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「思うにロンギヌスの槍は持ち主に寄り添う存在ではないかと思うのです。私がこのロンギヌスの槍使えば使うほどそうとしか思えなくなりました。これほどまでに我が意に応えてくれる槍を私は知りません。」
自分が聖遺物に選ばれたのではなく、聖遺物が自分に寄り添ってくれる…そんな考えをナポレオンは聞いたことがない。誰もがいう「自分は聖遺物に選ばれた」と。
そこでナポレオンはついさっきの会話を思い出した。
「あんたはさっき俺が感謝を言うのはロンギヌスの槍だって言ってたがな。あんたの話を聞く限り、俺が礼を言うべきなのはパーシヴァル卿、あんただと思う。」
先ほどの話を蒸し返されて言葉に詰まるパーシヴァルにナポレオンは続けた。
「ロンギヌスの槍はあんたに寄り添っているんだろう?それなら傷を治したのはあんただよ。いや、そんな難しい話はしなくてもよかったな。あんたは俺の怪我の治療を文句も言わずに引き受けてくれた。それだけで感謝に値する。あんただって俺の立場だったら感謝しただろ。」
「それはそうですが…」
パーシヴァル卿は自分でも答えの歯切れが悪いのを感じて、苦笑いをした。
「言葉だけじゃ足りないって言うなら何か贈り物を用意しようか?ワインでも葉巻でも何か欲しいものはないのか?」
じっとナポレオンが力強く見つめれば、パーシヴァルは両手を上げて言った。
「降参です、ナポレオン殿。貴方の気持ちを考えず、無碍に感謝の言葉を断って申し訳なかった。」
「ははっ、受け取ってくればそれでいいさ。」
満足気に力強くナポレオンは笑った。パーシヴァルもここに至っては特に反論はないようで軽く微笑んでいた。
パーシヴァルが退室した後、ナポレオンにふと意地悪な考えが浮かんだ。
「言葉だけであの反応か…本当に感謝の贈り物をしたらどんな顔をするのかな?」
流石に意地悪が過ぎるかなと思いつつ、ナポレオンはパーシヴァルは何が好きだろうと考えた。どうせしばらくは部屋からは動く予定はない。暇つぶしにちょうどいいとナポレオンは思った。
怪 文 書 ス レッ ド 3
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