
彼女の口が動く、動くが……極度の緊張か疲労の蓄積か、耳鳴りがして言葉として拾えない。
袖口から飛び出す小型拳銃が両の手の甲を貫く。
崩れ落ちる少女に脱いだコートを被せ背を向ける。
そこには脚を失い無惨な姿になった己のサーヴァントと魔獣の背に乗った青年の姿があった。
「あぁ………俺の名はクリストファー・D・クライ。クリストファー・ドント・クライ……最後まで、涙は見せない男だ!!」
サングラスを投げ捨て右の人差し指で青年に狙いを付ける。手の甲に刻まれた令呪が発光する。指先に魔力が集中する。魔獣が迫る。自然と、笑みが溢れていた。噛まれたら即死って事なんでゲティ(A)とオルフェウス(E)の幸運差からこんな感じの時間稼ぎにしました
ルイちゃんのふらつく辺りからこんな感じでオナシャス!
ゾンビィがフェニックスに勝てる訳ないやろがい!(意訳)とかしたかったけど挟む余地が見出せなかったのです
ゲティの宝具でケルベロスやそれこそ敵サーヴァントを買収できないのは孫の身代金すら払おうとしなかった経緯から生き物には無効判定が付く裏設定があったんです
だからルイちゃんとマッチの時点で負け確だったのだな!ハハッ!>>376
やりたいことも言いたいことも今思いつく限りはやりきった感あるのでお任せしますー最終的な判断はレアさんだけど、自陣営の意志で破壊されない限り、戦闘後の宝具修復は可能で良いんじゃないかな。
剣が迫ってくる
正直油断していた。相手は狂戦士だろう、戦い慣れしていないだろうと鷹を括り、正面から斬り伏せるつもりだった。
セイバー「くぅっ…」
しかし実際は違った。彼女は確かに考えて剣を振るっている。現に彼女の剣は私ではなく宝塔を狙って突かれ、宝塔を弾き飛ばした。これでは第二宝具は使えない。
セイバー「どうやら貴女の実力を見誤っていたようです」
バーサーカー「甘く……見ないで……」
空いた左手も使って槍を両手で構え、警戒レベルを大きく引き上げる。あれは楽に勝てる敵などではない。強く地面を踏み締め跳躍し、一気に距離を詰める。初撃はかわされるが今更その程度では驚かない。
二撃目、三、四と連続で槍を振るう。防いだり避けたりとやはりただのバーサーカーとは思えない身のこなしだ。
セイバー「なかなか、やりますねっ!」
バーサーカー「甘く…見ないでと……言ってるの……!」
剣を振って反撃してくる。その際にごうっと炎が舞い上がる。恐らく魔力放出だろう。
宝具の刀剣八本の内の六本を背面で展開し、残りの二本は少し離れた上空に展開する。目の前で展開した六本の刀に目を引かせての不意打ちである。
セイバー「ええ、手心を加えるつもりはありません。確実に…獲りにいきます」
二本の刀が振り下ろされる。両肩から胸にかけて左右からの袈裟斬りを狙ったところで再び魔力放出が巻き起こり、刀を消し飛ばされる。
セイバー「何度も……言わせない…で…」
炎を自在に操る姿から確信する。このバーサーカーは、炎の巨人スルトだ。
バーサーカー「今度は…こっちから!」サーヴァント達が激しい攻防を繰り広げる地点から数百メートル離れた地点にて
エルシュタイン「見つけましたよ、ミス・マグダレーナ」
マグダレーナ「やっぱり来たわね…」大変長らくお待たせしました。とりあえずここまで書きました。
私としてはサーヴァント側はこのまま適度な攻防をしてるということにしてその間にマスター同士の問答&バトルを描写していきたいのですがよろしいでしょうか?>>388
了解です。「ふんふふんふ〜ん」
黒い美青年がソファに横たわってテーブルの上のゲーム盤を眺めている。その上にはチェスの駒のような物が6個、無造作に並んでいる。
「さぁて、聖杯戦争の開催だ。どうなるかな〜。破壊か、創造か。それとも別のナニカか。まぁ根源やらなんやらは俺的にはどうでもいいんだけど。大切なのは大聖杯が直ったって事。父さん、母さん。やっとだ…!これでちょっとは、許してくれるかな……?」
するといきなり扉が空き、全身に刺青をした少年が入って来た。ニヤニヤした笑顔を浮かべている。
「よぉう、マスター。帰ったぜ。大聖杯の経過は順調だ。後はこの戦争で完全修復してるか確認すりゃあ良い」
「そうだね。楽しみだよ。あ、ごめんバーサーカー。電話だ」
彼は盤の上の駒を弄びつつスマホを手に取り、通話を始める。
「やぁ蒼。どうしたの?なに?『ごるごるさん』とか言うのが人を食いコロしてる?あー、それ教授だわ。え?なんでそんなヤツをって、タイミング悪かったんだよ!アリウムちゃんは危篤状態…もう治ったらしいけど。だったし、橙子さん始め他の人も忙しいとかで受けてくれないし。ちゃんと隠蔽やらには協力するから!……父さんと母さんの悲願なんだ、頼む」
彼を知る者からしたら意外な事に、頭を下げ始める。
「それにホラ!開催する時というか、最初にリスクの説明はしたでしょ!?嘘です、ごめんなさい」
………台無しである。彼はふざけないと死ぬ病気か何かなのであろうか?
「うん、ありがとう。じゃあ、また後で。…よし、通話終わり!何かあれば聞くよ?バーサーカー」
「特にねぇよ。お前にも人並みの情があったんだな、ってビックリしてるだけだ。ヒトデナシだとばかり思ってたからな」
「はっはー。余計なお世話です〜」とりあえずクッチーのプロローグです。短いですが。なんか質問とかあれば対応しますので。
初回のフィールドは荒野、幸いなことに相手陣営を目視で確認できる距離だ。
((我が主よ、バーサーカーは宝具を放ってこないようだ。プラン道理にいくか!?))
((ライダーに任せる。))
そう聞くと、ライダーは強弓を手に取り、矢を7本つかみ、十分に引き絞った。
「七つの冒険を制し威風ここにあり、霊鳥よ、我に力を…」
ライダーが引き絞る弓に蒼白き魔力が充填された。その矢をバーサーカー目掛けて放った。
「之ぞ我が強敵(とも)を討ち取りし弓技なり!
英雄射.殺.し七矢の怒濤(ハフト・ハーン・スィームルグ)」
ライダーが発射した七矢はレーザー砲となり、砂埃をまきおこし、バーサーカー目掛けて飛んでいった。弓矢とはレーザー砲のこと!みんな知ってるね!(白目)
「っーーーーー!」
フィールドに着くやいなや相手が宝具と思われる何かを撃ってきた。視認できる限りで、その数は7つ。それに加えて驚くべきことにその7つ全てが何の変哲もないただの矢なのだ。
「(バーサーカー、あれ避けきれる!?)」
「(今の段階では、全て避けきるのは厳しいと思います。それに、あれが追尾してくる可能性を考慮すれば、少なからずダメージは覚悟すべきかと。)」
敏捷Aのバーサーカーをして「今の段階では全て避けきるのは不可能」だという。だけど、それはつまり。
「(私が何か防御系の魔術を使えば避けきれる?)」
「(ええ、5秒ほど時間を稼いでいただければ。その隙に、一度撤退します。)」
「(了解、やってみる……!)」
右腕に刻まれた魔術刻印が疼く。この場で即座に使えて、なおかつ時間が稼げるものはーーーーー
「『風よ、建て(守護の大地よ)!土よ、吹き荒べ(拒絶の嵐よ)!!』」
あと100メートルほどに矢が近づいてきたタイミング、ギリギリのところで嵐と大地を利用した壁を作り上げる。
「っ〜〜〜!」
右腕が軋む。それほどまでに、あの一撃は大きいということでもある。
「(離脱します。マスター、そのまま動かないでーーーーー!)」
「(お願い、バーサーカー!)」
バーサーカーが私を抱き上げると、そのまま後ろに離脱していく。けれど。
「やはり、追尾型の宝具ーーーーー!」
あの壁を破り、矢は依然として私達を追いかけてくる。あれをどうにかしなければ、私達はたったあれだけで敗退することになる。
「マスター、すみませんーーーーー!!」
「え!?」>>394
突然、バーサーカーが私を逃げている方向に向かって投げる。そして左の腰に下げた剣を抜きーーーーー
「私に力を貸してください、ーーーーーー卿。」
蒼白い輝きが、この荒野に満ちる。それは間違いなくバーサーカーの宝具に他ならず。
「ーーーーーーーーーー受けよ、『慟哭なる湖光(アロンダイト・ディスペアー)!!』」
その輝きが、私達を追尾していた矢を打ち消した。でも、思い出せ。私は空中に放り出されたのだから……
「や、ちょ!?落ちーーーーー!?」
人間が宙を浮けるはずもなく、私はそのまま自由落下して……
「ご無事ですか、マスター?」
私に追いついたバーサーカーにお姫様抱っこをされた。
「え、ええ……なんとかね……。」
「このまま一度、街の方まで離脱します。よろしいですね?」
「分かったわ、バーサーカー。」
幸いにも周囲には砂嵐が舞っている。いくら相手が優秀な魔術師と言えど、自然には勝てないだろう。……風除けの加護とか持っていたら、話は別だろうけど。>>392に対してのこちらの行動です。まさか初手宝具とは思わなかった。
前方に砂嵐が吹き荒れている。
((逃げられたか…))
((追いかけるには砂嵐を何とかしなければな…))
((俺に賭けがある。))
((ライダー、当てがあるのか?!))
((砂嵐を突破する!俺とラクシュの人馬一体なら難なくいくぞ!))
((おい待て!))
冗談じゃない。魔術によって巻き起こされたとはいえ、砂嵐だ。ライダーは難なく突破しそうだが、私の体が持ちそうにない。おまけにラクシュは出来る限り使わないようにしたはずた。
((ラクシュは使わない約束だっただろう。))
((背に腹は代えられん!街に逃げ込まれたらどうする!))
そう言うとライダーは愛馬を呼び出した。
((あちゃー…これは言っても無駄だな…))
呼び出されたラクシュを見ながらエルドレッドは溜め息混じりに言った。
((我が主よ、俺にしっかり摑まってくれ。今から飛ばすぞ!))
「アオス・シよ、我らに加護を」
風除けの加護をかけ砂嵐に突っ込んだ。「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
薄暗い地下室の冷たい空気を感じながら、敷かれた魔法陣をなぞるように魔力を流していく。
久しぶりの、全身の魔術回路が無理やり押し広げられていく感覚。
全身を巡る血潮が熱く感じるのは、きっと魔力を循環させているせいだけではないだろう。
よもや、ワシのなかにここまでの熱量が未だ残っていようとはのう。
怒り、そして渇望。
若かりし頃、なりふり構わず栄光のみを追い求めていたあの頃は当たり前に持っていたもの。自分の地位を頂にまで押し上げた原動力。
とっくに枯れ果てたと思っていたそれらが沸き上がってくる事実に、ロバート・ボラゾンは驚いた。
しかし、それは非常に喜ばしい誤算であった。
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
先の大会では、散々だった。
大会参加者の一人――何とも生意気な小僧だと当初から思っていた――によって、最序盤であっさりと脱落するという醜態を演じさせられた。さらには、今までの行いを白日の下にさらされ、ワシは持ち得るすべての富、すべての権力を失うこととなった。
今、ワシはその小僧、朽崎遥の手によって、再び命を懸けた戦いの舞台へ上がろうとしている。
屈辱的ではあるが、ここは耐えしのぐところだ。ロバートは自分にそっと言い聞かせた。ワシを熱くたぎらせているこれは、復讐の炎だ。けして消えることのない、天まで届く劫火だ。ワシの復讐ののろしであり――煙はいずれ雲となり、憎き小僧に裁きの雷を落とすだろう。
見ておれ、サーヴァントを召喚した段階で、貴様とは手切れだわい。ワシをナめたな。このワシを、思ったように操れると思うなよ!
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
まばゆい輝きにあたりが包まれた。同時に、ロバートは最高の引きを確信する。
さあ、尻尾を掴んで引きずりだしたぞ!半信半疑だった。存在自体がサーヴァントの範疇を超えている。だが、かの者は実在したのだ!>>400
触媒となるのは銀の銃弾。普通じゃない。材料となるのは鉛。教会の壊れた窓ガラス(どこにでもあるさ!)。水銀をすこし。すでに命中したことのある銃弾三発。ブッポウソウの右目玉。大ヤマネコの左目玉!
光が渦を描き、霧散する。
魔法陣の中央には、先ほどまではいなかった、異形の青年が佇んでいた。
妖艶な雰囲気。山羊の角。片青目。誰であっても、彼が只者ではないことを認識しただろう。
伝承において多くの狩人を惑わし、弄び、滅ぼしてきた死の天使。彼の名は――
こうして、悪魔ザミエルが、地上へ降臨した。
「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じた。・・・・・・ッフ。アッハッハッハッハ!なるほどね。オレが呼ばれるなんて妙なことがあったもんだと思ったが、あんたみたいなロクデナシなら納得だ。髑髏が残っていれば、もっとシャレは効いていたんだけれども。――あんたがオレのマスターだな?」>>401
「無論だ」
いつの間にかロバートの姿はなく、ザミエルの前には血の池が広がっていた。
そして、その中央。
唯一残されたロバートだったものの名残である令呪の刻まれた右腕を、自分の腕に同化させながら。フォアブロ・ロワインは何の感慨もなく、ただ肯定した。
Milch des Mondes fiel aufs Kraut!
Uhui! Uhui!
Spinnweb' ist mit Blut betaut!
Uhui! Uhui!
Eh' noch wieder Abend graut -
Uhui! Uhui!
Ist sie tot, die zarte Braut!
Uhui! Uhui!
Eh' noch wieder sinkt die Nacht,
Ist das Opfer dargebracht!
Uhui! Uhui! Uhui!>>404
そういうことなら……
ザミエルくんも、厳密にはザミエルではないので、今回は偽の触媒をつかまされたのかもしれませんね。そもそも本物の悪魔ザミエルと呼べるモノは存在したのか
そんなモノ、彼の後悔の中にしか存在しないのではないでしょうか
悪魔の真実はすでに藪の中です
仮に“本物の”触媒があるとしても来るのは高確率で彼かも
あるいは真名「魔弾の射手」として喚ばれるのか>>402
月の乳が草葉の上に降りかかる!
ウフィー!ウフィー!
蜘蛛の巣には血の雫がやどる!
ウフィー!ウフィー!
明日の日暮れが迫りくる前に -
ウフィー!ウフィー!
たおやかな花嫁は死体になるのさ!
ウフィー!ウフィー!
夜の帳が再び降りる前に -
いけにえは、捧げられるのさ!
ウフィー!ウフィー!ウフィー!深夜の時間に響く弦楽器の音。
こんな時間に演奏をするなど非常識にもほどがある行為であるが問題はない。
魔術師の家はいわば自身の工房のようなもの。自身の研究などが外部に漏れないように外との情報の遮断は特に厳重に行われており音漏れの心配もない。魔術師の家系にあってその心配がないことは数少ない利点であると演奏をしている魔術師、東雲玲亜は考えていた。
聖杯戦争に参加を決めた時のことを思い返すと今でも苛立ちを覚える。
その苛立ちの矛先は当然自身の管理地に聖杯を持ち込みこのようなおぞましい戦いを起こそうとしている魔術師や教会に向けられているがそれだけではない。
それを未然に防ぐことができなかった自分の無力さとそして今なおも魔術師により出ていると思われる怪異を指をくわえてみていることしかできない現状、さらにいえばサーヴァントの召喚に対してすらも怯えながらなかなか踏み込むことができない自分自身の情けなさに対しても向いていた。
演奏をすることは玲亜にとっての精神統一の意味を持っていた。指の動きに意識を集中しただ今この時に正しい音を出すことだけを考えることで雑念を振り払うことができるからである。しかし、いまこの場においての演奏は精神統一が目的ではない。召喚の詠唱の暗記のために行っていた。音に合わせて詠唱を自身の歌に軽く変化させて詠うことでその内容を暗記しているのである。なぜこのようなことをと思われるがこと彼女の中では詠唱を失敗してはならないという意識から入念な練習が必要と考えたからであろう。詠唱の暗記はほぼ終えた彼女は今日は召喚陣の中に立ち召喚のために必要な魔力の操作を軽く行いつつ練習をしていた。
「詠唱をしつつ魔力の注入を行う…どちらもおろそかにしてはいけないうえに何が起こるか分からない召喚の儀式。もう大丈夫だとは思うけど…やっぱりまだ練習したほうがいいよね?でも早くしないとダメだし…。」
もっともらしく理由をつけているがただの先延ばしであることは彼女自身もわかってはいたがそれでも決意を決めることはできていなかった。
「よし…じゃあもう一回」
詠唱を始める。演奏と共に歌唱をはじめ魔力の操作を始める。自身の魔力回路を開き魔力を注ぐことをしつつ間違いのないように詠唱をする。
…だが彼女は気づいていなかった。練習を続けるうちに少しずつ注ぐ魔力が増えてきているということを
「……えっ?召喚陣が光って…うぅ!?」
召喚陣が光ると同時に自身の魔力が急激に抜けていくことを感じる。
(これはもしかして召喚が始まってしまったんじゃ!)
突然の事態に焦るがもはや途中でやめることなどできない、ならば!
(や…やってやるわよこのまま!)>>410
全身に走る痛みに耐えつつ詠唱を続ける。何度も意識が飛びそうになるが耐え抜きそして最後の1節を詠唱し終える!
「ハァ…ハァ…耐え抜けた?」
自身の体の魔力の激動が収まるのを感じ自身の命がまだ繋がっていることを確認し安堵する。すると召喚陣は一際大きな光を放つと―――――――――
そのままなにも起きず光は消えた。
「…………はい?」
間の抜けた声と共に現状を冷静に振り返る。
「し…失敗!どうして確かにさっき魔力も!」
焦って召喚陣から出たその時
ドオオオーーン!!!
巨大な光の柱が召喚陣に上がる
「キャアアアア!!!」
驚きの悲鳴を上げて倒れる玲亜。そしてその場には悲鳴を上げた魔術師以外にも新たな人物が登場していた。
「召喚早々随分と騒々しい奴だ。しかも雑すぎる呼び方をしてくれるものだ。この不敬はどう弁解するつもりだ小娘よ?」>>411
光の柱が収まるとそこには一人の大柄な男が立っている。燃えるような赤髪に猛獣を思わせるような鋭い瞳。そしてその手には血染めの槍を持っていた。
「あ…あなたはいったい?」
「やれやれ、まあいい。では問わせてもらおうか小娘。お前が俺をこんな雑な形で呼んだ魔術師か?」
「そ…そうだけど雑ってどういうこと?」
「雑であろう?詠唱を歌唱するなぞ聞いたことがない。まあそれぐらいはかまわんが問題はほかにある。まず魔力の献上が足りん。なぜ召喚の時にもっと献上せぬ?随分と魔力が消耗した状態だぞ。」
「それは練習のつもりだったし…」
「そして一番の問題はお前召喚陣の中に居たな?」
「え?そうだけど魔法陣の中に居るのが普通なんじゃ?古典の本とかではそう書いてあったわよ?」
「英霊の召喚においては召喚陣の外にいるものだこのたわけ。お前が召喚陣にいるせいで召喚の際にうまく現界できておらぬわ。随分と弱体化してしまったぞこの俺がこんな貧弱な状態なぞ忌々しい。」
「嘘でしょ!そんなせっかく三騎士を呼べたのに弱体化して呼ぶなんてアドバンテージがないようなものじゃない…」
ショックを受ける玲亜。最悪な状況になったと思っている現状であったがまだその下が存在していることをすぐに知らされる。
「なにが三騎士クラスだ。この俺を狂戦士のクラスで呼んだのはお前であろう。」
「…え?…はい?狂戦士?なんで?」
「しかも狂戦士として呼んだ時のとしてのステータス上昇も雑な召喚のせいで全く機能してないがな。」
その言葉を聞いてわなわなと震える玲亜。そして
「どうしてこうなるのよぉぉぉぉ!!!!」
絶望の絶叫が家の中に夜中に木霊した。
だがご安心を、近所には全く聞こえなくて防音対策はばっちりである。という感じで伏神の狂召喚はこんなです。
伏神リドリー陣営の動きです
果たしてこれが伏線になるのか?>>416
リドリー・フォーサイトはギリシャ系イギリス人移民系列のアメリカ人である。そんな彼は今非常に悩んでいた
「伏亀蕎麦にするかなぁ………この上に乗った刺身うまそうだし………いやいやこっちの神立饂飩もうまそうだ……………でも名前がなー……………」
食券機の前で伏神二大名物麺のどちらかを選択するのに迷っていた。リドリーは一度決めたら絶対に曲げない。しかし進むべき道そのものに迷っているのであれば定まらないのである
「何でもいいがよ、『ク.ソマスター』早くしてくんねーかね?外にいる従業員の目つきが恐ろしい事になってるじゃん」
リドリーの事を貶しながら声をかける男が一人。『いすぱにあ』と書かれた赤と黄色のTシャツとジーンズを着る彼はエル・シッド。リドリーのサーヴァントである。召喚から一週間。彼はこの男に慣れ始めていた>>417
「いいかい、ロドリーゴ?これは重要な選択だ。自分の腹を完全に満足させる為にはどっちが本当に食べたいのか見極めなければならないんだよ。麺類を食べたい。だがその心は蕎麦か?饂飩か?本当に欲しているのはどっちか?僕は悩むのさ」
「悩むのは人の勝手。だが、食券機の前で1時間も悩むのは失礼通り越して営業妨害だぜ?現に俺はまだメニューも見れてない。どっちがいいか迷ってないでもう両方頼めよク.ソマスター」
マスターと呼ぶがその敬意のなさ、そして語尾の冷たさがリドリーにまとわりつく
「両方か……………悪いがそれは無理だ!」
「その心は?」
「両方食べられない!!」
「声のデカさと胃袋の大きさは比例しないってか?面白い事いうなク.ソマスター」
「逆に何故君は僕に二つも食べさせたいんだい?私は一つしか食べたく無いんだよ」
「提案だよあくまでな。両方頼めば悩みも吹っ切れるかもしれないぜ」
「味を二つ混ぜたく無いのさ!」
「その気持ちは少し受け取っておくとしよう。実際問題早く決めてくんねーかな?辛旨クワトロカツ丼食べたいんだよこっちは」
「まあまてあと五分」
「それいうの八度目だク.ソマスター」
このような押し問答によりこのコンビは無意味な時間を過ごしていた。この空間に入ってこれるものは誰もおらず、最早こ気味のいい男とかし周囲に溶け込んでいく……………
リドリー・フォーサイトとエル・シッド。この凸凹コンビはこの伏神の地でどの様な暴風を撒き散らして行くのだろうか?それは誰にも予想がつかない。ただ一つ今言えることはこの二人、現在進行形で営業妨害しているということだ>>418
終わりです伏神のイコマ陣営投下。
……といってもギャグ寄りです。>>420
伏神市 市街地
大柄な男子高校生錫久里亥狛は悲しみに暮れていた。
人通りの多い市街地、スクランブル交差点にて落ち込みながら斜向かいの方へと歩く彼はさながら海坊主のよう。
力無い脚はとぼとぼと、向かう先は聖杯戦争用に誂えた自身の居住地だ。
深い溜息からその落胆の具合も相当のものらしい。
「……楽しみにしてたのになあ」
と、誰に聞かれるつもりのない独り言を呟く。
つい三十数分前、彼は逸る気持ちを抑えて饂飩屋の方へと駆けていた。目は期待に輝かせ、胃は既にウドンを食べる為の準備を済ませている。
ぐるぐると空腹に警鐘を鳴らす腹の虫、もう頭の中はウドンを食べる事でいっぱいだ。
予てより伏神市で有名なうどんは耳にしていた。聖杯戦争に参戦する為にこの地を訪れた際に目にした伏神饂飩のCMで、その興味は日に日に増していった。
そして彼の中ではある一つの決め事が成されていた。
────あのウドンを食べるのは、サーヴァントを呼び出す直前にしよう。>>421
言うなればある種の景気付けである。
これより始まる魔術師同士の殺し合いは凄惨さを極める事は必至。
ならば英気を養うという意味で、食べたいものを食べるという行為は大きな意味を持つのではなかろうか?
逸る気持ちを抑え、目的の饂飩屋へと辿り着く。
散々CMで目にした店名だ、間違えようもない。
観察したところ券売機で食券を購入し、それを店内で渡してうどんが来るのを待つ、という流れらしい。
成る程回転率と人的資源の削減の為にたどり着いた一種の最適解と言えよう。
さあ、うどんを買う流れは理解した。持ち金も潤沢。ウドンを出迎える準備は万端である。
さあ、さあ、さあ─────────さあ!
──────あ、あの…────まだ、決まりませんかね?あ、まだ決まらない?そうデスカ。
──────────────────────────(五十分経過)──────────────────────────あ、もう。イイデス、はい。>>423
終わりです。「それはなんだ?」
小型の端末をフォアブロに見とがめられたザミエルは、笑って答えた。
「ああ、音楽プレイヤーだよ。さっきそこに落ちていたから頂戴したのさ。お前も聞くか?」
「くだらん。かつてならいざ知らず、六百六十六の生命の混沌と化した私には、もはや音の羅列以上の価値は見いだせん。求愛でも、狩りにおける情報伝達ですらない無為に労力を費やすのは、ヒトくらいだ」
「それと、悪魔だ」
(気分を害したのか)眉間にしわを寄せた契約者との会話を早々に切り上げ、イアホンを耳に当てる。
聖杯からは最低限の知識しか授かっていないけれども、どうやら、操作自体はそう難しいものではないようだ。ほどなくして、再生リストの画面までたどり着いた。
なかなかいい趣味してる。クラシックやジャズが満載だ。
うんうん、いつの時代でもいるもんだね、こういう人。
「どうも、悪魔です」って挨拶しに行ったら、すっごく良い反応をしてくれそうだ。
面倒なことになるのが目に見えているからやらないけど。
ウェーバーの曲を探してリストをたどる。
違法ダウンロードによるものなのか、無作為に並んでいるそれらを一つ一つ確認していくうちに――ある楽曲で指が止まった。>>426
探していたものではないけれども、悪くない。この時期、この状況にぴったりだ。
「再生」ボタンを押すと、重厚で特徴的なフレーズが鼓膜を震わせた。
曲の名前は『交響曲第五番「運命」』。
言わずと知れたベートーベンの代表作の一つで、冒頭の4音は「運命が扉をたたく音」として一般に知られているが・・・・・・その解釈は(ベートーベンの言葉をそのまま引用しただけだ)正確ではないとザミエルは考える。
この音が表しているのは、「抗うことのできない運命に翻弄される人々」だ。
聖杯戦争。
人々は今、10分にも満たない第一楽章で『運命(Fate)』の荒波に呑まれた。
溺れそうになりながら、それでも沈むまいと必死に手足をばたつかせる彼らが、続く第二楽章でどのような人生をたどることになるのか。
それはまだ、誰にも分らない。>>427
以上です。
幕間、全員召喚後くらいの想定です>>429
敏捷のステータスはA+ですが、マスターのことを考えて速度は制限されています。「いやー、美味かったぜ。やっぱり饂飩が正解だったな!私の腹は!」
店の外を出たリドリーは片手にテイクアウトした神立饂飩を持ち、腹を叩く。昼飯を食べようとしていた彼らだがすっかり日が落ちていた
「今度は出来る限り早く決めてほしいもんだなク.ソマスター。俺は後ろに来てた小僧と店長の塵を見る目はこの現界中絶対忘れん」
「あんまし根に持つのは心によく無いよロドリーゴ。心のキャパシティがオーバーヒートしてしまうぜ?あ、飲み物何する?」
「あんたの言いたいことは随分と詩的だな。バナナ汁粉頼む」
自販機でリドリーは『バナナ汁粉』と『ケミカルトマトジュース』を慣れた手つきで買う
片手で器用に栓を開けながら化学的痺れを口の中で堪能する。その刺激は脳神経を駆け巡り、突き進む為の原動力になって行く
「ふー、マミーにもう一本お願いしたい味だ!」
「それゴールデンコーラのCMだろ、ク.ソマスター。やれやれ、……………そうやあ聞いてないことあったな?」
「なんだい?君が疑問に思うようなこと僕今しているっけ?」
「これまでもそうだし今もそうだ。……………あーク.ソマスターあんた何故テイクアウト持ってるんだ?もう昼も夜も俺たちは済ませたぜ?あんた声の大きさに反比例して胃袋小せいだろ」
「成る程それは確かに応えないとね。これは僕たちの為のものじゃ無い。人にあげるためのさ!」
人にあげる。その答えにエル・シッドは眉をひそめる。彼らは一軒家を借りており、同居人はいない。引っ越し祝いとして渡すにしてもそれなら饂飩でなく蕎麦を渡すのが日本における通例である。その疑問を読んだかのように言葉を続けた>>431
「あれだよ、私たち忙しくてさ。まだ監督役に連絡取ってなかったろ?そのご挨拶と遅れたお詫びを兼ねてね、渡しに行こうと思うんだ」
「成る程確かに筋は通っているなク.ソマスター。だが本当にそれだけか?」
エル・シッドはそんなに尊敬してない自分の主人の顔を見る。彼の目には前えらい目にあった時と同じ喜悦の色が溢れており、挨拶だけが目的とは到底思えなかったのだ
「ええ〜知りたい?本〜当に知りたい?」
「いいから教えんか」
「しょーがないなー!もうロドリーゴには特別に教えちゃう!」
その某国民的アニメのアンパンに似た声を発しながらポケットから5つ大きさも形もバラバラな装置を取り出した
「今朝熱帯から荷物が届いたろ?それの中身がこれさ」
「なんだこの機械は?一つは小石のように見えるし、これはコンセントにも見える」
「簡単に言うとね。これは盗聴器さ!」
「盗聴器ってインターネット通販で買えんのかよ?」
「この5個で売り切れだったさ。この五つを教会に仕掛ける。魔術師は総じて機械に弱い。それを利用しない手はない。仕掛ける為にはロドリーゴ、君の力が必要なのさ。手伝ってくれるか?」
「別に構わないが、リスクはないのか?」
「あるさ、そもそも機械に詳しいのなら暴かれる可能性あるし、利用されるかもしれない。でもねロドリーゴ、"そんな事"気にするほどではない!"やってみなければ分からないさ!"」
リドリーから発せられた根拠のない底なしの自信。エル・シッドはこの男には何を言っても無駄だと理解している。そこが彼にとって羨ましいと感じる部分であった
「……………ハァーやっぱりあんたはク.ソだな。だが、いいゼェやってやろうじゃないか」
「そう来なくては!流石私が見込んだ英雄だアイタ!?」
「大袈裟に騒がないでくれ。あんたの仲間と思われたくない」
何もない所で足を捻り悶絶するリドリーを尻目にエル・シッドは教会へと進み続けたのであった>>432
唐突に伏神を投稿――伏神シーサイドホテル。
瀬戸内海に面した付近に新たに建設された。100階層の高層ロイヤルホテルである。専ら海外から観光に来たあるいは国内の富豪層の宿泊で部屋が閉め切られる御用達の宿泊施設である。
とはいえ、地表層の開放型レストランに限っては一般人でも少し背伸びをすれば利用できるような商品価格が設定されており、海を一望する景観も相まってデートスポットとしても人気を博している。
そんな、最上階。階丸ごとを貸し切られた一室。
贅の尽くされたそこにゲルトラウデ・アーレは居た。
『天~の星空に今、杯を傾けて~』
『只今、全国のCDショップにてファンの方々と思われる人達による暴動が起こっています!
今人気急上昇中のネットアイドル、Siren(サイレン)の新作アルバムを買い求めているのでしょうか、この騒動には警察も出動しており~』
彼女が何を見ているかといえば、“自身が意図して引き起こした”事件の結果。根源への到達の為の魔術実験。その成果である暴動のニュースである。>>434
アーレの家系は神代ギリシアより続く1000年単位の魔術師の一族だ。神代の終わりを契機にかつての力を喪った者達。
再びかつて(根源)を取り戻さんと研鑽を重ねる者達。
彼らは古き思考のまま、到達のアプローチを定めた。
それは『偶像』。
人が願い縋り、ただ自分勝手な欲望を吐き散らす架空のモノ。幻想のモノ。
それは引いては信仰である。故にそれを一身に束ねる。本来妨げる抑止力を成す集合的無意識(アラヤ)と星の意思(ガイア)の後押しを以て事を成す。
存在位階の昇華。
それ即ち、『神への昇華』である。
(……ふむ。今回の実験は成功ね)
顎に手を添えるように足を組み、椅子に座って思考を重ねる。
今回の目的は機械的に加工され、拡散された歌声にどれほど効果が残っているか、ということだ。>>435
ゲルトラウデは自身の声帯が人でないモノであることを理解している。
歌声に顕著に効果が表れるだけでそれは意識して枷をつけなければ普段の言葉全てに適用されてしまう。
肉声にこそ最高の効用が発揮され、それが加工され劣化したならば如何程か。
今回の実験を経て非常時の礼装の調整も完了した。
後は聖杯を手にいれ、不老不死あるいは全世界規模に歌を強制的に拡散させる事を願うだけ。
これだけでは足りない。もっと熱烈に、もっと狂的に、もっともっともっともっと。
この星という箱庭を狂気の坩堝に堕とし、より純粋な信仰を集めなければ。
その為にはサーヴァントの召喚を。
家具の配置を動かし、広い空間に敷いた魔方陣の前に立ち、聖言を紡ぐ。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」>>436
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
それは魔法の言葉。天に座する数多の貴人に賜す祈りの言の葉。
しかして、英霊は降臨した。
魔方陣の中に立ち尽くす、1人の青年。
黄金に輝く髪を持ちて、黒色の瞳を持ち、堅牢なる鎧に身を包んだ影のある騎士の中の騎士。
「サーヴァント、ライダー。召喚の求めに従い、此所に参じました。
貴女が、私のマスターか?」
「……そう、私が貴方のマスターよ。その貴方はドイツの大英雄、ディートリッヒ・フォン・ベルンね?」
互いに主従の確認を行い、要の真名を告げるゲルトラウデ。
それにライダーはふと、眉を潜めながら答える。>>437
「……えぇ、私はディートリッヒ・フォン・ベルンに、相違有りません。
“だから、マスター。お前は気にしないでいい。間違いなく、私がディートリッヒ・フォン・ベルンだからな”」
「……そう。触媒は問題なく機能したようね。ライダー。少しの間出ていて貰えないかしら。」
「畏まりました」
初対面であったが故の不幸。ゲルトラウデはライダーの“違和感”を見逃した。
ライダーが霊体化し、退去した部屋の中で、少女は初めて“恐怖故に、汗に濡れた自身の身体から手を離した”。
(……凄い汗。こんなに怖いなんて、はじめて。)
男が現界したその時から、少女の身体は本能的に目の前の英霊を恐怖し、怯え、拒否反応を示していた。
そのリスクは承知の上で触媒を選んだ。
しかし、それでも現物と相対した危機感は別物であった。
そして、その余裕の無さから魔術師は自らの英霊に目を向けなかった。
それが、致命的な過ちだとは知らずに。トーナメントの続きを投下します。
一体、どれほどの距離を移動したのだろうか。何とか私とバーサーカーはフィールドの中にある街に辿り着いた。
「けど、こんな状態でどうしろってのよ……。」
ただし、街の構造に問題があった。端的に言えば、遮蔽物や障害物となる建物が少なく身を隠す場所がほとんどない。それに加えて建物が西部劇に出てくるような木造のため、どう考えてもサーヴァントの戦闘に耐えうるものではない。宝具の撃ち合いになれば、間違いなく木っ端微塵に砕け散るとか確信出来る。
「ですがやりようはあります。カノン、貴女の魔術で街の至る所に罠を設置してみてはどうでしょう?」
「でもライダーには対魔力があるわ。ランクはそれほど高いわけではないけど、私の魔術じゃライダーは傷付けられない。」
そう、三騎士とライダーのクラススキルである対魔力。並の魔術師では大掛かりな魔術を使わない限り傷を負わせることが出来ない。
「ええ、それは分かっています。でも、もし罠がライダーのマスターを狙うものであったのなら?」
「………!そうか、罠がマスターを狙うものであったのなら、きっとライダーはーーーーー」
「マスターを守るために動きを止めざるを得ない。よほどのサーヴァントでもない限り、マスターを無視出来るサーヴァントはいないでしょう。仮にライダーがマスターを無視してこちらに来たとしても、マスターというアキレス腱を私達に晒すことになる。」
バーサーカーは冷静にライダーを倒す為の策を講じてくれた。確かにこれなら、僅かかもしれないがライダーに隙を生じさせることが出来る。こうなると、後は私の腕次第。
「バーサーカー、ライダーはあとどれくらいでこっちに着くと思う?」
「早ければ15分後には。」
「オッケー。なら、手早くやっちゃいましょうか。日本の魔術だって負けてないって見せつけてやらないとね!」
「それと、マスター1つよろしいでしょうか?」
バーサーカーが少し険しい表情で私を見る。>>440
「なに、バーサーカー?」
「ライダーの真名ですが、1つ心当たりがあります。」
「え、本当に!?」
「まだ決めつけることは出来ませんが彼がライダーである以上、彼の逸話に関係する宝具に乗ってくるはず。その宝具を見ることが出来れば、恐らくは。」
バーサーカーはライダーの真名に当たりを付けたようだった。それなら、マスターとしてやるべきことがある。
「バーサーカー、敵が見えたら宝具を使って。」
「…………ですがマスターの魔力が保たないかもしれませんよ?」
「でも、バーサーカーには勝算があるんでしょう?それなら、マスターとしてより勝利に近づくための手段を取るよ。」
一瞬の逡巡をして、バーサーカーは決めたようだ。
「分かりました。では敵が見え次第、この宝具を解放しましょう。」
そう言うと、バーサーカーは右腰に提げた剣に触れる。
「うん、お願いね。私は私に出来ることを。バーサーカーはバーサーカーに出来ることを。」
深く息を吸い込む。次の激突が恐らく勝敗を分ける。私は直ぐに罠の作成に取り掛かった。ここまでです。罠に関しては日本の呪術を用いた術式で構築するので、初見で見破るのは難しいと思っていますが、高纏さんどうでしょう?
>>442
街に入る際、罠が仕掛けられていると思って警戒して行動が遅くなると思います。
エルドレッドは日本の呪術についての知識はないですし、ロスタムも見分けことが出来ないかもしれないので。遅くなりましたが、投下します。
早い……いずれ見つかるとは解っていたけど、気配を隠してたのを意に介さないかのようね。
「大した実力ね、精神にも余裕が見えるし、家柄等にも恵まれていそうだし、そんな貴方は一体何を望むのかしら?」
そう、問い掛ける。
戦力差が大き過ぎるという面もあるけど、単純に気になったというのが大きい。
「私は、オリジナルであるエルシュタインと同じ記憶、同じ能力、同じ思考回路を持つコピー体。故に、私は自分自身をエルシュタインの代替品と定義し、オリジナルが手を伸ばさない所まで行く事にしました」
エルシュタインは、中々にぶっ飛んだ事を言い始めた。
けど、少し納得した。
何処か悟ったように見えるのは、そんな考え方をしているからだという訳ね。
という考えは、次の一言で中断された
「つまり、人類の恒久的平和です」
その一言は、何処か人間味が欠けているように、私には聞こえた。
確かに、あんな完璧超人なら、常人の持つような願いなんて大抵自力でどうにか出来るだろうし、大それた事とか人の身に余る代物とかを望むのは有り得る話ね。
けど、この願いは叶えてはいけない。
「世界平和なんて、たった一人が齎した奇跡で叶えたって、ろくな事にならないわよ。それだと人類は、平和の価値を理解出来ない」
だから、私はその願いを否定する。
「誰かが先導する必要があるとしても、それは人類全体が掴み取るべきものよ。例え何百年掛かったとしてもね」
勝ってその夢を終わらせる。
「何より、オリジナルが手を伸ばさなかったのって、それを解ってたからじゃないかしら?」
私達は、負ける訳にはいかない。以上です。
>>372
トーナメント:蒼木ルイ
〜ルイ〜
キャスターの宝具解放、『アンサンブル』の使用と嵩んだ魔力消費で、わたくしはほんの刹那、意識が霞む。その数秒で、彼は詰みの状況をひっくり返す。
「君の覚悟は、十分見せて貰った」
両手を貫かれ、地面に崩れ落ちる。彼の更にはコートを掛けられる。
痛みに震える中で、わたくしはその対決を目撃する。
〜キャスター〜
視線の先には、一人の男が立つ。肩で息をし、服も所々が破れ焼け焦げていた。しかし、その目はとてもーーー眩しかった。
それは、冒険譚に心躍らせる子供の様に。
それは、未知へ挑む冒険家の様に。
それはまるでーーーいつだったかの、僕の様に。
ーーー銃口(ゆび)を向けられる。
ーーー魔力(だんがん)が装填される。
令呪を使用した膨大な力が、男の指先に集中する。恐らく三画全てを消費した、彼の全力。
今の僕は、英霊化と自身のスキルによって歪なまでに頑丈だ。それでも、あの一撃を受ければ無事では済むまい。真っ当に考えれば避けるか、ケルベロスに受けさせるか、そんな判断をするだろう。しかし、あの男の笑みはどうだ。子供の様に純真で、若人のように熱く、老人のように味わい深い。今にも己の願いを捨てねばならぬと言うのに、誰よりも楽しげだ。もしかしすると、この状況こそが、彼の求めた物だったのだろうか。だとすればーーー
(詩人がロマンを介さないなんて、あって良いわけがーーーない‼︎)>>447
短剣を抜く。ケルベロスに頭を下げさせる。そして喉からは声を張り上げる。
「Ar,Arrrrrrrーーーーーー!」
歌とも、叫びとも取れるロングトーン。これは、彼に捧げる"ウォークライ"。
弾丸が放たれる。迫り来る黒い破壊に、僕は剣を叩きつける。手が痺れる衝撃。そしてーーー
弾丸は、僕の剣を破壊し、左腕から盛大な血飛沫を上げさせる。しかし、霊格の破壊には至らない。腕もなんとか繋がっている。
その光景を見た男は、気の抜けたような笑みでーーー倒れ込んだ。
〜ルイ〜
時間としては僅かな、しかし酷く長い対決。
背を向けた男が倒れこみ、ちらりと見えたその横顔。その顔に、何故かとてもーーー苛ついた。
「わたくしと、戦いなさいよ……」>>448
知らず、そんな事を口にしていた。
ーーー置いていかれたような気分だった。
彼の目には、わたくしを疎んじるような色があった。けれど、作ってくれたサンドイッチには気遣いを感じられたし、大真面目に子供のような事をする姿に好感だってあったのだ。ほんの少しだけ、よく分からないシンパシーもあった。なのに、
ーーー見放されたような気分だった。
彼は結局、わたくしではなくキャスターへと向かった。これ見よがしにコートまで掛けられて。相手にされていないようで悔しかった。
拳で力なく地面を叩く。血がまた溢れるが、気にならなかった。何度かそうして、少しだが気持ちが落ち着いた。
「……あなた、戦いの腕は上等でも、女性の扱いは落第ですわね。覚悟は見せて貰った……そう思うのなら、最後まで見ていなさいな。ーーー良いお友達に、なれそうでしたのに」
そんな言葉を吐き出して、周りを見渡す。程なく目的の人物を見つける。
出血と痛覚を魔術で和らげ、重くもしっかりとした足取りで向かう。
半身を失い、仰向けに倒れた男。今にも消え去りそうな男へ、わたくしは語りかける。
「貴方の事を、わたくしは存じていましたわ。ーーージャン・ポール・ゲティ。人類初の億万長者と呼ばれた方。一つだけ聞かせてくださいませ。貴方は、何の為にお金を集めたのですか?」>>449
以上です。委員会さんが「別時空だったらラブコメしてる!」とか言うからちょっと書きたくなっちゃったじゃないですかー!ゲティへの質問は、委員会さんなりの解釈で大丈夫です。ダメージを与えられるとは思ってなかったので地味に嬉しい(小並感
偏見と高慢みたいなベッタベタな展開が似合いそうじゃないです?(まぁ偏見と高慢とゾンビってパロ映画しか知らないのですが)
きっと戦い抜きで出会って長い時間を共に過ごせたらお互い内面抉りに抉り倒して人格的な成長と共に絆が生まれそうだなって……だが今回はそんな時間ないのだった!残念!
返信の方了解です。そんなに書ける内容もないから短くなるだろうけど御容赦を>>451
まさかこんな関係になるとは思いませんでしたよ。またどこかで会わせてみたいですね、この2人。
ダメージは、令呪三画でBBちゃんからガウェインを逃がしたりできたので、それを考えたら致命傷にならないくらいの傷は負わせられないかなーと。投稿します
>>453
伏神市の中でも都市部。
超高層ビル街の一角に一つの廃ビルがあった。
当初は何かの目的で建てられていたが建設中に権利上や条例などの問題で中止となりそのまま放棄され風景の一つとなったビルだ。
そこに当然人がいるはずがない。
だがその屋上には二つの影があった。
パーカーとジーンズというラフな格好をした男。この伏神という街では特に違和感もなく溶け込める服装だ。
しかしそこによくありがちな装飾らしきものは無くただただ実用性が重視された造りとなっており、着ている者の性格を表す様だった。
月明かりが男を照らす。
瀑布の様に電気が駆け巡り輝く街を見る男の目は相対するように暗く周囲の温度を下がりそうなほど感情の無い目。同年代の人間よりは上に見られてもおかしくない様な雰囲気を放っていた。
聖杯戦争という狂った儀式には相応しくすらあるが。
「うわぁ、凄いねぇ。私の住んでた田舎とは比べ物にならないよ」>>454
男の近く、瓦礫から生み出された影の一部が歪む。
そこから水音に似た音と共に黒い何かがにじみ出た。それは比較的小さい人型を取ると立ち上がる。黒いマントに黒いコートに黒いブーツ。顔に鈍い黄色のガラスで造られた双眸を文字通り爛々と輝かせ街を見つめる。
「アサシン。お前はこの街が気に入ったのか」
男は口を開いた。
平坦な、低音のよく通る声。
対して隣で落ち着きなく歩くアサシンは喜びを隠せていない笑い声を上げる。
「勿論!美しいもんこの街は!!こんな沢山の人々が集まって生きているなんて!!願わくばここに住みたいね」
目を離してしまえば瞬く間に闇に溶けそうなマントを翻しながらアサシンは笑う。
「そうか」
「そうだよ!!」
「なら聞くが」
一瞬躊躇うかの様に言葉が詰まるが次の瞬間には問いは放たれていた。>>455
「お前は、その力でこの街を恐怖に染めれるか?無辜の市民を怯えさせる覚悟があるか?」
その声は大気を震わせ、ざわめく風の中に吸い込まれていった。やがて答えが帰ってきた。
「ん?私が私である以上、例えアサシンだろうとサーヴァントだろうと影法師だろうと異星から降臨した神であろうとするべき事は一つだよ」
何もしていない人々を傷つけられる。ガスマスクの下から曇った声でアサシンは堂々と宣言した。その言葉にはつまらない事を聞くな、といった呆れに近い感情も篭っていた。
何が楽しいのか、それともこれから自分が引き起こす事によっぽどの喜悦を覚えているのか、再びアサシンは永遠と思わせるほど長く不愉快に高い声で笑い続けた。
男はそれに眉一つ動かす事なく何の表情も浮かべず黙って頷いた。
魔術蒐集師、ウィリー・ジャック。
毒ガスの怪人、アサシン。
これは一人と一騎の。
ベクトルこそ違えど冷酷さを道具としこの伏神の街をステージとしたーーー
闘いの物語だ。トーナメントSS、ちょっと本来より短いですが投下します。
>>457
決戦の時は実際の時間よりもずっと早く感じた。
会議室じみた控え室より、
『第参戦参加者洲甘柳華様、決戦の時間と相成りました。
控え室よりご退席いただき────』
というアナウンス。
洲甘柳華とアーチャーはその放送を至って平坦な気持ちで聞いていた。
ついに来てしまったか、という焦りはなく。
むしろ漸く来たか、という猛りだけだ。
「心の準備は万全か?お嬢」
「当然。そっちこそ敵に臆していないだろうな」
「冗談」
そんな軽口を叩き合う程度には心に余裕はある。
それは慢心から来る緩慢な空気などではなく、かと言って全てを投げ出した諦観も無い。
戦場へ赴く覚悟を決めたからこそ醸し出せる、腹の座った兵(つわもの)達の会話だ。>>458
「付き合いこそ短いが、俺とお嬢の間には確かに縁が生じた筈だ。
────アンタは俺の弓を預けるに足る人間だ。この勝負、勝とうが負けようが俺はアンタを恨みはしねぇよ」
「おい、戦う前から負ける可能性を考えてどうする」
柳華の涼やかな視線がより鋭く光る。
どうやら今の発言は戦乙女の耳には不快に聞こえたらしい。
「嗚呼、気に障ったってんなら謝る。
だが負ける可能性を考えない儘直走るのはそれはそれで危険だと俺は思いますぜ?」
「そんな事は承知している。私が言いたいのは『心持ち』の話だ。
悲観的な思考は悲劇的な運命を引き寄せる、思い込みの力と言うのは存外に恐ろしい……結局の所、喧嘩に勝つのは意思の折れてない奴なんだよ」
洲甘の隣で話を聞くアーチャーは「喧嘩って規模でもないだろうに」と言いたげだったが、僅かばかりの空気を読む能力が其れを妨げた。
無機質かつ無駄な物を一切排した機能的な部屋の中で、洲甘は戦闘に向けて精神を研ぎ澄ましていく。
無駄な雑念を排し、悲観的な思考は切り捨てて。今の彼女の心はまるでこの部屋の中の様に整然として清潔。
戦いに赴く心持ちは既に完了した、後は結果をなすのみ。
「勝つぞ、アーチャー」
そうぽつりと語り掛けた洲甘の表情を見て、アーチャーの中では一抹の安堵が駆け抜けた。
───ああ、これなら、絶対に負けない。>>459
控え室の扉を開く。
電脳世界では物理的距離や時間的制約などいくらでも改竄が出来ると見える。
控え室を開くと、そこにあったはずの廊下は消え去っており。見慣れぬ一本道が拓かれていた。
映画俳優が闊歩するような赤い絨毯の道。両脇には等間隔に明かりが灯り、足元を華々しく照らす。
一転してその周囲は深い闇が広がっていて、果てしなく広いようにも息苦しいほど狭くも見える。
つまりは目に見える範囲で『路』と呼べるのは前方のレッドカーペットしかなく、否が応でもその上を歩く事を余儀なくされているようだ。
その路が栄光の架け橋となるか、はたまた地獄への片道となるかは────自分次第だ。
「行くか、アーチャー」
「応とも」
豪勢な絨毯に導かれる儘に進んだ先には、また一層の不可思議が待ち受けていた。
途中、視界を塗り潰す様な光が二人を飲み込む様に駆け抜けた。
猛烈な光に洲甘もアーチャーも目を反射的に閉じる。瞼を介しても眩く感じてしまう閃光は数秒間彼女達を包み込んで、次第にその勢いは和らいでいく。>>460
漸く目を開いても問題ない水準にまで収まったと、ゆっくりと目を開いてみると。
「ここは、荒野か」
広がっていた世界は先程とはまるで異質。
頬に当たる風、乾いた砂の匂い、天蓋覆う晴天。その全てが本物のようで、しかし本物に限りなく近い別物だ。
超高度の電脳空間は固有結界じみた世界再編を限定的にではあるが熟してみせる。
その全てが魔術師の常識の埒外で、叶うのならば素直に驚き賞賛の一つでもくれてやりたいところであったが。
眼前の二つの影がその余裕を剥奪する。
「───来たな」
二つの影の内、より大きな影。キャメロン・フォーサイトの姿がゆらりと立ち上がる。
地面から露出した岩盤に腰かけた状態でもその偉丈夫さは伝わったが、
いざ対面すると、彼が如何に屈強な人間であるかが理解出来る。
修道服の上からでも分かる主張の激しい筋肉は、一度腕を掴まれようものなら柳華の細腕では振り切る事はかなわないだろう。
それどころかそのまま握り潰されるかも知れない。それ程までに体格差は歴然としていた。>>461
そんな強靭な肉体を有した大男と、一騎討ち。
生身での勝負なら結果は火を見るよりも明らかだろう。
リーチも劣り、膂力も劣り、機動力も劣る。こと肉体面に関して言えば彼に勝る部分など何一つない。
そう言っても過言ではないだろう。
しかし此れは魔術師と代行者の戦い。
武器及び魔術の使用を許可され、基本的に戦う際の規則の設けられていない『潰し合い』だ。
ならば勝機は零ではない。魔術の研鑽に疎い傾向の強い代行者である限り、魔術師である自身が秀でている部分は必ず存在する。
そこを徹底的に突くのみ─────
アーチャーの方を見遣ると、どうやら彼は彼で相手のバーサーカーと何かしらの因縁が生じたらしい。
明確に言葉として発しはしないが、彼が纏う気配が叫んでいる。
「早くおっぱじめようぜ」と言わんばかりに、苛烈な気配。>>462
相対する両陣営。戦術の構築も心の準備も既に出来ている。
後は決戦開始の音頭が───ゴングが鳴れば直ぐにでも。
血潮は昂りうねりを上げて、心拍数は上昇する。視界は明白に、意識は明瞭に、交感神経が優位となり、身体全体が戦闘形態へと移行していくのを肌で感じる。
と、同時に魔術師ならではの感覚───魔術回路が高速で循環する感覚を覚える。
まるでオイルを指したばかりのトルクの様に、淀みの無い回転は。
精神の高揚感に比例する様に、加速度的に回転率を上げていく。
耳鳴りの様な、金属音が聞こえた気がした。
幻聴だ。恐らく魔術回路を完全解放した際に起こるフィードバックの一種。
視界の隅が、白くなった気がした。
幻覚だ。交感神経系が優位に作用した結果による錯覚だろう。
様々な現象が自身の内側で起きては消え、また新たな現象が生じて、霧散する。
それらは全て目の前の敵を打ち倒さんと、極限まで研ぎ澄ました精神が引き起こすものであり。
そして柳華の脳はそれら全ての現象を気にするまいと、身体の悲鳴に蓋をした。>>464
終わりです。>>449
(こんな結果になってすまなかった。だが……俺は楽しんだよ。ありがとうキャスター)
やめろ、やめてくれマスター。まだだ、まだ負けていない。この女をころせば勝てる、勝てるんだ。——念話に返事することも出来ずに必死に消滅に抗いながら腕に力を入れる。だが一寸も、ピクリともしない。
「あぁ………俺の名はクリストファー・D・クライ。クリストファー・ドント・クライ……最後まで、涙は見せない男だ!!」
「Ar,Arrrrrrrーーーーーー!」
後ろでどんな戦いが行われているのか、振り向くことすらままならない今それは分からない。
だがパスに流れる魔力の流れで顛末は分かる。分かってしまう。
負けか、覚悟していた筈なのに……いや、こんな負け方をするなんて………
「貴方の事を、わたくしは存じていましたわ。ーーージャン・ポール・ゲティ。人類初の億万長者と呼ばれた方。一つだけ聞かせてくださいませ。貴方は、何の為にお金を集めたのですか?」
目の前に少女が立っていた。肩に掛けたコートを握り締め、その手からは血が滲んでいる。
気丈な少女などだろう。とうとう私のマスターを凌ぎ切る実力も併せ持っている。そして、その碧い瞳の奥に見知ったモノを——>>466
「何の為に、だと?」
振り絞った言葉と共に腑が裏返り血反吐が飛び出る。だが構うものか。勝者に対して花を贈る為ではない。
「私は、それが出来たからやったのだ…他の誰よりも!私が!上手に出来たからな!!」
べちゃべちゃと厭な音が耳をつく。
「他の誰を踏み台にしても、他の誰かを、、不幸にしてでも私が、私こそが———
もう言葉よりも血の方が多く吐き出されている。限界はとうに越えているのだろう。
(自らしか省みなかった生であった。だからこそ、誰かを幸せにしてみたかった)
などとはこの少女には言うまい。いや、この少女の奥に潜む何かには
「私こそがこの世界/資本主義で最も優れていると証明するために積み上げたのだ」これでお返しします
ルイちゃんの返答の内容に関わらず
「お前のその眼を知っているぞ!」「私と同族の眼だ!」「満たされる事を知らない、周りの全てを不幸にしても止まらない餓鬼の眼だ!」
とか言って最後に抉りながら消えるのが役目かなぁと思いましたリレーの続きです
>>469
キャメロン・フォーサイトはルーン文字に詳しくない。彼の印象は文字を刻んで発動するというだけである。弟のリドリーから見せてもらったことがあるが、リドリーは"ある自作魔術"を除いて適正は低く、よく見る事は叶わなかった
「成る程…………ルーン文字はこんな事もできるのか」
キャメロンは今結界に閉じこまれた。周りに刻まれたFに似た文字、財産・家畜を表すルーン文字「フェフ」の効力によってである
洲甘はこのルーン文字を拡大解釈し、財産や家畜を守るものとし結界を張るに至ったのだ
なんたる脳の柔軟さ!
洲甘は英雄の如き力を発揮でする「イングワズ」を身体に刻み、能力を守る向上させ、変形根を構えた
彼女の血は目の前の強者を前にして泡立つ。彼女の目は黒鍵と白扉を持ったキャメロンに注がれていた
その時である!
キャメロンは装備していた三本の黒鍵を投げつけたのであった!黒鍵は近接武器として最適な物であるが、ある程度の技量を持つものによって恐るべき投擲兵器と化す
見よ!ダーツの矢のように洲甘の胴体めがけて発射された!
だが洲甘はこの動きを完璧に読んでいた。彼女は言葉を意味するルーン文字「アンサズ」を刻む。すると、おお!ルーンから火が放たれた!言葉の苛烈さを火と表現した洲甘の柔軟さによるものである!三つの黒鍵は見る見るうちに溶かされて………………>>470
(ナ、ナニ!?)
洲甘は驚愕に目を剥いた!何故なら黒鍵の陰に隠れ、白扉が首を狙い回転するちゃぶ台の様に迫っていたからだ!白扉とは元来死徒など神の教えに反する敵と相対した時に使われる防御壁である。間違っても武器として使えるものではない!だが、キャメロンはこの盾をギロチンの刃のように首を狙う残虐無慈悲の恐るべき投擲兵器として解釈したのだ!
迫り来る白扉。彼女はどのルーン文字を刻むか思考する。そして彼女は土地、故郷を表すルーン文字「オセル」を刻んだ!見るがいい!洲甘の身体が硬化されていくではないか!大地の如き硬度により首にぶつかった白扉を粉砕!そしてこのオセルを刻む選択が彼女の命を救ったのである
白扉により姿が見えなくなっていたキャメロンが洲甘の腹めがけて加減した貫手を撃ち込む!しかし加減されていたが故に完璧に貫くに至らず、脇腹の肉を少し持って行くだけに留められた。彼の貫手はそのまま勢いよく結界にぶつかる
衝突音が空気を揺らし、洲甘の皮膚を震えさせた。結界には……………四つの穴が!?
この男は指の力だけで穴を開けたと言うのか?!結界の穴は徐々に塞がれていき直る
だが洲甘は冷や汗をかいていた
(身体能力の高さは分かっていたが、まさかこれ程とは……………)
しかしキャメロンも冷や汗をかいていた
(ルーン文字の汎用性がここまで高いとは……………)
両者譲らずの戦いを見せる
洲甘とキャメロンはこの一連の動きによりさらに気を引き締めた
そして
洲甘は根と身体に更なるルーン文字を刻み込み
キャメロンは『暗黒空手 亀の構え』を構えるのであった……………>>471終わりです
伏神を投稿!
>>473
召喚から5日目。素晴らしく晴れ渡った青空の下、朝釣りから帰宅したエル・シッドは居間で死体となった自分の召喚主を見ていた
その目は虚ろであり口からは血を流している。誰がどう見ても死体である。だがエル・シッドは塵芥を見るような軽蔑的殺伐視線を向ける。そして脈を測り、その死体の胸に高速ストンピングを行なった!
「ワーグナーッ!?」
死体は有名劇作家の名を上げながら飛び跳ねるように起き上がる。彼の高速ストンピングがこの死体を蘇生させたのか?否!これは元々死体ではなかったのだ
「何してんだ、ク.ソマスター」
「いやー通販できた『シニフリ・丸薬』の効力を試したくてね!実際これは凄いよ!」
「ほう?アンタ忍者にでもなったつもり?そんな脈も止めない雑さでか?」
そう言いながら彼は台所の方へ向かった。今日の食事係は彼だからだ。エル・シッドは買った国際的料理本と材料を取り出す。彼が生きていた時代より自国他国の料理が更なる発展を遂げていることに興味を抱きその脳細胞神経に少なくない感嘆性脳波ショックを覚える
今日彼が作るのは古典的日本の朝食だ。米と味噌汁と漬物と焼き魚の大変シンプルなもの
米は昨夜予約して作っており、味噌汁は昨日の余った豚汁を再利用して作る。漬物も事前に買ってあったものを皿に出して終わりだ
今回のメインは焼き魚である。エル・シッドは今朝釣ってきたばかりの鯵を一匹まな板の上に取り出した。そして包丁の形にした『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』を鯵に突き刺すと、なんと!動かしてもないのに三枚におろされたではないか!不思議である!
この様子を見ていたリドリーも驚きを露わにした>>474「ロドリーゴ、一体何をしたんだい?」
「宝具の能力を利用したのさ。『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』は形を自在に変えることができる。これを利用して中に入れた刃を魚の形にして肉と骨を切り取ったって訳さ」
「成る程……………というか君の宝具応用かなりきくね。限界は?」
「……………そういや測ったことなかったな」
「じゃあこのあと調べてみようよ!」
「アンタにしてはいい考えじゃあねいか。だがまずは朝飯だ」
「ていうか君私より料理上手いね」
「口にチャック出来ないのか?見たくない中身見えてるぞク.ソマスター」
2時間後…‥!
自宅から歩いて五分。駐車場においてリドリーとエル・シッドは実験を開始した。日曜日という事で駐車場にあった車は殆どなく更に初歩的な人避けの魔術がかけられ、彼ら以外入って来るものはいない
「じゃあ始めるぞ……………と言ったところで何をするつもりなんだ、アンタ?」
「取り敢えず、君の宝具がどこまで伸びるか試してみよう」
エル・シッドは『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』を天にあげ伸ばす。10m程伸びると不思議な事にきっかりと伸ばすのをやめた
「かなり伸びるんだね」
「だがこの長さは正直扱いづらい。伸びる速度もそこまで速いとはいえんし、奇襲にも使えんな」「じゃあ今度は厚さを変えてみよう」「それ意味あるか?」「何事もやる事が大切だよ?」>>475
こうして『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』の性能を調べていく二人。鞭や大鎌、槍やハンマーなど剣の原型を留めていない武器に変形させ操るエル・シッド。彼のスキル『我が主人の歌』はあらゆる戦闘行為やスキル習得に影響を及ぼす(リドリーはこの事を最初に知った後彼が持っている映画、アニメ、ゲーム、小説、漫画などを読み込ませ沢山の技を覚えさせていった)。このスキルによりエル・シッドは変形させた『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』に存分に対応できるのである
その時リドリー・フォーサイトのトンチキ脳細胞神経は唐突にスパークした!
「私にいい考えがある!」
その言い草にエル・シッドはどうしようもない恐怖と戦慄を感じた!何故嫌な予感がするのか?その答えはリドリーが自宅から持ってきた大量の定期購読本(カキンアクマノショ)にあった!
「……………ク.ソマスターこれは?」
「週間ヴェルファイアさ!君の『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』の能力を守る使ってさ作ってみてよ!」
「いやそれ流石に無理じゃ「いいから"やってみるんだ!"」…………………………」
エル・シッドはこの男の説得は諦めた。何故ならやると言ったことは必ずやる男なのである。今更どの様な説得ができるだろうか!
日が暮れオレンジに美しく照らされる頃エル・シッドは漸くヴェルファイアを完成させるに至った。汐多TOY発行の定期購読書はそのメカニックが異様に詳しく書かれており、そのおかげで変形させ、なんと動かすことまで成功したのだ
しかしエル・シッドは疲れ果て、その後自宅で直ぐに寝てしまったのであった>>476
終わりです伏神幕間を投稿します。
>>478
ビルの上から見下ろす町は活気に満ち溢れていた。
弓兵として呼ばれた以上、仕事を十全にするためにも町の構造を把握することが最優先だ。
そのため、ここいらで最も高い場所から俯瞰しようと思ったのだが――
この程度の高さと距離では、全部見えてしまう。
千鳥足で上機嫌に鼻歌なんかを歌いながら帰路に着くサラリーマン。肩を寄せ合い歩くカップル、その幸せそうな表情までしっかりと。
なんてまぶしい町なんだ。明るく澄んだ月の面のようだ。かつて幸せだった誰かが、どこかのバルコニーで眺めたような・・・・・・
悪魔甲斐もない感情が胸をよぎったが、それを無理やり抑え込む。
まもなく月の光が失せるだろう。 運命がオレを、そしてこの町を引っ立てて行くんだ。
落雷に撃たれる若い樫の木みたいなもんだ。どうしようもない。
「よくこんなところから見えまちゅね。さすがサーヴァント」>>479
「うわ!――うわぁ・・・・・・」
思わず出た情けない声が2つ。
ひとつは、気配もなく突然背後から聞こえてきた声に対する驚き。
そしてもうひとつは・・・・・・なんというか・・・・・・言葉に詰まるっていうのはこういうことを言うのかねえ。振り返って確認した声の主が、まさか炉床の奥みたいに真っ黒な牡鹿だとは。
「いかがされたのか、キョージュ?普段おカタいしかめっ面なのに、今晩はやけにお茶目だねえ。言葉遣いもその方が、親しみが湧いていいかもしれないぜ。で、何それ?シシガミ?」
「シシガミではない」
目の前の滑稽な生き物は、かぶりを振ってこれを否定した(その角に当たらないために、オレは半歩後ろに下がらなくてはならなかった)。>>480
「これは喋る鹿エト。お前がキョージュと呼ぶ意思とは異なる、フォアブロの構成要素の一部でちゅ」
「あいつの回し者ではない?」
「左様。『フォアブロ・ロワイン』に、隙はないでちゅ。それは、いついかなる時であっても、構成している六百六十六の獣のうちのどれかが、それぞれの方向への警戒を行っているからでちゅ。でもそれは、『キョージュ』が常に覚醒していることを示すものではない。あれが眠りに落ちている隙に抜け出してきたのが、この『シシガ――』・・・・・ちがった、『エト』でちゅ」
「なんかえらく複雑だな。すまないけれども、あまり学があるほうではないんだ。手短に頼むよ」
「シシガミではない。キョージュでもない」
「Ich verstehe.(わかった)」
未だによくわからないが、そういうこともあるんだろう。そう思うことにする。
とりあえず害意はないようだし、あいつの一部だというのなら放っておいても大丈夫だろう。>>481
何の用かと尋ねると、エトは「獣のフレンズ代表で、新人を歓迎するために来たんでちゅ」と答えた。
「いやー、フォアブロ・ロワインのサーヴァントとか大変でちゅねー、マジで。辛いときにはいつでも487+A or B or Cしてほしいでちゅ。テストプレイ版ならそれだけでなんとかなるから」
「はあ?まあ、よろしく?」
オレの曖昧な返事に満足したのか、エトは一声嘶くと、ビルの屋上から飛び降りた。
その姿は空中で見る見るうちに一羽のカラスへと変化し――遠方へと飛び去って行った。
確認しなかったが、おそらく本体のもとへ戻っていったのだろう。
それにしても。面倒くさそうなのがもう一人(一匹?)増えるとは。
いや、まあ、こっちもビジネスですからね?やりますけどね?
ステータスの幸運値の重要性に思考を巡らせながら、オレは再び自らの作業に戻るのだった。伏神編投下します
>>483
眩い閃光は、錫久里亥狛の視界を白に染めた。
饂飩屋で夕餉を食べ損ねた後、猛る気持ちを聖杯戦争への熱へと変換させ臨んだ英霊召喚。
その首尾は順調そのものと言えた。
体内の魔力が最大限に循環し、全身が高潮した。調子は万全。
唱える詠唱は、何度も繰り返し練習した事もあり間違えようもない。
燦然と輝きを放つ魔方陣、その中より出でる英霊と魔力的な経路(パス)が繋がる感覚、どれをとっても完璧だ。
つつがなく召喚を終えた暁には、その召喚陣の中にはサーヴァントが立っている事だろう。
人類の歴史に名を連ねる英雄の影法師、人理の奇跡の一端が目の前に顕現するとあり、気分は嫌が応にも高揚していた。
「触媒は紛れもなく欧州の本物の聖遺物、呼び出されるサーヴァントは一流である事は私が保証するさ」>>484
亥狛の傍に座す白人女性はこともなげにそう言ってのけた。
自分が用意した触媒に絶対の自信を持っているのか、召喚される英霊の姿を見る前から余裕綽々の様子である。
召喚陣のすぐ近くに置かれた聖遺物。
純金細工の箱に大事そうに収納された青い布切れは、イギリスの、古くは十世紀頃の代物。
資産価値にする事すら出来ない歴史的にも重要な逸品は、この召喚のために用意されたものだ。
(さあ────準備は整った。召喚に応じて、俺の元に来い─────円卓最強の騎士サー・ランスロットよ!!)
思わず目を覆いたくなる程の光の奔流。
眩んだ視界を取り戻そうと薄く開けた瞳に映ったのは、聖なる白騎士の姿。
巧緻な刺繍の施された白亜の鎧に、表情を隠すフルフェイスの兜。
鎧の随所に刺々しさを残しながら、全体的には柔和な印象を与える独特の流線形(フォルム)だった。>>485
そして召喚陣の中心に立つ聖騎士と明確な魔力の繋がりを感じる。
────間違いなく、目の前の奴は英霊だ。
神秘の濃さで言えば魔獣・幻獣の類である自身とは比べ用もないほどの濃密さ。
そしてその悠然とした立ち居振る舞いに、本来主人であるはずの男は息を呑む。
部屋の中心に立つ白騎士は不思議そうに辺りをぐるりと見渡すと、亥狛と女魔術師の方を視認して。
「……はて、卿の残り香を追って顕現したものの彼の姿が見当たりませんね。
其方の御仁、屹と我がマスターとお見受けしますが相違ないですね?」
其処の御仁、と呼ばれた亥狛は一瞬自分の事と気付かずに反応に戸惑ってしまう。
「あ、ああ。間違いなく俺が君のマスターだ。ほら、令呪だってこのとおり」
そう言って右手に嵌めた手袋を外す。
手の甲には三画の紅い刺青が刻まれていた。
令呪と呼ばれた赤い刺青は参加資格のある魔術師に与えられる英霊の使役権であり、絶対命令権。
マスターがマスターたりえる頼みの綱である。>>486
右手の令呪を見た騎士は「成る程」と頷くと、亥狛の方へと歩み寄るや否や、騎士然と頭を垂れて。
「では今回の聖杯戦争、私は貴方の一本の槍として仕える事をここに誓いましょう。
────サーヴァント、ランサー。貴方に勝利の祝福を」
「お、おお。宜しくランサー……ん?ランサー?」
ランサーとは、槍兵の事か?
ランスロット卿と言えば剣士のクラスで呼び出されるものだと思っていたが……。
一抹の不安が過ぎるが、きっと思い違いだろう。
なにせあの青い布切れは嘗てサー・ランスロットが羽織ったとされる外套の切れ端であり、彼以外の存在が召喚される可能性などあり得ないからだ。
アーサー王物語に傾倒しているわけではない為詳しくはないが、屹とランスロット卿ならば槍の腕前も超一流である事は容易に想像がつくというもの。
期待に胸を高鳴らせていると、白騎士はまた落ち着かない様子で周囲を見回して、
「ところで質問なのですが、此処にランスロット卿は来ませんでしたか?
……気配は間違いなく卿のモノですし、私が彼の気配を読み違える筈がありません」>>487
という、信じられない一言を発したのだった。
その言葉の意味を亥狛と、隣に座って眺めていた魔術師は理解できなかった。
「────ランスロットは何処って、可笑しな冗談を言う。ランスロットは、アンタじゃないのか?」
そう亥狛は返答すると、自らをランサーと語った騎士は一瞬固まり、そのすぐ後に朗らかに笑ってみせた。
「御冗談を、私がかのランスロット卿である筈が無いじゃないですか。
彼の名を騙るのも烏滸がましいというものです」
そう言って、ランサーはゆっくりと自らの顔を覆う兜を取る。
兜が脱げてふわりと舞う金色の髪はその一本一本が艶やかな糸のようで。
覆われた兜の中から出てきた顔は男女問わず息を呑むほどの美貌であった。
そして二人は直感的に理解する。
彼────いや、彼女は。自分達が真に呼ぼうとしていた最強の騎士ではなく。
彼を敬服し、彼に並び立たんとした、とある聖騎士であるという事実。
「私の真名はガレス。円卓の騎士の一人であり、ガウェイン四兄弟の末子。────そして栄えあるブリテン壊滅の切っ掛けを生んだ一人です」「戦況は上々と言ったところかな。 雑竜の群れが良い仕事をしてくれている……が、決定打には欠けるな」
およそ司令塔と呼べる陣地から戦況を眺め、溜め息混じりのセリフを吐く。
ライダーが召喚する翼竜の群勢は強力な宝具と言えるだろう。竜種という幻想種は、その心臓を稼働させるだけで魔術に対する抵抗力を底上げするのだ。魔術を扱う者にとってこれ程厄介な存在はいない。
しかし、バーサーカーことザッハークが放つ魔術に対しては、その自慢の耐久力も意味を成していない様子で、ゲルトは少々現状について思考する。
——ザッハーク……奴の使う魔術が鬼門だな。規模からして宝具レベルと推定してもいいだろう。更に厄介なところは、一工程(シングルアクション)で展開される魔術の高速発動だ。これに関しては両肩の蛇をどうにかしなければならないけど……さて、どうするか。やはりここは、ギアスの契約をどうにかして、いち早くマスターを発見して始末する方針に変えるか、それとも……。>>490
様々なプランが脳を駆け巡り、どれがより効率よく現状をひっくり返せるか選定するも、どれも同確率に転びそうなので頭を抱えるしかない。
“暗殺”という行為が契約によって禁じられた事がこんなにも面倒だとは思わず、娯楽でなければと考えてしまう。
執行者と言えども、ゲルト自身は乱戦などを得意とはせず、どちらかと言えば一対一のタイマンか、暗殺などが能力との相性がいい。
任されてしまったが、司令塔の役割も別段得意という訳でもないので、再度面倒臭そうに深く溜め息をつく。
「あーあ、アーチャーの宝具をブッパできたら話は早いのに」
『それは最終手段ですよ、マスター。私の宝具開帳は、味方諸共周囲を灼き尽くしてしまう恐れがありますので』
「そんなのは承知の上さ。だけどね、このチームはバーサーカー陣営を倒すという目的が合致した故に結成された仮同盟。謂わば馴れ合い以下の場だ。いずれは敵同士に戻るのだから、一網打尽にできるならそれに越したことはないだろう? まあ、君の英雄としての矜持がそれを許さないのなら、話は別だけど」
『……まったく、冗談が過ぎますよ。いえ、あまたの場合は冗談ではないでしょうが、私が拒否するのを理解していてその発言なのだから性質が悪い。逢蒙の方がまだ可愛げがありましたよ』
「悲劇の元凶よりアレ扱いされるって、俺ディスられてる?」
他愛もない会話を続けながら、ゲルトは再度双眼鏡に目を通す。
アーチャーの言った通り、仮同盟を結んだ味方を巻き込んだ宝具の開帳は冗談ではない。寧ろ必要とあれば躊躇なく展開させる事も視野に入れている。
しかし、宝具の強制は今後の信頼関係に亀裂を生じさせるので、迂闊には使えない。今は冗談混じりに言えているが、もしも令呪で命じようものなら……。>>491
『ただ、やむ得ない状況に陥れば、私も宝具の使用に異論は持ちません。相手は暴政を限りを尽くした魔王だ、生半可な気持ちで戦場を駆ける訳にはいきません』
だが、まさかの肯定だった。
あの雲中白鶴を絵に描いたようなアーチャーが、もしもの場合は味方を巻き込んでもいいと肯定の意を示してくれたのだ。
少し予想外であったのでゲルトは面食らうも、表情にはおくびも出さない。
——共感を得られるとは思ってなかったけど、これなら展開難易度は格段に下がった。さて、戦況次第じゃ遠慮なく砲火するけど……運が良かったら助けてあげるよ、黒野くん。アジらなくてもスノーフィールド蒸発する可能性が濃厚になってきて初草ですよ
>>488
「あー、ったく。面倒クセェお客様でした事。ま、うどんは嫌いじゃないからいいんだが」
教会の講堂で巫女服を着た青年が呟く。
「とりあえずコレは家の棚にしまっとくとしt
「やっほー、アオ!そっちの経過はどうだい?霊器盤の反応とかさ」
扉を勢いよく開けながら黒い青年が入ってくる。彼の巫女服に驚く様子も全くなく、あだ名で呼んでいるので実に親しそうだ。
「さっき確認したが、お前の調整もしっかり機能してるっぽいし、問題無さそうだ、ハル。まぁ東雲の嬢ちゃんを説得するのは骨が折れたが、ある程度は受け入れてもらうしかねぇ。ここ数年間で溜まってた魔力なんかのせいで勝手に起動しちまった様だし、しょうがない部分もあんだろ」
「で、今は参加可能なサーヴァントの全数である六騎が召喚済み、なんだよね?セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、バーサーカー。三騎士以外はエクストラクラスへの変動アリ。今回はアヴェンジャーだっけ?どの枠を潰すかで迷ったけど、大聖杯に干渉できる可能性が高いキャスターで良かったかなぁ?ちょっと心配。あ、そうだ。ここへは隠匿準備の手伝いをするつもりで来たんだけd…」
「どうした?急に黙って……」
シィ〜、と人差し指を口元へ運び、「静かに」といったジェスチャーをする遥。そろそろと付近の柱に近寄っていき、コンセントのような黒い機械のような物を掴んだ。
「盗聴器がセットしてあるみたい。こんなの。もうちょい探すから、色々の話し合いはまだ待ってて」
「了解」
そして数十分後、彼は全ての盗聴器を見つけ出したようである。
「よおし、終わった。アオ、仕掛けた奴も心当たりは?」
「お前の前に来たセイバーとそのマスターかねぇ。凄く鬱陶しかった。で、ソレどうすんの?」
「勿論壊すさ。気分良いモノでもないでしょ。こっちで『処理』しとくよ。それじゃ、隠蔽とか、監督役の仕事についての相談とかに移ろうか」
そうして彼らの夜は更けていく。聖杯大会スレで投稿した通り、こちらにも第一回の内容UPします
参加者の方々はご確認下さいませ>>495
「――始まったな」
無意識の内に呟く。
木々の向こう、別荘があると思しきエリア。その場所から凄絶な戦闘音が響いてきた。
この世のものとは思えない叫び声。一匹二匹どころの話ではない、軽く十は超える合唱(アンサンブル)が木々の向こうから漏れ聞こえてきた。
「GYAAAA!」
訂正しよう。漏れ聞こえ、どころではない。
すぐ目の前に声の主が姿を現した。
恐竜図鑑から抜け出してきたようなデザイン。蜥蜴をより凶悪にしたような面構えと、大きく広げた両翼。日本の足には鋭い爪が伸びており、自動車程度であればやすやすと貫けそうな剣呑さに満ちている。
物語で飽きる程見た飛竜(ワイバーン)。それが、今まさに眼前を飛んでいた。
「GYAOOO!」
興奮状態のまま、ワイバーンはこちらに向け急降下。獲物に喰らいかからんと牙をむき出しに襲い掛かってくる。
が、その牙も爪も、何者を捉える事はなかった。
何故なら。
「ふむ。これが西洋の飛び蜥蜴なる怪物か。まこと奇怪な生物よな」
「GA、GYA……!?」
首と両翼を一瞬で斬り飛ばされ、あらぬ方向へ落ちていくワイバーン。そのまま軌道上の木に激突し、派手な音を立てて沈黙した。
斬り飛ばした張本人――ランサーは涼しげな表情で仕留めた敵を見下ろし、どこかつまらなさげに呟く。
続く>>496
「だがぬるい。衝動のまま襲ってくるだけでは、野山の獣同然というもの。否、むしろこれならば拙者の故郷にいた猪共の方が余程知恵が回っていたかな?」
「いやどんな猪だよそれ」
変わり果てたワイバーンを前に、俺はおっかなびっくり距離を取る。すると、ワイバーンは粒子となり、跡形もなく消滅した。
「消えた――って事は、こいつも宝具か何かなのか?」
「大方、相手側の騎兵の宝具であろう。弓兵が斯様な怪物を召喚する宝具を持ち合わせるとも思えぬ」
「竜にまつわる英霊……聖ゲオルギウスか聖女マルタか? いやでもゲオルギウスはともかくマルタの方は鉄甲竜だった筈……」
他にもいくつか竜にまつわる英霊を思い浮かべる。
ジークフリート、ベオウルフ、あるいはギリシャ神話のカドモス王。誰も彼も竜殺しで有名な英雄ではあるが、竜を使役となると今一つピンと来ない。
ゲオルギウスやマルタにしても教義上竜を従えるイメージが……
「考えてる所すまぬが、生憎そんな余裕はなさそうだぞ」
「え?」
ランサーに突かれ、思わず顔を上げる。
そこには絶句する光景が広がっていた。
「GAAAA!」
「GYAAAA!」
「「「GUGYAAAAA!!」」」
ぱっと見える限りでは四、五匹は優にいようか? 隊列を組んだワイバーン達が雄叫びを上げつつ、こちらを見下ろしている。
続く>>497
どうやら先行したニンジャーたちを蹴散らしたらしい。傷を負ってる個体も少なからずいるが、大半はまだまだ戦意旺盛である。
しかもこうして見ている間にも頭数を増やしており、こちらをじわじわと包囲にかかっていた。
控え目にいって大ピンチだった。
(あいつら作戦の事わかってるんだよな!?)
(だからといって手を抜く道理はないという事であろう。そも、此処で手を抜かば困るのは我らとて同じ。故に、出来る限り派手に仕掛ける心積りという訳だ)
ランサーが槍を構え、頭上の群れを睨む。
そうしてこちらへは振り向かず、声だけで要求した。
「絶対に離れるなよ黒野! かくなる上は、迂闊に距離を取る方が危うい故な!」
「だー畜生! こんなの相手に現代の弓なんか通じるのかー!?」
半ばやけくそになりつつ、俺は持ってきた弓を構える。
同時に群れのリーダーと思しき個体が咆哮し、乱戦の火蓋が切って落とされた。
ここで一旦区切りです
続きはまた相談の上で文章を考える時間が取れないので、ダイジェストで失礼します。
教授の次のムーヴとして町に『獣』を放ちます。
タイミングは盗聴器発見後。
クッチーから全騎出揃ったという連絡を受けての行動にしたいです。そろそろかなっていう直感扱いにしてもいいですが。
『獣』
使い魔ではなく、教授の一部。
通常の使い魔とは違い、魔術的な探知には生命体として反応する。目視では動物の形だが、真夜中のように真っ黒である。破壊されると、指向性を持たない生命の塊(「泥」)になって本体(教授)の元へ戻っていく。
模している生命体をベースとしているが、厳密には純粋な一つの命ではないため、動物と意思疎通できるものがいれば、多少言動が奇妙に見えるかもしれない。
猫、犬、カラス、トカゲやネズミなどの形で10-20ほど送り込み、他陣営に探りを入れます。
その後の展開は相談しながら決めたいと思います。皆さま対応をお願いします。
何か問題等ありましたら教えてください。
また、クチサキさんは、クッチーから各陣営について、どの程度までの情報提供を受けることが可能か教えていただけると嬉しいです。伏神戦争リドリー編
「……………うーん、早い過ぎるよ、全くもって」
広い車道のすみ。リドリーとエル・シッドは『無形・失われし鋼鉄(コラーダ)』が変型したヴェルファイアの中に乗っていた。内蔵されたスピーカーが高らかにEXCITEが響き渡る
リドリーはつけていたヘッドホンを外し盗聴器の電源を切った。手の震えから若干の動揺が見られる。彼の動揺は最もな事であろう
貴方は高額なスシを購入したのに野生のハリネズミによって食されたら虚無に由来する脱帽感を感じるのではないか?リドリーの心情は正しくそれなのだ
ハンドルとかした剣の柄を持つエル・シッドはすぐ近くにあるコンビニから買った餅握り飯を食べながら主人に結果を聞く
「見つかったのはしゃーないぜ。いつまでも落ち込む必要はない。でどうだったんだ?」
「……………今回の聖杯戦争は少し変わっているね。前回行われたらしい聖杯戦争と比べるとキャスターがいないらしい。運営側の言い分からすると大聖杯に関与できる可能性があるキャスターは排除したみたいなんだけど……………」
「成る程、対魔力が低い俺にとってはいいニュースだが、もし6人だとしたら疑念が出てくるな」
「ああ、五人のサーヴァントの魂で願望が叶うのか?そして何よりも前回より数が減っているのか?気になる事だね」
リドリーとエル・シッドは思考する。彼らは"6組"の魔術士とサーヴァントと闘うつもりであった。前回伏神で行われた聖杯戦争も7組で行われており、更に元の冬木市の聖杯戦争においても7人である
7。この数字の由来は人類存続を守る抑止力の召喚、霊長の世を救うための決戦魔術である降霊儀式・英霊召喚によって召喚される英霊の頂点に立つ始まりの七つ、グランドクラスから来ているとされている
その数字の前提を易々と崩せるのだろうか?その程度の性能の聖杯なら聖堂教会も腐った肉に見向きもしないハイエナの如く無視するであろう>>501
この奇妙と言ってもいい事実からは彼らは一つの答えしか出せない
「「もう一組いるのか」」
彼らの脳裏にお互いの声が響く
リドリーのトンチキ脳細胞神経とエル・シッドの熟年性戦脳細胞神経は同時に一つの"妄想"へと行き着く
「そう考えれば辻褄が合うよ!」
「ああ、もうサーヴァントが召喚済みなのであればわざわざキャスターを召喚するという手間もリスクも省ける。恐らくその組は前回の聖杯戦争の優勝者だ」
「願いを叶えるのは6組だけでいいらしいからね。恐らくその優勝者は複数叶えたい夢があったんだろうね。だからこの聖杯戦争の参戦できる数を減らしたんだ」
「てことはよ…前回の聖杯戦争の記録を調べれば誰かわかるんじゃないのか?」
「残念なことに記録が曖昧なんだ。どうやらこの土地の管理人が隠蔽したらしい。分かっている事はここでほんの数年前に聖杯戦争が起きたって事くらいさ」
「無い物ねだりはできんか。まあ仕方ないことか」
エル・シッドは『お前はアホウだ』と書かれたTシャツの上に羽織っているコートの内ポケットからメモ帳を取り出す
そこに
セイバー陣営俺ら ランサー陣営? アーチャー陣営? ライダー陣営? アサシン陣営? バーサーカー陣営? X陣営?(いるとしたら前回優勝者?)
と書き込んだ>>503
「で、アンタ。ほかに情報は?」
「どうやら三騎士以外のどれかの霊基がアヴェンチャーに変わったらしいけど、正直何が変わったのかは情報が少な過ぎるね」
「復讐者とはまた厄介な奴が出たもんだぜ。復讐は果たされた時の快感はえもしがたいものだからな」
「君はした事あるのかい?」
「俺についての研究書だの読めばわかる事だぜ?ク.ソマスター」
そういうとエル・シッドは車の窓越しから夜空を見上げる。生前の空とは比較にならないくらい闇だ。彼は過去を語ろうとしない。リドリーはその理由をそれとなく察していた
今聞く時ではない。リドリーのトンチキ脳細胞神経も空気を読むことがある。彼はもう一つ気になっていた事を話した>>504
「実はね。少し聞けた中で三つほど固有名詞が出たんだ」
「ほう、中々面白い情報じゃあないか。教えてくれよ」
「いやーね。聞こえたのは『アオ』、『ハル』、そして『東雲の嬢ちゃん』さ。話の流れからすると『アオ』はさっきの教会の神主で『ハル』っていうのはさっき言った機械に詳しい協力者さ」
「『ハル』って奴の正体分かるか?」
「今情報材料が少ないから流石に……………家帰って情報を集めてみるよ。まあ詳しい事話しているから恐らくこの土地の有力者だと思うけど」
「もしかしたらそいつが優勝者かもな」
「確かにあり得るけどね。で私が注目したのは『東雲の嬢ちゃん』の部分さ」
「東雲っていうと……………お前が言っていた土地の管理者か」
「そうだね。ここは朽崎、東雲、オルバウスの三つが管理しているんだ。で東雲家は今若い当主らしいんだけど、この子はどうやらかなり常識的らしい」
「魔術師らしくないってことか?」
「ああ、彼らはこんな事言ってたんだ『まぁ東雲の嬢ちゃんを説得するのは骨が折れた』。この言葉から彼女はどうやら随分と戦争するのが嫌だったらしい。魔術士っていうのは根源に至れるなら何だってする人でなしどもさ。それなのに渋っているのは、この子は善良という証明にならないかい?」>>507
終わりです>>467
目の前の老人は吐き捨てる。血と共に、内心の煮え滾る激情を放出する。
「お前のその目を知っているぞ……!私と同族の目だ!」
「……いいえ。わたくしは、貴方のようにはなりませんわ」
毅然として告げる。しかし、この返答に老人は嗤った。
「いや、お前は私と同じだ。満たされる事を知らない、周りの全てを不幸にしても止まらない餓鬼の眼だ!」
「わたくしと貴方は違う。絶対に……!」
短く返答する。
わたくしは世界を良い方向に変える。人と人が、当たり前に手を取り合うような世界に近づけてみせる。ーーーけれど、『満たされる事を知らない』という一言は、わたくしの心に消えない染みのような物を残した。
老人の体が光の粒子に包まれ、薄れて行く。そして最期の力とばかりに、嫌らしい笑みでわたくしに呪を掛ける。
「お前がどれだけ否定しようと、私はその目を知っている。ああ、世界中の誰よりも、だ。さて、どこまで否定していられるか、な……」
最後の一音を告げると同時、英霊ジャン・ポール・ゲティは消滅した。残されたわたくしは、そっと胸に手を当てる。
心が落ち着かず、気分が良くない。
老人の言葉が見えない手となって、キュ、と心臓を掴んでいるーーーそんな気味の悪い錯覚を覚えていた。
「マスター」
ふと、声が聞こえた。耳に心地よい低音は、先程の錯覚から少しだけ、わたくしの意識を逸らしてくれた。
声の方を向けば、居るのはわたくしのサーヴァント。左腕を負傷しているが、穏やかな笑顔を浮かべている。
「無事……では無いね、お互い」
青年が口を開き、肩をすくめる。どこかおどけたような口調と仕草に、重く沈んでいた心が僅かに浮上する。
「ええ、お互いにボロボロ。初戦でこれでは、先が思いやられますわ」>>509
「面目ない。どうやら、肩に力が入り過ぎてたみたいだよ。だけど次こそは、君にとびきりの音楽を聴かせてみせるよ」
そう語る青年は、影が薄らいでいるように見えた。その様子を不思議に思って、問いかける。
「貴方は、何故嬉しそうなんですの?」
「ん?ああ、彼ーーークリストファー・クライのお陰かな。命を取り合う間柄だったけど、彼の最後の表情に、僕は昔の自分を思い出したよ。強大な物に挑んでいた時の自分をね。彼にも彼なりの苦悩や願いがあったんだろうけれど、少なくとも僕は彼に救われたよ」
その言葉に、胸が痛んだ。キャスターを救ったと言うクリストファー・クライ。その彼に『その顔を自分にも向けて欲しかった』などと思う、身勝手な自分が頭をもたげる。老人の言った『満たされない』とはこう言う事なのだろうか。
「マスター?」
キャスターが問い掛けた。瞬間、ハッとして答える。いつものように、"淑女らしく"
「なんでもありませんわ。とにかくこれで目標に一歩近づきましたわね。貴方の言うとびきりの音楽、期待していますわよ」
「ああ、任せてくれ」
先を歩く主人を見つめながら、キャスターは内心で呟く。
(さて、彼女もなかなか複雑な心境らしい。どうしたものか……)
〜トーナメント勝者:蒼木ルイ&オルフェウス〜「伏神は現在行方不明者が多発しております。夜間の外出にはくれぐれもお気を付け下さい。」
朝のテレビのニュースを聞きつつ東雲家のキッチンに立ちながら玲亜は料理を作っていた。なぜ料理を作っているのかというと
「おい、早く次の食事を持ってこい。もうさっきのは食べ終えたぞ」
「ちょっとは辛抱を覚えなさいよ!どれだけ食べるのあなた!」
先に召喚したサーヴァントの要求に応えるためであった。召喚時に正規の方法ではなかったためか魔力の蓄えが乏しかったため何らかの形で魔力を補給したいとのことである。魔力の補給の方法はいくつか存在しているが魂喰いなどはもってのほかであったため一番行いやすい方法であり効率もよくはないが食事による魔力補給を取っている。量が必要であるということは初めに言っていたがまさかここまでの量が必要になるとは完全な想定外であった。
「はい!とりあえずもう家にある食材は全部使ったからこれで最後ね。」
「そうか、ふむ…まあ3割は回復したといったところか。まあこれで多少は戦えるようになったであろうよ。」
出された肉料理を食べつつそのサーヴァントはつぶやく。どうやら最低限のコンディションは整ったということだろう。調理の作業から解放され一段落ついたところで疑問に思っていたところを尋ねていく。>>512
「それで、あなたのクラスはアヴェンジャーだっけ?」
「そうだ。聖杯戦争の本来のクラスからは逸脱した霊基に分類されて召喚されたのが俺だ。」
アヴェンジャー。数多くある聖杯戦争の中において本来の7クラス以外に分類されたクラスが稀に召喚されるということは聞いたことがあった。だがまさか自分がそのようなクラスを呼ぶことになるとは思ってもみなかったことだと玲亜は頭を抱えているのが現状である。
(エクストラ…それも復讐者のクラスだなんて私に扱いきれるものとは思えないわ)
うーんとうなりながら悩んでいるとその様子を食事しつつ見ていたアヴェンジャーは軽くため息をつくと
「ふん、まあ腹をくくることだなレア。不本意だが呼ばれた以上最低限のサーヴァントとしての役目を果たしてやるさ。俺の邪魔さえしなければな。」
「邪魔?それはあなたが聖杯を求めている理由?」
「聖杯だと?そんなものは俺に興味はない。俺はただ生まれた意義に従って行動するまでのことだ。」
そう語ったアヴェンジャーの瞳に浮かぶ狂気を感じた玲亜は恐怖を覚える。目標のためであればどんなことだってやるというあの時計塔の魔術師たちと同じような冷たい目である。だがそれと同時に…
(なぜだろうか、アヴェンジャーの言葉はどことなく虚しさを覚えているような…?)>>513
一度ふっと笑うとアヴェンジャーはその狂気を消し食事を再開する。
「最低限好きにやらしてくれるなら俺はお前のことに口は出さん。今後お前はどう動く?」
「そのことね。まず私はこの家から出て拠点を作るわ。」
「ほう…?」
興味深そうに耳を傾けるアヴェンジャー。当然の反応だろう。魔術師としての重要な工房と霊脈の整ったこの家を放棄するというのである。
「防御を捨てるというのは得策ではないと思うが?」
「それが一流の魔術師であるならね。あなたも知っての通り私は大したことがない魔術師だからここに留まっても利点なんてほとんどないの。加えて私が今止めたいのは魂喰いをしているやつら。でもやつらはおそらくいつまでここを襲撃はしてこないでしょうから。」
魂喰いに手を出すサーヴァントの動機は大きく分けて3パターンあると玲亜は考えている。まず一つ目はマスターを失ったサーヴァントが現界するための苦肉の策。これに関しては魂喰いをしないと消えるという状況のため戦闘などしている余裕などないだろう。二つ目は未熟な魔術師の策としての魂喰い。これも魂喰いに頼らなければ勝てないという非力なサーヴァント故の作戦であるためわざわざ管理者というビックネームに自分から挑むという博打を打つほどの余裕はないだろうという理由である。そして最後のパターンであるがサーヴァントの強化だけではなく自身の趣味や悦楽も込めた魂喰いである。これの場合は特に必要もないのに魂喰いを繰り返している連中であり期間中ずっと魂喰いを行う危険性もある。サーヴァント強化以外の自身の魔術の研究のために犠牲者をつくるという非人道的な行為も平気で行うだろう。魔術師である以上そのようなことをしても全く不思議でもないのである。
このため研究のための素材の確保ができるならずっと行いそれを止めに来てくれるのなら返り討ちにすればよいという考えから自分から積極的に手を打つようなタイプではないと玲亜は想定した。>>514
「その上で敵の本拠地であるこの家に襲撃をしてくるような魔術師は自身に実力のある魔術師ぐらいしかいないでしょうから…私では荷が重すぎるし止めたい対象でもないのに今ここで戦っている余裕もないわ。だからここは放棄する。これが私の考えよ。あなたが食べた料理でうちの食材も全部処理できたからその心配もないわ。」
「なるほどな、意外と考えてるのだなレア?」
「当然よ。あと放棄するといってもちゃんと魔法で霊脈とかにカギはかけるし使い魔や罠も置いてはいくけどね。」
「さて、ではサーヴァントとして尋ねようか。俺は誰から斬ればいい?」
「当然、魂喰いをしてるやつらからよ!」
アヴェンジャー陣営 活動開始 拠点移動
アヴェンジャー真名 マスターいまだ知らず
「あ、それともし敵サーヴァントと戦うことになったらあなたはセイバーと名乗りなさいね!少しでも情報を混乱させないとダメよ」
「……やれやれ小心者だな。」>>515
アヴェンジャー陣営 召喚後の翌日の朝です
時間軸で言えばリドリーさんが教会に行く日の朝ですかね>>515
魔法でカギ×→魔術でカギ〇
です。この間違いはダメですね>>511
勝者にエールを、次の闘いも存分にキャラの内面がワチャワチャなることを期待しております!マグダレーナ「何より、オリジナルが手を伸ばさなかったのって、それを解ってたからじゃないかしら?」
予想通りの答え、予想通りの展開だ。確かに『人類の恒久的平和』などと言われても普通は願望器でポンと叶えるものと思うだろう。
しかしそれではいけない。世界が平和になろうとも生きとし生ける人類が代替わりすればいつかはそれは崩れるだろう。
エルシュタイン「そうですね。正確には『私を不老不死の存在へと昇華すること』を願います。人類の平和はその後私が人々を導いて成し遂げます」
マグダレーナ「なっ!?そんなの、ただの征服じゃない!」
エルシュタイン「統治、と言って欲しいですね。一時の平和ではなく、永遠に人を治め続ける王[歯車]として君臨する。『人を治めるシステム』へと成り果てるとも言えますがこの身はエルシュタイン本人ではない。であれば個を捨てる事にも躊躇はありません」
彼女の反応からやはり相容れないのだろうと結論付ける。残念だ。ルールの抜け穴を使えば彼女達二人とも仲間に引き入れられたというのに。
やはり相手を殺めずに優勝は不可能だと自分の中に残っていた一欠片の甘さを捨てる決心をして魔銃トワイライトを握り締める。
この語らいを以て私は完全にエルシュタイン[甘い考え]と決別する。
エルシュタイン「では次は貴女の願いを聞かせて頂けますか?こちらだけ話すというのは不公平でしょう?」はい、ここまでとなります。
ぶっちゃけエルシュタイン’のやろうとしてることはSINで始皇帝がやってたことに近いです。世界中を不変の存在が統治し続ければ争いは起きないよね☆
という訳でマグダレーナの願いを言うところから先をお願いします。
ちなみに二人とも仲間に引き入れられたというのはマグダレーナとスルトちゃんの契約を切って(この時点でマグダレーナはサーヴァントを失って敗退扱い)スルトちゃんをエルシュタインと再契約。そしてマグダレーナをエルシュタインの軍門に降させれば誰も消滅することなく一回戦突破という訳です。
まあそんな展開色々な意味で有り得ませんがね!(不老不死になったら流れる血もないのでは…?ボ訝)
>>522
ええ、まあ。聖杯で直ぐに叶えるのではなくあくまで自分たちで辿り着くという訳ですね。
そしてそれまでに失われた命を教訓にそれ以降の治世に活かそうという感じです。
オリジナルはきっとそれまでに起こる戦争を許容出来ずに踏み切らなかったのではなかろうか。投稿します
>>525
記憶というものは多岐に分かれる。
一言にいっても長期、短期、断片、継続、自伝、展望……。
それらは無限とも言っていい選択肢と条件の元、分類され名付け(ラベリング)される。
記憶というものは脆い。
僅か一秒でもあれば、彼らは姿を自由に変え、己の印象を塗り変えようと躍起になる。悪夢にも呪いにも希望にだってなってみせる。
だが、このウィリー・ジャックという一人の男の前にはこれらの事実は大した意味を有さない。
彼からすれば記憶は全て等しく平等だ。
あらゆる記憶に差は無く、そして声を出す事を許さない。認識にも違いなどない。
これまでもこれからもそうなのだろう。
ーーー文字通り次元の垣根を超えて記憶に侵される存在が目の前に現れるまでは。>>526
月光に当てられた埃が踊る。
ここは本来の役目、いや役目すら果たせず何年経ったのだろうか。ひび割れた床と乱雑に捨てられた机が転がっている。
ウィリー・ジャックは廃ビルの一階にいた。
理由は無論、ここを工房へと変貌させる為である。
魔術工房とはすなわち魔術師が少しでも術式を描きやすく、少しでも霊薬を作りやすくという魔術師がするべき事を最適化させる場所である。その重要さから『異界』と表す者もいる。
これがあるか無いかで今後の作業の効率と精度に大いに変わる上に、神秘や振るえる魔術に制限がかかる。故に本来は何世代に渡って造られるべき工房を仮の形でもいいから造らねばならない。
そして今回の聖杯戦争という殺し合いに置いては自分の様な魔術使いーーー真理の為ではなく別の目的の手段として魔術を使う者の事も想定してだ。
自分が神秘の欠片も持たないであろう、近代的なウィンチェスター製のライフルを扱うのと同様に兵器を所有する魔術使いがいるかもしれない。
そのため同じく魔術使いである軍人の友人から教わった『爆発反応装甲(リアクティブアーマー)』の技術を応用し、加工した礼装を設置する。>>527
「あのさぁマスター。私いつまでここに居なきゃいけないの?」
不意に暗がりから声をかけられる。だがウィリーは慎重に作業をしているため声の主を一瞥すると再び作業へと戻った。
「やる事無くて死にそう…いや死ぬ。せめてあの街に飛び降りて死にたい…いやだからと言ってその作業手伝いたいとかそういうわけじゃ無いけど…」
「これが完成するまでは警護も兼ねてこのビルから出るな」
「えっ…何それは…」
マスターの放った無慈悲な一言にアサシンは声を漏らす。このエーテルで構成された体はあの街に出てこそ、その役目を果たせるというもの。こんな埃臭いビルでは宝の持ち腐れだ。
「あーやる事ねぇなぁ。星見の天文台が恋しいよ」
鬱憤を吐き捨てながらビルの中を行き場もなく歩く。
第一あのマスターの男は気に入らなかった。何というか彼からは人間らしさというものが感じられないのだ。
あの深い洞の様な、感情が生まれた時から存在していないかのような目は気に入らない。きっと自分が何かを彼にイタズラしたとして冷静に対処するだけなのだろう。
そういう人間はつまらない。
悲劇も喜劇も楽しめるという人としての特権を捨てるなどアサシンには考えられなかった。>>528
「屋上行こ…」
何故かまだ稼働しているエレベーターに乗り込み最上階を指定する。霊体化なりサーヴァントとしての超人じみたスペックを活かせば屋上へなどあっという間に着けるはずなのだがそれをしないのは生前の感覚がまだ抜けない故か。
しばらく揺れるた後、エレベーターは口を開いた。それと同時に音を立てて風が入り込む。
「うぅ」
ちらりと空を覗き込む。地上の極彩色に空の星は塗り潰され、彼等はその特権を奪われて久しい。
だが、それはアサシンからすれば新鮮な光景だった。あの何の刺激も無く戦争の影響もロクに受けなかった田舎では味わえなかったからだ。
そして屋上の壊れかけた手摺に身を乗り出して街を俯瞰する。
その瞬間アサシンの全身に電撃が走ったかの様な衝撃が走る。思わず息をのむ。
それは聖杯からの与えられた知識の範疇の筈なのだが、やはり実際観るとまるで違う。>>529
天を突く様な巨大なビル達。
陸を埋め尽くす道路と車達。
一時も休まず光り輝く海原。
空を駆けるその飛行機の点滅はそれだけでアサシンの鼓動を早くした。
ある者からすれば光害が飽和した発展の末路と評価するだろう。
だがアサシンからすればこの風景全てが素晴らしくどんな自然の絶景よりも美しく思えた。
あの街を自由に闊歩できたらーーー想像するだけで体が意識する間もなく震える。
これを見ていられるのなら、もう少しだけここにいてもいい、とアサシンはそう思った。以上です
>>532
いいですよ先日のダイジェストだけではあまりにも味気ない&こちらの状況が一切伝わらなかったので、短いですが、こんな感じですっていう捕捉の文章を投下します。
>>534
人気の失せた広い公園の中心に、異形の魔術師は鎮座していた。
彼には魔術工房も、身を隠すための住みかすら必要としない。生態系の絶対的頂点に必要なのは、ただ獲物を仕留めるための狩場のみだ。
既に餌はまいた。四方に散った我が分身は、遠からず町に潜み住む魔術師(ねずみども)を暴き出し、狩場へと引き摺りだすだろう。
配置したアーチャーからの連絡は未だないが・・・・・・まあいい、斯様に焦がれ待つのも狩りの醍醐味というものよ。
願わくば、少しでも喰らいがいのある獲物であればよいのだが。
それこそ、この地へとたどり着ける程度には、と、ロワインは薄く嗤う。
遮蔽物のないこの場所は、アーチャーの特性を最も生かせる地形でもある。
身を隠すことの叶わぬ獲物は、なすすべもなく超遠距離からの精密射撃にさらされることとなる。
弾の軌道を見極めようにも、夜中という視覚的情報の効きにくい時間帯であることに加え、必中能力による弾道湾曲を応用した射撃地点のごまかしによって、それも不可能に近いだろう。
研ぎ澄まされた牙は、肉を食いちぎるその時を静かに待ち続ける。>>535
以上ですさてと、トーナメント更新。
浮遊し、変幻自在の軌道で襲いかかる八本の剣を避けて、あるいは砕いて、私は何度目かの攻勢に出る。
私の剣はまたしても槍に止められてしまうが、それは解ってた。
私は、下から掬い上げるように切り上げ、強引に槍を逸らす。
そして、左手に炎を纏わせ、がら空きにした胴体目掛けて掌打を放つ……が、あと少しの所で、後ろに跳んで避けられてしまった。
「それは解ってましたよ」
堂々と宣言するセイバー。
実際、これまでも含めて私の動きを先読みしてるとしか思えない。
毘沙門天は、神代の英雄並みの身体能力に加えて、そういう加護か何かもセイバーに与えて居るみたいだ。
身体のあちこちに掠り傷を負った私に対して、宝具一つを吹き飛ばされた後は未だ無傷のセイバー。
戦況は、余り良くなかった。エルシュタイン……いや、その再現体の目が見るに耐えないものになった。
私は、彼の事を買い被り過ぎていた。
彼は、私の目の前で完璧人間からガラクタへと成り下がってみせた。
もし、オリジナルのエルシュタインがこれを見たら、怒るだろうか、それとも嘆くだろうか。
まあ兎に角、再現体への回答は決まっている。
「只一人の心優しい少女の心からの笑顔の為よ。」
世界平和を謳いながら、大量破壊兵器が乱れ飛ぶ地獄すら生温いような世界大戦を引き起こそうとする人でなしに、私は自分の願いを叩きつけた。
「そうですか」
平然としたままの再現体。
「ええ、貴方にはその価値は解らないようね」
私は令呪に力を込めてこう続ける。
「だから……バーサーカー、全力よ!」暖かい魔力が流れ込んでくる。
令呪が、今最も欲しい形で使われた。
全力……そう、令呪一画を燃料にして、私は最大限に魔力を放出する。
「炎の巨人……」
そう呟くセイバー。
まあ実際の所、これでも巨人よりずっと小さいけど。
「……もう……思い通りにはさせない……」
再び打ち合う。
これでもセイバーは先読みして防いでいるけど、それだけだ。
私の剣は神殺しの剣。
毘沙門天の力を宿したセイバーでは、最善の防御を続けても一合毎に怯んでいく。
スピードの差が埋まった今では、浮遊する剣を動かす余裕すらないだろうし、与える気もない。
けど、これでは時間が足りないかもしれない。
だから、攻め方を変える。セイバーが大きめに怯んだ所で、地面に剣を突き刺す。
ひび割れ、融解し、隆起する地面。
足をとられたセイバーを、炎の拳で殴り飛ばす。
「貴女は強い……しかし、その力、何時まで保てますか?」
受け身を取ったセイバーが、浮遊する剣を操る。
私を近づけさせずに時間切れを狙う気のようだけど、そうはさせない。
炎を推進力として、私は飛ぶ。
勿論、このまま真っ直ぐ突っ込むなんて見え透いた手は使わない。
急加速と急停止、方向転換を繰り返し、邪魔な剣を片っ端から砕いて……ジグザグに飛ぶ焔の流星の出来上がり。
そして、適度に翻弄した所で、剣に魔力を込める。
「……これで……終わり……」
通常の五倍以上に大型化した炎の刃で、私はセイバーに渾身の薙払いを放った。>>542
あ、ロバートさんロバートさん。急な話というかほぼほぼ自分の独断専行というかですが、予選で「明星さんというご新規さんが入ったので、第■回聖杯大会の開催をしないか」という話になってまして。Gmとして是非まとめをしてくださると有り難いです。>>542
うむ、これは強い(確信)ではこの続きを書かせて頂きます。
この後エルシュタインが令呪を切って謙信の宝具発動まで書くのでそれに対するスルトちゃんの宝具発動でのビームの撃ち合いや追加令呪の阻止等をお願いします。巻きで終わらせようかと思ってるのでその阻止の次に押し負けようかと思います。九終のインタビュー投稿します。
>>498
「うわぁお膠着状態。しかもマスターがほとんど見当たらないとか無いわ〜。黒野君はいるけど彼味方だし。…多分。え〜っと、コッチは。あっゲルトさんいた。あーでもアーチャー一緒かぁ。対人狙撃は位置バレが無いようにするのが鉄則。ムリそうだなぁ」
『バーサーカー。アーチャー陣営は高台にいる。気をつけてね〜』
『りょーかい。……ああ畜生!雑竜どもがウザってぇ!』
さぁて、どうしようか。今は乱戦状態を狙撃とかしようと思ってココに来たけど、厳しそうだなぁ。
ココはとあるビルの屋上。……なんだけど、様々な小屋とかタンクとかの林立でごちゃっとしてる。何故かというとルーカス君の狙撃を警戒してるからなんですが。あの時、窓ガラスは割れてなかったけど、天井に穴が空いていた。つまり透明なモノを透過する性質がある、と仮定できる。つまりこういう障害物多目な場所なら狙撃への危険性は大幅に下がる筈。と思っているけど、どうなんだろうね。
あっヤバい。黒野君ピーンチ!雑竜の牙が当たりそうになってる。
「スゥ〜〜。……ハァーーー。」
複数回弾丸を発射。そして数秒。
「よっしゃあ、ヒットォ!黒野君に怪我は、なさそうだな。良し良し、と。しっかし、コレ、ルーカス君に位置バレしたよなぁ、多分」
ま、バーサーカーには引き続き暴れてもらって(多少の損害は無視できるのがバーサーカーの利点の一つだし)、周りの警戒に意識割かないとね。
がしゃど蜘蛛、索敵とか引き続きよろしくね〜。>>545
──インタビューを開始します。まず、名前と召喚するサーヴァントのクラスをお願いします。
「ヴィルヘルム・ヴァンシュタインだ。召喚希望クラスは、ランサーです。」
と、私は心のスイッチを代行者モードに切り替えて、質問に答えた。
──ランサークラスですね、(三騎士)の一角にして、高い敏捷性と白兵戦能力を有するクラスであり、それを活かした堅実な戦闘が期待できますね。
次に、聖杯大会に参加した動機は?
「自身の実力を確かめたいからだ。」
──では、聖杯にかける願いは、決まってますか?
「今の所は、決まってないので、サーヴァントの願いに優先します。」
──では、最後に聖杯大会への意気込みをどうぞ!
「自分の実力を信じて、この聖杯大会を勝ち取って見せる!!」
──以上インタビューをお伝えしました。九終インタビュー投下します。
インタビュー開始
「それでは、これから参加者である九重海音ちゃんにインタビューをしたいと思いまーす!」
如何にも若手な女性キャスターが朗らかな声と共にマイクを私に向けた。それと同時に先ほどまで女性キャスターを写していた撮影カメラもこちらを向く。
全く緊張していない、と言えば嘘になる。
そもそも人前に出て喋ることはあれ、テレビの、それもインタビューともなると中々縁はない。こう言ったことはむしろ島長である八雲さんや月姉の方が得意だろう。八雲さんは表向きには島の代表者で時々、芸能人の番組で写っているところを見たこともある。それ以上にテレビでは月姉の方が見かけるけれども、あの人はあの人で元からこういった手合いは得意な人だ。今もかなり忙しいらしく、来年には事務所の方針で女優業をやることになるそうだが、あの人ならきっと大丈夫だろう。
「お手柔らかにお願いします。こんな形でテレビのインタビューを受けるとは思っていませんでした。」
「あ、もしかして緊張しちゃってる?」
「ええ、少しだけしています。あまり喧嘩などしたことがないので、まず相手の方にきちんと向き合うことが出来るのかな、と。」
本当に言いたいことは伏せて、なるべく耳触りのいい言葉を並べたてる。もしも今ここでこの大会の目的をバラそうものなら、きっと天莉の無事は保証されない。どころかあの女、エリザヴェーダは必ずこちらが最も嫌がる手段を取るはずだ。故に今ここでバラすような真似はしない。
「では、ズバリ聞いちゃいますが!なぜ今回、海音ちゃんはこの聖杯大会に参加したのかな?」
「そうですね………。」
妹を助けるため、この島を守るため、聖杯を取らせないため……。参加した理由なんていくらでも出てくるが、どれも表に出すべきではない。参加者全員が善人だとは限らないし、エリザヴェーダのような性根の腐りきった悪人がゼロだとは思えない。下手にそんな事を言って天莉に危険が及ぶくらいなら、まだ私に目が向くようにするべきだ。となると、一番無難なのはーーーーーーーーーー>>549
「この島の平穏がいつまでも続けばなと思って参加しようと思いました。……我ながら少し理由が子供っぽいですけれど。」
「そんな事ないよー!まだ高校生なのに島の事を考えるなんて、誰にでも出来ることじゃないってー!」
……それはそれとして。いくらなんでも、このアナウンサーはフランクすぎではないだろうか?いや、どちらかと言えば私が年下だから適当に煽てておけば人気が出る、とでも思っているんだろうか。だとすれば浅ましい考えにもほどがある。
「ここからが本題になるんだけど……ズバリ!海音ちゃんはどのクラスのサーヴァントを呼ぶつもりなのかな?」
「…………!」
やはり、というか予想通りの質問が来た。これに限っては嘘をついてもどうにもならない。あの後、私の提示した条件にエリザヴェーダは1つ提案をしてきた。
「さっさとサーヴァントを召喚するんならしてもいいわよ?ただし、それをするのなら召喚したサーヴァントの真名を公開するくらいのハンデは背負ってもらうわ。でないと他の参加者に不公平でしょう?」
私はその提案に乗った。もちろん、真名を晒してしまうというデメリットはある。それでもサーヴァントと先に作戦を練ることが出来るのは大きいと、私は思った。
「その事ですが、私は既にサーヴァントを召喚しています。クラスはアーチャー。真名をコンラと言います。」
「……え?嘘、もう召喚しちゃってるの!?」
アナウンサーを含めた撮影スタッフがざわめきだす。奥にいた明らかに一番上のスタッフは「おい、どうなってる!?召喚は目玉の1つだから全員同時に行うんじゃなかったのか!?」と近くにいるスタッフに当たり散らしている。
「これに関しては運営の方からの提案を飲んだ形になります。他の方に先立ち召喚しても良い、その代わりにサーヴァントの要である真名を晒せ、と。ご不満がありましたら運営の方に問い合わせてください。」
さて、ここからが本番だ。この大会(見世物)を終わらせるために。そして、天莉を取り戻すために。
「私は相手がどのような方であれ、私は手を抜くつもりはありません。私は、私が成すべきことの為に戦います。」
深く深呼吸をする。
「ーーーーーーーー聖杯は、私がいただきます。」
インタビュー終了。とりあえずアーチャー召喚シーンを投下します。
聖杯大会開催前夜。
あと5分もすれば日付が変わる時間に、私は自分の住居である九重神社にて召喚の儀式を執り行おうとしていた。
「これでよし、と……。」
……あの女に渡されたメモ通りに陣を敷いた。中央には既に触媒である小さな金の指輪が置いてある。
「すう…………はあ…………」
一度、深く深呼吸をする。この神社に流れる清らかな魔力が体に染み渡っていくのを感じる。
「…………よし。」
目を閉じて右手を前に突き出す。正直なことを言えば不安で仕方がない。触媒があるからといって、本当に望むサーヴァントが来るかどうかは分からない。それこそ、それに近い何かを呼ぶ可能性だってゼロとは言い切れない。でもーーーーーーーー
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師九重始終(ここのえ しじま)ーーーーーーーー」
やってみなければ分かるものも分かりはしない。>>552
「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却するーーーーーーーー」
触媒を囲む陣に魔力が満ち始める。
「――――告げる。」
目を開き、その瞬間を見届けるために。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
召喚の詠唱を終えると陣を囲んでいた魔力が消え、陣の中心に超高濃度の魔力が満ちる。一瞬昼間と錯覚しかねない光があたりを照らし、そしてーーーーーーーー
「ーーーーーーーーサーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上しました。」
陣の中心には私よりも一回り小さい少年がそこにいた。光の反射次第で赤にも青にも見える短い紫の髪。サファイアを思わせる紺青の瞳。私は彼の真名が何であるかを知っている。だからこそ、強い驚きはない。
「愚問かもしれませんが、お聞きします。貴女が私のマスターですか?」
まっすぐと彼は私を見つめる。そしてその問いに対する答えなど決まっている。
「ーーーーーーーーええ。私があなたのマスター、九重海音よ。よろしくね、アーチャー。」
「こちらこそよろしくお願いします。喚ばれたのが貴女のような綺麗な人で良かった。」
私はこのアーチャーと共に、この聖杯大会を勝ち抜く。そして必ず、天莉を助け出して見せるーーーーーーーー!
ーーーーーーーーアーチャー、認証。真名、把握。
ようこそ、幸せ(災い)眠る戦いにーーーーーーーーここまでです。次の手番をどうするか決めましょうか。
バーサーカー召喚します
ユージーン・バックヤードは召喚の場に町外れの廃屋を選んだ。これからやろうとしていることに都合が良かったからだ。
ユージーン「さて…」
召喚の儀式を整えた部屋で最後の仕上げに取り掛かる。まずは触媒。
物凄く古そうな刀の鍔を召喚陣の真ん中に置く。日本の田舎の古道具屋で格安で手に入れたもので調べても該当する形が無かったので何時の時代の何処の誰が使っていたのかも不明。金目当てで聖杯大会に出るユージーンにとって高い金を積んで触媒を手に入れるというのは本末転倒というもの。
ユージーン「数百年も島国で蠱毒していたような戦闘民族だ。バーサーカーで呼ぶにはうってつけだろ」
手早く準備を終える。そうしないとバーサーカーを召喚すると宣言したのに他の陣営に先を越されましたでは笑い話にもならない。
意地の悪いマスターならそうするだろう。少なくともユージーンはする。
ユージーン「触媒よし、召喚陣よし…」
ちらりと周りを見る。撮影スタッフが数人、いつでもどうぞと合図する。
ユージーン「(……よし)」『ーー素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』
部屋の各位置に魔眼を浮かばせている。魔眼の視線による魔力のコントロール及び単純に魔力炉としての働きを成す。まあ、それ以外にも魔眼の役目はある。
『閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる時を破却する』
実はカンペを用意していて視覚共有でそれを読んでいるというのは内緒だ。
『汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世全ての善となる者、我は常世全ての悪を敷く者』
ハッ!皮肉な詠唱だな。と、これから自分がしようとしていることを考えながら唱える。歴史に名を刻む英雄はこれに賛同するだろうか。いや、決していい顔はしないだろう。
『されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――』
その点でもバーサーカーを選んだことはいい方向に働いた。狂っていれば、反対する判断力もあるまい。
『汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーー!』部屋中に吹き荒れる魔力の奔流。激しい風と少しの埃っぽさに目を瞑る。
家系的に目は大切にしなければいけない。しばらくして風が収まるまで待って今度から眼鏡かゴーグルをかけよう。と思いながら目を開ける。
目の前には筋骨隆々の明らかに人外の大男が立っていた。何故人外だと分かるのかと言うと首の辺りで切りそろえられた黒髪から二本、金色の角が生えているからだ。
ユージーン「鬼…か…?」
魔眼で心を読む。そして大男が口を開く前におおよそのことを読み取った。
バーサーカー「はっはっは!!俺を召喚するとは運の無いマスターだなぁ!!見ての通り俺は鬼だ。従順なバーサーカーを望んでたんなら諦めな!!」
轟音。そう表現するのがぴったりな大声でバーサーカー、酒呑童子はからからと笑う。
ユージーン『いーや、来たのがお前でよかったよ。早速だがバーサーカー、食事の時間だ』
バーサーカー「んー?……なぁるほど。確かに俺にピッタリな役割じゃねぇか」
念話で指示を聞いた鬼はちらりと部屋の角で『硬直の魔眼』に拘束されている哀れな生贄を見る。
ユージーン「『魂喰いをせよ』…『島の住人の』とは指定してないもんな」《ユージーン・バックヤードがミッションを達成しました》
ここまでです。
ミッション達成のインフォメーションはこんな感じで良かったでしょうか?場所は九終島の海沿いにあるホテルの上階。そこには似つかわしくないであろう高校生2人が座っており、思い思いのことをしていた。
「おーい、もうちゃんと召喚の手筈は覚えた?間違えないでよ。私が困る。」
「おーおー、わかってますよー。もうとっくに暗記済みだわ。……てかパスなんて繋げられんの?」
「勿論勿論。人と人を繋げるのは私の家の得意分野だもの。令呪所有権はどっちに移るかまでは確定出来ないや。あんたに移ったらあんたに使用判断任せるから。」
「おっけー。……じゃ、そろそろ始めますかね。」>>562
「「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」」
魔力が周囲に渦巻くのを感じる。これが歴史に名を残すサーヴァントたる存在を降ろす儀式であるのだと実感させられる。
「「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」」
「「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」」
「「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」」
「「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」」>>564
詠唱が終わると同時に目も開けられないほどの大気の流れが魔法陣に集まり、人型を形作り、ついにそこにサーヴァントが顕現した。
「サーヴァント、隠神刑部。此度はキャスターのクラスで召喚された。テメェが俺のマスターでっ……おう、どっちが俺のマスターだ?」
「一応どっちともがマスターって事になってるかな。私が水籠初梅。」
「んで俺が氷瀬竜胆。よろしくお願いしますね。隠神刑部さん。」
隠神刑部。伝承では化け狸の中でもかなり名高い狸、つまるところ大妖怪に値する。人ならざる耳と尾があることから彼が人でないことはどう見たって明らかだった。
「おうおう。若い奴らよな。あと竜胆、だったか。敬語は使わんで良いぞ。立場的には俺の方が下だしな?」
にこりと笑って語る隠神刑部。しかし侮ることなかれ。彼は人を騙すことで存在して(生きて)いる化け物である。
あ、終わりです。>>566
まあそりゃあそうですよね。
ふむぅ…どちらかとなるとどちらにコンタクトを取るか悩みます。具体的にはルイちゃんと海音ちゃんのどちらかで悩みます。よーし、そんじゃアサシン召喚投稿しますね。
>>568
「触媒なし、僕自身の相性だけを縁にしての召喚、か」
薄暗い地下室。宗美邸地下のこぢんまりとした空間に立ちながら、樹思わず自嘲の笑みを浮かべる。聖杯戦争、聖なる杯を奪い合う魔術師達の血みどろの戦い。今からそれに挑む為に必要な剣であるサーヴァントを召喚すると言うのに、何も触媒になりえるモノを保有していないのだ。笑うしかない。
参加者には、見知った顔もいる。九重海音、言葉を交わした事はさして無いが、学校内でも有名人である彼女の話などそこら中で呟かれている。そして、宗美家がこの九終島に住み着く事を許可した由緒正しい魔術師の家系でもある。
「……あの娘は、島を守ると言っていた。けど、彼女のサーヴァントは―――――」
監督者から伝えられた、マスターへのミッション。その内の一つには、『アーチャー陣営と敵対せよ』というモノがある。
アーチャーのマスター、それがもし、テレビのインタビューで語っていた様に海音なのだとしたら……教師である樹は教え子である少女と戦う事になる。
「っ……」
自分にそんな覚悟はあるのか、と術式を鶏の血で描きながら思う。
誰かと戦う事など今まで一度もした事が無い。喧嘩も、口論さえも、諍いさえも。
そんな自分に、何かを勝ち得る事など、叶うのだろうか。教え子と戦う事など出来るのだろうか。
「……」
ぴたりと、陣を描く指が止まった。静寂が支配する地下室で、樹はぼんやりと思う。
(もしも、もしも僕が凄いサーヴァントを召喚できたとしたら、気高く凜々しいサーヴァントを召喚できたなら、彼、もしくは彼女はそんな僕を肯定してくれるだろうか。こんな僕を、こんな……ちっぽけな僕を)
すぐに、そんな雑念は頭から振り払う。召喚の際に余分な考えは切り捨てておくべきだ。
陣を描き切り、中心に立つ。考えるべき事はただ一つ、今はサーヴァントを召喚する、それだけだ。>>569
「……素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する――――告げる」
全身の力が吸い取られていく様な感覚に襲われる。室内の空気が通常のそれとは異質なものに変わっていく。それは、人智を超えた存在の召喚を意味していた。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
瞬間、視界を埋め尽くすほどの眩い輝き。人が作り出す光ではない、しかし自然の輝きでもない。それらとは異なる次元、人でありながら人でないもの、英霊の放つ光だ。
「っ……!」
光の先、人影が見える。誰かが、いる。先程まで樹一人だったはずの室内に、もう一人が出現しようとしている。
樹はごくりと唾を飲み込み、光が収まっていくのを待つ。
やがて、一人の青年が姿を現した。英雄、と言うには細身の、何処にでもいそうな青年だ。しかしサーヴァントとは外見が全てでは無い。幼い少女であっても、一騎当千の力を有しているのだ。>>570
「君が、僕の、サーヴァント?」
何度も声を出そうと口を開き、しかし呻く事すら出来なかった樹は四度目にしてようやく言葉を発した。
「……」
青年が樹を見据える。吸い込まれそうな、深紅の双眸。その瞳の奥に樹は良いようもしれぬ恐怖感を覚える。理由がはっきりとしない、本能的なモノだった。
「ヒ、ヒヒヒ……サーヴァント? サーヴァントォ? ヒヒヒヒヒ、とんだ馬鹿野郎が俺を召喚しやがった。どんな触媒用意したんだよオイ」
青年の口から発せられたのは、獰猛な肉食獣を想起させる荒々しい声色だった。樹はじわりと嫌な汗が噴き出してくるのを堪えながら、口を開く。
「触媒は、無い。だから、僕自身が君を呼んだと言っても良い。……君は、誰だ。僕は誰を召喚したんだ」
「ヒヒヒヒ、ヒヒヒヒヒ。誰を召喚したかだって? 良いぜ、教えてやるよ」
青年は耳元まで裂けんばかりの笑みを浮かべ、懐から何かを取り出す。樹はぎょっとした。それは、刃渡り三センチほどのナイフだった。いいや、ナイフと表現するにはあまりにも長過ぎる。刃と言うべきだ。
「俺様はアサシン、真名はエドワード・ハイド。ヒヒヒヒヒ、俺を召喚したって事はもうどうなろうと知らねぇぜ。こちとら召喚されりゃやる事は一つだからよぉ」
「……エドワード、ハイド……ハイド……?」
それは、記憶が正しければ英雄などと呼ぶべき代物では無い。反英雄と呼ばれるカテゴリだ。より詳しく言うならば、サーヴァントになって良い存在などでは決して無い。
「君は、何をするんだ」
「決まってんだろぉが。全部ぶちコロすんだよ。こちとらそれだけだ、それだけしか出来ねぇ。だってそうだろ? 俺ってば悪ぃ事しか出来ねぇんだからさぁあ?ヒヒヒヒ、ヒヒヒヒヒィィィィヒィイイヒヒヒヒヒヒヒ……!」>>571
楽しげに、愉しげに、アサシンは地下室に笑い声を響かせる。血走った瞳には正常な輝きはなく、ぎょろぎょろと忙しなく動き続けている。
「……僕は、殺人鬼を呼び寄せたのか? 何故だ、どうして僕から……」
「どぉして? どぉして? オマエって人間が俺を呼んだんだろーが」
「違う! あり得ない! お前は、お前は……僕から生まれるはずがないんだ」
「んじゃあ自分の胸に問いかけりゃあ良いだろうがよ。恐ろしい快楽主義者の殺人鬼を召喚したのは本当にボクデスカ? なんてよぉ、ヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
駄目だ。このサーヴァントは、駄目だ。こんなサーヴァントを島に置いておく訳にはいかない。樹には眼前の狂ったサーヴァントを制御出来る自信は欠片もありはしなかった。
右手の令呪を向ければ、間違いなくアサシンは樹を殺しにかかるだろう。断言出来る。
(こんな化け物を、放っておけば……)
けれど、と同時に胸に何かが引っかかる。それで良いのか、と自分に問いかける。
もしも、ここでアサシンを自害させれば、インタビュアーの前で答えた自分の覚悟はどうなる? 島を守ると決めた自分自身の心はどうなる?
「……令呪を以て命ずる」
樹は右手を掲げた。アサシンはその言葉を聞くや否や、すかさず手の刃を振りかざす。
左肩に鋭い痛みが走った。確認するまでもない。深々と突き立てられた刃を見るのは嫌だ。>>572
「オイ、どういうつもりだテメェ。まさか俺を自害させようってのか? 俺を召喚したのはテメェだろえが!ああん!?」
「……いいや、違う。お前は道具だ。僕が勝ち上がる為の道具だ。でも、道具に人殺しをさせる趣味は僕にはない。だから……令呪を二画使って命ずる。『僕に危害を加えるな』、『善良な人々を殺、すな』!」
「ッ……テ、メェ……」
左肩から刃が引き抜かれる。樹は激痛に歯を食い縛りながらアサシンを睨み付けた。
「殺、したいんだろう。なら、敵のサーヴァントだけにしろ。六人もいるんだからな」
「……チッ……くそったれが」
アサシンからの殺気が収まっていく。樹程度の魔術師の令呪でも、行動を縛る程度ならば何とか出来るらしい。安堵の溜息をつきそうになるのを全力で堪えながら、樹はだめ押しと言わんばかりにアサシンへと続けた。
「僕はお前に餌をやる。お前は僕に聖杯をやる。ギブアンドテイクだ殺人鬼……!」凄い情けないミス。ハイドのナイフは30センチほどです。3センチってなんじゃい短すぎるわ。
>>510
キャスター ジャン・ポール・ゲティが完全に消滅すると、歩を進めるマスター 蒼木ルイ、キャスター オルフェウスの前に突如扉が現れた。
まるで「最初からここにありましたけど?」と言わんばかりの扉の前後には何も無い。荒野が広がっているだけだ。
勝ち上がった主従は何事かやり取りをした後、その扉を潜って行った。そして扉が閉まった瞬間、その場から跡形もなく扉は消え去っていた。「扉? ……幻覚でも見たんじゃないですか?お疲れですか?」
そして、この荒野に残されたのは敗れたマスター クリストファー・クライ、ただ一人となった。
光弾により貫かれた右肩からは出血が続いている。気を失い倒れ伏している彼は程なく失血死するだろう。 このまま、何も、なければ
『やぁ。お疲れ様だね、ミスタークライ』
それは気を失っている筈のクリスの意識に直接働きかける声であった。
『敗北したばかりで悪いけど君には三つの選択肢がある。ひとつはこのまま消滅すること。ひとつは全て忘れてやり直すこと。』
確かにその声は彼に届き、そしてその内容に思案する反応もあった。
側から見れば何の変化もない。整った医療機器でもあれば彼の意識が回復していないことも確かに出来るが、このやりとりはもっと別の次元で行われているのかも知れない。
『最後のひとつは———』
そして幾許かの後、俯せに倒れた男の身体は荒野と共に消えた。荒野など初めからなかった様に蒼木ルイとオルフェウスは共に自らに割り当てられたあの無機質な部屋に戻ってきていた。
ただ直ぐに戦いの疲労感に押され備え付けのベッドに倒れてしまうのは躊躇われた。勝者の胸に刺さった棘は従者との語らいを求めていたし、彼女にはそれを阻むプライドもあった。
そんな彼女の心中のせめぎ合いを見守り、とうとう声を掛けようとしたオルフェウスが一言発しようとした瞬間、スライド式のドアが空気を吐き出す音と共に開いた。
「フッ……いくら待っても食堂に来ないから自分から来てしまったぞ。 そう、俺の名はクリストファー・D・クライ! クリストファー・デリバリー・クライ! 戦いで昂ぶった心を鎮める暖かいスープを持ってきた男だ!!」
時が止まるとは正にこの状況を言うのだろう。カップを載せたトレーを片手に入り口に立った男と、表情には出さずとも有り得ないモノを見たことに硬直した少女が三度相対した。
「あ、貴方消えたんじゃありませんでしたの?!?!!」
数瞬遅れて溜めがあった分大きなリアクションになったとも取れる彼女の言葉に彼は怪訝な表情を見せる。
その間も無遠慮に部屋に入り、トレーに載せたカップを手渡ししていく。
「君がそう求めたから、だが……?」
「はあ??!?」
そう返しながらカップを受け取ったルイと配り終えたクリスは向かい合う。>>580
「ご自身の勘違いだと気付いたのなら出て行ってくださいっ。わたくしは気が立っていますの!」
そう言ってキツく睨む彼女に対して勘違い男はカップを置き、サングラスを外し、目尻に浮かんだ涙を拭いながら喋り始めた。
「そうは行かないなマドモアゼル。俺が敗者で、君が勝者だ。」
目の前の男が何を言っているか理解に困る少女に言葉は続く。
「そして俺は敗者の選択で君を選んだ。」
そう言うと脇のホルスターに納まった拳銃を素早く引き抜き、手の内で回転させて銃柄ではなく銃身を握る。
この一瞬の間にもオルフェウスは二人の間に割って入っているのだが———男は跪き少女に銃柄を差し出した。
「君が俺の死を望むのならば謹んで受け入れよう。………君が、俺の運命だ。」
少女の手にしたカップの中には白色の強いコーンポタージュがまだ湯気を立てている。つまりこういう事かな!?と思ったんですがどうですかね
敗北したことで女性軽視の一端が晴れたクリスはルイちゃんに謝罪します>>582
なるほど。好き。
レアさんと委員会さん、ここから先はクリスも私が動かす形になりますか?
また、戦闘に参加ってさせられましたっけ?
私が思い浮かべていたのは
アレコレと悩むルイ、付き従うオルフェウス。気晴らしにまた紅茶でも淹れようとオルフェウスが提案。
→食堂の扉を開けるとめちゃくちゃリラックスした格好のクリスが!
→「あ、貴方は死んだはず……」
「俺はクリストファー・フェニックス・クライ。何度でも蘇る男さ」
「返しなさい!わたくしの涙とか感傷とか色々なものを返しなさい!」
「そんな事を言うなよマドモアゼル。俺たちは"お友達"になるんだろう?」
「〜〜!聞いていましたのね!忘れて、忘れなさい、いいえ忘れさせるわ!」
ドゴーン、ガシャーン、ババババ!
とこんな感じの「君達さっきまでのシリアスは何だったのさ!」と言いたくなるくらいのギャグでした。(誇張あり)
まあ、ここで茶化しちゃうと色々台無しだったとも思うので委員会さんがこの発想にならなくて良かったです。
というより、寧ろ「わたくしと戦いなさい」をそう使うか!と唸らされました。予選スレで投稿した通り、第一回大会の続きを投稿します
参加者の方はご確認下さいませ>>590
「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」
ワイバーンの包囲を突破し、どうにか手近な大木の陰に転がり込む。
周囲に並び立つ木々故か、頭上を覆い尽くす枝葉のお陰か。あるいはあえて見逃されているからか。とにかくワイバーンたちの追撃はない。
荒い息を整えつつ、俺はランサーに目をやった。
「ったく、次から次へと……あいつらどれだけの駒を揃えてんだ」
「ひとまず十頭は軽く屠ったが、まるで途絶える気配が見えん。あの分であれば、優に百は召喚できるやもしれんな」
絶望的な予測に眩暈を感じる。
幸いランサーの戦闘力でも一頭二頭程度であればあしらえるが、それもまともに対峙すればこそ。十頭二十頭の群れで波状攻撃を仕掛けられたら間違いなく押し切られる。
ていうか実際押し切られかけたけどな! あとちょっとで牙が肩に届くか届かないかって所だったし! あいつら本当に手加減する気ないだろ!
だがまあ、そのお陰と言うべきか。一番気になっていた目標までの方角がおおよそ判明してくれた。
続く>>591
「だいたい、あっちの方角だったよな?」
「間違いあるまい。乱戦ゆえ発砲煙までは確かめられなんだが、弾道はおおよそ推測できる。あの狂戦士と共に行動するか馬にでも乗っていない限りそう遠くまでは移動できまい」
「バーサーカー、か」
ちら、と木陰から目を向ける。
集中するまでもなく、ある方角から派手な破壊音と咆哮が響いていた。
『オラオラオラァ!! どうしたどうした、もう品切れか!? あァ!?』
『GUGYAAAA!!』
流石にいくらか途切れ途切れだが、恐らくはこんな感じの事を喚いているのだろう。相当距離がある筈なのに易々と内容を察せられた。
戦闘終了後、あの辺りに植物は残っているのだろうか? そんなどうでもいい事に思いを馳せながら、空いた片手は澱みなく作業を進める。
すなわち、別行動を取ってるゲルト達と連絡を取るという作業に。
「もしもし」
『やあ黒野くん。そろそろかけてくる頃合だと思ってたよ』
いつも通りの軽瓢な声。
戦場にあっても変わらないその口調に軽く畏怖を覚えながら、端的に用件を伝える。
「そっちでも『見えた』か?」
続く>>592
『まぁね。目のいい相棒のお陰で、現在地もばっちり把握済みだ。けど、そっちの方は気にしなくていい』
「誰か行ったのか?」
『ライダーのマスターくんがね。是非にと自分の手で決着をつけさせてほしいと、やる気満々で向かってるよ。腕前も相当だし、まず遅れを取る事はないだろうさ』
成る程。それはありがたい。
俺の実力じゃどうあがいても朽崎相手には歯が立たないし、ゲルトなり向こうの陣営なりが戦うだろうと予想していた。
となれば、俺たちがやる事は一つ。
「予定通りだランサー。今から、作戦第二段階へ移行する」
第二段階。つまり、敵同盟陣営から味方――厳密にはもう元・味方陣営のバーサーカー陣営への強襲開始。
こちらの陣営同様に、バーサーカーはワイバーンの群れに足止めされている。仕掛けるなら今を置いて他にない。
が、いざ動こうとしたその時。ランサーが思わぬ行動に出た。
「請け負った、『我が主』。だがその前に切り札を整えさせて頂く」
続く>>593
「――え?」
一瞬、何を言われたのか理解できず呆然とする。
そんな俺をよそにランサーは右手の槍を地面に突き立てる。そして、戦場全体に轟く程の大声と共に言い放った。
「遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ!」
「我が真名は山中鹿之介! 出雲尼子氏が家臣にして、栄光の尼子三傑が一人! 山中鹿之介幸盛なり!」
「そして当世にありては第二の主君、黒野双介に仕えしサーヴァント! 我が身命、流浪の果てに新たな忠義を見出せり!」
――声もなく、その口上を見守る。
大木に背を預けながら、戦場の只中である事も忘れ、目の前の光景に釘付けとなる。
その一言一句、その意味を聞き、考え、理解して。最後はただただ衝撃と感動に打ちのめされていた。
続く>>594
「されど我が忠義に一切の矛盾なし! 尼子への忠義、黒野への忠義! 我にとりて優劣はなく、また優劣の可くも許されざるものであるが為! 故に――」
口上を切り、空いた左腕を高々と天に掲げる。
同時にランサー――鹿之介の身体が輝き、辺り一帯を照らし尽くした。
だが割って入る者は一人もない。サーヴァントも、マスターも、ワイバーン達でさえ眼前の光景に目を奪われていたから。
そして当のランサーもまた、誰に憚る事もなく堂々と続きを述べ立てる。
「故に! 我はこの瞬間新たに誓う! 我が身を御身の下に、御身の命運を我が『剣』に! 聖杯の寄るべに従い、我が忠義を御身に捧げよう!」
「そして月よ、今こそ克目せよ! 生前の祈願今まさに果たされり! 『見よ、我らが七難八苦は此処にあり』――!」
続く>>595
「――――ッ!!」
そこで、ついに限界を超えた。
涙腺が決壊し、とめどなく涙が溢れる。
絶対に有り得ないと理解し、けれど心のどこかで願っていた未来。その夢が、目の前で叶っていた。
同時に、あれ程までに輝いていた光が収束する。光の中心――すなわち、発生源たるランサーの装いは一新していた。
軽装を重視した最低限の鎧装束は、見目麗しい当世具足に。頭部には三日月の前立てに鹿角の脇立て、すなわち現在に広く語り継がれる山中鹿之介の象徴たる兜が。
だが何より特筆すべきはその左手だ。
何もなかった筈の手に、今は強く一本の大太刀が握られている。柄も合わせれば軽く二メートルは超えようか?
「これこそは我が真なる得物、石州大太刀。剣士のクラスであれば、さらなる名刀を持ち込めたのだが……否、此奴を前にして無礼千万だったな」
鞘から解き放たれ、燦然と煌く石州大太刀。その長大な威容は生まれ変わった主の勇姿をいっそう飾り立て、一種の芸術ともいえる調和となっていた。
続く>>596
生まれ変わったのは姿形だけではない。先ほどまでは中堅サーヴァントと同等かそれより下だったランサーのステータスも、今や軒並み二段階――下手をすれば三段階を超えて上昇している。
中でも幸運ステータスの伸びは凄まじく、最低ランクのEマイナスから一気にトップクラスのAにまで上がっていた。
あまりの変わり様に言葉もなかった。両目からの涙だけが、熱く頬を伝っている。
そんな俺に対し、ランサーは相変わらずの口調で嗜めた。
「そういつまでも呆けた顔をするな、主よ。この姿を前にして驚くのは道理だが、今は戦場。賞賛も感心も、全てが終わった後で好きなだけ並べるべきであろう」
「お、まえっ、なぁ……っ!」
感情が沸騰する。何を言えばいいのか、何から言えばいいのか。まるで整理が追いつかず、衝動だけが暴れ狂う。
続く>>597
だが、不思議と今やるべき事だけは鮮明だった。
「ああ、ああ、ああ! 分かった、分かってる、分かったよ! あのバーサーカーを――この大会を、勝ちに行くぞ! ランサー!」
「うむ、良し! それでこそ我がマスターよ!」
木陰を飛び出し、力強く一歩踏み出す。
目指すは付近で交戦中のサーヴァント、バーサーカー。
この戦い。ひいては大会そのものの行く末に関わる大一番が幕を開けようとしていた。
――嗚呼。それにしても。
何故、ランサーはあの宝具を解き放ってくれたのだろう?
俺はしがない一般人でしかないというのに。
ここで区切り
うちの陣営はこのままバーサーカー陣営への攻撃へ転じます。続きは他の方に一旦パス投稿します
>>600
この街に来てから数日経ち、土地や霊脈も把握したところで拠点へ戻ろうと現地のタクシーを利用した時だった。
運転手は顔も見せず車を走らせる。ウィリーは目的地を伝えたが聞いているのかどうからハッキリしない態度だ。そして何故か路地裏で停止した。
短くない期間、世界を旅したウィリーの経験は即座に扉を開けて飛び出すという行動へと昇華される。
だが、ドアは開かない。魔術的なものか、物理的なものかを判断する時間は無かった。咄嗟に拳に強化魔術を掛けて扉を叩く様にして開き、躍り出る。
猛烈な爆音が耳を叩いたのはそれと同時だった。
すぐに顔を上げ、起き上がり近づくと壊れたタクシーの付近で白い肉の塊がよく燃えていた。その肉からは小さい触手の様なものが飛び出し蠢いている。
恐らく自分に恨みを持つ魔術師が狙ってホムンクルスを使役し殺.害を目論んだのであろう。顔を見せなかったのはこれなら納得がいく。あのまま咄嗟に飛び出していなかったら死体に成り果てていただろう。>>602
しかし触媒を失ったといっても召喚する方法はある。
すなわち、己を触媒とする事だ。これならば指定は出来ないが自身の性質に近いサーヴァントが呼べるという。
そしてウィリーは半ば賭けでこのビルの中心で召喚の儀を行いあのガスマスクのアサシンは現界した。
無論彼は真っ先にマスターの特権を行使し意味不明な言葉を列挙するアサシンのステータスを確認した。
そこに並んでいたのはアサシンクラス故の低いステータスにスキル、そして聞いたこともない真名だった。いや、あれを真名と言っていいのか。
ウィリーは旅の途中で得た英雄の伝承や唄、それらの知識は全て覚えているつもりだ。だがそれでも検討がつかない真名というのは一体ーーー?
「あー作業終わったの?終わったね?終わったな」
前触れもなく、近くからアサシンのくぐもった声がする。
未だにその正体が不明瞭なサーヴァント。その素顔を晒そうとする様子は無い。>>603
「あぁ、終わった」
「ということは…?」
「外に出て街を偵察してこい。ただしサーヴァントやマスターを発見しても接触せずに念話で伝えろ」
ウィリーが言い終わると同時に影は実体化し人の形を取る。そして更にガスの様な黒い煙がその周りを囲む。
やがてそれらは一つ一つが形を取り始めた。
「じゃーん!どうよこの服!これなら日本でも浮かないでしょ!」
次の瞬間、アサシンの姿が変わった。いや姿だけではなく子供の様だった体格が今や大人と表しても十分なほどに変貌している。マントやスーツも少しデザインが変わっている様に見えた。
「ん?ああ、マスターは日本人じゃないからわからないだろうけど、ジャパニーズアサシンといったらニンジャだって座で教えてもらったからね」
微弱な霊基の変化をマスターである彼が感じ取るまでそう時間はかからなかった。
もしかするとアサシンの持つスキルの一つ『可能性の闇』がもたらした結果なのだろうか。現時点での判断は難しいがそれしかスキルで該当しそうなものはない。
ーーーもしくは、アサシンが元々自己変革を可能とする英雄でなければ。
変わっていないのは顔に付けられたガスマスクくらいだ。>>604
「それじゃ行ってくるぜ!」
一陣の風が突き抜け、そこにはもう何も無かった。ウィリーは再び座り込む。
どうやら、自分は思っていたより特殊なサーヴァントを呼び出してしまったらしい。アレはまるで玩具を買い与えれた子供の様だとウィリーは感じた。だが、そうだとしてもやる事は変わらない。この聖杯戦争を勝ち抜くだけだ。
辺りに漂っていた黒い煙は、やがて夜風に吹かれて消えていった。
「さぁてどうしようかな…?」
水を得た魚の如く、ビルから飛び出すアサシン。その速度は音速を超え常人の目に捉える事は不可能だろう。都会の冷えた空気を吸い込む。
夜の徘徊者はこの聖杯戦争をもって現世に帰還した。伏神アヴェンジャー陣営 アーチャー陣営さんにパスまで投下します
>>606
「じゃあ早速探索に行きましょう!」
「それは構わんがこんなさびれた拠点で胸を張っても威厳はでんぞ」
あきれるようにいうアヴェンジャーの言葉を無視して探索の準備を進める玲亜。
ここは東雲家の持っている館とはまた別の建物。川沿いにある主に研究用の資料や素材を置いておく倉庫のような建物でありかつては『アイツ』が入り浸っていた場所だ。本来ならここには来たくはなかったのだが状況が状況であり最低限の魔術結界や見つかりにくい立地であることから今後はここを拠点として活動していくことを決めたのであった。
「探索とはいえ目星は付いているのか?」
「ええ、これを見なさい。」
そういって玲亜が見せたものは情報端末である。そしてその画面には、『地域情報コミュニティ 伏神回覧』と書いてあるサイトが出ていた。
「これは伏神の情報をみんなが書き込んだり話したりするコミュニティサイトよ。いろいろな情報を集めるならこれが一番。」
「……いや、お前は魔術師だろう?もっと魔術的なもので目星をつけたんじゃないのか?」
「魔術の秘匿をしっかりとするのならそれは魔術師としての知識がしっかりとある証拠。ならもしかしたらこういった魔術以外からのアプローチには無関心なこともあるじゃない?それに秘匿とはいえあったことを別の形に変えて見せるだけでなかったことにしているわけではないもの。こういったところで情報を集めるのは悪手ではないと思うわ。見てなさい、私は科学で魔術に勝つのよ!」
「現代魔術とはあまり縁のない俺だが今の発言とはさすがにどうかと思うぞ…」
あまりの魔術師らしさの欠如に思わず素直な感想を口にしたアヴェンジャーであった。>>607
「それで今話題になって気になったのはこのあたりね。」
そう言うと玲亜は二つの話題をピックアップする。
「ふむ、『ごるごるさん』。『神隠し』。か、この外国人二人が数時間店先に居たという話題はいいのか?」
「それはただの笑い話だからスルーしていいわ。で、ごるごるさんと神隠しを私はずっと調べてたの。この二つは必ず繋がっていると思うからね。」
「ほう、それでどう動く」
「これらの情報を見てみると神隠しになった人は夜に多く、そして公園の付近とのこと。なら公園の付近を調べてみようと思うの。それでまずは神隠しが起きる前に起きた動物の脱走のすぐ後に起きたこの事件の現場に行ってみようと思う。神隠しには動物も関係してるという人も多いからね。」
「なら行くか、俺も興味がある。」
そういうと立ち上がったアヴェンジャー。玲亜も準備したものを持ち現場へと向かった。>>608
現場はようやく検分が終わったのか片付いていたが花束と黒く染まった地面があった。
「うぅ…分かっていたけどやっぱり現場はキツイわね」
青い顔をする玲亜とは対照的にアヴェンジャーは付近を見渡す。
公園の入り口のあたりのそこは周辺に遮蔽物は少なく見通しもよい。だがすぐ近くに森がありそこから動物が出てきたのではないかと推測されていた。
「レア、一つ聞くが逃げた動物はどんなだった?」
「え?突然何を確か猛獣も含めて数頭だったと思う。」
「それで現場の状態は?」
「何もないわ。ただ大量の血だけが残ってたから状況で逃げた動物の仕業と推測されてるみたいだけど」
「そうか、ふ…ふはははははは!」
突然笑いだすアヴェンジャー。思わず動揺をする玲亜。
「突然どうしたの?何がおかしいのよ。」
「いやなに。これは分かりやすいアリジゴクだと思ってな。」
「アリジゴク?」
アリジゴクといえば地面に潜んで獲物を待ち獲物が自分の巣の穴に落ちた時に行動して獲物を狩る虫のことである。最近見なくなったなあという感想を持ちつつ玲亜は思考する。>>609
「それはそうだろうさ。動物であるならあまりにも綺麗にすぎるというものであろう。あとは一か所にかたまりさらに残りもない。動物には人間と同じように好みがあってな。嫌いなものは食べずに残すものだ。だがそれもない。であるなら推測はできるな?」
そう問いかけるアヴェンジャーに対して玲亜の思考は答えを出す。
「……つまり動物の仕業ではない?」
うなづくアヴェンジャー。そしてそれを見て続きさらに思考を広げていく。先のアリジゴクの意味。アリジゴクは獲物を待つものだ…不自然…待つ…獲物…
「探すものを捕らえる罠…これの不自然さに気づくものを捕らえる…それは…まさか!」
「そうさ!まさしく今ここが戦場だということだ!!!」
そう大声を上げたアヴェンジャーは剣を瞬時に現界させると振り向きざまにふるう。
ギン!!鉄と鉄がぶつかり合う音がするとともに地面に粉塵が上がる!
「……!?」
「さあ覚悟を決めろよレア。始まるぞサーヴァント同士の戦いがな!」
パスです九終島のとある空き家で召喚陣を書き上げる。聖杯大会の間借りる事になっているこの場所には、最低限の生活用具などを入れ、拠点として使える様にしている。また、"魔術師なら気づいてもおかしくない"レベルの工房化を施した。
「お〜いご主人!そろそろ時間だぜェ、準備はどうよ?」
声を掛けて来たのは置物のような鷹。身体の一部が禿げていたりと少しグロテスクな見た目をしているこの鷹は、わたくしの相棒であるクロワ。
「ええ、今終わった所ですわ。それでは、始めましょう」
言って、持参した触媒を手にする。それは金色をした鎖のような装飾品。色がくすみ、壊れているその装飾は、一見すればただのガラクタ。しかし微かに残る魔力の残滓だけで、現代の魔術師では途方も無い労力をかけねばならないと逸品と知れた。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師ーーー」
召喚陣が稼働し始める。これより行うのは英霊の召喚。過去の偉人をこの世に再現すると言う奇跡。その場に立ち会い、あまつさえ参加できるという事実に高揚する。だけれどすぐに雑念を払う。思い浮かべるのは無風の水面。わたくしは今、ただ一つの魔力回路。そのように自分を定義付ける。
「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。ーーー閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」>>611
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
小川の様に緩やかに、魔力の流れが陣を動かしていく。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
そう、わたくしには野望がある。その望みこそは、この一節と重なるモノ。魔力の流れが速さを増す。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
魔力の流れが激流となる。同時に陣から眩い光が放たれ、思わず目を閉じる。
目を開いた時に見えたものは、20代程度の女性。ワインレッドのシャツと黒いベスト、スッとしたパンツという出で立ちは、どことなく『三銃士』を思い起こさせる。
「ご機嫌よう。サーヴァント、セイバー、召喚の声を聞きつけ参上しました。失礼ながら初めに問いましょう。ーーーあなたが、私のマスターでしょうか?」
問いかけを発する女性。口調はやや堅苦しいが、纏う雰囲気と声の印象は明るく、暖かい物だった。
まさかあの触媒から三銃士の様な格好をした英霊を召喚するとは思わず、少し戸惑う。しかし、挨拶と問いを受けたのであれば、まずはそれに返さなければ。
「ええ、間違いありませんわ。わたくしは蒼木ルイ。それではセイバー、貴女の真名を教えてくださいな」
こちらの言葉にセイバーは「はい」と微笑み、腰に佩いた剣を抑えて片膝をつく。
「我が名はヘルヴォル。北欧のワルキューレが1人にして、魔剣ティルフィングの主。この身、この剣、貴女に預けると誓いましょう。但し、我が魔剣の扱いには、くれぐれもご注意を」
物語の中のような儀礼。『空色姫』を自称するわたくしにとって悪い気はしないものの、少し気恥ずかしい。
「そう畏まらないで。主人(マスター)と従者(サーヴァント)と言っても、わたくしと貴女はこれから共に戦うパートナーですもの」
「お心遣い感謝します。では、そのように」
そう言ってヘルヴォルは立ち上がり、悪戯っぽい笑みで続けた。>>612
「話しやすそうな方で良かった。こう言ってはなんですけれど、堅苦しいばかりでは疲れてしまいますからね」
その茶目っ気のある笑顔が何故だかとても眩しくて、わたくしは少し見惚れてしまった。
「オーオー!こんな美人さん2人と過ごせるなんて、オレは幸せモンだねェー!ヘルヴォルさんよォ、オレの翼で夜空を駆け、星を見るデートなんて乙だと、アイタ!」
「お黙りなさいクロワ」
女性と見ればすぐに変な事を口走るクロワの痛覚を刺激して、軽くお仕置きする。見惚れていた余韻を邪魔された怒りも、ほんのちょっぴりあったかもしれない。
「この方は、マスターの使い魔でしょうか?」
「ええ、そのような物ですわ。けれど同時に友達でもありますのよ?」
そんなやり取りをしばらく続け、ようやくひと段落。そしてわたくしは、ヘルヴォルに一つの作戦を告げる。
「この拠点が、囮……」
「ええ、この家には最低限の魔術加工を施しているけれど、不自然でない程度に隠蔽の手を抜いていますの。それなりの魔術師なら、ここの存在に気づくはず。クロワに見張らせて、囮に誘い出された参加者の情報を得るもよし、一対一に持ち込めるなら戦うもよし、という具合ですわ」
「なるほど……それでは、本命の拠点は?」
「近くのホテルですわ。そこに部屋を取ってありますの。少し長居してしまいましたから、急いでここを離れたいところですわね」
「分かりました。他にも聞きたいことはありますが、また後ほど」
そう言ってヘルヴォルは姿を消した。霊体化、というものだろう。それを見届けたわたくしたちは手早くその場を後にする。本命のホテルに向かう途中、わたくしはヘルヴォルについて考えていた。
ヘルヴォル……その名前は、彼女の言った通りワルキューレの1人として記憶している。そして、悪名高い魔剣、ティルフィングの所持者であったことも。触媒に使った鎖は、恐らく黄金の装飾品があったというティルフィング所縁のものだったのでしょう。ヘルヴォル本人はともかく、あの魔剣には気をつけなければ。そもそも「なんか人もそれなりに多そうだし魔術師が多いってことは資産家も多いだろうしホテルはあるやろ!」みたいな感じで島にホテルがある前提にしたけど良いのかしら…
>>618
私もホテルがダメだったら空き家か何かを借り受けることにしますまずい、実にまずい。油断していた訳では無い。ただ相手がこちらの想定を上回ってきただけのこと。
謙信「くっ」
距離を取り剣で足止めを狙うが尽く破壊される。剣は再生できる代わりに比較的脆いとはいえこうもあっさり壊されてはいけない。
そう判断して剣を収めた瞬間バーサーカーが急に加速した。
バーサーカー「これで…終わり…!」
謙信「しまっ…!」
恐らく令呪によるブーストで強化した魔力放出。一瞬の隙をついて私の腹に一閃。
避けられない、どう行動してもくらう。この危機的状況を打破する術が見つからない。
謙信「(ここまでか、いやっ)」
それでも諦めずダメージを最小限に抑えて反撃で仕留めようと構えたその時。
エルシュタイン『令呪を以て命ずる。第二宝具を解放せよ』>>620
天啓が舞い降りた。通常宝具を解放する際に手元に宝塔がなかった場合宝塔を転移させる。しかし今回は違う。“私を宝塔の場所へと転移させる”。
謙信「はぁっ…はっ」
息を整え直ぐに構える。早くしなければまた距離を詰められる。
先程の巨人と見紛う姿から真名はスルトだろう。そしてその時に間近で感じた炎の感じから彼女は私とは少し違うがセファールに由来するものだろう。ならば…
性能較べといこうじゃないか
謙信《さあ、この器で放つ我が剣。彼の巨人に、何処まで通用する》
宝具を展開し、第二宝具
『龍虎の瞋恚・軍神の剣[オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ]』を解放した。
少し短いですがここまでです。マスター方面の戦いをお任せしてもよろしいでしょうか?prrr…prrr…
開催前に各マスターに配布されていた通信端末が鳴る。ユージーンはこの通信端末というものが苦手だ。
機械音痴という訳では無く、通話では読心の魔眼が使えないからだ。普段から心を読んでいる分読めなくなると常人以上に疑心暗鬼になってしまう。
はぁ、とため息をつきつつ端末の通話ボタンを押す。
ユージーン「…はい」
???『あ、やっと繋がった。もしもーし、こちらエリザヴェーダ』
エリザヴェーダ、この九終聖杯大会の監督役をしている魔術師だ。
エリザヴェーダ『いやぁこんなに早くミッションを達成するとはね。早速だけど報酬何にする?』
運営のスタッフを喰われたことを知らないのか知っていて平気な態度を取っているのか、どちらにせよ信用ならない奴だという印象を抱く。
ユージーン「そうだな…」ユージーンが告げた望む報酬は『蒼木ルイ及び九重海音との通信』。しかしこれは却下された。一つの報酬で二つの陣営の情報を明かすのはアンフェアなのだとか。どちらか片方だけならいいと言うので少し考え込む。
ユージーン「だったら……蒼木ルイに連絡を取りたい。」
どちらかと言えば蒼木ルイがいい。それに九重海音は遭遇してからの交渉でもいいという判断だ。
エリザヴェーダ「ん、了解。それじゃあ配布した端末のアドレスとか現在地とか送るから確認してね」
ユージーン「あ、そうだちょっと待った。おまけと言っちゃなんだけどさ、ちょっと洒落たゴーグルとかくれないかな?別に魔術的などうこうは要らないから」
通話を切ろうとしたのを遮ってふと思いついたことを口にする。駄目で元々だ。
エリザヴェーダ「うーんそれはちょっと面倒臭いな。島のお店とかでも買えるし自分でどうにかして欲しいな」
案の定断られる。しかしその返答はユージーンには意外だった。面倒臭い、これは本心だろう。つまりエリザヴェーダは少なくともユージーンの問いに本音で答えたのだ。
ユージーン「(もしかしたらいい人(俺基準)なのかも…な)無理言って悪かった。お詫びに今度飯でも奢るよ」
そう言って通話を切り少しすると端末にいくつかの情報が送られてきた。蒼木ルイへのアドレス、現在地、そして召喚したサーヴァントのクラスの三つだ。
ユージーン「さて、まずは買い物だな」ここまでで一旦止めます。何か不都合はありませんか?各マスターに通信端末とか。
とりあえずこの後街でゴーグルとか買ってからルイちゃんに電話しようかと思います。>>628
エルシュタインはドロテーアさんのキャラなので私から断言は出来ませんが撃ち込まれた岩が砕けて砕けた破片が砂になるくらいに考えてます。故にメイン兵装はトワイライトの方でここぞと言う時にグレゴロールを撃つイメージですね。>>624
「キャッ!?て…敵!?何処から!」
「しゃがんでじっとしていろ!あと口も閉じてろ!」
動揺してパニックになりつつあった己のマスターに対して手早く指示を出すとアヴェンジャーは再び意識を敵の攻撃の探知に移す。一度目の狙撃を防いだものはおのがスキルの力とわが身に刻まれた特性によるものだ。しかし簡単にできることではない。アヴァンジャーからしても一度目はできすぎた結果だと感じている。もしあと数秒敵の罠であると気づくのが遅れていれば、敵の攻撃への探知の意識の集中の位置を別の方向に向けていれば間違いなく防げていなかったであろうことは想像に難くない。ゆえに今度は全力の警戒を向ける。自身の直感とおのが常人よりも優れている嗅覚、聴覚を全力で働かせる。
――――――――――――フォン…
風を切る音が聞こえる。……二発の銃撃が向かっている。
「フン!」
ガギィン!ギィン!
二つの銃弾がはじかれて地面に落ちる。
「方向は大きくは一射目と変わらず…ビル群のあたりか」
つぶやくと再び意識を集中する。風を切る音を、硝煙の匂いを探す。今度は三発の銃弾が向かう。またはじき落とす。弾の段数は変わるもこの後も数度同じこと繰り返す。
「アヴェ…セイバー!ここは撤退を!」
繰り返される防戦に不安を感じたマスターが立ち上がりサーヴァントに声をかけようとした。
「…!?チィ!」
ガギッ!チィン!チュン!
「くっ何をしているこの愚か者が!」
アヴェンジャーは向かってきた三発の弾を二発はたたき落としたが一発を落としそこね軽く腕に傷を負った。>>630
「セイバー!」
「お前が狙われているのだ自ら的をデカくするものではない。…だがもしや…?」
傷は大したことではないのか気にするそぶりを見せず思考に入るアヴェンジャー。
「よし…ためすか、玲亜。口を閉じてろ舌を噛む」
「へ?舌ってっええええええええ!!!」
そういうとアヴェンジャーは玲亜を抱え上げると思いっきり上空へと放り投げた。
「なんで投げるのよおおお!」
「………やはりか!」
投げた玲亜を空中で回収するとともに上空で銃弾を3発はじく。
「よし分析は終わった。」
「な…何が分析よ!この野蛮人!」
涙目になりつつ己がサーヴァントにクレームを言うマスターの言葉を聞き流しつつアヴェンジャーは続ける。
「あの銃弾の的は初めから決まっているようだ。」
「初めから決まる?」
「先ほど俺が弾をはじき損ねた際にだ。弾の弾道が変わったのだ。それも3弾全部な。」
「…それは私が立ち上がって移動したから?」
「その時点ではまだ確定ではなかった。この状況を変えるために変わりだねとして曲射をしたとも言い切れなかったからな。だから今度は本来ではありえない動きをしてみたわけだ。」
「つまり突然上空に投げ上げると?」>>631
「そうだ。すると案の定すべての弾が方向を変えた。こうなると仮説はある程度の確信に変わる。つまりはお前を追尾する弾であるとな。そして今もお前を狙って弾が来ている。わけだが…」
今度は片手で弾を簡単にはじく。
「着地点が分かっている以上この程度の芸当は造作もない。これで敵の攻撃はある程度無力化できたということだ。」
「な…なるほど…」
「それでだレアよ。お前はどう動く?」
続けて玲亜に対して問いかける。
「敵の攻撃の性質を見抜いた時点で収穫はあったといえる。このまま敵の目から撤退するのも手だと思うが?」
アヴェンジャーのこの問いかけの意図を玲亜は思考する。この問いの意味は文字通りに受け取るならば撤退の進言だ。だがこのサーヴァントが素直な問いかけをするとは思えない。先ほどから私を試す、あるいは自分で考えさせるといった発言を繰り返している男だ。ならばこの発言にも必ず裏がある。ならば裏を考える。ここで言っていることはここで引いても悪くはないということ。つまり最悪ではないがよくもないということだ。ここでいう最上は相手サーヴァントの撃退であるとはいえ流石に過ぎた目標だ。ならばここで得るべきは勝利ではなく更なる情報。敵が得た自分の情報と同じ程度の情報を得るということだ。つまりは…>>633
なるほど、銃弾を防がれたのも頷ける。大した直感と身のこなしだ。
アーチャーとの視覚共有を通して、ロワインの受けた印象はそのようなものだった。
先程の銃撃以降、アーチャーは敵を捕捉しきれていない。
どうやら敵はアーチャーの大まかな位置を把握したらしい。死角になる位置を的確に選びつつ移動しているうえ、動きが素早い。アーチャー自身の特異体質とも言えるスコープのような右目では、視界が狭く、すぐに見えなくなってしまう。
肉眼での確認ができる距離になるまで、これ以上の狙撃は困難であった。
「撤退だ、アーチャー」
念話を送りつつ、ロワインは舌打ちした。
あるいは、もっと早くから視界の共有を行なっていれば敵の姿をじっくりと観察できたかもしれない。しかしながら、各地に送り込んだ獣からの情報を処理することに追われて、とっさの切り替えができなかったのだ。
サーヴァントという新しい武器を使いなれていない故の、大きな失態とも言える。
まあいい。
ロワインは思考を無理矢理に切り替えた。>>636
「やはりもう霊体化して去った後のようだな。」
「途中から攻撃がなくなったあたりからそんな気はしてたわ、それで後は追えそう?」
「無理だな。残留物はほぼなく気配もとうにない。」
「そう、ならこれで最初の戦いは終わったということね。あなたから見て敵はどう感じた?」
目標としていたビルに到達した玲亜とアヴェンジャーであったが敵はすでに過ぎ去った後でありとりあえずの脅威は去ったと判断したのか玲亜は自身のサーヴァントに問いかける。
「まあ非常に手際がいいという一言につきるな。あれはまさしく狩人の戦い方よ。獲物との接し方を心得ている。ゆえに執着などせず状況次第ではあっさりと引くということだ。」
「そうね、状況で言えば彼らは決して不利という状態ではなかったはず。ここに向かう私たちを迎撃するということも容易にできたはずだもの。でもあっさりとその状況を放棄して撤退した。」
「そうだ。やつらは敵のマスターとサーヴァントの姿を見たということで十分と判断したということだ。この手のやつらは用意周到だからな。次にやつらに万全の状態で狙われたら厳しい戦いになるであろうな。」
「…他人事みたいに言うわねあなた。」>>638
まとめ
アーチャー陣営と戦闘終了
ターゲットを追跡者に変更
何かが屋上に飛んできた伏神ランサー陣営投下します
>>640
「さて、取り敢えずは英霊召喚お疲れ様。これで正式な聖杯戦争の参加者となったわけだね。
……で、君はこれからどうするつもりだい?」
「どうするも何も」
正直なところどうしたらいいかサッパリ分からない。
魔術師と今迄何度か戦ったことはあれど、彼等がこういった状況下でどう動いて何を為すのか皆目見当がつかなかった。
錫久里亥狛は定石というものを知らないのだ。
返答に窮していると、現状唯一頼りになる魔術師────シスカがため息混じりに、
「何でもいいさ、君の戦いなんだから君が正しいと思った行動を起こせば良い。
ただまぁ、敢えて無難な選択肢を与えるとするならば街の探索なんかは如何だい?」
「…街の探索、か」
「敵の勢力を知れ、という事ですね。私もその案に賛同します。何せ我々は見た所外様の陣営、なれば周囲の状況を把握する事は第一優先となりましょう」
気の抜けた主君の返答に続いて、ランサーは自身の所感を正直に述べる。
「ガレスちゃんは優秀だね、まあそういう事だよ。
正確に言うなら私は元々この街を知ってはいるけど、その情報も精々十年前のものだ。
情報は常に最新のものを、そして自分の足で得たモノを頼りにすべきだ。埃の被ったデータに縋ると大抵碌な目に合わない」>>641
遠い目をして語るシスカの言葉には実感が籠っていた。
推測するに嘗てそれで痛い目にあったのだろうが、深くは追求しない事にした。
そして亥狛の隣で『優秀』と言われデレデレしているランサーにも、敢えて深く突っ込まない事にする。
さて、これにて簡単な方針も定まった。
後はことを為すのみだ。
伏神の市街地を簡単に散策する。
踏みなれないコンクリートの感触に違和感を感じながら、人の波をくぐり駅前の大通りへ。
中心部へ向かうにしたがって人間の量は増え、密度も増していく。
休日ということもあり、人の数は平日のそれとは比べ物にならない程多い。
(凄い、嘗てのキャメロットとは方向性は異なれど、活気について言えば引けを取ってません!)
亥狛の隣で霊体化しているランサーは念話で感動を表現してくる。
声色────と言っても鼓膜を介した会話ではないが────の高さから、彼女のはしゃぐ姿が想像できそうだ。
ほー、だの。
へー、だの。
なるほどなー、などと。
現代社会に当たり前に根付くアレコレを一々オーバーに反応するランサーはまるで始めてサーカスを観に来た子供のよう。
(あ、青ですよイコマ。早く行きましょう!)>>642
ランサーの所為で調子が狂いそうになるが、亥狛達が街を歩いているのは当然娯楽目的ではない。
当てもなく彷徨う様に見えて、その歩調には明確な目的を載せている。
駅を通り過ぎ、商店街を通過して住宅街へ直進。勢いをそのままに市街地を抜けて港の方へ向かった後、進行方向を東側に切り替えて、伏神で最も大きい橋を渡って山間を沿いながら北上。
丁度街をぐるりと外周する形で散策していく。
所要時間は通常なら休息を挟んで一、二日かかる重労働。だがそれは普通の人間に限っての話だ。
人狼は周位の大源を糧に無尽蔵のスタミナを発揮する。
「いやしかしホネがおれるな、無駄に広くて困る」
額に軽く汗をかく程度で済んでいるのは、純粋に種族の差という奴だ。
五百ミリリットルのペットボトルに詰まった緑茶を飲み干して、ざぁっと地図を広げる。
伏神市全体を網羅した地図には簡単な走り書きと、下手くそなペケ印が数箇所ほど書き加えられている。
(…魔術師ならば使い魔を使った方が効率が良いと思うのですが)
「残念ながら俺は魔術師でもなければ、魔術使いでもない。精々魔術を『知ってる』、『体感してる』程度だよ。
それに俺は仮に使い魔を使えたとしても使わないと思う」
地図に目を通しながら、ランサーの最もな指摘に返答する。
すんすんと鼻を啜った後、今いる山間の地点にペケ印をまた一つ加えた。
「使い魔ってのは犬や猫の死骸に術者の髪の毛や身体の一部を埋め込む事で生前とは全く別の生き物としての生を宿す。
……つまりは分類学上は死霊魔術の分野なんだ。そんでもって俺は死霊魔術はどうも肌に合わない、だからもし使えても使いたくない」>>643
また何度か鼻を鳴らす。
側から見るとただの鼻風邪かと思われそうだが、こう見えて常人には嗅ぎ分けの出来ない微かな匂いを探知している最中だ。
山の澄んだ空気、草花の瑞々しい香りと共に残存する、危険な魔の芳香。
匂いの濃さから察するに数日前、間違いなく此処に魔術師が居た。
魔術を使用した痕跡は普通の手法では探知は出来ずとも、そこら彼処に残存していることがある。
無論腕の立つ魔術師ならばそんなケアレスミスは犯さないのだが、此の場に居たであろう魔術師は痕跡抹消に疎い手合いらしい。
(死体を使う事に抵抗がある、という事ですか?)
「それもあるけど……自分の身体を、誰かに弄ばれるって絶対気持ちの良いもんじゃないんだろうなって」
(────どうかその思い遣る気持ちを忘れないでくださいね、それは貴方の美徳ですから)
うん、と背伸びをしてから地図を背中に背負ったリュックに詰め込む。
粗方町内を探索し終えた上で亥狛は「まだ本格的な戦闘は起きてないんだな」という結論に至った。
魔術師が魔術を使用した場合、当然濃密な魔力の臭いが残存して然るべきなのだが、今の伏神市にはそんな強い臭いは感じられなかった。
街にも戦闘の爪痕は未だ見つからない。>>644
────つまりは未だ水面下で蠢く段階なのだろう。
ということを、自分自身の肌で感じ取った。
ともあれ、街の全体図を脚で把握出来たのは得難い収穫と言えるだろう。
幸い他陣営からの急襲も無かった。
後は、このまま無事に拠点へ帰れると良いのだが。
ふと空を見上げる。
気がつけばもう日は陰り始めていた。
日中さんざん頭部を焦がした憎い太陽はすっかり山稜の彼方へと飛び去って、あと数刻で夜の時間────聖杯戦争の時間が幕を開ける。
明確な根拠はないが、亥狛は第六感で感じ取る。
これは、何事も無く家に帰れる事はなさそうだと。ようやく書き終えたのでトーナメントの続きを投下。
岩を盾に、ひたすら逃げる。
再現体の得物はアサルトライフル。
ただでさえ大半の魔術師が蜂の巣になるような代物を魔術礼装にしたトンデモ武装。
リロード不要で無限に弾をバラ撒いてきてるし……岩の多いエリアに居なければとっくに蜂の巣になってるわね。
だけど、これでいい。
スルトちゃんが頑張ってるんだから。
そんな中銃弾が止み……。
「令呪を以て命ずる。第二宝具を解放せよ」
再現体が令呪を使った。
その内容は宝具の使用……恐らくは最初に使ってきた魔力砲撃。
更に、一発の銃声が鳴り響く。
私が身を隠していた岩が砕け散り、破片が風化し砂と化していく。
再現体がアサルトライフルから持ち替えていたのはハンドガン……これが起源弾という奴かしら?
だけど、私だって逃げ回りながらも作戦を立てている。「向かって来ますか」
駆け出す私を見て何処か感心したように言う再現体。
そんな彼が引き金を引く前に、準備していた魔術を発動させる。
使ったのは、照明の魔術。
光源を確保するだけの初歩的な魔術だけど、今回はそんな使い方はしない。
可能な限り強力な光を発生させ、即席のフラッシュグレネードとする。
再現体の目は眩み、二発目の銃弾は外れ、私は一気に距離を詰める。
格闘戦の間合いまで近づけなかったが、そもそも敵は目が眩んでても急所を狙った攻撃にカウンターを浴びせれそうな技量の持ち主だ。
だからこそ、次の一手は決まっていた。避けられた。
必殺を確信した一撃が胴体を両断する前に
、セイバーの姿は掻き消えた。
令呪による転移……なら、次に来るのは。
「……宝具」
直感に任せて拳を振るう。
拳圧と共に放たれた火炎放射は転移したセイバーへと向かったけど、避けられてしまう。
着地と同時に魔力を高めていくセイバー。
。
お互いにマスターが近くに居ない事を除けば、戦闘開始時にそっくり。「炎国現象(ムスペルエフェクト)」
だから、私もあの時同様に宝具を使う。
けど、全力で魔力放出を行える今の私は、迎撃だけでは済まさない。
攻撃どころか、セイバーをもこの一撃で焼き尽くす。
「命は燃やさない、その文明を焼却する」
全身から放出していた炎が、上段に構えた剣に収束していく。
最大出力での魔力放出の解除と引き換えに、「紅炎の剣(レーヴァテイン)」を極限まで強化。
天まで届くかのような炎の柱……そう見間違える程に巨大な炎の剣を形成する。
「紅炎の剣(レーヴァテイン)」
大地すら溶かす熱量の塊を私は振り下ろした。電撃を纏った手で、ハンドガンを持つ腕を掴む。
始めから狙ってたのは射撃する為に前に出した腕……この距離でも楽に届く唯一の部位。
とはいえ、力量差もあって、大した効力は無い。
せいぜい少しの間発声を封じて動きを鈍らせる程度だけど、それで十分。
「これで、間に合わないわよ」
そう、これで令呪は使えない。
今のスルトちゃんの「紅炎の剣(レーヴァテイン)」なら、セイバーの宝具を打ち破れる。
故に、再現体に更なる令呪を使わせる訳には行かない。
だから、この手は離さない。
電撃の魔術を解いてもあげない。
その時、二つの巨大な力が衝突した。以上です。
マグダレーナにとって、目の前に居るのはエルシュタインで無いものに自ら成り下がった再現体でしか無いのです。>>653
前に言われてたかもしれないけど、このまま決着まで書いて大丈夫です。投稿します
>>655
深夜の公園の静寂は、墓所のそれを思わせた。
この街でも、こんな故郷を思わせるような静かな所があるのか、とアサシンは思った。
電光パネルと車と人と音で埋め尽くされたこの街の一つ一つに、興奮し、驚愕し、刺激を得た彼女、いや今は彼と称すべきだろう。
彼は伏神の街をもっともっと味わいたかったのも事実だがそれは後日の楽しみとして取っておく事にした。特に意味もなく立ち寄った公園を霊体化すらせずに堂々と歩く。この身で直接現世を実感しようと思った結果だ。
「この目にうーつるものはー遠い日のー真夏のー陽炎〜」
アサシンは上機嫌に街頭の巨大なスクリーンで流れていた歌を口ずさんだ。身体も無意識のうちにそれに釣られて下手なステップを踏む。
このまま西の山の方や、住宅街の方も散策してみようかと思ったその矢先だった。>>656
自分の先を一人の男が歩いている事に気づく。平均と比較するとかなり大柄な体格の男はリュックを背負っている。
一般人の目線からならば強いて特徴を上げるとしたらこれくらいだろう。
だが、サーヴァントとしてアサシンはあるモノを感じ取った。
自分と同じサーヴァントの気配だ。男のすぐ側から発せられている。姿が見えない辺りは霊体へと身を変えているのだろう。
そして今更ながらアサシンはマスターから「他の陣営の偵察」の命を受けた事を思い出す。
「あー……マジかぁ」
ひとまず近くの照明灯に身を潜め、影に溶けるアサシン。恐らくあの男はこの聖杯戦争に参加しているマスターの一人で、サーヴァントを近くに忍ばせているに違いない。
その背中は特に気負った様子も無く、こちらには主従共々気づいていないらしい。アサシンを暗殺者のクラスたらしめる「気配遮断」のスキルがあるからだ。
そんな状況の中で彼の心に一つの考えが台頭した。
今なら、襲えると。
照明灯は古いのかチカチカと点滅する。
マスターに念話で連絡しようと思ったが、恐らくあの男は徹底した慎重主義者だ。短い会話でもそれは十二分に感じた。下手に手を出さずに追跡だけしろと言うに違いない。
「それはつまらんよな」>>657
どうせ殺れば一つ敵が無くなる。遅いか早いかの違いだ。マスターも流石に結果を出されれば何も言えないだろう。そう考えナイフを実体化させ懐から取り出す。
鋭利に研ぎあげれられた切っ先は何故だか魅力的に怪人の目に映る。
逸る功名心に近いものに駆られた彼は何よりも決意を固めた。
「…まさか、ガス使う前に殺るとはね」
そうぼやくと実体化し、一跳びのうちに疾り抜け距離をゼロにする。
瞬間的に突発的に行われたその行為に、当然哀れな犠牲者は反応する間もない。
滑りこませる様に、容易く英霊としての筋力でリュックを貫通させ、ナイフをその身に突き刺す。
そしてそれを感知する事も出来ず、凶刃は心臓へと真っ直ぐに導かれる様にしてーーー
「ん?」
目論見通り背中に刺さったはいい。だがある一定の地点から微動だに進行しない。
当然背骨や肋骨を避ける様にして刺したはずなのだ。ガスマスクの下でアサシンは想定外の事態に目を見開く。とにかく理屈はわからないが、殺れない。
ナイフを握る手が震える。男の苦悶の声がようやく耳に届く。>>658
アサシンはこの時実感した。
己のマスターの様に、聖杯戦争などという異端の儀式に参加する者が常人のはずが無いのだと。
そしてコンマ数秒後、闇夜を打ち消す白亜の光は豪風を巻き上げて姿を現した。
「ミスったな…」
怪人の呟きはその輝きの前に掻き消された。伏神投稿
レアちゃんのSAN値をチェック>>660
ストーキング・キャノン・ボーラーズ
外魔力騒つく闇夜の中、鮮やかな風の如く加速する物体あり。木目状に入る鮮やかなラインが印象的な青緑色のヴェルファイアだ!その車体には微かな魔力を放出している
青緑の風は東雲とそのサーヴァントを追跡していた。何故跡をつけるのか?リドリーは銃弾によって襲われた彼らの事を助けたかったのだ。昔の恩を返す為に…………
エル・シッドの運転は繊細かつ大胆だ。リドリーの『狙撃魔術』により異常加速を見せるヴェルファイアの手綱を完全に制御している。赤信号に捕まる事なく、レア達の姿を徐々に詰めていく
……………しかし!
「チィッー。オイ、ク.ソマスター。嬢さん方どうやら建物の屋上に行きやがったぞ」
エル・シッドのサーヴァント視力は建物を這い上がるレア達を捕捉していた!
それはカドカハビル!とある企業によって土地ころがし用に買われた実態なき無人ビルだ!
「成る程建物の上か……………ならばやる事は一つ。私たちも"壁を登るのさ"!」
壁を登る。その言葉にエル・シッドは驚きはしない。この男はやるといったら必ずやるのだ。勝算がない筈がない。エル・シッドはそこの点"だけ"信用している>>661
「……………フンッ。俺はどうすればいい?」
「君はタイミングを見はからうだけでいいさ。このまま建物に突撃しなさい!」
狂気!このまま突っ込めばビルはその脆弱性を露呈してしまい、レア達は勿論のことリドリー達もただでは済まない!リドリー・フォーサイトよ!貴様はその事を分かっているのか!?
しかしリドリーとエル・シッドの間に議論は起きない。彼らはもはや覚悟をしてしまったのだ!
ギャルギャルギャルギャルギャルギャル!!
風を斬り、音を破き、道路に傷を付けながらもなお加速するヴェルファイア!最早その車体はビルを破壊せんとする砲丸(キャノンボール)だ!
迫るビル!攻めるヴェルファイア!そして……………
ダァン!
凄まじい騒音!おお、見よ、ビルは無残に崩れ相変わらず文章のテンションが高い。
あとやっぱリドリーの魔術って「狙撃」じゃなくて「操作」とかそんな感じよね。>>667
ああ、大丈夫大丈夫。実際見るとそういう印象ってだけで、「狙撃魔術」としてやりたいというのは聞いてるので問題ないです。そこは。
名称と本質が違う魔術って珍しい気がして。>>665
「ハッ!敵、敵ね!」
思いもよらない物の登場で一時的に素が出てへたり込んでいたことに気が付いた玲亜はこちらに向かう二人組を確認して立ち上がると臨戦態勢をとる。
異国の人物の二人組だが一方からは人間のものではない魔力を感じる。このことからサーヴァントとマスターの二人組であると推測された。
「やあ東雲のお嬢さん。私はリドリー・フォーサイトという者だ。」
「フォーサイト!あの時計塔の講師の!」
「おやご存知とは光栄だね。」
リドリー・フォーサイト。魔術師として最低限の交流を持っている時計塔の中で変わった講師がいるという情報を聞いたことがあった。なんでも母国語での授業のはずなのに何を言ってるのか理解ができないだとか熱意はすごいが周りはそれと反比例して寒気に陥るだとかそういった類のようはあまりよくはない評判ではあったが。
(まずい…)
自身の対峙している魔術師の素性が明らかになったことでより焦りを覚える。時計塔という魔術師としての機関でトップクラスの規模を持つところで講師をしているほどの魔術師であるのだから当然自分よりも圧倒的に格上の相手であることは想像に難くはない。加えてそばに控えているサーヴァントから感じる魔力とそのまとっている雰囲気からしてただ物ではないということもわかる。自分がかなり不利な立場に置かれていると嫌でも認識をせざるを得なかった。>>669
「まあまあ落ち着いて話をしようじゃないかお嬢さん。私は君と同盟を組みたいと思ってこうして追いかけて来たのさ。」
「同盟?」
相手の思わぬ申し出に対して意見を聞くようにアヴェンジャーへと視線を向ける。アヴェンジャーはこちらに視線を返さない。アヴェンジャーの視線の先にあるのは敵のサーヴァントの姿であった。警戒をしているということだろうか。
「それはどういう意図での申し出なのですかリドリー殿」
二つ返事で受けられる話ではないため相手の真意を確かめるために言葉を紡ぐ。魔術師として相手に侮られないように尊大に誇り高く利益を求めるようにふるまいながら相手の出方をうかがう。
「私もこの街で起こっている事件を痛ましく思っていてね。是非とも信頼のできる同盟者と共にこの事件の犯人を退治してやりたいと思っていたのさ。土地の管理者である君なら信用ができると思って探していたのだけどやっと見つけたので思わずこうやって会いに来たというわけさ。」
目的が同じであることを強調して語るリドリー。自身の目的も同じである以上この話は悪くはないといえるが果たしてここで同盟を組んだところで彼に何の利益があるというのかいうのだろうか。魔術師というのは基本的に人でなしである。時計塔の講師ともなれば間違いなく典型的な魔術師であり利益を最優先にするはずである。>>670
「確かに私はこの事件を解決しようとしていますがこの事件を解決することがあなたにとって何の利益になるというのですか?」
「それは敵のマスターを一人楽に倒すことができるということさ。利益は一致しているだろう?」
「そうですがそれに同盟である以上自身の能力を同盟者に知られるというデメリットもある。それに見合うだけの利益とは思えませんが?」
「なに私はほかにも利益があるんだよ。」
「ほかの利益?」
「君のお父さんには昔世話になってね。その恩返しをしたいとずっと思っていたのさ」
―――――ノイズが走る。
ソウカアノ男ノ――――痛い痛い痛い頭が痛い苦しい辛い
―――ああそうかなら私の答えは決まった。
「そうですか、それならこの同盟ですが、お断りします。」
はっきりと宣言をした。>>665
あ、後伏神参加者の皆さんにお願いがあります
リドリーはエル・シッドの事はロドリーゴもしくはロドリーといいセイバーまたはエル・シッドとは決して呼ばないのでそこの徹底をお願いします>>674
ティアー・カオス・アンド・リターン・リグレット
強い拒絶。リドリーは懐かしい思いを抱いた。その姿は昔始めて"恋をし"そして"死別した"彼女の事を思い出してしまった
(成る程、仲は悪かったんだね。ああ"なんて美しいんだ"!ああ、ああ、この胸に"愛"ではなく"恋"が浮かぶなんて!)
リドリー・フォーサイトは人間を"愛しているどうしようもなく"。生まれついてからのサガ。その愛は現実にまさり、彼の原動力となる。彼は"自分が人間だと決めつけた"者を無性に愛する。そしてその愛は"決して報われる事は無い"。彼の言動はひたすらに狂人のものと扱われ意味がなくなる
"美しい"だの"優しい"などそんなものを差し置いてただひたすらに愛しているのである
だが、リドリーはレアに拒絶されたときに舞い降りた感情が"愛"ではなく"美"そして"恋"なのであった。それは彼の少年期に出会い、"拒絶"された過去に由来する感情。そしてそれは自分のサガを唯一"憎んだ"時でもある>>676
「ああ雅也なまあまあな皿まあかマサが穴はさか七星金谷入れ!!!……………ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……………」
レアに向かって地べたに頭をつけながら悔恨の念を示し謝罪を続けるリドリー
そしてリドリーは泣き止みながら頭を冷静にして思った
"俺"はもう絶対に後悔をしない。その為にこの子は守ろう。この子のような人のためにも絶対に聖杯は勝ち取ってやる
その目には"智慧の炎"が周りの人間を優しく包み込むように燃え盛っていた>>677
・リドリー唯一の後悔(クリスマスが厄日のジンクスが例年発動通り発動した結果)
・レアちゃんと話すときはもうレアのお父さんのことは絶対に口に出さない決意
・レアちゃんの事を守る(物理)
・リドリーは人を愛するが人の気持ちはそこまで分からない
・自分の知っている情報を全て話す
・父親のことは誠意を持って謝る
・そして宝具の能力の一つを教える(コラーダの方)
・それをいった上で同盟を結ぶ
・それがダメでも必ず援護するようになる
こんな感じですね。……………なんかごめんなさいレアさん東雲玲亜は魔術師だ。だが魔術師の世界を嫌っており必要以上に関わろうともしない。利益と情を切り離して考えることができない魔術師としては未熟に過ぎる状況のままで成長をしてしまったためである。そんな彼女であるが他者を守るためであれば非情にならなければならないこともあると理解しその覚悟をもって今回の戦いに参加した。それが自分の使命であるからと信じているためである。ようはお人よしなのである。そのお人よしが目の前で自分の言葉により苦しんでいる人物を見た時に取る行動は、
「え…と、あの…なんかそのすみませんでした。」
謝罪であった。
(何を謝ってるんだあの阿呆)
敵を警戒していたアヴェンジャーは自身のマスターのひどすぎる行動を見て頭を抱えそうになるのを必死で抑えていた。彼女の過去に関して何らかの問題があったことも拒否の一つの要因であるとも言えるが感情論だけで拒否したわけではなく信用ができない陣営との同盟を断るのは悪くはない判断である。そのためこちらに落ち度は全くないのだが…
「ま…まあ私も言い過ぎたかもしれません。折衷案としてですがともに行動はしませんが敵に関しての情報の共有と連絡のやり取りぐらいならば応じます。信用ができれば同盟も考えるということで!」
挙句の果てには歩み寄る条件まで出す始末であった。
(こいつ…甘すぎるにもほどがあるだろうに…いや今回に至っては相手も相当な変わり種なわけだが…)
ふとアヴェンジャーが敵のサーヴァントの方を見ると彼と同じく頭を抱える様子が見えた。
(ああ…あいつも苦労しているんだろうな…)
「では連絡先を渡しておきますので今宵はこれぐらいにしておきましょう。では私はこれで。」
そういうと玲亜はアヴェンジャーと共にビルから家へと帰還した。>>679
三行まとめ
同盟まで行かずもちょっとした協力関係に
態度多少軟化
アヴェンジャー胃痛召喚SS投下します
九終島の廃墟にて、ヴィルヘルム・ヴァンシュタインは、召喚の準備をしていた。
右手に、知り合いの魔術師から借りた北欧の英雄の触媒を用意し、
「触媒よし、」
次に周囲に人がいないか確認して、
「周囲よし、」
といった準備を終えたあと、私はすぐに詠唱を初めた。
『ーー素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、
王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。』
周囲に魔力が渦巻き、風が吹き荒れる。>>682
『閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる時を破却する。
ーーーー告げる。
汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に。
聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世全ての善となる者、
我は常世全ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よーー!』
そして、渦巻いた魔力が眩しき光を放ち人の形を成した。
「サーヴァント、ランサー召喚に応じて参上しました。あなたが私のマスターですか?」
「ああ、私はお前のマスターのヴィルヘルム・ヴァンシュタインだよろしくな。」
そして、ヴィルヘルムとランサーの聖杯戦争が幕を開けるのであった。伏神ランサー陣営、投下します
>>684
すぐさま飛び退る暗殺者の目に飛び込んだのは、爆発的に立ち昇る白い煙だった。
それに伴い捲き上る暴風。
夜も更けて静穏に澱んでいた公園に、昼の如き嵐が舞い降りる。
嵐の中心より、怒りを孕んだ声がする。
「やってくれたな」
意思を持った暴風はアサシンの方角へと歩を進める。劇熱を帯びたその歩みは一見緩慢でありながら、それでいて確実に凶手の退路を潰していく。
「サーヴァントである私が居ると知りながら暗殺を敢行したのは蛮勇と讃えるべきか?それとも失策だと謗るべきか?
────どちらにせよ、貴様に明日はやるものか。潔く此処で命を散らせ」
魔力の奔流が幾らか止んだかと思ったアサシンは、その数瞬後にそれは違うと認識を改める。
確信したのだ。
止んだのではない────収束したのだと。>>685
熱を帯びた痛みに呻く錫久里亥狛は、舗装された道路に倒れ臥しながらもランサーの姿を目で追う。
固唾を呑んで見守る槍兵の姿は、日が落ちた時刻であるにも関わらず正午の様に明確に視認できた。全身を覆う白亜の鎧はそれ自体が輝きを有し、騎士の感情に呼応するかの様に閃光に凄みを増していっていたからだ。
一方で、ランサーの視界の先に居るアサシンを見遣る。比較的小柄な体躯をした暗殺者は闇に溶け込む為に適した装いを纏っている。
だが亥狛は此処で違和感に気付く。
アサシンを視認しているにも関わらず、詳細な姿を捕捉する事が出来ない。目を凝らせどもピントが中々合わない様な、或いは脳が認識を拒む様な奇妙な感覚。
顔を見ようにも姿形を正確に捉えようにも、漆黒の外套が揺らめく度に印象がボヤけて薄れてしまう。
正に闇を体現した様な敵対者はランサーに面と向かい戦闘態勢を取りながらも逃走経路を模索している風であった。
相対する光と闇。
先手を取ったのは、光の槍兵だ。>>686
退路を探す思考の隙間を掻い潜り、喉元を穿つ槍が飛び込む。
消失したと勘違いしてしまうほどの爆発的な跳躍は、コンマ数秒前まで居た地面を強く蹴り砕き、途方も無い推進力を創出する。
静から動への瞬間的変転は生物はおろか、尋常の外の存在である英霊の認識すら彼方へと置き去って。
「────ッ、!!」
空中に響く甲高い音、と同時に揺れる空間。
金属と金属が激しくぶつかり合い生まれた余波は、公園に在る凡ゆるモノを慄かせる。
ランサーとアサシンの衝突により発生した突風にざあ、と強く揺れる枯れた枝。ともすれば根元から折れてしまうかと思うほどに、木々は仰け反り悲鳴をあげる。
しかしランサーは、そんな周囲への余波など知ったことかと、続け様に攻撃を放った。
次撃は脚を横に凪ぐ一閃。
掠めでもすれば幾ら英霊とはいえ一溜りも無いであろう渾身の払い。
が、これも寸での所で空を切る。
風に揺れる木の葉の様に軽い身のこなしの暗殺者は、空にふわりと宙に舞う。>>687
霞みがかったその姿は世界に浮かぶ一点の虚だ。
これが通常の夜の戦闘であるならば、その格好は暗黒に紛れてくれただろう。だが相手は光を放ち進撃するランサーだ。黒い異物は白の紙に落ちた一滴のインクの様に浮き彫りとなる。
更に今は宙に浮いた姿勢。物理的にこれ以上攻撃を回避する方法など皆無だ。
当然ランサーはこの機を逃さない。
否、この展開を狙っていたといえよう。
精神は激昂しながらも、脳の奥深く、芯である部分は至極冷静に戦況を把握している。
暗殺者の胴を分断する、第三の軌道。
これが坦々たる戦闘であるならばこの一撃で雌雄は決している筈だろう、そんな致命的な一振り。
然し亥狛は此処で更に理解する。
此れは通常の戦闘ではなく、凡俗な決闘でもなく、人類の極北である英雄同士の殺し合いなのだと言うことを。
つまりは本来なら決め手になるであろう渾身の攻撃が、唯の小手調べに堕ちてしまう。
そんな超高水準の戦いなのだと言う事を、身を以て感じ取って。>>688
空を浮かぶアサシンは、自身の腹を裂きに接近する槍を確と見ると。
槍の柄に手を添えて、その手を軸にして身体に捻りを加える。
丁度、槍の柄を支点に片手で倒立する様な姿勢になったかと思うと、槍の勢いを利用して穂先の進行とは逆の位置に着地した。
「───────、─────」
その光景の余りの常識外れ振りに、亥狛は背中の痛みを一瞬忘れてしまう。
なんだあの軽業は。
英霊というのはこうも次元が違うのか。
だが驚愕するマスターを他所に、ランサーは次手を繰り出していた。
第一撃も回避された、二撃も避けられた、三撃は受け流された。
だが四撃目はそうはいかない────身軽な相手ならば動きを封殺.すれば良い。
「────げ」
黒づくめのアサシンは思わず声を上げる。視線は自身の胸元に注がれている。
見ると、外套を力強く握る銀白色の籠手があった。無論ランサーのものだ。
横に振るった第三撃が徒労に終わると判断するや否や、左手だけを柄から離した。
そして着地する地点に向かって空いた左手を伸ばしたのだろう。>>689
突如、公園内に重く鈍い音が鳴る。
鉄球が壁に衝突したような、胎を撃つ音が幾重にも園内を反響し。
それと同時に、アサシンの身体が後方へと飛ぶ。
川面を跳ねる石の様に公園の地面に打ち付けられた暗殺者の身体は、それでも勢いを殺.す事が出来なかったのか物凄い勢いで公園を仕切るフェンスを突き破る。
亥狛はランサーの背中が邪魔をして状況を把握するのに時間が掛かったが、それはランサーが放った一撃によるものだと気付く。
アサシンの鳩尾(みぞおち)に深々と刺さったのはランサーの右膝。
左手で掴んだアサシンの襟を力任せに引き寄せ、強引に膝蹴りを見舞ったのだ。
肉体に接触する一撃を、致命的な槍でなく肉体言語に物を言わせたのは単純にリーチを考えての事だろう。
身の丈程ある長槍はインファイトには不向きである。仮に彼処で槍を突き立てた所で英霊の致命傷にはなり得なかっただろう。
故に膝蹴りを選択した、そう亥狛は推測する。>>690
隕石が降ったかのように捲れ上がる園内の地面は痛々しく、土煙を上げて視界を阻む。
ランサーは鎧兜の隙間から鋭い視線を向けて敵対者を睨め付ける。
しかしそこに暗殺者の影はなかった。
影も形もないとはこういった事を言うのか、アサシンは姿どころか自身の気配さえも残さず何処かへと消え失せてしまっていた。
土煙が晴れた先にあったのは痛ましい程の周囲の爪痕。
「きえ、た?」
「────暗殺者特有の技能、気配遮断でしょう。未だ遠くには行っていないでしょうが、此れ以上の追撃は此方からは不可能でしょう」
ランサーは警戒を解く事なく、亥狛の方へと近付いてくる。
「倒せなかったとはいえ、手応えはありました。霊核は砕けなかった様ですが、アレなら追撃しては来ないでしょう……もう大丈夫です」
そう言いながら此方に手を差し伸べるランサー。
その姿勢は雄々しく、鎧姿からは女性だとは到底思えない。
正しく動態の後に訪れる静態。
その瞬間的な切り替わりに亥狛はまだ馴染めていないのか、もう戦闘が終わったと言われたにも関わらず緊張が解けずにいた。
張り詰めた感情は呼吸を細くし、そして不幸にも血を流しすぎたのか。
亥狛のか細くなった意識は、戦闘が終わったと認識すると直ぐにぷつりと暗転した。
遠くなっていく意識の隅で、亥狛の事を必死に呼びかけるランサーの声を聞きながら。おわりです
召喚後に協会に出向き、マスターとしての申告を済ませ、聖杯戦争の鉄則通り、様子見に徹するうちに発生した戦闘を観測する。
(片方はこの土地の管理者、東雲玲亜。剣で弾いたことを鑑みるにセイバーのサーヴァント……?いえ、古今東西剣で戦うことは当たり前。私のライダーのように、剣の座で無いからと言って剣を持ち込まないとは限らない。そこは保留にしておきましょう。襲撃からみてアーチャーのサーヴァントが居ることは間違いない。あのサーヴァントのステータスはC、C+、B+、D、E。ライダーの鎧を貫けるものではないわね。現状は脅威対象ではないでしょう。
相手は……、リドリー・フォーサイト?時計塔から逃げた二流の狂人がこんな魔術儀式に何の用……。
あ、相方の男の方がサーヴァントね。ステータスはA 、A 、B 、C 、D。ステータスだけなら狂戦士のサーヴァントに近い。けれどバーサーカーのサーヴァントをそう簡単に晒すものかしら。
あ、泣き出した)
少女からの言葉責め?からか徐に泣き出したリドリーを見て頭が痛くなりながらつい、愚痴を零す。>>693
「みっともない……」
鈍痛を我慢していると傍からマスター、と声が届く。
「同区域内でサーヴァントの気配です」
「あら」
ライダーの言に従い、用意したもう一つの観測手段に意識を傾ける。
腰かけたベッドの下で素足を浸した、高級そうな桶に入った水。それを介し幾つかの場面を介してようやく発見する。
大柄な少年から感じ取る、旧き懐かしい匂い。まさかこの時代に同類がまだ残っていようとは。
面白い、と口を上げ、立ち上がる。
「参りますか?」
その意思を問いてくるサーヴァントに勿論と返答する。
身バレ用にコートと飴色の眼鏡をかけ、身支度をする。
さぁ、聖杯戦争の始まりだ……!
「あ、戦車は使わないで頂戴。秘匿が難しいから」
「畏まりました」>>694
短いですが、終わりです深夜の森に降り立ち、水辺を介して通し見た場所までたどり着く。
血の池に沈んだ少年と鎧に身を包んだ少女騎士。
「こんばんは。いい夜ね。最も、貴女のマスターはそれどころじゃないのだけれど」
そう声をかけ、敵意は出さずにライダーと共に少女の元に歩を進める。
警戒しているのだろう。ピリピリとした空気のままこちらに身体を向ける少女にこちらに敵意はない事を示すように、両腕を広げながら今回の目的を告げる。
「あぁ、安心して?私は彼の様子を見に来ただけだから。同じ神代からの同類の好で助けてあげても良いんだけど……。どうする?」伏神投稿
>>697
シックス・イモータル・ミーティング・ラージ・パーク
常識的スピードで走るヴェルファイアの中はいつもと変わらなかった。エル・シッドはリドリーが泣き始めた事にドン引きしたが、改めてこの男が変な奴であると確信しただけのことである。酷い頭痛も治まりつつあった
リドリーは外を見ている。その目は薄っすらと赤橙色へと変わりつつあった。胸ポケットから連絡先を取り出す。そして彼女の事をまた思い出し、一筋の涙が垂れていた
「ク.ソマスター。アンタの過去に正直なところ興味はない」
エル・シッドはさっきの会話の中で思っていた疑問をぶつけた
「アンタ本当に教員だったのか?」
「今は無期限の有給中だけどね」
その言葉にエル・シッドは収まりかけていた頭痛が再発する。時計塔に有給なんて制度あんのかよ?!まあ突っ込んでも無駄とエル・シッドは黙った>>698
赤信号で止まると
「あっそうだ。ロドリー、君に渡したいものがあるんだ」
そう言ってリドリーは2つの筒状のものを投げ渡す
「アンタ……………なんで黒鍵を持ってるんだよ?」
黒鍵?!それは聖堂教会が主に使う粛清兵器!何故魔術師の系譜であるリドリーが敵対組織の兵装を持っているのか?
「兄者が聖堂教会の代行者なんだよ。だからくれた」
「……………お前ん家一体どうなってんだよ」
たしかに異常だ。代行者と魔術師が同じ屋根の下で住んでいる。考えるほど対立という言葉が馬鹿馬鹿しくなってくる
(まあでも、貰えるのもは貰っておこうか)
エル・シッドは深く考える事を放棄して、車を走らせていこうとした
その時エル・シッドの優れたサーヴァント視力は公園の方の光を見逃さなかった!
きな臭い匂いを感じとったエル・シッドはヴェルファイアを急旋回!そのままトップスピードで走り出した!
ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャル!
この世の物とは思えない悍ましい音は国道のライダー達を恐怖に陥れ、その後都市伝説とかしたのはいうまでもない>>699
リドリーは微かに仰天!しかしリドリーはエル・シッドを尊重し、何も言わず思案に耽る
リドリーはエル・シッドのことを全面的に信用信頼しているのだ。彼の意見は尊重する。マスターとして当然だと考えていたのだ
ギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルギャルン!
公園に通る道をヴェルファイアで飛ばし、そして……………
着いた!
突如現れた木目状の青緑車体のヴェルファイアに困惑するランサーとライダー。そして予め監視していたゲルトラウデは警戒する
半裸の上に白衣をまといメガネをつけた男、リドリーフォーサイト!
『お前はアホウだ』と書かれたセンス皆無なTシャツの上にジャンパーを羽織り、サングラスで目を隠す男、エル・シッドだ!
あまりの場違いな衣装と雰囲気にランサーとライダーの困惑はさらに加速!>>701
終わりです――病院に連れて行こう。
急に割入り、そんな“一般常識的な”回答を述べてきた男、リドリー・フォーサイトにゲルトラウデはまた頭が痛くなる思いを感じた。いや、事実悩ましそうに額に手を当てている。
「~~!ハァ。ねぇリドリー先生。貴方、それ本当に言っているの?彼、人狼よ。人間の病院に連れて行っても意味ないじゃない。そもそもの体組織が違うのよ?
専門の術師に診てもらうのは動物科(キメラ)にもかかる分野ではあるけど、神代に通ずる考古学科(アステア)でも習得できること。
これだから二流……、いえ魔道を軽視する三流は……」
これ見よがしにため息をつき、それからもう一つとばかりに付け加える。
「それとそこのセイバー、話をするのならそう相手を威嚇するのは止めておきなさい。聖杯戦争の参加者として戦う気満々と取られるから。こんな風に」
その言葉と同時に、全身鎧に身を包んだライダーが、宝具たる大剣を手に、セイバーへと距離を詰め、横なぎに振るう――!
終わりです。>>704
マスター能力のステータス透視からの推測ですね。
アーチャーは襲撃者でランサーはこっちで確認済み。
リアクションを取って暴走しないことからあのステータスは消去法でセイバーです。「っーーぐっ…」
即座に相手の魔術を解析して再現。相手にも雷撃を当てる。自分が感電しないように防御を張っているのでそれを抜いて電気を通す。
マグダレーナ「かはっ!?」
同属性での反撃に驚くものの腕は離さない。何故だ?私はともかく君はこのままでは死ん.でしまうぞ。
どこまで巫山戯た強さなのかと愚痴でも零しそうになる。全くの同属性で反撃してこちらの方がダメージが大きいって嫌味か!
でも…スルトちゃんなら必ず勝ってくれる。それまでなんとか、こいつをここで抑えるんだ。スルトちゃんを信じて絶対に耐えてみせる。
さあ、根較べといこうじゃない。昔から我慢強さには自信があるのよ。セイバーとバーサーカーの宝具による炎と光のぶつかり合いは、その余波だけで周囲の岩を溶かしている。しかし形勢はバーサーカーが大きく優勢であった。
セイバー「………相性負け、か…」
威力だけであればそこまでの大差は無い。それこそ気合いでどうにかなるレベルだっただろう。
しかしバーサーカー、スルトの宝具『黄昏の刻、紅炎の剣(ラグナロク・レーヴァテイン)』は神代に終わりを齎した対神宝具である。たかだか一柱の神の権能では時間稼ぎにしかならない。
セイバー「まあ、落とし所としてはこんなものでは無いでしょうか。毘沙門天様」
稼いだ時間で思考する。マスターはどうした?
セイバーはエルシュタイン(の複製体)の性能を高く買っていた。少なくとも彼我の相性差を埋める手を打たない筈がないと思ったのだがマスターからの思念は届かない。
ああ、これは相手のマスターとの戦いで何かがあったんだなと判断する。極小確率だと切り捨てた事象が起こったのだ、と。予想外の展開に口角を釣り上げる。
セイバー「やれやれ…これだから戦というものは…」
面白い…。と呟いた声と共にセイバーは炎の中へと掻き消えた。セイバーの消滅と同時にアナウンスが流れる。私達の勝ちだった。それと同時に目の前の複製体は攻撃を止め、互いに距離を取った。
マグダレーナ「はぁっ…はぁっ…」
身体中が焼ける様に熱い。いや、実際に焼けている。それでも魔術回路をフル稼働させて何とか命を繋ぐ。対する複製体はと言うと全く平気と言わんばかりだ。
「聞かせてください。何故貴女はそこまで頑張るのですか?」
マグダレーナ「言ったでしょう…?私はバーサーカーの…スルトちゃんを笑顔にする為にこの大会で優勝する…。それに…」
痛い、痛いっ、痛い!
言葉を発する度に喉が痛い。けどこれだけは言ってやるんだと気力を振り絞る。
マグダレーナ「あなたの願いを叶えさせる訳にはいかない。だってそうでしょう?人でなくなったモノに人を導ける筈がないもの」雷に打たれたような衝撃を受けた。さっきまで本物の雷撃を受けていたのだがそれはそれ。
そうか…私は、間違っていたのだ。オリジナル否エルシュタイン・ラジアナ・カヴァセルリがどうして自分のような考えに至らなかったのか。それは自己という存在が消えるからなどではない。人として生き、人として死に、その遺志を継ぐ者がまた少しでも良い未来を築く。そんな人の営みを尊んだのだ。
「どこで…間違ったんでしょうね……」
返事など期待していない、独り言のような呟きに、僥倖にも彼女は、マグダレーナは答えてくれた。
マグダレーナ「さあ…。でもあなたが、複製体だと割り切ったのだとしたら…その時じゃないかしら…。この世に完全無欠な人なんて存在しない…。だって、完全になるということは不完全さ[人間らしさ]が失われるもの…」
「そうか…そうだったのか……」
体から力が抜けるのを感じた。今となってはこの身がエルシュタインと同じ形をしていることすら許し難い。
「おめでとうございます。貴女の…貴女たちの勝ちです」
真っ直ぐ目を見てそう伝える。そして消滅を選択しようとしたところでふと思いつき、少しばかり猶予を貰うことにした。「そうだ。忘れるところでした」
まずは自分が傷付けた分のダメージを治癒魔術で治す。ほんの少しやり過ぎて戦闘前より健康になってしまったようだけれどもそれは気にしない。血行が良くなったとかそんなレベルだろう。
マグダレーナ「どういうつもり?」
「いえ、私はこのまま消滅するので、せめて回復をと思いまして。他の陣営は敗退したマスターを仲間にしている可能性もありますしね」
マグダレーナ「そう。あなたは消滅を選ぶのね」
「ええ。それとこれも」
数歩近寄ってハンドガン、グレゴロールを手渡す。
「この銃、グレゴロールは所有者の起源を増幅させ弾丸として射ち出すものです。使ってやってください」
相手が受け取ったのを確認して数歩下がり、手を振って笑顔で送り出す。
「さようならマグダレーナ・グロース、そしてスルト。貴女たちの未来に幸あらんことを祈っています」
〜勝者、マグダレーナ・グロース&スルト〜お待たせしました。マグダレーナ達の勝利まで書きました。
そして無断でマグダレーナの強化フラグを建てましたがこれはマグダレーナさんの自由にして貰って構いません。本人が言うように肩こりが治ったとかその程度にするも良し身体能力が上がっていることにするも良しです。>>546
革靴を踏み鳴らす音が続く。
存在を知らせるように。 宣告を行うように。
「一度だけニホンに行ったことがあるのだけれど」
無人のはずの建造物、その階段から乾いた音が近づいてくる。
「"A fool and smokes like a high place."(愚か者と煙は高いところを好む)と聞いたんだ」
「へえ……、じゃあ君は煙なのかな?」
返答が軽薄に響く。 両者共、声を張り上げてはいないのに会話が成立しているのは魔術的な反響を行なっているのだろう。
「多分君ほどは煙たくないだろうね、半端者」
「使えるモノは使うってだけなんだけどなぁ」
朽崎遥は狙撃対象地点である別荘地の方角から、屋上内側へと向き直る。
「にしてもおっかしいなぁ。 探知と迎撃用の礼装は準備してたんだけど」
「だから半端だと言っているんだよ。 探知機が先に探知されたら世話ないだろう」
乾いた足音は一定のリズムを保ったままに上昇を続ける。
残骸を踏み荒らす事もなく。 戦闘の音すら発さずに。>>712
「設置するならもう少しまともな警備にしたらどうかな」
「言ってくれるなぁ。 それなりの出来だとは思ってたのに」
足音が止まる。
「んで、バーサーカーを削りきれないから先にマスターな俺を叩きにきたワケか、な?」
返答はない。
「いいのかなー? 戦力比的にアーチャーランサーバーサーカーのこっちの方が主戦場の向こうでは有利だと思うんだけど、ワザワザこっちに人員割いてさー?」
音はない。
「まぁいいんだけどさ、俺はどっちでもね」
扉は開かない。
「コ・ロ・シ・テ・ア・ゲ・ル、から、かかって来なよ」
「そうだね、可能であれば死ん でくれ」
次の瞬間、朽崎遥の左手50cmに、ルーカス・ソールァイトが空間を裂いて現れた。>>713
「っ!!」
"強化"を通したステッキが、右回転で振るわれる。
狙撃可能な屋上である。 金網などという安全弁は存在しない。 直撃すれば、言うまでもない。
朽崎は身体を反って上半身を投げ出し、仰向けになる事で回避する。
そのまま重力に身を任せ、逆しまに落下するところを縁を掴んだ左手を軸に半回転し、
(まずは片腕からね)
右腕のナイフで、ステッキを振り抜いたソールァイトの右腕を切り上げ、切断する。
ナイフはまるで空を切るように滑らかに、自然に、当然のようにソールァイトの右腕を通り抜けーーー
「当たり前だよ、まさに空を切っているんだから」
空振りのナイフが通った向こう側に、ステッキを振りかぶったソールァイトが現れた。>>714
「つっ!? はぁ!?」
袈裟にステッキが振るわれる。
(ふざけんなやるしかないじゃんかよ!!)
身体を支える軸にしていた左手を離し、ふたたび重力に身を任せる。
朽崎の身体のわずかに上を、石突きが左上から右下へと通過していく。
当然だが、空中に支えなく存在しているものの運命は、万物に等しく自由落下である。
「くっ!!」
コンクリートと金属のぶつかり合う音が響く。
鋭さの中に鈍みを内包した音。
朽崎遥は外壁に突き刺したナイフを新たな軸として再び屋上に復帰する。
「いきなり何するのさ、俺死んじゃうよ?」
これから戦場となるこの建物は決して低くはない。
無装備で投身自殺を行えば速やかに天への扉が開くだろう。
朽崎がそう言う頃にはすでにフロアーの中央へと移動していた。
その手には復帰に使用したナイフが未だ握られている。>>715「魔術師があの程度で死ぬものか」
ステッキの先端、石突きを、音を立てながら突きたてる。
「心配はしなくてもいいよ。 まあ最悪でも背骨と脳髄だけは残してあげるさ」
「"自己強制証明"ガン無視だなぁ……」
溢れた小言にソールァイトが鼻を鳴らす。
「フン、君は何故"自己強制証明"が魔術世界における『最大限の譲歩』とまで言われているかわからないのかな?」
カァン!! とステッキが突き立てられ、ソールァイトは口を歪める。
「解釈次第で出し抜ける可能性のある契約に何の価値があると言うんだい? ええ?」
朽崎遥は溜息をつく。吐く息に愉悦を乗せながら。
「一度行ったけどもう一度、あ・え・て、もう一度言ってあげるね」
「殺してあげるから、来なよ」
( 照らすもの、汝の名は星である )
「Sta[e]r was made of the light.」
ルーカス・ソールァイトを中心として、9つの光素が公転を開始した。
「くれぐれも死なないように頑張ってくれるかなぁ。 この僕のためにさぁ!!」>>716
一旦投げるよくっちー、じゃあ、やろう。伏神投稿します!
多分今までで一番長い(超どうでもいい)>>718
パーフェクト・アーマー・バーサス・メタモルフォーゼ・ファイティング
横から迫る剣!だがライダーが大英雄だとしたらエル・シッドもまた大英雄!
両手の裾から黒鍵を取り出し、刃を出現させた!一つは刃を止め一つはライダーの鎧を刺す!
だが、エル・シッドはその直後心の中で舌打ちをした
剣を止めた黒鍵からは煙が吹き出し溶け始め、鎧をついた黒鍵は全く刺さらず弾かれてしまったのだ!
これはライダーの宝具によるもの。剣は打ち合った武具を朽ちさせ、鎧は一定ランク以下の攻撃を完全に無効化するのである
そこにライダー本人の技量が重なればまさに鬼に金棒!ジークフリードにバルムンク!
「ク.ソマスター。どうやらこいつの剣と鎧は特別なようだぜ。剣は武器を腐らせて、鎧は攻撃を受け付けないようだ」
エル・シッドはリドリーに情報を流す。真名特定の鍵とするためだ。もっと多くの情報を引き出す必要がある>>720
斬る。撃つ。殴る。突く。躱す。止める。払う。斬る!撃つ。殴る。突く。躱す。止める。払う。斬る。撃つ!殴る。突く!躱す。止める。払う!斬る。撃つ。殴る。突く!躱す。止める。払う。斬る。撃つ。殴る。突く。躱す。止める!払う。斬る!撃つ!殴る!突く!躱す!止める!払う!斬る!払う!撃つ!払う!斬る!払う!撃つ!払う!斬る!払う!撃つ!払う!斬る!払う!撃つ!払う!斬る!払う!撃つ!払う!斬る!!斬る!!斬る!!撃つ!!撃つ!!撃つ!!
最大至近距離で繰り広げられる戦闘行為!
目まぐるしく攻守が逆転するラッシュ!
彼らの出す音、血、汗、軌道が形となり美しく散る
それまるで一つの小宇宙(コスモ)!!!>>723
その時エル・シッドは足を左へ右へと動かし、踊り始めた。これはカポエイラの動きジンガだ……………
そして近づいてくるライダー見ながら体をひねり、ひねった反動で後ろ回し蹴りを繰り出した!
これはカポエイラの技アルマーダだ!その海軍の砲撃を思わせる破壊力を持った蹴りのスピードは凄まじく速い!
だがライダーも強者!彼のスキルの一つ心眼(真)によりこの技をかわし逆転する可能性を手繰り寄せる!
ギリギリで首を捻るライダー!彼の目の前に蹴りが空を切った!ライダーは勝利を確信!
剣を両手に持ち全力でその剣を振り下ろした!
ああ、エル・シッドはこのまま真っ二つの開きとなってしまうのか?!
ダァン!!!
凄まじい衝撃音が世に響き渡り、土煙が舞い上がる!
そこから姿を現したのは……………>>728
しかし!
「……………"ダメだな"」
エル・シッドは声を漏らす。ライダーが大池から上がってきたからだ!
藻や血がつき大きく息を切らしているが、目に見えるダメージは少ない
並のサーヴァントなら一撃で蹴りがつくはずであるがライダーは大英雄であり、その宝具の効果も英霊屈指の防御力を誇る。故に致命傷は与えることはできなかったのである
エル・シッドの身体は傷だらけだ。致命傷はないにせよ、体力を消耗している
このままエル・シッドが本気を出さなければジリ貧だ!
(………………どこを落とし所にすべきだ?)
エル・シッドはランサーの方を見る。結局彼女の意見を聞くのが大事なのではとエル・シッドは思い始めていた
そこでエル・シッドは提案をあげた
「……………一旦やめにしよーや。俺たちじゃなくてこの嬢さんがどうしたいかに決めないか?」>>729
終わりです
この後イコマさんにパスします伏神ランサー陣営、投下します
>>731
これは一体どうゆう事なのか。
アサシンとの交戦後、状況は目まぐるしく、かつ複雑怪奇に絡まりつつある。
暗殺者の英霊の急襲により深手を負ったマスター、錫久里亥狛を巡って眼前では二つの陣営が衝突している。
一方は輝ける鎧兜の騎士を携えた女魔術師。
亥狛が昏倒した直後────まるでこの場を観察していたかのように都合の良いタイミングで現れた彼女は、亥狛に魔術的治療を施す為に手を差し伸べてきた。
『神代の同好のよしみ』と語った彼女は、恐らくランサーが知り得ない亥狛の正体について把握している様に思える。
(イコマが人狼、という発言が気懸りですが……はたして彼女の言葉を信じて良いものか)
もう一方は、女魔術師の出現より数十秒後、これもまた絶妙なタイミングで出没した男魔術師。
剣士の英霊を侍らせる軽薄そうな男は、これ又亥狛の救出を買って出ては『人として病院に連れていく』と主張した。
(登場から為す事全てが奇天烈ですが、目的自体は崇高ではあります……だが信用に値するかは別問題)>>732
揺れ動く選択という名の天秤。
マスターが行動不能となっている現状で、ランサーは慎重な判断を求められていた。
両陣営は自身のマスターを救うという目的の下に互いに相争っている、その行動自体は有難いと思う。
本来他陣営とは敵対しあう関係。聖杯戦争とは陣営別に別れて互いに命を獲り合う、至極冷徹な儀礼だ。殺し合う事こそすれ情けを掛ける道理もない。
だからこそ、敢えて敵に救いの手を差し伸べた理由を知りたい。
そうランサーは感じた。
両陣営が救おうと思うに至った道程を、筋道をしっかりと噛み砕いて、その上で亥狛の為になるであろう選択をする。
それこそが今自身が取り得る最善であるとランサーは思ったのだ。
運命の天秤は今も心許無く揺れ動く。
か細いピアノ線の上で綱渡りをするかの様に。
指一つ、唇の動き一つ、ほんの些細なコトすら意味を有している気がしてしまう程に。
張り詰める空気。>>733
「……両者の救援には、素直に感謝します。
ですがマスターの窮地である以上、そう易々と提案を鵜呑みにする訳にもいきません」
「道理だな、このク.ソマスターを初対面で信用しろってのも土台無理な話だ」
「ちょっ……!ひどくねーかいロドリーゴォーっ」
自らの従者に酷評されたセイバーのマスターは露骨に落胆してみせる。軽口を叩き合う仲には一定の信頼関係がうかがえる。
「……で、貴女はどうしたい訳?言っとくけどこうしてる今も貴女のマスターの命の灯火は薄れつつあるわよ」
もう一陣営────恐らくライダーのマスターである女魔術師は、事もなげにそう言った。
慎重な姿勢を示すランサーに「無闇に悩む時間はない」という事実を突き付けてくる。
当然そんな事は百も承知だ。
でも、だからこそ。
自身の選択を、せめて後悔しないものにしたい。
「セイバーのマスター、それと……恐らくライダーのマスター。両者の考えを知りたい。
何故我がマスターを救おうと思ったか────その行動の根底に根差す理由を教えて頂きたい」
全ては我がマスターの最善の為に。
ランサーの眼に迷いの色は吹き飛んでいた。>>734
はい、これで終わりです。
ライダー陣営、セイバー陣営にパスを促します。
どちらが先でも構いません。「何でも何も……、初めから言ってるじゃない。
同じ神代の因子を持っている同胞を気紛れに助けてあげようってだけよ」
(最も、あの三流が入り込んで来てからは神秘の秘匿も入ってきたんだけど……)
魔術師としての都合も入り込んできたが、そこはそれ。清廉潔白らしいランサーに都合の悪い事情は言う必要は無いだろう。
何せ、嘘ではないのだから。リドリーの介入を抜きにすれば今回の行動は純粋な善意が始点だ。
それ以上に掘り下げようもないのだから、是非もない。
終わります。【定期連絡】
リレー企画参加者様へ。企画の円滑な進行の為、1週間以上レスができない状況になる場合は、GMにその旨を報告してくださるようお願いします。その際は、どういう方針・方向で動きたいかを合わせてお伝えください。参加者間での話し合いを行い、どのような描写にするかを議論します。
1ヶ月以上応答がない場合は、応答があるまで他参加者で進行させていただきますことをご了承ください。
以上の連絡は>>1へ追記する内容です。スレ立ての際は追記お願い致します。
中華スキーさん、お忙しいかと思いますが、九終聖杯大会の進行がありました。つきましては召喚シーンの投稿をお願いできればと思います。信用してもらうにはどうするべきなのか?
リドリーは今思っている気持ち全てを打ち明ける事にした
「私達がここにきたのは偶然だよ。運転してたローが急に進行方向を変えて公園に来たもんだから何があったのかこの子を見るまで把握は出来なかったのさ
……………正直なところ打算が無いわけじゃない
今私は
恩を作りたいという100%の気持ち
この魔女誰だ?という100%の気持ち
初対面なのに何故こんなに三流呼ばわりされるののか?悲しいという100%の気持ち
何故ローの攻撃でダメージあまりないのかという100%の気持ち
もう死にかけの"人間"を救えないのは嫌だという500%の気持ち
そして、この子を絶対助けたいという1000%の気持ち
しめて2000%の気持ちが心で渦巻いているのさ。困っている、危険になっている人間を助けるのは人間として当たり前だと僕は思っている……………完全完璧な善意ではない。だけどね。私はそれでもこの子を助けたいのさ。それは分かって欲しい」
その声は真剣である
エル・シッドは自分の主に対して微小の関心を得ていた
(言っていることが可笑しい気がするが……………マジなこと言えるのか)>>738
終わりです>>740こっちが完成形です
信用してもらうにはどうするべきなのか?
リドリーは今思っている気持ち全てを打ち明ける事にした
「私達がここにきたのは偶然だよ。運転してたローが急に進行方向を変えて公園に来たもんだから何があったのかこの子を見るまで把握は出来なかったのさ
……………正直なところ打算が無いわけじゃない
今私は
恩を作りたいという100%の気持ち
この魔女誰だ?という100%の気持ち
初対面なのに何故こんなに三流呼ばわりされるののか?悲しいという100%の気持ち
何故ローの攻撃でダメージあまりないのかという100%の気持ち
凄く気高い心の持ち主だなと思う100%の気持ち
もう死にかけの"人間"を救えないのは嫌だという500%の気持ち
そして、この子を絶対助けたいという1000%の気持ち
しめて2000%の気持ちが心で渦巻いているのさ。困っている、危険になっている人間を助けるのは人間として当たり前だと僕は思っている……………完全完璧な善意ではない。だけどね。私はそれでもこの子を助けたいのさ。それは分かって欲しい」
その声は真剣である
エル・シッドは自分の主に対して微小の関心を得ていた
(言っていることが可笑しい気がするが……………マジなこと言えるのか)投稿します
>>742
「説明しろ、アサシン」
気配を感じ、振り返る。
開口一番、正面に立ち威圧的な態度のウィリーの問いにアサシンは目線を泳がせる。
「いやぁここのうどんって凄く美味しいねぇ」
「質問が、聞こえなかったか?」
「わわわわ、ゴメンってば冗談だって!!」
マスターの昏く輝く眼に気圧されたアサシンは慌てた。あり得ないと頭では理解していてもこの男はサーヴァントである自分を睨むだけで殺.してしまいそうだと感じたからだ。
「えっとぉ…見かけたからランサーのマスターを襲ってぇ…刺したけどなんか死ななくてぇ…それでぇ…」
親に悪戯の言い訳をする子供の様なしどろもどろの説明をするアサシン。事実、今のアサシンの体は召喚された時と同じ子供の様な体躯に戻っていた。>>743
「反撃され、手傷を負ったわけか」
「そうだよ」
「何故命令を無視した?」
眉一つ動かさないウィリー。
対して彼女は腹部を抑えていた。あの鳩尾にくらった膝の一撃は、それだけでアサシンの昂ぶっていた戦意を失わせるのに十分だった。
正直彼女は敵の実力を色々な意味で侮っていた。
「…………」
「ここで霊体化しろとは言った覚えは無い。何故、命令を無視した?」
「いや逆に説明しろと言われても困るというか。青く若い行き場の無い衝動が私を突き動かしたんだ。というかよく考えたら怪人が人を襲っちゃいけない理由って何?そういやさー、私あのド突きくらった時『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』って思わず絶叫しちゃってさ。激しくスイング!私はシャウト!天地はクエイク!思わずリバース!!」
取り留めのない気狂いの様な発言をするアサシンにこれ以上問いただす事は無駄だろう。
そう判断すると、小さく息を吐く。アサシンに背中を向け使い魔と魔術を施した双眼鏡、そして本格的に活動を始めた霊脈の三つで確認できた範囲で、改めて聖杯戦争の動向を把握した。>>744
セイバー…マスターは眼鏡を掛けた男と思われる。ステータスの高さからしてセイバーのサーヴァントも確認したが能力は不明。トップクラスのサーヴァントを従えているため、もう少し泳がせておくべきか。
アーチャー…マスターは不明。だがアサシンがランサーと接触した公園で他のサーヴァントと戦闘をしたと考えられる。
ランサー…マスターはアサシンが襲った男。眩しいほどの甲冑を着た騎士らしい。獲物は長槍。無論実力は高いだろう。
ライダー…主従共々詳細不明。召喚されたかもまだ把握できていない。
「あれ?私放置?放置するんだったら全力で考え事の邪魔するよ?こう、具体的にはと言われると困るけど。あ、そういや多分声的にランサーのマスターはイケメンだと思うよ」
「下に霊脈とのパスが近い場所がある。霊体化して傷を少しでも早く癒して来い」
「うーす」>>745
キャスター…主従共々詳細不明。陣地に籠っているのか。
バーサーカー…今のところは確認できず。
ただしビルの屋上でセイバーのサーヴァントと接触している男はサーヴァントだと思われる。付近にいた女はマスターだろうか?
とにかくこのどれかに御三家と称され伏神の地に根を下ろしている魔術の大家、朽崎家、東雲家、オルバウス家のどれかが関わってると見ていい。
廃れているとはいえ土地の管理者達だ。十二分にあり得るだろう。
「………」
恐らく、今回の聖杯戦争で一番のハズレくじを引かされたのは自分だ。改めてそう実感させられる。
命令を無視し、妄言を吐き、ステータスも低く、好き勝手に動く駒など使いづらいにも程がある。
左手に宿った歪な形の令呪を見つめる。
もし、アサシンのスキルに相手に一切の情報を与えない「情報抹消」が無ければ令呪を使ってでも動きに制限をかけていたと思わせるまでだ。
だがそれでも下手に動くのは危険だ。
今後はどの様な方針を立てるべきかと思考を巡らしているとーーー>>746
「……なんだ?」
前触れもなく、近くに吊るしていた風見鶏を模した魔力計が、音を立てて回り始める。
これは風などの自然現象では回らず付近で強い魔力が観測できた場合、その方角を示す物だ。本来は魔除けの為に作られた風見鶏をウィリーが手を加え改造した。
アサシンが帰還してからは何の反応も示していなかったが今は明らかに矢を強く張り、一方向を指している。
ーーー西だ。
そう、アサシンがランサーと交戦した公園がある方角だ。
「…闘いは終わってないのか」
慣れた手つきで双眼鏡を用意する。
蒐集師の聖杯戦争初日は終わりを迎えるにはまだ、時間がかかりそうだ。猫――黒い猫が歩いている。
三角の耳をピンと立て、しなやかに肢体をくねらせて、茂みの中を進んでいく。
人には入り込めない場所でも、彼にとっては御誂え向きのトンネルのようだ。全体的に丸みを帯びて見えるが、動きを見るに、そのビロードのような毛皮に隠された肉体は案外筋肉質なのかもしれない。
鬱蒼とした灌木の洞窟を抜けたその雄猫は、そびえたつ(おそらくは日本で最古の)還元焼きレンガの塀に行き当たった。彼の体の何倍もあるような巨大な壁を、うまく爪をひっかけながら、これもヒョイと飛び越す。
そして――その奥に鎮座する、魚鱗のような天然石のスレートで覆われた洋館にたどり着いた。
長い尻尾を空中に漂わせながらウロウロとその周りをまわっていた彼は、やがてわずかに開いている窓を発見すると、のびやかに飛び上がってその奥へと姿を消した。
◆◆◆◆◆◆
分厚いカーテンを潜り抜けて押し入ってきた小さな客人に、朽崎遥は目を丸くした。これから、愉快そうに口をすぼめた。
「そっちから来るなんて珍しいじゃん。あ、ミルクでも飲む?猫だし。ねえ、教授」
遥の言葉が終るか否かのうちに、黒猫が大きく膨れ上がった。黄色く丸い目は、張り出して爬虫類じみたものに変わった。毛皮はとろけ、漆黒のコートに変容した。怪物的な見た目をした男が、そこに立っていた。
「『ブリティッシュショートヘア』だ。喰い破るぞ、と普段であればいうところだが、いただこうか。やはり姿を変えると、そちらに引っ張られていかんな」
ロワインはドカリと近くのソファーに腰を下ろした。それからしばらくして、遥からボウルに入れたミルクを渡されると、人肌程度に温まったそれを蛇のように長い舌でペチャペチャと舐め始めた。遥は彼の向かいに座って、それを黙ってみている。静かで、奇妙な時間が流れていく・・・・・・
◆◆◆◆◆◆>>748
「それで、何の用?ていうか直接来なくても、『食事』後の隠匿用に通信機渡してあったよね?」
先に切り出したのは遥だった。
ロワインはボウルから顔を上げ、顔をしかめる。
「初日に動かなくなったので、粉砕して海に撒いた。やはり、あのような道具は確実性に欠ける。ゆえに不要だと言っただろう」
「あー・・・・・・」
黒衣の男は、曖昧な表情をした遥をまるで気にする様子無く淡々と続けた。
「要件は簡単だ。貴様の持っているオモチャをいくつかよこせ。サーヴァントに持たせる」
遥はそれを受け、これもまた珍しいね、と感想を漏らす。
「でもなあ。悪いんだけれど、俺的にはやっぱり、聖杯戦争にはなるべくノータッチでいたいんだよね。フェアじゃないし」>>750
「ハル兄ィ、無双丸の水入れどっか隠したな!かわいそうだろ!!」
鬼の形相で兄の部屋に乗り込んだ誉だったが、客人を見てすぐにキョトンとしたものに変わった。
「兄貴、そいつは・・・・・・?」
「あ、ああ誉!こ、れは・・・・・・」
何かを言おうと口をパクパクさせる遥だが、驚きのあまり声が出てこない。
そんな様子の兄をよそに、少女は感嘆の声を上げた。
「へええ!ハル兄が猫にミルクあげてる!普段俺らに任せっきりで、無双丸の世話なんか全然しないのに。めっちゃレアじゃん!どこの子?」
(ブリティッシュショートヘアーだ)(頼むから黙ってて!)
「?兄貴、なんか言った?」
「何でもない、野良猫だ。窓から入ってきたからさ、ちょっと餌あげてただけ。悪かったな」
「いいっていいって。てっきり、兄貴が無双丸に嫌がらせしてるのかと思ってたぜ。なつかないからって」>>751
「お前は自分の兄を何だと思ってるんだ・・・・・・。ほら、これは返すから向こうに行ってろ」
遥はボウルを誉に押し付け、ついでにソファーの黒猫にのびてきた手を払う。手の主は、ムッとした表情で自分の兄を糾弾した。
「ケチ。触らせろよー」
「だーめ。教育上よろしくない」
「意味わかんねえって」
誉が再び手を伸ばす。これも払われる。伸ばす。払われる。伸ばす。払われる――
数度にわたる激しい防衛線を征したのは遥だった。ロワインをグッと抱き上げる。
そして、業者を通じてロワインに連絡することを耳打ちすると、そのまま窓を開け放って(「兄貴、そいつオスだ。ほら、チンチ」「シャラッププリーズ、ホマレ?」)放り出した。
そんな、夜も遅い時間の出来事。>>756
よかったです。
とりあえずじゃあ、描写する際はふつーのヘカート2って事でやりますねーザミエルくんが理屈を理解していなくてもスペックを引き出せる、また一般人でも使えるならへカートカスタムでも大丈夫かもしれませんが
特殊な詠唱とか手順などが必要なら運用に制限ができるかもしれません
魔術には狩猟ほど詳しくないので彼
汎用的な方が安心ですランサーは思考する。
眼前の二陣営の発言に嘘は介在していないと言って良いだろう。
斯様な緊迫した状況で虚言を呈する事が出来るとするならば、それは余程の胆力の持ち主か或いは命知らずも同然の狂人か。
両者の言い分は把握した、ならば次にすべきはそれを元に自分がどう動くかだ。
軽く目を伏せて、思案を巡らせた後。
「───御二方の援助は大変有り難い、聖杯戦争という殺し合いの場に於いて敵に手を差し伸べる行為は正しく高潔に値します。
然し、御気持ちだけとさせて頂こうと思います」
如何にその行動に裏が無いと言えど、相手は今宵初めて対面した聖杯戦争の関係者。
然らばマスターの身元を他陣営に委ねるのは極力避けるべきだ。>>761
これで終わりです。トーナメントSS、少しですが投下
>>763
「さて、マスター同士がおっぱじめたんだ。俺らもボチボチ始めましょうや」
乾いた風が吹き荒ぶ荒野に、二騎の英雄は向かい合う。
遮蔽物は大きな岩盤や切り立った崖の他には何も無く、視界は極めて良好だ。
拓けた土地は弓兵にとって有利に作用する事もあるが、これ程までに何も無いと隠遁しながらの襲撃はほぼ不可能だろう。
アーチャーは彼方に立つ英霊の様子を繁々と眺める。
身に纏う装飾具から自分とは違う出自の英雄である事は容易に見て取れた。しかしそこより先は何一つとして真相に近づくことは無い。
然し、こうして改めて相対する事で気付く点が一つだけある。
其れはバーサーカーなる英霊が抱く溢れんばかりの憎悪の念だ。>>764
────可視化する程の負の感情は、数多の戦場を潜り抜けてきた英傑でさえ背筋が凍る思いに身が竦む。
此奴は危険だ、そう頭が判断する頃には、アーチャーの指先は既に行動を終えていた。
脊髄を駆ける電流よりも疾く、肌が答えを出していた。
音の壁を超え、空気の障壁を破る『唯の弓矢』が正確無比に敵の頭蓋、その中心目掛けて放たれる。
矢の中る音はもう人間が想起する軽快なそれでは無く、腹を打ち据える様な重い衝撃を含んでいた。
獲物の命を確実に奪う為の、アーチャーの渾身の一撃。
だが敵の英雄はその一撃を真正面から食らってもなお傷一つ無く、まるであの一射が嘘だったかの様に平然とアーチャーを睨む。
「────度し難い、度し難ぇなアーチャー…いや、養由基とやらァ」>>765
「其れほどの腕前を持っときながら、よりにもよって『神域』ってかァ?…苛つくねェ、実に虫酸が走る……悍ましい気配が臭過ぎてムカつくんだよ…………」
「バーサーカーの割に良く回る舌だな、噛むんじゃねぇぞ」
そう語り際にアーチャーは更に矢を一射撃ち込む。目標は良く回るバーサーカーの舌目掛けてだ。
しかしそれもまた致命傷にならない、それどころか彼の顔面には擦り傷一つすら見受けられなかった。
(恐らく何らかの加護か、或いは宝具の類か……いやなんともまぁ厄介な、人間じゃねぇだろうコイツ)
心の中でそう恨み言を呟きながら、アーチャーは次なる策を講じる。決して地頭の良い方ではない彼だが、こと戦に関しては別だ。>>767
終わりです【定期連絡】
リレー企画参加者様へ。企画の円滑な進行の為、1週間以上レスができない状況になる場合は、GMにその旨を報告してくださるようお願いします。その際は、どういう方針・方向で動きたいかを合わせてお伝えください。参加者間での話し合いを行い、どのような描写にするかを議論します。
1ヶ月以上応答がない場合は、応答があるまで他参加者で進行させていただきますことをご了承ください。
以上の連絡は>>1へ追記する内容です。スレ立ての際は追記お願い致します。
・統合スレにて開催中の企画
1.九終聖杯大会
2.トーナメント大会
3.伏神聖杯戦争
・開催予定
1.特異点 悪徳歪曲狂国ベルツ・ル・パラディス(募集締切、2月初頭開始予定)
2.インフレ聖杯大会(メンバー調整)
3.第◾️回聖杯大会(メンバー調整、2月半ばに話し合い、可能であれば開始)
中華スキーさん、お忙しいかと思いますが、九終聖杯大会の進行がありました。つきましては召喚シーンの投稿をお願いできればと思います。また、お伝えしたいこともありますので、予選へレスをお願いします。トーナメントの続きです。
あれから何分たっただろうか。
砂嵐を駆け抜けて、フィールドにある街が見える辺りに辿り着いた。
((ライダー、いつでも戦える準備をしてほしい。))
((了解。必要とあらば対軍宝具の使用も検討してくれ。))
主従は街の入り口に一歩ずつ進めていった。
彼らは決して止まらない。
例えその先に死.が待ち構えていても。>>772
終わりです。【定期連絡】
リレー企画参加者様へ。企画の円滑な進行の為、1週間以上レスができない状況になる場合は、GMにその旨を報告してくださるようお願いします。その際は、どういう方針・方向で動きたいかを合わせてお伝えください。参加者間での話し合いを行い、どのような描写にするかを議論します。
1ヶ月以上応答がない場合は、応答があるまで他参加者で進行させていただきますことをご了承ください。
・統合スレにて開催中の企画
1.九終聖杯大会
2.トーナメント大会
3.伏神聖杯戦争
4.スノーフィールド聖杯大会
・開催予定
1.特異点 悪徳歪曲狂国ベルツ・ル・パラディス(2月9日開始予定)
2.インフレ聖杯大会(メンバー調整)
3.第◾️回聖杯大会(メンバー調整、2月半ばに話し合い、可能であれば開始)
中華スキーさん、お忙しいかと思いますが、九終聖杯大会の進行がありました。つきましては召喚シーンの投稿をお願いできればと思います。また、お伝えしたいこともありますので、予選へレスをお願いします。暗い、暗い闇の中。女がふと面を上げる。
何せここはかつての王族を閉じ込める牢獄の中故に。
「あら。ここに人が来るなんて。どれくらいぶりなのかしら」
それもそうだ。ここに人が来ることなどほぼない。最低限の食事以外は表の衛兵たちにより接触を断たされているのだから。
「あれ?案外感は良いんだね」
まるで時が止まったかのような静寂が支配する牢に――いや、まさしくその空間、いいや世界は時間が停止していた。ビデオテープを一時停止するかのように――、いつの間にか存在していた青を基調とした服の青年、いや、少年だろうか。その少年がその誰何に返答する。
「それで、貴方のご用件は何なのかしら?」
うん――、と懐から小型の時計のような物を出し弄びながら、
「キミにはね、僕達の王になって欲しいんだ――」「さて、藤丸君。気絶から目覚めてサーヴァントを召喚してもらってから、多少なりとも休息は取ってもらったんだけれども、申し訳ない。現在観測できている特異点にレイシフトしてもらいたいんだ。この人理改竄を修正する為にもね」
カルデアの現責任者ロマニ・アーキマンはそう告げる。
―――人理改竄。正体不明の特異点を修正するという名目の元、この人理保証機関カルデアに数多の人間が招聘されるも謎の地震と共に他のレイシフト適性者含め多数のスタッフが突如消失するという以上に見舞われる。
現在カルデアはカルデアスの特殊な磁場により完全な改竄を免れているという状況らしい。
「年代は1793年。フランス革命の真っただ中。むしろ最高潮とも呼べる。かのマリー・アントワネットが処刑される年でもある。
このフランス革命は酷く重要なものだ。この革命によって人民への権利を保障する人類史初の法、フランス人権宣言が作られる起点になるんだからね。これが成立されなければ今につながるが無くなってしまうことになる。
僕達は改竄された歴史を正しいカタチになるよう辻褄合わせをしなければならない。正史に合うよう終わらせれれば、自然に修正が為される筈さ」
「そういうことなんだ。レイシフトの準備は大丈夫かい?」贅の究められた王城にて菓子である献上品を女王であろう玉座に座る少女に渡される。それは誰が見ても一級品である。職人の命を込められた逸品だ。これを上回る作品は、異形の兵士に囲われている男には生涯不可能であろう。
「――うん、美味しい」
編み込んだ銀髪の髪にジアイの籠った澄んだ空色の瞳、継ぎ接ぎだらけの寒色系の多い多彩色なドレス。それでもなおある種の王気を維持しているこの国の王は満足そうにそう評する。
実に、実に美味しい。少女は玉座を降り、跪き首を垂れる男に目線を合わせるように屈む。
「貴方のケーキ、とっても美味しかったわ。すっごく気にいっちゃった」
そうご機嫌そうに嘯く言葉に男は冷や汗を垂らした顔を上げ、死中に活を見出したように強張りながらも希望を浮かべる。
「でも、ダーメ♪」
直後希望を絶望を落とすように叩きつけられた言葉と共に少女の足が男の頭を踏み潰す。
擂り潰し、擂り潰し、擂り潰す。
何故そこまでするのか、と問われれば彼女はこう、答えるだろう。
ただなんとなく、と。さしたる理由は無いが何となくやりたくなったから別段無くなっても構わないものを消費した。
やがて満足したのか、擂り潰すのを止めると死体や血の池をそのままに。今度は新しい遊びを思いついた子供のように思ったことを口に出した。
――そうだ、サーヴァントというものを召喚してみましょう。
その少女のドレスの一面には、よくよく見ればこう刺繍がなされていた。
1748、MARIE ANTOINETTE と。フランス特異点アガサぜ!
走れ!ヘロストラトス!>>778
ヘロストラトスは恐怖した。必ず、この鼻の長いバケモノから逃げ延びねばと決意した。ヘロストラトスにはこのバケモノの事は詳しくわからぬ。ヘロストラトスは、村の牧人であり暗殺の英霊である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。けれども自らの承認欲求に対しては、人一倍に正直であった
なんて事のない目立つ事(ミッション)の筈だった。パリ市内の館にいる雑魚(レジスタンス)のアジトを潰す今まで何度も行ってきた事。刺激が足りないが有名になれればそれでいい。ヘロストラトスは軽く考えていた
彼の他にもセイバー「六無斎」林子平、アーチャー「銀行強盗」ジェシー・ジェイムズ、キャスター「神曲」マイケル・スコット
そして女王陛下から賜った多くの兵士がいたのだ
まず兵士を先に突撃させ、その後悠々とその足取りを取る予定だった>>780
その鼻はとても長く大凡この世の物とは思えない威圧感だった
周りの兵士は皆絶命しており、血の海となっていた。だがそのバケモノは返り血一滴たりとも浴びておらず、手にもつ刀は血で塗れていた。そしてバケモノはこちらを視認すると
マイケル・スコットの元へ飛んでいき、その首を刎ねた。彼が強化魔術をかける前である
次にバケモノの頭を撃ち抜こうとしたジェシー・ジェイムズの手を砕き、拳銃を奪い取ってジェシー・ジェイムズの頭に全弾撃ち込み脳味噌と頭蓋骨のミンチを作り
そして刀を振っていた林子平よりも早く刀を振るい手首を斬りあげ、その勢いのまま心臓を刀で抜き取った
実際6秒の事だった。ヘロストラトスは恐慌し仲間を見捨てて雨の中走り出した!>>784
終わりですねフランス特異点。
とある平地は戦場と化していた。
フランス王国軍と、それに対抗する革命軍の軍勢。
戦況は革命軍の方に傾いており、そのせいか兵士たちの士気は最高潮となっていた。
猛々しい雄叫びをあげ、剣を振り、槍を突き刺し、弓を引く。
その勢いに押され、既に劣勢だった王国軍の戦況は更に悪くなる一方で、敗北寸前の事実に兵士たちは顔を青くさせる。
自軍の敗北に怯えるのかと敵対勢力は考えたが、「女王様に殺される」という呟きを耳にしたので訝しむも、己が勝利の為に余分な思考を捨て去った。
——後もう一息だ!
誰かが勝利宣言を高らかに叫んだ時、軍勢は再度雄叫びをあげた。
獣の如き咆哮と共に、最後の一手とばかりに突撃する。
これが革命軍の力だと、見せつけるかのように進軍し、もうおしまいだと悲鳴をあげる王国軍。>>787
しかし戦勢は、一人の騎士の登場によってひっくり返された。
兵力が王国軍の半分以上を上回っていたのが、一気にそれ以下の数値となり、士気の高低もいつの間にか反転していた。
たった一人。たかが一人の登場でこの有様だ。
革命軍にて指揮を任されていた男の一人は、その光景を目の当たりにし、唖然と放心、そして絶望感に呑まれた。
あり得ない。こんな事が、後もう少しで成し遂げられた初めての凱旋が、このような形で終わるのはあってはならないと、心の奥底で何度も連呼する。
だが、現実は目の前の光景だ。
いくら言葉を見繕っても、目の前で起きている現実は変えられない。
「——これが革命軍ですか。戦略、軍略と共に些か童子レベルですね。しかし、この程度に押されていた我が王国軍にも問題はありますか……」
現れた騎士の涼しげに放った言葉に、指揮官の頭は真っ白になり——突撃した。
怒りに我を忘れた訳ではない。しかれども、告げられた言葉に対し、自暴自棄になったのは否めない。故に男は騎士に突撃し、ランスで突きを放った。
自分と同じように馬に騎乗し、ランスを手にしている。様々な共通点を持っている騎士は、接近して攻撃を加えようとしている自分に、興味がないとばかりに視線をこちらに向けようともしない。
——余裕ぶりやがって! ならば、その慢心と共に散————>>788
男が最後まで言葉を紡ぐ事はなかった。
放たれた一突きは、騎士の頭部目掛けて接近し直撃する寸前、騎士は首を曲げるだけでランスを回避し、同時にカウンターとして放ったランスを逆に頭部へ当てたのだ。
予想外の一撃を貰い、胴体から頭部が吹き飛ばされ、生命活動を停止させる指揮官。騎乗していた馬の走る勢いも弱まり、そのまま動かない肉体をぼとりと地面に打ち付けた。
「まったく、戦の質も落ちたものだ」
逆転した戦場を静かに傍観する。
戦争は既に終結間近だった。あとは勝手に沈静化するのを待つのみ。
騎士——ウィリアム・マーシャルの初陣は、圧倒的な知略を以って勝利を納めた。投下します
>>790
「報告は以上です、閣下」
兵士からの書類を受け取り、書かれてる内容を睨みつける。
閣下と呼ばれた男はしばらくの間ぱらぱらと捲り、険しい顔で把握していく。程なくして読み終えると、兵士へ視線を移し言い放った。
「ご苦労だった、下がれ。新たな指示はまた後ほど下す」
「ハッ! 失礼いたします」
兵士が退出し、室内には男だけが残される。
男――ガヌロンはため息をつくと、椅子に深くもたれかかった。
「全くやってくれる。よもやこれ程までに打ち負かされる羽目になろうとはな」
こちらが投入した戦力の内、兵士は大半が壊滅。投入したサーヴァントも四騎悉く駆逐され呆気なく座に還された。
率直に言って、完敗としか言いようがない醜態である。
「役立たず共めが」
舌打ちし、吐き捨てる。そこに仲間を殺された事への怒りはない。
あるのはただ、任務一つも満足にこなせない無能たちへの嘆きのみ。元より大した英霊と思ってはいなかったが、まさか四人と軍団がかりでアジト一つも潰せないとは。
(よもや連中、神代の英霊でも組しているというのか? いや、例えそうでなくとも儂の代に覇を競った連中が混じっておるとすれば……)
続く>>791
そこまで考え、忌まわしい記憶が甦りかける。
在りし日、轡を共にした同胞たち。各々が一騎当千を誇り、老いさらばえた自分とは比較にもならぬ軍功を上げ続けた怪物ども。
彼ら彼女らのいずれか、あるいは全てが敵に回っているかもしれないという最悪の可能性。それが浮かび上がり、ガヌロンの額に冷たい汗が流れる。
「……下らん。何を恐れる道理がある」
仮にそうだったとしても、こちらの陣営にはまだまだ引けを取らない英霊は揃っている。役立たず四騎が消えたところで何ら優位は揺らがない。
むしろ問題があるとすれば、あの狂った女王に此度の失態をどう説明したものかという事。
(儂が仕えていたあの方も大概であったが……あれはまた一味異なる『災厄』よ。一体如何なる魔性に取り付かれれば、あんな化け物が生まれるというのだ)
ともあれ、今は曲がりなりにも主として仰ぐ相手。
いかに機嫌を損ねず、また気まぐれに処刑されないよう回避するか。彼の悩みはまだまだ始まったばかりであった。
これにて終了。時系列はリドリー陣営さんが投下したSSの少し後、といった感じですね
マーシャルの初陣との関連は不明トーナメントSS第二試合エピローグです。
気が付くと眼前には、戦場の端まで届く程に長い、溶けて固まった土の直線が延びている。
遅れて鳴り響くアナウンス……私達の勝ちだ。
それを裏付けるかのように駆け寄る足音。
「バーサーカー」
ひんやりとした身体が私を包む。
柔らかな感触、甘い香り、けど少し残念。
体温が高い私では、誰かの温もりを感じる事が出来ない。
「……マスター」
だけど、少し暖かい……シンモラと同じだ。
伝わってくる優しさ……それが嬉しい。
髪も肌も、シンモラに似てるけど少し違う。
向ける感情も、シンモラに向けてたものとはきっと違う。
けど、やっぱり、私はマスターを大切に思ってるんだ。生き残った。
同じ事を二度やれと言われても到底不可能な戦いだった。
そんな強いに再現体が、何を思って私の身体を治療して銃を託したのかは解らない。
推測は出来ても、私の願望がどこかで混ざってしまうかもしれないし、それでは死者に失礼だもの。
だから、此処で私に出来る事は、傷だらけになって戦ったスルトちゃんを抱き締める事だ。
「バーサーカー」
真名を言えないのがもどかしい。
先に戦いを終えた相手が居るかもしれないから仕方ない。
高めの体温に引き締まった身体。
けど、こうしているとどこかか弱いように感じて……つい、よく頑張ったと頭を撫でてたら、扉が出現していたのに気付いた。
「さてと、そろそろ時間みたいね。行きましょうか」
私達は、二人で一緒に扉を潜った。以上です。
ちなみに、マグダレーナは元々の身体能力が高かったのもあって、エルシュタインの治療のオマケでは細かい疲労が取れた程度になりました。
強化魔術無しマグダレーナ>強化魔術使用ロバートなので、流石にそう簡単に強化されなかった。>>796
体が軽い!最早私に憂い無し!という訳ですね分かります。
おめでとうございます。次からグレゴロール持ちのスルトちゃんの活躍が見れるんですねwktkでは私も玉兎ちゃんの医療キャンプ襲撃、投稿します。
>>798
革命軍の医療キャンプ。ここは戦で負傷した兵が治療を受ける場であり、一騎のサーヴァントにより守られていた。
兵士「先生!王国軍の将がこちらに向かっているとの情報が!」
焦燥に駆られた兵士が報告の為に走って来た。その手の傷を見たキャスターは先ずその傷を治す。
キャスター「分かりました。では皆を一箇所に集めてください」
兵士「了解しました!」
兵士が去った後キャスターは革命軍の本拠地へ念話でその事を伝え、救援を要請する。直ぐには無理であろうがそれまで持ち堪えてみせる。
キャスター「さて…」
キャスターにも英霊としての意地がある。絶対に此処の人達を守る。生前の彼は全ての人を救おうとして天罰を受けた。なら今手の届く範囲の人だけでも救うのだ、と強い意志をもって手に持った“蛇が巻き付いた杖”を地面に突き刺す。
キャスター「『蛇巻き付きし医の象徴[アスクレピオスケイン]』」>>800
キャスターと玉兎の戦闘が始まる。槍を振り回す玉兎に対してキャスターは徒手。しかし彼は師から習った武術[パンクラチオン]で応戦し、何とか凌ぐ。
玉兎「やっぱり、この結界で守られる対象にあなたは含まれてないみたいです」
キャスター「どうでしょう?結界の効果で素手でも受けられているだけかもしれませんよ?」
玉兎「あなたを探す途中人に向けて槍を投げてみたのですが弾かれました。ですがあなたのそれは単純に技術で弾いているものです。つまりこの結界の弱点[急所]は術者であるあなた自身ということです」
キャスターは顔をしかめた。そこまで看破されてしまっては圧倒的に不利だ。何とか状況を打破しようと攻勢に出ようとした次の瞬間。
玉兎「はい、時間切れです」
玉兎が槍で結界の外を指した。>>801
キャスター「なっ!?」
その先では数名の傷病兵がヒキガエルのような化け物に捕えられていた。
玉兎「簡単な話です。中で殺傷出来ないなら外に連れ出せばいいだけ、です」
玉兎の合図に待ってましたとばかりに化け物が傷病兵の肩を槍で突き刺す。離れていても聞こえるほど大きな悲鳴が響く。
キャスター「止めろぉっ!!」
玉兎「さて、ここで取引です。“あなたが大人しく死.ねば兎[わたし]とあの化け物はここの人達には手を出さない”です。さあ、どうするです?」
玉兎のその言葉にキャスターは迷わず己の命を差し出した。玉兎の槍がキャスターを貫き、集ってきた化け物に槍ごと投げて寄越す。それを嬉嬉として寄って集って何度も何度も槍を刺し、四肢を捥ぎ、頭蓋を叩き潰す。
玉兎「さあ、王国軍の兵士達、後はお願いするです」
“玉兎と化け物”は手を下さない。やるのは人間の兵士である。
終わりです。これが人間のやることかよォ!!あ、兎だった。王国軍4番、ルイ=デュードネ行かせていただきます!
フランス特異点のカルデア側を投稿します。長くなり申し訳ありません。
『かくて少年は盤上に出づる(スタンバイフェイズ)』>>804
「それでは藤丸くん、準備はいいかな?」
カルデアの現責任者ロマニ・アーキマンが藤丸立香にそう問いかけた。
ロマニに声をかけられた少年は先程カルデア職員に渡されたレジュメを暗記するために思惟の海へ沈んでいた。
「あ、はい。大丈夫です」
立香が紙面から顔を上げる。精悍な光芒が燦と放って、それにもかかわらず頬の線は少年の純潔で、初々しい。一言で言えば青春美だ。だが、そんな少年の表情も硬い。今自分が置かれている状況、そしてこれから行わなければいけないことに対してだ。レジュメに記されていたのはこれから英霊召喚に必要な呪文だった。
「心配しないでくれ。サーヴァントを招き寄せるのは術者ではなくカルデアのシステムだからね。藤丸くんには現れた英霊をこちら側の世界に繋ぎ止める楔となって欲しい。実体化できるだけの魔力もカルデアが発生させた魔力を君の身体を通して提供する。だから魔力の心配もいらいなよ。」
「それでも充分に心配ですけれどね」
立香が微苦笑して席を立つ。ロマニとともにこれから英霊召喚のために誂えた部屋へ移動するのだ。
目的の部屋に辿り着く。床には水銀で魔法陣の紋様が描かれていた。歪みやむらもない。立香には意味不明な文様であるが魔術師にとっては意味あるものなのであろう。魔法陣の中心には卓のようにも盾のようにも見える金属が置いてあった。『ほぅ、我(フランス)を従者として呼び出すとは……一体どう言った要件か……?』
召喚に応じたのは派手、絢爛豪華と称するに相応しい煌びやかな服装の男。
大仰な衣装だがソレに着られるようなことはなく、男自身もまた美麗にして頑強……一目で常人はおろか盆百な英霊すら比べようにならぬ『厚み』のある覇気。
従者(サーヴァント)の立場にありながら、決して他者に謙ることはなく、ともすれば圧倒するような見るからに傲岸不遜な典型的な王。
『なるほど、此処は仏蘭西(ワタシ)であるということか……』
男は周囲を見渡す。男にとっては馴染み深いなどという言葉では語り尽くせぬ、己の分身とも言える風景を俯瞰する。
男にとって無駄な時間はない。ただ見たままの光景から状況を察し、それに相応しい在り方を『演じ』る。それだけだ。
『なるほど、仏蘭西(ワタシ)の役割は汝の兵士か……。』
無粋な問い掛けも自身の主に対する服従を示す台詞も吐かず、ただ一言……変わり果てた己(フランス)の統治者に告げる。
『だいたい理解った。』
続けて男は剣を掲げる。その身を包む装束に負けず劣らずの装飾がなされた剣を。
見るものが見ればその剣の出自……そしてソレを帯びる英霊の『格』を知ることは容易であろう。
シャルルマーニュ伝説にて語られる、天下無双の御佩刀にして彼が生前統べ、今現在において召喚がなされた国における王権の象徴。
剣の名は聖剣ジュワユーズ。──ソレを手にする男の真名(な)はルイ=デュードネ……広く知れた名で呼ぶのであれば、『太陽王 ルイ14世』と呼ばれた男。>>805
指定された位置に立香が立つ。手順も説明を受けて何度も練習してあった。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
立香が暗記していた呪文を注意深く唱える。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
全身を突き抜けるような痛みが奔る。灼けた銅を血管に通されるかのような熱を持った痛み。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――――」
立香の視界が暗くなる。
大気より取り込まれたマナに彼の肉体は蹂躙され、彼の心臓が彼個人の意思とは離れた次元で駆動されて早鐘を打ち始める。逆さづりにされ血を吐かされるような、ただごとではない苦しみである。
今の立香は人ではなく神秘を成し得るためだけの装置。幽世と物質界を繋げるための道しるべと成り果てる。
その軋轢に苛まれて悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、立香は痛苦を無視して呪文に集中する。唱えるうちに四肢が痙攣し、身体の端々の毛細血管が破裂して血が滲み出る。
「――――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
そう呪文の結びをつけるとともに、立香は身体に流れ込むカルデアからの魔力の奔流を限界まで加速させる。
逆巻く風、眩い雷光。召喚の紋様が燦然と輝きを放つ。
魔法陣の中の経路はこの世ならざる場所へと繋がり、超新星の如き光の奥から、現れいでる姿。その威容を蒼白になって立香は見つめていた。過度な疲労感により脱力して床にへたり込む。
そこに在るのは伝説の具現。かつて人の身にありながら人の領域を超えた者たち。そんな超越存在たちが集う御座より来る、超越者たる英霊が地上へと降臨する。
無味無感なる部屋に、いま凛冽なる誰何の声が響き渡る。
「問おう、そなたが私のマスターか?」
星辰のごとき光の奥にいる貴人への返答えをした立香は、眠りの神(ヒュピノス)の愛撫に身をゆだねていた。
◇◆◇>>807
見えない。
見えない。
何も見えない。
自分の掌も見えない深淵よりも深い闇。
「……っ、……っ!」
鉛のように重い足がもつれる。
でも、走らなければ。
帰らなければ。父や、母が待つ家へ。友人たちがいる街へ。
先が見えない、風を切る感覚もない。
光がない。音がない。
「……っ!」
久遠の陥穽へ落ちたかのようだ。
立香は、たまらずに叫び出したい。だが、どう叫んでいいのかわからない。どうしたらいいのかわからない。
だから走るのだ。
虚無に侵され身体が蝕まれ、虚無に溶けていくような想像がよぎる。
走る。走る。走る。
足が絡まって転げる。立香はうめく。
それでも、立たなければ。走らなければ。>>808
◇◆◇
「おお、目覚めたかマスター。息災でなにより」
気絶から目覚めた立香がいる医務室へ、サーヴァントが現れた。立香の傍らにはロマニもいる。
サーヴァントはほっそりした青年であった。中世的で、水晶を彫り込んだような美貌の繊細な顔立ちだ。
芸術的に洗練された造形美の極致である容姿に朝日のごとき黄丹の袍と冠をまとい、白い細袴を身につけて、腰に直刀をつるしている。
エキゾチックな古代の衣装と相まって耽美的な印象を与える。
「私の心を除いたな。マスター。このカルデアの外がどうなっておるか、もうわかっていよう」
青年が口にした言葉は、弩から放たれた無形の矢となって、立香の耳から心臓へ貫通した。
「そ、外……? もしかしたら、あれが?」
「え? 外? 藤丸くん、一体何を見たんだ?」
「まじない師。マスターは私との契約を介して私が観測したこのカルデアの外を見たのだ。いや、見ただけでなく肌で実感したのかな?」
立香は青年を穴が開くほど見つめ、顔色を失い蒼白になる。夢でのぞきこんだ虚無の淵の深さは、彼の魂を底まで冷たくした。
このカルデアの外は既に何も存在しない虚無しかないことを青年は語る。ロマニは青年の説明を補完するように、外界との通信が途絶しており、外の調査に行ったスタッフは戻ってこないこと立香に説明する。
「ここカルデアは無事だ。カルデアスの磁場と幾重にも展開された論理防壁によって守られている」
「……さっきもドクターに教えられたけれど、まさかあんなことになっていたなんて……」
「マスター、がんぜない少年よ。そこのまじない師にも聞いていると思うが、この未曾有の事態を解決させなければ人類史は終焉する。たった一人で人類史を背負い戦わなければならない。がんぜない少年よ、そなたは人類の未来を背負う勇気はあるか?」
青年の問いに立香は気温にかかわりなく、汗腺が冷たい湿気にみたされるのを自覚するのである。>>809
「覚悟なんてありません……今の話だって、全て理解できてるとは思わない。それでも嫌です……」
膝の上で握る彼の拳は震えている。その拳で少年は目元を拭う。
「こんな結末は嫌だ。たくさん人がいなくなって……死.んで……それなのに逃げ出すだなんて……絶対に後悔する。そんなのは嫌だ!」
後悔して、消滅した人々が復活するものなら、キロリットル単位の涙を流すのもよかろう。だが……結局、それは悲愴ごっこにすぎないではないか。
「だから俺は……俺が背負います。それが自分にできることならば!」
マスターを見定めるかのように冷厳なる覇気を纏い、立香を見据えていた青年は微笑んだ。そうして立香へ恭しくお辞儀する。
「卿(けい)の勇気に心からの敬意を」
空気が結晶化したかのような静寂のなかで、青年の声が律動の波をたてた。
「涙を笑顔に変えんがため、英霊はその身命を賭するのだ。卿の双肩にかかる責務は重いが、しかしそれを誇りへ変えよう。私は必ずその選択が人理を正すと信じている。人々の幸福を、希望を、未来の輝きを守り抜かんと願う限り、私は無敵だ。共に行こう! 未来の光は奪わせんッ! 易きに流れるなよ、胸を張れ、卿は必ず卿の試練を踏破できる! 私ははいつも、いつも卿の傍に在るのだ――ゆめそれを忘れるな!」
椅子から立ち上がった青年の黒曜石のような瞳が、苛烈な光彩に満ちて輝いていた。その瞳の中に、恒星のコロナが乱舞していた。
ほとんど戦慄に近い昂揚感が、立香の中枢神経を駆け抜けた。この覇気こそが、人類史に刻まれた讃えるべき英霊の本質であった。
青年は唐突かつ尊大にこう言った。
「あらためて名乗ろう。厩戸皇子である。クラスはセイバーだ」>>810
「……今、物凄い名前を聴いた気がする」
「僕もだよ。つまり『聖徳太子』だからね……」
「ふっ。私の死後に下々の者どもが捧げた諡号(しごう)か。確かに私は徳と威光はその名に恥じぬものであった。崇め奉りたくなるのも道理である。そなたらも心の支えが欲しければいつでも跪き、我が名を唱えるがよい」
聖なる徳に溢れた貴人にしては、かなり高飛車な自信家ぶりだ。
「ええっと、マスターの藤丸立香です。魔術師じゃないし、マスターとしも至らない点もあるかと思いますが、ご指摘いただければ直していきたいと思います」
「は、は、は、は」
厩戸皇子が大きく笑う。
「お悩み召されるな、マスターよ。何事も最初から十全にできる者なのどおらぬよ。……そのようなことができるよな才人。例えば私のごとき英才は二千年にひとり生まれるか否かであろう。この厩戸のようにできぬと涙する必要などありませぬ」
「……意外と面白路線な人だったんだね……」
「……昔の一万円札に描いてあった顔はすごく真面目そうな人だったんだけど……」
ロマニと立香がひそひそと話していた。
立香の言う通り旧一万円札の肖像とは似ても似つかぬ、儚げな青年である。
厩戸皇子は二人の会話に対しても素知らぬ顔である。ついでにお茶も淹れ寛ぎ始めている。典雅な所作で立香とロマニの分まで淹れいる。
「あ、ありがとうございます」
ロマニがタブレット端末を操作する。
「彼は間違いなく超一流の英霊だよ。君との正式契約って形にしたこともあってステータスが多少下がったところもあるが、神代の大英雄や大国の王と遜色のない霊基……存在だ」
厩戸皇子は自分を持ち上げる話だったからか、彼は満足そうにロマニの評を聴いてた。
「さて、マスターも落ち着いたようだし、まじない師よロマニと言ったか?」
そう言って厩戸皇子は暫くロマニを見つめるとすっと眼を眇める。>>811
「……まあ、良い。ロマニよ。すぐにでもレイシフトをするぞ。私もここのデータベースを閲覧して、召喚の際に得た知識以外のものも得た。早急に対処するとしよう」
「え? まかさカルデアのデータベース全部!?」
「まさか。プロテクトがかかっていないものだけだ。」
「それって八割方じゃないか!」
ロマニは悲鳴のような声を上げる。
「なに、これから大事を成さねばならんのだ、色々と情報も集めねばならんからな」
「……独自に外界を観測したり、データベースを閲覧したりとか色々やっているけれど、随分協力的だね」
ロマニがそう言うと厩戸皇子は霜のように白皙の美貌に笑みを刻む。
「当然だ。日本国のみならず全ての天地(あめつち)に破滅の危機が迫っているのであれば、民草に救済の手を差し伸べるのも皇族たる我が努め。一肌脱ごうではないか」
◇◆◇
かくして、藤丸立香とそのサーヴァント厩戸皇子はレイシフトによって、特異点を観測されたフランスへ向かうことになった。
「無事にレイシフトが完了したようだな。森の中のようだ。転移は無事に成功のようだが、塩梅はどうだマスター?」
「だ、大丈夫。ここはどこだろう?」
「それで通信してはどうだ?」
厩戸皇子は画家がモデルにとのぞむほど形のよい手で少年の手首につけられた腕輪型の携帯端末を指し示す。>>812
端末からホログラムの画面が虚空へ投影される。魔術を併用しての空間通信だ。
「SF漫画みたいだ……」
「プロジェクターは場所を選ぶからな。これのほうが利便性はある」
カルデアとの通信により、立香たちがいる場所は西暦一七九三年のフランスのラ・シャリテ近辺の森だと伝えられた。
「ここで、その人理改竄の原因に関わるものがあるのかな?」
呟く立香の声は苦かった。
「そうであろうな」
重々しく頷いたのは、厩戸皇子だった。
「我が霊感は告げておる。ここより先に此度の大事件を起こした者に関わる者がいる」
「今さらりと霊感とか言ったけど、厩戸皇子にはそういう力があるんですか?」
「何を言う。私の力については当代にも伝わっているのだろう? 『豊聡耳(とよとみみ)』であり『未然を知ろしめす者』であると」
「一度に十人の話を聴けて、未来予知者だった話、オール実話だったんですか?」
「うむ。まあ、此度の現界では予知する力は封じられておるがな」
「じゃ、じゃあ、神馬に乗って空を飛んだエピソードも……?」
「聖徳の皇子(みこ)たる者、その程度の芸も出来ずしてどうする? ライダークラスならば神馬も持ってこれたよ」
伝説的偉人から遺憾そうに言われて、立香は感嘆の溜め息をついた。
未来を予知できた、救世観音菩薩の生まれ変わり云々。非現実的な言い伝えが聖徳太子には数多く存在する。
「凄いな、山岸凉子さんの『日出処の天子』まんまだな……」
―――厩戸皇子、彼こそは、日本妖人伝中、十指のうちに入る人物に相違ない。>>813
周囲を見渡そうともせず、厩戸皇子は悠揚迫らざる物腰で歩いていた。
この辺り、流石は伝説の皇太子。浮世離れしている。
対して、立香は現代社会の申し子。ならぬ環境に、まわりをきょろきょろしている。
「さて、妖異の気配があるぞ」
厩戸皇子が指し示す先に、熊よりも大きな妖異が六匹、一人の男に群がっていた。灰色がかった白い油ぎった肌、顔を鼻にあたるであろう部分にはピンク色の短い触手が生えている。そして槍を携えていた。
「な、なんだあれは!?」
「うむ、あやつらはここで倒すべき仏敵であること以外、私もわからん」
妖異と立香たちの位置はちょうど、勾配の上方に妖異がいる位置である。
立香たちに気づいた妖異の一匹が槍を持って、真っ逆さおとしに傾斜を馳せ下って来た。
マスターを庇うように立つ厩戸皇子の頭上から襲い掛かっている。
しかし厩戸皇子は立香を連れて、二、三歩すういと横に流れるように動いた。妖異の槍はただその横をかすめるばかり―――空を切って、ドドドと駆け降りる妖異と並んで厩戸皇子は立香を庇ったまま、これまた同じ速度で二、三歩後退した。
凄まじい血飛沫が辺りに舞い散った。
立香の後方へ妖異が転げ落ちていった。ただし、三つの肉塊に分けられて。
地面に叩きつけられたのは首と、胴と、腰から下の両脚であった。
続いて殺到しようとした妖異どもは、眼下の光景を見下ろしていた。これが人間ならば信じられない眼つきをしていたであろう。なんたる神技、厩戸皇子はならんで五、六歩駆け降りる間に、妖異の首を刎ね、燕返しにその胴を切断したのである。
いつの間にかに、厩戸皇子は腰の直刀をすらりと抜いていたのだ。
「退け、下郎ども! マスターへの狼藉は許さん!」>>814
弥勒菩薩を思わせる美貌の彼は戦意で眼光を光らせ、直刀をすばやく地面を斬った。切先が地面に当たり、火花がいくつも散る。
「―――オン!」
鋭い声が風を裂く。火花は数を増やし、大きな煌めきと迸った甚大な魔力とともに妖異どもへ襲い掛かる。
厩戸皇子も猛禽の如き軽捷自在さで、妖異たちに迫り瞬く間に斬殺してみせた。
以上です。長くなりすみません。>>806
──リヨン
特異点であるフランスにて連鎖召喚されたサーヴァントであるライダーは王国軍が支配する都市に襲撃を仕掛けていた。
人理を守る英霊として義憤に駆られ王国軍に反旗を翻した……などという理由ではもちろん無い。
多少頭が回るからと言って彼はその『子孫達』同様に刹那主義であり快楽主義者だ。加えて『背徳』という厄介極まりない『起源』を抱えたライダーがそのような英雄紛いの行動を取るはずなど無いに等しい。
ただ、王国軍を従える王妃には惹かれるところが無い訳でもない。高貴なる悪女。民草を弄ぶ毒婦。そんな気位の高い女を屈服させた時、一体どのような快楽を得られるものか。
(あぁ、女神(ヘラ)には劣るが実にいい獲物だなぁ……神はともかく星の司る巡り合わせには感謝してもいい!)
……その歪んだ欲望を一時押さえ付けるがためだけに彼は襲撃を仕掛けた。
貞淑な人妻の前でその夫を嬲り殺.し、その後『子孫達』に襲わせたのはそれなりに愉しくはあった。
田舎貴族の娘にみっともなく命乞いをさせ、『子孫達』の蹄を一人一人舐めさせた時の興奮と言ったらなかった。だが……
(あぁ……まだ『達していない』!あぁっ、やはり貴女でなくては駄目なのだ!王妃よ!)
男の欲望は留まることを知らない。彼は王妃に彼女が見下す愚民すらも鼻白むような屈辱を与えなければ、気が済まないのだ。
そして厄介なことに……彼は自身の欲望を実現する為であれば、手段を選ばない。
『哮る野蛮な我らの仔(ケンタウロス・ブリゲイド)』……彼の宝具にして彼が従える『子孫達』そのもの。
神話に謳われる通りの野蛮にして獰猛なケンタウロスを呼び出す宝具だ。
無銘のケンタウロスを呼び出す程度に過ぎない為、発動に必要な魔力は比較的に少量……加えて『繁栄』の概念を秘めた彼らケンタウロスは時間経過により徐々に増殖する。
彼はソレを用いて都市に襲撃を仕掛け、其処で魂喰いを行うことで魔力を充填し、更なる戦力向上を計っていた。
いずれは王国軍の本陣へと攻め込むために。
(私の『子孫達』は雑兵に過ぎないが、数が多ければ多いほど脅威だ。サーヴァントを足止めすればその分だけ王妃本人の警備が手薄になる……)
たとえ、数秒であっても王妃を害することが出来れば自身は満足に逝(イ)くことが出来る。>>816
そんな想像で胸を膨らませている最中、不愉快な老人の叫び声が響き渡った。
『太陽が!太陽神が助けに来てくださったぞ!!』
(太陽神……だと?)
神という単語に対してライダーは眉を顰める。追い込まれて壊れた老人の戯言といった雰囲気ではない。その声音には明らかな安堵が含まれていたからだ。
ライダー自身と同じように機嫌を損ねたケンタウロスの一体が老人に向けて矢を放った。
矢は老人の胸に吸い込まれるように命中──するとこはなかった。
老人の後ろから馬に乗り駆けつけた男が手に持つ剣によって矢を撃ち落としたのだ。
(私の『仔』の矢を……!ただの王国兵ではない!サーヴァントか!?)
続け様に騎乗剣士は数体の『子孫達』の首を跳ね飛ばした。
十秒に満たない速さでそれを行いながら、返り血ひとつ浴びることなく優雅に佇む騎乗剣士は口を開いた。
男の霊衣はまさしく太陽を模した何かの劇の衣装にも見えるものだった。一見、巫山戯ているように見えるが、先程の一閃をその目で捉えたライダーに油断はない
『汝が我らが王国を荒らす蛮族に相違ないな?』
「貴様は何者だ……サーヴァントといえど我が仔を容易く討って見せるとは只者ではあるまい……名乗るが良い」
ライダーの問いかけ自体に意味は無い。相手が誰であろうが、ライダーは目の前の男に興味はなく、目的(おうひ)の前に立ちはだかる障害でしかない。
(あと数秒、時を稼げば『滾る火焔の罪と罰(イクシオン・ホイール)』で焼き殺.せる!その高貴な面が焼け爛れる様をじっくりと見て笑ってやろう!)
ライダーの問いかけに騎乗剣士は答える
『そうだな……今は王国軍の兵士役だが同時に太陽神(アポロン)でもあるといったところか。』>>817
応え終わった瞬間、ライダーの思惑通り火炎が燃え盛り全身を焼き始める。
「は???」
ただし、ライダーの身体を……だったが。
起こっている事実に理解が追いつかないといったライダーに対し、騎乗剣士は毅然とした対応を続ける。
『驚くこともあるまい……太陽に手を伸ばし、焼かれたなどという神話は有名であろう?よもや汝が知らぬ筈も無かろう火車の咎人──イクシオンよ』
「き、貴様……真名をッ!?」
『ケンタウロスの軍勢……いや、群れというべきか……それを操るものなどそう多くはなかろう。加えて道中、幾つか焼死体を見つけたよ……ともなれば真名の推察は容易。警戒すれば対応にも余裕が生まれるというものだ』
ライダー──イクシオンは確かに策謀を得意とするサーヴァントであるが、つまりはその策謀を発揮するまでもなく正面から叩き潰せば脅威は半減だ。
『加えて、相性というものもある。神に裁かれた咎人である汝ではこの太陽神(アポロン)は倒せない。』
何より、と男は高らかに歌うように続ける。
『この仏蘭西(ワタシ)において我(フランス)を相手にしたのが汝の敗因である。』
聞くものによっては何を言っているか理解できないであろう。しかし、イクシオンは瞬時にその言葉の持つ意味合いを理解し嗤った。
「ハハハハハ!!なるほど、なるほど!それで太陽神(アポロン)というわけか!!なるほど、合点が言ったぞ!」
ヤケになったように嗤うイクシオン。事実に既に生存は諦めていた。
だからこそ、最後に騎乗剣士に向けて呪いを吐いた
「私が負けたのも当然か!貴様こそがフランスの真の王!王朝の最盛期を築き上げ、そして滅亡の原因を生み出した傲倨の王!かの王妃と並ぶ暴君!ルイ14世!」
「ハハハハハ!その貴様が王妃と恭順し、共に民草を虐げるとは!?こんな愉快で背徳的な喜劇はないな!ここで朽ちるのは惜しいが、せいぜい貴様が来るまで観客席(タルタロス)から見届けさせて貰おう!」
言うだけ言ってルイ=デュードネの返答を聞くことなく消え行った。>>818
『ふん、残念ながら今の我(フランス)は王ではない。まぁいいさ……地の底であっても観客がいるのであれば悲劇であれ喜劇であれ人の可能性を演じ続けて見せよう。それが仏蘭西(ルイ=デュードネ)という英霊なのだから』
イクシオンの立っていた地を見据えながら誰に聞かせるでもなくルイ=デュードネは呟いた。
『そういえば、リヨンといえば歌劇場が有名であったな……。此の地の反乱分子の炙り出す目的も含めて此処に留まるのも悪くは無いだろう。向こうにはマーシャルもガヌロンもいるしな。決して仏蘭西(ワタシ)がオペラを鑑賞したいわけではなく……』
ルイ=デュードネは弾むような足取りで歌劇場へと向かった。
終わりです。マルセイユの港町、一軒の酒場にて
人でごった返した酒場の喧騒の中に、1人の男の怒号とがしゃんと何かが割れる音が響いた。
「ああ、またやられた。これで計算し直しだ×××××が!」
黒いボサボサの髪を掻き毟りながら、酒場の中央の大テーブルに居座る1人の男が机上の地図の上の砕けた駒を睨みたけながらひたすらにペンを走らせていた。
その男の風態は明らかに異様といえるものであった。素肌の上に夜の空を写し取ったかのような青とも黒とも似つかないような色をした一枚のローブと頭に星の装飾を施した冠だけを身につけているその姿は普通ならすぐに騒ぎになるであろう。
また、男の周りには複数の天球がジーコジーコと音を立てながら表面に数字の羅列のような文様を浮かべては消してを繰り返している。
しかし周りにいる客は誰もこのあからさまに異質な男の格好や彼らにとって常識を大きく外れた機械達に反応する様子はない。それどころか彼が何らおかしい所もないただの客の1人だとでも認識しているかのようであった。
「ヒキガエルの大群だと?一体どこの英霊だ?…ああ、私の頭じゃあ考えるだけ無駄だ。頭より手を動かすのが先だ。」
地図の一点に筆で大きく×の字を書き込み、キャスターは再び筆を動かしつづける。
キャスターの『予言』は占星術と錬金術をベースにした数秘術からなる。フランス全土、ましてや特異点への運用ともなるとそれは並大抵の作業ではない。
今も『黒子』からの新たな情報により独自の技法によって書き綴られた数式が破壊され、キャスターには焦りが見えはじめていた。
「ああ…何をやってる。そうだ、落ち着けカリオストロ。お前はしっかりやっている。三十三が出るまでの辛抱だ。 お前はサン=ジェルマンの弟子だろう?俺は奴に勝ったんだ。お前ならできる。いいぞ、再計算は順調だ。不確定要素をできるだけ消して誤差を減らすんだ。簡単だろう?やれるだろう?そうだ、お前ならできるさカリオストロ…」
ただひたすらにブツブツと何かを呟きながら一心不乱にペンを走らせ続ける男の手は、文字列で埋め尽くされた地図へ一つの数字を書き込んだところでぴたりと止まった。>>820
「ようやくだ!遅い!待ちくたびれたぞカルデアのマスターよ!人理の修復者達よ!これでやっと役者が揃った!狂った劇の開宴だ!」
キャスターは子供のように手足をじたばたとさせながら待ち望んだ者達へ賛辞と歓迎の言葉を叫ぶが、周りの人は誰一人としてその行為を気にしない。元よりこの店の中身は全員が彼の『黒子』達である。彼の行いに異議を唱える者は存在しない。
「さあ、これより戦場は一変する。幕は上がった、英雄の凱旋だ!ククク、ヒヒヒヒヒ…ハハハハハ!!!ああ、見ているかい?罪無き民草の心無き俗言で醜く醜く塗り固められた憐れな憐れな王女様!どうせ君は今もあの豪華絢爛な王宮で未だ何も知らず偉そうに踏ん反り返っているんだろうなぁ。ああ愉快だ。じきにその綺麗な顔は屈辱と怒りで醜悪に歪むんだ。『あの時』は駄目だったからなぁ。ただ綺麗なだけではだめだ、汚れた物こそが美しい!!その顔と尊厳と誇りを無残なまで踏み躙るのを想像するのは非常に…おっと、少し興奮しすぎた。…ああ、馬だ、今すぐにでも馬を用意しろ。とびきりいい馬車だ。白馬がいいな。んん?いや、カボチャは必要ないな。人が乗ることができるならそれだけで十分だ。
カルデアのマスターはどんな奴なんだろうなぁ…女かな?女ならとてもいいなぁ。できれば処女がいい。いや高望みはいけないなカリオストロ、それは破滅の元だ。まあ別に男でもいいかもしれないかな?どちらにせよなるべく若い方がいいな、うん。いや、この際清らかならばそれだけでいいか。欲張っちゃあいけないな。ああ今からでも会うのが楽しみだよカルデアのマスター…ああ、あともう少しだ。早く『予言(ストーリー)』を完結させてしまおう…」
ひとしきり騒ぎ終えたカリオストロはブツブツと呟きながら再び地図に向かってペンを走らせる作業に没頭していった。
とまあ、カリオストロ登場シーン。こんな感じですハイ
え、紳士然とした人物?(wikiみながら)本当の紳士なら詐欺とか怪しい儀式とかしませんよははは。
やべえ奴になってる?はい、すみません。俺が召喚されたのは寂れた村だった。
重税に苦しみ、家どころか衣を修繕する事も出来ず、その日の食糧を得るのがやっとな村人。
董卓を思い出す圧政だが、それでも民の眼は腐ってない。
悪政の打倒を信じ、必死に生き足掻いている。
ならば、俺の役目は一つしかない。
そう結論付けた所で、此度の召喚における最初の戦いが始まった。
「王国軍の名に置いて、革命軍を匿ったこの村は取り潰しよ!えっ、証拠?知らないの?革命軍が居るかもしれないと思えば各自の判断で皆ごろしにして良いって法律が制定されたのよ。」
考えた者の正気を疑うかのような法律を叫ぶ少女の声がする。
どうやら、王国軍とやらのお出ましのよあだ。
実際の所、この村は怪物の群れを操る将の卑劣な策から逃げ延びた兵を見かねて匿っては居る。
だが、奴らはそうでなくとも対応を変えるつもりはあるまい。
村人達に家から出るなと言い含め、俺は王国軍に相対する。
「さあ、この私、董白のより良い暮らしの為、手柄となりなさい!」
「ほう……誰かと思えば、あの董卓の孫娘だったか。どうした、この髭を見てもそう言えるか?」
「か、関……羽……」顔を真っ青にする董白。
宝具あたりで召喚したであろう漢王朝の兵と、この時代の兵の混合部隊のようだが、略奪しか頭に無かったであろう後者は指揮官の様子に浮き足立っていて使い物になっておらん。
「外道な上に臆病と来たか。来ないのであればこちらから行くぞ」
「しょ、所詮は一人よ……こっ、ころして!早く!」
青龍偃月刀を構え、敵陣を駆け抜ける。
我が青龍偃月刀は一振り毎に敵の命を奪い、敵兵は俺に触れる事すら出来ない。
単純な事、俺は敵兵の攻撃が届かぬ隙間を縫うように突撃しているのだ。
ましてや、この時代の敵兵の士気は低く練度も悪い…‥故に、早々にして敵陣を壊滅させて董白の元に辿り着き、すれ違い様に胴を斬り伏せた。「があああああああぁぁぁぁっ!!」
地に倒れ、少女らしからぬ悲鳴を上げて悶え苦しむ董白。
宝具を維持出来なくなったらしく漢王朝の兵の生き残りは消え始め、僅かに残ったこの時代の兵も武器を捨てて泣き叫びながら逃げ出した。
それを確認した俺は振り返り、董白の心臓に青龍偃月刀を突き刺した。
「ぎゅっ」
最期に呻き声を上げて董白は消滅した。
こうして村に一切の被害は無く、王国軍の一部隊は壊滅。
次が来る前にと俺は民を連れて村から脱出し、匿っていた兵の案内もあって革命軍に合流したのだった。以上、カルデア到着前の関羽の1シーンでした。
個人的には、即退場サーヴァントは倒される理由付けがしっかりしてたら物語が壊れない範囲で積極的に出して良いと思ってます。トーナメント投下します。
「っ……!」
刻印から敵が罠に引っかかった反応が痛みとして送られてくる。
「バーサーカー、かかった!」
「こちらからは視認出来ませんが……カノン。どこいるか分かりますか?」
「ええ、任せて……!!」
かかった方角は分かった。その上で一瞬ではあるが、敵マスターであるエルドレッドの姿も確認出来た。それならば、より追い詰める一手を打つーーーーー!
「魔眼、起動(セットアップ)ーーーーーー!」
追跡の魔眼。私に付けられていた機能の1つ。私が認識した人であるならば、どこまででもその足跡を辿る権能。たとえ刹那の認識であったとしても、それを私が覚えている限り。変わることなく対象者を追い続けるーーーーーー!
「バーサーカー!入り口左側、家屋の陰!」
どこに逃げようと無駄だ。私のこの魔眼(目)がある限り、お前達は逃げられない!
「ありがとうカノン。あとは私がーーーーーー」
バーサーカーが持っていた剣を左腰の鞘に納め、右腰の剣の柄を握り引き抜き上段に構える。その剣はかつての栄光を喪って、なおも輝き続ける星のようで。>>827
「ーーーーーー満ちよ。」
ギネヴィアのその一言で、周囲の魔力が逆巻くのを肌で感じとる。
「これは星々の悲愁、悔悟の残滓を受けし残光の剣。」
「星の内海より溢れでし負の情念。其はその全てを束ねし者。飽くなき負の想念を抱きし邪剣(聖剣)ーーーーーー」
剣に魔力が収束し鈍色の光を放つ。きっと誰もがこの輝きを唾棄すべきものとして見るだろう。栄光を喪い、廃れ、消え果てなければいけないモノ。けれど、私はそうは思わなかった。そう思えなかった。確かに、この輝きに美しさを感じることは難しいだろう。それでも、この輝きの奥底には確かな生命の息吹がある。闇に呑まれながらも決してそれに屈しない生命の輝きと強さがある。他の誰もがそれを見出せないとしても私は確かに、あの鈍色の輝きの中にある力を見た。あの輝きは決して色を喪おうとも褪せることない輝き。それがあの剣。その名をーーーーーー
「『後悔消えぬ勝利の剣(エクスカリバー)』!!」
果たして。その鈍色の輝きの行く末はーーーーーーリレーです
>>832
短いですがこれで終わりですトーナメント続きです。
罠から退避したエルドレッドとライダーだったが、安心して休んでいる暇など無かった。
「マスター、危ない!あれが直撃したらひとたまりも無いぞ!」
ライダーが指し示す先に鈍色の光の柱が巻き起こるのを見た。
「ライダー、あれをなんとか出来るかい。」
「『ストック』を使えばなんとかなるかもしれん。」
ライダーは牛頭の槌矛……彼の祖父サームがカシャフ川の竜を仕留めた武器……を実体化させながら答えた。
「ライダー、そのように任せる。」
「了解。」
「七つの難道を征し我が威光。」
「是に示せ、その祝福を!」
「『難道越えし七栄光(ハフト・ハーン)』」
魔力の渦がライダーを包み込み、そのステータスが2ランク上昇していたのだ!
「征くぞ、マスター。」
ライダーは槌矛を水平に構えた。数多の外敵を屠ったその紅い穂先が妖しく煌めいた。>>835
「矛よ唸れ!」
ライダーが口を開くと魔力の奔流が逆巻くのを肌で感じた。
「その一撃は屠龍の如し!」
「『毒竜撃滅し烈光槌矛(ハフト・ハーン・カシャフアシャード)』」
牛頭の槌矛の穂先から紅蓮の光が放たれた。
その光はまるで生きた竜のように暴れ狂い、鈍色の光と激突し、砂塵を巻き上げた。
((マスターは無事か?))
((何処もなんともないよ、ライダー。))
砂塵の中二人の男は進む。決着に望むべく。特異点ss投稿します。
>>837
男性「ありがとうございますっ。あなた方は命の恩人です」
何度も頭を下げて感謝を述べる男性に「は、は、は」と笑ってセイバーが男性を見据える。
厩戸皇子「なあに、人として当然の事をしたまでのこと。私の名は厩戸皇子、或いはセイバーという。こちらは我がマスター藤丸立香という。そなたの名は?」
ルブラン「お…私の名前はルブランと言います。森を抜けた先に私達の村があるので、是非そこでお礼を…」
厩戸皇子「そう畏まらずともありのままのそなたで話せば良い。しかし村へは情報収集も兼ねて案内して貰いたい。構わないかなマスター?」
セイバーはマスターである俺を立てて確認を取ってくれるけど正直現地の人との交渉とかは全部任せてもいいんじゃないかと思う。
立香「ああ、じゃあそうしよう。よろしく、ルブランさん」>>838
ルブラン「最近のフランスはちょっとおかしくてなぁ。王国軍と革命軍の戦争中ってのとは別にさっきのみたいな化け物も出るようになったし、おちおち狩りも出来やしない」
ルブランさんはセイバーの言う通り素の口調で話すようになった。それでも俺たちに感謝してるのは伝わるしこうして話も聞けるのだから問題は無い。
厩戸皇子「戦争とな」
ルブラン「ああ。なんでも王国軍も革命軍も一騎当千の将が居るらしくて今までの戦争と比べ物にならないくらい激化してるんだよ」
立香「どう思う?セイバー」
厩戸皇子「うむ、間違いなくサーヴァントだな。どちらかの陣営がサーヴァントを召喚し特異点の原因となり、それに対抗して連鎖召喚されたサーヴァントがもう一方に加担している、と見るのが自然だが…ふうん、如何せんまだ情報が少なく断言は出来んな」
そんな話をしつつ森を抜け平原に出ると遠くの方で煙が上がっているのが見えた。>>839
少し前に遡る。
玉兎率いる怪物の軍は町を包囲していた。
玉兎「これまで不可侵を貫いてきた町ですが、命令ならやるまでです」
その町は王国軍も革命軍も手を出さなかった中立地帯。謎の勢力により守護されている領域だった。しかし玉兎は自軍の大将に「ここを落とせ」と命じられたので落とす。彼女が町を滅ぼすのに理由はそれだけで十分であった。
玉兎「それに、そろそろ兎[わたし]も血を浴びないとせっかくマスターに貰った令呪の効果が切れてしまうです」
玉兎は本来主人に忠実な召使いのようなサーヴァントである。敵と見定めた者を徹底的に排除する一面はあるが『疑わしきは罰する』というのが苦手であった。故に彼女はマスターから一画の令呪を賜った。
【己の獣性を解放せよ】
玉兎の宝具『月の兎[アドベント・ムーンビースト]』を使用した際の話であるが玉兎は加虐性と残虐性が上がる。その精神性になれという呪い[祝福]。しかしそれを維持するためには定期的に血を浴びる必要がある。でなければ興奮は冷め素面に戻ってしまう。
だから殺.す。なるべく血が出るように、出来るだけ長く苦しむように。流れる血が、響く断末魔が、彼女の獣性を刺激する。
玉兎「町の外に逃げた者はお前達にくれてやるです。ですが兎[わたし]が呼ばない限りは中には来ないことです」
配下の化物には先の作戦で敵を取り逃した兵士を玩具にしてやった。故に今度は自分が遊ぶ番である。と宣言し玉兎はこれから殺戮を行う町へと駆けて行った。>>840
まずは一人、不意打ちで首を撥ねる。何も分からないまま命を絶たれただけこの者は幸運だったかもしれない。しかしその骸は槍に貫かれ高々と掲げられた。
玉兎「聞け!名も知らぬ町の住人達よ!この町は王国軍の名において「滅ぼせ」との指示が下った。故に滅ぼす。文句がある者は掛かってくるがいいです」
そう言うと玉兎は首無し死体を道端へ投げ捨てる。まだ新鮮な血が滴る死体の周りには血溜まりが出来る。
あまりに突然の出来事に固まる民衆に呆れ槍を一本投擲し通りすがりの老人の足を貫く。
玉兎「ちなみに掛かって来ない者も最終的に皆殺.しなので夜露死苦です」
老人が痛みに悲鳴をあげると同時に町中がパニックとなる。町を守るために玉兎に挑みかかる者。我先にと逃げ出す者。他人を逃がすために時間稼ぎをしようとする者。皆違った対応を見せるが玉兎はまず挑みかかってきた者の始末をすることにした。
玉兎「えいっ」
あえて急所を外しへその下辺りを刺される。しかし本当の地獄はここからだった。>>841
玉兎が槍をもう一本取り出すと男の片腕と両の足首を切り落とす。苦悶の声をあげるがそれでも戦意は消えていないと睨み付けるのだが、それはかえって玉兎の嗜虐心を擽るだけである。
男の体を軽々と持ち上げるとぶん、ぶん、とゆっくりと回し始める。すると遠心力で傷口から夥しい量の血が飛び散る。
びしゃり、びしゃりと振り回す度に周囲の建物に鮮血が撒き散らされるのを見て玉兎は頬を綻ばせる。
玉兎「あはっ♡」
男「ぐっ…あ"あ"あ"、や…めてぐぇ……」
致死量を超えもう助からないというレベルまで血を流した後にやっと命乞いをする。その姿の滑稽さにある種邪悪な笑みを浮かべた玉兎は
玉兎「じゃあ止めてあげるです」
と言って槍を振るうと男の体は建物の外壁に叩き付けられ赤く大きな一輪の華へと姿を変えた。
玉兎「ふ、ふふふふふ…さあ、次death!!」>>842
焦るルブランさんを追いかけて俺たちは町に到着した。
厩戸皇子「見るな、立香」
そうセイバーが制止した時にはもう遅かった。
そこは地獄だった。辺り一面血だらけの中何人もの人が殺されていた。槍みたいな物で壁に縫い付けられていたり、手足等を細かく分解して地面に並べられていたり、噴水には歪に捻じ曲げられた死体がまるで生け花のように…
立香「うっ…ぐ……」
道端に蹲って吐いた。胃の中の物なんて何も無いはずなのに吐いた。
ルブラン「アンヌ…エマ!」
ルブランさんが誰かの名前を叫んで走り出した。追いかけないとっ
厩戸皇子「立香」
セイバーが俺の身を案じて声をかけてくる。そうだ、こんな所で立ち止まってなんていられない。咳払いをして喉に残る異物を飲み込む。苦いような酸っぱいような味が口の中に充満するけどそんなこと気にしていられない。
立香「ゲホッ、んぐっ……大丈夫!いけるよ」>>844
とある建物の中。外で暴虐の限りを尽くした玉兎が目敏く見つけた母子を手にかけようとしていた。
母「お願いします…私はどうなっても構いません。この子だけは、この子だけは見逃してくださいっ」
子「お母さんっ」
涙ぐましい親子愛にふん、と小さく息を吐く玉兎。
玉兎「この状況で一人残される方が辛いです。安心するといいです、苦しいのは死ぬまでの間だけです。その親子愛に免じてせめて子供の方は苦しまないよう首を撥ねてやるです」
そう言うとあえて子供の方を先に殺そうと槍を振るう。
母「やめてぇーっ!!」
直後、玉兎の槍が止まった。窓から飛び込んで駆け付けた厩戸皇子が手にした直刀で凶刃を阻止したのだ。玉兎はじとりと値踏みするように厩戸皇子を見る。
玉兎「見ない英霊です。どこのサーヴァントです?」
厩戸皇子「畜生の分際で人の言葉を発するでない。人として恥ずかしくなる」
終わりです。長々とすいませんです。バレンタインデーなので更新しますね!
>>848
その様は一つの絵画として切り取れば相当売れるのではないか?ウエイターであるフレデリックはそんな事を考えながら、料理を食べ終わったこの男に近づく
「お味はいかがでしょうか?お客さま」
「……………実に、素晴らしい!儂は余り肉を食わなかったが、こうも柔らかく旨味が出るもんかね?口の中でほろりと消えていったわ」
流暢なフランス語。しかしそれがこの男の雰囲気とずれており、何処か違和感を感じさせる。だが彼は客だ。無礼な事を考えて追っ払うのはあまりに無神経である
そう考えるとフレデリックはその男が注文した年代物の赤ワイン、コーヒーとアイスクリームを持ってきた。コーヒーとアイスクリームはウチの自慢の逸品である。今はいなくなった革命家たちがこれを好んで食べていた>>857
終わりです【定期連絡】
リレー企画参加者様へ。企画の円滑な進行の為、1週間以上レスができない状況になる場合は、GMにその旨を報告してくださるようお願いします。その際は、どういう方針・方向で動きたいかを合わせてお伝えください。参加者間での話し合いを行い、どのような描写にするかを議論します。
1ヶ月以上応答がない場合は、応答があるまで他参加者で進行させていただきますことをご了承ください。
・統合スレにて開催中の企画
1.九終聖杯大会
2.トーナメント大会
3.伏神聖杯戦争
4.第1回聖杯大会(スノーフィールド)
5.1.特異点 悪徳歪曲狂国ベルツ・ル・パラディス
・開催予定
1.インフレ聖杯大会(メンバー調整)
2.第◾️回聖杯大会(メンバー調整)
中華スキーさん、お忙しいかと思いますが、九終聖杯大会の進行がありました。つきましては召喚シーンの投稿をお願いできればと思います。また、お伝えしたいこともありますので、予選へレスをお願いします。特異点SS、投下します
>>860
「またしてもやられたか」
部下からの報告に、忌々しげに呟くガヌロン。
功を焦ったサーヴァント七騎、それらに同調させられた兵士達が大勢。その全てが残らず討ち取られたというものだった。
「兵士たちには加担せぬよう命じておいた筈だが?」
「それが……その、申し上げにくいのですが、英霊の方々に扇動ないし強制させられたようでして」
「分かった、儂から女王陛下に申し上げておこう。今後兵士はこ奴に決して関わるな、たとえサーヴァントどもから強いられようともだ。よいな?」
「か、かしこまりました。皆に伝えておきます」
すくみ上がる部下を尻目に、ガヌロンは虚空を睨む。
十把一絡げに召喚された存在といえどサーヴァントはサーヴァント。消費されるリソースは並大抵のものではないし、そう簡単に退去されては支配にも差し障る。
何より、あの気まぐれな女王の機嫌が最悪になるというのが大きい。ただでさえ片付けなければならない案件は山積み状態。この上下手に女王の癇癪に巻き込まれては……。
そんな風に考え込んでいると、どたばたと騒がしい音が響いてきた。
「が、ガヌロン閣下大変です! また新しいサーヴァントが確認されました!」
血相を変えた様子で、新たに兵士が飛び込んでくる。開口一番叫んだその内容に、ガヌロンも目の色を変えた。
続く>>861
「どんな英霊だ。どの街にいる?」
「れ、礼服のような格好に身を包んだ青年です。場所はラ・シャリテ近郊の村だと!」
「それで、現状はどうなっている」
「玉兎様と交戦中です! 何でも村を襲ってる最中に割って入られたとの事で!」
玉兎、と聞いてガヌロンのこめかみがピクリと動く。
あの獣人めいた少女の実力は彼もよく知っていた。無論、その凶暴性とも併せて。
加えて彼女には得体の知れない怪物たちが付いている。その戦力もあれば、並大抵の英霊と渡り合える可能性は充分にあるが。
「馬を用意しろ、直接現地へと赴く。マーシャルにも伝えよ、出陣だ。太陽王は……伝えるだけ伝えて、後は好きにせよとだけ言い残しておけ。あれは儂の手に余る。何より、パリを空にする訳にはいかん」
「ハッ! ――そ、それともう一つ報告が」
「何だ。早く言え」
「その――目撃されたサーヴァントの傍に見慣れぬ服装の少年がいたとの事です。何でも現在警戒中のサーヴァントとよく似た、黒髪の顔立ちだったとか」
「何……?」
てきぱきと指示を下し、自らも執務室を出ようとする。
が、その直前耳にした内容で足が止まった。
服装や顔は正直どうでもいい。問題は、サーヴァントの傍にいたという点だ。
「そのサーヴァントが保護していた平民ではないのか?」
「いえ、それにしては格好が我々と異なりすぎると」
続く>>862
「――ふふ。面白そうな事になってきたみたいね」
突然の甘美な声。執務室内にいた面々が一斉に声の方向に目を向け、次の瞬間全員揃って膝を突いた。
「女王陛下、よもやこちらにお運びになろうとは」
「ああ、構わないわ。楽にして頂戴。それより」
女王と呼ばれた人物が、先ほど駆け込んできた兵士に接近する。息遣いすら感じられるほど近寄ると、悪戯っ子めいた口調で話しかけた。
「ねえ貴方、さっきこう言ったわよね? 『サーヴァントの傍に、見慣れぬ少年がいた』って。それ本当?」
「は、はい……確かであります陛下!」
「女王陛下。んもう、駄目じゃない。それじゃ太陽王と紛らわしいわ。減点ね」
「も、申し訳御座いません! どうかお許しを!!」
詰め寄られた兵士の顔が、赤から蒼白へと変転する。失禁しかねないほど引き攣った顔からは、女王への畏れ以上に別の恐怖も感じられた。
すなわち、『この御方から見捨てられたらどうしよう』という感情が。
そんな兵士の様子を知ってか知らずか、女王は優しい微笑みを浮かべて告げる。
「ええ許すわ。呼び間違いくらい誰にでもありますもの。ねえ、それより貴方が知ってる少年の情報を教えて?」
「か、かしこまりました! ええとその少年ですが、サーヴァントと何やら言葉を交わしていたとのことです! 内容までは分かりませんが、現地の者曰く相当に近しげな様子であったと!」
「ふうん、そう」
続く>>863
くすり、と笑い、何か得心した様子で女王は頷く。それから兵士の顎を掴むと、自分の唇に躊躇なく重ね合わせた。
「――――ッ!」
「これはご褒美。よく知らせてくれたわね、今夜はゆっくりお休みなさい」
「は――は、い」
ふわふわとした様子で、兵士が執務室を後にする。先程まで報告していたガヌロンの事も眼中にないようで、一声もかけずに去っていく。
さながら酔っ払いと化した兵士の姿に、ガヌロンは額を押さえながら諫言する。
「……女王陛下。お戯れは程々になさって下さい」
「もう、そんな顔をしないで頂戴。あれくらい、また市中から徴用してくればいいでしょう? たかだか兵士一人分の損失なのだから」
あの兵士はもう使い物にならない。先程の魅了(ベーゼ)で、理性が完全に破壊された。残る人生全てを快楽の回想だけに費やすだろう。
一人の人生を破壊した悪徳に、しかし女王は全く意に介さない。彼女にとって、他人なぞ玩具か娯楽以外の何『物』でもないのだから。
「そんな事よりガヌロン、貴方は気づいてる? その少年の正体」
「は? 何が、でしょうか」
「鈍いのね。サーヴァントの隣に付き従う存在、そんなもの契約者以外に有り得ないでしょう?」
契約者。サーヴァントに魔力を供給し、この世への楔として成り立たせる者。
ガヌロンも無論知識として知ってはいたが、女王から告げられた事で顔色を変える。
続く>>864
「馬鹿な! このフランスにおいて、サーヴァントと契約できるような魔術師など!」
「いる筈がない、そうよね。だって私たちが皆.殺しにしたんだもの」
でも、と女王は笑って続ける。
「彼方からの来訪者、虚空を彷徨う天文台から来たとすれば?」
「は……? な、何を?」
「いいわ、無理に理解しようとしなくて。でもこれだけは覚えておいて」
女王はガヌロンに背を向け、執務室から立ち去る。
その去り際に、囁くような声で言い残した。
「王家の百合は永遠、何人にも穢せない。たとえそれがこの世においてあるべき終わりだとしても――――私はもう、誰にも殺されてやらないわ」
ここで一旦終了
マーシャル担当および太陽王担当の方、先走った形になったみたいで申し訳ありません。同行するかどうかの判断はそちらに委ねます
この後ガヌロンは村付近まで移動。展開によっては、藤丸たちとの交戦もあるかもです
いずれにせよ内容は明星さん達次第という事で
あ、それと兵士の扱いは気になさらなくて大丈夫です。ガヌロンにああ言わせはしましたが、まあ文官的な役目も背負ってるならこういう事通達するだろうなってくらいに考えたものですので一気に距離を詰める。
輝く星のハサン等と呼ばれていたサーヴァントが慌てて短剣を振るったのを軽く受け止め、そのまま振るった青龍偃月刀が飛び退こうとする奴の脚を浅く斬り付ける。
その傷で逃げられないと悟った奴が再び振るった短剣を弾き、がら空きの胴への斬撃で膝をつかせる。
「ぐうぁ……かっ鐘の音、が……」
そして、俺を見ながら別の誰かに脅える奴の首を、俺は青龍偃月刀で切り落とした。
だが、これは勝利とは呼べない戦いだ。
「間に合わなかったか……すまぬ」
俺がラ・シャリテ近郊のこの村に来た時には、既に虐殺の終わった後だった
家という家は爆破された上で火をかけられ、生存者は居ない事が察せられた。
だが、俺には感傷に浸る暇も無かった。
何故なら、サーヴァント同士の戦いの気配を感じ取ったのだから。
「少し遠いか……間に合えよ!」
今度は間に合う事を祈りつつ、俺は次の戦場へと駆け出した。以上、フランス特異点、初戦への関羽参戦フラグでした。
パリからリヨンに派遣された伝令役は緊張していた。
かの王妃が統べるフランスにおいて、リヨンは既に小さな独立国家と言えるほど他の町から隔絶されていた。
物理的に壁があるというわけではない。そこには人の時代において最も長くに渡り国家を治めた王がいる。ただ、それだけで悪徳と暴虐に満ちた国の中でその一点がスポットライトでも浴びているかの如く、輝いている。
事実、この村の人間達は王国兵による略奪や怪物による虐殺に怯える様子はなく、王妃が国を支配する以前とまるで変わらぬ生活を過ごしていた。
自身を王ではなく兵と言い続ける彼から言わせれば、『己の為の舞台を整えた』だけと言ったところだろうが。
とはいえ彼はかつてこの国を統治した者であることに変わりはなく、相対する伝令役は性質こそ異なれど王妃を前にした時と引けを取らない緊張感を感じていた。
『どうした。パリに集中しているはずの兵士がわざわざリヨンまで送られてくるとは……戦況に変化でもあったか?』
太陽王の呼び掛けに緊張のあまり、食い気味に口を開く伝令役。
「た、玉兎様がラ・シャリテ近郊の村で新たなサーヴァントと交戦しているとの事をガヌロン様から伝えるようにと……」
『興味無いな。あのケモノとその私兵に任せておけば大抵の相手なら敗北する可能性は限りなく低いだろう。仮にケモノ如きが落されたところで仏蘭西(ワタシ)の知ったことではない』
露骨なまでに面白くなさそうな態度で伝令役の言葉に返事をする。しかし、次に伝令役が告げた言葉で彼の態度は一変する。
「それが……その相手のサーヴァントが少し変わっているようでして。東洋の英霊だと思われるのですが、傍らに同じく東洋人と思われる男を連れているとのことで……」
それを聞いて、先程まで無関心を貫いていた太陽王が目を見開く。そして、
『ようやく来たか……人の可能性よ。』
太陽王は静かに、だが確かに頬を釣り上げて笑う。>>868
『ガヌロンに伝えよ。我(フランス)は此処に残る。行きたければ貴様とマーシャルで行けとな』
「お、恐れながら……太陽王陛下は出陣なされないのですか……?」
ガヌロンがわざわざ他のサーヴァントに呼びかけたとするなら、警戒するに相応しい相手なのだろう。
太陽王自身も新たなサーヴァントとその傍らの東洋人に興味を持ったという様子だったのだが……。
『この地に現れた一つの可能性。ケモノ如きに相手させるのは惜しいが……かといってアレに倒されるようならそれ迄であったというだけだ。』
「は、はぁ……」
正直、太陽王の告げる『可能性』やらといった言葉の真意を伝令役は理解出来ていない。
しかし、太陽王がそう告げたのであればそれは他の英霊が説得したところで不可能だろうということは理解している。
(もしかすると、王妃ですら不可能かもしれない……)
王妃に知られれば不敬罪からどのような罰を与えられるか分からぬようなことを思案してしまうほど、太陽王の目の前の存在感は絶対だった。なんせ、彼は国家そのものだと謳われた王なのだから。
『此処(リヨン)に来る事があれば、その時はこの太陽王(フランス)が相手になろう……せいぜい、生き残ってくれよ』
太陽王は味方である王国軍の英霊ではなく、それと敵対する英霊と東洋人の肩を持つような台詞を吐いた。その真意はやはり伝令役如きでは察することも出来ず、仕方なく太陽王からガヌロンへの伝言を伝える為に馬を走らせ、リヨンから立ち去った。以上、太陽王 ルイ=デュードネ リヨンよりでした
ガヌロンさんのお誘いを蹴らせていただきました。
倨傲の王はあくまで自分自身のしたいように動くといったところパリ市内 地下
色ボケした兵士を捕まえ、丁寧にお話し(フィレンツェ二世が残した『ドラゴン娘でもできる三分拷問(クッキング)』に基づいた素晴らしい物)をした寺田宗有は急いで前線基地に戻った
地下にあるここは革命軍が王都奪還の為に秘密裏に作ったものの一つ。大部分は見つかってしまったがそれでもなお残る物はあるのだ
寺田宗有はこの50m程の長さがある空間を隠れ家とし、マクシミリアンから頼まれた任務を遂行している
王国側戦力が書かれた紙に昨日始末したサーヴァントの名前を消し新たに召喚された名前を書く。イタチごっこのようなものだ
色々思うことがあるがまずは準備である
寺田は明かりをつけた
魔術の光により照らされる坑道。そこには、おお!大量の武器があるではないか!
これは寺田宗有が倒した敵から使えそうなものをコツコツと集めた物である。彼の任務の一つに武器の収集および供給も優先度は低いがあるのだ>>871
寺田はその武器群を見渡しながら準備を始める。急いでいるがその仕草は決して粗雑でない。武器選びとは一種の神聖なものなのだ
寺田はライフル銃を手に取る。フランス王国兵士から収集した物だ。ウィンチェスターライフルと一般的に呼ばれるこれを手にし、寺田宗有は一種の疑問がよぎる
("性能が良すぎる"。……………この時代に似つかわしくない)
王国軍と戦う中で常々思っていた疑念でもある。こちら側に流通しているものに比べると性能差が明らかであり、革命軍が敗北する理由の一つだ
(おそらく鍛冶師でも向こうにいるだろうな。弾が少ないだけまだましか……………)
銃の性能に見合う弾はまだまだ少ないようで、王国兵士の懐にも余り予備はなかった
逆に言えば大量生産されればそれだけこちら側が不利になるということである>>873
というわけで参戦します
色ボケした奴がいるなら上手くやれば情報も抜き出せるだろうという気持ち「ば、化け物だぁぁぁぁぁ!!!」
革命軍のアジトに叫び声が響き渡る。監視の者の叫びようからして相手が王国軍なのかさえも判断がつかない。
「っ、退いて下さい。私とリンドヴルムが確認します。」
サーヴァントになったことによる能力向上と視力強化、そこに薬を使用して敵の数を確認する。
「───!?なん、ですかあれは。あんな、あんな生き物がこの世に存在するのですか!?」
ギトギトとしてブヨブヨとした白い肌、蛙のような体でありながらも頭が無く、幾多もの触手が邪悪に蠢く姿。あんな生物が存在するとは認めたくはないと思えるフォルム。それが何十匹も。
「……リンドヴルム、貴方は奴らの正体を知っていますか?例えばどんな魔獣や幻獣の類なのか、とか。」
隣で同じく観測していた青年に問い掛ける。
「いや、わからない。それどころか我が父(リンドヴルム)の血の記憶にもあんな奴らは存在しない。それに、アレからは『正確な歴史の古さ』が感じられない。」
彼奴らは本当にこの地球に存在する、もしくはしていた生物なのか、とリンドヴルムが独り言を洩らすほどまでに異質な怪物達。
「とにかく、防衛をしなければなりません。幸いなことにこちらには対策を行う時間があります。」「もうすぐ襲撃ポイントなのです。お前達、用意は良いですね?あそこは革命軍に魔術薬や魔術道具などを生産することが確認されている大事な場所です。彼処を陥とすことは我等が尽くすべき女王陛下の威光を示すことにも繋がります。命令を下します。『片っ端から蹂躙し、凌辱し、殺し尽くすのです。』では、始め!」
「「「「à vous ordre.」」」」
兵隊、異形、そして玉兎がアジトに突入を試みる。
門が壊れ、一斉に王国軍が突入した瞬間、
パァンと乾いた音と共に、兵士数十名の四肢が爆ぜた。
「があっ!?俺、俺の体がぎぎぁがぁ!!??」
爆ぜた兵士達に更なる苦痛が降りかかる。そして兵士達が息絶えた瞬間、ヴォワザンが魔術を起動させる。
『眠りなさい、狂いなさい。私の言葉に耳を蕩かせなさい。お前達は刻んだ業によって死ぬのです。私の薬はどこまでも広く、私の灰はどこまでも深く。』
魔術詠唱が響き渡る。死体から放たれた魔力とヴォワザンが投げた薬瓶から散布された液体が混ざり合い、一つの大きな呪となり王国軍に降り注ぐ。
「か、からだがうご…」「あ、頭が痛ぇ!!助けてくれ!」「意識が…果てに…消え…」
王国軍の兵士達に様々な苦しみが与えられる。麻痺、昏睡、激痛。その果てに彼らの灯火は消えてゆく。数十人を生贄とし、大規模な陣地を依代とし、薬液も今出来る最高クラスの物を使用した大魔術。ヴォワザンの策と同時に、革命軍の兵士達が一斉に攻撃へと転じることとなる。
(魔術薬を作るとの情報からここにはキャスターがいるとは思ってはいたのです。ですがこうも大規模な魔術を行使できるとは思いもしなかったのです。ですが、)
(……やはり、あの怪物共には効き目が薄い。良い火蓋の切り方は出来ませんでしたか。)
異形の怪物達にも影響はあった。が、兵士達と比べて比較的マシなレベルで動けるのだ。「さあ、動けない者達は動けない者達なりの戦い方をするのです。動ける者達は殺戮を!止まることは許しません。フランス王国の御旗の名の下に、引くことはこの玉兎が許しはしないのです!」
叫び声と共に王国軍が反撃に転じる。ムーンビーストが放つ槍は革命軍の数人を一気に貫き、兵士達の繰り出す槍は深く革命軍達に傷を与える。
矢が、銃弾が、槍が、剣が飛び交う戦場。ここは一種の地獄だ。
(リンドヴルム!聞こえますか!?貴方はあの怪物達の対処を。ただの人間に彼奴らの相手は務まりません!私もあのサーヴァントへの対処に移ります。)
(分かった。無事に生き延びて勝利を勝ち取ろう!)
「待たせましたね、ランサー。いや、玉兎でしたか」
「そちらはキャスターとお見受けするです。まさか、あちらのライダーではなく魔術師が相手とは。……それにしてもわざわざ殺されにくるとは殊勝なことです。我等が王国軍に命を以って償う覚悟が出来たのですね」
対魔力。サーヴァントの中でも複数のクラスが持ち合わせるクラススキル。このスキルもあってか、キャスターのサーヴァントは真っ向勝負で打ち勝つのは困難だとされている。いかにここがヴォワザンの陣地だとしても、玉兎の持つ対魔力を撃ち抜くことは困難だろう。「あら、そうお思いですか?なら、その考えを覆してあげます」
瓶を地面に叩きつけると同時に玉兎が槍を突き出す。放出されたのは魔術防壁だがサーヴァントたる玉兎はいとも簡単に叩き壊してしまう。この分では高速詠唱を使用しても二小節程度の魔術詠唱しか出来ないだろう。
「〜〜〜〜子の花は赤く染まり、火は柔らかな肌を包む」
呪詛を含んだ炎が撒き散らされ玉兎を襲うも玉兎の対魔力はB。三小節未満の魔力は届かない……筈だった。
「ちっ……どういうことです?お前ごときが放つ魔術なら私を焼くことは難しい筈です」
炎は玉兎の身を焦がしていた。本来ならば有り得ないことだ。
「〜〜〜〜女の肉は柔らかに裂け、女の血は甘く誘う」
話す暇を入れずに2発目の魔術行使に移る。今度は怪物達も巻き込むように。
『悪性の舞踏、淫毒の酒宴は我に在り』
対象が女性であるならば、自らが対象に行使する魔術の効力は数倍にも膨れ上がる対女性宝具。それを行使することで彼女は本来Bランクの対魔力を兼ね備えるランサーと互角までとは行かずともなんとか戦えている。
「些か見くびっていたのです。お前の魔術は確かに一級品。王国軍に尽くさなかったのが残念でなりません。」
「生憎様。人の尊厳を踏み躙るような者にはもう二度とならないって決めてるの。それに、あなたのような獣以下の化物と共は共に戦わないし負けるつもりもないわ」
口での応酬をしながら玉兎は1人思考する。
(これは少々めんどくさいのです。あちら(ライダー)の様子も芳しくない。)雷鳴が鳴ると共に雷撃がムーンビーストを焼き尽くす。
彗星、雷光の竜であるリンドヴルムの因子を継いだ者の中で最も近しい存在であるライダー【リンドヴルム】が放つ雷は多くの敵を焼き尽くす。
(槍も注意すれば当たる程の腕ではないな。問題は魔力維持か…俺より先に倒されてくれるなよ、キャスター)
(あのレベルの力を行使するには大量の魔力が必要なのです。マスターがいないのに到底維持できるとは思いませんが…霊脈からの魔力徴収?なら──コイツですか。)
マスターとして活動できる魔術師は全て殺した。ならば魔術師である目の前のキャスターが細工をしたと取るべきだろう。
(仕方ないです。全力で討ちに行くのです。)
魔術と槍がぶつかり合って早数分。ヴォワザンの方には疲れが見えているし傷も負っているがあまり深くはない。しかし玉兎の方は疲れはなくとも傷がヴォワザンよりも深い状況だ。
「すぅー…はぁー…いくDeath!」
深呼吸、そして数歩下がってから全速力での飛び込みと全力の突き。玉兎の高い敏捷から繰り出される突きはいとも容易く防壁を打ち破り、ヴォワザンの胴に向かって疾る。
「見えているわ!」
対策をする時間はあった。黒魔術、魔術薬、死霊魔術の三つと宝具を総動員して霊核が潰れることは防ぐ。
───相手と一瞬見つめ合った後、互いに距離を取る。「ふむ、困ったです。お前達!時間を稼ぐです!」
怪物達がヴォワザンを囲みじりじりと近づいてくる。
「〜〜〜女の血は混ざらず、男の血は受け入れられることもなく、輪廻は紡がれず鳥は堕ちる」
魔術が怪物達の腹を撃ち抜く。それで終わり。
───怪物達に空いた風穴から、玉兎が破顔っていた。
それもそう、彼女が撃ち抜いたのは……革命軍の者達だったのだから。
「あ……え?なん、で。なんで、なの?」
疑いなく、紛れもなく、容赦なく、彼女は革命軍を殺した。殺してしまった。腕を縛られて動けない味方を。冷徹に魔女らしく。
「まったく、お馬鹿さんなのです。『月は人を狂わせる』。覚えておいた方がいいのですよ。───それと、さっきの話の続きです。私もお前のように同胞の命を容易く奪う獣以下の化物(魔女)とは共に戦いたくないですし負けるつもりも有りません」
「ごめんなさい、ごめんなさい。違う、違うのよ。私は、私、は……あああぁぁぁぁ!!!!…………魔術、かい……じ……ょ」
「……聞こえていませんか。せめて魔眼に気付けばこのような惨めな死に方はしなかったのですよ、ラ・ヴォワザン。じゃあさよなら、Death」
杵で頭を砕き、磨り潰す。何度も何度も。エーテル体が消えるまで。───実を言うと。玉兎がヴォワザンを討つのはそう難しいことではなかった。だが彼女は一つの可能性を考慮した。
「あのライダーへの魔力供給源」、最初は彼女が契約していたのかとも思ったがそこまでの術者とは到底思えない。彼女が霊脈からの魔力を魔術で流していると判断。そしてそのやうな役目を背負っているキャスターが自らの命を軽く見すぎていることに、主のために身を捧げることを躊躇しない種族である玉兎は気付いていた。
自分が死ぬとライダーの戦力も低下する。なのに命の賭け方が大胆。詰まる所、『キャスターの死』は『ライダーの魔力供給』に支障はないという可能性を考え、玉兎はキャスター……ヴォワザンの心を叩き折り、魔術を解除させた。魔術を行使する自分(魔女)に耐えられなくなるようにして。
「……っ!!魔力が、急に消え、まさかヴォワザン、お前…」
魔力源が無くなったことにより、リンドヴルムの力は著しく低下し、直ぐに駆けつけた玉兎の一槍すら躱せず、浅く腹を貫かれ。
「貴様、ヴォワザンをどうやって殺した!?彼女がこのような終わりを迎えるなど、彼女が一番恐れていたことが起こったようじゃないか!」
「ええ、そうですよ。最後の最後に魔女らしい死に方をしたです。……そろそろ、終わらせますか。『月の兎』……Guuuu!!八つ裂きにしてやる!Death!!」
魔眼投写による狂気と相手のステータスアップに十全に戦えなくなったリンドヴルムが敵うはずもなく。手足を切り落とされ、膝をつくのはそう長くはなかった。
「ふう、終わりです。さあ、お前達。此奴をボロ雑巾にして反逆者共の見せしめにするので好きに遊んでいいですよ。サーヴァントですから人間よりも楽しめる筈です。」
群がるムーンビーストに身体のパーツを弄られ、壊されゆく中、ただ思うのは後悔だけ。革命軍と王国軍が戦う中、無慈悲にそれは掲げられる。
首から上以外の人としてのパーツを念入りに壊された姿、それは革命軍のよく知る竜王の姿。
程なく革命軍は阿鼻叫喚に包まれ、虐殺と凌辱の一夜が始まることとなった。
「たす、けあ、い゛だい゛い゛だい゛ぃぃぃぃぃ!!!」
「やめ、あが、か、き、きあがああ」
「この子だけは!お願いします!お願いぃ!」
「お母さん、お父さん、何処にいるの…目が、見えないよ……あ、あつい!あついあついあつい!いやだぁぁぁ!!」
身体のパーツを無理やり組み替えられる男がいた。喉を潰され弄ばれる女がいた。子供の助命を乞うも容赦無く踏み潰された母がいた。目を潰されて焼かれている家屋を歩かされ、火に肉を焼き焦がされながら落ちた柱で死んだ子がいた。
響くのは人々の叫びや慟哭と兵士達の下卑た笑い声とムーンビーストの奇怪な笑い。これが闘争だ。敗北した者達の尊厳など容易く踏み躙られ、犯され、壊される。
───俺は、みんなを助けられなかった。その後悔を最後にリンドヴルムは身体を幾多の槍に貫かれ、風に舞う灰のように消えた。フランス特異点を投下。いぇい。
ボルドー付近。
伝令兵から通達されたガヌロンの出陣に、マーシャルは顎に指を添えて思考する。
——この時代におけるフランス民とは異なる衣服と、我々と同類であろうサーヴァントと契約する異人。フランスと全く噛み合わない二つの要素を思うに……成る程、嘗ての我が獅子心王と同じく、現実と幻想の境目、その境界線を行き来する者と見ていいでしょう。
聖杯によって召喚されたマーシャルだが、少々特殊な、聖杯戦争とは異なる基盤によっての現界なので、ある程度の知識はあろうとも、来訪者についてやその時代における知識は与えられていない。
よって予測に過ぎないが、彼の予想はある程度的を得ており、であるならばこちらの知り得ぬ未知の技術を使うと睨み、警戒に値する対象として注目する。
「彼らに怨恨はありませんが、こちらも踏まれるだけの蟻になるつもりはない。ガヌロン卿が自軍を引き連れて出陣すると言うのであれば、私が協力しない訳にはいかないでしょう」
マーシャルの背後に鎧を纏った馬が出現し、戦場を駆け抜けんと意気込むような鼻息を鳴らした。
自身も甲冑を身に纏って馬に跨り、愛用のランスを手に待機していた自軍に伝達する。
「王国に仕えし名誉ある兵士たちよ! これは栄えある戦であり、このフランスを落とさんと迫り、殺戮を繰り返す蛮族たちを粛清せし『正義の戦い』である!」>>884
得意の話術で扇動し、わざわざ義は我々にあるとまで宣言して士気を高めた。
ここが特異点だと理解しているマーシャルからすれば、こちらこそ悪だと唾棄される存在なのだと内心失笑する。だが、そんな事を知る由もない兵士には『己が正しい』という認識を与え、躊躇を無くさせるのは実に容易い。
まったく、戦争に善悪など存在しない弱肉強食が真理だと理解していながら、本当に悪に堕ちていると錯覚してしまう。
けれども、歴史を、フランスにて起きてしまった王家の惨劇を知ってしまったマーシャルは止まれなかった。
国は民あってのものだが、王なくしても機能しない事は、数々の王に仕えた彼にとって当たり前の事柄であり、それ故に王政を排出し、革命という名の下に王を討とうなどという革命軍の思想に賛同できなかった。
召喚され、現在フランスを統一している女王に従っているのもその為だ。別に、霊基を汚染されて傀儡になっている訳でもないし、恐怖故に従っている訳でもない。
彼は、彼なりの考えの元で動いており、悪と誹りを受けても仕方がない側についているのだ。
そして何より、あの悲劇の姫君と綴られた彼女を————
「いえ、これは女王陛下に不敬ですね」>>885
「マーシャル卿、全部隊、準備が整いました!」
尻目で確認すると、歩兵隊、突撃隊、遊撃隊、騎乗隊、近衛隊、弓兵隊などなどの各隊は統制を取り、出陣の準備を完了させていた。
「我々は女王陛下の威光を示し、この戦乱にて別たれた国を普遍に帰す。勝利を手に、栄冠を手に、王国に輝かしき凱旋を! Vive la France!」
『Vive la France!』
マーシャルを筆頭に、猛々しい雄叫びをあげて馬を走らせる。
彼らの手には何の変哲もない無銘の武器……しかし、それらの武器には確かな“神秘”が宿っていた。
制圧したボルドーを抜け、近辺のティエールを過ぎ去り、今現在、各戦力が集結しつつあるラ・シャリテへ『無銘の宝具』を武装した軍勢が迫る。
——彷徨の異人よ、貴公がどれ程のものか、我が槍を以って見極めさせてもらおう。短いようですが、軍を走らせるだけなので、これくらいになりました。
ラ・シャリテ高台
ついた寺田宗有は辺りを確認する
(マーシェルが出陣してきた事は予想内だったが、まさかガヌロンまで来るとは)
フランス王国の旗を背負いし軍勢を見ながら思う。そして関羽がこちら側に走ってくるのも確認
寺田宗有はほしみとやらがいる場所を探す。そして其処には
(ほう!)
玉兎とその眷属である妖怪が異国の服をきた同胞に襲いかかっているではないか!
寺田宗有は回想する。あのウサ公によってやられていった仲間のことを
(フィレンツェ、エリザベート、ヴォワザン、リンドブルム、アクレピオス、曹仁……………)
皆がいい奴だった。彼らを無残に虐殺された怒り、それもある
だが彼にとって玉兎に対して思う大部分の事は>>888
(あの眼、鬱陶しいんだよな)
……………月が発する狂気に対する怒り(イライラ)である
寺田宗有は精神異常を完全無効化する事ができる。現にこれのおかげでマリーアントワネットと出くわしても色香に惑わされなかった
だがそれでも浴びせられるという感覚は若干残るのである。月を見るたびに効きもしないのに発生する(と思い込んでいる)狂気に彼はイライラしていたのだ
(よし、眼抉るか)
そう考え、ふと自分の手を見る。……………微量だが存在感がなくなり始めていた
(持って20分かな)
寺田宗有は燃費がいい。だがそれでもはぐれである。今まで誤魔化してきたガタがようやく来始めていた
(まあならいい、死.ぬまで走るだけだ)
寺田宗有は手持ち爆弾に火をつけ、玉兎の方へ思っ切り投げ込み高台から落ちていった>>890
終わりです
これからの動きとして
寺田宗有は玉兎に対して真っ直ぐ突き進んで全力で嫌がらせを始めます
因みに魔眼の件は一回受けても無駄だったけど月を見るたびに受けた不快感にイライラしているということで別に月そのものから狂気は出てないです
要は
や つ あ た り
まあ元から短気な人なのでフランス特異点SS、投下します
>>892
マーシャルと合流して一時間半。ガヌロン一行はとうとうラ・シャリテ近郊まで到着した。
現在は丘の上に陣取り、街の様子を伺っている。
「どうだマーシャル、戦況の方は」
「我が方有利。否、やや拮抗といったところでしょうか。玉兎殿と打ち合うあの英霊も大したものですが、如何せん物量で負けています」
マーシャルから遠眼鏡を受け取り、ガヌロンも戦場を見やる。サーヴァントの視力をもってすれば不要のものではあるが、彼らはこの手軽に戦場を俯瞰できる道具を気に入っていた。
(儂がいた時代にもこれがあれば……いや、詮無き事か)
感傷を打ち切り、現状を冷徹に分析する。マーシャルの言う通り玉兎と打ち合う英霊の技量は高く、先程から幾度となく攻めに転じている。
が、それだけだ。契約者というハンデを抱えている以上、狡猾なあの獣人を上回る事など不可能に近い。間断なく投入される魔獣たちの牽制により、英霊は着実に消耗させられていた。
(もっとも、あの分であればマスターとやらの方が先に力尽きるやもしれんが)
白い服を着た少年。恐らく戦場に立った経験などないのだろう、先程から足は震え懸命に耐え続けてる姿がありありと見える。
加えて、あれ程の英霊とあらば魔力消費も並大抵ではない。遠からず少年の魔術回路は音を上げるだろう。
そこまで考えたところで、ふと別なものが目に入る。男と女、それに子ども。見たところ少年の同類ではない。恐らくはこの村で暮らしていた者達と考えるべきだろう。
――まさか、あの者達を守る為だけに戦っているというのか?
続く>>893
「馬鹿な連中だ。たかが平民三人、見捨てておけば良いものを」
生前のガヌロンも、そうした判断を迫られた時がしばしばあった。後の大事の為、目先の小事を切り捨てる――いつの時代もありふれた出来事である。
あの王や十二勇士たちは、それでも全てを救おうと足掻いていたものだが。
「マーシャル、貴様もそうは思わぬか? あの三人を見捨て、全力で撤退の一つも図っていれば玉兎から逃れられたと」
「……否定はしません。ですが、彼らはそれを良しとは思わなかったのでしょう。既に堕ち果てた我々とは違い」
堕ち果てた、の部分に少なからず強調を感じる。元より紳士的な騎士だ、いかに己を律しようと思う所が少なくないのはガヌロンも理解している。
「今の発言は、聞かなかったものとしておくぞ」
だが、それが何だという。
己らの所業は、正真正銘悪鬼外道のものだろう。あの狂った獣人も、目の前にいる騎士も、そしてこの場に居合わせていない太陽王や女王でさえ例外ではない。
我々は人類史を穢し、破壊し、滅ぼす者。善悪なぞ、今更問い質すに値しない。
まして、悪役である事を定め付けられた己なぞ――。
「我々も戦闘に加わる。あの娘が反発しようが知った事ではない。奴が本当にマスターであるならば、着実に捕らえて聞き出さねばならぬ」
どこから来て、何を企んでいるのか。サーヴァントと契約した理由は何か。全て、全て聞き出す。
幸いにと言うべきか、こちらの陣営には拷問に長けた者もいる。一昼夜もあれば残らず聞き出す事が叶うだろう。
続く>>894
「怪物どもには注意しておけ。襲ってくるようであれば斬り伏せて構わん。最短距離で連中の下に」
「ガヌロン卿、お待ちを」
言葉の途中で遮られ、あからさまにガヌロンが気分を害する。
が、マーシャルの放った言葉が即座に彼を武人へ切り替えさせた。
「新手のサーヴァントです。数は二騎。片方は玉兎殿の下へ、もう片方は――こちらへ向かっております!」
「何だと……!」
この期に及んで増援の登場。しかも片方がこちらへ向かってきているという状況。
予期せぬ自体を前に、ガヌロンは躊躇なく指示を下す。
「玉兎への加勢を中止する! 目標は新手のサーヴァント、この場にいる戦力総出で迎撃だ!」
撤退は論外。玉兎を見捨てる事はまだしも、何の戦果もなしに退いては女王に何をされるか分かったものではない。
まして相手は未知の英霊。中途半端に挑んでは、こちらが危うい。
迫り来る脅威を前に、ガヌロンたちは気を引き締め迎撃の準備を整えた。
ここで一旦パスします
関羽担当の方、監獄長の方どうぞよろしくお願いします遅れましが特異点SSを投稿します。
『最初の戦闘(チュートリアル)』>>896
場所はフランスの中央部ラ・シャリテ。一四二九年にはジャンヌ・ダルクがラ・シャリテ=シュル=ロワール包囲戦を行った土地でもあるそこは、凶悪な殺戮者の猛威に振るわれていた。
「畜生の分際で人の言葉を発するでない。人として恥ずかしくなる」
残酷無比な攻勢は、厩戸皇子が言い放った苛烈な皮肉によって報われ、玉兎の顔色を一変させた。
玉兎は口を開閉させた。咄嗟に反撃の言葉は出てこなかった。
玉兎は後方へ飛び退る。建物は倉庫兼議会所であるそこは町の中でも大きな建物だ。扉を破壊して外へ出ることで厩戸皇子から距離を取り、槍を構える。
厩戸皇子もそれを追い、建物の外へ出る。立香はルブラン一家の側に寄り添っている。
宙天に立っていた玉兎の槍が、ビューッと虚空にうなりを立てて横になった。
「何者ですか! 楽しみの邪魔をしないで欲しいです!」
その声の半ばにして、槍はキエーッと大気に穴を穿つうなりを発して突きかけられている。立香は思わず眼を瞑った。
地上およそ九〇メートル、飛魚のごとく構えられた槍を前に、厩戸皇子は直刀を振るう。
流石はサーヴァント。まるで槍の長さが倍に伸びたかのような襲撃ぶりであった。
戛然!
晴天に鳴ったのは、肉の裂ける音でなく、金属と金属と相打つ響きであった。
「あーっ!」
驚愕の絶叫をあげ、玉兎は柄だけになった槍を投げ捨て飛び退っている。
その穂先が厩戸皇子の頸部めがけてつき刺さる直前、厩戸皇子の刀身は閃光のごとく旋回してそのケラ首を斬った。精強無比な剣の英霊は雷瞬の間に槍の速度と距離を目測して即座に対応してみせたのだ。
玉兎が突きかけた槍に同じ速度を持たせていたら、斜めに切られた槍の柄は、狂いなく厩戸皇子の頸部を貫いたであろう。が、玉兎はケラ首を斬られた刹那、跳ね返る鞠のごとく飛び退ったのは是非もない。
水が高きから低きへ流れるように滑らかな摺り足。滑るように『するり』と厩戸皇子が寄った。彼の刀が一閃して槍を両断してからこのときまで、息つぐひまもない流れるような動作であった。
新たに具現化した槍で再び玉兎が敵対者を迎撃する。>>897
飛び退いて、それでも攻勢に再度移った玉兎めがけて、厩戸皇子は宙天から一刀振り下ろす。玉兎は下から薙ぎあげるように槍を振るう。
槍は直刀に接触し、穂が砕ける。さしもの厩戸皇子の一刀も、その刹那、軌道がズレた。その剣尖が玉兎の顔を裂き、頬骨を削り、胸を裂くにとどまった。
「くゎっ!」
槍を持って駆け抜けた玉兎が槍を支えに立っていた。注意深く厩戸皇子の後ろ姿を見る。
厩戸皇子の背筋を伸ばした後ろ姿、この上なく美しかった。しかし、背中からにじみ出る威圧感の凄まじさ―――。バックと取ったというのに、不意打ちできる気がしないし、彼の刃の制空圏から逃亡できる気がしない。玉兎は嘆息する。
「……困りましたです。兎[わたし]でもあなたからは容易には逃げられないようです」
玉兎の言葉そのものは平素なものだったが、両眼には狂熱の火花が躍りまわっている。厩戸皇子によって生贄を凄惨な祭壇へ捧げられなかったことが解放された野性、血に酔うことで昂揚した嗜虐心を発散消費出来ず、彼女の内部で坩堝のごとく燃え滾っていた。また自身を苛む痛苦を与えた白皙の美貌の男へ怒りの矛先を向ける。
大量の死と破壊の生産を求める渇望により生じる全身にはしる慄(ふる)えは、痙攣というに近かった。
「嬲り殺しDEATH!」
◇◆◇
立香は驚愕して息を飲んでいた。
いま彼の眼前で繰り広げらる戦いの度が外れた凄まじさ。
ただ前時代的な決闘でしかなかったはずだ。ただ鋼をぶつけ合うだけでここまで甚大苛烈な、力の奔流が吹きすさぶとは。
ルブラン一家に至っては魂魄が焼尽したかのように茫乎として立ちすくんでいるきりであった。
超高速の技撃は、もはや立香の動体視力では捉えきれない。何故、建築物の壁が削れるのか立香には理解できない。恐らくは厩戸皇子の刀か、あるいはあの怪異な少女の槍によるものなのだろう。
想像できない領域の世界に、藤丸立香はする隙もなく眼前の光景に注視し続けた。>>898
そして驚愕の念は玉兎も同じであった。
一〇合に満たない打ち合いをするうちに自身が追い詰められているような危機感を感じていた。まるで自分の動きを読んでいるかのように立ち回っているように感じた。
一撃一撃が致命的一撃(クリティカルヒット)であるはずの攻撃は受け流され(パリィ)ていなされる。避けられる。
彼女の所感は正しい。厩戸皇子は僅かな時間ではあるが彼女の動きのリズム、彼女が攻撃するときの癖や好む型等を読み取り、動きの一つ一つではなく全体を見て先読みを行っているのだ。戦う時間が長くなるほどその先読みの正確さは増していく。
けっして彼女が無能なのではない、縦横無尽に振り払う槍の穂先は、速度と重さは端倪すべからざるものがある。獣の敏捷さも相まって変幻自在で奇抜な挙動で果敢に攻めたている。それに厩戸皇子は即座に対応してみせているのだ。
長柄武器の性質上、連撃の合間にはしばしば隙を見せるのだが、そのタイミングで相手へ視線をぶつける。彼女の持つ魔眼が発動する。
厩戸皇子が見たのは爛と光った黄金色の光であった。玉兎の目だ!
それは激しく飛び散る黄金の閃光のように見えた。月の光を内包した玉兎の魔眼。そこから放たれる魔光、しかして厩戸皇子の対魔力がその力を無効にする。
「!」
危うく頭を柘榴のように割られかけた玉兎が白刃から逃れた代償に右手の親指と人差し指を除く三指を切断された。
「魔眼を持つとは面妖な畜生よな」
「それを平然と無視するあなたも大概です」
言葉を交わしながら、厩戸皇子は構えを解くことはない。そういった動作は無為自然に行える。
「卿のその童女の姿、真なる姿はあれら有象無象の同類か?」
厩戸皇子がちらと視線を向けるのは、離れて彼と玉兎の様子を伺っている怪物だった。
「失礼な方ですね! 兎[わたし]とこいつらは別物です! こいつらの名はムーンビースト。兎[わたし]を差し置いて月の獣を名乗ってたのでぶっ飛ばして配下にしている下等生物です!」
玉兎はそう言ったが、闊達さがこのときはやや欠けており、軽口として成功したとは言えなかった。醜悪な怪物との同一視は、彼女にとって、軽口で処理しうる一線をこえているのであろう。
「ほほう、畜生の分際で人間の言葉らしきものをしゃべりたてる奴には、畜生なりにでも矜持があったか。月の兎、玉兎よ」>>899
玉兎の柳眉が跳ねあがる。
「……なぜわかったです?」
「月の力を持つ魔眼を使い、ムーンビーストたちへの物言いをする獣。例え私の如き才人でなくとも否応なしに察しがつくであろうよ」
「そうですか。それは失言でしたです。……しかぁし、それもこれでイーブンです!」
玉兎が悪童のごとき笑みを浮かべる。
◇◆◇
英霊たちの戦闘に眼を奪われていた立香たちは、ムーンビーストたちが近づくことに不覚にも気づかなかった。立香たちが一心不乱に逃げる。
「ぎゃあああぁあぁぁ! 来た来た来たぁぁ!? 助けてくれぇセイバーァァァァッ!」
ムーンビーストはほくそ笑む。間抜けな人間ども、どうやってこいつらで楽しもうか。男のほうは喰いでがありそうだ。女どもは楽しんでから喰ってやろう。
ムーンビーストが振るう槍からルブランたちを守るために立香は彼らを突き飛ばすとうに横へ跳ぶ。
平凡な一家は悪夢を見る思いであった。
「あ……ああ……っ!」
娘のエマもかちかちと歯が鳴り、震えが納まらない。不意に自分の下半身が生暖かくなるのを感じた。それを嗅ぎつけたらしいムーンビーストらが厭らしく顔を歪める。
「やめろぉぉぉっ!」
槍を突き出すムーンビーストのから一家を守るために立香が前に出る。少年の足は震え、息も荒い。けれど少年は逃げない。立香がカルデア礼装に搭載されたガントを放つ。しかし、ガンドの呪いは立ち眩み程度の症状(ダメージ)しかない。
だが、それでいい。
立香の目的は勝つことではない、負けないことだ!>>900
「よくぞ粘ったぞ。マスター!」
「待ってましたぁ!」
唐突に現れた美貌の青年にムーンビーストら怯む。その隙をつく連撃。豊聡耳の聖人とって十の敵を一度に相手をすることなど容易いことである。
「この辺りで遊ばせてたムーンビーストどもを集めたです。数の有利はこちらにあるです。さよならです。はあぁ!」
新手のムーンビーストとともにた玉兎が跳躍して縦回転して攻撃してくる。厩戸皇子はムーンビーストたちの攻撃とともに直刀でいなして、さらに玉兎の胴を蹴り飛ばず。
「オウェッ! ……意外と足癖悪いです!」
厩戸皇子は口元に刀印を当てた。
「オン、アビラウンキャン、シャラクタン……!」
冷厳なる覇気に、ムーンビーストたちが一瞬怯んだ。彼の放つ波動が激しさを増していく。
納刀して、両手で印を組んだ。
「ナウマクサンマンダ、バサラダン、センダマカロシャダ、ソワタヤウン、タラタカン、マン!」
真言が轟き、魔力が渦を巻く、術の起こした激しい波動に、激しい爆発が生じた。周囲の建物が倒壊して、土砂が舞い、ムーンビーストたちの肉体が千切れて転がっていく。
「す、凄い……」
サーヴァントの激しい戦闘と術の行使によって立香の精力も消耗して疲労感が重くのしかかり、身体中を鈍痛に苛まれる。ガンドを撃った右腕にも痺れがある。
ロマンの話では今は慣れていなだけで、契約に慣れていけば身体への負担も少なくはなると言う。まだ契約したばかりの立香は順応しきれていない状態だった。それでも少年の双眸は強い光を持っている。>>901
「賛辞は受け取るが悠長にはいらぬぞ。卿らを守りながらでは膠着状態が続くぞ」
厩戸皇子の危惧はその通りであった。彼が単騎ならば兎も角、非力な人間を四人守りながら戦うのは長期戦となる。宝具の行使という切り札はまだ出すべきではない、それに初めての戦闘による魔力の消費による負担に立香が慣れていないことも、懸念することであった。
「それでもいい。気にしないで思いっきりやってください。……こんな、寄ってたかって人を嬲り殺しにするようなチンケな奴らに、どうして俺たちがこんなにも怯えないといけないんだ!」
蒼白な立香の表情にも声にも、苛烈の気があふれた。空のように青い瞳が怒気の奔流を宙にほとばしらせている。
そして玉兎にも焦りがあった。彼我の実力差、ムーンビーストの群れを使っても覆しきれないほどであるが、彼が抱えるマスターを仕留める好機は今であると野性の勘が告げている。ムーンビーストの群れを二分して自分とムーンビーストが敵の英霊を抑え、後背からムーンビーストにマスターを襲わせれば勝てるだろう。眼前にある勝機が玉兎に撤退の選択肢を選ぶことを躊躇う。
そんなときである。
ギヤマンが割れるような音が響く。>>902
その場にいる者たちは全員、音が鳴ったほうを見る。そこには虚空に皹が入っていた。
皹から重油のような重さを感じさせる黒い液体が滲み出る。それが大地滴り落ちる。
「え?」
玉兎が音に反応したが、すぐに違和感を気づき左腕を見る。そこには左腕がなかった。
皹からにじみ出た黒い液体が玉兎の左腕を槍ごともぎ取っていたのだ。腕や槍は液体に取り込まれてしまった。
「ぎゃああ!!!」
形容しがたい絶叫を上げて、腕を消失した玉兎がどうと崩落ちる。無惨と評するしかないキリキリ舞いを砂煙の上に描いている。
そんな中、水たまりとなった黒い液体に赤い線が走った。そこから、八方に亀裂が散り、網の目を作ったかと思うと、その水たまりを押し破って、内部から人間がニューと出現して来たのである。中にから現れたのは十代後半の美女―――スラリとしたしなやかな肢体の裸形の女。
「―――っ!」
乳房も秘毛も隠そうともせず、天地晦冥の中にあるように茫乎として突っ立っていたが、ふいにその紅い双眸がかっと見開かれて、じいっと一点に注がれ、妖しい光を放ち出した。―――玉兎の方へ。
立香は時間が止まるような鮮烈な衝撃を受けた。その怪異なる出現にではない。純粋に女の美しさに、である。
闇色の長い黒髪、紅玉のような瞳、うす蒼い翳を落す睫毛、蝋細工のような鼻、柔らかな花弁を合わせたような唇、象牙色の光沢を仄かに照り返す頸、そしてふんわりと盛り上がらせているふたつの玉椀を伏せたような大きな乳房、なよなよとくびれた丸い胴からむっちりと張った腰……>>903
「これ、しゃきっとせい」
「いだ」
厩戸皇子が立香の額を指打した。その痛苦が彼岸へ渡りかけていた立香を此岸に戻した。
「ご、ごめん……」
「また面妖なものが現れたな。マスター実は生きている頃から外つ国を周遊してみたかった。よやく念願がかなうところで実に喜ばしいと思っていたよ。仏蘭西……面白いものがあるようで心が躍る」
「あなた結構余裕だな!?」
以上です。スカタク登場でバトンをパスします。フランス。
この気迫、この覇気、新手のサーヴァントは間違いなく一級の武人であると推測した。
ガヌロンは古今無双のローランを連想し、マーシャルは聖地を最後まで守り抜いたザラディンを思い出した。
「ガヌロン卿、ここは共闘致しましょう。確認したところ、玉兎殿——あちらにに加勢は必要ないようで」
その言葉に素早く双眼鏡を覗き込み、戦闘が行われていたラ・シャリテを確認すると、どういう訳か、玉兎は黒い泥に呑み込まれ、中からまた別のナニかが地を這う光景を目撃した。
姿形は美女のそれだが、中身から漂う気配は嫌悪感しか湧かない程に醜悪で、目視しただけでも顔を顰める。隣に立つマーシャルも同様に、紳士然とした表情を珍しく歪めていた。
「アレに、任せると……?」
「ええ。アレには悍ましさしか感じられませんが、異人等と一戦交えるというのであれば放置しても問題はないでしょう。我々が嫌悪感を感じるというのであれば、あちらも同様。であればあれは、人類側には属さない異物と考えても宜しいかと」
「……ふん、得意の話術で交渉しようと考えぬのか?」
「先ずアレに知性があるかどうかも分かりませんしね。迂闊に近づいて、豚の餌のように食されては色々と困ります」
——豚の餌。
時々、マーシャルの表現の仕方で反応に困る。
この前の戦だって「蜘蛛の足のように死ぶとい」「臓物の模型に仕立て上げる」「皮膚をランスの磨き布に加工して差し上げる」などなど、紳士の顔してるけど皮の下はドメスティックなんだと一々思い出してしまって溜め息を吐いてしまうのだ。加えて、オフの時は鎧の中に鼠を入れられる悪戯をされたりもした。
此奴、十二勇士の連中とも案外上手くやれるのではないか? と、同僚であったガヌロンが考えてしまう程度にはクセの強い個性だったりする。>>906
「では、接近する新しい敵対戦力を相手にしよう。互いに無様な姿を晒したくはないしな」
「まったくですね。畜生に堕ちても、この背中に当時最強の名を賜った『矜持』があります故」
「貴公も難儀よな」
両者とも軽口を叩いた後に、自身の得物を構えて強敵を迎え討とうとする。
馬の蹄が地面をリズミカルに鳴らし、しかして威圧感を感じさせる重音を立てながら徐々に距離を詰めていった。
——剣とランス、そして矛が交わろうとする。ラ・シャリテにて王国軍と革命軍の英霊数騎による戦闘が行われていた裏で、リヨンでもまた英霊同士の戦闘が行われていた。
一騎は当然のごとく剣士(セイバー) 太陽王・ルイ=デュードネ。
もう一騎はその場に馴染まぬ和装の人影。少女とも少年とも判別しがたい黒い髪を肩ほどで切り揃えた人物。その肌は生命を感じさせないほど白く、瞳は虚空の如く。
何よりも、ソレの周囲に漂う重力を感じさせない薄桃色の衣がその存在感を際立たせていた。
ソレが只者ではないということは太陽王には察しがついていた。そして、それは正しい。
正常な7騎とは異なる異例(エクストラ)……ソレは降臨者(フォーリナー)の位に属するサーヴァントなのだから。>>908
此処、リヨンという街は今でこそ太陽王の采配により平穏に日々を過ごしているが、住人達は決して街の外の地獄を知らない訳では無い。
太陽王が来る以前はそれこそ悪辣な王国軍の兵士達に支配され、気紛れに略奪が行われていたし、はぐれのライダー……イクシオンが出した被害も記憶に新しい。
だが、太陽王が来たことでそれまでの事が夢であったかのように、平穏が訪れた。
王国軍の兵士は太陽王の名の元に統制され、勝手な動きは出来ず、街に襲い来るはぐれや革命軍のサーヴァントは太陽王自身の手によって討伐されている。
だからこそ、外の状態に住人達は目を背けてしまった。
「街の中にいれば太陽神(アポロン)が守ってくださる。」「圧政や略奪に苦しめられることも無い」そういった言葉を口々に呟いていた。
足りていない食糧や物資も太陽王が王都から要求する為にでわざわざ外に出る必要もない。
陸地にありながら、リヨンは半ば鎖国に近い状態にあった。
街の外に出たいと子供が言えば、母親が外は危険だから出ては駄目だと諭し、外の情勢に興味を持った人間は村八分にされるといった光景が広がっている。
太陽王も民草が望むのであれば現実から目を背け、夢に酔う事も是とし、オペラ等の娯楽に力を入れ、徹底的に情報統制を行い、外の情報は他のサーヴァントから送られた伝令役から直接太陽王が受け取る形で極力外について知る者を排してきた。
今回、太陽王が動いたのもその一環だ。
街の外から来たという者が歌を交えた物語を聞かせているという噂を耳にしたのだ。
悪しきモノを狩る鼻の長い妖精の話、月人達を引き連れた月の兎の話……。
どれも完全な作り話とは思えない、このリヨンの外で起こっている事をそのままアレンジしたような話だった。
となれば、それをリヨンの住民に言い聞かせるということは彼等に外への興味を抱かせることであり、この太陽王の行う統治とは相容れぬモノである。
故に太陽王は剣を片手にその余所者──降臨者(フォーリナー)のサーヴァントを相手取った。>>909
『最後に言い残すことはあるか?流れの吟遊詩人よ』
《吟遊詩人……か、出来れば歌人と呼んで欲しいところだけどね……》
勝負は一瞬で決着を迎えた。元々、フォーリナーは荒事が得意なサーヴァントではない文化人であり、フランスにおいてルイ=デュードネを相手取るには圧倒的に力不足だったのだ。
『歌人……か。それで貴様は一体どのようなつもりで民草に外の状況を教えた?貴様の目的はなんだ?』
《目的も何も、ね。ただ見たままを歌ってしまうのが歌人の性だからね……此度の現界では面白いものがたくさん見れたのに、語り継がないのも勿体ないだろう?よもや、再び赫映姫(ムーンビースト)と邂逅することになるとは思いもしなかった。》
絶体絶命の危機だと言うのにソレはまるで普段通りといった飄々とした態度で告げる。
『ムーンビースト、あのケモノめが連れていた怪物か……。なるほど、その薄桃色の衣には見覚えがあると思っていたが……アレを加工したものか……。ともかく、この我(フランス)の統べるリヨンに来たのが貴様の運の尽きだ。』
歌人に向けて太陽王が切っ先を向けたまま語る。
《まぁ、どうせラ・シャリテにいてもあの月兎に操られていたかもだしなぁ……今回の現界では既に詰んでたわけだね、ボクは。最後に言い残していいのであればキミに向けて……あの赫映姫(ムーンビースト)がいる限り必ず他の降臨者(フォーリナー)が現れるはずだよ。ボクがいなくなったとしても、ね。ソレに新たな英霊が召喚されたという話も聞くし、果たして君の作り上げた狭苦しい舞台(リヨン)はいつまでもつかな?》
歌人の言葉に考え込むように静止してから、太陽王は頷く。
『忠告は受け取った。ではな、流れのの歌人よ。』
《キノツラユキだ。》
『そうか。その名は忠告とともに覚えておこう、キノツラユキ。』
告げると同時に太陽王の剣がキノツラユキの首を断つ。
太陽王はただ望まれたままを演じ、民草ははぐれのサーヴァントを討った太陽王に喝采する。>>910
民が望まなければ、王は存在しない。民が可能性を閉ざせば王もまた可能性を閉ざす。
現実(ソト)から目を背ける夢想の街は未だ健在であった。
それはさながら赫灼たる太陽が見せる蜃気楼の如く……
以上。フォーリナーの連鎖召喚に対する予期と太陽王が統治するリヨンの状況をチラ見せ
早くサーヴァント戦したいなぁ〜フランス特異点SS投下します
>>912
フランスにある革命軍基地。元はこの一帯を治めていた領主の屋敷であったが、王国軍の襲撃により門閥貴族とその私兵ともども死亡。革命軍がまた王国軍を撃滅することで支配地域を取り戻して基地として利用していた。今日までは……
セイバーの荒木又右衛門は戦場での敵情視察を任とする大斥候からの報告を聴いていた。
荒木又右衛門。鍵屋の辻の決闘での活躍で有名な剣豪である。
沈毅重厚な顔立ちの武士は沈痛そうな表情で報告を聴いた。
やや憔悴しているようだが、報告を聴いている眼光は、容易ならぬ剣士であるという印象を充分与えるものであった。
「そうか。もはやこの基地を捨て撤退するよりないな」
「やはりそうなるか。まあ、早晩こうなるとはわかっていたよ」
又右衛門の判断に無念そうに呻いたのはアヴェンジャーのトマ=アレクサンドル・デュマ。文豪アレクサンドル・デュマ・ペールの父親にして、黒人混血(ムラート)の将軍である。黒人と白人の性質を併せ持った精強無比な肉体は武人としての威圧感だけでなく、全身には凄絶な妖気がある。薄笑いした眼も、からかうにしてはあまりに陰惨だ。
又右衛門は大斥候を下がらせる。
「デュマ君。君からロベスピエール君に軍を率いて撤退するように伝えてくれ賜え。私はここで王国軍を迎え撃つ準備をする」
「……又右衛門。貴様も近いのか?」
何が、ということをデュマは省いたが又右衛門には正しく通じている。
「ああ、長くて一日だろう。ローエングリーン君が倒れたときの戦いでの傷が思いの外深くてね。現界を維持するのも辛い」
それは三日前のこと。同胞たる円卓の騎士ローエングリーンの壮絶な戦死は記憶に新しい。冷静沈着で、何より公正に拘る謹厳実直な指揮官で戦友や民の避難のために殿を務め討滅された。その戦いがこの基地の防衛能力を失う決定打となった。
又右衛門はじめ英霊たちの負傷、デュマのように怪我がなくとも宝具の使用による魔力の枯渇。革命軍のサーヴァントたちの損耗は深刻である。
「王国軍の動きも君の予想通りだったようだが、作戦も予定通りでいいかな?」
「無用なものであれば良かったのだがな」
デュマは嘆息する。多少、弁解じみた口調だったかもしれなかった。トロイアの王女カサンドラ以来、敗戦の予言者は白眼視されるものと相場が決まっている。>>913
二人はそれぞれで離席して部屋を出る。各々の仕事をするためだ。
荒木又右衛門は彼やデュマと同じく、魔力の枯渇が近い者たちを集めて王国軍たちを可能な限りここで足止めするためだ。
デュマは革命軍のサーヴァントであるマクシミリアン・ロベスピエールたちが率いる革命軍を撤退させるための打ち合わせをするためだ。
王国軍の将たるサーヴァントを討滅したものの、魔力供給無しでの宝具の使用から魔力は枯渇し、デュマは日に日に力は衰えている。霊基の劣化は致命的である。これでは幽閉され、毒を盛られ、衰弱していった生前と何も変わらないではないか……。
「だが、私ばかり悲嘆にくれるわけにはいかない」
撤退を告げたとき、ここに残って最期まで戦うと志願する兵士たちは多かった。
血の気の熱い青年士官は、眼球周辺の温度と湿度が急上昇するのを自覚した。敬礼すると彼は震える声を発した。
「閣下、私もおともします」
「駄目だ」
「何故です!? 閣下!」
「生者は今回、同行することはできんよ。これは死者だけの宴会なのでな」
将軍の真意を悟った兵士は絶句する。デュマは、若い前途のある彼らを道連れにする気がないのだった。
無限に近い回復力を有する敵と戦うことは、神経が酸で焼けるような苦痛に満ちた疲労をもたらすものだ。少数をもって多数を討つ、などと妄言するえせ用兵家どもの、なんと愚劣であることか。いかに忠実で勇敢な兵士でも、心身のエネルギーに限界がある。それを補うには、数量を揃えてそれを回転させ、休養させつつ戦うしかないのである。大軍が有利なゆえんである。
◇◆◇>>914
「デュマ君、私達以外に残ったのは彼らだ」
又右衛門がデュマにともの戦うサーヴァントを紹介する。
「お久しぶりですね、ご両人。豫譲(よじょう)です」
古代中国の服を纏う東洋人の青年が笑顔で応じる。春秋戦国時代の晋国の臣であり、恩人の復讐の為に刺客となった烈士である。クラスはアサシン。
「俺はお前らとは初対面かな? 真名はキルロイ。クラスはアーチャー」
軍服を着た青年は、二次世界大戦における伝説的存在である。
キルロイは残りの魔力を活用して分身を作り、基地の周辺を周回、豫譲はアサシンらしく気配遮断スキルを使って潜伏する。そして又右衛門たちはこのまま正面から迎撃するつもりである。
「来たぞ!」
サーヴァントとしての超視力で王国軍の襲来を又右衛門が発見する。
王国軍の兵士が迫りくる。まず四、五人、どやどやと寄ってきた。同時に、右側で二人、左側で二人、王国軍兵士がまるで棒のように声も立てず地に倒れた。
又右衛門が抜刀して豪石正確な剣で瞬時に斬り捨てたのだ。
さらにデュマがマスケット銃で二人、サーベルで二人斬り捨てる。
あっという間に八人を倒されて、驚愕とした王国軍兵士たちは、
「……っ!」
無声の絶叫をあげて、それぞれ、一団となって殺到した。
しかし英霊と人間では初めから勝負など成り立たぬ。兵士たちは竜巻に吹き飛ばされるアルミ箔のごとく、無惨に裂けて散っていく。
二人の本命は王国軍サーヴァントを一人でも多く落とすことである。
雑兵を倒すうちについにサーヴァントたちがやってくる。数は四人。
「剣一、弓一、術一か」>>915
又右衛門は即座に判断する。使い魔のドーベルマンたちを従え、遠く離れたところで魔術の行使をしようと高速詠唱を使うキャスターのコルネリウス・アグリッパ・フォン・ネッテスハイム。一秒もかからずに鉄をも蒸発する火力の大火炎を作り出す。
「疾しっ!」
間合いの遥か外にいるアグリッパに向けて又右衛門は愛刀の伊賀守金道を振るう。すると魔術障壁で守られているはずのアグリッパ脳天から斬り裂かれる。血飛沫を立てて地に倒れる。そして消滅する。
これぞ荒木又右衛門の魔剣・截の疾霆(せつのしってい)。空間を超える斬撃である。火縄銃を構えるアーチャーの杉谷善重坊を同じく魔剣で首を刎ねる。
「おおっ!」
セイバーのアースムンドの眼前に又右衛門の一刀が迅雷の如く振り下ろされる。
鏘然と青い火花がちって、あやうくアースムンドが宝具である二振りの剣でその大刀を受けた。
大刀と二振りの剣、それは一瞬、一体の奇怪な武器でもあるかのように、がっきと空中でかみ合ったまま動かなくなった。
受けはしたものの、凄まじい又右衛門の力であった。ジンワリと静止しているのに、振り下ろされた刹那と同様の加速度が、アースムンドの腕に麻痺的な衝撃を伝えて来る。
引けど、押せど、又右衛門の豪刀はアースムンドの剣に膠のごとく吸いついている。いまや又右衛門の刃をとらえているのはアースムンドの剣ではなく、又右衛門の刃がアースムンドの剣をとらえているのであった。
アースムンドは又右衛門の腹か脛を蹴り飛ばして距離を取っていたところだが、その足が、膝もくるぶしも、盤石の重みにひしがれたように動かなかった。
霞んできたアースムンドの眼は、このとき又右衛門がすうと右手を離すのを見た。相手は左手だけで鍔迫り合いの大刀を支えたのである。空いた右手が腰の小刀に滑ってゆくのを見つつ、アースムンドはどうすることも出来なかった。
アースムンドは小刀によって鎧ごと胴を両断されて地に崩れ落ちた。
―――この凄絶極まる死闘と名剣士の最期を、ウィリアム・マーシャルは黙然として、しかも津々たる興味の眼を以て見物していた。>>916
又右衛門はマーシャルへ視線を向けるが、彼の背後に立つ影に気づき、絶句する。横に一本の細い棒、それに支えられているような黒い影。―――トマ=アレクサンドル・デュマのこの姿を見て息を飲まぬ人間はいなかろう。彼は串刺しになっていた。細い棒と見えたのは長柄の槍で、その槍に胸から背にかけて、見事に貫かれているのだ。おまけに彼は―――その両腕がなかった!
その顔色、息遣い、筋肉の痙攣、もはや瀕死としか思えないことがわかるであろう。―――しかも、彼は生きている。歯ぎしりしつつ、唇はきゅっとつり上がって笑っている。
「デュマ君!」
サーベルを咥えてマーシャルに突進する。消滅寸前の霊基を燃やし、渾身の一刀を振るう。
「その執念、見事なり!」
マーシャルの槍は白銀の流星のようにデュマを貫き、デュマの一刀がマーシャルの騎馬を斬りつける。
地上に降り立つマーシャルは嘆息をつく。
「アヴェンジャーの執念を甘くみてましたか。……これは残りの敵も入念に潰さなければ」>>917
マーシャルは剣を抜き、又右衛門と対峙する。デュマだけでなく豫譲とキルロイも既にマーシャルの手によって討滅されていた。
「マスターが不在、魂喰いもせずよくそれだけの力を保てたものですね」
「誰かを助ける戦こそが実力を発揮できる。それが私という英霊らしくてね」
荒木又右衛門のスキル『無比の助太刀』。彼は誰かを助けるための戦いならば全能力を倍加できる。フランスに住む人々を助ける、革命軍の朋友を助ける、この戦いこそが英霊荒木又右衛門の本領発揮の戦場!
「なるほど、まさに英霊の鑑のような方だ。真名をお聞かせ願いたい」
「真名は荒木又右衛門。クラスはセイバー」
「真名はウィリアム・マーシャル。クラスはランサー」
曠世の英霊同士対峙する……
「えやあっ」
大気を裂く声を同時に発し、かつ同時にふたりの身体も大気の中へ躍り上がっていた。
一秒の数十分の一の違いであったろう。
マーシャルは大岩石をも打ち砕く相手の豪力をはっきりと意識した。
戛然!
空中で氷片のようなものが飛んだ。
マーシャルの剣と斬り結んだ荒木又右衛門の刀のほうが、ポッキリ二つに折れたのだ。
ほとんど激突せんばかりにして、空中から二人の身体は地上に落ちている。が、二人は倒れない。又右衛門は折れた刀身をなお握ったまま、がっきと仁王立ちになっている。
だが、その身体は夏の陽炎のように薄く朧になり消滅していく。又右衛門の魔力がついに枯渇したのだ。特異点SSにごわす。
>>920
「――――――ふむ。大きなキンキラキンと、小さなキンキラキン。普通のがいくつか……遠くにもいくつかと……あれは――――――……月棲獣、か」
美女が、俄に眉根を寄せる。
かの無貌の神を崇拝するモノ、幻夢境に存在する灰の荒野を支配する独立種族。
そんなモノが何故この地球(セカイ)にいるのか、というか―――――――。
「何か、一匹だけ貧相ではなかろうか?」
「―――――……まーたーでーすー?兎[わたし]をコイツらと一緒にしないでほしいです」
片腕を無くした玉兎が呆れた表情で、美女―――――スカタクを睨め付ける。
「ふむ。確かに、月棲獣というよりは人間に近いな」
暫し考え込むような仕草をし、口元に笑みを浮かべ言い放つ。
「――――――――フッ、しかし、貧相なのに変わりはあるまい?」
息を整える玉兎の一点を凝視し、自分の胸を両手で持ち上げ、勝ち誇ったようなドヤ顔。
「……は?」
「たとえ人間を象ったとして、そこまで貧相では貴様らの信奉する神を満足させられはせぬだろうなぁ?いやぁ~貧相貧相!」>>921
「――――――――俺は、夢でも見ているのだろうか」
何とか絞り出した言葉がそれか、と自分で突っ込みたくなる。が、そんな言葉しか出ない程に目の前の状況はカオス極まっていた。
ランサーと交戦中に、空間を割りながら出て来たグロテスクなタールがランサーの左腕を捥ぎ取り、美女が出て来たと思ったら玉兎を煽り始めた。
何を言っているか分からないと思うだろう。しかし、心配ない。このニューロンが焼ききれそうな状況を理解出来るのはほとんどいないだろう。
藤丸は、セイバーに助けを求めるような目を向ける。
「………………………」
―――――無言で肩に手が置かれ、首が横に振られる。
―――――顔から、力が抜け落ちるのを感じた。
「ときめきを返してくれ……」
「何?儂にときめいたのか?ふふん、そうだろうそうだろう。あんなちんちくりんのヒキガエル擬きよりも、儂のように豊満な方が視覚的に良いからな。もっとときめいても良いのだぞ?ん?」
スカタクが、二人の方に向き直ってまたもやドヤ顔をキメる。やめて、こころがもう息苦しい。>>922「――――――隙有り、です」
「……――――ッ!マスター!」
厩戸皇子が咄嗟にマスターの視線を塞ぐと同時に、玉兎の紅瞳から黄金色の魔光(ヒカリ)が放たれ、数体の月棲獣が槍を構えて躍りかかる。
「(くっ―――――!)」
このままではマスターは守れても、ルブラン一家は無事では―――――――!
「――――――――――驕るな、ヒキガエル擬きが」
月の狂気は、五人に届く前に放たれた別の狂気に押し潰され、砕け散る。
マシラの如く飛びかかるムーンビーストに対して、スカタクは腕を振るい一瞬にして『文字』を空間に書き込みいくつかを進路上に置く。ムーンビースト数体は、そのまま『文字』を突っ切ろうとするが、それに触れた瞬間ムーンビーストの体がどんどん『文字』に吸い込まれるように消えていき、体の半分を吸い込んだところで『文字』が消失。
瞬間、上半身を失ったムーンビーストがべしゃり、と音を立てて飛びかかった勢いそのままに地面へと墜落した。>>924
割れた空間から滲み出た黒水が、スカタクの裸身を覆いタイツのような服を形成。槍の穂先は、一切通ること無く運動エネルギーがゼロになったかのように停止していた。
「「―――――――!」」
ムーンビーストがすかさず身を引こうとするが、蜘蛛の脚の如く形作られた黒水に刺し貫かれ、黒水は刺突の勢いそのままに玉兎へと迫る。
「チィッ!」
玉兎は、刺突をいなしながら思考統制によってムーンビーストの一体を引き寄せ、黒水が一斉に襲いかかった瞬間に目の前に配置、刺突を防いで大きく後ろに下がる。盾にされ、絶命したムーンビーストは僅かに痙攣したのち、ズルズルという不快な音を立てて黒水に取り込まれていった。
「…………」
厩戸皇子は、現れた闖入者に対してある仮説を立てる。>>926
「(―――――非常に拙いです)」
スカタクの出現による勝機の消失、加えて自身のダメージ。左腕等の欠損は修復したとはいえ、これはあくまで応急処置でしかない、このまま戦えば恐らく殺られると判断し、即座に撤退しようとする玉兎。
「ッ!」
しかし、撤退に移ろうとした瞬間、獣の直感からか何かを感じとり、その場から逃れるように跳躍する。
轟暴(ゴバゥ)ッッ!!!
さっきまでいた場所に、煌炎と爆風が巻き起こりムーンビースト数体が巻き添えを食らって爆発四散。
そして、明々と燃える火に照らされて顕となったのは―――――――――紅色のしかめ面に高々と立つ鼻!
「アイエエエエエエエエエエ!?テング!?テングナンデ!?」
スカタクの悲鳴が、響き渡った。>>927
以上です。
テングリアリティショックによるSANチェック1d10/1d100(大嘘)フランス特異点更新します。
クルティザンヌ名前だけお借りしました。高台からラ・シャリテ付近を望遠鏡で確認する。
玉兎と怪物達により滅ぼされた街に、僅かな生存者を守る為に孤軍奮闘するサーヴァント。
更に、マーシャルとガヌロンの増援部隊が向かっている……状況は最悪とさえ言えるだろう。
「これは、いかんな」
俺は、得た情報や討ったサーヴァントのリスト、怪物に対しての考察等を書いたメモに血判を押す。
するとメモは小鳥へと変化し、飛び立った。
これが、ヴォワザンが遺した数少ない魔道具の内の一つだ。
血判を押されたメモは、一度だけ小鳥に変化して一番近い革命軍のサーヴァントの元へと飛ぶ……丁度、寺田の奴がラ・シャリテに向かうのが見えた。
あいつは、張飛のように短気な戦闘狂だが頭の回転自体は良い……己の為すべき事を見誤る馬鹿では無い。
これて、心残りは一つ消えた。
「さて、死ぬか」敵は今までとは格の違う精鋭揃い。
フランス王国軍最強と名高いマーシャル配下の兵は言うまでもなく、ガヌロン配下の兵も、クルティザンヌによるガヌロン暗殺を城内のサーヴァントと共に阻止して彼女を処刑台送りにした実績を持つ。
俺は兵を連れていない上に駆っているのはこの時代の馬だ、飛び込めば死しかない。
だが、俺が行かねばラ・シャリテにあの軍勢が雪崩れ込む。
わざわざガヌロンまでもが出てきた以上、それは最も避けねばならん事だ。
「我が姓は関、名は羽、字は雲長!この俺の首が欲しくばかかってこい!」
そう一喝して駆け抜ける。
すると飛んでくるのは宝具に匹敵する神秘を持った矢の雨。
並のサーヴァントなら即死だったが、俺は違う。
弓矢が良くてもそれを引く力が常人の域を出ない以上、撃ち落とすのは容易。
後は、矢の数や角度等を見極めて確実に自身に向かう矢全てを撃ち落とせる進路を通るだけだ。
鶴翼の陣で側面からも弓を射られていれば負傷は避けられんだろうが、流石のマーシャルもこの短時間で陣形を組み替える事は無かったようだ。
「ば、化け物め……」
ガヌロンが愕然としてるのが見えた。
マーシャルが顔色一つ変えないのが気に食わんが、この程度は想定の範囲内だったという事だろう。
まあ、これはまだ前哨戦……ただではしんでやらんから、覚悟しておけよ。以上です。
特異点です
>>940
平坦なトーンだ。だがその声に込められた殺意と怒り、そしてスカタクとはまた違った狂気が濃厚に入り混ざり、藤丸の脳裏を激しく揺さぶる!
ルブラン一家に至っては極寒の地にいるかのように震え、恐怖!
「マスター気をしっかりと持て、あれは"修羅"だ」
「"修羅"……………?」
「ああ、人として生まれ、人として一生を送った筈だが、その性根は人外へと変貌している者のことだ。あやつは何処までも己が武術に身を捧げそれ故にどんな誘惑を無かったことに出来るのだろう。……………だがそれによりその誘惑への殺意が強くなっているだろうな。自らの道に関係のないものには興味でなく殺意が出る。あの化生(スカタク)とはまた違った狂気……………面白い」
厩戸王子が少し笑うその先で、天狗は刀を抜き取った。その刃は美しく煌めいている筈だが、持ち主の狂気を映し出しその刀身は歪んで見える>>945
終わりです
この後ルナムンビ召喚みたいに考えてますがいいですかね?
ああとユージーンさん、玉兎ちゃんの片腕と足と眼は残しましたよ!では特異点ss投稿します。ルナムンビについては「やり過ぎだバカ!」等の意見があったら別のに変える案はありますので……
>>947
玉兎「くっ…このままでは本格的にやばいです」
玉兎としてはここで最期まで戦い一騎でも道連れにすることも考えたのだがこの者達の情報を持ち帰ることを優先した。
王都には思考統制で情報を逐次遅れるようにと人間を一人支配下に置いていたのだがその者からの意思が途切れている。恐らくマスターの気まぐれで蕩かされたのだろう。
玉兎「(情報を持ち帰るには兎[わたし]が逃げ延びるしかないです。その為には…)」
玉兎は自らの指示で町中の死体を捕食させていたムーンビーストを呼び寄せる。
そのムーンビーストの頭を掴むと無理矢理至近距離まで顔を近付ける。
玉兎「狂え」
変化はすぐに現れた。
※次レスを読む際にはBGMとして以下の曲をお楽しみください。YouTubehttps://youtu.be/uMSRLCjbSh4
>>948
狂気の魔眼によって念入りに狂わされたムーンビーストは聴くもの全てに不快感を与える金切り声上げその姿をメキメキと変質させていく。
白いヒキガエルのようだった身体は黒く変色し二足で立ち上がったかと思うと前足だった腕はうねうねと曲がりくねり指先は鉤爪のような触手へと変わり果てる。
あちこちに喰ったであろう人間達の顔が浮かんでいるがソレの頭部には顔が無かった。そこにあるのは孔。ムーンビーストのピンク色の触手が生えていた部分には底の無い真っ暗な闇が口を開けていた。
怪物「■■■■■■■■■」
怪物が空に浮かぶ月に向かって吠える。それは咆哮のようにも聞こえるが何かを嘲笑っているようにも聞こえる、人間には理解できない言語のようでもある。
ムーンビーストが強化[狂化]された?否、もっと異質な何かを呼び寄せる触媒となってしまったのではないか、そんな錯覚を覚えるだろう。
玉兎「こいつと兎[わたし]、どちらを優先すべきかは分かるはずです」
そう言い残すと玉兎は空高く跳躍し建物の屋根を伝って離脱した。>>949
立香の端末からホログラムが投影され空中に男の姿を映し出した。
Dr.ロマン『ああっ、やっと繋がった!
藤丸君!セイバー!そいつはヤバい、今すぐ逃げるんだ!』
厩戸皇子「呪い師、簡潔に問おう。アレは何だ?」
Dr.ロマン『正直なところ“何も分からない”この星のどの文献にもあのような神性の存在は残されていないんだ。
カルデアではこれを暫定的にルナティックムーンビースト(狂った月棲獣)と命名。とにかくヤバい存在だ、もし逃走が困難ならその場にいるサーヴァントを総動員する勢いで…
厩戸皇子「やはり『領域外の生命』か…」
Dr.ロマンの言葉を聴きながら厩戸皇子がボソリと呟き、辺りを見回した。天狗面の男は獲物に逃げられ面の上からでも分かる程怒りを湛えている。それでもあの者を追わず目の前の脅威に対処しようとする姿勢に感服しつつもう一人、一柱?を見遣る。>>950
ここまでです。
ただでさえ不気味なムーンビーストがこのような変身を遂げた姿を目撃した探索者諸君。1D10/ 1D100のSANチェックをどうぞ。
ルナムンビ(SAN値0)「私はムーンビーストです」
はい。ニャルではありません。SAN値が0になって自分をニャルの化身だと思い込んだムーンビーストが月の狂気で身体組織が滅茶苦茶になったものです。ホントダヨ!ヴェルサイユ宮殿ーーー後の世に於いてすらその名も高き、フランスという国の栄華の象徴。
その更に中心と言うべき謁見の間にて、今正に『催し』が行われようとしていた。
全身を縛られた老若男女が計10人、横一列に並べられている。いずれも宮殿の絢爛さに似合わぬ、ボロ布の如き格好だ。そして列の端には、異装の男が佇んでいる。男は遥か極東の民族衣装に身を包み、腰に刀を佩いていた。
もう一人ーーー玉座に掛けた麗しき女性。豪奢なドレスは、彼女がこの場の支配者である事の象徴か。
「始めなさい、アサシン」
ドレスの女性が、愛らしい声を響かせる。
「ーーー御意に」
応ずるように、異装の男が刀を抜いた。そのまま刀を上段へ構え、縛られた男へ向けて言葉を掛ける。
「何か、言い残す事は?」
「女王陛下、お慈悲を……!」
涙ながらの命乞い。それを聞いたドレスの女性は、天使のような微笑みで告げる。
「ーーー却下」
瞬間、振り下ろされた刀が男の首を断ち斬る。
ボトリと嫌な音が響き渡り、男の首が転がった。断面を覗かせた胴体からは、一瞬の間を置いて赤黒い液体が地面へ排出される。
ーーーブチャリ。そう聞き取れる音は、聞くものに思わず嫌悪感を抱かせる。
しかしそんな光景を、ドレスの支配者は笑みのままで見下ろしていた。それどころか、
「アサシン、貴方の技は見事よ。けれど綺麗すぎるのが難点ね。次はもっと血が噴き出るようにやって頂戴」
と注文をつけ出した。>>952
「仰せのままに」
男は短く答え、先程と同じ手順を踏む。同じように却下の言葉が告げられ、首が落ちる。しかし今回は、胴体が噴水の様に液体を撒き散らした。
「まぁ、素敵」
先程よりは感慨深げに、支配者が呟いた。だが、その直後に言葉を続ける。
「形式通りにするのも飽きてしまったわ。アサシン、残りは一気に斬ってしまいなさい。けれど……そうね。なるべく斬り方を変えてくださらない?」
その言葉を聞いたボロ布の者達は、顔を青ざめさせて口々に言葉を吐き始める。中には叫び、泣き、最後の抵抗とばかりに身をよじらせ、列を乱す者もいた。狂乱の中、異装の男は支配者に答える。
「そのように」
そこからは先は正に地獄絵図。
"来ないで"
下から斬り上げられ、女の首が宙を飛ぶ。
"まだ死にたくないよ!"
少年だった物が血を噴き出す。
"お前達なぞ、革命軍が絶対にーーー"
老人が言い終わるより早く、一閃の元に首が刎ねられる。>>953
"お、俺が何をしたって言うんだよ!"
大柄な男が肉塊に成り果てる。
"やめて!お腹に子供がーーー"
その女の、母になる未来は失われる。
"主よ……どうか私達を"
老婆の祈りは届かず、
"嫌だ、いやだ、いやだぁーーー!"
絶叫を挙げる青年の肉体は、只の血袋に。
そして最後に残ったのは、言葉をなくし、呆然とした少女。
「さらばだ」
その命も、凶刃によって摘み取られた。
『催し』が終わり、血と体液と異臭で満たされた謁見の間は、静寂に包まれる。しかし幾らかの間を置いて、ぱちぱちと、虚しい拍手が響く。
「とっても素敵な見世物だったわ。胸がすっとしちゃった。やっぱり貴方の腕は見事ね、アサシン」
「お誉めに預かり光栄です、女王陛下」
支配者はこの惨状を悦ぶ。十人もの惨い死を見て尚、天使の顔を崩さない。寧ろ、その頰が上気しているようにさえ見える。
「では、拙者はこれにて失礼を」
「ええ、ご苦労様。またお願いするわ」
異装の男は謁見の間を静かな足取りで後にする。去り際に、女王が魔術師と清掃係を呼び出す声がした。惨状の後始末でもさせるのだろう。そんな事を頭に浮かべながら、男は歩き去った。>>954
パリーーーコンコルド広場。
この場所はマリー・アントワネットの処刑が予定される場所だ。"本来"ならば。
しかしその歴史的な出来事は未だ起こらず、かの王妃は今や女王として、この仏蘭西という国を治めている。否、この状況を治めていると言っていいのかどうか。
異装の男は、この広場のベンチに腰掛け、物思いに耽っていた。
ーーー男の名は、山田浅右衛門吉利。仏蘭西より遥か東、江戸時代の日本にて名を馳せた処刑人一族。その七代目当主である。本来であれば仏蘭西とは縁も所縁もない人物であるが、英霊召喚"という儀式により、異郷の地へと呼び出された。
召喚された当時の事を、男は振り返る。
〜〜
女王が英霊を召喚して少し後、パリ近郊にて、山田浅右衛門は召喚された。しかし、己が如何なる理由によって召喚されたのか、皆目見当が付かなかった。近くに己を呼び出した召喚者の姿は無く、この地で何をすべきかの情報すら与えられていない。一先ず状況を知る為に人の多い街へ向かっていたところ、己と同じく召喚されたサーヴァントに出くわした。ーーーその名は、ウィリアム・マーシャル。
マーシャルはサーヴァントの情報を主君へ伝えると言った。その彼に同行を願い出ると、身体を縛られ、兵に囲まれた『連行』の形で同行を許可される。>>955
豪華絢爛を形にした宮殿に、最初は圧倒された。謁見の間に通され、その光景を目撃する。
ーーー百を超える人の姿。その何れもがサーヴァントだと纏う気配で知れた。人だかりの先、玉座に掛けるは、一際豪奢な衣服の女性。
(彼女が恐らくは、このサーヴァント達の主君……)
女性の前に通される。
「女王陛下。先に連絡しておりました通り、サーヴァントを連れて参りました」
「ご苦労様。では、そこの貴方。貴方は何者?わたしが呼び出したサーヴァントの中には居なかったわね」
問いに、男は礼をして答える。
「お初にお目にかかります、女王陛下。拙者、サーヴァント・アサシン。真名を山田浅右衛門と申す者。此度の召喚に於いては、主定まらぬ"はぐれ"の身でございます」
周囲がやや騒めく。恐らくは、この場にいるサーヴァントは皆、女王に召喚された者。故に、
(拙者のようなはぐれ者を警戒するのは当然と言えような)
だが頭数が違いすぎる。男が刀を抜きはなったとて、精々数人を斬って討ち死にだろう。
(それではいかん。召喚された以上、この地にて拙者が果たすべき役目があるだろう。それがたかだか数人を道連れにする事とも思えん)
ならばどうするかーーーと考えたところで、女王が咳払いをする。それだけで、騒めきがぴたりと止む。
「ヤマダ……アサエモン、と言ったわね。貴方の状況は分かったわ。それで?貴方はどうするつもりなのかしら」>>956
そう、それが問題だ。男には、この地に関する情報が足りていない。何が役目で呼び出されたのか、その推測もできぬ状況では迂闊に動けない。
(であれば、ここは様子を見て情報を集めるが吉か。そして、この場でそれを成すには……)
一つの可能性に行き着いた。男は、内面を伺わせない鉄面皮で、こう告げる。
「女王陛下、不躾な事とは承知の上で、一つ相談を」
「何かしら」
「拙者を、御身の元に仕えさせては頂けないでしょうか?」
再度周囲が騒めく。女王は見る者を溺れさせるような笑みで、問い返す。
「それは何故?」
「拙者は主定まらぬ"はぐれ"の身なれば、誰を主とするかは拙者の自由。なれば、この身を女王へ捧ぐもまた自由」
「そう、けれどわたしも、なんの取り柄もない者を仕えさせる気はないわ。貴方は、何ができるのかしら?」
「取り柄、と仰いますか。何分遥か極東の田舎者故、女王の眼鏡に叶う特技があるかは分かりかねますが……生前は、処刑人の役を担っておりました」
「見せてくださらない?その技を」
「お望みとあれば」
女王は手を叩き、縛られた罪人らしき人物を呼び出した。その罪人に向かい、男は刀を構える。その刀は、その道に疎い者でも名刀と分かる逸品だった。
「では、御免」
次の瞬間、罪人の首は地に転がっていた。その首を見つめる女王。そして、
「合格よ。貴方には処刑係を命じてあげるわ」
どこか嬉しそうに裁定した。>>957
「よろしいのですか、陛下」
マーシャルが問いかける。進言か忠告のつもりだろう。
「ええ。わたし、彼を気に入ったわ。好きな時に誰かの首を断てるって、とても素敵な事だと思うの」
「……陛下のご判断とあれば」
マーシャルは引き下がる。些か不服そうだったのは仕方のない事だろう。
「けど、そうね。今のだけではまだ満足できないわ。ねえ、他には何かなくて?」
問われた男は、暫し考える。そして、
「では、こちらを」
虚空から一振りの刀を取り出す。跪き、その刀を差し出す。
「これは拙者の所有する中で最高の一刀に御座います。ーーーこれを我が忠誠の証として、女王に捧げましょう。生憎とこの様な物しか持ち合わせがない事、誠に申し訳なく思います」
従者らしき人物が刀を受け取り、女王の元へ運ぶ。女王は、品のある手つきで鞘から刀を抜いた。
「綺麗……」
「我が宝刀ーーー『小竜景光』。お気に召したようで何よりに御座います」
「ええ、そうね。これは私の美術館(ミュゼ・ド・マリー)に飾りましょう。では改めて。アサエモン、貴方をわたし直属の処刑人に命じるわ。それと、貴方の事はアサシンと呼ぶわね。だって、貴方の名前、綺麗ではありませんもの」>>958
「女王陛下の御心のままに」
〜〜
回想を終えた男は深く息を吐く。女王に仕える身になって暫く、この国の事も分かってきた。
だが、男の顔は暗い。その暗さは、『催し』の際の厳かさとはまた別の色だった。
(罪人の供養すら満足にしてやれん。拙者は果たして、いつまでこんな事を続ければいいのやら)
男の胸に去来するのは罪悪感と、怒り。
ああ、処刑人など汚れ役。生前から幾多の首を断ってきた身だ。今更その数が増えたところで、文句を言うつもりもありはしない。
ーーーだが。だがしかし。男がかつて仕えた幕府には、曲がりなりにも法があった。それが、あれなる女王はどうだ。法、秩序、信条、良心。凡そ理解を示せる善が何一つとして感じられぬ。ただただ、己の気の向くままに命を使い潰している。斯様な政が許されてなるものか。
ーーー叶うならば、今すぐにでもあの首を斬り落とし、この狂った治世を終わらせたい。しかし、男一人でそれは叶わぬ。その程度は幸か不幸か見定められた。そしてこの都市周辺には、この男と志を同じくできる者はいない様だった。
(故に、故に待つのだ。拙者を除き、これ程奴等の懐に入れている者もおらん。ならばどれだけ腑が煮え繰り返ろうが、この優位を捨てるべきでは無い)
革命軍とやらが居るならば、拙者の立ち位置が役に立つ時は必ず来る。その時を、今は待とうーーー
〜〜
以上です。投稿しますね
>>960
「ば、化け物め……」
愕然と、目の前に現れた武人を見つめる。
先程の名乗りから察するに、恐らくは東洋の武人なのだろう。自分が知るそれとは異なる、独特な色合いの装束が目を引く。
最も、呑気に見惚れていられるような相手でない事は先程の立ち回りからも明らかだった。片腕に握られた長物が威圧するように鈍い輝きを放っている。
(大鎌……いや、グレイブに似ているな。いずれにせよ尋常な代物ではない)
かつての同僚達が振るっていた数々の名品。それらを思わせる武器の使い手を前に、ガヌロンは魔剣を抜き放つ。
傍らのマーシャルもまた、自らの武器を構え直し部下に戦闘態勢を整えさせていた。
だが遅い。相手は既に目前まで迫っている。
出し惜しみをしている余裕はなかった。
「我が呪いに応えよ――『怨望宿るは我が死の剣(トライゾン・ミュルグレス)』!」
真名解放。堕ちたる宝剣が不気味に輝き、憎悪に満ちた熱線が数条放たれる。
至近距離からの射撃にガヌロンの技量も加わり、流石の相手も回避し切るに至らない。直撃こそ免れるものの、数発がわき腹や肩口を掠め肉を抉り取る。
が、止まらない。痛痒などまるで感じぬとばかりに、関羽はガヌロンに斬りかかる――!
続く>>961
「ちい……っ!」
「ガヌロン卿!」
ガヌロンは咄嗟に手綱を引き、馬の上半身を前に出す。次いで自分は全力でのけぞり、魔剣をも盾にしてどうにか一太刀をやり過ごした。
マーシャルの援護も加わり、かろうじて軽傷に留まる。だが馬を失った。馬上対地上、絶望的なハンデが生じる。
そう。これが一対一の決闘であったならば。
「ぬうっ!」
間髪入れない多方向からの斉射。マーシャルからの指示を受け、遅ればせながら態勢を整えた兵士達が全力で反撃する。
とはいえ所詮は常人の攻撃。いかに至近距離とはいえ、敏捷に通じたサーヴァントならば問題なく回避できる程度のものでしかない。
しかし馬はそうもいかなかった。どうやら宝具の類ではないようで、主が防ぎ損ねた矢が何本か突き立ち、悲鳴を上げる。
当然馬上の関羽もただではすまず、馬から振り落とされ地面を転がった。
「今だ! 狙い撃て!」
兵士達が勢いづき、ここぞとばかりに集中攻撃する。
が、目の前のサーヴァントはどこまでも規格外だった。地面を転がりながら矢を避けると、間髪入れず起き上がり得物を一閃。迫り来る矢の数々を残らず吹き飛ばし、悠然と息をついた。
続く>>962
「なんて奴だ……」
「あの攻撃を凌ぎきるなんて」
完璧に仕留められた、そう思い込んでいた兵士達が愕然と呟く。
ガヌロンやマーシャルにしてみれば何ら意外な事でもない。この状況で一人突っ込んでくる輩など、余程の馬鹿か己の技量に自信を持つ怪物以外に有り得なかったからだ。
そしてどうやら今回は後者だったらしい。
「そんな顔をするな兵ども、仕留め切れなかったのはお互い様よ。まさかあのを一撃を凌ぎきろうとはな。どうやら聞いていた以上に生き汚いらしい」
いけしゃあしゃあと関羽は言い放つ。空いた手で顎鬚をさする動作も加わり、ガヌロンの癇に障る。
玉兎の方もどうやら想像以上に難儀な事態らしい。先程聞こえた奇声といい、この村で一体何が起こっているというのか……。
「貴様と遊んでいる暇なぞない。早々に片を付けさせてもらうぞ、異邦の反逆者」
「生憎だが断る。こうまで殺されたのだ、最低でも貴様一人の首は貰うぞガヌロン」
ここで一旦パスします
監獄長の方、および関羽担当の方よろしくお願いしますフランス特異点フゥ〜。
「ガヌロン卿、こちらの馬を」
マーシャルの背後に馬が出現する。
失ってしまった馬の補充は彼がいれば困る事はなく、兵士たちの武器のストックも宝具で補える。戦場においてマーシャルが不可欠な理由はそこにあった。
使役していた馬は地に伏せ、逆に多勢側は再び万全に戻ったこの状況下で、関羽は特に焦る様子も見せずに冷静な思考で周囲を観察する。
乱戦は彼の独壇場であり、真価を発揮する形式だ。王国側に真名は知られていないが、戦場を舞う勇姿は歴戦の威武を感じさせ、ガヌロンとマーシャルに多勢であっても一筋縄ではいかない対象と思わせていた。
雑兵の援護は牽制にも陽動にもならないだろう。よって、この場の戦況を有利に進める為の戦略を、互いに睨み合う僅かな時間の中で練り上げ、マーシャルはガヌロンにアイコンタクトで伝える。
確実に伝わったかは定かではないが、ある程度の意図は読み取り、いつでも動けるように剣を構える。
関羽にもそれは伝わっており、何をするつもりかと警戒を緩めない。
両陣営とも静謐を漂わせ、平原に吹く風だけが音を鳴らす。
雑兵は迂闊に動けない。万が一にも動いてしまえば、命はないと直感で悟ったからだ。
これは人と人の戦いではなく、言うなれば嵐と地震が戦っているようなものだ。ちっぽけな人間が介入できる訳がない。
そんな規格外の存在が小競り合う瞬間を何度も見てきた雑兵だが、決して慣れた訳ではなく、目の当たりにする度に緊張で心音が外へ漏れ出ているのではないかという程に、強く拍っている。
息を吐き出す。息を吸い込む。その行程を繰り返すも緊張は晴れず、一粒の汗が頰から首は伝い、地面に零れ落ちる——>>965
——刹那。
マーシャルが動きランスで突刺すと同時に、関羽も自身の得物で難なく防ぐ。
馬による突進力と合わさって刺突の威力は何倍にもなり、防御の反動で関羽は後方へ押し出される形で足を滑らせる。
ランスでの攻撃後、マーシャルは動きを止める事なく前方宙返りで距離を詰め、空中でランスから西洋剣に切り替えて敵に斬りかかる。
無論、これに反応できない関羽ではなく、前方上空から振り下ろされる剣を双刀で受け止めた。
「ぬっ……」
しかし、騎士の攻撃を防いだ事により、自身の動きも止まってしまう。その隙を突かれてか、迫り来るガヌロンの熱線への対応がやや遅れてしまうも、即座にマーシャルを押し返し、身を捻るように回避する。
だが、完全には躱しきれず、二の腕に一本入ってしまった。
「能力の低下が見られる。貴様等……嫌、ガヌロンによるものか。小賢しい限りだ」
至近距離ならいざ知らず、遠距離からの熱線をいくらマーシャルと剣を交えていたとはいえ、回避できない筈はない。けれども現に、関羽は彼らと対峙した時から身体に衰えを覚えていた。
これはサーヴァントの持つスキルが原因であり、関羽の言葉通りガヌロンの『対英雄』スキルによる影響だった。
小賢しいとばかり武人はは睨み、一瞬たじろぐも漆黒の騎士も負けじと睨み返す。>>966
「さあ、再戦と致しましょう」
その言葉で戦闘が再開される。
互いにの剣で切り掛かり、火花を散らす。
一閃一閃が目に追えない程の高速斬撃で、兵士たちには只々金属音が響き渡るだけの戦場と化していた。
しかし、そんな兵士たちにガヌロンが視線を送り、いつでも準備しておけと合図する。
「まったく、呆れ果てた光景だ。彼奴等はローラン、オリヴィエとも打ち合えると見える」
ガヌロンは決して弱くない。生前も周囲が規格外だっただけで、当人の実力も低くはないのだ。
故に、その見識眼が確かなものであり、味方の剣が一瞬打ち上げられて隙ができてしまった際には、冷静な判断力により隙をカバーする。
「弓兵隊一番から四番、マーシャル卿には当てるでないぞ……発射!」
既に狙いを定めていた弓兵隊は弦を引き、矢を一斉掃射する。
一介の雑兵ではあるが、今までの培ってきた経験から正確に狙いを定める事ででき、射撃を見事に成功させる。
迫る矢を相対者ごと振り払わんと双刀を振るうが、僅かに動ける時間を儲けたマーシャルは、弾かれた剣の代わりを出現させて斬撃を止める。
すると、弓兵の矢はマーシャルの肩上や、脇下をすり抜けて関羽の巨体を貫いた。>>967
「むぅ……!」
まるで流れるようであった。矢が直撃したのが視認できた途端、マーシャルは両手に剣を持って地面に縫い付けるように関羽の両足へ突き刺し、そのまま後方宙返りで距離を取る。
そして、戦場全域を見渡す武人の目が、宝剣に魔力を蓄積させているガヌロンと、第二射の準備が既に整っていた弓兵を捉えた。
——これは全て、あのマーシャルの手の内か……!
ウィリアム・マーシャルのスキル『心眼(真)』による戦闘理論で相手の動きを読み取り、『騎士の武略』で相手のミスを誘う。この二つによって流れを作り、関羽が無防備になるであろう絶好の機会を生み出したのだ。
そしてガヌロン自身の持つ『身中の虫』のスキルで、ガヌロンへ一種の軽視を植え付けた事も要因の一つとなっている。
——成る程、この連携の高さは認めよう。だが……。
「まだまだ甘いわぁ!!!」
関羽は豪腕を以って得物を敵指揮官二人に投擲する。
放たれた双刀は、旋風の如し回転と、銃弾の如しスピードで急接近。
突如の事で対応が遅れ、空中で脇腹を切り裂かれるマーシャルと、宝具開放を中断して間一髪で防ぐガヌロン。そして、背後で弓を構えていた兵士たちは成すすべもなく回転する刀の餌食となってしまう。
王国軍に襲いかかった凶器は、そのままあさっての方向へ飛ぶ事はなく、方向転換して関羽の手に収まり、再び投擲しようと振りかぶる瞬間——>>968
————壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。
耳をつんざく爆音。
英霊に取って誇りの一部とまで言われる武器を犠牲にして発動する事が可能な秘技。内包された神秘の塊を、殻を破らせるかのように暴発させ、膨大な魔力の奔流を暴力的にまで高めた一手。
それにより引き起こされる衝撃——生半可な威力ではないのは、関羽の両足に突き立たれていた剣が巻き起こした大爆発を見れば、顕著な現象である事は明々白々だった。スルトさんか、黒野さんにエターナルフォースブリザードパス。
>>716
死霊鎧套の懐から魔術的にー改造した拳銃「鬼哭」をクイックドロウし、その勢いのまま発砲。が、ノーダメージ。原因は十中八九あの光だろう。銃弾が床に落ちた音が聞こえたし、さっきみたいな幻覚ではなさそう。ちぇっ。残りの弾丸を撃ち尽くしつつ右手へ移動し、弾倉を交換。全身の防御力の向上の為、フードを被り、鎧套と魔術で機動力を強化、隠身機能も発動してから突き当たりを左へ。……しかし、こういう時に口が悪くなるのが俺のいけない癖だ。ギアス無効化を試したのもある意味安全の為と言うか、保険だし。礼装の威力で(なんてったって拳銃に爆弾だ)過失で殺人、つまり事故で魂縛られるなんざ目も当てられないし、真っ平御免だ。つーか正直本気でコロすつもりは無いんだよねー。誉や奏にショッキングな放送事故見せる訳にもいかないし。
で、また曲がる。よーし、いたいた。一応現状確認。ステルス機能と低ランクの対魔力が起動してる、っと。ただの9パラじゃ意味が無いっぽいよねぇ…。じゃあ、こんなのはどうだい。先程装填した散弾(指弾に詰まった複数の歯・爪が着弾時に破裂するバージョン。厳密には炸裂弾か?)を撃ちまくる。さっきとは違って、ヒットした段階で数が増える弾丸だ。そうして、30程度の凶弾がルーカスくんに襲いかかる。で、また移動。さぁて、どうなる?撤退戦が始まった。
撤退戦とは言うが作戦らしき作戦もない。私ことロベスピエールは生き残った革命軍を率い、ただまっすぐ本拠地たるティエールに逃げ帰るだけだ。
基地を失い、貴重な戦力であるサーヴァントも多く失った。自分達が逃げ切れたとしてもこの戦いは勝利とは呼べまい。
……既に放棄した基地からは途切れることなく戦の音が響いている。殿を務める四騎のサーヴァント――トマ=アレクサンドル・デュマ、荒木又右衛門、豫譲(よじょう)、キルロイの四騎――が戦っているのだろう。一騎当千のサーヴァントといえど多勢に無勢。革命軍が逃げ切れるだけの時間と引き換えに彼らは消滅するに違いない。
それは非常に大きな損失だ。サーヴァント一騎が有する戦力を考えれば、『四』もの数を失うことはあまりにも重い。
だが―――彼らはそれでもなお私が生き残るべきだと言った。
今この地に必要なのは『英雄』ではなく『革命』であると言い切った。
で、あるならば、私は革命として生き残らなければならない。居場所を棄て、友を棄て、自分を棄て、最後の一人になってでも。>>972
そのためにも今は逃げるのだ。王国への怒りも、友を喪った悲しみも今は忘れろ。
美徳(ヴェルチュ)の一言と共に銃声を響かせる。鎮静効果のあるその銃声を、生き残った兵全てに届くように高く大きく。兵士達に一時ばかりの冷静さが戻ったことを確認し―――叫ぶ。
「私の声が聞こえているな! 聞こえているのならば進め! 前へ!」
全員の視線が一斉に集まる。私を見つめるその目には動揺も焦りもない。
「彼らの戦いを無為に終わらせぬ為に! 我らに革命を託した今は亡き同胞の為に!!」
一人、二人、三人と……まばらだった足並みが次第に揃っていく。
「革命を求める者達よ、このロベスピエールに続け!! 私が、私こそが―――革命である!!!」
やがて大河が如き大行進となった。>>973
一丸となって撤退を開始した革命軍を見てわずかに安堵する。
―――これでいい。
この戦い、既に勝利は無いが、同時に敗北も無くなった。
「……。ぬっ……。」
わずかに気を緩めたほんの束の間、友を喪った痛みが再び胸に刺さる。
まだ、まだだ。まだそんな感傷に浸る暇は無い。
私は革命として戦う―――生前と同じだ、ならば耐えられる。
そうだ。フーシェも、ダントンも、マラーも、最期は私の隣に立っていなかった。共にギロチンに首を預けたのは私と同じく人であることを棄てたサン=ジュストくらいのものだ。
誰かを、個人を愛し寄り添っていては何も出来ない。全てを棄てて前へ進んでこその革命だ。
それでいい。それでいいのだ。私は人ではなく革命なのだから。
分かっている――分かっているとも。
「……よし。」
思考を止めて頭を切替える。優先すべきはこの撤退戦だ。
時も、場所も、状況も、全てが因果なこの地に喚ばれた理由はまだ分からない。
それでも。彼女がこの国で王として君臨しているのならば―――私は。そろそろ影が薄くなってきたので>>919の明星さんのSSに便乗して書いたものを投下しておきます
思った以上にボロボロにされたなあと思いつつ、投下。
激痛が、両脚が殆ど使い物にならなくなったと伝えてくる。
すぐに召喚した馬といい宝具並みの強化ではなく、宝具そのものとはな……。
しかし煙が晴れれば、前からはマーシャルの突撃、後からはガヌロンの宝具といった所か……熱線がサーヴァントを貫通する威力を持たない事を逆手に取った策よな。
だが、これは待ち望んだ機会でもある。
「我が呪いに応えよ、怨望宿るは我が死の剣(トライゾン・ミュルグレス)……なっ!?」
ガヌロンの驚く声が聞こえる。
それもそのはず、真名解放の直前に俺が渾身の力を以て青龍偃月刀の石突で地面を突いて、身体を横に飛ばしたからだ。
さらに、ガヌロンの剣から放たれた熱線は、突撃してきたマーシャルに襲いかかる……流石のマーシャルも、これは気付けまい。
奴の予想を超える一手こそが俺の狙い……具体策までは用意出来なかったが、漸く辿り着いた。
馬の断末魔を尻目に俺は旋回してガヌロンに向き合う形で着地、両脚の激痛を堪えつつ、倒れないように踏みとどまる。
片脚の骨が折れたようだが、あと少し立って居られるなら問題無い。
俺は青龍偃月刀を上段に構える。
宝具の真名解放……この魔力消費で俺は残り五分の命となるが、この傷では今更だ。「青龍偃月刀よ。将を討ち、軍を破れ。
冷艶鋸!」
後世によるレプリカには無い、孔明が開発したこの青龍偃月刀にのみ存在する機能を解放する。
それにより刀身を基点として長大な魔力刃が形成され、俺はそれをガヌロンに振り下ろす。
自身の行動の結果に呆然としていた奴は、魔力刃が形成された段階でこれに気付くが、それではもう遅い。
巨大な刀を振り下ろすに等しいこの宝具は、鎧どころか奴の魔剣すらも叩き斬れるであろう一撃だ。
この機は逃さない。
例え霊核を破壊されたとしても、この一撃はもう誰にも止められん。
ガヌロン、お前は此処で終わりだ。以上です。
さて、どうなるか。特異点SS、投下します
自分のパートは多分これで終了です>>980
振り上げられたそれを、ガヌロンはただただ見つめていた。
天を衝く魔力刃。かつて同胞が対峙したという巨人族の武器と同じか、それ以上に大きい。
防ぐ、という考えは最初から吹き飛んでいた。
(回避は――間に合わん、か)
如何せん巨大すぎる。今から全力で回避しようにも、彼の敏捷ではぎりぎり間合いから離れられるかどうか。
十中八九、片腕だけではすまない。半身を「持っていかれる」か、あるいはそのまま霊核をも両断されるか――いずれにせよ、どうにもならない。
どうあがこうと待っているのは死。それだけだ。
「……儂の首をいただくと言ったな、反逆者」
握りしめていた魔剣を、地面に突き立てる。
柄に埋め込まれた聖遺物――最早そう呼んでいいのか分からない――が、禍々しく輝き、蠕動する。
「よかろう、くれてやる。ただし貴様も道連れだ」
目の前のサーヴァントはどう見ても致命傷。放っておけば数分と経たず消滅する。
が、それでは気に食わない。己が野望を踏みにじるこの英雄に、一矢報いねば消えようにも消えきれない。
続く>>981
「ガヌロン卿――!」
遠くからマーシャルが叫ぶ。
――思えばあの若造にも振り回された。生前といい此度といい、どうやら己の立ち回りというものは一度死んだ程度では変わらぬらしい。
ふと、目の前の英雄がどこか笑っているように見えた。己を討ち取れる事が、そんなにも誇らしいらしい。
己の死なぞ、あの女王にすれば玩具を一つ失った程度でしかないというのに。
「せいぜいあがけ、小僧ども。あのどうしようもない、愚かで狂った女王の下でな」
魔力が暴走し、熱線ならぬ破壊光となって四方八方に解き放たれる。
それは振り下ろされる魔力刃に対し無力だったが――目の前にいた、半死半生の敵を貫くには充分だった。
衝撃波と閃光が周囲を衝き抜け、巻き込まれた建物が崩落する。
全てが終わったその後、マーシャルたちが見たものは――
これにてガヌロン退場です。
最後の方はあえてぼかしておきました。関羽ならワンチャン――ないかな?(戦闘続行スキルとかで)
次のバトンは監獄長か◆SOkleJ9WDAさんにお任せします。
ああ、終わってしまった…>>983
「おわっ!!?」
陣の内部に1mほどの炎が巻き上がる。
(なんでバレ……)
息つく暇は与えられなかった。
周囲40度等間隔に九発、光の弾丸は炎が巻き上がった場所の中心に着弾する。
(火まで含めてもダメージを受けた様子はなし。 相応に頑丈だな、高級品かな)
彼のミスは二つ。
一つは様子見で透明化したこと。
迷彩をまとうということはそれ自体が防衛行動である。故に回避行動への反応が遅れたわけだが、これは決定的ではない。
事実、ルーカスからの攻撃は通らなかった。
もう一つは、これは決定的だが、ルーカスから視線を切ったこと。
視覚情報を操作する相手に対して視線を切るということは、次の瞬間の視界全てが信用に値しないものとなるということだ。
逆に操作をする側からすれば視線を切られている間は"仕込み"放題である。
そして。
(弾丸の発射位置を初期位置としてそこに白羊宮と光弾。"対象の移動に際して発生する屋上面の砂塵の変化"より現位置補足。視覚支援により現在視認不可能な対象の仮の姿を視界に投影)
「おい、その程度しかないなら僕の相手に不十分なんだけど」
朽崎の右手があるべき位置に三発の光弾が飛んだ。フランス特異点更新です。
「愚か者め、自分の大きさを見失いおって……だからお前は臆病風に吹かれて仲間を売ったのだ」
両断されて消えゆくガヌロンにそう言葉を投げかける。
奴の最後の足掻きは俺をころすには至らなかったが、今立って居られるのが戦闘続行スキルによるものかどうか解らん位にはよく効いた。
そのダメージもあって最早脚が殆ど動かないのだが、左手に持った青龍偃月刀を杖代わりにしてどうにかマーシャルと向かい合う。
「この狂った国は終わる……遅かれ早かれな。俺が生きた時代がそうだったように、どうしようも無くなった国が滅び、新しい国が産まれる……この流れは止まらんぞ」
見ればマーシャルの奴、ガヌロンの宝具では傷を負っていない。
馬と得物を盾にしたか、それとも咄嗟に馬から飛び降りたか……つくづく勘の鋭い男よ。
兵が見守る中だ奴は再び馬に乗り、体勢を整え終える。
「とはいえ武人同士だ。最後は言葉ではなくこれで決めるとしよう……その首、討ち取るは万人之敵!」
双刀と鞘が細かい部品に分かれ、一つに組み直されていき、現れたのは柳葉刀。
特殊な力等ない、ただ頑丈で切れ味が鋭いだけの剣だ。
最早、あと一度の攻撃分の魔力しかない事を知りつつも、その柄を唯一自由に動かせる右手で握り、構える。
さあ、最期の勝負といこうか。以上です。
【連絡】
リレー企画参加者様へ。企画の円滑な進行の為、1週間以上レスができない状況になる場合は、GMにその旨を報告してくださるようお願いします。その際は、どういう方針・方向で動きたいかを合わせてお伝えください。参加者間での話し合いを行い、どのような描写にするかを議論します。
1ヶ月以上応答がない場合は、応答があるまで他参加者で進行させていただきますことをご了承ください。
・統合スレにて開催中の企画
1.九終聖杯大会
2.トーナメント大会
3.伏神聖杯戦争
4.第1回聖杯大会(スノーフィールド)
5.1.特異点 悪徳歪曲狂国ベルツ・ル・パラディス
・開催予定
1.インフレ聖杯大会(メンバー調整)
2.第◾️回聖杯大会(メンバー調整)
中華スキーさん、お忙しいかと思いますが、九終聖杯大会の進行がありました。つきましては召喚シーンの投稿をお願いできればと思います。また、お伝えしたいこともありますので、予選へレスをお願いします。
理綴さん、カイリーさん島編進行しましたので確認と対応お願いします。特異点SSです。
>>989
「――――――――――クク」
どこかから、含み笑いが漏れる。
「―――――ククッ、ハッハハハ」
含み笑いは狂気を孕み初め。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
平坦な狂笑が響き渡る。>>992
「…………!」
だが、寺田は一切振り向くことなく加速する。その背を貫かんと、狂月棲獣は大量の触手を伸ばし、隠れていた月棲獣たちに背後から藤丸達を攻撃するよう指示を飛ばす。
「――――――■■■」
嘲笑うような、不快感を煽る呻き声が響く。
―――――――しかし、その手は黒い壁に阻まれ、月棲獣達は舞い降りた天狗によって一瞬のうちに17分割され絶命する。
「■■■■■■ッ……!」
驚いたような声を上げようとする狂月棲獣の身体から爆炎が連続して巻き起こり、その巨体を撃ち落とす。空中には、刀印を結ぶセイバーの姿。
瓦礫を風を巻き上げ狂月棲獣が墜落、直ぐに立ち上がろうとするが、胸部に大きな黒槍が突き立ち地面に縫い止められる。>>994
以上です!遅くなって本当に申し訳ありません!両者共々、一言も発さずただに睨み合うのみ。
混沌とした王政に逆らって見せた関羽は、重症を負いながらも強い佇まいを示し、堕ちていると理解しながらも王国に与するマーシャルは、馬上で優雅な姿を魅せる。
対極の位置する二人だが、その根底にある戦士としての誇りは同じであり、戦場で無様な姿は晒さまいと強靭な意志で奮っていた。
——マーシャルの馬が地を蹴る。
蹄で音を立て、風を切る。
ランスで刺突の構えを取り、突進による推進力で威力を増大させる。目前の敵を穿たんと魔力を迸らせるランスは、マーシャルの豪腕により迅雷の如し速さで疾った。
軌道に乗った突きを関羽は動かない両足の代わりに青龍刀の柄で地面を打ち、斜め左方向へ寸前で回避した。
躱したランスの動きがまるでスローモーションに写り、この瞬間こそがチャンスだと反応した関羽の肉体は、足代わりに使用した青龍刀と柳葉刀の二刀で振り下ろす。
しかし、避ける事を予め読んでいたマーシャルは、手綱を右側に引いて馬を135度方向転換させ、両後脚の鎧で守られた蹄で受け止めた。
後方蹴りの要領で行われた為、金属音を響かせながら双刀とも押し返されて、その衝撃と共に関羽は蹌踉めきながら後ろへ滑る。
「く……」
赤兎馬には遥かに及ばぬが、騎士の駆る軍馬の脚力にはそれ相応のものであり、武器を通じて衝撃の振動が伝わった事もあって痺れが両腕を僅かな時間支配した。
対してマーシャルは、馬に変調が生じていた。防御に使用した両後脚から流血し、庇うように歩いているので使い物にならなくなったのだろう。
それを確認した騎士は下乗し、霊体化させた後に新たな馬を召喚した。>>996
「貴様に制限というものはないか……」
「卑怯とは言ってくださるなよ。こちらは既にガヌロン卿を貴公に取られている身……故に凱旋しなければ卿に顔向けできません」
「イングランド最強と謳われた騎士は容赦がない」
「戦争ですので」
殺伐とした空気の中、その流れを作った元凶は険しい表情をしながらも互いに軽口を叩く。
これが最後の会話となるかもしれない。だが敵同士、長ったらしい会話は不要だ。
遺恨も、怨恨も、悔恨も引き摺らない、引き摺ってはいけない戦争。勝てば官軍、負ければ賊軍が理たる現世(うつつよ)の地獄。その中で交わされる敵との会話など後々足枷になるかもしれないのだ。
戦乱を生きた二人はそれをよく理解している。
——しかし、彼が女王陛下に従う玉ではないのは重々承知していますが……我が陣営に組みすれば、戦力は大幅に増強したでしょう。
関羽の戦闘力は今まで戦った誰よりも抜きん出いるので、その存在はマーシャルにとって魅力的ではあった。
彼は『友誼の証明』のスキルにより対話で自軍に引き入れるのを一任されている交渉人で、王国軍の傘下に入っている約6割のサーヴァントは、マーシャルの話術によるもの。
目前の武将をみすみす殺してしまうのは惜しいと思ってしまうも、交渉へ応じる気は更々なく、また現在の王政に不満を抱いていた様子なので、どだい無理な話なのだろう。
であれば、口数を少なくしてただ首を取る事に専念するだけだ。
「最後に一つだけ問う」>>997
ランスを握り直して再戦に備えようとすると、関羽が口を開く。
「貴様は、悪逆の騎士という訳ではないだろう。何故、この腐敗した王国に従う?」
意外でもなんでもない質問。死闘を繰り広げた相手から幾度となく投げかけられた問いであった。
「……国は民なくしては国と呼べないと言いますが、それはまた逆も然り。現在の情勢は、王の存在があってこそ成り立っている。しかし、権威を欲した民衆は革命を起こし、これまで国を支えた王族を血祭りにあげた……その事実に、彼らの掲げる革命に、私は賛同できなかっただけですよ」
今まで通りの答え。訊かれた質問に予め用意した、解答用紙に書かれているような文章を読み上げる作業。
答える時の顔は能面のように無感情で、一切色を感じさせない機械仕掛けようであった。
「本当にそれだけか? それは王に仕える騎士として解答だろう。では、再度問う——“ウィリアム・マーシャル”、貴様は何故王国に手を貸す?」
再度投げかげられた同様のもの……しかし、違うニュアンスが強調されている質問に、マーシャルは目を見開いてさっきまでとは明らかに異なる表情を見せる。
「……それこそ、貴公に不要な事柄だ。話はここまでです。必要性の感じない対話ではなく、戦場にて武器を手にする者ならば、己が武力を以って全てに決着をつけよう」
これ以上の会話を断ち切るように武器を構え、関羽を無理やり臨戦態勢に持ち込む。
関羽は無言で青龍刀を杖代わりにし、柳葉刀の剣尖を先に向ける。>>998
今度こそ“無”と化したサーヴァント二騎の戦場。
——行くぞ、東方の武人!
——行くぞ、イングランドの騎士!
開けた距離を詰める為に駆けるマーシャルに対し、関羽は柳葉刀を双刀に分裂させて投擲する。
因果律を捻じ曲げて必殺を齎らす特性ではなく、驚異的な精密度の投擲が生み出した一発必中の技。
地面すれすれで回転移動する二つの刀は軌道を描き、下から上に向かってマーシャルに迫ろうとする。
その合間、関羽は青龍刀の柄を地面に強く打ち付けて衝撃波を発し、反発力をバネにして上空へ飛躍する。地上で満足に動けないなら、空中で動けばいいという結論から成した一手だ。
——さあ、どう出る。
喩えここで飛躍して双刀を回避しようとしても、その空域に至るように計算された投擲なので、地上を駆けようとも上へ跳ぼうとも直撃は免れない。加えて、関羽自身も上空からの攻撃に及ぼうとしている。
上下同時攻撃に迫られる状況になったマーシャルは関羽の読み通り跳んだ。それに釣られるように双刀の軌道も上へ上がる。
「兵装開基、天下に轟き一振りの矛よ、関聖帝君の覇に従いその真価を晒せ」
関羽の青龍刀に変化が訪れた。>>999
刃部に通常の青龍刀を遥かに上回る巨大なエネルギー状の刃が形成され、武神と形容できる覇者の風格でマーシャルに威武を示さんと振り下ろしの構えを取る。
これで本当に逃げ道は閉ざされた。一寸でもミスを犯せば確実に敗北へ直結する、正に前門の虎、後門の狼。
「ふんっ!」
マーシャルは躊躇なくランスを関羽向けて真っ直ぐ投げた。続けて双刀の軌道上に計八つもの剣を重ね、射出してぶつかり合わせる。
キーンと、鉄と鉄のぶつかる金切り音が鳴り響き、武器同士が鬩ぎ合う。
——豪腕により投擲された双刀は、各一本ずつのみで複数の剣を押していき、徐々に亀裂を作って突破しようとしていた。
——そしてターゲットに向かって一直線で進むランス。これを関羽は宝具を使うまでもなく叩き落とそうとする。
これら二つの事態が同時に起きようとする瞬間を見計らって、マーシャルはこの戦闘が始まって以降練っていた“打開策”を発動させた。
——壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。
双刀と鬩ぎ合っていた剣群を爆発させ、投擲の勢いを完全に削ぎ、双刀を停止させる。
その一連の出来事と同時期、爆発によって発生した魔力の奔流、風圧を利用して一気に関羽のいる位置まで加速。急激な加速に、美髯公は一瞬だけ驚嘆するも、すぐさま好戦的な笑みを浮かべて嘯いた。
「やはり切り抜けたか、マーシャル! この身は既に瀕死に状態にあるが、潰えるこの間際に、最後の一撃を、貴様への手向けとして振るおうではないか!」
Fate / TV SHOW 本戦統合スレNo.1
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