>>271
厳格で清貧な父に育てられ心優しく穏やかな青年となった士郎はある日の夜、父言峰綺礼に酒を共にしようと誘われる。未だ成人していないにもかかわらず何をと問えば何が楽しいのか笑みを浮かべていい年なのだから多少の愉悦を覚えろと述べてくる。……その表情に微かな寂しさを乗せて。
2つのワイングラスに品のある赤が静かに注がれていく。ひとつひとつの仕草は手慣れていると言って良くまさか隠れて嗜んでいたのか、疑問が湧くなかボソボソと話が始まる。護身術の弟子か機械が苦手でプレゼントしても中々使ってくれない。相も変わらず女性を侍らせている友人が気になる黒髪ロングの少女に恋慕しているようだ。また結婚式の予約があるから頼む。ならフルコースのリストアップをしておく。泰山の麻婆は旨いぞ。父さんの楽しみを奪いたくはないがあれは料理としてみれない。
会話は穏やかに進む、しかし言い様のない不安が募る。何か言うことがあるのかと勝負に出てみればあっさりと、今までの話題を放り捨てて一言、
告解しよう士郎、十年前のあの大火災の原因は私だ。
空が群青に、そして白く染まっていく。いくつかの告解のあと父は静かに、唐突に事切れた。
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